JP6509109B2 - 熱可塑性樹脂から成る層を有する成形体 - Google Patents
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Description
このような熱可塑性樹脂の欠点を補うべく、熱可塑性樹脂から成る層にエチレン−ビニルアルコール共重合体等のバリア性樹脂から成る層を組み合わせてなる多層成形体も種々提案されているが、多層構造の成形体は、その形態や成形方法等によっては新たな設備が必要になったり、或いは成形工程数が増加する等の理由から製造コストが高くなり、生産性や経済性の点では未だ十分満足するものではなかった。
また上記特許文献1及び2に記載された熱可塑性樹脂とバリア性樹脂のブレンド樹脂組成物が特定の分散構造を形成するためには、溶融成形において樹脂温度、圧力、樹脂流速等の成形条件を細かく制御する必要があり、生産性及び経済性に劣ると共に、これらの分散構造では十分満足するバリア性が得られなかった。
1.前記樹脂組成物が、熱可塑性樹脂100重量部に対してバリア性樹脂が30〜300重量部の量で配合されていること、
2.前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンであること、
3.前記バリア性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」ということがある)であること、
が好適である。
尚、本明細書において、メルトフローレート(以下、「MFR」ということがある)は、JISK 7210に準拠し、温度230℃及び荷重2160gの条件で測定したものである。
本発明においては、マトリックスたる熱可塑性樹脂に対して、特定範囲の量のバリア性樹脂を含有する樹脂組成物から成る成形体において、図1に示すように、熱可塑性樹脂から成るマトリックス1中に、一方向に伸張した薄板状のバリア性樹脂から成る分散相2が形成されており、この成形体の層の厚み方向において表層部(図1(A−2))及び中心部(図1(A−3))において上述した範囲のアスペクト比を有していることにより、優れたバリア性を発現できることを見出した。すなわち、従来の樹脂組成物から成る成形体における分散構造は図2に示すように、表層部(図2(B−2))においては、薄板状の分散相2が形成されているとしても中心部(図2(B−3))においては円形の分散相3が形成されているのに対して、本発明においてはバリア性樹脂から成る分散相が厚み方向全体にわたって一方向に伸張した薄板状に形成することが可能になり、その結果、透過ガスの迂回効果が成形体の厚み方向全体で発現され、より優れたバリア性が得られるのである。
すなわち、本発明の成形体においては優れたバリア性及び成形性を有しているのに対して(実施例1〜8)、熱可塑性樹脂とバリア性樹脂の配合割合が本発明の範囲内であっても、成形体の厚み方向の中心部分の分散相のアスペクト比が上記範囲よりも小さい場合(比較例1、2、4)或いは表層部の分散相と中心部の分散相のアスペクト比の比が上記範囲よりも大きい場合(比較例1〜4)には、いずれも本発明の成形体に比してバリア性が劣っていることが明らかである。
すなわち、図3に示すように、MFRの異なるエチレン−ビニルアルコール共重合体を、それぞれ配合量を変えてポリプロピレンに配合して成る樹脂組成物から成る成形体の酸素透過速度を測定すると、MFRの高いエチレン−ビニルアルコール共重合体を配合した樹脂組成物から成る成形体においては、エチレン−ビニルアルコール共重合体の配合量が18〜80重量%の範囲において、MFRの低いエチレン−ビニルアルコール共重合体を配合して成る樹脂組成物から成る成形体に比してバリア性が向上していることがわかる。
また図5に示すように、熱可塑性樹脂としてポリプロピレンに変えて高密度ポリエチレンを用いた場合にも、MFRの高いエチレン−ビニルアルコール共重合体を配合した樹脂組成物から成る成形体においては、MFRの低いエチレン−ビニルアルコール共重合体を配合して成る樹脂組成物から成る成形体に比してバリア性が向上していることがわかる。
本発明の成形体のマトリックスとなる熱可塑性樹脂は、MFRが0.1〜29g/10分、特に0.5〜25g/10分の範囲にあることが成形性の観点から望ましく、また後述するバリア性樹脂のMFRとの比が11〜200の範囲となるように、熱可塑性樹脂を選択することが、前述した分散構造を形成する上で重要である。
熱可塑性樹脂としては、従来包装材料に使用されていたものを広く使用することができ、低−、中−、或いは高−密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、EVAケン化物、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体、ポリアクリル樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリオキシメチレン等のポリアセタール、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸等の生分解性樹脂等が挙げられる。
好適なポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)、アイソタクテイツクまたはシンジオタクテックポリプロピレン(PP)、プロピレン系共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)或いはこれらのブレンド物等を挙げることができる。また上記のポリオレフィン樹脂をベースポリマーとし、不飽和カルボン酸又はこれらの誘導体でグラフト変性された酸変性オレフィン系樹脂を用いることもできる。
最も好適なポリオレフィン樹脂はプロピレン系重合体であり、プロピレンの単独重合体や、プロピレンと他のオレフィン類、例えばエチレン、ブテン−1、2−メチルペンテン−1等とのランダム或いはブロック共重合体等が使用される。プロピレン系重合体は、単独でも或いは2種以上の組み合わせでも使用することができる。プロピレン系重合体のプロピレン含有量は90重量%以上であるのが望ましい。
本発明の成形体の分散相となるバリア性樹脂としては、MFRが3〜100g/10分、特に5〜95g/10分の範囲にあり、ポリオレフィン樹脂のMFRよりも大きく、前述したポリオレフィン樹脂のMFRとの比が11〜200の範囲となるようなMFRのバリア性樹脂を選択することが、前述した分散構造を形成する上で重要である。
バリア性樹脂のMFRが上記範囲よりも大きい場合には、過度な低粘度であるため流動ムラ等の成形不良や低分子量であるが故に機械的物性が低下すると考えられる。またバリア性樹脂のMFRが上記範囲よりも小さい場合には、高粘度であるため成形が困難になるおそれがある。
バリア性樹脂としては、従来包装材料に使用されていたものを広く使用することができ、ガスバリア層として用いる場合の好適な例としては、ビニルアルコール単位の含有量が40〜85モル%、特に55〜80モル%、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができる。
また、他のガスバリア性樹脂としては、ナイロン樹脂、特に、ナイロン6、ナイロン8、ナイロン11、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン10,6、ナイロン6/6,6共重合体等の脂肪族ナイロン、ポリメタキシリレンアジパミド等の部分芳香族ナイロン、ポリグリコール酸樹脂等を挙げることができる。
尚、これらのガスバリア性樹脂は、内容物の保存性及び保香性の点から、酸素透過係数が5.5×10−12cc・cm/cm2・sec・cmHg(23℃、0%RH)以下であることが好ましい。
ガスバリア性樹脂自体が酸素吸収性を有する構成としてもよいし、酸素バリア性樹脂に酸化可能な有機成分を含有させることもできる。
ガスバリア性樹脂自体が酸素吸収性を有する樹脂としては、例えば樹脂の酸化反応を利用したものが挙げられ、酸化性の材料、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリプロピレン、エチレン・酸化炭素重合体、ナイロン6、ナイロン12、末端アミノ基濃度が50eq/g以下のポリメタキシリレンアジパミドのようなポリアミド類に、酸化触媒としてコバルト、ロジウム、銅等の遷移金属を含む有機酸塩類や、ペンゾフェン、アセトフェン、クロロケトン類のような光増感剤を加えたものが使用できる。これらの酸素吸収材料を使用した場合は、紫外線、電子線のような高エネルギー線を照射することによって、一層の効果を発現させることもできる。
更に酸素バリア性樹脂に酸素吸収剤を配合することもでき、このような酸素吸収剤としては、還元性を有する金属粉、例えば、還元性鉄粉、還元性亜鉛、還元性錫粉、金属低位酸化物、還元性金属化合物の一種又は二種以上を組み合わせたものを主成分としたものが挙げられる。これらは必要に応じて、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、亜硫酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、さらに活性炭、活性アルミナのような助剤とも組み合わせて使用することができる。或いは、多価フェノールを骨格内に有する高分子化合物、例えば、多価フェノール含有フェノール・アルデヒド樹脂等が挙げられる。
またバリア性樹脂として、水分バリア性を有する環状オレフィン系共重合体を用いることもできる。
本発明の樹脂組成物においては、前述した特定のメルトフローレートを有し、且つMFRの比が11〜200の範囲となる熱可塑性樹脂及びバリア性樹脂を、熱可塑性樹脂100重量部に対してバリア性樹脂が30〜300重量部、特に40〜100重量部の量で配合する。
熱可塑性樹脂及びバリア性樹脂のブレンドは、ドライブレンドやメルトブレンドを用いることができる。例えば、ドライブレンドには、ヘンシェルミキサー、ホモミキサー等を使用することができ、またメルトブレンドには、各種ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、1軸或いは2軸押出機などを用いることができる。
本発明においては、ドライブレンドによりブレンドすることが好適である。
本発明の成形体は、上記樹脂組成物から成る層を有する成形体であって、前述した通り、熱可塑性樹脂から成るマトリックス中に、バリア性樹脂が一方向に伸張した薄板状の分散相として分散する層構造を形成していると共に、該層の表層付近のバリア性樹脂から成る分散相のアスペクト比(a)と、層の厚み方向の中心部分のバリア性樹脂から成る分散相のアスペクト比(b)の比(a)/(b)が2.0以下、特に1.0〜1.9、さらに、1.1〜1.9であることが重量な特徴である。
尚、本発明において、層の厚み方向の中心部とは、層厚み全体を100%として40〜60%の範囲にある中心部分を意味し、表層部とは中心部を除いた部分を意味する。
また分散相の大きさは、成形体の形態や厚みによって一概に規定できないが、長径の長さが5〜300μmの範囲にあることが好適である。
上記樹脂組成物の層の厚みとしては、所望のバリア性を発現する厚みであれば特に制限はないが、包装材料とすると、100μm〜3mm、300μm〜3mmの範囲にあることが好適である。
本発明の成形体においては上述したように単層構造とすることが生産性や経済性の観点から好ましいが、勿論これに限定されず、かかる層を少なくとも一層有する多層構造の成形体とすることもできる。
このような多層構造としては、上記樹脂組成物からなる層を中間層とし、他の熱可塑性樹脂からなる層を内外層とする多層構造、上記樹脂組成物からなる層を最内層とし、他の熱可塑性樹脂からなる層を有する多層構造が好適である。上記樹脂組成物からなる層を紙の基材にコーティングしてもよい。
他の熱可塑性樹脂としては、前述した熱可塑性樹脂を好適に使用することができ、中でも、ポリオレフィン系樹脂組成物として使用したポリオレフィン樹脂を使用することが、層間接着性等の点から望ましいが、これに限定されるものではなく、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の従来包装材料として用いられてきた他の熱可塑性樹脂を用いることもできる。また必要により、酸変性ポリオレフィン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸エステル(EEA)等、ポリアミド系接着剤、ポリエステル系接着剤等の接着剤を公知の処方により使用することもできる。
本発明の成形体においては特に射出成形により成形することが、前述した分散構造を形成する上で特に好適であり、樹脂組成物の温度が200〜280℃、金型温度10〜50℃、射出速度5〜80mm/秒の射出成形条件を採用することが好ましい。
尚、参考例、実施例及び比較例での成形品の作製及び各種の測定は、以下の方法で行った。
酸素透過率測定装置「MOCON社製OX−TRAN(登録商標)2/21」を用い、スパウト成形品(口径8mm、胴部厚さ1mm、高さ36mm)を測定温度23℃ 30%RHの条件で測定した。測定単位はスパウト成形品1日あたりに透過する酸素量を基準として換算したcc/pkg・dayを用いた。
得られた成形品の筒部(図4)を厚み方向に対して垂直に切削し、さらにライカ社製ウルトラミクロトームを用い、−100℃雰囲気中ガラスナイフで切削し、平滑面を得た。得られた平滑面をイオンスパッタ装置E−1045(日立製)にて電流値20mA蒸着時間20秒の条件で白金蒸着処理を行い、スパウト成形品厚み(全厚み1mm)方向に対して、図4に示すように表層から0.2mmまでの表層部4と0.4mmから0.6mmまでの中心部5の平滑面を走査型電子顕微鏡「日立ハイテク社製S−3400N」を用いて倍率1000倍で観察した。その電子顕微鏡画像データを画像解析式粒度分布ソフト「マウンテック社製Mac−View」を用い、ドメインとなるバリア性樹脂(EVOH)のアスペクト比解析を600μm四方の範囲で二箇所選択し、全てのEVOHをマーキングした。得られた値の平均値を表層部のEVOHのアスペクト比(アスペクト比(a))および中心部のEVOHのアスペクト比(アスペクト比(b))としてドメインとなるEVOHの表層部と中心部の伸展度合いを算出し、表層部と中心部のアスペクト比の比率である(a)/(b)を得た。
バリア性樹脂としてMFRが84.8g/10minのエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)(エチレン含有量32mol%)と、熱可塑性樹脂としてMFRが1.8g/10minのポリプロピレン(PP)(ノバテックPP BC8:日本ポリプロ社製)をドライブレンドし、射出成形によりスパウト成形品を得た。図4は得られたスパウト成形品の口部断面図を示す。EVOH/PPの配合比は、0/100、10/90、15/85、30/70、45/55、50/50、70/30とし、射出成形条件は樹脂温度:210℃、金型温度:15℃、射出速度:20mm/秒である。次いで、得られた成形品の酸素透過量の測定結果を表1に示す。
バリア性樹脂として18.7g/10minであるEVOH(エチレン含有量32mol%)を用いた以外は、参考例1と同様に成形品を得た。得られた成形品について、測定を行った。得られた成形品の酸素透過量の測定結果を表1に示す。
参考例1で用いたEVOHと、熱可塑性樹脂としてMFRが0.5g/10minであるPP(ノーブレン FH1016:住友化学製)を30/70の配合比でドライブレンドした以外は、参考例1と同様に成形品を得た。得られた成形品の酸素透過量、アスペクト比を測定し、表2に示す。
バリア性樹脂としてMFRが6.7g/10minであるEVOH(エチレン含有量32mol%)を用いた以外は、実施例1と同様に成形品を得た。得られた成形品について、各種測定を行った。結果を表2に示す。
バリア性樹脂としてMFRが84.8g/10minであるEVOH(エチレン含有量32mol%)と、熱可塑性樹脂としてMFRが1.8g/10minであるPP(ノバテックPP BC8:日本ポリプロ社製)を用いた以外は実施例1と同様に成形品を得た。得られた成形品について、各種測定を行った。結果を表2に示す。
バリア性樹脂としてMFRが93.6g/10minであるEVOH(エチレン含有量38mol%)を用いた以外は、実施例3と同様に成形品を得た。得られた成形品について、各種測定を行った。結果を表2に示す。
実施例1で使用したEVOHとPPと、相溶化剤としてジエチルマレイン酸変性SEBSを30/68/2の配合比でドライブレンドし、実施例1と同様に成形品を得た。得られた成形品について、各種測定を行った。結果を表2に示す。
バリア性樹脂としてMFRが18.7g/10minであるEVOH(エチレン含有量32mol%)を用いた以外は、実施例3と同様に成形品を得た。得られた成形品について、各種測定を行った。結果を表2に示す。
熱可塑性樹脂としてMFRが30g/10minであるPP(ノバテックPP BC03C:日本ポリプロ社製)を用いた以外は、実施例1と同様に成形品を得た。得られた成形品について、各種測定を行った。結果を表2に示す。
参考例1,2の結果から明らかなようにEVOHの粘度を制御することにより、酸素バリア性の向上を確認した。
参考例、実施例及び比較例から明らかなように、PPとEVOHの配合比、粘度差を制御し、表層部と中心部のアスペクト比の比率を小さくすることにより、酸素バリア性が向上した。
実施例1、2は、中心部のEVOHが伸展しており、良好な酸素バリア性を得ることができた。実施例3は、比較例1と同様のPPを使用しているにもかかわらず、酸素バリア性が良好であった。これはEVOHの粘度を低粘度化することにより、成形品中心部の伸展度合いが向上したためと考えられる。実施例4は、エチレン含有量32mol%のEVOHより酸素バリア性の低いエチレン含有量38mol%のEVOHを使用したにもかかわらず、比較例1よりバリア性が良好であり、PPとEVOHの粘度差及び成形品中心部のEVOHの伸展が重要であることが示唆された。実施例5は、相溶化剤の微分散効果のため実施例4よりも良好な酸素バリア性が得られていると共に、成形物の機械的物性も向上していた。
比較例1は、実施例ほどの酸素バリア性を発現することができなかった。この原因としては、EVOHとPPの粘度差が小さく、成形品中心部のEVOHの伸展が悪いためと考えられる。比較例2は、比較例1よりPPとEVOHの粘度差をさらに小さくしたが、酸素バリア性に違いが見られなかった。
バリア性樹脂としてMFRが84.8g/10minのEVOH(エチレン含有量32mol%)と、熱可塑性樹脂としてMFRが0.56g/10minの高密度ポリエチレン(HDPE)(SP7005:プライムポリマー社製)をドライブレンドし、射出成形によりスパウト成形品を得た。EVOH/HDPEの配合比は、0/100、10/90、15/85、30/70、45/55とし、射出成形条件は樹脂温度:210℃、金型温度:15℃、射出速度:20mm/秒である。得られた成形品の酸素透過量の測定結果を表3に示す
バリア性樹脂としてMFRが18.7g/10minであるEVOH(エチレン含有量32mol%)と、熱可塑性樹脂としてMFRが8.1g/10minの高密度ポリエチレン(HDPE)(2100K:プライムポリマー社製)をドライブレンドし、射出成形によりスパウト成形品を得た。得られた成形品の酸素透過量の測定結果を表3に示す。
参考例3で得られた成形品につき、各種測定を行った。結果を表4に示す。
バリア性樹脂としてMFRが6.7g/10minであるEVOH(エチレン含有量32mol%)を用いた以外は、実施例6と同様に成形品を得た。得られた成形品について、各種測定を行った。結果を表4に示す。
熱可塑性樹脂としてMFRが8.1g/10minであるHDPE(2100K:プライムポリマー社製)を用いたとした以外は実施例6と同様に成形品を得た。得られた成形品について、各種測定を行った。結果を表4に示す。
バリア性樹脂としてMFRが6.7g/10minであるEVOH(エチレン含有量32mol%)を用いた以外は、実施例8と同様に成形品を得た。得られた成形品について、各種測定を行った。結果を表4に示す。
熱可塑性樹脂としてMFRが77g/10minであるHDPE(J300:旭化成ケミカルズ社製)を用いた以外は、実施例6と同様に成形品を得た。得られた成形品について、各種測定を行った。結果を表4に示す。
参考例3,4の結果から明らかなようにEVOHの粘度を制御することにより、高密度ポリエチレンにおいてもポリプロピレン同様に、酸素バリア性の向上を確認した。
高密度ポリエチレンにおいてもポリプロピレンと同様に、HDPEとEVOHの配合比、粘度差を制御し、表層部と中心部のアスペクト比の比率を小さくすることにより、酸素バリア性が向上していることがわかる。
比較例3及び4は、実施例ほどの酸素バリア性を発現することができなかった。この原因としては、EVOHとHDPEの粘度差が小さく、成形品中心部のEVOHの伸展が悪いためと考えられる。
特にスパウトのように、多層構造とする場合にインサート成形により成形されていた成形体を、バリア性を損なうことなく、生産性や経済性よく製造することが可能になる。
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂及びバリア性樹脂から成る樹脂組成物から成る層を有する射出成形体において、
前記樹脂組成物から成る層が、熱可塑性樹脂から成るマトリックス中に、バリア性樹脂が一方向に伸張した薄板状の分散相として分散する層構造を形成していると共に、該層の表層付近のバリア性樹脂から成る分散相のアスペクト比(a)と、層の厚み方向の中心部分のバリア性樹脂から成る分散相のアスペクト比(b)の比(a)/(b)が2.0以下であり、
前記アスペクト比(a)が2.5〜4.0であり、前記アスペクト比(b)が1.6〜3.0であり、
前記熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFRm)が0.1〜29g/10分であり、前記バリア性樹脂のメルトフローレート(MFRb)が84.8〜95g/10分であり、前記バリア性樹脂のメルトフローレート(MFRb)と前記熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFRm)の比(MFRb/MFRm)が11〜200であることを特徴とする射出成形体。 - 前記樹脂組成物が、熱可塑性樹脂100重量部に対してバリア性樹脂が30〜300重量部の量で配合されている請求項1記載の射出成形体。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項1又は2記載の射出成形体。
- 前記バリア性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体である請求項1〜3の何れかに記載の射出成形体。
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