JP2015063701A - シーラントフィルム、該シーラントフィルムを用いた積層体、及び該積層体を用いた包装容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】エチレン−ビニルアルコール共重合体と無水マレイン酸変性ポリオレフィンの溶融混合樹脂から成形される非吸着性のシーラントフィルム、シーラントフィルムを用いた積層体とこれを用いた包装容器及びシーラントフィルムの製造方法を提供する。【解決手段】82〜90重量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体と10〜18重量%の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とからなるシーラントフィルムで、海構造を形成するエチレン−ビニルアルコール共重合体中に島構造を形成して分布する無水マレイン酸変性ポリオレフィン粒子のアスペクト比を、2.0〜9.5の範囲とした。【選択図】なし
Description
本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体と無水マレイン酸変性ポリオレフィンの溶融混合樹脂から成形されるシーラントフィルム、このシーラントフィルムを用いた積層体、この積層体を用いた包装容器及び上記シーラントフィルムの製造方法に関する。より詳しくは、香気の吸着が少ないシーラントフィルムに関する。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHという。)から成形されるフィルムは、透明性、ガスバリア性、耐油性、耐有機溶剤性、香気の非吸着性に優れる。
しかし、EVOHフィルムは、柔軟性、耐衝撃性、ヒートシール性が乏しいため、柔軟性、耐衝撃性、ヒートシール性のあるポリオレフィン系重合体フィルム等を積層した積層フィルムとして一般的に使用されている。
また、EVOHフィルムの柔軟性、耐衝撃性を改善するため、EVOHに酸変性ポリオレフィン系重合体を配合することが提案されている(特許文献1〜4参照)。
なお、ポリオレフィン系重合体フィルムの物性を改善するため、酸変性ポリオレフィン系重合体にEVOHを配合した混合樹脂及びフィルムが開示されている(特許文献5)。
前述したように、EVOHフィルムは、ポリオレフィン系重合体フィルム等の柔軟性、耐衝撃性のあるフィルムと組み合わせた積層フィルムとして使用されている。しかし、EVOHフィルムにはヒートシール性がないため、この積層フィルムを用いた場合、EVOHフィルムを最内層とする包装容器は、実用化できなかった。
特許文献1〜3は、EVOHに酸変性ポリオレフィン系重合体を配合した混合樹脂組成物又は混合樹脂組成物から成形されたフィルムを開示する。
特許文献4は、樹脂のゲル化を防止するために、EVOHと官能基を重合体の末端だけに導入したポリオレフィン系重合体とを融合混合することを開示する。
特許文献1〜4に記載されたフィルムがヒートシール性を備え、かつEVOHの優れた特性を備えているのであれば、EVOHの特性を備えるフィルムを最内層にした包装容器をヒートシールで製造することが可能となる。EVOHの特性とヒートシール性を備えるフィルムを最内層とする包装容器は、香気成分を有する内容物の包装容器として有用である。しかしながら、特許文献1〜4には、フィルムのヒートシール性、香気の非吸着性等については、何の記載もない。また、特許文献5にもフィルムのヒートシール性、香気の非吸着性の記載はない。
なお、特許文献1〜3には、EVOHと酸変性ポリオレフィン重合体を溶融混合する際に、樹脂のゲル化が起こり易くなることが記載されている。
本発明者らが、EVOHをベース樹脂とし、これに酸変性ポリオレフィン系重合体を溶融混合して得られたフィルムの、ヒートシール性と香気の非吸着性について調査したところ、酸変性ポリオレフィン系重合体の配合割合を高めることにより、フィルムのヒートシール性を改善可能であるが、樹脂のゲル化が起こり易く、香気の非吸着性も悪くなることが判明した。
本発明者らは、さらに、EVOHをベース樹脂として、酸変性ポリオレフィン系重合体を含むフィルムのヒートシール性について研究を進めたところ、島状に分布する酸変性ポリオレフィン系重合体のアスペクト比、すなわち、島状粒子の長径と短径の比率を制御することにより、フィルムのヒートシール性が改善され、香気の非吸着性にも悪影響を与えないフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
アスペクト比は、原則的に、(1)酸変性ポリオレフィン系重合体のMFR(メルトフローレート)を大きくする、(2)溶融混合時の比エネルギーを大きくする、(3)溶融混合時間を長くする、又は(4)フィルム形状に押出した後の巻き取りスピードを早くするほど、大きくなる傾向にある。
本発明は、香気の非吸着性を備えるシーラントフィルムを提供することを目的とする。
本発明のヒートシール用シーラントフィルムは、82〜90重量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体と10〜18重量%の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とからなる組成物からなるヒートシール用シーラントフィルムであって、130℃、0.2MPa、0.7秒で接着した時の接着強度が1.5N/15mm以上であることを特徴とする。
また、本発明のヒートシール用シーラントフィルムは、海構造を形成するエチレン−ビニルアルコール共重合体中で、島構造を形成して分布する無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂の粒子アスペクト比が2.0〜9.5の範囲にある。
本発明のシーラントフィルムは、香気の非吸着性を有するので、内容物が香気成分を含む物品(例えば、メントール、リモネン、サルチル酸メチル、カンファー、トコフェロール等の揮発成分を含む医薬品又は食品、若しくは、わさび、からし、マスタード等、香気成分を含む食品)の包装容器、チューブ容器として非常に便利である。
すなわち、本発明のシーラントフィルムは、ヒートシール性が良好であることから、包装容器、チューブ容器の成形を可能とする最内層に用いることができ、かつ、香気の非吸着性を有効に利用することができる。また、本発明のシーラントフィルムの片面に、例えば、酸素バリアフィルム、中間層又は表面層を積層し、包装用のシーラント積層体とすることができる。このシーラント積層体を包装容器とする場合には、シーラントフィルムを最内層としてヒートシールにより、各種の包装形態に応じた包装容器を提供できる。なお、中間層には、積層フィルムの靭性、腰の強さが求められ、表面層は平滑性、遮光性、印刷適性などが求められることが一般的であるので、求められる用途又は機能に応じた層材を選択すればよい。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施形態1]
本実施形態は、82〜90重量%のEVOHと10〜18重量%の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物とからなり、海構造を形成するエチレン−ビニルアルコール共重合体中で島構造を形成して分布する無水マレイン酸変性ポリオレフィンのアスペクト比が、2.0〜9.5の範囲にあるシーラントフィルムである。
本実施形態は、82〜90重量%のEVOHと10〜18重量%の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物とからなり、海構造を形成するエチレン−ビニルアルコール共重合体中で島構造を形成して分布する無水マレイン酸変性ポリオレフィンのアスペクト比が、2.0〜9.5の範囲にあるシーラントフィルムである。
EVOHは、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物であり、エチレン単位の含有量は特に制限はないが、10〜70モル%の範囲で選ばれ、好ましくは15〜60モル%、さらに20〜60モル%が好ましく、最適には25〜55モル%である。また、EVOHのビニルエステル単位のケン化度としては90〜100モル%の範囲から選ばれ、95〜100モル%が好ましく、99〜100モル%がより好ましい。ケン化度が低いと結晶化が低下し、ガスバリア性が低下し、また溶融時の熱安定性が悪化する場合があるので、ケン化度は高い方が好ましい。ここで、ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表例として挙げられるが、その他にプロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステルも挙げられる。これらのビニルエステルは、一種あるいは二種以上混合して使用してもよい。またEVOHは、エチレン含有量、ケン化度、重合度の内の少なくとも一つが異なるEVOHを混合して使用してもよい。EVOHには本発明の目的が阻害されない範囲で他の共重合成分を含有させてもよい。
無水マレイン酸変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸をオレフィン系重合体または共重合体にグラフトしたものである。オレフィン系重合体または共重合体として、ポリエチレン{低密度ポリエチレン(LDPE)、直線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)}、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(メチルエステルまたはエチルエステル)共重合体、ポリプロピレンが好適に用いられる。
本実施形態のシーラントフィルムは、82〜90重量%のEVOHと10〜18重量%の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とから形成される。
一般に、非相溶性の樹脂成分を溶融混合し、製膜して得られるフィルムは、混合比率の高い樹脂成分、すなわち、ベース樹脂が海状に、配合比率の低い樹脂成分が島状に分散した構造を有することが知られている。
本実施形態のフィルムは、EVOHが海状に、酸変性ポリオレフィン系重合体が島状に分散した構造を有し、島状に分散して分布する酸変性ポリオレフィン系重合体のアスペクト比が、2.0〜9.5に範囲にある。好ましくは、2.2以上9.3以下の範囲である。
すなわち、82〜90重量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体と10〜18重量%の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物からなり、島状に形成された酸変性ポリオレフィン系重合体のアスペクト比が2.0〜9.5の条件を満たす場合に、ヒートシール性のあるフィルムが得られる。アスペクト比がこの範囲外となると、フィルムのヒートシール性が低くなるので好ましくない。
「ヒートシール性がある」とは、当該フィルム同士を130℃、0.2MPa、0.7秒の条件で接着した時の当該フィルム間の接着強度が1.5N/15mm以上有することを意味する。この強度未満では、当該フィルム同士の十分な接着ができない。本発明でいう「シーラントフィルム」とは、このヒートシール性があるフィルムのことを意味する。
本実施形態のフィルムは、ヒートシール性に加え、香気の非吸着性を備える。本発明において、香気の非吸着性とは、メントール、リモネン、サルチル酸メチル、カンファー、トコフェロール等の揮発成分やわさび、からし、マスタード等の食品の香気成分を吸着しない性質を意味し、包装容器内部の香気成分を維持することができる性質をいう。本明細書において、香気の非吸着性とは、メントール蒸気中に1週間暴露したフィルムが吸着するメントール重量値(mg)が、測定限界以下であることを意味する。
香気成分を含む内容物用の包装容器の最内層は、香気成分と接触するため、最内層には、香気成分を吸着しないフィルムを用いることが重要である。また、最内層同士を接着して包装容器を製造する際に、接着剤を使用しないことが望ましい。これは、接着剤が香気成分を吸着することを防止するためである。香気の非吸着性とヒートシール性とを備える本発明のシーラントフィルムは、最内層用のフィルムとして非常に有用なフィルムである。
[実施形態2]
本実施形態は、実施形態1のフィルムの製造方法である。
すなわち、82〜90重量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体と10〜18重量%の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とを2.2MJ/Kg以上の比エネルギーで溶融混合した後、製膜することを特徴とする製造方法である。ここで、溶融混合時の比エネルギーの範囲は、好ましくは、2.7MJ/Kg以上12.1MJ/Kg以下である。
本実施形態は、実施形態1のフィルムの製造方法である。
すなわち、82〜90重量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体と10〜18重量%の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とを2.2MJ/Kg以上の比エネルギーで溶融混合した後、製膜することを特徴とする製造方法である。ここで、溶融混合時の比エネルギーの範囲は、好ましくは、2.7MJ/Kg以上12.1MJ/Kg以下である。
82〜90重量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体と10〜18重量%の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とを2.2MJ/Kg未満の比エネルギーで溶融混合した場合、それぞれの樹脂が均一に溶融されない。比エネルギーが、12.5MJ/Kgを超える場合、剪断強度が高すぎ、用いる樹脂の種類によっては、分解する虞があるため好ましくない。
EVOHと無水マレイン酸変性ポリオレフィンとの溶融混合は、二軸以上のスクリュー押出機で行えばよい。
押出成形機のスクリューは、形状がフライトスクリューとパイナップル、ニーディングディスクからなるスクリューを単独又は組み合わせて使用することができる。
比エネルギーとは、溶融混合する際に、単位重量当り(1kg)の樹脂に溶融混合設備から与えられるエネルギーをいい、数値が大きいほど、練りの効果が高いことになる。例えば押出機の場合、1kgの樹脂を押し出すのに必要なスクリュー駆動用モーターの消費電力で近似的に表わされる。計算式の詳細は、後述する。
EVOH及び酸変性ポリオレフィン以外に、通常使用する程度の耐熱安定剤、耐候安定剤、滑剤、帯電防止剤、核剤、充填剤、顔料、染料、難燃剤、ブロッキング防止剤等の添加物を含有させてもよい。
溶融混合して得られたポリマーアロイをTダイ又はインフレーション等の成形機でフィルムに成形する。フィルムの厚さは、10μm〜100μm位とすることができるが、ヒートシール強度の観点から40μm以上が好ましい。
[実施形態3]
本実施形態は、実施形態1のシーラントフィルムの片面に、他の材料からなる層、例えば、酸素バリア性フィルム、中間層あるいは表面層を積層したシーラント積層体である。酸素バリア性フィルムとしては、例えば、アルミ箔又はアルミ蒸着フィルムを挙げることができる。この積層体は、包装材として用いることができる。
本実施形態は、実施形態1のシーラントフィルムの片面に、他の材料からなる層、例えば、酸素バリア性フィルム、中間層あるいは表面層を積層したシーラント積層体である。酸素バリア性フィルムとしては、例えば、アルミ箔又はアルミ蒸着フィルムを挙げることができる。この積層体は、包装材として用いることができる。
[実施形態4]
本実施形態は、側面シール型、三方シール型、四方シール型の形態から分類される包装袋、又は注出口、開封用ジッパー等を取り付けた包装袋並びにチューブ形態の包装容器である。
本実施形態は、側面シール型、三方シール型、四方シール型の形態から分類される包装袋、又は注出口、開封用ジッパー等を取り付けた包装袋並びにチューブ形態の包装容器である。
本実施形態の包装袋は、実施形態3のシーラント積層体を用い、シーラントフィルムを最内層として、製袋機を用いヒートシールによって包装袋とする、あるいはチューブ成形機によりチューブ容器とすればよい。
実施形態1に説明したように、シーラントフィルムが香りを吸着しないので、被包装体である内容物の香り成分吸着が容器内に保持される。
表1に本発明のシーラントフィルム(実施例1〜12)と比較フィルム(比較例1〜9)の製造条件とその評価結果を示す。
EVOHと無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを表1に示す割合でブレンドし、L/D=30の二軸押出機(ラボブラストミル、(株)東洋精機製作所)を用いて、表1に示す比エネルギーを与え、二軸押出機で溶融混合した。
EVOHは、エバールF104BとエバールE105B(共に、(株)クラレ製の樹脂)を用い、実施例1〜9、12及び比較例1〜8では、それぞれを4:6で配合した混合物を用い、実施例10,11及び比較例9は、エバールE105Bを単独で用いた。
無水マレイン酸変性ポリオレフィンとして、無水マレイン酸変性ポリエチレンを用いた。表中のLDPE系はアドテックスDL2400(MFRは、3.0g/10min)、HDPE系はDH4200(MFRは、0.6g/10min)又はLLDPE系はDU6400(MFRは、1.7g/10min)(それぞれは、日本ポリエチレン株式会社製)を用いた。
溶融混合は、フライトスクリューとパイナップル、ニーディングディスクからなるスクリューを備え、L/D=30の二軸押出機(ラボプラストミル、株式会社東洋精機製作所)を用いて行った。なお、Lは、スクリューの有効長さ、Dは、スクリューの直径を意味する。
比エネルギーは以下の式から算出できる。
ここで、トルク、スクリュー回転数、樹脂押出量は、以下を意味する。
トルク:押出機のスクリューを回転させるのに必要な力
スクリュー回転数:単位時間当たりのスクリューの回転数
樹脂押出量:単位時間当たりに押出機から押し出される樹脂の量
トルク:押出機のスクリューを回転させるのに必要な力
スクリュー回転数:単位時間当たりのスクリューの回転数
樹脂押出量:単位時間当たりに押出機から押し出される樹脂の量
溶融混合して得られたポリマーアロイをTダイで成膜し、厚み40μmのシーラントフィルムを作製した。シーラントフィルムは、EVOHが海状に形成され、配合比率の低い酸変性ポリオレフィン系重合体が島状に分散した構造を有していた。
実施例および比較例により得られたフィルムについて、アスペクト比、ヒートシール強度及びメントール吸着量を以下の方法で測定した。結果を上述の表1に示す。
[アスペクト比]
原子間力顕微鏡の画像を解析し、島を形成して分布する無水マレイン酸変性ポリオレフィン粒子の長径と短径の比の平均値をアスペクト比とした。画像解析はMOUNTECH社製画像解析式粒度分布測定ソフト Mac−View ver.4.0を用いて測定した。アスペクト比や面積などは自動計測される。画像中の粒子100個以上の平均値として算出される。但し、0.2平方マイクロメートル未満の粒子はノイズとして除外した。
原子間力顕微鏡の画像を解析し、島を形成して分布する無水マレイン酸変性ポリオレフィン粒子の長径と短径の比の平均値をアスペクト比とした。画像解析はMOUNTECH社製画像解析式粒度分布測定ソフト Mac−View ver.4.0を用いて測定した。アスペクト比や面積などは自動計測される。画像中の粒子100個以上の平均値として算出される。但し、0.2平方マイクロメートル未満の粒子はノイズとして除外した。
[ヒートシール強度]
補強フィルムとして、二軸延伸PETフィルム(厚さ25μm)を各実施例及び各比較例のフィルムにドライラミネートし、各実施例及び各比較例のフィルム面同士を合わせて130℃、0.2MPa、0.7secの条件でヒートシールした。ヒートシール部分の15mm幅の接着強度をJIS Z 0238に基づきT型剥離試験で測定した。剥離試験用試料作製時に軽微な強度で剥離してしまうものは、測定不能(N.D.)とした。
補強フィルムとして、二軸延伸PETフィルム(厚さ25μm)を各実施例及び各比較例のフィルムにドライラミネートし、各実施例及び各比較例のフィルム面同士を合わせて130℃、0.2MPa、0.7secの条件でヒートシールした。ヒートシール部分の15mm幅の接着強度をJIS Z 0238に基づきT型剥離試験で測定した。剥離試験用試料作製時に軽微な強度で剥離してしまうものは、測定不能(N.D.)とした。
[メントール吸着量]
各実施例と各比較例のフィルム(100mm×100mm)を40℃で発生させたメントール蒸気に一週間曝露した。フィルムに吸着したメントールをメチルエチルケトンで抽出し、ガスクロマトグラフィーにより吸着量を定量した。微量(0.05mg未満)で定量できないものを検出不能(N.D.)とした。
各実施例と各比較例のフィルム(100mm×100mm)を40℃で発生させたメントール蒸気に一週間曝露した。フィルムに吸着したメントールをメチルエチルケトンで抽出し、ガスクロマトグラフィーにより吸着量を定量した。微量(0.05mg未満)で定量できないものを検出不能(N.D.)とした。
比較例1〜6及び9から、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの配合比率が10重量%未満又は18重量%を超えるフィルムのヒートシール強度は、実用に耐えるレベルといわれる1.5N/15mm以下であることがわかる。
ところが、比較例7、8のように、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの配合比率が15重量%であっても、ヒートシール強度が0.67N/15mm以下と、1.5N/15mmより低くなる場合があった。比較例7、8のフィルムは、実施例1〜12と比べると、無水マレイン酸変性ポリオレフィンのアスペクト比が低くなっていることがわかる。
以上のことから、EVOHと無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを溶融混合して得られるポリマーアロイから成形されたシーラントフィルムのヒートシール性は、EVOHと無水マレイン酸変性ポリオレフィンの配合割合並びに無水マレイン酸変性ポリオレフィンのアスペクト比とが共に影響していることがわかった。
すなわち、EVOHと無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを溶融混合して得られるポリマーアロイから成形されるシーラントフィルムは、以下の条件を満たす必要があることがわかる。
(1)82〜90重量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体と10〜18重量%の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物とからなること。
(2)海構造を形成する上記エチレン−ビニルアルコール共重合体中で島を形成して分布する無水マレイン酸変性ポリオレフィン粒子のアスペクト比が2.0〜9.5の範囲であること。
(1)82〜90重量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体と10〜18重量%の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物とからなること。
(2)海構造を形成する上記エチレン−ビニルアルコール共重合体中で島を形成して分布する無水マレイン酸変性ポリオレフィン粒子のアスペクト比が2.0〜9.5の範囲であること。
無水マレイン酸変性ポリオレフィン粒子のアスペクト比は、エチレン−ビニルアルコール共重合体と無水マレイン酸変性ポリオレフィンの配合量を上述の範囲とした場合、EVOHと無水マレイン酸変性ポリオレフィンを溶融混合するときに与える比エネルギーにより制御することが可能である。また、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂のMFR(メルトフローレート)、溶融混合時間、フィルム押出し後の巻き取り速度等によりアスペクト比を制御することができる。
表1から、比エネルギーを2.2MJ/Kg以上、好ましくは、2.7MJ/Kg以上12.1MJ/Kg以下として樹脂を溶融混合し、得られたフィルムの無水マレイン酸変性ポリオレフィン粒子のアスペクト比を2.0〜9.5の範囲にすれば、実用レベルにあるヒートシール性が得られることがわかる。
香気の非吸着性は、酸変性ポリオレフィン系重合体の配合割合を高めると、悪くなる傾向があるが、実施例1〜12のフィルムにおいては、メントールの吸収は、検出できなかった(N.D.)。すなわち、メントールの吸収量は、EVOH単体フィルムに匹敵するものである。
Claims (2)
- 82〜90重量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体と10〜18重量%の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とからなる組成物からなるヒートシール用シーラントフィルムであって、130℃、0.2MPa、0.7秒で接着した時の接着強度が1.5N/15mm以上である、ヒートシール用シーラントフィルム。
- 海構造を形成するエチレン−ビニルアルコール共重合体中で、島構造を形成して分布する無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂の粒子アスペクト比が2.0〜9.5の範囲にある、請求項1記載のヒートシール用シーラントフィルム。
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