以下、本発明を台車に積載した荷を牽引する牽引車に具体化した一実施形態を図1〜図10にしたがって説明する。
図1に示すように、搬送車としての牽引車10の車体11は、車体11の前側に設けられたフロントフレーム12と、車体11の後側に設けられたリアフレーム13とからなる。リアフレーム13には、図示しない牽引機構が設けられている。車体11の前後方向のほぼ中央には、立席タイプの運転席14が設けられている。また、車体11の前側下部中央には、操舵輪となる前輪16(図2等に示す)が設けられている。車体11の後部左右両側には、それぞれ1個の駆動輪17が設けられている。また、運転席14の後方に配置されたリアフレーム13には、図示しないバッテリーを収容する収容室の上方を覆うバッテリーフード15が開閉可能に設けられている。そして、車体11には、バッテリーを駆動源とする走行用モータ(図示せず)が搭載されており、駆動輪17は走行用モータから駆動力が付与される。すなわち、本実施形態の牽引車10は、バッテリー式(電気式)の車両とされている。
運転席14には、乗車した作業者(運転者)がハンドル操作を行うための操舵ハンドルとしてのバーハンドル18が設けられている。バーハンドル18は、ステアリングコラム19に内装された図示しないステアリングシャフトを介してアクスルシャフト20(図2に示す)に連結されている。これにより、牽引車10は、運転者がバーハンドル18をハンドル操作(左右方向への回転操作)することにより前輪16を操舵し、手動走行モード(有人運転モード)で手動走行させることができるようになっている。 また、牽引車10は、有人運転モードで走行する他に、無人運転モード(無人走行モード)でも走行可能に構成されている。無人運転モード時には、図示しない制御装置によって走行用モータ及び前輪16を操舵する操舵用モータ(図示せず)が駆動制御される。
無人運転モードには、リモコン(リモートコントローラ)22によって制御装置に指令を送るリモコン操作モードと、リアフレーム13に設けられた運転モード設定装置23によって制御装置に指令を送るモードとがある。リモコン22には、寸動用ボタン22a、発進ボタン22b、停止位置設定ボタン22cが設けられている。運転モード設定装置23には、停止位置を指定する複数の停止位置指定ボタン23aと、発進を指令する発進ボタン23bとが設けられている。そして、停止位置を停止位置指定ボタン23aで指定した後、発進ボタン23bを操作すると、牽引車10が発進して指定された停止位置まで走行するようになっている。リアフレーム13には、リモコン22からの無線指令を受信する受信部24が設けられており、牽引車10は、リモコン22の操作により、寸動動作、停止位置を設定した走行指令が可能に構成されている。
牽引車10は、無人運転モードで走行する際は、牽引車10の走行経路に敷設されたガイド部材としてのガイドテープGT(図1に図示)の位置をガイドセンサで検出し、その検出信号に基づいて制御装置が操舵用モータを制御して前輪16が操舵される。この実施形態では、ガイドテープGTとして磁気テープが使用されている。
図2に示すように、前輪16は、1つのタイヤからなるシングルタイヤ仕様に構成されるとともに、車軸21に片持ち状態で支持されるようになっている。前輪16の片側には、ガイドセンサ25を使用位置と退避位置とに移動させるリトラクタブル装置26が配設されている。
リトラクタブル装置26は、前輪16の片側に配設される支持ブラケット27に対して平行四節リンク28が支持されている。図3及び図6に示すように、平行四節リンク28は、上側リンク部材29の両軸30,31を結ぶ直線及び下側リンク部材32の両軸33,34を結ぶ直線が前後方向に延び、かつ上側リンク部材29の後側の軸31及び下側リンク部材32の後側の軸34が固定軸となるように構成されている。この実施形態においては、上下方向に延びるように設けられた支持ブラケット27が、平行四節リンク28の固定リンクを構成している。上側リンク部材29及び下側リンク部材32は、それぞれ軸30,31及び軸33,34に対してブッシュ35及び樹脂製のワッシャ36を介して回動可能に支持されている。
上側リンク部材29は、軸30,31の両端部に支持された一組のリンク部材29a,29bと、両リンク部材29a,29bを上側において連結する連結部29cで構成されている。即ち、上側リンク部材29は、前方から見た形状が横に延びる部分と、その両端から下方に延びる部分とによってほぼ逆U字状になるように構成されている。
下側リンク部材32は、軸33,34の両端部に支持された一組のリンク部材32a,32bによって構成されている。リンク部材32a,32bは形状及び大きさが同じに形成されている。一方、リンク部材29a,29bはそれぞれ異なる形状に形成されている。図3に示すように、リトラクタブル装置26の左側に位置するリンク部材29aは、リンク部材32aと平行に延びるように形成された部分と、その前端からV字状を成すように上側に延びる部分とで形成されている。上側リンク部材29の前記V字状を成す部分は、ワイヤ37との干渉を避けるための切り欠きを構成する。
また、図4及び図5に示すように、リトラクタブル装置26の右側に位置するリンク部材29bは、後側部分がリンク部材32bの後側ほぼ1/2の部分と平行に延びるように形成された部分と、その前端から上側に延びた後前側に延び、さらに下方へ延びてその下端において軸33に支持される部分とで形成されている。そして、両リンク部材29a,29bは前側上部において連結部29cによって連結されている。
上側リンク部材29は、リンク部材29aの中間位置に連結される索としてのワイヤ37を介して操作部としての操作レバー38(図1及び図2に図示)と連結され、操作レバー38の操作により回動可能に構成されている。ワイヤ37は、リンク部材29aの両軸30,31間の中央より前側においてリンク部材29aに連結されている。ワイヤ37は、その先端に固定された逆U字状の連結具39、ピン40、樹脂製のワッシャ41及び抜け止めピン42を介してリンク部材29aに連結されている。
図1に示すように、操作レバー38は、フロントフレーム12の上部で、前方に向かってステアリングコラム19より左側に設けられている。即ち、操作レバー38は、前輪16に対して右側に取り付けられたリトラクタブル装置26に対応してステアリングコラム19より右側ではなく、反対側の左側に設けられている。そして、操作レバー38を操作することにより、ワイヤ37を介して平行四節リンク28が回動されて、ガイドセンサ25が退避位置と作用位置とに移動されるようになっている。
図3、図4及び図6に示すように、支持ブラケット27には、軸31,34の中間と対応する位置から、平行四節リンク28の最下動位置を規制するストッパ部43aが突設されており、ストッパ部43aは水平に延びるように屈曲形成された部分を前端上部に備えている。一方、連結部29cにはストッパ部43aの上方まで延びる支持片29dが一体形成され、支持片29dには、ストッパ部43aと当接して平行四節リンク28の最下動位置を規制する規制ボルト43bが螺着されている。規制ボルト43bの突出量を調整することにより、平行四節リンク28の最下動位置の調整が可能になっている。
また、図4に示すように、リンク部材29bの内側には平行四節リンク28が最下動位置に移動されたことを検知するための被検知部44が固定されている。一方、ストッパ部43aを構成する部材には、被検知部44の所定位置を検知して平行四節リンク28が最下動位置に移動されたことを検知するセンサ45が固定されている。
図3及び図6に示すように、支持ブラケット27の上部には、平行四節リンク28の最上動位置を規制するストッパ部46aが突設されており、ストッパ部46aは前側に向かって上昇傾斜して延びるように屈曲形成された部分を備えている。一方、連結部29cにはストッパ部46aと当接して平行四節リンク28の最上動位置を規制する規制ボルト46bが螺着されている。規制ボルト46bの突出量を調整することにより、平行四節リンク28の最上動位置の調整が可能になっている。
また、支持ブラケット27の上部には、ワイヤ37の移動をガイドするワイヤガイド47(図5に図示)を取り付ける取り付け部48が突設され、取り付け部48にワイヤガイド47が取り付けられている。
図3及び図7等に示すように、下側リンク部材32の軸33は筒状に形成され、軸33及びリンク部材32a,32bを貫通するように支持ロッド49が設けられている。支持ロッド49はブッシュ35を介して軸33に摺動可能に支持されるとともに、ワッシャ36の外側に取り付けられる抜け止めピン50により位置決めされた状態で取り付けられている。図7に示すように、支持ロッド49には、支持ロッド49の位置を前輪16がシングルタイヤ仕様の場合と、ダブルタイヤ仕様の場合とにそれぞれ適した状態で位置決めするため、2組の挿通孔51a,51bが形成されている。図7は、前輪16がシングルタイヤ仕様の場合を示している。
図7に示すように、支持ロッド49にはセンサ支持ブラケット52が一体回転可能に支持されている。センサ支持ブラケット52は平板の両端が屈曲された形状で、支持ロッド49のほぼ全長にわたって平行に延びるとともに、両端の屈曲部を支持ロッド49に貫通され、ワッシャ36及び抜け止めピン50により位置決めされた状態で支持されている。図4に示すように、センサ支持ブラケット52はその上部に掛け止め用のボルト53が螺合されるとともに、ボルト53の軸に形成された孔と、支持ブラケット27の下部との間に張設された引っ張りバネ54により上部が後方へ付勢されている。
また、図3及び図7に示すように、平行四節リンク28の軸30,33のリンク部材29a,32a側にはブラケット55が固定されるとともに、ブラケット55にはストッパ用のボルト56が螺合されている。そして、センサ支持ブラケット52はボルト56と当接することにより、回動が規制されてほぼ垂直状態に保持されるようになっている。
図5及び図8に示すように、センサ支持ブラケット52には、前方に向かって右側寄りにガイドセンサ25がセンサ支持ブラケット52と平行に、ネジ57により固定されている。また、左側寄りには図8に示すように、L字状の支持プレート58がボルト59により固定され、支持プレート58の前輪16より左側において後方に向かって延びる部分にアドレスセンサ60がネジ57により固定されている。なお、アドレスセンサ60は、牽引車10が走行経路に沿って走行する際に停止すべき位置を示す表示部を検出するためのセンサである。
ガイドセンサ25及びアドレスセンサ60に電源を供給するための電源や、無人運転モード時に、ガイドセンサ25及びアドレスセンサ60の検出信号に基づいて走行用モータや操舵用モータを制御する制御装置は、フロントフレーム12のリトラクタブル装置26より上方の位置に配置されている。ガイドセンサ25及びアドレスセンサ60に電源を供給するための配線や検出信号を制御装置に送るための配線としてのワイヤハーネス61は、平行四節リンク28が回動される際に、平行四節リンク28と干渉しない位置に配置されている。また、ワイヤハーネス61は、平行四節リンク28の回動に伴って一部が平行四節リンク28と共に移動し、かつ移動の際に無理な力がワイヤハーネス61に加わらないように配設されている。
具体的には、図5に示すように、ワイヤハーネス61は、ガイドセンサ25用のワイヤハーネス61aと、アドレスセンサ60用のワイヤハーネス61bと、両ワイヤハーネス61a,61bが一体化された一体化部61cとで構成されている。そして、一体化部61cは、センサ支持ブラケット52の上方まで延びるように設けられ、センサ支持ブラケット52の上方からは、ガイドセンサ25用のワイヤハーネス61aと、アドレスセンサ60用のワイヤハーネス61bとに分離されて配線されている。
図3及び図4等に示すように、上側リンク部材29を構成する右側のリンク部材29bには、ワイヤハーネス支持用の支持片62が一体形成されている。支持片62は、斜め前方上側に向かって延びるように形成されるとともに、支持片62にはワイヤハーネス挟持用のクリップ63が固定されている。そして、ワイヤハーネス61の一体化部61cの端部が支持片62にクリップ63を介して固定されている。クリップ63は、一体化部61cがリンク部材29bの外側において後方上側から前方下側に向かって斜めに延びるように取り付けられている。
図5に示すように、支持ブラケット27は、軸31より後方かつ上方に、支持片64が後方に向かって延びるように一体に形成されている。一体化部61cの中間部は、支持片64に固定されたクリップ65により、水平に延びるように挟持されている。そして、一体化部61cは、クリップ65で挟持された箇所より後方で円弧を描きながら上方に延びるように配置されている。この構成により、一体化部61cは、支持ブラケット27より後方において、上方から支持片64の近くまで延びるとともに、支持片64の近くで湾曲して水平に延びる状態になり、支持片62の近くで湾曲して前方下側に向かって斜めに延びるように配置される。
図5に示すように、センサ支持ブラケット52の前面上部には、ワイヤハーネス61aの端部に連結されたコネクタ66が固定されている。ガイドセンサ25の配線67に接続されたコネクタ68は、コネクタ66に接続されている。
図8に示すように、支持プレート58の側面上部には、コネクタ69が固定されている。コネクタ69にはワイヤハーネス61bの端部に連結されたコネクタ70が接続されている。なお、支持プレート58の屈曲部付近には、ワイヤハーネス61bの中間部を支持するクリップ(図示せず)が固定され、ワイヤハーネス61bは、クリップにより中間部が支持されることにより、センサ支持ブラケット52及び支持プレート58に沿って延びる状態に保持されている。アドレスセンサ60の配線71に接続されたコネクタ72は、コネクタ69に接続されている。
なお、図1に示すように、車体11の前側には安全バンパー73が設けられ、リトラクタブル装置26は、安全バンパー73の後方で安全バンパー73と干渉しないように動作可能に配設されている。
次に前記のように構成された牽引車10の作用を説明する。
牽引車10は、有人運転モードと無人運転モードのいずれかで走行する。有人運転モードと無人運転モードの切り替え(選択)は、リモコン22あるいは運転モード設定装置23の操作により行われる。アドレスセンサ60を備えた牽引車10は、図9に示すように、複数(図9では12箇所)の停止位置STが設けられた走行経路74に沿って走行するとともに、指定されたアドレスの停止位置STで停止する無人走行(多定点停止)に適している。
作業者は、牽引車10を無人走行させる場合は、操作レバー38を、ワイヤ37を弛める方向に操作して、リトラクタブル装置26を作用位置、即ちガイドセンサ25がガイドテープGTを検出可能、かつアドレスセンサ60が図示しないアドレス表示部を検出可能な最下動位置に配置させる。操作レバー38がワイヤ37を弛める方向に操作されると、ワイヤ37が弛んで、平行四節リンク28は自重やガイドセンサ25及びアドレスセンサ60等の重量により下方へ回動される。そして、図3及び図4に示すように、平行四節リンク28は、ストッパ部43aに規制ボルト43bが当接してその最下動位置に保持される状態となる。この状態では、図4に示すように、センサ45が被検知部44を検知して、リトラクタブル装置26が作用位置に配置された検出信号が制御装置に出力される。
制御装置は、無人運転モードが選択されるとともに、停止すべき停止位置STのアドレスが設定されて、発進ボタンが押されると、リトラクタブル装置26が作用位置に配置されていることをセンサ45の検出信号で確認した後、無人運転モードで走行用モータ及び操舵用モータの制御を開始する。
ガイドセンサ25はガイドテープGTを検出するとともに、ガイドテープGTと前輪16位置とのずれ量を電気信号に変換して制御装置に出力する。制御装置は、入力したガイドセンサ25の出力信号に基づいて操舵用モータを制御して、牽引車10が所定の走行経路に沿って走行するように前輪16を操舵する。制御装置は、走行用モータを直線路では一定速度で、カーブ部分ではそれより低速で走行するように制御して、牽引車10を所定の走行経路に沿って所定速度で自動走行させる。
走行経路には、牽引車10がガイドテープGTの位置によって設定される所定の走行経路に沿って走行している状態で、アドレスセンサ60によって検出可能な位置にアドレス表示部が設けられているため、アドレスセンサ60はアドレス表示部を検出してそのアドレス信号を制御装置に出力する。制御装置は、アドレスセンサ60から出力されたアドレス表示部のアドレスが予め設定された停止位置のアドレスの場合、牽引車10をその停止位置で停止させるように走行用モータを制御する。したがって、牽引車10は、予め設定された停止位置で自動的に停止される。
有人運転モードで運転する場合は、作業者はリモコン22あるいは運転モード設定装置23を有人運転モードに切り替えるとともに、操作レバー38を、ワイヤ37を引っ張る方向に操作して、リトラクタブル装置26を退避位置(上動位置)に移動させる。ワイヤ37が引っ張られると、上側リンク部材29及び下側リンク部材32は、軸31,34を中心に上方に回動される。そして、図6に示すように、上側リンク部材29に設けられた規制ボルト46bがストッパ部46aに当接すると、平行四節リンク28は回動が規制される。作業者は、平行四節リンク28の上動が規制された時に操作レバー38の操作を中止する。操作レバー38の操作を中止すると、ワイヤ37が若干緩んで規制ボルト46bがストッパ部46aから離れた位置で平行四節リンク28が保持される。そして、作業者は運転席14に乗車して牽引車10を手動走行させる。有人運転モード(手動走行モード)では、制御装置は、作業者(運転者)によるアクセル操作の操作量に応じた速度で走行用モータを制御するため、牽引車10は無人運転モードの場合に比較して高速で走行する。
前輪16の交換を行う場合、片持ち状態で支持されている前輪16の左側において、後方に延びる状態で配置されているアドレスセンサ60及びアドレスセンサ60を支持している支持プレート58が、前輪16と干渉する。しかし、支持プレート58が固定されているセンサ支持ブラケット52は、支持ロッド49と共に回転可能に支持されている。したがって、支持プレート58及びアドレスセンサ60をセンサ支持ブラケット52と共に引っ張りバネ54の付勢力に抗して、図10に示すように、ほぼ90度、上側に回動させると、アドレスセンサ60等と干渉せずに前輪16を側方に移動させることができる。
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)リトラクタブル装置26は、前輪16の片側に配設される支持ブラケット27に対して支持された平行四節リンク28の前側に、牽引車10の走行経路74に設けられたガイドテープGTを検出可能なガイドセンサ25が支持されている。そして、平行四節リンク28は、上側リンク部材29の両軸30,31を結ぶ直線及び下側リンク部材32の両軸33,34を結ぶ直線が前後方向に延び、かつ上側リンク部材29の後側の軸31及び下側リンク部材32の後側の軸34が固定軸となるように構成されている。したがって、前輪16を交換する際に、タイヤを挟むように設けられたリンク機構を備えた従来技術と異なり、リトラクタブル装置26を取り外さずにタイヤの交換作業を容易に行うことができる。
(2)平行四節リンク28は、リンク部材29aの中間位置に連結されるワイヤ37を介して操作レバー38と連結され、操作レバー38の操作により回動される。したがって、従来技術のようにリンク部材を回動させるパワーシリンダがタイヤの側方に配置された場合に比較して、リトラクタブル装置26の幅方向(牽引車10の幅方向)の長さを短くでき、ダブルタイヤ仕様の場合に、リトラクタブル装置26を一対のタイヤの間に配設することが可能になる。即ち、リトラクタブル装置の駆動部(平行四節リンク)の幅を狭くすることができ、シングルタイヤ仕様、ダブルタイヤ仕様の両方に対応することが可能になる。
(3)上側リンク部材29及び下側リンク部材32は、それぞれ左右一組のリンク部材29a,29b、32a,32bが所定間隔を置いて軸30,31,33,34に支持されるとともに、上側リンク部材29は前方から見た形状が横に延びる部分と、その両端から下方に延びる部分とによってほぼ逆U字状になるように構成されている。したがって、リンク部材が左側のみあるいは右側のみの上下一組の構成に比較して、左右方向、即ち幅方向のがたつきが小さくなるとともに強度(剛性)が高くなる。
(4)上側リンク部材29の横に延びる部分と、その両端から下方に延びる部分とで区画される空間内に、平行四節リンク28の回動範囲を規制するストッパ部43a,46aの一部が配置されている。平行四節リンク28を、ワイヤ37を介して回動させる場合、その回動範囲を規制する必要がある。この実施形態では、ストッパ部の一部が、上側リンク部材29の横に延びる部分と、その両端から下方に延びる部分とで区画される空間内に配置されているため、回動範囲を規制する規制手段の配置スペースの確保が容易になり、リトラクタブル装置26のコンパクト化に寄与する。
(5)上側リンク部材29には、少なくともワイヤ37との干渉を避けるための切り欠きが形成されているため、上側リンク部材29とワイヤ37との干渉を避けて、平行四節リンク28の回動範囲を目的とする範囲にすることが容易になる。
(6)上側リンク部材29の横に延びる部分と、その両端から下方に延びる部分とで区画される空間内に、ガイドセンサ25が作用位置、即ちガイドテープGTを検出可能な位置に移動されたことを検知するセンサ45が配置されている。したがって、無人運転モードで制御を開始してもよいことを確認する確認手段の配置スペースの確保が容易になる。
(7)操作レバー38は手動で操作されるため、操作レバー38をパワーシリンダ等の駆動装置で駆動する構成に比較して構成が簡単になるとともに、設置スペースの確保も容易になる。
(8)上側リンク部材29及び下側リンク部材32は、平行四節リンク28の軸30,31,33,34に対してブッシュ35を介して回動可能に支持されている。したがって、平行四節リンク28を構成する上側リンク部材29及び下側リンク部材32を、がたつきを抑制した状態で組み付けることができる。
(9)ガイドセンサ25は、下側リンク部材32の前側部を貫通するように設けられた支持ロッド49に対して支持され、支持ロッド49は下側リンク部材32に対して直交する方向に移動して固定位置が変更可能に構成されている。前輪16(操舵輪)は牽引車10の幅方向の中央に設けられているため、前輪16がシングルタイヤ仕様の場合は、ガイドテープGTを前輪16が踏まないようにするには、ガイドテープGTが車体の幅方向の中央からずれた位置(オフセットされた位置)となるように、牽引車10が走行する必要がある。一方、前輪16(操舵輪)がダブルタイヤ仕様の場合は、走行経路74に設けられたガイドテープGTが一対のタイヤの間になるように、即ちガイドテープGTが車体の幅方向の中央と対応するように、牽引車10が走行するのが好ましい。そのため、同じリトラクタブル装置26をシングルタイヤ仕様の前輪16と、ダブルタイヤ仕様の前輪16とに適切な状態で取り付けるには、ガイドセンサ25の位置が牽引車10の幅方向に移動可能に構成されている必要がある。この実施形態では、ガイドセンサ25が支持されている支持ロッド49が、下側リンク部材32に対して直交する方向に移動して固定位置が変更可能に構成されているため、ガイドセンサ25の位置をシングルタイヤ仕様、ダブルタイヤ仕様に合わせて適切な位置に容易に調整することができる。
(10)支持ロッド49には、支持ロッド49の位置を前輪16がシングルタイヤ仕様の場合と、ダブルタイヤ仕様の場合とにそれぞれ適した状態で位置決めするため、2組の挿通孔51a,51bが形成されている。したがって、ガイドセンサ25の位置をシングルタイヤ仕様及びダブルタイヤ仕様に適した位置により容易に調整することができる。
(11)支持ブラケット27には平行四節リンク28の最下動位置を規制するストッパ部43aと、最上動位置を規制するストッパ部46aが突設されている。一方、上側リンク部材29の両リンク部材29a,29bが連結部29cにより互いに連結されるとともに、連結部29cと一体形成された支持片29d又は連結部29cには、ストッパ部43aと当接する規制ボルト43b及びストッパ部46aと当接する規制ボルト46bが螺着されている。したがって、平行四節リンク28の幅を有効に利用して、平行四節リンク28の回動範囲を規制する機構を設けることができるとともに、連結部29cが平行四節リンク28の強度を高めるのに寄与する。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ リトラクタブル装置26は、前輪16がシングルタイヤ仕様の場合に限らず、ダブルタイヤ仕様の前輪16に適用してもよい。ダブルタイヤ仕様の前輪16に適用する場合は、図11に示すように、支持ブラケット27が両タイヤ75の間の固定部76に固定される。また、支持ロッド49の固定位置が、シングルタイヤ仕様の場合より前方に向かって右側寄りの位置、即ち図7において図示された位置より左側にずれた位置に変更される。
○ 無人運転モードにおいて牽引車10を所定の停止位置に停止させる場合、アドレスセンサ60を設ける代わりに、停止センサを設けてもよい。図12に示すように、停止センサ77は、センサ支持ブラケット52に固定された平板状の支持プレート78に、ブラケット79を介して固定されている。停止センサ77が検知する表示部は、前輪16に踏まれないように前輪16の走行経路から外れた位置に設けられており、停止センサ77は、前輪16の斜め左前方に配設される。停止センサ77は、アドレスセンサ60と異なり、表示部を検知したか否かの検出信号を出力する構成で、表示部が異なってもその差を検出することはできない。そのため、停止センサ77を備えた牽引車10では、無人運転モードでは、作業者がリモコン22の発進ボタン22b又は運転モード設定装置23の発進ボタン23bを押すと、牽引車10は無人走行を開始した後、停止センサ77が停止表示部を検知した検知信号に基づいて停止される。
○ 上側リンク部材29の形状は、前方から見た形状が横に延びる部分と、その両端から下方に延びる部分とによってほぼ逆U字状になるように構成されていればよく、例えば、リンク部材29a及びリンク部材29bを対称形状としてもよい。
○ 連結部29cは水平に延びる平板状に限らず、例えば、湾曲した形状や波板状であってもよい。
○ 上側リンク部材29は、1枚の板材を折り曲げて形成したものに限らず、リンク部材29a及びリンク部材29bを別々に形成した後、連結して形成してもよい。連結部29cはリンク部材29a及びリンク部材29bの一方と一体形成しても、別体に形成してもよい。
○ 上側リンク部材29及び下側リンク部材32は、平行四節リンク28の軸30,31,33,34に対してブッシュ35を介さずに回動可能に支持されてもよい。
○ シングルタイヤ仕様の場合と、ダブルタイヤ仕様の場合とでガイドセンサ25の位置を変更する構成は、センサ支持ブラケット52が支持される支持ロッド49を下側リンク部材32に対して直交する方向に移動して、固定位置を変更する構成に限らない。例えば、ガイドセンサ25のセンサ支持ブラケット52に対する取り付け位置を変更する構成としてもよい。
○ シングルタイヤ仕様、ダブルタイヤ仕様に限らず、ガイドセンサ25の位置を同じにしてもよい。
○ ワイヤ37のリンク部材29aに対する連結位置は、リンク部材29aの中央より前側に限らず、中央位置でも、中央より後側の位置でもよい。
○ 平行四節リンク28を回動させる索はワイヤ37に限らず、チェーンや紐であってもよい。
○ ワイヤ37を介して平行四節リンク28を回動させる操作部としての操作レバー38は手動で操作される構成に限らず、駆動装置で操作される構成としてもよい。
○ 牽引車10の走行経路74を設定するガイド部材としてのガイドテープGTは磁気テープに限らず、反射テープであってもよい。反射テープを用いた場合は、ガイドセンサ25として光センサを使用する。また、ガイド部材はテープに限らず、電流が流れる誘導線を設け、ガイドセンサ25は、誘導線に流れる電流によって誘導線の周囲に生じる磁界を検出するピックアップコイルを備え、誘導線からの距離に対応した検出信号を出力する構成であってもよい。
○ リトラクタブル装置26は、少なくともガイドセンサ25を備えていればよく、アドレスセンサ60や停止センサ77は必ずしも必須ではない。例えば、牽引車10の停止位置の決定は、走行経路74の走行面に設けられた表示部を検出して行う方法に限らず、走行経路の側方に設けられた表示部をセンサで検出したり、走行距離に基づいて決定したりしてもよい。
○ 操舵ハンドルをバーハンドル18に代えて、ステアリングハンドルにしても良い。
○ 運転席14に座席を設けた座席タイプの牽引車に具体化しても良い。
○ 搬送車は牽引車10に限らず、荷を搬送する他の搬送車(例えば、ゴルフカートなど)に具体化しても良い。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記操作部は手動により操作される操作レバーである。
(2)請求項1、請求項2、請求項4、請求項5及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の発明において、前記上側リンク部材の前記横に延びる部分と、その両端から下方に延びる部分とで区画される空間内には、ガイドセンサが作用位置に移動されたことを検知するセンサが配置されている。
GT…ガイド部材としてのガイドテープ、25…ガイドセンサ、26…リトラクタブル装置、27…支持ブラケット、28…平行四節リンク、29…上側リンク部材、29a,29b,32a,32b…リンク部材、30,31,33,34…軸、32…下側リンク部材、37…索としてのワイヤ、38…操作部としての操作レバー、43a,46a…ストッパ部、45…センサ、49…支持ロッド、74…走行経路、75…タイヤ。