JP2024016881A - 多層構造体、多層容器及び複合容器、並びにそのリサイクル方法 - Google Patents

多層構造体、多層容器及び複合容器、並びにそのリサイクル方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2024016881A
JP2024016881A JP2022119148A JP2022119148A JP2024016881A JP 2024016881 A JP2024016881 A JP 2024016881A JP 2022119148 A JP2022119148 A JP 2022119148A JP 2022119148 A JP2022119148 A JP 2022119148A JP 2024016881 A JP2024016881 A JP 2024016881A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
multilayer structure
base material
multilayer
moisture
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022119148A
Other languages
English (en)
Inventor
健太郎 吉田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP2022119148A priority Critical patent/JP2024016881A/ja
Publication of JP2024016881A publication Critical patent/JP2024016881A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】耐熱性及び防湿性優れ、かつ使用後の分離性にも優れる多層構造体及び多層容器、並びにそのリサイクル方法を提供する。【解決手段】ポリエステル(a)を主成分として含む基材層(A)を一方の表面に有し、ポリエチレン(b)を主成分として含む防湿層(B)を他方の表面に少なくとも有する多層構造体であって、多層構造体の総厚みが200μm以上であり、多層構造体の総厚みに対する基材層(A)の厚み比率が0.50以上であり、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間接着強度が200gf/15mm未満である、多層構造体。【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱性及び防湿性に優れ、かつ特定層間の分離性に優れる多層構造体、多層容器及び複合容器、並びにそのリサイクル方法に関する。
食品包装をはじめとするプラスチック包装材料には、機械物性、耐熱性、ガスバリア性、防湿性、熱融着性といった種々の機能を有する多様な素材が積層されて使用されている。たとえば、機械物性を高めるためにはポリアミド、耐熱性を高めるためにはポリエステル、ガスバリア性を高めるためにはエチレン-ビニルアルコール共重合体やポリ塩化ビニリデン、防湿性や熱融着性を高めるためにはポリエチレンやポリプロピレンといった各種ポリオレフィンが広く使用されている。
また、近年では、環境問題や廃棄物問題が契機となり、市場で消費された包装材料を回収して再資源化する、いわゆるポストコンシューマーリサイクル(以下、単にリサイクルと略称することがある)の要求が世界的に高まっている。リサイクルにおいては、回収された包装材料を破砕・裁断し、必要に応じて分離・分別・洗浄した後に、押出機を用いて溶融成形し、リサイクル樹脂として再ペレット化する工程が一般に採用される。こうして得られたペレットを用いて、様々な成形体が製造される。この点においては、包装材料はできる限り単一材料で構成されることが求められており(モノマテリアル化)、それによって高純度で高品質なリサイクル樹脂を得ることができる。
しかしながら、包装材料として必要な機能を保持するため、モノマテリアル化が困難な場合がある。たとえば、ポリエステルは耐熱性や透明性に優れ、成形加工が容易なことから、包装容器として広く使用されるが、防湿性や熱融着性には劣るため、ポリエチレン等のポリオレフィンと積層されることがある。ところが、ポリエステルとポリオレフィンは樹脂としての特性が互いに大きく異なるため、そのまま混合して溶融成形することは困難であり、得られるリサイクル樹脂の品質も満足なものとはいえない。一方、ポリエステルとポリオレフィンは、それぞれリサイクル技術が確立されつつあり、それぞれを分離して回収することができれば、品質に優れたリサイクル樹脂を得ることができると期待されている。ただし、ポリエステルに関しては、無色透明であることが市場価値に直結するため、色相等の外観品質の許容度が広いポリオレフィンと比較し、より高い純度が要求されることが一般的である。
特許文献1には、複数の素材層からなる積層シートにおいて、当該素材層間を剥離可能な接着強度で接着する接着剤層を介して接着することが開示されている。これによれば、当該積層シートからなる包装袋の使用後において、複数の素材層を互いに剥離・分離でき、分別して再生利用が可能となることが記載されている。
また、特許文献2には、基材層と複数層からなるシーラント層が接着剤層を介して接着されており、当該シーラント層の接着剤層に隣接する樹脂層が環状オレフィン系樹脂を含む包装材料が開示されている。これによれば、当該包装材料を特定の条件でサラダ油に浸漬することで層間接着強度が下がるため、基材層とシーラント層を互いに剥離・分離でき、分別してリサイクルすることが容易となることが記載されている。
特開2022-20182号公報 特開2020-121455公報
上記したように、そのままではリサイクルが困難な素材の組合せであっても、それらの素材間を互いに剥離・分離することで分別し、リサイクル性を向上する技術が提案されている。しかしながら、上記従来の技術では、剥離・分離を実現するために特殊な接着剤や層構成が必要であったり、溶剤を使用する等の特定の剥離・分離工程が必要であったりするため、多様な包装材料に対して経済的に適用するには課題があった。また、剥離後にも接着剤層の一部又は全部が残存するため、回収された素材の純度が低下し、接着剤層によるリサイクル性の阻害も懸念される。
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、耐熱性及び防湿性に優れ、かつ特定層間の分離性にも優れる多層構造体、多層容器及び複合容器、並びにそのリサイクル方法を提供することである。
上記課題は、
[1]ポリエステル(a)を主成分として含む基材層(A)を一方の表面に有し、ポリエチレン(b)を主成分として含む防湿層(B)を他方の表面に少なくとも有する多層構造体であって、多層構造体の総厚みが200μm以上であり、多層構造体の総厚みに対する基材層(A)の厚み比率が0.50以上であり、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間接着強度が200gf/15mm未満である、多層構造体;
[2]エチレン単位含有量が20~50モル%であり、けん化度が90モル%以上であるエチレン-ビニルアルコール共重合体(c)(以下「EVOH(c)」と略記する場合がある)を主成分として含むバリア層(C)及び接着性樹脂(d)を主成分として含む接着層(D)をさらに有する、[1]の多層構造体;
[3]基材層(A)、バリア層(C)、接着層(D)及び防湿層(B)がこの順に互いに隣接した層構成からなり、基材層(A)とバリア層(C)との層間接着強度が200gf/15mm未満であり、基材層(A)とバリア層(C)との層間以外の層間接着強度がいずれも200gf/15mm以上である、[2]の多層構造体;
[4]基材層(A)、防湿層(B)、接着層(D)、バリア層(C)、接着層(D)及び防湿層(B)がこの順に互いに隣接した層構成からなり、基材層(A)と防湿層(B)との層間接着強度が200gf/15mm未満であり、基材層(A)と防湿層(B)との層間以外の層間接着強度がいずれも200gf/15mm以上である、[2]の多層構造体;
[5]ポリエチレン(b)が、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又はそれらの混合物であり、密度が0.880~0.940g/cmである、[1]~[4]のいずれかの多層構造体;
[6]少なくとも表面に位置する防湿層(B)が、融点が60~120℃の高級脂肪酸アミド化合物(x)を100~7000ppm含有する、[1]~[5]のいずれかの多層構造体;
[7]少なくとも表面に位置する防湿層(B)が、平均粒子径が1~30μmである無機酸化物粒子(y)を500~5000ppm含有し、無機酸化物粒子(y)が酸化ケイ素粒子及び金属酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれかの多層構造体;
[8]バリア層(C)が、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群から選択される少なくとも1種の多価金属イオン(z)を10~200ppm含有する、[2]~[7]のいずれかの多層構造体;
[9]JIS K 7126-2:2006に記載の方法で測定した20℃、65%RH条件下における酸素透過速度が、2.0cc/(m・day・atm)未満である、[1]~[8]のいずれかの多層構造体;
[10]波長600nmにおける基材層(A)の光線透過率が70%以上である、[1]~[9]のいずれかの多層構造体;
[11]基材層(A)を除いて、融点が200℃以上の樹脂を主成分として含む高融点樹脂層を有さない、[1]~[10]のいずれかの多層構造体;
[12]共押出多層構造体である、[1]~[11]のいずれかの多層構造体;
[13][1]~[12]のいずれかの多層構造体を二次加工成形してなる、多層容器;
[14]ポリエチレンを主成分として含む熱融着層を有する蓋材及び[13]の多層容器を有し、前記蓋材が前記多層容器に熱融着している、複合容器;
[15][13]に記載の多層容器又は[14]に記載の複合容器を、基材層(A)からなる部分と、基材層(A)以外からなる部分とに分離する工程を含む、リサイクル方法;
[16]基材層(A)からなる部分と、基材層(A)以外からなる部分とをそれぞれ独立に溶融成形する工程を含む、[15]のリサイクル方法;
を提供することで解決される。
本発明によれば、耐熱性及び防湿性に優れ、かつ特定層間の分離性にも優れる多層構造体、多層容器及び複合容器、並びにそのリサイクル方法を提供できる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現するものとして具体的な材料(化合物等)を例示する場合があるが、本発明はこのような材料を使用した態様に限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。本明細書において、「主成分として含む」とは50質量%超であることを意味する。また、本明細書において「隣接する」とは、直接積層していることを意味する。また、本明細書において「基材層(A)と基材層(A)と隣接する層以外の層間接着強度」とは、例えば、基材層(A)/防湿層(B)/接着層(D)/バリア層(C)/接着層(D)/防湿層(B)の層構成からなる多層構造体であった場合、防湿層(B)及び接着層(D)間の接着強度並びに接着層(D)及びバリア層(C)間の接着強度を意味する。本明細書において「欠点」とは、フィルム製膜時に見られるゲルやフィッシュアイ等のことを意味する。
本発明の多層構造体は、基材層(A)を一方の表面に有し、防湿層(B)を他方の表面に少なくとも有する多層構造体であって、多層構造体の総厚みが200μm以上であり、多層構造体の総厚みに対する基材層(A)の厚み比率が0.50以上であり、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間接着強度が200gf/15mm未満である。ここで、「基材層(A)を一方の表面に有し、防湿層(B)を他方の表面に少なくとも有する」とは、多層構造体の一方の最表層が基材層(A)であり他方の最表層が防湿層(B)であることを意味する。本発明の多層構造体は、ポリエステルが有する耐熱性、ポリエチレンが有する防湿性を併せ持ち、他素材とリサイクル適正の低いポリエステル(a)を主成分として含む基材層(A)を、他素材と簡単に分離可能である良好な分離性を示し、分離した各素材(基材層(A)からなる部分及び基材層(A)以外からなる部分)をそれぞれ独立にリサイクル(溶融混練)することで、品質に優れたリサイクル樹脂を得ることができる。本発明の一態様においては、特殊な接着剤の使用や剥離工程は必要とされず、簡易かつ経済的にリサイクルを達成できる。また、本発明の一態様における多層容器は、熱融着性も有していることから、蓋材を熱融着することで、密閉可能な複合容器を提供することができる。これにより、包装材料としての機能や品質を低下させることなく、包装材料のリサイクル適性を向上させることができ、循環型社会に実現に貢献することができる。
[基材層(A)及びポリエステル(a)]
本発明の多層構造体は、ポリエステル(a)を主成分として含む基材層(A)を一方の表面に有する。基材層(A)を一方の表面に有することで、ポリエステル由来の耐熱性及び透明性を向上できる。基材層(A)は単層であっても多層であってもよい。なお、ポリエステル樹脂はボトルやトレイとして包装材料に広く使用されているため、そのリサイクルインフラは各国で広く整備されているが、ポリエステル樹脂と他の樹脂とを混ぜ合わせてリサイクルすることは困難であり、その観点から基材層(A)の分離性を高める本発明は技術的意義が高いものである。
ポリエステル(a)は、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位と、エチレングリコール単位を主体とするジオール単位からなるポリエステル樹脂である。ポリエステル(a)としては、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位のみからなるポリエステル、並びに少なくともテレフタル酸単位の一部を他のジカルボン酸単位で置換するか、又はエチレングリコール単位の一部を他のジオール単位で置換したポリエステルが使用できる。ポリエステル(a)が、テレフタル酸単位及びエチレングリコール単位以外の他の構造単位(他のジカルボン酸単位及び/又は他のジオール単位)を有する場合は、他の構造単位の割合が、ポリエステル(a)を構成する全構造単位の30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましく、5モル%以下がよりさらに好ましく、3モル%以下が特に好ましい。前記他の構造単位が30モル%より多くなると、得られるポリエステルが非晶性となり、耐熱性や機械強度が不足する場合や、樹脂内に含有されるオリゴマーを低減させるために固相重合を行った場合に、樹脂の軟化による膠着が生じやすく、生産が困難になる場合がある。ポリエステル(a)の極限粘度は0.6~1.0dl/gが好ましい。
ポリエステル(a)が有し得る他のジカルボン酸単位の例としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3-ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;及びそれらのエステル形成性誘導体などから誘導されるジカルボン酸単位を挙げることができる。ポリエステル(a)は、上記した他のジカルボン酸単位を1種のみ有していても又は2種以上有していてもよい。
また、ポリエステル(a)が有し得る他のジオール単位の例としては、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-メチルプロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,1-シクロヘキサンジメチロール、1,4-シクロヘキサンジメチロール、シクロヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール;2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホンなどの芳香族ジオール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの低分子量ポリアルキレングリコールなどから誘導されるジオール単位を挙げることができる。ポリエステル(a)は、上記の他のジオール単位の1種のみを有していても又は2種以上を有していてもよい。
ポリエステル(a)は、全構造単位の1モル%以下であれば、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のモノマーから誘導される構造単位の1種又は2種以上を有していてもよい。ポリエステル(a)は1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
基材層(A)は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、ポリエステル(a)以外の他の添加剤を含有してもよい。このような他の添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、安定剤、界面活性剤、乾燥剤、架橋剤、繊維補強剤などが挙げられる。ポリエステル(a)中の他の添加剤の含有量は、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
基材層(A)におけるポリエステル(a)の含有量は50質量%超であり、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。基材層(A)におけるポリエステル(a)の含有量が50質量%超であることで、耐熱性及び透明性が向上し、機械強度も優れたものとなる。
基材層(A)は染料や顔料を含有せず、無色透明であることが好ましい。波長600nmにおける基材層(A)の光線透過率は70%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、85%以上が特に好ましい。
[防湿層(B)及びポリエチレン(b)]
本発明の多層構造体は、ポリエチレン(b)を主成分として含む防湿層(B)を他方の表面に少なくとも有する。本発明の多層構造体は防湿層(B)を表面に有することで、ポリエチレン由来の防湿性を向上でき、熱融着性も良好となる。防湿層(B)は単層であっても多層であってもよく、本発明の多層構造体は複数の防湿層(B)を有していてもよい。本発明の多層構造体が防湿層(B)を複数有する場合、それぞれの防湿層(B)は、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。ポリエチレン樹脂は防湿層や熱融着層として包装材料に広く使用されているため、そのリサイクルインフラは各国で広く整備されているが、ポリエステル樹脂とポリエチレン樹脂とを混ぜ合わせてリサイクルすることは困難であり、その観点から基材層(A)の分離性を高める本発明は技術的意義が高いものである。
ポリエチレン(b)としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の各種のポリエチレン樹脂が挙げられる。中でも、ポリエチレン(b)は、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又はそれらの混合物であることが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンであることがより好ましい。ポリエチレン(b)が直鎖状低密度ポリエチレンである場合、エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとを重合させた直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。炭素数3以上のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。ポリエチレン(b)は、エチレンと炭素数6以上のα-オレフィンとを重合させた直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましく、エチレンと炭素数8以上のα-オレフィンとを重合させた直鎖状低密度ポリエチレンであることがより好ましい。エチレンと共重合されるα-オレフィンの炭素数が比較的大きい場合に、突き刺し強伸度や引張強伸度といった種々の機械強度が特に向上する場合がある。
また、ポリエチレン(b)を重合する重合触媒としては、メタロセン触媒を用いることが好ましい。メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレンは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個以上有する、周期律表4族の遷移金属、好ましくはジルコニウムの化合物、有機アルミニウムオキシ化合物及び必要により添加される各種成分から形成される触媒の存在下に、エチレンとα-オレフィンとを共重合することによって製造されるものである。メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレンは溶融成形性に優れ、得られる多層構造体は耐熱性、柔軟性、機械強度のバランスに優れたものとなる。
エチレンと炭素数6以上のα-オレフィンとをメタロセン触媒を用いて重合させた直鎖状低密度ポリエチレンは、工業的に製造されたものが市販されており、「エボリュー(商標)」(株式会社プライムポリマー製)、「スミカセン(商標)」(住友化学株式会社製)、「ユメリット(商標)」(宇部丸善ポリエチレン株式会社製)、「エリート(商標)」(ダウケミカル社製)等が挙げられる。
ポリエチレン(b)の密度は0.880~0.940g/cmが好ましい。密度が上記範囲であると、得られる多層構造体は防湿性に優れ、柔軟でハンドリング性に優れたものとなる。また、突き刺し強伸度や引張強伸度といった種々の機械強度及び熱融着性が向上するため、多層容器とした際の内容物保持の信頼性や、使用後の分離性が優れたものとなる。密度の下限は0.885g/cmが好ましく、0.890g/cmがより好ましく、0.895g/cmがさらに好ましい。密度の上限は0.925g/cmが好ましく、0.915g/cmがより好ましく、0.910g/cmがさらに好ましい。
ポリエチレン(b)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)は0.5~5.0g/10分が好ましい。MFRが上記範囲であると、ポリエチレン(b)は溶融加工性に優れ、得られる多層構造体の突き刺し強伸度や引張強伸度といった種々の機械強度が向上する。MFRの下限は0.7g/10分が好ましい。MFRの上限は3.0g/10分が好ましく、2.0g/10分がより好ましく、1.5g/10分がさらに好ましく、1.0g/10分が特に好ましい。MFRは、JIS K 7210(2014)に準拠して190℃、2.16kg荷重下により測定される。
ポリエチレン(b)は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、エチレン及びα-オレフィン以外の他の単量体単位を含有していてもよい。このような他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸及びその塩又はエステル、メタクリル酸及びその塩又はエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩又はエステル、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。ポリエチレン(b)が、他の単量体単位を有する場合は、他の単量体単位の割合が、ポリエチレン(b)を構成する全単量体単位の20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましく、3モル%以下が特に好ましい。ポリエチレン(b)は1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
<高級脂肪酸アミド化合物(x)>
少なくとも表面に位置する防湿層(B)は、融点が60~120℃の高級脂肪酸アミド化合物(x)を100~7000ppm含有することが好ましい。防湿層(B)が高級脂肪酸アミド化合物(x)を上記範囲含有することで、得られる多層構造体及び多層容器の表面滑性が向上し、ハンドリング性が優れたものとなる。表面以外に防湿層(B)を有する場合、かかる防湿層(B)は高級脂肪酸アミド化合物(x)を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
防湿層(B)中の高級脂肪酸アミド化合物(x)の含有量の下限は300ppmが好ましく、500ppmがより好ましく、700ppmがさらに好ましい。高級脂肪酸アミド化合物(x)の含有量の上限は5000ppmが好ましく、3000ppmがより好ましく、2000ppmがさらに好ましく、1500ppmが特に好ましく、1000ppmであってもよい。高級脂肪酸アミド化合物(x)の含有量が上記範囲にあると、多層構造体の透明性や外観の均一性を損なうことなく、表面滑性を効果的に向上することができる。
高級脂肪酸アミド化合物(x)としては、融点が60~120℃である限りは特に限定されない。高級脂肪酸アミド化合物(x)の融点の下限は70℃が好ましい。高級脂肪酸アミド化合物(x)の融点の上限は110℃が好ましい。融点は炭素鎖長の長さや不飽和度(炭素鎖中の二重結合の数)、アミド基の数、その他置換基の有無等で制御することができる。高級脂肪酸アミド化合物(x)としては、飽和高級脂肪酸ビスアミド、不飽和高級脂肪酸ビスアミド、飽和高級脂肪酸モノアミド、不飽和高級脂肪酸モノアミド及びそれらの誘導体が挙げられるが、炭素数10~25の飽和高級脂肪酸モノアミド及び不飽和高級脂肪酸モノアミドからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。炭素数10~25の飽和高級脂肪酸モノアミドとしては、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘン酸アミド等が好ましい例として挙げられる。これらの中でも、経済性及び入手性の観点から、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドが好ましく、ステアリン酸アミドがより好ましい。炭素数10~25の不飽和高級脂肪酸モノアミドとしては、着色を抑制する観点から、不飽和度が1のモノエン高級脂肪酸モノアミドが好ましく、オレイン酸アミド、エライジン酸アミド、バクセン酸アミド、ガドレイン酸アミド、エイコセン酸アミド、エルカ酸アミド等が好ましい例として挙げられる。これらの中でも、経済性及び入手性の観点から、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミドが好ましい。高級脂肪酸アミド化合物(x)の熱安定性の観点からは、飽和高級脂肪酸モノアミドが好ましく、より広い加工条件範囲で効果を発現する観点からは不飽和高級脂肪酸モノアミドが好ましい。また、多層構造体を製造・加工する工程でのハンドリング性の観点からは、高級脂肪酸アミド化合物(x)の炭素数は12~22が好ましい場合がある。また、高級脂肪酸アミド化合物(x)は水酸基等の置換基を有していてもよい。
本発明の1つの態様においては、高級脂肪酸アミド化合物(x)が、融点が異なる2種以上の高級脂肪酸アミド化合物を含むことが好ましい。特に、融点が60℃以上90℃未満である不飽和高級脂肪酸アミド化合物及び融点が90℃以上120℃未満である飽和高級脂肪酸アミド化合物を含むことが、温度や湿度といった環境因子にとらわれることなく、得られる多層構造体及び多層容器の表面活性を効率的に向上できる場合があるため、好ましい。
<無機酸化物粒子(y)>
少なくとも表面に位置する防湿層(B)は、平均粒子径が1~30μmである無機酸化物粒子(y)を500~5000ppm含有することが好ましい。防湿層(B)に無機酸化物粒子(y)を上記範囲有することで、得られる多層構造体及び多層容器の表面滑性が向上し、ハンドリング性に優れたものとなる。表面以外に防湿層(B)を有する場合、かかる防湿層(B)は無機酸化物粒子(y)を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
無機酸化物粒子(y)の含有量の下限は、750ppmが好ましく、1000ppmがより好ましい。無機酸化物粒子(y)の含有量の上限は、4500ppmが好ましく、4000ppmがより好ましい。また、無機酸化物粒子(y)の平均粒子径の下限は、2μmが好ましく、3μmがより好ましい。無機酸化物粒子(y)の平均粒子径の上限は、15μmが好ましく、10μmがより好ましい。平均粒子径は無機酸化物粒子(y)を水や有機溶媒に分散し、十分攪拌した後に得られた分散液を循環させながら光散乱法により測定されるメジアン径である。また、無機酸化物粒子(y)の形状は、アスペクト比が小さく、真球状に近いことが好ましい。こうすることで、透明性等の外観特性を損なうことなく、得られる多層構造体及び多層容器の表面活性を効率的に向上できる場合がある。
無機酸化物粒子(y)は酸化ケイ素粒子及び金属酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。金属酸化物粒子を構成する金属は、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、タングステン、モリブデン、チタン及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。無機酸化物粒子(y)を構成する無機酸化物として具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化亜鉛及びこれらの複合体等(酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合体等)を挙げることができ、酸化ケイ素が好ましい。
防湿層(B)は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、ポリエチレン(b)、高級脂肪酸アミド化合物(x)及び無機酸化物粒子(y)以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えばアルカリ金属イオン、多価金属イオン、カルボン酸、リン酸化合物、ホウ素化合物、酸化促進剤、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、乾燥剤、充填剤、顔料、染料、加工助剤、難燃剤、及び防曇剤等が挙げられる。防湿層(B)中の他の成分の含有量は、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。防湿層(B)は染料や顔料を含有せず、無色であることが好ましい。
防湿層(B)は、ポリエチレン(b)以外の熱可塑性樹脂をさらに含有してもよい。ポリエチレン(b)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば各種ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体、ポリオレフィンと無水マレイン酸との共重合体、エチレン-ビニルエステル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、又はこれらを不飽和カルボン酸もしくはその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィン等)、各種ポリアミド(ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6/66共重合体、ナイロン11、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド等)、各種ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリレート及び変性ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。防湿層(B)中の前記熱可塑性樹脂の含有量は50質量%未満であり、30質量%未満が好ましく、10質量%未満がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下であってもよい。特に、防湿層(B)は、ポリエチレン(b)以外の熱可塑性樹脂をさらに含有する場合、含有される熱可塑性樹脂は、炭素原子、水素原子及び酸素原子のみからなる熱可塑性樹脂が好ましく、炭素原子及び水素原子のみからなる熱可塑性樹脂がより好ましく、炭素原子及び水素原子のみからなり、融点が150℃以下の熱可塑性樹脂がさらに好ましい。
防湿層(B)を構成する樹脂としてポリエチレン(b)が占める割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上であってもよく、防湿層(B)を構成する樹脂がポリエチレン(b)のみからなってもよい。また、防湿層(B)をポリエチレン(b)が占める割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上であってもよく、防湿層(B)は実質的にポリエチレン(b)のみから構成されていてもよい。
防湿層(B)を構成する樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、ポリエチレン(b)、及び必要に応じて高級脂肪酸アミド化合物(x)や無機酸化物粒子(y)等のその他の添加剤を溶融混練することにより製造できる。高級脂肪酸アミド化合物(x)は、粉末等固体状態のまま、又は溶融物として配合してもよく、溶液に含まれる溶質又は分散液に含まれる分散質として配合してもよい。溶液及び分散液としては、それぞれ水溶液及び水分散液が好適である。溶融混練は、例えばニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の既知の混合装置又は混練装置を用いることができる。溶融混練時の温度範囲は、使用するポリエチレン(b)の融点等に応じて適宜調節でき、通常、150~300℃が採用される。
また、別の態様では、ポリエチレン(b)に対して、必要に応じて高級脂肪酸アミド化合物(x)や無機酸化物粒子(y)等のその他の添加剤を高濃度に含有するマスターバッチを溶融混練によって製造し、そのマスターバッチを高級脂肪酸アミド化合物(x)及び無機酸化物粒子(y)等のその他の添加剤を実質的に含有しないポリエチレン(b)とドライブレンドして多層構造体の製造に使用することができる。また、さらに別の態様では、ポリエチレン(b)、及び必要に応じて高級脂肪酸アミド化合物(x)や無機酸化物粒子(y)等のその他の添加剤はドライブレンドによって多層構造体の製造に使用することができる。ドライブレンドとは、粉粒状又はペレット状の形態で機械的に混合することをいう。混合は、タンブラー、リボンミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて行ってもよいし、密閉容器内中で、手動で攪拌、振とう等行うことにより混合してもよい。混合温度としては、室温~ポリエチレン(b)の融点未満で行えばよく、空気雰囲気下又は窒素雰囲気下で混合することができる。
[EVOH(c)及びバリア層(C)]
本発明の多層構造体は、EVOH(c)を主成分として含むバリア層(C)を有することが好ましい。バリア層(C)は単層であっても、多層であってもよい。EVOH(c)はガスバリア性に優れることから、EVOH(c)を主成分として含むバリア層(C)を有する多層構造体は、内容物保存性の高い包装材料として好ましく用いられる。また、EVOH(c)はポリエチレン樹脂と容易に溶融混合できるため、ポリエチレン樹脂とのリサイクル性に優れた包装材料を提供できる。なお、本発明の多層構造体がバリア層(C)を複数有する場合、それぞれのバリア層(C)は、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
EVOH(c)は、通常、エチレンとビニルエステルとを重合して得られるエチレン-ビニルエステル共重合体をけん化することにより得られる。EVOH(c)のエチレン単位含有量は20~50モル%である。エチレン単位含有量が20モル%以上であると、EVOH(c)及びEVOH(c)を含む樹脂組成物の溶融成形性が向上する。エチレン単位含有量は、23モル%以上が好ましく、26モル%以上がより好ましく、29モル%以上であってもよい。一方、エチレン単位含有量が50モル%以下であると、本発明の多層構造体のガスバリア性が向上する。エチレン単位含有量は、46モル%以下が好ましく、42モル%以下がより好ましく、38モル%以下であってもよい。また、EVOH(c)のけん化度は90モル%以上である。けん化度とは、EVOH(c)中のビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の総数に対するビニルアルコール単位の数の割合を意味する。けん化度が90モル%以上であると、本発明の多層構造体のガスバリア性が向上する。けん化度は95モル%以上が好ましく、99モル%以上がより好ましく、99.9モル%以上がさらに好ましい。EVOH(c)のエチレン単位含有量及びけん化度は、H-NMR測定で求められる。
EVOH(c)は、エチレン単位含有量の異なる2種類以上のEVOHの混合物であってもよい。この場合、エチレン単位含有量が最も離れたEVOH同士のエチレン単位含有量の差が30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、15モル%以下がさらに好ましく、3モル%以上であってもよい。同様に、EVOH(c)は、けん化度の異なる2種類以上のEVOHの混合物であってもよい。この場合、最も離れたEVOH同士のけん化度の差は7%以下が好ましく、5%以下がより好ましく0.5モル%以上であってもよい。熱成形性及びガスバリア性をより高いレベルで両立させたい場合は、エチレン単位含有量が24モル%以上34モル%未満であり、けん化度が99モル%以上であるEVOH(c1)と、エチレン単位含有量が34モル%以上50モル%未満であり、けん化度が99モル%以上であるEVOH(c2)とを、配合質量比(c1/c2)が60/40~90/10となるように混合し、EVOH(c)として使用することが好ましい。
EVOH(c)は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、エチレン、ビニルエステル及びビニルアルコール以外の他の単量体単位を含有していてもよい。特に、特定の構造を有する一級水酸基を含む変性基を導入することで、EVOH(c)のガスバリア性と成形加工性を高いレベルで両立できる場合がある。他の単量体単位の含有量は5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、実質的に含有されていないことが特に好ましい。このような他の単量体としては、例えば、プロピレン、n-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン等のα-オレフィン類;アクリル酸及びその塩;アクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3-ジアセトキシ-1-ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3-ジアセトキシ-1-アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩又はエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン化合物;酢酸イソプロペニル、3-アシロキシ-1-プロペン、3-アシロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ペンテン、5-アシロキシ-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-1-ペンテン、4-アシロキシ-1-ヘキセン、5-アシロキシ-1-ヘキセン、6-アシロキシ-1-ヘキセン、5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン、1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン等のエステル基を有するアルケン又はそのケン化物等が挙げられる。
EVOH(c)のJIS K7210(2014)に準拠して測定されるMFR(190℃、2.16kg荷重下)は0.2~20g/10minが好ましい。EVOH(c)のMFRは0.5g/10min以上がより好ましく、0.8g/10min以上がさらに好ましい。一方、EVOH(c)のMFRは15g/10min以下がより好ましく、10g/10min以下がさらに好ましく、5g/10min以下がよりさらに好ましく、3g/10min以下が特に好ましい。EVOH(c)のMFRが上記範囲であると、EVOH(c)及びEVOH(c)を含む樹脂組成物の溶融成形性が向上する。
EVOH(c)は1種単独で用いることもできる、2種以上を併用してもよい。
<多価金属イオン(z)>
バリア層(C)は、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群から選択される少なくとも1種の多価金属イオン(z)を10~200ppm含有することが好ましい。多価金属イオン(z)を一定量含有することで、EVOH(c)及びEVOH(c)を含む樹脂組成物を溶融成形する際の増粘、ゲル化やスクリューへの樹脂付着が抑制される。多価金属イオン(z)は、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンが好ましく、マグネシウムイオンがより好ましい。また、多価金属イオン(z)をカルボン酸塩として含有することが好ましい。このときのカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸のいずれであってもよいが、脂肪族カルボン酸が好ましい。脂肪族カルボン酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられ、炭素数10~25の高級脂肪酸がより好ましい。また、溶融成形時の着色を抑制する点からは、多価金属イオン(z)は、後述する多価カルボン酸の塩として含有することも好ましい。
バリア層(C)中の多価金属イオン(z)の含有量は10~200ppmが好ましい。当該含有量が10ppm以上であると、本発明の多層構造体において基材層(A)を分離した後の基材層(A)以外の部分(EVOH(c)及びポリエチレン(b)を含む部分)のリサイクル時(溶融混練時)に粘度安定性が良好となり、樹脂のゲル化や押出機スクリューへの樹脂の付着が抑制される。多価金属イオン(z)の含有量の下限は20ppmがより好ましい。一方、多価金属イオン(z)の含有量が200ppm以下であると、本発明の多層構造体において基材層(A)を分離した後の基材層(A)以外の部分(EVOH(c)及びポリエチレン(b)を含む部分)のリサイクル時(溶融混練時)に過剰な分解が抑制され、リサイクル樹脂の色相が良好となる。多価金属イオン(z)の含有量の上限は160ppmがより好ましく、120ppmがさらに好ましい。
バリア層(C)は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、EVOH(c)及び多価金属イオン(z)以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えばアルカリ金属イオン、多価金属イオン(z)以外の多価金属イオン、カルボン酸、リン酸化合物、ホウ素化合物、酸化促進剤、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、乾燥剤、充填剤、顔料、染料、加工助剤、難燃剤、及び防曇剤等が挙げられる。特に、EVOH(c)を含む積層体の層間接着性や溶融成形性を改善する観点からは、アルカリ金属イオンを含むことが好ましい。また、EVOH(c)及びEVOH(c)を含む樹脂組成物を溶融成形する際に着色が抑制できる観点からは、カルボン酸又はリン酸化合物を含むことが好ましい。さらに、ホウ素化合物を含むことで、EVOH(c)及びEVOH(c)を含む樹脂組成物の溶融粘度を制御できるとともに、本発明の多層構造体及び多層容器の機械強度を向上できる場合がある。バリア層(C)中の他の成分の含有量は、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
<アルカリ金属イオン>
バリア層(C)は、アルカリ金属イオンを含有することが好ましい。アルカリ金属イオンの含有量の下限は100ppmが好ましく、150ppmがより好ましい。一方、アルカリ金属イオンの含有量の上限は400ppmが好ましく、350ppmがより好ましい。アルカリ金属イオンの含有量が100ppm以上であると、バリア層(C)と後述する接着層(D)との層間接着性良好となる。一方、アルカリ金属イオンの含有量が400ppm以下であると、着色を抑制できる傾向となる。また、アルカリ金属イオンと、後述するカルボン酸との含有比率を制御することで、溶融成形性や着色耐性をさらに改善できる。
アルカリ金属イオンとしては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのイオンが挙げられるが、工業的入手の点からはナトリウム又はカリウムのイオンが好ましい。特に、カリウムイオンを単独で、又はナトリウムイオンとカリウムイオンを併用して使用することで、色相及び接着層(D)との層間接着性を高いレベルで両立できる場合がある。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ金属イオンを与えるアルカリ金属塩としては、例えばナトリウムやカリウム等のアルカリ金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、金属錯体が挙げられる。具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムが、入手容易である点からより好ましい。
<カルボン酸>
バリア層(C)はカルボン酸を含有することが好ましい。カルボン酸の含有量の下限は50ppmが好ましく、100ppmがより好ましい。一方、カルボン酸の含有量の上限は400ppmが好ましく、350ppmがより好ましい。カルボン酸の含有量が50ppm以上であると、着色を抑制できる傾向となる。一方、カルボン酸の含有量が400ppm以下であると、接着層(D)との層間接着性の低下を抑制し、臭気が抑えられる傾向となる。カルボン酸の含有量は、バリア層(C)を構成する樹脂組成物10gを純水50mlで95℃、8時間抽出した後、得られる抽出液を滴定することで求められる。なお、樹脂組成物中のカルボン酸の含有量として、前記抽出液中に塩として存在するカルボン酸は考慮しない。また、樹脂組成物が、カルボン酸以外の酸性化合物を含有する場合には、滴定による測定値からそれらの酸性化合物の寄与分を差し引くことで樹脂組成物中のカルボン酸の含有量を求めることができる。
カルボン酸のpKaは3.5~5.5が好ましい。カルボン酸のpKaが上記範囲であると、弱酸性の範囲におけるpH緩衝能力が高まり、溶融成形性をさらに改善するとともに、酸性物質や塩基性物質による着色影響をさらに軽減できる。
カルボン酸は、1価カルボン酸であってもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。1価カルボン酸とは、分子内に1つのカルボキシル基を有する化合物である。pKaが3.5~5.5の範囲にある1価カルボン酸としては、特に限定されず、例えばギ酸(pKa=3.77)、酢酸(pKa=4.76)、プロピオン酸(pKa=4.85)、アクリル酸(pKa=4.25)等が挙げられる。これらのカルボン酸は水酸基、アミノ基、ハロゲン原子等の置換基をさらに有していてもよい。中でも、安全性が高く、入手及び取扱いが容易であることから酢酸が好ましい。
カルボン酸は、多価カルボン酸であってもよい。カルボン酸が多価カルボン酸であると、EVOH(c)の高温下での着色耐性や、EVOH(c)を含む樹脂組成物の着色耐性をさらに改善できる場合がある。また、多価カルボン酸化合物は、3個以上のカルボキシル基を有することも好ましい。この場合、着色耐性をより効果的に向上できる場合がある。多価カルボン酸とは、分子内に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物である。この場合、少なくとも1つのカルボキシル基のpKaが3.5~5.5の範囲にあることが好ましく、例えば、シュウ酸(pKa2=4.27)、コハク酸(pKa1=4.20)、フマル酸(pKa2=4.44)、リンゴ酸(pKa2=5.13)、グルタル酸(pKa1=4.30、pKa2=5.40)、アジピン酸(pKa1=4.43、pKa2=5.41)、ピメリン酸(pKa1=4.71)、フタル酸(pKa2=5.41)、イソフタル酸(pKa2=4.46)、テレフタル酸(pKa1=3.51、pKa2=4.82)、クエン酸(pKa2=4.75)、酒石酸(pKa2=4.40)、グルタミン酸(pKa2=4.07)、アスパラギン酸(pKa=3.90)等が挙げられる。
<リン酸化合物>
バリア層(C)は、リン酸化合物をさらに含有してもよい。リン酸化合物の含有量の下限は、リン酸根換算で5ppmが好ましい。一方、リン酸化合物の含有量の上限は、リン酸根換算で100ppmが好ましい。この範囲でリン酸化合物を含有することにより、EVOH(c)及びEVOH(c)を含む樹脂組成物の溶融成形後の着色が抑制され、熱安定性が改善される場合がある。
リン酸化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等が用いられる。リン酸塩は第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれであってもよい。リン酸塩のカチオン種も特に限定されないが、カチオン種はアルカリ金属又はアルカリ土類金属が好ましい。中でも、リン酸化合物として、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、及びリン酸水素二カリウムが好ましい。
<ホウ素化合物>
バリア層(C)は、ホウ素化合物をさらに含有してもよい。ホウ素化合物の含有量の下限は、ホウ素元素換算で50ppmが好ましく、100ppmがより好ましい。一方、ホウ素化合物の含有量の上限は、ホウ素元素換算で400ppmが好ましく、200ppmがより好ましい。この範囲でホウ素化合物を含有することにより、EVOH(c)及びEVOH(c)を含む樹脂組成物の溶融成形時の熱安定性が向上し、ゲル及びブツの発生が抑制される場合がある。また、耐ドローダウン性や製膜する際の耐ネックイン性が改善される場合や、得られる多層構造体や多層容器の機械的性質が向上する場合がある。これらの効果は、EVOH(c)とホウ素化合物との間にキレート相互作用が発生することに起因すると推測される。
ホウ素化合物としては、例えばホウ酸、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素が挙げられる。具体的には、オルトホウ酸(H3BO3)、メタホウ酸、四ホウ酸等のホウ酸;ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル等のホウ酸エステル;前記ホウ酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、ホウ砂等のホウ酸塩等が挙げられる。中でもオルトホウ酸が好ましい。
<ヒンダードフェノール系化合物>
バリア層(C)は、酸化防止剤として、例えば、エステル結合又はアミド結合を有するヒンダードフェノール系化合物をさらに含有してもよい。ヒンダードフェノール系化合物の含有量は1000~10000ppmが好ましい。当該含有量が1000ppm以上であると、EVOH(c)及びEVOH(c)を含む樹脂組成物を溶融成形する際に樹脂の着色、増粘及びゲル化を抑制できる。ヒンダードフェノール系化合物の含有量は2000ppm以上がより好ましい。一方、ヒンダードフェノール系化合物の含有量が10000ppm以下であると、ヒンダードフェノール系化合物に由来する着色やブリードアウトを抑制できる。ヒンダードフェノール系化合物の含有量は8000ppm以下がより好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物は、少なくとも1つのヒンダードフェノール基を有する。ヒンダードフェノール基とは、フェノールのヒドロキシル基が結合した炭素に隣接する炭素の少なくとも1つに嵩高い置換基が結合したものをいう。嵩高い置換基としては、炭素原子1~10のアルキル基が好ましく、t-ブチル基がより好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物は室温付近において固体状態であることが好ましい。該化合物のブリードアウトを抑制する観点から、ヒンダードフェノール系化合物の融点又は軟化温度は50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。同様の観点から、ヒンダードフェノール系化合物の分子量は200以上が好ましく、400以上がより好ましく、600以上がさらに好ましい。一方、該分子量は、通常、2000以下である。また、EVOH(c)との混合を容易にする観点から、ヒンダードフェノール系化合物の融点又は軟化温度は200℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物はエステル結合又はアミド結合を有する。エステル結合を有するヒンダードフェノール系化合物としては、ヒンダードフェノール基を有する脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステルが挙げられ、アミド結合を有するヒンダードフェノール系化合物としては、ヒンダードフェノール基を有する脂肪族カルボン酸と脂肪族アミンとのアミドが挙げられる。中でも、EVOH(c)との混合を容易にする観点から、ヒンダードフェノール系化合物がアミド結合を有することが好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物の具体的な構造としては、BASF社からイルガノックス1010として市販されているペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、イルガノックス1076として市販されている3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、イルガノックス1035として市販されている2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、イルガノックス1135として市販されている3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸オクタデシル、イルガノックス245として市販されているビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)、イルガノックス259として市販されている1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、イルガノックス1098として市販されているN,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]が挙げられる。中でも、イルガノックス1098として市販されているN,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、及びイルガノックス1010として市販されているペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]が好ましく、前者がより好ましい。
バリア層(C)は、EVOH(c)以外の熱可塑性樹脂をさらに含有してもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(b)の他、防湿層(B)に含まれていてもよい熱可塑性樹脂として例示した上記各樹脂を使用することができる。バリア層(C)中のEVOH(c)以外の熱可塑性樹脂の含有量は50質量%未満であり、30質量%未満が好ましく、10質量%未満がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下であってもよい。
バリア層(C)を構成する樹脂としてEVOH(c)が占める割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上であってもよく、バリア層(C)を構成する樹脂がEVOH(c)のみからなってもよい。また、バリア層(C)をEVOH(c)が占める割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上であってもよく、バリア層(C)は実質的にEVOH(c)のみから構成されていてもよい。
バリア層(C)がEVOH(c)以外の成分を含む場合、バリア層(C)を構成する樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、EVOH(c)及び必要に応じてその他の添加剤(多価金属イオン(z)等)を溶融混練することにより製造できる。その他の添加材は、粉末等固体状態のまま、又は溶融物として配合してもよく、溶液に含まれる溶質又は分散液に含まれる分散質として配合してもよい。溶液及び分散液としては、それぞれ水溶液及び水分散液が好適である。溶融混練は、例えばニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の既知の混合装置又は混練装置を用いることができる。溶融混練時の温度範囲は、使用するEVOH(c)の融点等に応じて適宜調節でき、通常、150~300℃が採用される。また、いくつかの成分をEVOH(c)に予め添加した上で、追加で必要な他の成分を上記のように溶融混練することで製造してもよい。いくつかの成分をEVOH(c)に予め添加する方法としては、添加成分が溶解している溶液にEVOH(c)をペレット又は粉末として浸漬する方法が例示できる。溶液としては、水溶液が好適である。
また、別の態様では、EVOH(c)に対しその他の添加剤を高濃度に含有するマスターバッチを溶融混練によって製造し、そのマスターバッチをその他の添加剤を実質的に含有しないEVOH(c)とドライブレンドして多層構造体の製造に使用することができる。また、さらに別の態様では、EVOH(c)及びその他の添加剤は、ドライブレンドによって多層構造体の製造に使用することができる。ドライブレンドとは、粉粒状又はペレット状の形態で機械的に混合することをいう。混合は、タンブラー、リボンミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて行ってもよいし、密閉容器内中で、手動で攪拌、振とう等行うことにより混合してもよい。混合温度としては、室温以上EVOH(c)の融点未満で行えばよく、空気雰囲気下又は窒素雰囲気下で混合することができる。
[接着性樹脂(d)及び接着層(D)]
本発明の多層構造体は、接着性樹脂(d)を主成分として含む接着層(D)を有することが好ましい。接着層(D)は、バリア層(C)と防湿層(B)や後述する熱可塑性樹脂層とを接着する機能を有する。したがって、接着層(D)はバリア層(C)と防湿層(B)又は熱可塑性樹脂層との間に備えられていることが好ましく、バリア層(C)及び防湿層(B)又は熱可塑性樹脂層と直接積層していることが好ましい。
接着性樹脂(d)としては、例えば不飽和カルボン酸又はその無水物をオレフィン系重合体に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができる。不飽和カルボン酸又はその無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、中でも、無水マレイン酸が好適に用いられる。具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-プロピレン共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種又は2種以上の混合物が好適なものとして挙げられ、これらの中でも無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンが最も好ましい。このような接着性樹脂(d)の酸価は通常、0.5~5mgKOH/gであり、1~4mgKOH/gが好ましい。
本発明の接着性樹脂(d)は、未変性樹脂(dx)と酸変性樹脂(dy)の混合物であってもよい。この場合、機械強度をより高める観点から、未変性樹脂(dx)が、ポリエチレン(b)を含むことが好ましく、ポリエチレン(b)であることがより好ましい。ここで、未変性樹脂(dx)がポリエチレン(b)を含む場合、接着層(D)に含まれるポリエチレン(b)と防湿層(B)に含まれるポリエチレン(b)とは、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。また、接着性樹脂(d)における、未変性樹脂(dx)と酸変性樹脂(dy)の比率(dx/dy)は55/45~95/5が好ましく、65/35~90/10が好ましい。この場合、酸変性樹脂(dy)としては、酸変性度の比較的高い樹脂を好ましく使用でき、その酸価は5~30mgKOH/gが好ましく、8~20mgKOH/gがより好ましい。こうすることで、必要な層間接着強度を保持しながら、得られる多層構造体の機械強度をさらに向上できる場合がある。本発明の接着性樹脂(d)が、未変性樹脂(dx)と酸変性樹脂(dy)の混合物である場合、未変性樹脂(dx)と酸変性樹脂(dy)をあらかじめ溶融混練したものを使用してもよいし、未変性樹脂(dx)と酸変性樹脂(dy)のそれぞれをドライブレンドしたものを使用してもよい。溶融混練は、例えばニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の既知の混合装置又は混練装置を用いることができる。溶融混練時の温度範囲は、使用する未変性樹脂(dx)と酸変性樹脂(dy)の融点等に応じて適宜調節でき、通常、150~300℃が採用される。ドライブレンドとは、粉粒状又はペレット状の形態で機械的に混合することをいう。混合は、タンブラー、リボンミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて行ってもよいし、密閉容器内中で、手動で攪拌、振とう等行うことにより混合してもよい。混合温度としては、室温~未変性樹脂(dx)と酸変性樹脂(dy)の融点未満で行えばよく、空気雰囲気下又は窒素雰囲気下で混合することができる。
接着層(D)は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、接着性樹脂(d)以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えばアルカリ金属イオン、多価金属イオン、カルボン酸、リン酸化合物、ホウ素化合物、酸化促進剤、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、乾燥剤、充填剤、顔料、染料、加工助剤、難燃剤、及び防曇剤等が挙げられる。接着層(D)中の他の成分の含有量は、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。また、接着層(D)は、接着性樹脂(d)以外の熱可塑性樹脂をさらに含有してもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(b)の他、防湿層(B)に含まれていてもよい熱可塑性樹脂として例示した上記各樹脂を使用することができる。接着層(D)中の前記熱可塑性樹脂の含有量は50質量%未満であり、30質量%未満が好ましく、10質量%未満がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下であってもよい。
接着層(D)を構成する樹脂として接着性樹脂(d)が占める割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上であってもよく、接着層(D)を構成する樹脂が接着性樹脂(d)のみからなってもよい。また、接着層(D)を接着性樹脂(d)が占める割合は、50質量%超であり、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上であってもよく、接着層(D)は実質的に接着性樹脂(d)のみから構成されていてもよい。
[多層構造体]
本発明の多層構造体は、ポリエステル(a)を主成分として含む基材層(A)を一方の表面に有し、ポリエチレン(b)を主成分として含む防湿層(B)を他方の表面に少なくとも有する多層構造体であって、多層構造体の総厚みが200μm以上であり、多層構造体の総厚みに対する基材層(A)の厚み比率が0.50以上であり、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間接着強度が200gf/15mm未満である。本発明の多層構造体は、上記構成を有することで、例えば、包装材としての使用後に、基材層(A)と基材層(A)以外の部分とを容易に分離できる。このため、本発明の多層構造体は、耐熱性及び防湿性に優れるだけでなく、リサイクル性に優れ、品質に優れたリサイクル樹脂を得ることができる。
本発明の多層構造体は、ポリエステル(a)、ポリエチレン(b)、EVOH(c)及び接着性樹脂(d)とは異なる樹脂である熱可塑性樹脂(r)を主成分として含む熱可塑性樹脂層(R)をさらに有してもよい。熱可塑性樹脂(r)としては特に限定されず、ビニルエステル樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン共重合体(炭素数4~20のα-オレフィン)、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独、又はその共重合体、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。特に、本発明の多層構造体が熱可塑性樹脂層(R)をさらに含有する場合、熱可塑性樹脂(r)としては、炭素原子、水素原子及び酸素原子のみからなる熱可塑性樹脂が好ましく、炭素原子及び水素原子のみからなる熱可塑性樹脂がより好ましく、炭素原子及び水素原子のみからなり、融点が150℃以下の熱可塑性樹脂がさらに好ましい。融点が150℃以下の熱可塑性樹脂としては、プロピレン-α-オレフィン共重合体(炭素数4~20のα-オレフィン)が好ましい。
熱可塑性樹脂層(R)を構成する樹脂として熱可塑性樹脂(r)が占める割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上であってもよく、熱可塑性樹脂層(R)を構成する樹脂が熱可塑性樹脂(r)のみからなってもよい。また、熱可塑性樹脂層(R)を熱可塑性樹脂(r)が占める割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上であってもよく、熱可塑性樹脂層(R)は実質的に熱可塑性樹脂(r)のみから構成されていてもよい。
一方で、本発明の多層構造体は、基材層(A)を除いて、融点が200℃以上の樹脂を主成分として含む高融点樹脂層を有さないことが好ましい。また、本発明の多層構造体は、厚み1μm以上の金属層を有さないことが好ましい。さらに、本発明の多層構造体は、硬化型の接着剤層を有さないことが好ましい。これらの層を有さないことで、多層構造体のリサイクル性をさらに向上できる。なお、ここで金属層とは、アルミニウム箔等、金属からなる連続及び不連続面を有する層のことである。また、硬化型の接着剤層とは、例えばポリオール成分とポリイソシアネート成分とを混合し反応させる二液反応型ポリウレタン系接着剤層等、硬化後には可塑性を有さない接着剤層のことである。
本発明の多層構造体の総厚みは200μm以上であり、300μmが好ましく、400μm以上や500μm以上であってもよい。本発明の多層構造体の総厚みが200μm未満であると、基材層(A)とその他の部分との分離性が不十分となる。また、本発明の多層構造体の総厚みは、通常1000μm以下であり、900μm以下や800μm以下であってもよい。総厚みが上記範囲であることで、本発明の多層構造体は、軽量ながら十分な機械強度を有するため、トレイやカップのような種々の包装用途に好ましく用いられる。
本発明の多層構造体の総厚みに対する基材層(A)の厚み比率は0.50以上であり、0.60以上が好ましく、0.70以上が好ましく、0.80以上であってもよく、0.95以下であってもよい。多層構造体の総厚みに対する基材層(A)の厚み比率が0.50未満であると、基材層(A)とその他の部分との分離性が不十分となるため、基材層(A)のリサイクル樹脂が低品質なポリエステル樹脂となる。また、多層構造体の総厚みに対する基材層(A)の厚み比率が上記範囲であると、本発明の多層構造体は耐熱性及び透明性に優れる。
本発明の多層構造体において、基材層(A)以外の部分の総厚みに対する、ポリエチレン樹脂を主成分として含有する層の合計厚みの比は0.50以上が好ましく、0.60以上がより好ましく、0.70以上がさらに好ましく、0.80以上であってもよい。ガスバリア性の要求度が低く、リサイクル性を重視する場合には、前記比は0.90以上が好ましく、0.95以上がより好ましく、0.97以上であってもよい。ここで、「ポリエチレン樹脂を主成分として含有する層」は、防湿層(B)を主に意味し、接着性樹脂(d)が変性ポリエチレンである場合は、接着層(D)もポリエチレン樹脂を主成分として含有する層として含めることとする。この比が上記範囲であると、本発明の多層構造体は防湿性に優れ、例えば、包装材料としての使用後には、基材層(A)以外の部分を分離して回収し再利用する際に、高品質なポリエチレンのリサイクル樹脂を効率的に製造できる。
本発明の多層構造体において、基材層(A)以外の部分の総厚みに対する、バリア層(C)の合計厚みの比は0.30以下が好ましく、0.20以下がより好ましい。ガスバリア性の要求度が低く、リサイクル性を重視する場合には、前記比は0.10以下が好ましく、0.05以下がより好ましく、0.03以下であってもよい。本発明の多層構造体において、基材層(A)以外の部分の総厚みに対する、バリア層(C)の合計厚みの比は、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましい。この比が上記範囲であると、本発明の多層構造体はガスバリア性に優れる一方で、例えば、包装材料としての使用後には、基材層(A)以外の部分を分離して回収し再利用する際に、高品質なポリエチレンのリサイクル樹脂を効率的に製造できる。
本発明の多層構造体の層構成としては、基材層(A)を「(A)」、防湿層(B)を「(B)」、バリア層(C)を「(C)」、接着層(D)を「(D)」、直接積層していることを「/」で示した場合、例えば(A)/(B)、(A)/(C)/(D)/(B)、(A)/(B)/(D)/(C)/(D)/(B)、(A)/(C)/(D)/(B)/(D)/(C)/(D)/(B)、(A)/(B)/(D)/(C)/(D)/(B)/(D)/(C)/(D)/(B)の層構成が典型的であり、生産性とガスバリア性を両立する観点からは、(A)/(C)/(D)/(B)又は(A)/(B)/(D)/(C)/(D)/(B)の層構成が好ましい。(A)/(C)/(D)/(B)の構成は、バリア層(C)の組成を適宜調整することで、基材層(A)との層間接着強度を制御しやすく、また、透明性に優れるという利点がある。また、(A)/(B)/(D)/(C)/(D)/(B)の構成は、バリア層(C)の両側に接着層(D)があるため、接着性樹脂(d)がポリエチレン(b)及びEVOH(c)の相溶化剤として機能しやすく、基材層(A)以外の部分を分離して回収し再利用する際に、高品質なポリエチレンのリサイクル樹脂をより効率的に製造できるという利点がある。防湿層(B)、バリア層(C)及び接着層(D)のいずれかが複数用いられる場合、それぞれ異なった種類の樹脂を用いることもできる。
基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間接着強度は200gf/15mm未満である。当該層間接着強度が200gf/15mm以上であると、基材層(A)とその他の部分との分離性が不十分となり、適切にリサイクルすることが困難となる。当該層間接着強度は150gf/15mm未満や100gf/15mm未満であってもよい。当該層間接着強度は通常、10gf/15mm以上である。当該層間接着強度は、隣接する層の組成や、積層する際の成形温度等により調整できる。基材層(A)のリサイクル性を良好にする観点から、基材層(A)に隣接する層は接着剤や接着性樹脂(接着層(D))ではないことが好ましく、防湿層(B)またはバリア層(C)であることが好ましい。
一方、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層以外の層間接着強度はいずれも200gf/15mm以上であることが好ましく、300gf/15mm以上がより好ましく、400gf/15mm以上がさらに好ましく、500gf/15mm以上であってもよい。層間接着強度がこれらの範囲にあることで、本発明の多層構造体は包装材料としての生産性やハンドリング性に優れる一方で、使用後には基材層(A)と基材層(A)以外の部分とを容易に分離できる。基材層(A)と基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度は、接着層(D)の種類や、接着層(D)を各層間に設けること等により調整できる。
本発明の多層構造体の20℃、65%RH条件下における酸素透過度(OTR)は用途に応じて調整すればよく特に限定されないが、2.0cc/(m・day・atm)以下が好ましい。OTRが2.0cc/(m・day・atm)以下である多層構造体は、ガスバリア性に優れ、内容物の保存性の高い包装材料として好適に用いられる。OTRは1.5cc/(m・day・atm)以下がより好ましく、1.0cc/(m・day・atm)以下がさらに好ましく、0.5cc/(m・day・atm)以下が特に好ましい。OTRはJIS K 7126-2:2006年に準じて測定され、具体的には実施例に記載された方法が採用される。
本発明の多層構造体を製造方法としては、それぞれの樹脂を別々のダイ又は共通のダイから押出して積層する従来の共押出法が好ましく使用できる。すなわち、本発明の多層構造体は共押出成形体、換言すると共押出多層構造体であることが好ましい。ダイとしては、環状ダイ又はTダイのいずれかを使用できる。溶融成形時の成形温度は、使用する樹脂の融点や溶融粘度をもとに適宜調整すればよく、150~300℃の範囲から選ぶことが多い。本発明の多層構造体は無延伸のものであってもよいし、一軸方向又は二軸方向に延伸又は圧延されたものであってもよいが、一般的には無延伸のものが使用され、後工程で熱成型等の二次加工を行う場合は、無延伸のものが好ましい。また、別の態様では、本発明の多層構造体は、押出ラミネート法や熱ラミネート法、ドライラミネート法等を使用又は複数を併用して製造することもできる。また、共射出法によって、多層構造体を製造することもできる。
本発明の多層構造体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記した以外の他の層を有していても良い。他の層の例としては、回収層が挙げられる。特に、本発明の多層構造体の基材層(A)を分離した後に得られるリサイクル樹脂(ポリエステル(a)を含む樹脂またはポリエチレン(b)を含む樹脂)を含む回収組成物を回収層の一部または全部として再使用することが好ましい。他の層の別の例としては、例えば印刷層が挙げられる。印刷層は、本発明の多層構造体を基材層(A)と基材層(A)以外の部分とに分離した際に、基材層(A)以外の部分に含まれる位置に積層されることが好ましい。印刷層としては、例えば顔料又は染料、及び必要に応じてバインダー樹脂を含む溶液を塗工し、乾燥して得られる皮膜が挙げられる。印刷層の塗工方法としては、グラビア印刷法の他、ワイヤーバー、スピンコーター、ダイコーター等を用いた各種の塗工方法が挙げられる。印刷層の厚さは特に限定されないが、0.5~10μmが好ましく、1~4μmがより好ましい。
本発明の多層構造体は、公知の深絞成形、ブロー成形、プレス成形等の方法により、再加熱後に二次成形加工を行い、本発明の多層容器を製造できる。深絞成形は、真空深絞成形、圧空深絞成形又は真空圧空深絞成形であってもよい。この場合、基材層(A)が多層容器の外側となるように成形することが好ましい。こうすることで、多層容器は透明で光沢のある優れた外観となり、耐熱性にも優れたものとなる。さらに、後述する複合容器を製造する際に、容器の内側に位置する防湿層(B)が蓋材との優れた熱融着性を発現できるようになり、使用後には基材層(A)以外の部分と蓋材を一体として分離できるため、分離性にも優れたものとなる。本発明の多層容器の形状は、トレイやカップ等、任意の形状を選択できる。
本発明の多層容器に、ポリエチレンを主成分として含む熱融着層を有する蓋材を熱融着して得られる複合容器も本発明の態様である。また、蓋材はガスバリア性を有することが好ましい。蓋材の総厚みは30~300μmが好ましく、40~200μmがより好ましく、50~150μmがさらに好ましい。蓋材の総厚みに対する、ポリエチレン樹脂を主成分として含有する層の合計厚みの比は0.50以上が好ましく、0.60以上が好ましく、0.70以上が好ましく、0.80以上であってもよい。ガスバリア性の要求度が低く、リサイクル性を重視する場合には、前記比は0.90以上が好ましく、0.95以上がより好ましく、0.97以上であってもよい。蓋材がこのような要件を満たすことで、本発明の複合容器は内容物の保存性に優れ、使用後には多層容器の基材層(A)以外の部分と蓋材を一体として分離できるため、高品質なポリエチレンのリサイクル樹脂を効率的に製造できる。
本発明の多層容器又は複合容器は、容器としての使用後に、基材層(A)からなる部分と、基材層(A)以外からなる部分とに分離・回収し、それぞれ独立に溶融成形することで高品質なリサイクル樹脂を製造できる。基材層(A)以外からなる部分は、蓋材と一体として分離・回収することもできる。本発明の一態様においては、多層容器または複合容器の分離作業は道具などを用いずに手作業で行うことができるが、従来の技術に比べて、特殊な接着剤等を利用しないため分離した基材層(A)への他成分の混入を抑制しやすく、溶剤への浸漬など特殊な操作を行わなくてよいため、簡便に分離でき且つ高品質な回収樹脂を得ることができる。このような分離・回収操作は、一般家庭や店舗等、包装材料が最終消費される現場にて、最終消費者によって実施されるのが通常である。基材層(A)からなる部分は、ポリエステル比率が極めて高いためポリエステルのリサイクル樹脂として、基材層(A)以外からなる部分は、ポリエチレン比率が高いためポリエチレンのリサイクル樹脂として、それぞれ高品質なリサイクル樹脂を製造することができる。また、容器内に食品等の内容物の残渣が存在している場合にも、基材層(A)からなる部分にはそれらの残渣が接触・混入しないため、より品質基準の高いポリエステルのリサイクル樹脂を効率的に製造することができる。製造されたリサイクル樹脂は、押出成形、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形等の公知の成形方法により、各種の成形体を製造可能である。溶融成形時の成形温度は、使用する樹脂の融点や溶融粘度をもとに適宜調整すればよい。リサイクル樹脂を用いて成形体を製造する際には、未使用の同種樹脂を含有していても構わないが、この場合のリサイクル樹脂の含有量は10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上であってもよい。
本発明の多層構造体、多層容器又は複合容器は、耐熱性及び防湿性に優れるため、食品包装、医薬品包装、工業薬品包装、農薬包装等の各種包装の材料として好適に使用できるが、さらに広範囲の用途に使用することが可能であり、これらの用途に限定されない。また、本発明の多層構造体、多層容器又は複合容器は、使用後の分離性にも優れるため、リサイクル性を大きく向上することができ、環境問題や廃棄物問題の解決に貢献することができる。
本発明の多層容器又は複合容器に内容物を充填してなる包装体が好適な実施態様である。充填できる内容物としては、飲料ではワイン、フルーツジュース等;食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品等;その他では医薬品、化粧品等が挙げられるが、これらに限定されない。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
(1)基材層(A)のためのポリエステル(a)含有樹脂組成物
テレフタル酸単位50モル%、エチレングリコール単位49モル%、及びジエチレングリコール単位1モル%からなり、極限粘度0.75dl/gであるポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記することがある)を、ポリエステル(a-1)として、基材層(A)のための樹脂組成物ペレットとしてそのまま使用した。
(2)防湿層(B)のためのポリエチレン(b)含有樹脂組成物の作製
ダウケミカル社製のポリエチレン(b-1)「エリート(商標)AT6101」(エチレンと1-オクテンをメタロセン触媒で重合した直鎖状低密度ポリエチレン、MFR(190℃、2.16kg荷重)0.8g/10min、密度0.905g/cm)とステアリン酸アミド(高級脂肪酸アミド化合物(x-1))(融点101℃)を、得られる樹脂組成物中のステアリン酸アミドの含有量が4質量%となるように溶融混練し、ステアリン酸アミドを含むマスターバッチペレットを製造した。溶融混練は、東洋精機製作所社製二軸押出機(D(mm)=25、L/D=25、スクリュー:同方向完全噛合型)を使用し、樹脂温度が220℃となるようにした。次いで、ポリエチレン(b-1)ペレットと、得られたマスターバッチペレットとを98/2の質量比でドライブレンドし、防湿層(B)のための樹脂組成物混合ペレットを得た。
(3)バリア層(C)のためのEVOH(c)含有樹脂組成物の作製
EVOH(c-1)(エチレン単位含有量32モル%、けん化度99.99、MFR(190℃、2.16kg荷重)1.6g/10min、酢酸ナトリウムをナトリウムイオン換算で220ppm、リン酸イオンをリン酸根換算で30ppm、ホウ酸をホウ素元素換算で150ppm含み、多価金属イオンは含まない)とステアリン酸マグネシウム(Mg-St)を、得られる樹脂組成物中のマグネシウムイオンの含有量が50ppmとなるように溶融混練し、バリア層(C)のための樹脂組成物ペレットを得た。溶融混練は、東洋精機製作所社製二軸押出機(D(mm)=25、L/D=25、スクリュー:同方向完全噛合型)を使用し、樹脂温度が220℃となるようにした。
(4)接着層(D)のための接着性樹脂(d)含有樹脂組成物
三井化学社製の無水マレイン酸変性ポリエチレン「アドマー(商標) NF518」(MFR(190℃、2.16kg荷重)3.1g/10min、密度0.91g/cm、酸価1.8mgKOH/g)を接着性樹脂(d-1)として、接着層(D)のための樹脂組成物ペレットとしてそのまま使用した。
(5)多層構造体の作製
上記(1)~(4)の各樹脂組成物ペレットを用い、共押出製膜設備を用いて(A)/(B)/(D)/(C)/(D)/(B)=500μm/40μm/6μm/8μm/6μm/40μm=PET500/PE40/tie6/EVOH8/tie6/PE40の層厚みと層構成を有する多層構造体を作製した。押出機はいずれもD(mm)=30の単軸押出機であり、L/D=28、圧縮比3.0のフルフライトスクリューを使用した。基材層(A)など、厚みの大きい層には、複数の押出機を使用した。また、ダイとしては、350mm幅のフィードブロック積層方式のTダイを使用した。このときの温度条件を以下に示す。
基材層(A)の押出温度:供給部/圧縮部/計量部/アダプター=270/270/270/275℃
防湿層(B)の押出温度:供給部/圧縮部/計量部/アダプター=175/220/220/275℃
バリア層(C)の押出温度:供給部/圧縮部/計量部/アダプター=175/220/220/275℃
接着層(D)の押出温度:供給部/圧縮部/計量部/アダプター=175/220/220/275℃
ダイ温度:275℃
冷却ロール温度:80℃
(6)多層構造体各層間の層間接着強度
上記(5)で得た多層構造体を23℃、50%RHにて調湿した後、押出方向に沿って長さ150mm、幅15mmの試料を切り取り、株式会社島津製作所社製オートグラフ「DCS-50M型引張試験機」にて、23℃、50%RHの雰囲気下、引張速度250mm/分にてT型剥離モードで剥離したときの剥離強度を測定した。測定は、各層間の剥離面について測定した。基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層(防湿層(B))との層間接着強度について、100gf/15mm未満、100gf/15mm以上200gf/15mm未満、及び200gf/15mm以上、の3つの基準で判定を行った。結果を表3に示す。また、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。
(7)多層構造体の外観特性評価(透明性評価)
上記(5)で得た多層構造体を目視で評価し、以下の基準で判定を行った。結果を表3に示す。
判定:基準
A :透明性が高く、均一な外観である
B :わずかに透明性が低いが、均一な外観である
C :やや透明性が低い、軽度のムラがある、または軽度の欠点が見られる
D :かなり透明性が低い、中程度のムラがある、または中程度の欠点が見られる
E :透明性が低い、重度のムラがある、または重度の欠点が見られる
(8)多層構造体の酸素透過速度測定
上記(5)で得た多層構造体を用いて、片方を酸素供給側、他方をキャリアガス側として酸素透過速度を測定した。具体的には、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX-TRAN2/21」)を用い、JIS K 7126-2(等圧法;2006)に準拠して、温度20℃、酸素供給側の湿度65%RH、キャリアガス側の湿度65%RH、酸素圧1気圧、キャリアガス圧力1気圧の条件下で酸素透過速度(単位:cc/(m・day・atm))を測定し、以下の基準で判定を行った。キャリアガスには2体積%の水素ガスを含む窒素ガスを使用した。結果を表3に示す。
判定:基準
A :0.5cc/(m・day・atm)未満
B :0.5cc/(m・day・atm)以上、1.0cc/(m・day・atm)未満
C :1.0cc/(m・day・atm)以上、1.5cc/(m・day・atm)未満
D :1.5cc/(m・day・atm)以上、2.0cc/(m・day・atm)未満
E :2.0cc/(m・day・atm)以上
(9)多層容器の作製
上記(5)で得た多層構造体を用いて、熱成形機(浅野製作所製:真空圧空深絞り成形機「FX-0431-3型」)にて、シート温度を130℃にして、圧縮空気(気圧5kgf/cm)により丸カップ形状(金型形状:上部75mmφ、下部60mmφ、深さ37mm、絞り比S=0.5)に熱成形し、多層容器を作製した。なお、多層構造体の基材層(A)側が容器の外側となるように熱成形した。成形条件を以下に示す。
ヒーター温度:600℃
プラグ:45φ×65mm
金型温度:40℃
(10)多層容器の耐熱性評価
上記(9)で得た多層容器を、水平な台上に逆さ(底面が上方、開口部が下方となるよう)に配置し、その上(底面の上)に1kgの荷重を置いた。この状態のまま90℃で静置し、5時間後の容器及び荷重の様子を観察して、以下の基準で判定を行った。結果を表3に示す。なお、判定D及びEは許容できない基準である。
判定:基準
A :ほとんど変形は見られない
B :わずかに変形が見られる(荷重最下部の低下が1cm未満)
C :軽度の変形が見られる(荷重最下部の低下が1cm以上、1.5cm未満)
D :中程度の変形が見られる(荷重最下部の低下が1.5cm以上、2cm未満)
E :重度の変形が見られる(荷重最下部の低下が2cm以上)
(11)多層容器の防湿性評価
上記(9)で得た多層容器の開口部より粉末ミルクを20g入れ、アルミ箔/ポリエチレン=15μm/50μmの構成を有する蓋材フィルムを熱融着(蓋材のポリエチレンと多層容器の防湿層(B)との熱融着)して多層容器の開口部を密封することで、内容物として粉末ミルクを含む複合容器を作製した。この容器を温度40℃、湿度90%で静置し、5日後の粉末ミルクの様子を観察して、以下の基準で判定を行った。結果を表3に示す。なお、判定Eは許容できない基準である。
判定:基準
A :ほとんど変化は見られない
B :わずかにダマの発生が見られる
C :軽度のダマの発生が見られる、又は軽度の着色が見られる
D :中程度のダマの発生が見られる、又は中程度の着色が見られる
E :重度のダマの発生が見られる、又は重度の着色が見られる
(12)多層容器の耐膠着性評価
上記(9)で得た多層容器を、水平な台上に開口部が下部となるように4つ重ね、上方となっている底面の上に500gの荷重を置いて室温で静置した。1時間後に重ねた容器を手でばらしていく際の、ばらしやすさを耐膠着性の指標とし、以下の基準で判定を行った。結果を表3に示す。
判定:基準
A :スムーズにばらすことができる
B :やや力を入れないとばらせない
C :かなりの力を入れないとばらせない、又はばらした後の容器に軽度の膠着跡や傷が生じる
D :ばらすのが困難、又はばらした後の容器に中程度から重度の膠着跡や傷が生じる
(13)多層容器の分離性評価
上記(9)で得た多層容器に、ポリエチレン/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂/ポリエチレン=30μm/4μm/6μm/4μm/30μmの構成を有する蓋材フィルムを熱融着(蓋材のポリエチレンと多層容器の防湿層(B)との熱融着)して複合容器を作製した。この際、蓋材フィルムには指でつまめるようなタブ部を成型した。次に、蓋材フィルムのタブ部を指でつかみ、基材層(A)からなる部分と、基材層(A)以外からなる部分(蓋材フィルムを含む)とに分離し、分離しやすさを以下の基準で判定を行った。分離する際、蓋材フィルムと多層容器の基材層(A)以外からなる部分は剥離されず、多層容器部分の基材層(A)のみが剥離し分離される。結果を表3に示す。なお、判定D及びEは許容できない基準である。なお、分離された基材層(A)以外からなる部分は、ポリエチレンを主成分として含む樹脂の比率が高く、ポリエチレン系のリサイクル樹脂の製造に適したものとなっている。
判定:基準
A :スムーズに分離することができる
B :やや力を入れないと分離できない
C :かなりの力を入れないと分離できない、分離中に容器が変形して作業性がややよくない、又は分離中に基材層(A)からなる部分又は基材層(A)以外からなる部分に亀裂が発生する
D :非常に強い力を入れないと分離できない、分離中に容器が大きく変形して作業性がよくない、又は分離中に基材層(A)からなる部分又は基材層(A)以外からなる部分が破断する
E :全く分離できない
(10)基材層(A)の光線透過率
上記(9)で得た多層容器を基材層(A)からなる部分と基材層(A)以外からなる部分とに分離した。分離した基材層(A)からなる部分について、島津製作所製の紫外可視分光光度計「UV-2450」を用いて波長600nmにおける光線透過率を測定したところ、光線透過率は85%以上であった。
(14)多層容器から分離された基材層(A)からなる部分のリサイクル性評価
上記(9)で得た多層容器を基材層(A)からなる部分と基材層(A)以外からなる部分とに分離し、基材層(A)からなる部分を回収して4mm四方以下のサイズに粉砕した。この粉砕物を厚み1mmのテフロン(登録商標)シートに挟み、280℃で熱プレスして厚み約200μmの単層フィルムを得た。得られた単層フィルムは均一で透明性が高く、良好な外観であった。
(15)多層容器から分離された基材層(A)以外からなる部分のリサイクル性評価
上記(9)で得た多層容器を基材層(A)からなる部分と基材層(A)以外からなる部分とに分離し、基材層(A)以外からなる部分を回収して4mm四方以下のサイズに粉砕した。この粉砕物と日本ポリエチレン社製の低密度ポリエチレン樹脂「ノバテックLD LJ400」(MFR(190℃、2.16kg荷重)1.5g/10min、密度0.921g/cm)とを質量比(粉砕物/ポリエチレン樹脂)40/60の割合でブレンドし、下記に示す押出条件にて単層製膜を行うことで、厚み50μmの単層フィルムを得た。単層フィルムの厚みはスクリュー回転数及び引取りロール速度を適宜変えることで調整した。また、対照として、ポリエチレン樹脂のみを用いて、同様に厚み50μmの単層フィルムを得た。
押出機:東洋精機製作所社製単軸押出機
スクリュー径:20mmφ(L/D=20、圧縮比=3.5、フルフライト型)
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=230/230/230/230℃
引取りロール温度:80℃
得られた単層フィルムのブツ及び着色状況を下記A~Eの5段階で評価した。結果を表3に示す。
ブツの判定:基準
A :対照と比べて、ブツの量はほとんど変わらなかった
B :対照と比べて、小さなブツの量がわずかに多かった
C :対照と比べて、小さなブツの量が多かった
D :対照と比べて、大きなブツの量が多かった
E :対照と比べて、大きなブツの量が非常に多かった
着色の判定:基準
A :対照と比べて、色相変化の度合いは小さかった
B :対照と比べて、軽度の着色が見られた
C :対象と比べて、中程度の着色が見られた
D :対象と比べて、顕著な着色が見られた
E :対象と比べて、顕著な着色が見られ、ムラも見られた
また、この粉砕物60gをラボプラストミル(二軸異方向)を用いて窒素雰囲気下、230℃、100rpmの条件で混練したときのトルク変化を測定した。混練開始10分後のトルク値(TI)及び90分後のトルク値(TF)を算出し、当該値の比率(TF/TI)によって、粘度安定性を下記A~Eの4段階で評価した。結果を表3に示す。
判定:基準
A :80/100以上120/100未満
B :70/100以上80/100未満、又は120/100以上130/100未満
C :60/100以上70/100未満、又は130/100以上140/100未満
D :50/100以上60/100未満、又は140/100以上150/100未満
E :50/100未満、又は150/100以上
実施例2
ポリエチレン(b-1)の代わりに株式会社プライムポリマー製のポリエチレン(b-2)「エボリュー(商標) SP0510」(エチレンと1-オクテンをメタロセン触媒で重合した直鎖状低密度ポリエチレン、MFR(190℃、2.16kg荷重)1.2g/10min、密度0.903g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。また実施例1で得られた多層構造体と実施例2で得られた多層構造体について、23℃、50%RH条件下で24時間調湿した後、同条件下で、先端直径1mmの針を50mm/minの速度で突き刺した際の刺突強度を測定したところ、実施例2の多層構造体は実施例1の多層構造体と比べて刺突強度がやや劣る結果であった。
実施例3
ポリエチレン(b-1)の代わりに株式会社プライムポリマー製のポリエチレン(b-3)「エボリュー(商標) SP0540」(エチレンと1-オクテンをメタロセン触媒で重合した直鎖状低密度ポリエチレン、MFR(190℃、2.16kg荷重)3.8g/10min、密度0.903g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。また、実施例2で得られた多層構造体と実施例3で得られた多層構造体について、23℃、50%RH条件下で24時間調湿した後、同条件下で、50cmの高さから重さ500gのおもりを落下させて破断の有無を確認したところ、実施例3の多層構造体は実施例2の多層構造体と比べて、破断する比率及びその程度がやや大きい結果となった。
実施例4
ポリエチレン(b-1)の代わりに株式会社プライムポリマー社製のポリエチレン(b-4)「エボリュー(商標) SP1510」(エチレンと1-オクテンをメタロセン触媒で重合した直鎖状低密度ポリエチレン、MFR(190℃、2.16kg荷重)1.0g/10min、密度0.915g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。実施例2と比べ、防湿性が優れていたが、実施例2で得られた複合容器と実施例4で得られた複合容器について、内容物として水を充填して1mの高さから落下させ、内容物の水が漏れ出すまでの回数を評価したところ、実施例4の複合容器は実施例2の複合容器と比べて、内容物の水が漏れだすまでの回数がやや少ない結果となった。
実施例5
ポリエチレン(b-1)の代わりに株式会社プライムポリマー製のポリエチレン(b-5)「エボリュー(商標) SP1540」(エチレンと1-オクテンをメタロセン触媒で重合した直鎖状低密度ポリエチレン、MFR(190℃、2.16kg荷重)3.8g/10min、密度0.913g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。また、実施例4で得られた多層構造体と実施例5で得られた多層構造体について、23℃、50%RH条件下で24時間調湿した後、同条件下で、50cmの高さから重さ500gのおもりを落下させて破断の有無を確認したところ、実施例5の多層構造体は実施例4の多層構造体と比べて、破断する比率及びその程度がやや大きい結果となった。
実施例6
ポリエチレン(b-1)の代わりに日本ポリエチレン株式会社製のポリエチレン(b-6)「ノバテックLD LJ400」(低密度ポリエチレン、MFR(190℃、2.16kg荷重)1.5g/10min、密度0.921g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。実施例1と比べ、防湿性が優れていたが、複合容器の分離性は劣る結果であった。また、実施例1で得られた複合容器と実施例6で得られた複合容器について、内容物として水を充填して1mの高さから落下させ、内容物の水が漏れ出すまでの回数を評価したところ、実施例6の複合容器は実施例1の複合容器と比べて、内容物の水が漏れだすまでの回数が少ない結果となった。
実施例7
ポリエチレン(b-1)の代わりに日本ポリエチレン株式会社製のポリエチレン(b-7)「ノバテックLL UF943」(直鎖状低密度ポリエチレン、MFR(190℃、2.16kg荷重)2.1g/10min、密度0.938g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。実施例6と比べ、防湿性がより優れていた。また、実施例6及び実施例7の分離性の評価はいずれもC判定であったが、実施例7の複合容器の分離性の方が実施例6の分離性よりもわずかに劣る結果となった。さらに、実施例6で得られた複合容器と実施例7で得られた複合容器について、内容物として水を充填して1mの高さから落下させ、内容物の水が漏れ出すまでの回数を評価したところ、実施例7の複合容器は実施例6の複合容器と比べて、内容物の水が漏れだすまでの回数がやや少ない結果となった。
実施例8
ポリエチレン(b-1)の代わりに日本ポリエチレン株式会社製のポリエチレン(b-8)「ノバテックHD HY540」(高密度ポリエチレン、MFR(190℃、2.16kg荷重)1.0g/10min、密度0.960g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。実施例7及び実施例8の防湿性及び透明性の評価はいずれもA判定であるが、実施例8の防湿性は実施例7の防湿性よりも優れている一方、実施例8の透明性は実施例7の透明性よりも劣っていた。また、実施例7及び実施例8の分離性の評価はいずれもC判定であるが、実施例8の複合容器は実施例7の複合容器の分離性よりもわずかに劣っていた。さらに、実施例7で得られた複合容器と実施例8で得られた複合容器について、内容物として水を充填して1mの高さから落下させ、内容物の水が漏れ出すまでの回数を評価したところ、実施例8の複合容器は実施例7の複合容器と比べて、内容物の水が漏れだすまでの回数がやや少ない結果となった。
実施例9
ステアリン酸アミド(高級脂肪酸アミド化合物(x-1))を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。実施例1と比べ、耐膠着性が大きく劣る結果であった。
実施例10~12
防湿層(B)中のステアリン酸アミド(高級脂肪酸アミド化合物(x-1))の含有量が表1の通りになるように、ポリエチレン(b-1)ペレットと、ステアリン酸アミドマスターバッチペレットのドライブレンド比を変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。ステアリン酸アミドの含有量が増えるにしたがって、耐膠着性の改善が見られたが、多すぎる場合には外観特性の悪化が見られた。
実施例13
ステアリン酸アミド(高級脂肪酸アミド化合物(x-1))の代わりに、オレイン酸アミド(高級脂肪酸アミド化合物(x-2))(融点72℃)を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。実施例1で得られた多層容器と実施例13で得られた多層容器について、実施例1の(12)多層容器の耐膠着性評価に記載の評価を0℃の環境下で実施したところ、実施例13で得られた多層容器は実施例1で得られた多層容器と比べ、低温環境下での耐膠着性がやや優れていた。
実施例14
ステアリン酸アミド(高級脂肪酸アミド化合物(x-1))の代わりに、ステアリン酸アミド(高級脂肪酸アミド化合物(x-1))とオレイン酸アミド(高級脂肪酸アミド化合物(x-2))を1/1の質量比で使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。実施例1、実施例13及び実施例14で得られた多層容器について、実施例1の(12)多層容器の耐膠着性評価に記載の評価を、0℃で1時間、次いで40℃で1時間、次いで80℃で1時間それぞれ静置した後に実施した所、融点が異なる2種以上の高級脂肪酸アミド化合物を使用した実施例14では、高級脂肪酸アミド化合物を単独で使用した実施例1や実施例13と比べて耐膠着性に優れ、低温環境から高温環境まで、より広い温度帯での優れた耐膠着性が見られた。
実施例15
ステアリン酸アミドを含むマスターバッチペレットを作製する際に、さらに平均粒子径3.9μmの球状シリカ粒子を10質量%添加して溶融混練した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。実施例1と比べ、優れた耐膠着性が見られた。
実施例16
EVOH(c-1)の代わりにEVOH(c-2)(エチレン単位含有量27モル%、けん化度99.99、MFR(190℃、2.16kg荷重)1.5g/10min、酢酸ナトリウムをナトリウムイオン換算で220ppm、リン酸イオンをリン酸根換算で30ppm、ホウ酸をホウ素元素換算で120ppm含み、多価金属イオンは含まない)を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。実施例1と比べ、リサイクル性はやや低下するものの、優れたガスバリア性が見られた。
実施例17
EVOH(c-1)の代わりにEVOH(c-3)(エチレン単位含有量44モル%、けん化度99.99、MFR(190℃、2.16kg荷重)5.7g/10min、酢酸ナトリウムをナトリウムイオン換算で220ppm、リン酸イオンをリン酸根換算で30ppm、ホウ酸をホウ素元素換算で100ppm含み、多価金属イオンは含まない)を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。実施例1と比べ、ガスバリア性はやや低下するものの、優れたリサイクル性が見られた。
実施例18
EVOH(c-1)の代わりに、EVOH(c-2)とEVOH(c-3)を80/20の質量比でドライブレンドしたペレットを使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。EVOHを単独で使用した実施例16や実施例17と比べ、ガスバリア性、熱成型性、及びリサイクル性のバランスが優れていた。なお熱成形性の評価は、多層容器の側壁の厚みムラを評価することにより実施した。
実施例19
EVOH(c-1)にステアリン酸マグネシウムを混練せずに、EVOH(c-1)をそのままEVOH含有樹脂組成物ペレットとして用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。
実施例20~22
EVOH(c-1)と混練するステアリン酸マグネシウム量を、表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表3及び表4に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。
実施例23~25
EVOH(c-1)と混練するステアリン酸マグネシウムを、それぞれステアリン酸カルシウム(Ca-St)(実施例23)、ステアリン酸亜鉛(Zn-St)(実施例24)、酢酸マグネシウム(MgOAc)(実施例25)に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表4に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。
実施例26~30
多層構造体の層構成及び各層の厚みを表4の通り(表4中の層構成に記載される数値は、各層の厚み(μm)を意味する)に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表4に示す。なお、実施例26~29において、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。
実施例31
ポリエステル(a-1)の代わりに、ポリエステル(a-1)に白色の顔料を添加して溶融混練して得られた着色ポリエステル(a-2)を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表4に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は70%未満であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、白色に着色しており、ポリエステル系リサイクル樹脂としての品質や経済的価値が低下した。
実施例32~33
多層構造体の各層の厚みを表4の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表4に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。
実施例34
基材層(A)と隣接する防湿層(B)のための樹脂組成物として、ポリエチレン(b-1)をそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表4に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であり、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムは、均一で透明性が高く、良好な外観であった。
比較例1
多層構造体の各層の厚みを表4の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表4に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であったが、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムにはわずかに欠点が見られた。
比較例2
共押出製膜設備を用いて多層構造体を作製する際に、三井化学社製の無水マレイン酸変性ポリオレフィン「アドマー(商標) SF741」(MFR(190℃、2.16kg荷重)6.0g/10min、密度0.90g/cm、接着性樹脂(d-2))からなる厚み10μmの接着性樹脂層を、基材層(A)と防湿層(B)の間に設けて、PET500に隣接していたPEの厚みを30μmに変更して、PET500/tie10/PE30/tie6/EVOH8/tie6/PE40(tieは接着性樹脂(d-2)、tieは接着性樹脂(d-1)を意味する。)の層構成を有する多層構造体を製造した以外は、、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表4に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。本比較例では、ポリエステルと接着性樹脂が高い層間接着性を有するため、基材層(A)を分離することはできなかった。
比較例3
実施例1で製造した多層構造体を、基材層(A)からなる部分と基材層(A)以外の部分とに分離した。次いで、基材層(A)からなる部分と基材層(A)以外の部分とを厚み4μmの2液反応型ポリウレタン系接着剤層を介してラミネートし、PET500/Ad4/PE40/tie6/EVOH8/tie6/PE40(Adはポリウレタン系接着剤層)の多層構造体とした以外は、実施例1と同様にして多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表4に示す。なお、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。本比較例は、ポリエステルとポリウレタン系接着剤層が高い層間接着性を有するため、基材層(A)を分離することはできなかった。
比較例4~6
多層構造体の層構成及び各層の厚みを表4の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット、多層構造体、多層容器及び複合容器を作製し、各種測定及び評価を行った。結果を表4に示す。なお、比較例4及び5において、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間以外の層間接着強度(基材層(B)及び接着層(D)、接着層(D)及びバリア層(C)の層間接着強度)はいずれも200gf/15mm以上であった。また、比較例4においては、基材層(A)からなる部分の波長600nmにおける光線透過率は85%以上であったが、その粉砕物を熱プレスして得た厚み約200μmの単層フィルムにはわずかに欠点が見られた。
Figure 2024016881000001
Figure 2024016881000002
Figure 2024016881000003
Figure 2024016881000004

Claims (16)

  1. ポリエステル(a)を主成分として含む基材層(A)を一方の表面に有し、ポリエチレン(b)を主成分として含む防湿層(B)を他方の表面に少なくとも有する多層構造体であって、多層構造体の総厚みが200μm以上であり、多層構造体の総厚みに対する基材層(A)の厚み比率が0.50以上であり、基材層(A)と、基材層(A)と隣接する層との層間接着強度が200gf/15mm未満である、多層構造体。
  2. エチレン単位含有量が20~50モル%であり、けん化度が90モル%以上であるエチレン-ビニルアルコール共重合体(c)を主成分として含むバリア層(C)及び接着性樹脂(d)を主成分として含む接着層(D)をさらに有する、請求項1に記載の多層構造体。
  3. 基材層(A)、バリア層(C)、接着層(D)及び防湿層(B)がこの順に互いに隣接した層構成からなり、基材層(A)とバリア層(C)との層間接着強度が200gf/15mm未満であり、基材層(A)とバリア層(C)との層間以外の層間接着強度がいずれも200gf/15mm以上である、請求項2に記載の多層構造体。
  4. 基材層(A)、防湿層(B)、接着層(D)、バリア層(C)、接着層(D)及び防湿層(B)がこの順に互いに隣接した層構成からなり、基材層(A)と防湿層(B)との層間接着強度が200gf/15mm未満であり、基材層(A)と防湿層(B)との層間以外の層間接着強度がいずれも200gf/15mm以上である、請求項2に記載の多層構造体。
  5. ポリエチレン(b)が、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又はそれらの混合物であり、密度が0.880~0.940g/cmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の多層構造体。
  6. 少なくとも表面に位置する防湿層(B)が、融点が60~120℃の高級脂肪酸アミド化合物(x)を100~7000ppm含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の多層構造体。
  7. 少なくとも表面に位置する防湿層(B)が、平均粒子径が1~30μmである無機酸化物粒子(y)を500~5000ppm含有し、無機酸化物粒子(y)が酸化ケイ素粒子及び金属酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1項に記載の多層構造体。
  8. バリア層(C)が、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群から選択される少なくとも1種の多価金属イオン(z)を10~200ppm含有する、請求項2~7のいずれか1項に記載の多層構造体。
  9. JIS K 7126-2:2006に記載の方法で測定した20℃、65%RH条件下における酸素透過速度が、2.0cc/(m・day・atm)未満である、請求項1~8のいずれか1項に記載の多層構造体。
  10. 波長600nmにおける基材層(A)の光線透過率が70%以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の多層構造体。
  11. 基材層(A)を除いて、融点が200℃以上の樹脂を主成分として含む高融点樹脂層を有さない、請求項1~10のいずれか1項に記載の多層構造体。
  12. 共押出多層構造体である、請求項1~11のいずれか1項に記載の多層構造体。
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載の多層構造体を二次加工成形してなる、多層容器。
  14. ポリエチレンを主成分として含む熱融着層を有する蓋材及び請求項13に記載の多層容器を有し、前記蓋材が前記多層容器に熱融着している、複合容器。
  15. 請求項13に記載の多層容器又は請求項14に記載の複合容器を、基材層(A)からなる部分と、基材層(A)以外からなる部分とに分離する工程を含む、リサイクル方法。
  16. 基材層(A)からなる部分と、基材層(A)以外からなる部分とをそれぞれ独立に溶融成形する工程を含む、請求項15に記載のリサイクル方法。
JP2022119148A 2022-07-27 2022-07-27 多層構造体、多層容器及び複合容器、並びにそのリサイクル方法 Pending JP2024016881A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022119148A JP2024016881A (ja) 2022-07-27 2022-07-27 多層構造体、多層容器及び複合容器、並びにそのリサイクル方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022119148A JP2024016881A (ja) 2022-07-27 2022-07-27 多層構造体、多層容器及び複合容器、並びにそのリサイクル方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2024016881A true JP2024016881A (ja) 2024-02-08

Family

ID=89807215

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022119148A Pending JP2024016881A (ja) 2022-07-27 2022-07-27 多層構造体、多層容器及び複合容器、並びにそのリサイクル方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2024016881A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7408561B2 (ja) 多層構造体及びそれを用いた包装材
US10377896B2 (en) Biopolymer roll stock for form-fill-sealed article
TWI781086B (zh) 層疊片材和成形容器
JP5814492B1 (ja) 樹脂組成物、多層構造体、及びバッグインボックス用内容器
CN101065303A (zh) 掺入磺基间苯二甲酸改性聚酯多层共挤塑结构的物品
JP6188805B2 (ja) 酸素捕捉性プラスチック材料
JPS63230757A (ja) 樹脂組成物
US5177138A (en) Resin composition including a saponified ethylene-vinyl acetate copolymer, polyolefin, a graft copolymer and hydrotalcite
US11207873B2 (en) Laminate having layer containing saponified ethylene/vinyl ester copolymer, secondary molded article thereof, and method for manufacturing bottomed container
JP2013103438A (ja) シートおよび該シートを用いた容器
JP2024016881A (ja) 多層構造体、多層容器及び複合容器、並びにそのリサイクル方法
JP7340125B1 (ja) 多層フィルム、多層構造体、包装材料、回収組成物、及び多層フィルム又は多層構造体の回収方法
JP2018167547A (ja) 易剥離性フィルム、蓋材、及び容器
JP7383854B1 (ja) 多層フィルム及びそれを用いた包装材料
US5037703A (en) Multilayered structure
JP6439428B2 (ja) 深絞り成形用多層フィルム
JP2023094110A (ja) 多層フィルム及びそれを用いた包装材料
WO2023042753A1 (ja) 樹脂シート及び成形容器
JP5387158B2 (ja) ポリエステル樹脂組成物
WO2023249109A1 (ja) 多層フィルム及びそれを用いた包装材料
JPH04202549A (ja) 樹脂組成物および多層構造体
JP2023176446A (ja) 多層フィルム、深絞り成形用多層フィルム及び深絞り成形体
JP6464386B2 (ja) 包装容器
JP2022152666A (ja) 単層体、製造方法、積層体及び成形体
JP2023086539A (ja) 樹脂シート及び成形容器