以下に、本発明の実施形態に係る作業車両を、図面を参照しながら詳細に説明する。作業車両は、自動走行しながら所定の作業を行うことが可能であり、以下では、作業車両を苗移植機とし、所定の作業を苗の植付作業として説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、以下では、走行車体のみを指して機体と呼ぶ場合もあれば、苗移植機全体を指して機体と呼ぶ場合もある。
図1は、実施形態に係る作業車両における走行制御の処理概要を示すフローチャートであり、図2は、同上の作業車両が作業エリアを認識するための画像を示す説明図である。また、図3は、コントローラを中心とした機能ブロック図、図4は、作業車両である苗移植機の側面図、図5は、同苗移植機の一部を省略した正面図である。
本実施形態に係る苗移植機1(図4)は、制御装置であるコントローラ150(図3)を備えており、コントローラ150により制御されて自動走行しながら苗の植付作業を行うことができる。かかる制御を行う際に、コントローラ150は、苗の植付作業を行うように圃場Fに設定された作業エリアW(図2)について、以下の手順で認識するようにしている。
すなわち、図1に示すように、コントローラ150は、位置情報となる座標情報を含む圃場Fの画像データを取得する(ステップS110)。画像データの取得とは、例えば、衛星画像のデータ、あるいはドローン20(図3)などの無人飛行体やその他の有人飛行体を用いて撮像して得た空撮画像のデータなどを指す。ここでは、例えば、昨年度の稲の刈りいれ作業後の切株が残された圃場Fの画像データを用いている。すなわち、切株を示す画像データPを含む圃場Fの画像は、切株と圃場面との色の違いも明瞭であるため、画像認識を容易かつ正確に行うことができる。
次いで、コントローラ150は、図2に示すように、圃場Fに列状に残る切株を示す位置座標から作業エリアWを認識する(ステップS120)。すなわち、圃場Fには、昨年度に刈り入れした際に残された切株が、苗を植付けした数だけ、植付位置にそのまま残っている。このように、圃場F内において列状に残された切株の最外縁、すなわち畦際に残された切株を結ぶラインから所定距離だけ拡幅した位置を結ぶラインで囲まれた範囲を、この圃場Fにおける作業エリアWとして認識する。
認識された作業エリアWは、昨年の植付状態に基づくことになるため、例えば、障害物の存在や圃場面の特別な状態など、圃場特有の環境によって、あえて植付けしなかった箇所も認識可能となる。そのため、認識した作業エリアW内において、無駄な植付作業を行うことなく自動操舵による苗の植付作業を円滑に行うことができ、作業性を低下させるおそれがない。
作業エリアWを認識したコントローラ150は、所定の表示装置に作業エリアWを画像表示する(ステップS130)。すなわち、本実施形態に係る苗移植機1は、図4に示すように、タッチパネルなどの表示装置が設けられた計器パネル33を備えており、図2に示すように、かかる計器パネル33に設けられた表示画面33a(表示装置)に作業エリアWを表示することで、作業者(不図示)も容易に認識することができる。すなわち、かかる表示画面33aは、図3に示すエリア表示装置331として機能している。なお、エリア表示装置331について、以下では単に表示装置331とする場合がある。また、表示画面33aには、各種スイッチ153が表示され、各スイッチを押下することで所望する装置を動作させたり停止させたりすることができる。
また、表示画面33aに作業エリアWが表示されると、作業者は、この作業エリアWの中に、苗の植付作業を禁じる非作業エリアXを設定することができる。例えば、樹木や岩などの自然物や電柱などの人工物からなる障害物が圃場Fに存在する場合、その位置をタッチパネル上でタッチ操作により入力したり、あるいは、別途入手した障害物の位置座標を数値入力したりするなどの手入力作業により、非作業エリアXを設定する。ここでは、非作業エリアXを、図2に示すように枠状のライン表示としたが、所定のアイコンなどによる表示であってもよい。
次に、コントローラ150は、作業エリアWを画像表示した後、非作業エリアXの設定があったか否かを判定する(ステップS140)。そして、設定があったと判定すると(ステップS140:Yes)、コントローラ150は、表示画面33aの作業エリアW内に設定入力された非作業エリアXを追加表示し(ステップS150)、その後ステップS160の処理に移し、自動操舵による自動走行を実行する。
他方、非作業エリアXの設定がなかったと判定した場合も(ステップS140:No)、コントローラ150は、処理をステップS160に移して自動操舵による自動走行を実行する。
このように、本実施形態に係る苗移植機1は、圃場Fにおける作業エリアWを認識するエリア認識部150aを有し(図3)、自動走行を行うために、コントローラ150は、エリア認識部150aで認識した作業エリアWと、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)、すなわち全地球測位システムなどの位置情報取得装置120(図3)で取得した機体の位置座標とに基づき、操舵装置110(図3)を制御して機体の走行制御を行う。なお、図2において、符号Rは農道を示すとともに、表示画面33aの表領域域中、斜線を引いた部分は、作業エリアWとなる圃場Fに隣接する他の圃場を示す。
ここで、図3〜図5を参照しながら、苗移植機1の構成について、より具体的に説明する。図4および図5に示すように、苗移植機1は、それぞれ左右一対の前輪4および後輪5を備えて圃場Fを走行可能な走行車体2を備える。走行車体2は、作業者が着座可能な操縦座席28が設けられるとともに、後部には作業機である苗植付部50が昇降自在に連結されている。なお、苗植付部50は、走行車体2に対して着脱自在に構成される。
前輪4は、操舵輪であるハンドル32を含む操舵装置110(図3参照)によって左右に回動する転舵輪となっている。なお、以下の説明において、苗移植機1の前後、左右の方向基準は、操縦座席28に正当な姿勢で着座した作業者からみた方向とする。
また、前述のコントローラ150が、転舵輪である前輪4の舵角(切れ角)と、当該苗移植機1の位置情報とに基づき、操舵装置110の動作を制御することによって、圃場Fにおける苗移植機1の自動走行を支援する機能を有する。なお、舵角を前輪4の切れ角としているが、例えば、ハンドル32の操舵角を舵角として検出するようにしてもよい。また、苗移植機1の位置情報は、走行車体2に設けられた位置情報取得装置120により取得される。
図4に示すように、苗移植機1の走行車体2には、昇降装置である苗植付部昇降機構40を介して苗植付部50が昇降可能に取付けられている。走行車体2は、前述の前輪4とともに、左右一対の後輪5とが共に駆動する四輪駆動車としており、ハンドル32が回動されることによって転舵輪となる前輪4が操舵され、圃場Fや畦道などを走行する。
走行車体2は、車体の略中央に配置されたメインフレーム7と、このメインフレーム7の上に搭載された原動機であるエンジン10と、エンジン10の動力を前・後輪4,5と苗植付部50とに伝える動力伝達装置15とを備える。この苗移植機1では、動力源であるエンジン10には、ディーゼル機関やガソリン機関等の内燃機関が用いられ、発生した動力は、走行車体2を前進や後進させるために用いるのみでなく、苗植付部50を駆動させるためにも使用される。
また、動力伝達装置15は、エンジン10から伝達される駆動力を変速して出力する、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)と云われる油圧式無段変速装置16と、この油圧式無段変速装置16にエンジン10からの動力を伝える動力伝達部17とを有する。
また、動力伝達装置15は、複数のギアが組み合わされて構成されたトランスミッション18を有し、エンジン10からの駆動力は、動力伝達部17を介して油圧式無段変速装置16に伝達され、この油圧式無段変速装置16で変速した動力が、トランスミッション18に伝達される。トランスミッション18は、メインフレーム7の前部に取り付けられる。なお、メインフレーム7の先端にはバンパ700が設けられている。
トランスミッション18から前輪4および後輪5に伝達される動力は、一部が左右の前輪ファイナルケース13を介して前輪4に伝達可能であり、残りが左右の後輪ファイナルケース22を介して後輪5に伝達可能となっている。左右それぞれの前輪ファイナルケース13は、トランスミッション18の左右それぞれの側方に配設される。左右の前輪4は、車軸131を介して左右の前輪ファイナルケース13に連結される。かかる前輪ファイナルケース13は、ハンドル32の操舵操作に応じて駆動し、前輪4を転舵させることができる。
同様に、左右それぞれの後輪ファイナルケース22には、車軸220を介して後輪5が連結されている。一方、トランスミッション18からは、図示しない作業機駆動軸から走行車体2の後部に設けた植付クラッチ500を介して苗植付部50へ動力が伝達される。なお、植付クラッチ500は、コントローラ150に接続された植付クラッチモータ510によって動作する(図3)。
ところで、エンジン10は、走行車体2の左右方向における略中央で、且つ、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ26よりも上方に突出させた状態で配置される。フロアステップ26は、走行車体2の前部とエンジン10の後部との間に亘って設けられてメインフレーム7上に取り付けられており、その一部が格子状になることにより、靴に付いた泥を圃場Fに落とすことができる。また、フロアステップ26の後方には、後輪5のフェンダを兼ねたリアステップ27が設けられる。リアステップ27は、後方に向うに従って上方に向う方向に傾斜した傾斜面を有し、エンジン10の左右それぞれの側方に配置される。
また、エンジン10は、これらのフロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出しており、これらのステップ26,27から突出している部分には、エンジン10を覆うエンジンカバー11が配設される。
そして、エンジンカバー11の上部に、作業者が着席する操縦座席28が設置され、かかる操縦座席28の前方で、且つ走行車体2の前側中央部に操縦部30が設けられる。かかる操縦部30は、フロアステップ26の床面から上方に突出した状態で配置されており、フロアステップ26の前部側を左右に分断している。
操縦部30には、ステアリングポスト315が設けられ、このステアリングポスト315の上部には、作業者による操舵が可能なハンドル32が設けられるとともに、表示装置として機能する計器パネル33が設けられている。計器パネル33は、タッチパネル式の表示画面33a(図2参照)が設けられている。そして、画像表示が可能であるとともに、図3に示すように、直進サポート開始スイッチ83を含む各種スイッチ153などが設けられる。
また、操縦部30には、ステアリングポスト315の下側部分に着脱自在に取付けられた、後述するタブレット端末装置140を備えている。また、操縦部30の所定位置には、例えば、ランプやブザーなどの報知装置200が設けられる(図3)。かかる報知装置200を用いて、例えば自動走行のサポート状況や、各装置類の異常発生などを報知することができる。
さらに、操縦部30には、ステアリングポスト315の近傍に主変速レバー81と副変速レバー82とが設けられる。主変速レバー81は、操縦部30の右側に設けられ、副変速レバー82はハンドル32の下方に設けられている。
主変速レバー81は、走行車体2の前後進と走行出力を切替操作するレバーであり、作業者が操作することにより、油圧式無段変速装置16のトラニオン(不図示)の回動角度を調節して走行車体2の速度調節を行うことができる。
他方、副変速レバー82は、走行車体2の走行速度を規定する走行モードを、走行する場所に応じて低速モードと高速モードとに切替えるレバーである。ここで、低速モードとは、苗移植機1が圃場Fで植付作業を行うに相応しい速度範囲に規定される走行モードである。
また、高速モードとは、例えば、苗移植機1を畦道などで移動させたりする際の走行モードであり、低速モードのときよりも高速で走行することが可能となる。これらのモード切替えは、副変速レバー82の位置に応じて、トランスミッション18内に設けられた副変速機構により行われる。
また、操縦部30の前部には、開閉可能なフロントカバー31が設けられる。そして、このフロントカバー31の前端中央に位置するように、走行の指標となる指標部材としてのセンターマスコット353が取り付けられている。なお、図4では、便宜上、図示を省略しているが、走行車体2の前側左右には、図5に示すように、操縦部30との間に作業通路Qをあけて予備苗載置部400,400が設けられている。
また、本実施形態に係る苗移植機1は、位置情報取得装置120として、受信アンテナ122と接続したGNSSユニット121が走行車体2に配設されている。このGNSSユニット121は、受信アンテナ122で一定時間毎にGNSS座標を取得することにより、地球上での位置情報を所定間隔で取得することができる。また、本実施形態に係るGNSSユニット121には、図示しないが、ジャイロセンサや加速度センサを利用した慣性航法装置と、これらを制御する制御基板が内蔵されている。
GNSSユニット121は、図4および図5に示すように、前輪4の車軸131の直上方に位置するように、走行車体2の前端側に基端が連結されたアンテナフレーム124の頂部に取り付けられる。通常状態におけるアンテナフレーム124の高さは、標準的な一般男性がフロアステップ26上で起立しても頭部と干渉しない程度の高さに設定される。
アンテナフレーム124は、図4および図5に示すように、左右の下部フレーム124a,124aと、これらの上端に連結具124f,124fを介して連結され、途中にそれぞれ設けられた回動連結プレート125を介して後方へ所定角度だけ回動可能な左右の上部フレーム124b,124bとから構成される(図4の二点鎖線を参照)。回動連結プレート125,125間には、回動支軸124dが架設されており、この回動支軸124dを中心に上部フレーム124bは回動する。
そして、左右の上部フレーム124b,124bの上部間に、GNSSユニット121が配設される。なお、GNSSユニット121は、アルミブロック124g上に設けられる。すなわち、GNSSユニット121と鋼管製のアンテナフレーム124との間に非磁性体のアルミブロック124gを介在させることによって受信感度を向上させることが可能となるからである。なお、アルミブロック124gを用いる代わりに、アンテナフレーム124自体を非磁性体の材料で形成することもできる。
このように、アンテナフレーム124は、その上部の一部が後方へ所定角度だけ回動可能に構成されている。具体的には、上部フレーム124bの中途に設けた回動連結プレート125を介して、上部フレーム124bの上部側が回動して折り畳まれる。そのため、折り畳んだ状態であっても、作業者は操縦座席28に座して通常の作業を行うことができる。
また、上述してきた構成としたため、GNSSユニット121がエンジン10から比較的に遠い位置になり、エンジン10の振動による悪影響を受けるおそれがない。また、アンテナフレーム124を、操縦部30の保護フレームとして機能させることもできる。さらに、左右の下部フレーム124a,124aと左右の上部フレーム124b,124bとを、作業者の手摺として利用することも可能となり、利便性が向上する。
また、下部フレーム124a,124aの上端に設けられた連結具124f,124fとフロントカバー31との間には第1補強フレーム124eが掛け渡される。そして、第1補強フレーム124eの基端部と上部フレーム124bに設けた回動連結プレート125とは、第2補強フレーム124cにより連結される。
次に、苗植付部50およびその他の構成について説明する。図4に示すように、苗植付部50は、走行車体2の後部に、苗植付部昇降機構40を介して昇降可能に取付けられている。苗植付部昇降機構40は昇降リンク装置41を備えており、この昇降リンク装置41は、走行車体2の後部と苗植付部50とを連結させる平行リンク機構を備える。かかる平行リンク機構は、上リンク41aと下リンク41bとを有し、これら上下リンク41a,41bが、メインフレーム7の後部端に立設した背面視門型のリンクベースフレーム43に回動自在に連結される。そして、上下リンク41a,41bの他端側が苗植付部50に回転自在に連結されている。こうして、苗植付部50は走行車体2に昇降可能に連結されることになる。
また、苗植付部昇降機構40は、油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ44を有し、油圧昇降シリンダ44の伸縮動作によって、苗植付部50を昇降させることができる。油圧昇降シリンダ44は、前述した油圧式無段変速装置16により駆動され、苗植付部昇降機構40の昇降動作によって、苗植付部50を非作業位置まで上昇させたり、対地作業位置(植付位置)まで下降させたりすることができる。
苗植付部50は、苗を植え付ける範囲を、複数の区画、あるいは複数の列で植え付けることができる。例えば、苗を6つの区画で植付可能な、いわゆる6条植の苗植付部50とすることができる。
また、苗植付部50は、苗植付装置60と、苗載置台51及びフロート47(48,49)を備える。このうち、苗載置台51は、走行車体2の後部に複数条の苗を積載する苗載置部材として設けられており、走行車体2の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面52を有し、それぞれの苗載せ面52に土付きのマット状苗を載置することが可能である。
苗植付装置60は、苗を載置する苗載置台51の下部に配設され、苗を苗載置台51から取って圃場Fに植え付ける装置である。苗植付装置60は、苗載置台51の前面側に配設される植付支持フレーム55によって支持される。苗植付装置60は、植付伝動ケース64と植付体61とを備える。植付体61は、苗載置台51から苗を取って圃場Fに植え付けることができるように一対の植込杆62を有し、植付伝動ケース64に回転可能に連結されている。
植付伝動ケース64は、エンジン10から苗植付部50に伝達された動力を植付体61に供給可能に構成されている。また、植付体61は、苗載置台51から苗を取って圃場Fに植え付ける植込杆62と、この植込杆62を回転可能に支持し、植付伝動ケース64に対して回転可能に連結されるロータリケース63とを有する。ロータリケース63は、植付伝動ケース64から伝達された駆動力によって植込杆62を回転させる際に、回転速度を変化させながら回転させることのできる不等速伝動機構(不図示)を内装している。これにより、植付体61の回転時において、植込杆62は、ロータリケース63に対する回転角度によって回転速度が変化しながら回転する。
このように構成される苗植付装置60は、2条毎に1つずつ配設される。すなわち、6条植であれば、3つの苗植付装置60が設けられる。また、各植付伝動ケース64は、2条分の植付体61を回転可能に備える。つまり、1つの植付伝動ケース64には、2つのロータリケース63が、機体左右方向の両側に連結される。
また、フロート47は、走行車体2の移動と共に、圃場面上を滑走して整地するものであり、走行車体2の左右方向における苗植付部50の中央に位置するセンターフロート48と、左右方向における苗植付部50の両側に位置するサイドフロート49とを有する。
本実施形態におけるセンターフロート48には、圃場Fの状況に合わせて苗植付部50を上下へ昇降させる油圧感度機構として機能するフロートポテンショメータ154a(図3参照)が設けられる。かかるフロートポテンショメータ154aは、センターフロート48の上下動を検出する感度の幅を変更することができる。例えば、感度を敏感にすれば、センターフロート48の小さな上下動についても検出してコントローラ150へ検出信号を送信するようになる。一方、感度を鈍感にすれば、センターフロート48の小さな上下動については検出することなく、一定振幅以上の上下動のみ検出して検出信号をコントローラ150へ送信するようになる。
また、苗植付部50の下方側の位置における前側には、圃場Fの整地を行う複数の整地用ロータ(ここでは左右および中央の3つのロータ)67が設けられる。この整地用ロータ67は、後輪ファイナルケース22を介して伝達されるエンジン10からの出力によって回転可能に構成されるとともに、電動モータであるロータ用モータ165(図3参照)によって昇降可能に設けられている。
このように、複数の整地用ロータ67,67をロータ用モータ165により独立して駆動可能とすれば、例えば、機体の向きが左右いずれかにぶれると、ぶれた側の整地用ロータ67の回転を速めることで、機体の向きが真っ直ぐとなるように修正することができる。なお、複数の整地用ロータ67,67の駆動力としては、ロータ用モータ165からではなくエンジン10から受けるようにしてもよい。
また、苗植付部50の左右両側には、次の植付条に進行方向の目安になる線を形成する線引きマーカ68が備えられる。線引きマーカ68は、苗移植機1が圃場F内における直進前進時に、圃場Fの畦際で転回した後に直進前進する際の目印を圃場F上に線引きする。本実施形態に係る苗移植機1は、GNSSを利用して直進サポートを実行することができるため、線引きマーカ68を廃止しても構わない。
走行車体2における操縦座席28の後方には、施肥装置70が搭載される。施肥装置70は、肥料を貯留する左右の貯留ホッパ71と、貯留ホッパ71から供給される肥料を設定量ずつ繰り出す繰出し装置72と、繰出し装置72により繰り出される肥料を圃場Fに供給する施肥通路である施肥ホース74と、施肥ホース74に搬送風を供給するブロア73とを備える。このブロア73により、施肥ホース74内の肥料が苗植付部50側に移送される。さらに、施肥装置70は、施肥ホース74によって肥料が移送される施肥ガイド75と、施肥ホース74によって移送された肥料を苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む作溝器76とを有する。
ところで、本実施形態に係る苗移植機1は、電子制御によって自動走行のサポートを実行するとともに、各部を制御するコントローラ150を備えている。このコントローラ150は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶部、さらには入出力部が設けられ、これらは互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。
記憶部には、苗移植機1を制御するコンピュータプログラムが格納される。また、記憶部には、圃場Fや稲を刈り取った後に残された切株を示す画像データP(図2)なども種々記憶されている。また、画像データPのフォーマットとしては適宜設定することができるが、例えば、作業エリアWの名称および代表座標あるいは座標中央値、圃場Fが多角形の場合であれば頂点の座標情報、頂点間の任意の位置座標、圃場Fに設定された出入口の位置座標情報を含むようにしておくとよい。なお、記憶部に記憶される情報は、タブレット端末装置140の記憶部143に記憶するようにしてもよい。
CPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、図3に示すエリア認識部150a、往復走行回数算出部150b、作業開始位置設定部150c、機体沈降判定部150dとして機能する。また、エリア認識部150a、往復走行回数算出部150b、作業開始位置設定部150c、機体沈降判定部150dの少なくとも一つまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
図3に示すように、コントローラ150には、タブレット端末装置140をはじめ、各種アクチュエータ類や、各部の情報を取得するセンサ類等が通信可能に接続されている。なお、本実施形態においては、コントローラ150とタブレット端末装置140とは、所定の無線通信規格による無線接続としている。
コントローラ150には、アクチュエータ類として、例えば、エンジン10の吸気量を調節するスロットルモータ100、整地用ロータ67を昇降させるロータ用モータ165、植付クラッチ500を作動させる植付クラッチモータ510が接続される。なお、図示は省略したが、油圧式無段変速装置16のトラニオンの回動角度を変化させるトラニオン駆動モータもコントローラ150に接続される。
また、コントローラ150には、操縦部30に設けられた計器パネル33が接続されている。計器パネル33には、表示装置331として機能する表示画面33(図2参照)がタッチパネルにより構成されている。表示画面33aに表示される直進サポート開始スイッチ83や、その他の各種スイッチ153を操作することにより、各種装置の駆動および停止を行うことができる。
さらに、コントローラ150には、舵角センサ160、方位センサ170、姿勢センサ175、傾きセンサ180、着座センサ190、さらには、主変速レバー81や副変速レバー82の操作量を傾動角度で検出するレバーセンサなどを含む各種のセンサ199が接続される。コントローラ150は、各センサ160,170,175,180,190,199が検出した値を、記憶部のRAMに格納する。
舵角センサ160は、例えば、操舵輪であるハンドル32の回動角度を検出するセンサ、あるいは、ハンドル32の操作によって転舵輪である前輪4が操舵された際の切れ角を検出するセンサである。
方位センサ170は、機体の向きを検出するセンサであり、自動車のカーナビゲーションシステムなどに一般的に採用されている。コントローラ150は、かかる方位センサ170から取得した値に基いて、機体の実際の進行方向を導出することができる。
姿勢センサ175は、走行車体2の姿勢が、自動直進ラインに対してどの程度斜め姿勢になっているかを検出するもので、ジャイロセンサなどで構成される。
傾きセンサ180は、走行車体2の上下方向の傾き、すなわち前傾姿勢または後傾姿勢の程度を検出するもので、車体傾き検出装置として機能するもので、例えば、加速度センサなどで構成される。
前述したように、苗移植機1は、苗植付装置60を有する苗植付部50を備えるとともに、相対的に低速なギアから高速なギヤまでが含まれる変速ギアを備えるトランスミッション18を備えている。コントローラ150の機体沈降判定部150dは、傾きセンサ180の検出結果に基づいて、苗植付装置60が作動中における走行車体2の圃場Fに対する沈降状態を判定し、走行車体2が所定時間継続して沈降状態にあると判定した場合、トランスミッション18の選択ギアを低速ギアに切替えて苗植付装置60により植付けられる苗の植付株間距離を拡げるようにする。すなわち、苗植付装置60は、車速に応じた植付ピッチで動作しているが、植付ピッチは変わらない状態で実際の車速は機体沈降によって低下しているため、植付ピッチを変更するために、トランスミッション18の選択ギアを低速ギアに切替える。こうして、機体が沈降しながらも、あるていど整然と苗を植えることが可能となる。
すなわち、自動走行による作業では、圃場Fの状態によっては、機体の沈降を避けることが難しいが、沈降しながらでも苗植え付けが可能となる。したがって、自動走行による苗の植付作業後に補植作業が不要となる。また、圃場F内における苗の植付姿勢の乱れを可及的に抑えることも可能となる。なお、傾きセンサ180としては、走行車体2の上下方向の傾きのみならず、左右方向への傾きも検出可能としておけば、機体の左右の傾き状態から沈降傾向にあることを判定することも可能である。
また、着座センサ190は、ロードセルや感圧フィルムセンサなどにより構成されたセンサであり、作業者が操縦座席28に着座した際の圧力を検出することができる。
かかる構成により、着座センサ190が圧力を検出すると、コントローラ150は、作業者が着座したと判定することができる。逆に、着座センサ190に圧力が加わっていない場合は、コントローラ150は、作業者が着座していないと判定する。
また、苗移植機1は、操舵装置110と、位置情報取得装置120を構成するGNSSユニット121および受信アンテナ122と、情報処理端末装置であるタブレット端末装置140とを備えており、これらがコントローラ150に接続されている。
操舵装置110は、ハンドル32と、かかるハンドル32の軸体と連動連結する伝動機構112を備えるとともに、任意の回転力をハンドル32の軸体に付与する直進サポート機構310を備えており、コントローラ150による自動操舵を可能にしている。伝動機構112には、ハンドル32を回動させるステアリングモータが含まれる。コントローラ150は、例えば、直進サポート開始スイッチ83が操作されると、GNSSユニット121が取得した位置情報に基づき、直進サポート機構310を介して転舵輪(前輪4)を自動操舵することにより、走行車体2を直進方向に維持することができる。
GNSSユニット121は、GNSSで使用される人工衛星からの信号を受信する受信アンテナ122(図4参照)を有し、地球上における苗移植機1の位置情報(座標情報)を取得し、取得した位置情報をコントローラ150に伝達する。
かかるGNSSユニット121で取得した機体の位置データと、コントローラ150の記憶部に記憶した圃場Fの地図データに基づく作業エリアWとから、苗移植機1は、作業エリアWから外へはみ出ることのないように走行しながら苗の植付行を行う。また、作業エリアWに非作業エリアXが設定されていれば、かかる非作業エリアXには苗の植付けを行わないようにコントローラ150により制御される。
なお、GNSSユニット121は、苗移植機1の実速度を導出することもできる。すなわち、一定時間内における機体の移動量から実走行速度を逐次算出することができるため、コントローラ150は、例えば走行車輪(前輪4,後輪5)がスリップなどした場合でも、後輪5の回転量と関係なく、苗移植機1の実車速を取得することができる。
ところで、本実施形態においては、作業エリアWに非作業エリアXを設定する際に、作業は、苗移植機1が走行するうえで、非作業エリアXをどのような程度で回避するのかを規定する回避レベルを設定することができる。図6は、作業エリアW内に設定される非作業エリアXに対する回避レベルを規定するテーブルであり、かかるテーブルは、コントローラ150の記憶部に記憶されている。
図6に示すように、補に実施形態では、回避レベルを0〜3までに規定している。例えば、図2において、電信柱などのような人工の構築物などのような障害物Bが存在するエリアを非作業エリアXとした場合、ここには回避レベル2が付与される。回避レベル2は、植付作業は行わず、かつ接近することも不可とされる。また、図2において、樹木などのような自然物などの障害物B1が存在するエリアを非作業エリアXとした場合、ここには回避レベル1が付与される。回避レベル1は、植付作業は行わないが、障害物B1と干渉することがない距離までは接近は許可されている。また、図2において、通行の障害にはならないが苗の育成には不適とされるような窪地などの不適地B2が存在するエリアを非作業エリアXとした場合、ここには回避レベル0が付与される。回避レベル0は、植付作業は行わないが、この非作業エリアXを通過することは許可される。
また、図3に示すように、コントローラ150には、カメラ130が接続されている。カメラ130は、走行車体2に設けたアンテナフレーム124の上部フレーム124bの上部に、左右一対で設けられる(図4および図5参照)。かかるカメラ130で撮像されたデータから、コントローラ150は、例えば、自車両と圃場周縁部までの距離を導出して、ひいては作業エリアWからはみ出さずに直進走行を維持させることができる。また、かかるカメラ130により、前方に存在する障害物B,B1や不適地B2、そして畦などを検出することもできる。
また、タブレット端末装置140は、内蔵される端末通信部144とコントローラ150に接続される車体通信部151との間で無線接続可能に構成される。そして、タブレット端末装置140は、制御部141と、情報を表示する表示部および各種の入力操作を行う入力操作部とを兼用するタッチパネル142と、情報を記憶する記憶部143とを備える。この記憶部143には、一または複数の圃場Fの地図情報を含む画像データや、苗移植機1の制御に必要な各種プログラムや各種データが記憶されているが、これらは、コントローラ150の記憶部に記憶されていてもよい。
タブレット端末装置140は、所謂マップ機能を有しており、計器パネル33に設けた表示画面33aの表示内容をそのまま表示可能とすることもできる。
フロートポテンショメータ154aは、圃場Fの凹凸に追従して上下動するセンターフロート48に設けられており、前述したように油圧感度機構として機能し、圃場Fの凹凸に応じて苗植付部50を昇降させることができる。
コントローラ150は、車体通信部151を介して無人飛行体であるドローン20と通信可能とすることができる。ドローン20には、カメラ136を搭載しておき、かかるカメラ136により空撮して得た画像データを、圃場Fの画像データとして利用することもできる。
なお、コントローラ150は、車体通信部151を介してインターネットなどのネットワークと接続可能にしておくこともできる。その場合、画像データPなどを含む必要な情報を所定のサーバに格納しておき、苗移植機1を圃場Fの近傍で起動させた際に、自動的にダウンロードすることもできる。必要な情報としては、例えば、前年度の作業履歴情報などがある。
このように、必要なデータをサーバに蓄積することで、データ保護が可能になるとともに、コストダウンを図ることができる。なお、この場合、ダウンロードしたデータなどは作業完了後には消失させることで必要なメモリ領域を常時確保できるようにすることが好ましい。
本実施形態に係る苗移植機1は、上述してきた構成を有し、コントローラ150によって、自動走行しながら苗の植付作業を行うことができる。以下、自動走行制御処理の制御手順について具体的に説明する。図7A、図7B、および図8は、苗移植機1の自動走行制御処理の一例を示すフローチャートである。
図7Aに示すように、コントローラ150は、先ず、着座センサ190の検出結果を参照して作業者が着座しているか否かを判定する(ステップS210)。作業者が着座していることを検出しなければ(ステップS210:No)、自動走行制御は実行されない。そして、作業者が着座したことを検出すれば(ステップS210:Yes)、コントローラ150は、計器パネル33の表示画面33aに、予め作業者によって設定された作業エリアW(図2参照)を表示する(ステップS220)。
次いで、コントローラ150は、自動走行制御を実行する。本実施形態では、自動走行制御を直進サポート開始スイッチ83の操作をトリガーとして開始するようにしている。直進サポート開始スイッチ83が操作されると、コントローラ150は、エリア認識部150aで認識した作業エリアWと、位置情報取得装置120で取得した機体の位置座標とに基づき、直進サポート機構310を備える操舵装置110を制御して機体の走行制御を行う。このとき、作業エリアW内に非作業エリアXが設定されていた場合、非作業エリアXに付された回避レベル(図6参照)に応じた自動走行による苗植付作業がなされる。
コントローラ150は、自動運転制御の終了指示があるか否かを判定し(ステップS240)、自動運転制御の終了指示が検出されるまでは自動運転を継続する(ステップS240:No)。他方、自動運転制御がなされている中で、自動運転制御の終了指示が検出されると(ステップS240:Yes)、コントローラ150は、本自動走行制御処理を終了する。ここで、自動運転制御の終了は、例えば、直進サポート開始スイッチ83が再度操作された場合に自動運転制御の終了指示がなされるようにすることができる。
また、自動走行制御をする場合、上述してきた例では、非作業エリアXは作業エリアWの中に予めデータとして設定するようにしていた。しかし、非作業エリアXを、実際の圃場F内において、所定の回避ポール(不図示)を立設して設定することができる。このとき、回避ポールには、所定の信号発信機を設け、短距離無線の規格に準じた無線通信によって、苗移植機1がポールの位置およびこの回避ポールで区画されたエリア内に設定された回避レベルを自動的に認識するようにしている。
かかる回避ポールを用いた場合の処理を、図7Bを参照して説明する。なお、図7Bにおいて、ステップS220までは図7Aと同じ処理であるため説明は省略する。図7Bに示すように、自動走行が開始されると(ステップS250)、コントローラ150は、回避ポールを検出したか否かを判定する(ステップS260)。回避ポールを検出すると(ステップS260:Yes)、コントローラ150は、回避レベルに応じて走行ルートや苗植付作業の実行態様を変更する。例えば、回避レベルが1や2の場合は、回避ポールを避けるルートに自動走行経路を変更する(ステップS270)。その後、あるいはステップS260で回避ポールが検出されない場合(ステップS260:No)、コントローラ150は処理をステップS280に移し、自動走行制御を終えるか否かを判定する。すなわち、直進サポート開始スイッチ83が操作されるなどの自動運転制御の終了指示がなされたか否かを判定する。
ステップS280において、自動運転制御の終了指示を検出されなかった場合(ステップS280:No)、コントローラ150は、処理をステップS260に戻す一方、自動運転制御の終了指示を検出された場合(ステップS280:Yes)、本自動走行制御を終了する。
また、本苗移植機1は、前述したように、コントローラ150の機体沈降判定部150dが、機体が沈降状態にあると判定すると、植付株間距離を広げるような制御を行うようにしている。かかる植付株間距離変更処理について、図8を参照しながら、より具体的に説明する。
図8に示すように、コントローラ150は、駆動輪(前輪4および後輪5)の出力と位置情報の関係は適当か否かを判定する(ステップS310)。すなわち、駆動輪の出力から推定される移動距離と、位置情報取得装置120で取得した自車両位置の情報から導出される実移動距離とがマッチしているか否かを判定する。
駆動輪の出力と位置情報の関係が適当であると判定した場合(ステップS310:Yes)、コントローラ150は処理をステップS340に移す一方、駆動輪の出力と位置情報の関係が適当ではないと判定した場合(ステップS310:No)、コントローラ150は、現時点でのトランスミッション(T/M)18において選択されているギアを記憶部のRAMに記憶させる(ステップS320)。
すなわち、駆動輪の出力と位置情報の関係が適当ではない状態とは、駆動輪の回転数に見合った距離の移動がない状態が所定時間継続している状態を指し、その場合、コントローラ150は、ぬかるみなどに駆動輪が嵌って沈降状態にあると判断できる。このように判断すると、コントローラ150は、トランスミッション(T/M)18のギアを低速ギアに変更する(ステップS330)。このように、低速ギアに切替えることで車速を低下させることにより、植付けられる苗の植付株間距離がこれまでよりも拡がるように苗植付装置60の駆動ピッチも低下する。したがって、機体が沈降しながらも苗を植えることが可能となる。
そして、駆動輪の出力と位置情報の関係が適当ではないと判定した場合、並びにステップS330の処理を終えた後は、コントローラ150は、駆動輪(前輪4および後輪5)の出力と位置情報の関係は適当か否かを判定する(ステップS340)。適当であると判定すると(ステップS340:Yes)、コントローラ150は、トランスミッション18の変速ギアを、低速ギアに変更する前のギア、すなわち、ステップS320でRAMに記憶したギアに戻す(ステップS350)。
ところで、図8に示した処理では、コントローラ150の機体沈降判定部150dは、機体の沈降を、駆動輪(前輪4および後輪5)の出力と自車両の位置情報との関係によって判断するようにした。しかし、例えば、走行車体2に設けた傾きセンサ180を利用して、機体が沈降状態にあるか否かを判定することもできる。
この場合、図8におけるステップS340の判定は、傾きセンサ180による検出結果により、機体が安定した状態にあるか否かをコントローラ150の機体沈降判定部150dで判定することになる。すなわち、コントローラ150は、傾きセンサ180の検出結果に基づいて、走行車体2の姿勢が安定したと判定した場合、トランスミッション18の変速ギアを、低速ギアに切替える前の他のギアに切替える。
また、本実施形態にかかる苗移植機1は、図3に示すように、コントローラ150が往復走行回数算出部150bと作業開始位置設定部150cとを備えている。往復走行回数算出部150bは、作業エリアWに基づいて、作業開始から作業終了までに作業に必要な圃場F内における往復走行回数を算出することができる。作業開始位置設定部150cは、往復走行回数算出部150bにより算出した往復走行回数に基づいて、作業開始位置を設定することができる。すなわち、圃場Fに設定された作業エリアWにおいて苗移植機1が往復走行可能な回数を求め、この往復走行可能回数が奇数か偶数かと、圃場Fに設けられた圃場出入口F1の位置とに応じて作業開始位置を設定するのである。
このとき、圃場出入口F1が圃場Fの長辺側に存在する場合と、短辺側に存在する場合とで条件を分けて考慮することが好ましい。このように、本実施形態によれば、例えば、圃場出入口F1をそのまま植付開始位置に設定するか、あるいは、圃場端から枕地分を考慮して植付開始位置に設定するかを効率的に設定することができる。
上述してきた実施形態より、以下の苗移植機1が実現する。
(1)操舵装置110を備えるとともに、後部に苗植付部50を連結可能な走行車体2と、走行車体2の座標位置を取得可能な位置情報取得装置120と、圃場Fにおける作業エリアWを認識するエリア認識部150aを有し、当該エリア認識部150aで認識した作業エリアWと位置情報取得装置120で取得した走行車体2の位置座標とに基づき、操舵装置110を制御して走行車体2の走行制御を行うコントローラ150とを備え、エリア認識部150aは、圃場Fにおいて作物を収穫した後に残された切株を示す画像データPに基づいて圃場Fにおける作業エリアWを認識する苗移植機1。
(2)上記(1)において、作業エリアWを表示するとともに、当該作業エリアW内における非作業エリアXを設定可能な表示装置331を備える苗移植機1。
(3)上記(2)において、表示装置331により設定される非作業エリアXには、走行車体2が非作業エリアXへの接近を回避する接近回避レベルが、非作業エリアXと走行車体2との間の距離に応じて設定されている苗移植機1。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、コントローラ150は、作業エリアWに基づいて、作業開始から作業終了までに作業に必要な圃場F内における往復走行回数を算出する往復走行回数算出部150bと、往復走行回数算出部150bにより算出した往復走行回数に基づいて、作業開始位置を設定する作業開始位置設定部150cとを有する苗移植機1。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて苗植付部50は、圃場Fに苗を植え付ける苗植付装置60を備えるとともに、走行車体2の傾きを検出する傾きセンサ180と、低速ギアを含む複数の変速ギアを備えるトランスミッション18とをさらに備え、コントローラ150は、傾きセンサ180による検出結果に基づいて、苗植付装置60が作動中における走行車体2の圃場Fに対する沈降状態を判定する機体沈降判定部150dを有し、機体沈降判定部150dが、走行車体2が所定時間継続して沈降状態にあると判定した場合、トランスミッション18の選択ギアを低速ギアに切替える苗移植機1。
(6)上記(5)において、コントローラ150は、傾きセンサ180による検出結果に基づいて、機体沈降判定部150dが走行車体2の姿勢が安定したと判定した場合、変速ギアを、低速ギアに切替える前の他のギアに切替える苗移植機1。
なお、上述してきた実施形態はあくまで一例であって、例えば、走行車体2や苗植付部50の構成は自由に設定できる。図9は、変形例に係る苗移植機の操縦部の説明図である。なお、図9においては、上述してきた構成要素と同一のものには同一符号を用いた。
図9に示すように、変形例に係る苗移植機1では、操縦部30に設けた計器パネル33から、表示画面33aをモニタ部となる表示装置331と操作部とに分離し、表示装置331についてはセンターマスコット353に接近させて配置している。かかる構成とすることにより、作業者の焦点の移動が小さくなり、モニタの視認性と圃場Fの視認性とを両立させることができる。
また、図示はしないが、計器パネル33の位置を変更自在とすることもできる。例えば、利用時にはフロントカバー31に対して中央に位置させ、不要時には、作業者の前方視界を邪魔することが無いようにサイドへ移動可能とするものである。また、計器パネル33については、例えばステアリングポスト315の上部に所定のパネル配置面を設け、かかるパネル配置面に埋設することができる。この場合、作業者の前方視界を妨げないように、庇などは設けないことが好ましい。
また、参考例として、以下のような作業エリアWの認識手法がある。
例えば、作業エリアWを認識するために予め取得する画像データとしては、実施形態で示したような稲の刈りいれ作業後の切株が残された圃場Fの画像データではなく、圃場Fの荒起こし直後、あるいは代掻き直後の画像データを用いるものである。荒起こしや代掻きの直後の圃場Fであれば、田植直前のような時期と比べて、圃場面がはっきりと茶色に表れるため画像認識が容易であり、なおかつ圃場Fの状態も比較的新しいので信頼度が高い。また、作業エリアWの認識精度をより高めるために、例えば、代掻き直後の画像データ、荒起こし直後の画像データ、稲刈り直後の画像データ、そして田植後1か月の画像データというように、順次遡って利用することもできる。その場合、代掻き直後の画像データ、荒起こし直後の画像データには他よりも重み付けすることが好ましい。
また、作業エリアWを認識するために予め取得する画像データとしては、例えば、過去の作業実績をアイコン化して配置した地図データを表示画面33aに表示し、アイコンを選択するだけで作業エリアWを設定することもできる。圃場Fが合筆、文筆などされて変化している場合は、改めて実走行して作業実績に変わるデータを取得するとよい。なお、実走行した経路が過去の実績である走行経路と近似している場合は、平均化したデータを用いることもできる。
また、作業エリアWを取得する際に、例えば、地図データを表示画面33aに表示して作業エリア情報を手入力する場合、それだけでは信頼度が低くなることも考えられる。そこで、カメラ136を搭載したドローン20を利用して得た実際の位置情報に置き換えるなどの補正を行うことができる。また、ドローン20に代えて、実際に苗移植機1を走行させ、例えば実走行時に問題となり易い畔際近傍における実際の位置情報を取得して補正することもできる。その場合、苗移植機1には、プッシュセンサ、レベラ、カメラなどの機械的なセンサなどを搭載しておくとよい。
また、圃場Fを苗の植え付け前に、実際に走行しながら、非作業エリアXの設定を含めて作業エリアWを設定し、ティーチング作業において、畦際に沿って走行して閉鎖領域を作ることによって、これを作業エリアWと認識させることができる。
上述してきた実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述してきた実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、表示要素などのスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質など)は、適宜に変更して実施することができる。