JP6506068B2 - 防火具及び建築物の防火構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、建築物の例えば壁や床、天井などの区画体に形成された貫通孔と、貫通孔に挿通される配管やケーブルなどの管体との隙間から、火災時に火や熱の漏洩を防止するための防火具及び建築物の防火構造体に関する。
この種の防火構造体として、例えば、区画体の貫通孔に挿通される複数の配管と貫通孔の内周面との間の空間に、パテ状の熱膨張材を充填して貫通孔を閉塞したものが知られている。また、例えば特許文献1では、貫通孔の外部に露出する複数の配管の周囲をパテ状の熱膨張材でまとめるとともに、熱膨張材を環状の保持枠で保持し、区画体の外表面に対して熱膨張材で貫通孔を塞ぐように保持枠を固定した防火構造体が提案されている。これらの防火構造体では、火災時に配管が溶融又は焼失して大きな空間ができたとしても、熱膨張材の膨張により配管が溶融又は焼失してできた空間が埋められるので、火炎や熱の漏洩を防ぐことができる。
特許5460910号公報
しかし、パテ状の熱膨張材を貫通孔に充填する作業は、煩雑な作業であり、作業者の熟練度によって施工状態にばらつきが見られる。そのため、区画体の貫通孔における防火性能に差が生じるという課題がある。また、上述した防火構造体のように、区画体の貫通孔が熱膨張材により塞がれて見えなくなると、施工管理や確認が難しいという課題がある。また、熱膨張材がパテ状であるため、熱膨張材の一部がダレて、床などに落ちる可能性がある。
本発明は、上記した課題に着目してなされたもので、パテ状の熱膨張材を極力使用せず、建築物の区画体に形成された貫通孔への施工が簡易な防火具、及び、当該防火具を用いた建築物の防火構造体を提供することを目的とする。
本発明の上記目的は、建築物の区画体に形成されかつ少なくとも1本の管体が挿通される貫通孔に設置され、前記貫通孔の防火に用いられる防火具であって、前記区画体の外面の前記貫通孔の周囲に取り付けられ、前記管体を挿通可能な保持枠と、熱膨張性を有する長尺の防火材と、を備え、前記防火材は、前記保持枠に取り付けられ、前記管体とともに前記貫通孔に挿通される防火具により達成される。
上記構成の防火具において、前記保持枠には、前記防火材を取り付けるための取付孔が形成されており、前記取付孔は、前記防火材の一端部を嵌め込み可能であることが好ましい。なお、この場合には、前記保持枠は、前記防火材を囲む周壁部と、前記周壁部の先端部から内側に向かって張り出す張出部とを備え、前記張出部に前記取付孔を備えることがさらに好ましい。
なお、取付孔に代えて、防火具は、前記保持枠の内面に、前記防火材を取り付けるための取付部が設けられており、前記取付部は、前記防火材の一端部を嵌め込み可能な開口又は挟み込み可能なスリットを有していてもよい。なお、この場合には、前記保持枠は、前記防火材を囲む周壁部と、前記周壁部の先端部から内側に向かって張り出す張出部とを備え、前記張出部に前記取付部を備えることがさらに好ましい。
また、上記構成の防火具において、前記保持枠は、前記周壁部の基端部から外側に向かって突き出す突出部を備え、前記突出部に、前記保持枠を前記区画体に固定手段で固定するための固定孔が形成されていることがさらに好ましい。
また、本発明の上記目的は、建築物の区画体に形成され、少なくとも1本の管体が挿通される貫通孔に、上記構成の防火具が用いられている建築物の防火構造体によっても達成される。
本発明によれば、建築物の区画体に形成された貫通孔に防火対策を施すのに、パテ状の熱膨張材を極力使用することがないうえ、容易に施工することができる。
本発明の一実施形態に係る防火構造体の概略構成を示す斜視図である。 図1の断面図である。 図1の防火具の正面側から視た斜視図である。 図3の正面図である。 図3の背面図である。 防火材の斜視図である。 防火材の変形例の平面図である。 保持枠の変形例の背面図である。 保持枠の変形例の背面図である。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の防火具は、建築物の例えば壁や床、天井などの区画体に形成された貫通孔に設置され、この貫通孔の内周面と、貫通孔に挿通される配管やケーブルなどの配管類(管体)との隙間から、火災時に火や熱が漏洩することを防止するためのものである。
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る防火具1を用いた建築物の区画体11の貫通孔12における防火構造体10を示している。区画体11は、部屋などの隣接する防火区画A,Bを仕切る役割を果たすものである。なお、本実施形態では、区画体11として、隣接する防火区画A,Bを垂直に仕切る壁に防火具1を設置した防火構造体10を例にして説明しているが、本発明の範囲はこの実施形態に限定されるものでなく、隣接する防火区画を水平に仕切る天井や床などに防火具1を設置した防火構造体も本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
区画体11としての壁の構造は、特に限定されるものではなく、例えば、鉄筋コンクリート構造(RC)や軽量気泡コンクリート構造(ALC)の他、図示は省略するが、木製又は鋼製の間柱を挟み込むように両側に石膏ボードを固定した間仕切壁(中空壁)などを挙げることができる。区画体11には、貫通孔12が形成されており、貫通孔12により隣接する防火区画A,Bが連通している。壁が間仕切壁(中空壁)の場合には、各石膏ボードに貫通孔12が形成されている。貫通孔12の形状は、図示例では断面視円形状であるが、断面視矩形状など、種々の形状であってもよい。貫通孔12は、少なくとも1本の管体13が挿通される。管体13は、各種の配管(例えば水道管や給水管、排水管、冷媒管など)やケーブル(例えば電線や光ファイバケーブルなど)であり、図示例では3本挿通されている。
防火具1は、図3〜図5に示すように、区画体11の外面の貫通孔12の周囲に取り付けられる保持枠2と、保持枠2に取り付けられた、熱膨張性を有する長尺の防火材3とを備える。
保持枠2は、両端が開口した略円筒形状のものであり、管体13を挿通可能である。保持枠2は、本実施形態では、略円筒形状の側面を構成する周壁部20と、周壁部20の先端部(区画体11に取り付けられる側とは反対側の端部)から径方向内側に向かって張り出すリング形状の張出部21と、周壁部20の基端部(区画体11に取り付けられる側の端部)から径方向外側に向かって突き出す複数(図示例では4つ)の突出部22とを備えている。
保持枠2は、火災時の熱に耐えることができるとともに、防火材3の熱膨張による膨張力に耐えることができる素材で形成されることが好ましく、例えば、鉄、ステンレスなどの鋼、銅などを挙げることができる。保持枠2の厚みは特に限定されるものではないが、コスト、輸送時や施工時の扱いやすさ、強度などの点から、0.3mm以上10mm以下であることが好ましい。
周壁部20は、基端部から先端部に向けて径が小さくなるとともに緩やかに湾曲する形状に形成されている。周壁部20は、区画体11の貫通孔12に挿通される管体13を取り囲んでいる。
張出部21には、防火材3を取り付けるための取付孔23が形成されている。取付孔23は、防火材3の一端部を嵌め込み可能な形状及び大きさに形成されている。つまり、取付孔23は、防火材3の一端部の形状と同じ形状に形成されており、大きさは防火材3の一端部の大きさと同じあるいは若干小さく形成されている。本実施形態では、取付孔23は、防火材3の一端部の突起部30が嵌合するよう、突起部30の形状及び大きさに合った矩形状に形成されている。防火材3の一端部を取付孔23に嵌合させることで、防火材3は保持枠2に取り付けられる。よって、保持枠2に取り付ける防火材3の数と少なくとも同じ数の取付孔23が張出部21に形成される。
突出部22には、保持枠2を区画体11の外面にビスやネジなどの固定手段24を用いて固定するための固定孔25が形成されている。複数の突出部22は、周壁部20の外周面に、周方向に等しい間隔をあけて設けられており、保持枠2をバランスよく区画体11に取り付けることができる。突出部22は、周壁部20の基端部の一部分を残りの部分よりも軸方向に長く突き出させ、この突き出た部分を外側に90°折り曲げることで形成してもよいし、断面視L字状の板材の一方の板状部分を周壁部20に接着やビスやネジなどの固定手段で固定することで、他方の板状部分を突出部22としてもよい。また、突出部22を円環板形状とし、周壁部20の基端部の一周にわたって径方向外側に向かって突出部22が突き出でるようにしてもよい。この場合には、円板形状の突出部22に、周方向に等しい間隔をあけて固定孔25が複数形成される。
防火材3は、板状や棒状、柱状、帯状などの、幅及び厚みよりも長さ(全長)が大きい長手形状のもの(長手方向を有するもの)である。防火材3は、本実施形態では、図6に示すように、板状に形成されている。また、防火材3は、本実施形態では、長手方向の一端部から板状の突起部30が突き出ている。この突起部30が保持枠2の取付孔23に嵌め込まれることで、防火材3は、保持枠2に取り付けられ、管体13とともに区画体11の貫通孔12に挿通される。突起部30は、本実施形態では、防火材3の一端部において、一方の端に設けられているが、真ん中など、設けられる部分は特に限定されない。
防火材3の長さは、特に限定されるものではなく、貫通孔12の全長(つまり区画体11の厚み)に応じて設定され、通常、貫通孔12の全長の約10%以上200%以下であり、好ましくは約30%以上200%以下であり、より好ましくは約40%以上200%以下であり、より好ましくは約50%以上200%以下であり、より好ましくは約60%以上200%以下であり、より好ましくは約70%以上200%以下であり、より好ましくは約80%以上200%以下であり、より好ましくは約90%以上200%以下であり、より好ましくは約100%(貫通孔12の全長とほぼ同じ)以上200%以下である。防火材3の長さが大きい方が、熱により膨張したときの防火性能が向上するが、その分のコストが増大するため、防火材3の長さはこのトレードオフにより決定される。
防火材3の厚みや幅は、貫通孔12内に挿通できる寸法であれば特に限定されるものではないが、防火材3の厚みや幅が大きい方が、同様に防火性能が向上するが、貫通孔12内への挿通が困難になるうえその分のコストが増大するため、防火材3の厚みや幅はこのトレードオフにより決定される。
防火材3は、熱膨張材料により形成された耐火性及び熱膨張性を有する熱膨張材の層を少なくとも含んでいる。熱膨張材料は、加熱により膨張する材料であれば特に限定されないが、50kW/mの加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3倍〜40倍の材料を好適に用いることができる。このような熱膨張材料としては、例えば、バインダー又はマトリックスとしての熱可塑性樹脂やゴム物質、熱硬化性樹脂などの樹脂に加え、熱膨張性黒鉛や無機充填材を含むものが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。
ゴム物質としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ポリブタジエンゴム(1,2−BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)などが挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミドなどが挙げられる。
これらの樹脂は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの樹脂のうち、後述する熱膨張性黒鉛を配合する場合に、その膨張温度以下で成形可能であるという観点から、ポリオレフィン系樹脂又はゴム物質が好ましく、中でもポリエチレン系樹脂が好ましい。また、防火性能をより向上させるために、充填剤を多量に配合することが可能であるという観点からは、ゴム物質が好ましい。さらに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、フェノール樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。特に分子構造の選択が広範囲で、樹脂組成物の防火性能や力学物性を調整することが容易であることから、エポキシ樹脂が好ましい。
熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイトなどの粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸などの無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素などの強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたもので、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。このように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、さらにアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などで中和したものを使用するのが好ましい。
熱膨張性黒鉛の粒度は、20メッシュが〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより小さくなると、黒鉛の熱膨張度が小さく、十分な膨張断熱層が得られず、また粒度が20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、樹脂に配合する際に分散性が悪くなり、物性の低下が避けられない。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」などが挙げられる。
無機充填剤は、防火材3が熱膨張した際に、熱容量を増大させて伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて熱膨張した防火材3の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類などの金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイトなどの含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの金属炭酸塩などが挙げられる。
また、無機充填剤としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウムなどのカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥などが挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
無機充填剤の粒径としては、0.5μm〜100μmが好ましく、より好ましくは1μm〜50μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm未満になると二次凝集が起こり、分散性が悪くなる。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましい。粒径が100μmを超えると、成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下する。
無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)などが挙げられる。
熱膨張材料には、熱膨張後の防火材3の強度を増加させ防火性能を向上させるために、上述した各成分に加えて、さらにリン化合物を添加してもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどの各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウムなどのリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;下記化学式(1)で表される化合物などが挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コストなどの点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
化学式(1)中、R1及びR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しないなどの安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたものなどが好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられるが、取り扱い性の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」などが挙げられる。
化学式(1)で表される化合物としては、特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸などが挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。リン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、熱膨張材料には、その物性を損なわない範囲で、さらにフェノール系、アミン系、イオウ系などの酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料などが添加されてもよい。また、一般的な難燃剤を添加してもよく、難燃剤による燃焼抑制効果により防火性能を向上させることができる。
熱膨張材料において、熱膨張性黒鉛の配合量は、樹脂成分100重量部に対して10重量部〜300重量部が好ましい。配合量が10重量部以上であると、十分な防火性能が得られ、300重量部以下であると機械的強度が維持される。熱膨張性黒鉛の配合量は、より好ましくは20重量部〜250重量部である。
熱膨張材料において、無機充填剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対して10重量部〜400重量部が好ましい。配合量が10重量部以上であると、十分な防火性能が得られ、400重量部以下であると機械的強度が維持される。無機充填剤の配合量は、より好ましくは40重量部〜350重量部である。
熱膨張材料において、リン化合物を添加する場合、リン化合物の配合量は、樹脂成分100重量部に対して30重量部〜300重量部である。配合量が30重量部以上であると、熱膨張後の防火材3の強度を向上させる効果が十分であり、300重量部以下であると、機械的強度が維持される。リン化合物の配合量は、より好ましくは40重量部〜250重量部である。
上述した防火材3は、射出成形により上記形状に成形することが好ましいが、押出成形や圧縮成形などで成形してもよい。射出成形により成形すると、防火材3を無駄なく歩留まりよく製造できるうえ、複雑な形状に成形できるので好ましい。
次に、区画体11の貫通孔12に対して上述した防火具1を設置するには、まず、防火区画Aの側から区画体11の外面の貫通孔12の周囲に保持枠2を固定し、防火材3を区画体11の貫通孔12に挿通させる。そして、配管やケーブルなどの管体13を、区画体11の貫通孔12及び保持枠2に挿通させることで、管体13の周囲に防火材3を配置する。これにより、区画体11の貫通部12に対して防火具1が設置され、防火構造体10が施工される。なお、管体13が既に区画体11の貫通孔12に挿通されている場合には、保持枠2を、一対の半円筒形状の分割枠部材(図示せず)で構成し、一対の分割枠部材を互いに連結して円筒形状とする。一対の分割枠部材を連結する方法としては、一対の分割枠部材の一端部同士をヒンジ結合して開閉可能とし、他端部同士をビスなどの固定手段で連結する方法、あるいは、一対の分割枠部材の一端部同士及び他端部同士をそれぞれビスなどの固定手段で連結する方法などを挙げることができるが、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。この場合には、防火区画Aの側から保持枠2を、一対の分割枠部材を開いた状態として、配管やケーブルなどの管体13を挿通させながら、区画体11の外面において一対の分割枠部材を連結し、かつ、保持枠2を貫通孔12の周囲に固定する。このとき、防火材3を管体13とともに区画体11の貫通孔12に挿通させる。これにより、区画体11の貫通部12に対して防火構造10が施工される。
上述した防火具1が用いられた建築物の区画体11の貫通孔12における防火構造体10では、例えば防火区画Bから火災が起きても、防火材3が火災の熱により膨張し、貫通孔12を埋めるとともに、火災時に管体13が溶融又は焼失して空間ができたとしても、防火材3の熱膨張により管体13が溶融又は焼失してできた空間が埋められる。これにより、区画体11の貫通孔12を防火材3により閉塞できるため、火炎や熱が貫通孔12から隣接する防火区画Aに漏洩することを防ぐことができる。このように、本発明によれば、区画体11の貫通孔12の内部に公知のパテ状の熱膨張材を充填しなくても、十分な防火性能を確保できる。また、防火材3が取り付けられた保持枠2を区画体11に固定するだけでよいので、容易に施工することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、防火材3を取り付けるための取付孔23が保持枠2の張出部21に形成されているが、必ずしも張出部21に形成されている必要はなく、周壁部20に形成されていてもよい。この場合には、図7に示すように、防火材3の一端部をL字型とし、L字に折れ曲がった屈曲部31を、保持枠2の周壁部20に形成された取付孔23に嵌合させることで、防火材3は保持枠2に取り付けられる。また、この場合には、保持枠2に張出部21を必ずしも設ける必要はない。
また、上記実施形態では、防火材3は、保持枠2に取付孔23との嵌合により取り付けられているが、防火材3の保持枠2への取付方法は、必ずしも取付孔23への嵌合に限定されるものではなく、例えば、図8又は図9に示すように、保持枠2の周壁部20又は張出部21(図示例では張出部21)の内面に、防火材3を取り付けるための取付部26を一体に設けてもよい。
図8に示す取付部26は、開口27を端部に有する枠状のものである。開口27は、防火材3の一端部を嵌め込み可能な形状及び大きさに形成されている。つまり、開口27は、防火材3の一端部の形状と同じ形状に形成されており、大きさは防火材3の一端部の大きさと同じあるいは若干小さく形成されている。本実施形態では、開口27は、防火材3の一端部の突起部30が嵌め込まれるよう、突起部30の形状及び大きさに合った矩形状に形成されており、取付部26は、4つの板状部材を矩形枠状に連ねた形である。防火材3の一端部の突起部30を開口27から取付部26内に差し込んで嵌合させることで、防火材3が保持枠2に取り付けられる。なお、本実施形態では、防火材3の一端部に突起部30を設けているので、取付部26は、防火材3の一端部の突起部30の形状及び大きさに合わせて形成されているが、防火材3の一端部に突起部30を設けない場合には、取付部26は、防火材3の一端部の形状及び大きさに合わせて形成される。また、本実施形態では、取付部26が保持枠2の張出部21の内面から突き出るようにして設けられているが、張出部21の厚みを大きくし、張出部21の内面を凹ませることで、防火材3の一端部を嵌合可能な凹状の取付部26を設けるようにしてもよい。
図9に示す取付部26は、対向する2つの板状部材28により形成されており、2つの板状部材28の間に防火材3の一端部を挟み込み可能なスリット29を有している。スリット29の幅は、防火材3の一端部(本実施形態では突起部30)の幅と同じあるいは若干小さく形成されている。防火材3の一端部の突起部30をスリット29から取付部26内に差し込んで挟み込むことで、防火材3が保持枠2に取り付けられる。
なお、取付孔23や取付部26を保持枠2に設けることなく、接着剤、粘着剤、アルミニウムガラスクロス(ALGC)テープを初めとする粘着テープなどの粘着手段を用いて、保持枠2の内面に防火材3の一端部を接着固定してもよい。
また、上記実施形態の防火材3においては、火災時の熱により膨張しない熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、ゴム、ガラス、金属、又はこれらの組み合わせなどからなる不燃性材料で形成される非熱膨張性の不燃材の層を含んでいてもよい。非熱膨張性の不燃材の層を防火材3が備えていることにより、燃焼時に不燃材の層が膨張残渣の骨となり、燃焼後の残渣が強固に維持される。防火材3において、熱膨張材の層を不燃材の層の一方面だけに設けてもよいし、不燃材の層の両面に設けてもよい。
また、上記実施形態の防火構造体10においては、区画体11の一方側の外面にのみ貫通孔12の周囲に保持枠2が取り付けられ、防火材3は一端部のみが保持枠2に取り付けられていることで、貫通孔12内で保持されているが、保持枠2を区画体11の他方側の外面の貫通孔12の周囲にもさらに取り付け、防火材3の他端部についても、一端部と同様に、取付孔23ないしは取付部26などとの嵌合などを介して保持枠2に取り付けることで、防火材3を略水平な状態で安定的に貫通孔12内で保持するようにしてもよい。
また、上記実施形態の防火構造体10においては、パテ状の熱膨張材を使用していないが、パテ状の熱膨張材を貫通孔12内の空隙に追加的に充填してもいてもよく、パテ状の熱膨張材を用いた防火構造体10も本発明の範囲に入るものとする。また、非熱膨張性のパテ状の耐火材を貫通孔12内の空隙に追加的に充填してもいてもよく、パテ状の耐火材を用いた防火構造体10も本発明の範囲に入るものとする。
本明細書中に引用されているすべての特許出願および文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
1 防火具
2 保持枠
3 防火材
10 防火構造体
11 区画体
12 貫通孔
13 管体
20 周壁部
21 張出部
22 突出部
23 取付孔
25 固定孔
26 取付部
27 開口
29 スリット

Claims (6)

  1. 建築物の区画体に形成されかつ少なくとも1本の管体が挿通される貫通孔に設置され、前記貫通孔の防火に用いられる防火具であって、
    前記区画体の外面の前記貫通孔の周囲に取り付けられ、前記管体を挿通可能な保持枠と、
    熱膨張性を有する長尺の防火材と、を備え、
    前記防火材は、前記保持枠に取り付けられ、前記管体とともに前記貫通孔に挿通され、
    前記保持枠には、前記防火材を取り付けるための取付孔が形成されており、
    前記取付孔は、前記防火材の一端部を嵌め込み可能である防火具。
  2. 建築物の区画体に形成されかつ少なくとも1本の管体が挿通される貫通孔に設置され、前記貫通孔の防火に用いられる防火具であって、
    前記区画体の外面の前記貫通孔の周囲に取り付けられ、前記管体を挿通可能な保持枠と、
    熱膨張性を有する長尺の防火材と、を備え、
    前記防火材は、前記保持枠に取り付けられ、前記管体とともに前記貫通孔に挿通され、
    前記保持枠の内面には、前記防火材を取り付けるための取付部が設けられており、
    前記取付部は、前記防火材の一端部を嵌め込み可能な開口又は挟み込み可能なスリットを有する防火具。
  3. 前記保持枠は、前記防火材を囲む周壁部と、前記周壁部の先端部から内側に向かって張り出す張出部とを備え、前記張出部に前記取付孔を備える請求項に記載の防火具。
  4. 前記保持枠は、前記防火材を囲む周壁部と、前記周壁部の先端部から内側に向かって張り出す張出部とを備え、前記張出部に前記取付部を備える請求項に記載の防火具。
  5. 前記保持枠は、前記周壁部の基端部から外側に向かって突き出す突出部を備え、
    前記突出部に、前記保持枠を前記区画体に固定手段で固定するための固定孔が形成されている請求項3又は4のいずれかに記載の防火具。
  6. 建築物の区画体に形成され、少なくとも1本の管体が挿通される貫通孔に、請求項1〜のいずれかに記載の防火具が用いられている建築物の防火構造体。
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