JP6499998B2 - 溶融金属処理部材の表面層形成方法 - Google Patents

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本発明は、溶融金属に対して所定の処理を行う溶融金属処理部材の表面に表面層を形成する溶融金属処理部材の表面層形成方法に関する。
従来から、アルミニウムや亜鉛などの溶融金属を、金型を備えた成形装置で成形する際には、溶融金属を保持炉から金型に自動搬送するラドルや、保持炉内の溶融金属の表面に浮くノロを除去するためのノロ掻きのように繰り返し溶融金属中に浸漬される溶融金属処理部材が用いられている。また、作業者が直接溶融金属をくみ取って鋳型に鋳込むときに用いられる湯くみのように溶融金属に繰り返し接触する溶融金属処理部材も用いられている。このような溶融金属処理部材は、一般的に、鋳鉄や鉄で構成され、その表面にコーティング剤が塗布されることによって、溶融金属中に溶けることが防止される。
しかしながら、このような従来の溶融金属処理部材では、コーティング剤が消耗し易い上に、基材を構成する鋳鉄や鉄の溶融金属に対する耐溶損性がよくないため長時間の使用ができず、頻繁にコーティング剤を塗布する必要がある上に、比較的短時間で新たなものと取り替えなければならなかった。また、鋳鉄や鉄が重いため、溶融金属処理部材がラドルの場合は、ラドルを支持する部分を高強度にしなければならず装置が大掛かりになったりコストアップになったりするという問題が生じていた。また、溶融金属処理部材が、ノロ掻きや湯くみの場合は、作業者に手入れなどの負担がかかり作業性が低下するという問題があった。
このため、溶融金属に対する耐溶損性に優れ、かつ軽量な溶融金属処理部材として、基材をチタンで構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。この溶融金属処理部材(柄杓)は、チタンからなる基材を、酸洗いおよびフラックス処理した後に、溶融アルミニウムメッキ浴に浸漬してメッキし、その後、大気中で900℃の温度で3時間加熱処理することにより得られている。この溶融金属処理部材では、基材の表面にアルミニウムを主成分とする酸化物が形成され、この酸化物によってアルミニウム溶湯に対する耐溶損性や、ノロの剥離性が向上する。また、基材をチタンで構成することにより軽量化が可能になる。
特開平8−199322号公報
前述した溶融金属処理部材では、基材を溶融アルミニウムメッキ浴に浸漬してメッキ層を形成するため、基材の表面を活性化させてアルミニウムが付着しやすいようにしてメッキ層を形成しなければならない。このため、基材を溶融アルミニウムメッキ浴に浸漬する前に溶融フラックス中に浸漬するフラックス処理が必須になる。このフラックス処理によると、フラックスによって基材が腐食したり、ガス、悪臭が発生したりするおそれがある。
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、チタンからなる基材の表面に、フラックス処理を施すことなく溶融金属に対する耐溶損性および剥離性に優れるとともに耐割性にも優れる表面層を形成する溶融金属処理部材の表面層形成方法を提供することである。
前述した目的を達成するため、本発明に係る溶融金属処理部材の表面層形成方法の構成上の特徴は、チタンよりも溶融温度が低い金属からなる溶融金属に対して所定の処理を行う溶融金属処理部材(10,20,30)の表面にフラックス処理を施すことなく金属間化合物を含む表面層(10b,20b,30b)を形成する溶融金属処理部材の表面層形成方法であって、チタンからなる基材(10a,20a,30a)の表面の不純物を除去する前処理工程と、前処理された基材の表面にアルミニウムを溶射するアルミニウム溶射工程と、アルミニウムが溶射された基材を、610℃〜1150℃までの間の温度で加熱して基材の内部にアルミニウムを拡散浸透させる拡散浸透工程と、拡散浸透工程によって形成された拡散層の表面にコーティング剤を被覆するコーティング工程とを備えたことにある。
本発明に係る溶融金属処理部材の表面層形成方法では、前処理によって不純物が除去された基材の表面にアルミニウム層を溶射によって形成し、アルミニウム層が表面に形成されたチタンからなる基材に、610℃から1150℃までの間の温度でアルミニウムを拡散浸透させる加熱処理が行われる。これによると、アルミニウムが基材の表面側部分に拡散浸透して金属間化合物からなる表面層が形成され、この表面層には、TiAl、TiAl2、TiAl3の膨張係数の異なる複数の部分が含まれる。このTiAl、TiAl2、TiAl3は別々の層になって複数の層が形成されていることが好ましい。
すなわち、本発明によると、基材の表面に、チタンとアルミニウムとの金属間化合物を含む硬固な表面層を形成することができ、この表面層は溶融金属に対して有効な耐溶損性や耐割性を発揮できる。このため、基材の表面に形成される表面層に、熱疲労によるヒートクラックは生じにくくなり、表面層が形成された基材を、例えば、アルミニウムや亜鉛などの溶湯中に繰り返し浸漬したり、浸漬した状態を維持させたりしても、溶損や割れは生じにくくなる。また、表面層が形成された基材を、アルミニウムや亜鉛などの溶湯中に繰り返し浸漬する場合には、アルミニウムや亜鉛などの剥離性も良好になる。
本発明に係る基材を構成するチタンとしては、純チタンに限らず、高力合金系のJIS60種、JIS61種、耐食合金系のJIS11種、JIS12種などのチタンを主成分とする合金も含むものとする。また、本発明に係る基材に溶射されるアルミニウムとしては、純アルミニウムにかぎらず、アルミニウムを主成分とする合金や、酸化アルミニウム、アルミナ系セラミックなども含むものとする。また、前工程では、基材の表面のさびや付着物を除去するために、酸洗いや脱脂などが行われる。また、溶射は、溶融または半溶融状態のアルミニウムを基材の表面に衝突させて積層することで皮膜を形成するもので、これによると、基材の表面を活性化させる必要がないため、フラックス処理が不要になる。この場合、基材の表面は適度な粗面になっていることが好ましく、このため、前処理に粗面化処理を含ませてもよい。
本発明者の実験によると、アルミニウム層を形成する材料として純アルミニウムを用いた場合に、温度が610℃を超えたときに拡散浸透が始まったため、本発明では、拡散浸透工程での加熱の最低温度を610℃としている。また、拡散浸透工程での加熱温度は、加熱時間との関係で適宜設定され、加熱温度を低温側に設定する場合には加熱時間を長くし、加熱温度を高温側に設定する場合には加熱時間を短くする。本発明では、拡散浸透工程での加熱温度の上限を、短時間の加熱時間の場合を考慮して1150℃とした。また、コーティング工程におけるコーティング剤は、使用する溶融金属に応じて適宜選択する。本発明によると、溶融金属が表面層を浸食することを防止して、溶融金属処理部材のさらなる長寿命化が図れるとともに、溶融金属が溶融金属処理部材に付着することをより確実に防止できる。
本発明に係る溶融金属処理部材の表面層形成方法の他の構成上の特徴は、拡散浸透工程での加熱温度を溶融金属の溶融温度以上にしたことにある。
本発明によると、溶融金属処理部材で処理する溶融金属の種類に応じた表面層を備えた溶融金属処理部材を得ることができる。すなわち、溶射によって形成されたアルミニウム層を溶融金属の溶融温度以上の温度で加熱処理することで、基材の表面に形成される金属間化合物からなる表面層の耐熱温度が上昇し、溶融金属処理部材を繰り返し溶融金属に接触させても表面層に欠損が生じ難くなる。また、溶融金属としては、チタンよりも溶融温度が低く、鋳造に用いられるものであればよく、例えば、アルミニウム、マグネシウム、真鍮(黄銅)、亜鉛などを用いることができる。
そして、溶融金属がアルミニウムであれば、拡散浸透工程での加熱温度を660℃以上にすることが好ましく、溶融金属がマグネシウムであれば、拡散浸透工程での加熱温度を650℃以上にすることが好ましい。また、溶融金属が真鍮であれば、拡散浸透工程での加熱温度を800℃以上にすることが好ましく、溶融金属が亜鉛であれば、拡散浸透工程での加熱温度を610℃以上にすることが好ましい。これによると、アルミニウム、マグネシウム、真鍮、亜鉛のそれぞれの溶湯処理に適した溶融金属処理部材を得ることができる。
本発明に係る溶融金属処理部材の表面層形成方法のさらに他の構成上の特徴は、拡散浸透工程が、30分〜360分間行われることにある。この場合、処理時間は加熱温度に応じて適宜設定する。これによると、金属間化合物からなる表面層を温度と時間に応じて効果的に形成することができる。
本発明に係る溶融金属処理部材の表面層形成方法のさらに他の構成上の特徴は、拡散浸透工程が、610℃からアルミニウムの溶融温度までの間の温度で加熱してアルミニウムを基材の内部に固体拡散浸透させる固体拡散浸透工程と、固体拡散浸透工程で処理された基材をアルミニウムの溶融温度から1150℃までの間の温度で加熱して基材に固体拡散浸透されたアルミニウムの少なくとも一部を基材の内部に液体拡散浸透させる液体拡散浸透工程とからなっていることにある。
本発明では、基材の表面に溶射されたアルミニウムを基材に拡散浸透させる工程を、比較的低温で行う固体拡散浸透工程と、比較的高温で行う液体拡散浸透工程との2段階の加熱処理で行うようにしている。固体拡散浸透工程においては、アルミニウムが基材の表面側部分に拡散浸透して形成される表面層は、ポーラスな層でなく、膨張係数が小さく硬固な金属間化合物層になる。また、液体拡散浸透工程においては、固体拡散浸透工程において形成された金属間化合物層に含まれるアルミニウムの少なくとも一部が基材の内部に液体状態で拡散浸透され、金属間化合物層がさらに成長して厚みが増大するとともに安定した表面層になる。
このように、固体拡散浸透工程と液体拡散浸透工程との2段階の加熱処理により、TiAl、TiAl2、TiAl3の膨張係数の異なる複数の層を形成することができるため、硬固な表面層の形成が可能になる。また、固体拡散浸透工程と液体拡散浸透工程とを行う時間は、適宜設定されるが、固体拡散浸透工程よりも液体拡散浸透工程の方を長くすることが好ましい。さらに、固体拡散浸透工程と液体拡散浸透工程との合計時間は、360分を超えてもよいが、どちらの工程も360分を超えないようにする。また、液体拡散浸透工程は、基材の温度を一旦常温にしたのちに行う。
本発明に係る溶融金属処理部材の表面層形成方法のさらに他の構成上の特徴は、溶融金属処理部材が、溶融金属を搬送するラドル(10)、溶融金属の表面に浮かぶノロを掬い取るためのノロ掻き(20)または溶融金属をくみ取る湯くみ(30)であることにある。
本発明に係る溶融金属処理部材であるラドル、ノロ掻きまたは湯くみは、それぞれ繰り返し溶融金属に浸漬されるもので、耐久性が要求される。このような溶融金属処理部材の表面側に、チタンとアルミニウムとの金属間化合物からなる表面層を形成することにより、耐溶損性や耐割性を向上させて耐久性も大幅に向上させることができる。また、チタンとアルミニウムとの金属間化合物からなる表面層は、溶融アルミニウム、溶融亜鉛、溶融マグネシウムなどに対して濡れ性がよくないため、これらのものが付着しにくい。このため、溶融金属処理部材に付着したこれらの金属を除去する作業が不要か、または減少させることができ、作業性の向上も図れる。
本発明の一実施形態に係るラドルを示した斜視図である。 基材にアルミニウムを溶射したのちに加熱して形成された表面層を示した顕微鏡写真である。 本発明の他の実施形態に係るノロ掻きを示した斜視図である。 基材にアルミナ系セラミックを溶射したのちに加熱して形成された表面層を示した顕微鏡写真である。 本発明のさらに他の実施形態に係る湯くみを示した斜視図である。 基材に酸化アルミニウムを溶射したのちに加熱して形成された表面層を示した顕微鏡写真である。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るラドル10を示している。このラドル10は、射出成型機における金型と保持炉との間に設置された給湯装置に取り付けられて、保持炉と金型のスリーブとの間を往復移動することにより、保持炉内のアルミニウム溶湯をスリーブ内に注湯するものである。ラドル10は、容器状のラドル本体11と略樋状の連結部12とを一体にして構成されており、連結部12の端部には水平方向に貫通する軸穴13が形成されている。
軸穴13には、支軸が固定され、この支軸は、給湯装置が備えるアームに連結される。そして、ラドル10は、アームの作動により上下左右前後の各方向に移動するとともに、支軸の回転により支軸を中心として上下に回転する。また、図2は、ラドル10の表面部分の断面を拡大して表した顕微鏡写真であり、ラドル10は、図2に示したように、チタンからなる基材10aと、基材10aの表面に形成された表面層10bとで構成されている。この表面層10bは、チタンとアルミニウムとからなる金属間化合物で構成されている。
つぎに、ラドル10を製造する工程の一例を説明する。まず、チタンを用いて、ラドル10の形状の基材10aを形成する。この場合の基材10aは、鋳造によって成形してもよいし、切削加工などの加工によって成形してもよい。つぎに、基材10aを酸液中に浸漬して表面の酸化物や付着物等を除去したのちに、基材10aの表面に溶射によりアルミニウムを付着させて、アルミニウム層を形成する。この場合、溶射するアルミニウムとしては合金でないアルミニウム、すなわち添加物を含まないアルミニウムを用い、このアルミニウムを溶融状態または半溶融状態に加熱してスプレーガンで基材10aの表面に投射した。これによって、基材10aの表面全体に厚みが略50μmのアルミニウム層を形成した。
つぎに、基材10aの表面に形成されたアルミニウム層を、基材10aの表面側部分に拡散浸透させて、表面層10bを形成するための処理を行う。この処理は、表面にアルミニウム層が形成された基材10aを、窒素ガスを充填した加熱炉に入れ、930℃の温度で略300分加熱することにより行った。この加熱処理により、アルミニウム層を構成するアルミニウムは、基材10aの内部に拡散浸透していき、基材10aを構成するチタンと反応する。そして、チタンとアルミニウムの比率に応じて、TiAl、TiAl2およびTiAl3からなる金属間化合物層が形成される。すなわち、表面層10bには、チタンに対するアルミニウムの含有量が多い金属間化合物と少ない金属間化合物とが含まれている。また、加熱処理の際、加熱炉内の窒素が金属間化合物層中に浸透していき、硬い金属間化合物からなる表面層10bが形成される。これによって、ラドル10が得られる。
以上のように構成されたラドル10を用いて、アルミニウム合金からなる所定の成形品を射出成形する場合は、ラドル10をそのまま用いてもよいが、ラドル10の表面にコーティング剤を塗布してもよい。コーティング剤としては、MgO,CaO,TiO2などからなる水溶性の耐火物を用いることができる。射出成形に際しては、まず、保持炉内に鋳造用の溶融アルミニウムを入れ、スタートボタンをオン状態にして、射出成形機および給湯装置の作動を開始させる。
これによって、アームが作動して、ラドル10は、保持炉内の溶融アルミニウムを取り込み、金型のスリーブに搬送されたのちに、注湯口が下方に傾斜するように回転して溶融アルミニウムをスリーブ内に注ぐ。その後、射出成型機のプランジャが作動して、溶融アルミニウムを金型の成形凹部内に圧入し、溶融アルミニウムは成形凹部内で冷却されて成形される。そして、金型が開いて成形品が取り出されたのちに、再度金型が閉じる。その間に、ラドル10は保持炉に向かい、再度溶融アルミニウムを取り込む。
この動作が繰り返し行われ順次、成形品が成形されていく。その際、ラドル10の表面には、表面層10bが形成されて、アルミニウムに対する濡れ性が低下しているため、ラドル10の表面にアルミニウムが付着することは殆どない。このため、ラドル10の表面に付着するアルミニウムを除去する操作をしなくとも、ラドル10の表面に付着するアルミニウムが徐々に増えていってスリーブに給湯する溶融アルミニウムが減少したり、溶融アルミニウムの温度が低下したりするといったことは生じない。
このため、良好な成形品が得られる。また、表面層10bを形成したことにより、ラドル10に溶損や割れが生じにくくなり、ラドル10の長期間にわたっての使用が可能になる。また、ラドル10の表面にコーティング剤を塗布した場合は、この効果はさらに大きくなる。なお、コーティング剤は、ラドル10の使用時間に応じて消耗するため、コーティング剤を用いる場合には、所定時間ごとに塗布するが、ラドル10においては、従来のラドルのように頻繁に塗布する必要はなく、塗布の回数は大幅に減少できる。
このように、本実施形態では、前処理によって不純物を除去した基材10aの表面にアルミニウム層を溶射によって形成し、アルミニウム層が形成された基材10aに、アルミニウムやアルミニウム合金の溶融温度よりも高い930℃の温度でアルミニウムを拡散浸透させる加熱処理が行われる。これによると、アルミニウムが基材10aの表面側部分に拡散浸透して形成される表面層10bは、TiAl、TiAl2、TiAl3を含む硬固な金属間化合物層になる。
このため、基材10aの表面層10bに、熱疲労によるヒートクラックは生じにくくなり、ラドル10を、アルミニウム合金の溶湯中に繰り返し浸漬したり、浸漬した状態を維持させたりしても、溶損や割れは生じにくくなる。また、このラドル10を、アルミニウム溶湯中に繰り返し浸漬する場合には、アルミニウムの剥離性も良好になる。このため、ラドル10の表面に付着したアルミニウムを除去する操作が不要になる。さらに、本実施形態では、基材10aの表面に形成するアルミニウム層を溶射によって行うため、フラックス処理が不要になる。
図3は、本発明の他の実施形態に係るノロ掻き20を示している。このノロ掻き20は、保持炉内のマグネシウム溶湯の表面に浮かぶノロを掬い取るためのもので、ノロ掻き部21と把持部22とで構成されている。ノロ掻き部21は、上方から見た状態で、中央側が下方に窪んだ円形曲面状の板に間隔を保って複数の孔23を形成した形状をしている。また、把持部22は棒で構成されており、その下端部が、ノロ掻き部21の縁部に連結されている。また、図4は、ノロ掻き20の表面部分の断面を拡大して表した顕微鏡写真であり、ノロ掻き20は、図4に示したように、チタンからなる基材20aと、基材20aの表面に形成された表面層20bとで構成されている。この表面層20bも前述した表面層10bと同様、チタンとアルミニウムとからなる金属間化合物で構成されている。
このノロ掻き20の製造方法は、基材20aに溶射する材料、加熱温度および加熱時間を代えたこと以外は、ラドル10の製造方法と同じである。この場合、基材20aに溶射する材料としては、アルミナ系セラミックを用いた。そして、基材20aの表面に、略200μmの厚みのアルミニウム層を形成し、このアルミニウム層が形成された基材20aを、800℃の温度で330分加熱することにより行った。なお、図4では、表面層20bが2層になった部分があるが、これは、溶射によりアルミニウム層を形成する際に、一部2重に溶射された部分が生じためである。
このように構成されたノロ掻き20は、保持炉内の溶融マグネシウムの上面に、マグネシウムが酸化して発生するノロが所定量浮かんだときに使用される。この場合も、ノロ掻き20をそのまま用いてもよいが、ノロ掻き20の表面にコーティング剤を塗布してもよい。コーティング剤としては、ZnO,Al(OH)3などからなる水溶性の耐火物を用いることができる。使用に際しては、把持部22を持って、ノロ掻き部21を溶融マグネシウム中に入れ、ノロ掻き部21の凹面部にノロを載せてノロ掻き部21を溶融マグネシウムから持ち上げる。これによって、ノロ掻き部21内の溶融マグネシウムは孔23から保持炉内に流下していき、ノロ掻き部21内にはノロだけが残る。
そして、ノロ掻き20で掬い上げたノロは、所定の場所に集積する。この場合、把持部22を回転して、ノロ掻き部21の凹面部を下方に向けることにより、ノロは塊となって、落下していく。このノロ掻き20の表面にも、金属間化合物からなる表面層20bが形成されているため濡れ性が低下しており、ノロ掻き20の表面にノロが付着することは殆どない。このため、ノロ掻き20の表面に付着するノロを除去する作業が不要になるか、または作業回数を減少できる。また、表面層20bを形成したことにより、ノロ掻き20がマグネシウムからの浸食を受けにくくなり、長期間にわたっての使用が可能になる。このノロ掻き20のそれ以外の作用効果は前述した実施形態の作用効果と同様である。
図5は、本発明のさらに他の実施形態に係る湯くみ30を示している。この湯くみ30は、保持炉内の真鍮の溶湯を掬い取って鋳型内に鋳込むためのもので、収容部31と、連結部32と、把持部33とで構成されている。収容部31は、上方から見た形状が円形で、側方から見た形状が略四角形で上方が開放された容器からなっている。また、連結部32は棒で構成されており、その下端部が、収容部31の上縁部に連結され、上端に把持部33が形成されている。この把持部33は連結部32の上部を折り曲げることで形成されている。また、図6は、湯くみ30の表面部分の断面を拡大して表した顕微鏡写真であり、湯くみ30は、図6に示したように、チタンからなる基材30aと、基材30aの表面に形成された表面層30bとで構成されている。この表面層30bも表面層10b,20bと同様、チタンとアルミニウムとからなる金属間化合物で構成されている。
この湯くみ30の製造方法は、基材30aに溶射する材料、加熱処理の回数、加熱温度および加熱時間を代えたこと以外は、ラドル10およびノロ掻き20の製造方法と同じである。この場合、基材30aに溶射する材料としては、酸化アルミニウム(AL23)を用いた。そして、基材30aの表面に、略200μmの厚みのアルミニウム層を形成し、このアルミニウム層が形成された基材30aを、610℃の温度で90分加熱したのちに一旦常温に戻し、さらに、1150℃の温度で180分加熱した。
このように構成された湯くみ30は、保持炉内の真鍮の溶湯を、汲み取って砂型などの鋳型内に鋳込むときに使用される。この湯くみ30の表面にも、金属間化合物からなる表面層30bが形成されているため濡れ性が低下しており、湯くみ30の表面に真鍮が付着することは殆どない。このため、湯くみ30の表面に付着する真鍮を除去する作業が不要になるか、または作業回数を減少できる。また、表面層30bを形成したことにより、湯くみ30が真鍮からの浸食を受けにくくなり、長期間にわたっての使用が可能になる。この湯くみ30のそれ以外の作用効果は前述した実施形態の作用効果と同様である。なお、湯くみ30を使用する場合も、収容部31および連結部32の表面にコーティング剤を塗布してもよい。
つぎに、試験片を用いて、本実施形態に係る実施例と比較例との耐久性を比較する耐食テストを行った。この耐食テストでは、長さが100mm、幅が30mm、厚みが3mmのチタン材の表面に、それぞれの条件で表面層を形成したものを試験片として用い、各試験片を、温度が730℃のアルミニウム溶湯中に連続浸漬したときに、各試験片の表面層が浸食されるまでの時間を比較した。なお、実施例の試験片としては、ラドル10と同じ方法でチタン材の表面に表面層10bを形成したものを用いた。
比較例の試験片としては、チタン材を前処理した後に、フッ化物や塩化物を主成分とする溶液中に浸漬するフラックス処理を行い、700℃のアルミニウム溶湯に1分間浸漬したのちに、2回の加熱処理を行ったものを用いた。このときの1回目の加熱処理は、610℃の温度で90分間行い、2回の加熱処理は、1150℃の温度で90分間行った。そして、耐食テストの結果、比較例の試験片には、200時間で溶損が生じたのに対し、実施例の試験片には340時間で溶損が生じた。この結果から、実施例品は比較例品よりも大幅に製品寿命を延ばせることがわかる。
また、本発明は、前述した各実施形態に限るものでなく適宜、変更実施が可能である。例えば、前述した各実施形態では、溶融金属を、アルミニウム、マグネシウム、真鍮としているが、この溶融金属は、亜鉛、銅、鉛、錫などであってもよい。また、拡散浸透工程での処理温度は、前述した温度に限らず、処理時間に応じて適宜変更することができる。さらに、前述した実施形態のそれ以外の部分についても本発明の技術的範囲内で変更が可能である。
10…ラドル、10a,20a,30a…基材、10b,20b,30b…表面層、20…ノロ掻き、30…湯くみ。

Claims (5)

  1. チタンよりも溶融温度が低い金属からなる溶融金属に対して所定の処理を行う溶融金属処理部材の表面にフラックス処理を施すことなく金属間化合物を含む表面層を形成する溶融金属処理部材の表面層形成方法であって、
    チタンからなる基材の表面の不純物を除去する前処理工程と、
    前記前処理された基材の表面にアルミニウムを溶射するアルミニウム溶射工程と、
    前記アルミニウムが溶射された基材を、610℃〜1150℃までの間の温度で加熱して前記基材の内部にアルミニウムを拡散浸透させる拡散浸透工程と
    前記拡散浸透工程によって形成された拡散層の表面にコーティング剤を被覆するコーティング工程と
    を備えたことを特徴とする溶融金属処理部材の表面層形成方法。
  2. 前記拡散浸透工程での加熱温度を前記溶融金属の溶融温度以上にした請求項1に記載の溶融金属処理部材の表面層形成方法。
  3. 前記拡散浸透工程が、30分〜360分間行われる請求項1または2に記載の溶融金属処理部材の表面層形成方法。
  4. 前記拡散浸透工程が、610℃から前記アルミニウムの溶融温度までの間の温度で加熱して前記アルミニウムを前記基材の内部に固体拡散浸透させる固体拡散浸透工程と、前記固体拡散浸透工程で処理された前記基材を前記アルミニウムの溶融温度から1150℃までの間の温度で加熱して前記基材に固体拡散浸透されたアルミニウムの少なくとも一部を前記基材の内部に液体拡散浸透させる液体拡散浸透工程とからなっている請求項1ないし3のいずれか一つに記載の溶融金属処理部材の表面層形成方法。
  5. 前記溶融金属処理部材が、前記溶融金属を搬送するラドル、前記溶融金属の表面に浮かぶノロを掬い取るためのノロ掻きまたは前記溶融金属をくみ取る湯くみである請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載の溶融金属処理部材の表面層形成方法。
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