以下、本発明の実施の形態に係るスプール弁装置を、油圧ショベルに搭載されたコントロールバルブに適用した例を挙げ、図1ないし図21に従って詳細に説明する。
まず、図1ないし図8は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、油圧ショベル1は、土砂の掘削作業等に用いられる建設機械である。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置4とにより大略構成されている。
ここで、下部走行体2には走行モータ(図示せず)が設けられると共に、上部旋回体3には旋回モータ(図示せず)が設けられている。下部走行体2は走行モータによって前進、後進等の走行動作を行い、上部旋回体3は旋回モータによって旋回動作するものである。
作業装置4は、ブーム4A、アーム4B、バケット4Cによって構成され、ブーム4A、アーム4B、バケット4Cには、ブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4Fが取付けられている。これらのシリンダ4D,4E,4Fは、走行モータ、旋回モータと共に、後述の油圧ポンプ14から吐出する圧油により駆動される油圧アクチュエータを構成するものである。
各シリンダ4D,4E,4Fは、チューブ5内がピストン6により2つの油室7A,7Bに画成され、基端側がピストン6に固着されたロッド8は、その先端側がチューブ5外に突出している。
旋回フレーム9は、上部旋回体3の支持構造体を形成する支持フレームであり、下部走行体2上に旋回可能に搭載されている。旋回フレーム9には、後述のキャブ10、カウンタウエイト12、油圧ポンプ14、コントロールバルブ17等が搭載されている。
キャブ10は、作業装置4を挟んで左,右方向の左側に位置して、旋回フレーム9上に設けられている。このキャブ10は、オペレータが搭乗するもので、その内部には、オペレータが着座する運転席、作業装置4を操作する操作レバー11A(図2参照)、走行レバー、空調装置(いずれも図示せず)等が配設されている。一方、旋回フレーム9の後端部には、作業装置4との重量バランスをとるカウンタウエイト12が設けられている。
機械室13は、キャブ10とカウンタウエイト12との間に形成されている。この機械室13には、図示しないエンジン、油圧ポンプ14、パイロットポンプ16、コントロールバルブ17、その他機器等が配設されている。
油圧ポンプ14は、エンジンによって駆動されることにより、作動油タンク15に貯えられた作動油をブームシリンダ4D等の油圧アクチュエータに向けて圧油として吐出するものである。パイロットポンプ16は、油圧ポンプ14と共にエンジンによって駆動され、作動油タンク15に貯えられた作動油を操作レバー11Aを有するパイロット弁11に向けて圧油として吐出するものである。
コントロールバルブ17は、作動油タンク15、油圧ポンプ14と各油圧アクチュエータ(シリンダ4D〜4F等)との間に設けられている。このコントロールバルブ17は、例えば操作レバー11Aに対する操作に応じて、シリンダ4D〜4Fに対する圧油の給排、停止を制御するものである。そして、コントロールバルブ17には、油圧アクチュエータごとに後述のスプール弁装置21が設けられている。
ここで、油圧アクチュエータ(ブームシリンダ4D)駆動用の油圧回路について、図2を参照して説明する。
コントロールバルブ17は、ポンプ管路18A、タンク管路18Bにより油圧ポンプ14と作動油タンク15とに接続されている。また、スプール弁装置21が中立位置(I)にあるときに、ポンプ管路18Aとタンク管路18Bとは、バイパス管路18Cで接続されている。ポンプ管路18A、タンク管路18B、バイパス管路18Cは、例えば金属配管および可撓性ホース等を含んだ油圧管路により構成されている。
ポンプ管路18Aの途中部位には、油圧ポンプ14が設けられている。ポンプ管路18Aは、油圧ポンプ14の駆動により作動油タンク15内の作動油をコントロールバルブ17内のスプール弁装置21へと導く。一方、タンク管路18Bは、スプール弁装置21から流出した作動油を作動油タンク15へと導くものである。バイパス管路18Cは、スプール30が中立位置にあるときに、ポンプ管路18Aからタンク管路18Bに作動油を導くものである。なお、図3、図6、図7では、バイパス管路18Cを省略している。
また、コントロールバルブ17は、主管路19A,19Bによりブームシリンダ4Dと接続されている。主管路19A,19Bは、例えば金属配管および可撓性ホース等を含んだ油圧管路により構成されている。主管路19Aは、ブームシリンダ4Dの油室7Aに接続され、主管路19Bは、ブームシリンダ4Dの油室7Bに接続されている。そして、油圧ポンプ14からの圧油は、スプール弁装置21を介して主管路19A,19Bからブームシリンダ4Dに給排される。これにより、ブームシリンダ4Dのロッド8は、チューブ5から伸縮動作する。
操作レバー11Aとコントロールバルブ17とは、パイロット管路20A,20Bにより接続されている。パイロット管路20Aは、スプール弁装置21の左パイロット油室35Aに接続され、パイロット管路20Bは、スプール弁装置21の右パイロット油室35Bに接続されている。そして、オペレータが操作レバー11Aを中立位置から作動位置に傾転操作したときには、その操作量に対応したパイロット圧がパイロット管路20A,20Bを介してスプール弁装置21の左,右のパイロット油室35A,35Bへと給排される。これにより、スプール弁装置21のスプール30は、中立位置(I)から作動位置(II)または(III)に切換わる(図2参照)。
次に、コントロールバルブ17内に設けられたスプール弁装置21について説明する。
スプール弁装置21は、油圧ポンプ14、作動油タンク15とブームシリンダ4Dとの間に設けられたものである。このスプール弁装置21は、スプール30を図3に示す中立位置から例えば図6、図7に示す切換位置に摺動変位させることにより、ブームシリンダ4Dに給排する圧油の方向および流量を制御する方向制御弁として構成されたものである。スプール弁装置21は、後述のポンプポート27を境にしてスプール30の軸方向で対称に形成されている。そして、スプール弁装置21は、ハウジング22、スプール30、左,右のキャップ34A,34B、左,右のスプリング37A,37B等を含んで構成されている。
ハウジング22は、スプール弁装置21の弁本体を構成するものである。図3に示すように、ハウジング22の内周側には、左,右方向に延びたスプール摺動穴23が設けられている。スプール摺動穴23の左端部23Aには、後述の左キャップ34Aが設けられ、スプール摺動穴23の右端部23Bには、後述の右キャップ34Bが設けられている。
スプール摺動穴23の軸方向の中央部には、環状の中央油溝24が形成されている。また、中央油溝24の左,右両側には、環状の左側油溝25A,右側油溝25Bが形成されている。さらに、左側油溝25Aよりも左端側には、環状の左端側油溝26Aが形成され、右側油溝25Bよりも右端側には、環状の右端側油溝26Bが形成されている。
また、ハウジング22には、スプール摺動穴23の軸方向にそれぞれ離間してポンプポート27、左,右のタンクポート28A,28B、および左,右のアクチュエータポート29A,29Bが設けられている。ポンプポート27は、一側がポンプ管路18Aに接続され、他側が中央油溝24に連通している。
左タンクポート28Aは、一側がタンク管路18Bに接続され、他側が左端側油溝26Aに連通している。一方、右タンクポート28Bは、一側がタンク管路18Bに接続され、他側が右端側油溝26Bに連通している。
左アクチュエータポート29Aは、一側が左側油溝25Aに連通し、他側が主管路19Aに接続されている。一方、右アクチュエータポート29Bは、一側が右側油溝25Bに連通し、他側が主管路19Bに接続されている。
スプール30は、ハウジング22のスプール摺動穴23に摺動可能に挿嵌されている。このスプール30は、後述の左,右のパイロット油室35A,35Bに供給されるパイロット圧に従ってスプール摺動穴23内を左,右方向に摺動変位するものである。スプール30の軸方向中間部には、ランドとしての中央ランド31が設けられている。また、スプール30の軸方向両端側には、ランドとしての左側ランド32A、右側ランド32Bが設けられている。これら各ランド31,32A,32Bは、スプール摺動穴23に対して軸方向および回転方向に摺動する。
中央ランド31の左端部31A側には、軸方向に延びるノッチ31Bが周方向に離間して複数個形成され、右端部31C側には軸方向に延びるノッチ31Dが周方向に離間して複数個形成されている。ノッチ31Bは、中央油溝24と左側油溝25Aとの間、即ちポンプポート27と左アクチュエータポート29Aとの間を流れる圧油を小流量で連通させるものである。一方、ノッチ31Dは、中央油溝24と右側油溝25Bとの間、即ちポンプポート27と右アクチュエータポート29Bとの間を流れる圧油を小流量で連通させるものである。
左側ランド32Aの右端部32A1側には、軸方向に延びるノッチ32A2が周方向に離間して複数個形成されている。ノッチ32A2は、左側油溝25Aと左端側油溝26Aとの間、即ち左アクチュエータポート29Aと左タンクポート28Aとの間を流れる圧油を小流量で連通させるものである。また、左側ランド32Aの左端部32A3側、即ちスプール30の左端部には、後述の左突出軸部39Aが設けられている。
一方、右側ランド32Bの左端部32B1側には、軸方向に延びるノッチ32B2が周方向に離間して複数個形成されている。ノッチ32B2は、右側油溝25Bと右端側油溝26Bとの間、即ち右アクチュエータポート29Bと右タンクポート28Bとの間を流れる圧油を小流量で連通させるものである。また、右側ランド32Bの右端部32B3側、即ちスプール30の右端部には、後述の右突出軸部39Bが設けられている。
中央ランド31と左側ランド32Aとの間は、各ランド31,32A,32Bの外径寸法よりも小さい外径寸法を有する左軸部33Aで接続されている。また、中央ランド31と右側ランド32Bとの間は、各ランド31,32A,32Bの外径寸法よりも小さい外径寸法を有する右軸部33Bで接続されている。
図3に示すように、スプール30が中立位置にあるときには、中央ランド31が中央油溝24と左側油溝25A、右側油溝25Bとの間を遮断する。この場合、油圧ポンプ14から吐出された圧油は、ポンプ管路18Aからバイパス管路18Cを介してタンク管路18Bへと導かれ作動油タンク15に戻される。
一方、図6、図7に示すように、例えばスプール30が中立位置から右方向に変位したときには、中央ランド31により中央油溝24と左側油溝25Aとの間が連通され、右側ランド32Bにより右側油溝25Bと右端側油溝26Bとの間が連通される。この場合、油圧ポンプ14から吐出された圧油は、ポンプポート27から左アクチュエータポート29Aへと導かれ、主管路19Aを介してブームシリンダ4Dの油室7Aに供給される。これにより、ブームシリンダ4Dのロッド8を伸長させることができる。また、油室7Bから主管路19Bに戻された圧油は、右アクチュエータポート29Bから右側ランド32Bを介して右タンクポート28Bへと導かれ、タンク管路18Bを介して作動油タンク15に戻される。
左キャップ34Aは、スプール摺動穴23の軸方向の左端部23Aに位置してハウジング22に設けられている。一方、右キャップ34Bは、スプール摺動穴23の軸方向の右端部23Bに位置してハウジング22に設けられている。これらキャップ34A,34Bは、同じ構成からなり左,右方向で対称形状となっている。以下、図3、図4を参照して右キャップ34Bについて説明し、左キャップ34Aについては説明を省略する。
右キャップ34Bは、底部34B1を有する有底筒状に形成され、スプール摺動穴23の右端部23Bを閉塞するものである。また、右キャップ34Bには、パイロット管路20Bの接続ポート34B2が設けられている。そして、右キャップ34Bの内部には、スプール30を軸方向に摺動変位させるための右パイロット油室35Bが形成されている。
この右キャップ34Bの内径は、スプール摺動穴23の孔径よりも大きく形成されている。そして、右パイロット油室35Bは、接続ポート34B2を介してパイロット管路20Bに接続され、油圧ショベル1のオペレータが手動操作する操作レバー11Aのパイロット弁11からパイロット圧が供給される。そして、スプール30は、このときのパイロット圧に従ってスプール摺動穴23内を左,右方向に摺動変位する。
同様に、左キャップ34Aには、底部34A1、接続ポート34A2が設けられている。そして、左キャップ34Aの内部には、左パイロット油室35Aが形成されている。この左パイロット油室35Aは、接続ポート34A2を介してパイロット管路20Aに接続されている。
左ばね受36Aは、左側ランド32Aの左端部32A3に当接した状態で左パイロット油室35A内に配設されている。この左ばね受36Aは、例えば耐摩耗性、潤滑性を有する樹脂材料からなり、その外径寸法は、左キャップ34Aの内径とほぼ同じ寸法となっている。また、左ばね受36Aには、軸方向に貫通する貫通孔36A1が形成されている。この貫通孔36A1には、後述する左突出軸部39Aが挿通される。左ばね受36Aは、後述の左スプリング37Aを支持すると共に、本発明の摺動部材を構成するもので、スプール30の左端部32A3と左スプリング37Aとの相対回転を許すものである。
同様に、右ばね受36Bは、右側ランド32Bの右端部32B3に当接した状態で右パイロット油室35B内に配設されている。この右ばね受36Bは、例えば耐摩耗性、潤滑性を有する樹脂材料からなり、その外径寸法は、右キャップ34Bの内径とほぼ同じ寸法となっている。また、右ばね受36Bには、軸方向に貫通する貫通孔36B1が形成されている。この貫通孔36B1には、後述する右突出軸部39Bが挿通される。右ばね受36Bは、後述の右スプリング37Bを支持すると共に、本発明の摺動部材を構成するもので、スプール30の右端部32B3と後述の右スプリング37Bとの相対回転を許すものである。なお、これら左ばね受36A、右ばね受36Bは、1枚に限らず複数枚に重ねて用いてもよい。
左スプリング37Aは、左キャップ34A内に配設されたものである。この左スプリング37Aは、後述する左突出軸部39Aの外周側で左キャップ34Aの底部34A1と左ばね受36Aとの間に設けられている。そして、左スプリング37Aは、左ばね受36Aを介してスプール30を中立位置に向けて付勢している。即ち、左スプリング37Aは、スプール30を中立位置に戻すためのセンタリング用のばね部材である。右キャップ34Bの接続ポート34B2から右パイロット油室35Bに圧油(パイロット圧)が供給されてスプール30が左方向に摺動変位するときに、左スプリング37Aは、スプール30の左端部32A3から左ばね受36Aを介して左方向に押圧されて圧縮変形される。
同様に、右スプリング37Bは、右キャップ34B内に配設されたものである。この右スプリング37Bは、後述する右突出軸部39Bの外周側で右キャップ34Bの底部34B1と右ばね受36Bとの間に設けられている。右スプリング37Bは、右ばね受36Bを介してスプール30を中立位置に向けて付勢している。即ち、右スプリング37Bは、スプール30を中立位置に戻すためのセンタリング用のばね部材である。左キャップ34Aの接続ポート34A2から左パイロット油室35Aに圧油(パイロット圧)が供給されてスプール30が右方向に摺動変位するときに、右スプリング37Bは、スプール30の右端部32B3から右ばね受36Bを介して右方向に押圧されて圧縮変形される。
次に、本発明の回転規制部38Aおよび回転規制部38Bについて説明する。なお、回転規制部38Aと回転規制部38Bとは、同じ構成からなり左,右方向で対称形状となっている。以下、図3、図4を参照して回転規制部38Bについて説明し、回転規制部38Aについてはその説明を省略する。
回転規制部38Bは、スプール30の右端部32B3と右キャップ34Bとの間に設けられている。この回転規制部38Bは、スプール30が右キャップ34B内に向けて変位したときに、スプール30のスプール摺動穴23内における回転を規制するものである。また、回転規制部38Bは、スプール30の回転が規制されるまでは、スプール30のスプール摺動穴23内における回転を許容するものである。そして、回転規制部38Bは、右突出軸部39Bと、右嵌合突部40Bとにより構成されている。
右突出軸部39Bは、スプール30の右端部32B3に設けられ、右キャップ34B内に向けて軸方向に突出するものである。この右突出軸部39Bは、円柱体からなり右側ランド32Bに一体形成され、右ばね受36Bの貫通孔36B1を挿通している。右突出軸部39Bの右端側には、径方向に貫通するキー溝39B1が形成されている。
また、右突出軸部39Bの右面は、キー溝39B1に向けて徐々に縮径するテーパ面39B2となっている。このテーパ面39B2は、後述の嵌合部としての右嵌合突部40Bをキー溝39B1へと案内するものである。キー溝39B1の深さ寸法およびテーパ面39B2の深さ寸法は、後述の右嵌合突部40Bの長さ寸法と共に、スプール30の回転を規制し始める位置およびスプール30のストロークエンドとの関係により適宜設定される。この場合、右突出軸部39Bは、スプール30の一部を構成するものである。
右嵌合突部40Bは、右キャップ34Bの底部34B1側で右パイロット油室35B内に突出して設けられている。この右嵌合突部40Bは、右突出軸部39Bのキー溝39B1に対応して形成され、スプール30が右方向に変位したときに右突出軸部39Bのキー溝39B1が進退可能に嵌合するものである。
具体的には、図6に示すように、スプール30が右方向に所定量摺動変位したときに、右突出軸部39Bのキー溝39B1と右嵌合突部40Bとが嵌合することにより、スプール30の回転が規制される。そして、図7に示すように、スプール30の回転が規制された状態で、スプール30は、右突出軸部39Bのキー溝39B1の底部に右嵌合突部40Bが当接するまで(即ち、ストロークエンドまで)軸方向に移動可能となっている。
同様に、回転規制部38Aは、左突出軸部39Aと、左嵌合突部40Aとにより構成されている。そして、左突出軸部39Aには、キー溝39A1、テーパ面39A2が形成されている。
本実施の形態によるブームシリンダ4D用のスプール弁装置21は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、スプール弁装置21の左側に設けられた左キャップ34A内の左パイロット油室35Aには、油圧ショベル1のオペレータが手動操作する操作レバー11Aのパイロット弁11からパイロット管路20A、接続ポート34A2を介してパイロット圧が供給される。一方、スプール弁装置21の右側に設けられた右キャップ34B内の右パイロット油室35Bには、油圧ショベル1のオペレータが手動操作する操作レバー11Aの減圧弁型パイロット弁11等からパイロット管路20B、接続ポート34B2を介してパイロット圧が供給される。
そして、このときのパイロット圧がタンク圧のレベルまで下がっているときには、スプール30が左,右のスプリング37A,37Bにより中立位置に戻された状態となる。この場合、ハウジング22内に設けられたポンプポート27と左,右のアクチュエータポート29A,29Bとの間は、スプール30の中央ランド31により遮断された状態となり、左,右のアクチュエータポート29A,29Bと左,右のタンクポート28A,28Bとの間は、それぞれ左側ランド32A,右側ランド32Bにより遮断された状態となる。
これにより、ブームシリンダ4Dの油室7A,7Bは、油圧ポンプ14から遮断されると共に、作動油タンク15からも遮断され、ブームシリンダ4Dのロッド8は、チューブ5から伸縮することなく停止状態に保持される。
次に、例えば油圧ショベル1のオペレータがブームシリンダ4Dを作動するために、操作レバー11Aを傾転操作して、左キャップ34Aの左パイロット油室35A内にパイロット圧を供給すると、図6、図7に示すように、スプール30が右キャップ34B内の右スプリング37Bに抗して右方向に摺動変位した状態となる。この場合、ハウジング22内に設けられたポンプポート27と左アクチュエータポート29Aとの間は、中央油溝24、中央ランド31のノッチ31B、左側油溝25Aを介して連通した状態となる。また、右アクチュエータポート29Bと右タンクポート28Bとの間は、右側油溝25B、右側ランド32Bのノッチ32B2、右端側油溝26Bを介して連通した状態となる。
これにより、ブームシリンダ4Dの油室7Aには、油圧ポンプ14からの圧油がポンプ管路18A、ポンプポート27、中央油溝24、ノッチ31B、左側油溝25A、左アクチュエータポート29A、主管路19Aを介して供給される。また、ブームシリンダ4Dの油室7Bからの戻り油は、主管路19B、右アクチュエータポート29B、右側油溝25B、ノッチ32B2、右端側油溝26B、右タンクポート28Bを介してタンク管路18Bから作動油タンク15内に排出される。この結果、ブームシリンダ4Dのロッド8は、伸長方向に駆動される。
一方、オペレータが操作レバー11Aを中立位置から逆向きに傾転操作して、右キャップ34Bの右パイロット油室35B内にパイロット圧を供給すると、スプール30が左キャップ34A内の左スプリング37Aに抗して左方向に摺動変位した状態となる。この場合、ハウジング22内に設けられたポンプポート27と右アクチュエータポート29Bとの間は、中央油溝24、中央ランド31のノッチ31D、右側油溝25Bを介して連通した状態となる。また、左アクチュエータポート29Aと左タンクポート28Aとの間は、左側油溝25A、左側ランド32Aのノッチ32A2、左端側油溝26Aを介して連通した状態となる。
これにより、ブームシリンダ4Dの油室7Bには、油圧ポンプ14からの圧油がポンプ管路18A、ポンプポート27、中央油溝24、ノッチ31D、右側油溝25B、右アクチュエータポート29B、主管路19Bを介して供給される。また、ブームシリンダ4Dの油室7Aからの戻り油は、主管路19A、左アクチュエータポート29A、左側油溝25A、ノッチ32A2、左端側油溝26A、左タンクポート28Aを介してタンク管路18Bから作動油タンク15内に排出される。この結果、ブームシリンダ4Dのロッド8は、縮小方向に駆動される。
ところで、スプール弁装置21を圧油が通過するとき、ハウジング22のスプール摺動穴23に摺動可能に挿嵌されたスプール30は、作動油の粘性抵抗および動圧(流体力)によってスプール摺動穴23内で回転する。この場合、スプール30とハウジング22(スプール摺動穴23)との間で摩耗が生じ、スプール30およびハウジング22の寿命が低下してしまうという虞がある。
そこで、上述の従来技術では、スプールの軸方向の端部にスプールの回転を規制する回転規制部を設けて、スプールの軸方向の摺動のみを可能とすることにより、スプールとハウジングとの間の摩耗を低減している。
しかし、スプールのノッチを圧油が通過するときには、流速が急激に増加すると共に圧力が急激に低下し、作動油の圧力が飽和蒸気圧よりも低くなると、作動油中に気泡(所謂、キャビテーション)が発生する虞がある。液体中に発生した気泡は、流体噴流に乗って下流側へと導かれる。この気泡が押しつぶされて破裂した場合には、局所的に高い衝撃圧が発生し、この衝撃圧によりハウジングおよびスプールが浸食される虞がある。この場合、スプールの軸方向の摺動のみを可能としていると、気泡の破裂による衝撃圧は、同じ位置に集中して起こり、ハウジングおよびスプールの寿命が低下するという問題がある。
そこで、本実施の形態では、スプール30のストローク量が小さいときには、スプール30の回転を許容し、スプール30のストローク量が大きいときには、スプール30の回転を規制する構成としている。具体的には、スプール30が中立位置にある状態(図3の状態)から、例えばオペレータがブームシリンダ4Dを伸長側に作動するために、操作レバー11Aを傾転操作して、左キャップ34Aの左パイロット油室35A内にパイロット圧を供給すると、スプール30が右キャップ34B内の右スプリング37Bに抗して右方向に摺動変位する。
この場合、スプール30は、右突出軸部39Bのキー溝39B1と右嵌合突部40Bとが嵌合していないので回転可能となっている。スプール30が回転することにより、作動油の流れに変化を与えることができるので、例えばノッチ32B2で発生した気泡の破裂による衝撃圧を分散させることができる。これにより、ハウジング22の浸食を抑制することができる。
オペレータが操作レバー11Aをさらに傾転操作すると、スプール30は、さらに右方向に摺動変位する。この場合、ポンプポート27と左アクチュエータポート29Aおよび右アクチュエータポート29Bと右タンクポート28Bとの間を通過する作動油の流量が多くなっていくので、スプール30の回転は徐々に増加する。そして、図6に示すように、右突出軸部39Bのキー溝39B1と右嵌合突部40Bとが嵌合すると、スプール30の回転が規制される。これにより、スプール30とハウジング22との間の摩耗を低減することができる。
さらに操作レバー11Aが傾転操作されると、スプール30は、回転規制部38B(右突出軸部39B、右嵌合突部40B)により回転が規制された状態で右方向に摺動変位し、図7に示すように、右突出軸部39Bのキー溝39B1の底部に右嵌合突部40Bが当接してスプール30のストロークエンドとなる。スプール30のストロークエンドの状態では、ポンプポート27と左アクチュエータポート29Aおよび右アクチュエータポート29Bと右タンクポート28Bとの間を通過する作動油の流量が多く、スプール30には強い回転力が働く。しかし、スプール30は、回転規制部38Bにより回転を規制されているので、スプール30とハウジング22との間の摩耗を低減することができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、スプール30のストローク量が小さい場合には、スプール30の回転を許すことで、気泡の破裂による衝撃圧をハウジング22の同じ位置に集中させるのを抑制することができる。即ち、スプール30が回転することで作動油の流れに変化を与えることができるので、気泡の破裂による衝撃圧を分散させることができる。また、スプール弁装置21に大流量を流すためにスプール30のストローク量を大きくした場合には、回転規制部38A,38Bによりスプール30の回転が規制され、スプール30とハウジング22との間の摩耗を低減することができる。従って、キャビテーションによる気泡の衝撃圧と、スプール30の過剰な回転によるスプール30とハウジング22との摩耗との両方を抑制することができるので、スプール弁装置21の寿命を向上させることができる。
次に、図9ないし図13は、本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、回転規制部を突出軸部と筒状体とにより構成し、突出軸部が筒状体内に進入することにより、スプールの回転規制力を発生させるものである。なお、本実施の形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
回転規制部41は、スプール30の右端部32B3と右キャップ34Bとの間に設けられている。この回転規制部41は、スプール30が右キャップ34B内に向けて変位したときに、スプール30のスプール摺動穴23内における回転を規制するものである。また、回転規制部41は、スプール30の回転が規制されるまでは、スプール30のスプール摺動穴23内における回転を許容するものである。そして、回転規制部41は、右突出軸部42と、右筒状体43とにより構成されている。なお、ハウジング22を挟んで回転規制部41の反対側には、図示しない回転規制部が回転規制部41と左,右方向で対称形状に設けられている。
右突出軸部42は、スプール30の右端部32B3に設けられ、右キャップ34B内に向けて軸方向に突出するものである。この右突出軸部42は、円柱体からなり右側ランド32Bに一体形成され、右ばね受36Bの貫通孔36B1を挿通している。この場合、右突出軸部42は、スプール30の一部を構成するものである。
右嵌合部としての右筒状体43は、右キャップ34Bの底部34B1側で右パイロット油室35B内に突出して設けられている。この右筒状体43は、右突出軸部42に対応した位置に配設され、スプール30が右方向に変位したときに右突出軸部42が進退可能に挿嵌されるものである。そして、右筒状体43は、その内径が右突出軸部42の外径にほぼ等しい寸法に形成され、両者間には摩擦抵抗が発生するものである。
また、右筒状体43には、右キャップ34Bの底部34B1側で周方向に1個または複数個の油孔44(1個のみ図示)が形成されている。この油孔44は、右筒状体43の内外を右パイロット油室35Bに常時連通させている。これにより、右突出軸部42が右筒状体43内に挿嵌されたときに、右筒状体43内の作動油を右パイロット油室35Bに逃すことができる。
オペレータが操作レバー11Aを傾転操作して、スプール30が中立位置(図9の状態)から右方向に変位したときに、右突出軸部42が右筒状体43に嵌合するまでは、スプール30の回転が可能となっている。スプール30が回転することにより、作動油の流れに変化を与えることができるので、例えばノッチ32B2で発生した気泡の破裂による衝撃圧を分散させることができる。これにより、ハウジング22の浸食を抑制することができる。
オペレータが操作レバー11Aをさらに傾転操作すると、スプール30は、回転を増加させながら、さらに右方向に摺動変位する。そして、右突出軸部42が右筒状体43内に進入し始める。これにより、右突出軸部42は、右筒状体43の内周面に摺接して抵抗力が与えられ、ひいてはスプール30に回転規制力を与えることができる。
さらに操作レバー11Aが傾転操作されると、スプール30は、回転規制部41(右突出軸部42、右筒状体43)により回転が規制された状態で右方向に摺動変位し、図12に示すように、右突出軸部42が右キャップ34Bの底部34B1に当接してスプール30のストロークエンドとなる。この場合、スプール30が右方向に摺動変位するに従って、右突出軸部42と右筒状体43との接触面積が徐々に大きくなる。これにより、右突出軸部42には、徐々に大きな抵抗力が与えられ、ひいてはスプール30に与える回転規制力を増大させることができる。
かくして、第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、キャビテーションによる気泡の衝撃圧と、スプール30の過剰な回転によるスプール30とハウジング22との摩耗との両方を抑制することができるので、スプール弁装置21の寿命を向上させることができる。特に、第2の実施の形態では、スプール30のストローク量の増加に伴い、スプール30の回転を規制する力が徐々に強まる。これにより、スプール30の回転を滑らかに停止させることができ、スプール30にかかる衝撃を抑制することができる。
次に、図14、図15は、本発明の第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態の特徴は、スプールがキャップ内に向けて変位したときに加えて、スプールが中立位置にあるときにもスプールの回転を規制したことにある。なお、本実施の形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
右キャップ51は、スプール摺動穴23の軸方向の右端部23Bに位置してハウジング22に設けられている。この右キャップ51は、有底筒状に形成され、スプール摺動穴23の右端部23Bを閉塞するものである。右キャップ51には、パイロット管路20Bの接続ポート34B2が設けられている。そして、右キャップ51の内部には、スプール30を軸方向に摺動変位させるための右パイロット油室52が形成されている。また、右キャップ51の内周側には、径方向内側に向けて突出する後述の底部側突出部58と、中央側突出部60とが右キャップ51に一体形成されている。なお、ハウジング22を挟んで右キャップ51の反対側には、図示しない左キャップが右キャップ51と左,右方向で対称形状に設けられている。
右スプリング53は、右キャップ51内に配設されたものである。この右スプリング53は、後述する右突出軸部55のスプリング取付凹部56の底部と右キャップ51の底部との間に設けられている。右スプリング53は、スプール30を中立位置に向けて付勢している。即ち、右スプリング53は、スプール30を中立位置に戻すためのセンタリング用のばね部材である。なお、左キャップ内にも図示しない左スプリングが設けられている。
回転規制部54は、スプール30の右端部32B3と右キャップ51との間に設けられている。この回転規制部54は、スプール30が右キャップ51内に向けて変位したときに、スプール30のスプール摺動穴23内における回転を規制するものである。また、回転規制部54は、スプール30の回転が規制されるまでは、スプール30のスプール摺動穴23内における回転を許容するものである。そして、回転規制部54は、右突出軸部55に形成された環状突部57と右キャップ51に形成された底部側突出部58とにより構成されている。なお、左キャップ内には、図示しない回転規制部が回転規制部54と左,右方向で対称形状に設けられている。
右突出軸部55は、スプール30の右端部32B3に設けられ、右キャップ51内に向けて軸方向に突出するものである。この右突出軸部55は、右側ランド32Bに一体形成されている。この場合、右突出軸部55は、スプール30の一部を構成するものである。右突出軸部55には、右端側から軸方向に凹むスプリング取付凹部56が穿設されている。このスプリング取付凹部56の底部と右キャップ51の底部との間には、右スプリング53が配設されている。
右突出軸部55の外周側には、径方向外側に向けて突出する環状突部57が形成されている。この環状突部57は、軸方向に所定の厚さ寸法を有しており、後述する底部側突出部58および中央側突出部60に摺接する構成となっている。環状突部57、底部側突出部58、中央側突出部60のそれぞれの軸方向の厚さ寸法は、スプール30のストロークのうち、回転を規制する範囲と回転を許容する範囲との関係により適宜設定される。
底部側突出部58は、右キャップ51の底部側の内周面から径方向内側に向けて突出し、右キャップ51に一体形成されている。この底部側突出部58は、右突出軸部55の環状突部57に対応して形成されている。即ち、底部側突出部58は、スプール30が右方向に摺動変位してストロークエンドに近付いたときに、環状突部57と摺接して右突出軸部55に抵抗力を与え、ひいてはスプール30に回転規制力を与えるものである。
他の回転規制部59は、スプール30の右端部32B3と右キャップ51との間に設けられている。他の回転規制部59は、スプール30が中立位置にあるときに、スプール30のスプール摺動穴23内における回転を規制するものである。そして、他の回転規制部59は、右突出軸部55に形成された環状突部57と右キャップ51に形成された中央側突出部60とにより構成されている。なお、左キャップ内には、図示しない他の回転規制部が他の回転規制部59と左,右方向で対称形状に設けられている。
中央側突出部60は、右キャップ51の軸方向中央部の内周面から径方向内側に向けて突出し、右キャップ51に一体形成されている。この中央側突出部60は、右突出軸部55の環状突部57に対応して形成され、かつスプール30が中立位置にあるときに環状突部57と当接する位置に設けられている。即ち、中央側突出部60は、スプール30が中立位置にあるときに、環状突部57と摺接して右突出軸部55に抵抗力を与え、ひいてはスプール30に回転規制力を与えるものである。
このように構成された第3の実施の形態では、スプール30が中立位置にあるときには、右突出軸部55の環状突部57が中央側突出部60に広い面積で接触することにより、右突出軸部55に大きな抵抗力を与えてスプール30の回転を規制している。そして、スプール30が右方向に摺動変位すると、環状突部57と中央側突出部60との接触面積が徐々に小さくなる。これにより、右突出軸部55に与えられる抵抗力が徐々に弱くなるので、スプール30の回転が許容される。さらに、スプール30が右方向に摺動変位してストロークエンドに近付くと、環状突部57と底部側突出部58との接触面積が徐々に大きくなる。これにより、右突出軸部55には、徐々に大きな抵抗力が与えられ、ひいてはスプール30に与える回転規制力を増大させることができる。
かくして、第3の実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、キャビテーションによる気泡の衝撃圧と、スプール30の過剰な回転によるスプール30とハウジング22との摩耗との両方を抑制することができるので、スプール弁装置21の寿命を向上させることができる。また、第3の実施の形態では、スプール30が中立位置にあるときにもスプール30の回転を規制している。これにより、スプール30が中立位置にあるときにも、スプール30とハウジング22との摩耗を抑制することができる。
次に、図16ないし図18は、本発明の第4の実施の形態を示している。第4の実施の形態の特徴は、磁力によりスプールの回転を規制したことにある。なお、本実施の形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
右キャップ61は、スプール摺動穴23の軸方向の右端部23Bに位置してハウジング22に設けられている。この右キャップ61は、例えば非磁性材料を用いて有底筒状に形成され、スプール摺動穴23の右端部23Bを閉塞するものである。右キャップ61の底部には、パイロット管路20Bの接続ポート34B2が設けられている。
また、右キャップ61の内周側で底部側には、周方向に離間して複数個(例えば、2個)の磁石取付凹部62が形成されている。この磁石取付凹部62には、後述のキャップ側磁石70が固着される。そして、右キャップ61の内部には、スプール30を軸方向に摺動変位させるための右パイロット油室63が形成されている。なお、ハウジング22を挟んで右キャップ61の反対側には、図示しない左キャップが右キャップ61と左,右方向で対称形状に設けられている。
右スプリング64は、右キャップ61内に配設されたものである。この右スプリング64は、後述する右突出軸部66のスプリング取付凹部67の底部と右キャップ61の底部との間に設けられている。右スプリング64は、スプール30を中立位置に向けて付勢している。即ち、右スプリング64は、スプール30を中立位置に戻すためのセンタリング用のばね部材である。なお、左キャップ内にも図示しない左スプリングが設けられている。
回転規制部65は、スプール30の右端部32B3と右キャップ61との間に設けられている。この回転規制部65は、スプール30が右キャップ61内に向けて変位したときに、スプール30のスプール摺動穴23内における回転を規制するものである。また、回転規制部65は、スプール30の回転が規制されるまでは、スプール30のスプール摺動穴23内における回転を許容するものである。そして、回転規制部65は、右突出軸部66に設けられた軸側磁石69と右キャップ61に設けられたキャップ側磁石70とにより構成されている。なお、左キャップ内には、図示しない回転規制部が回転規制部65と左,右方向で対称形状に設けられている。
右突出軸部66は、スプール30の右端部32B3に設けられ、右キャップ61内に向けて軸方向に突出するものである。この右突出軸部66は、例えば非磁性材料を用いて右側ランド32Bとほぼ同じ外径寸法を有して右側ランド32Bに一体形成されている。この場合、右突出軸部66は、スプール30の一部を構成するものである。右突出軸部66には、右端側から軸方向に凹むスプリング取付凹部67が穿設されている。このスプリング取付凹部67の底部と右キャップ61の底部との間には、右スプリング64が配設されている。また、右突出軸部66の右端側には、軸方向に凹む磁石取付凹部68が周方向に離間して複数個(例えば、2個)形成されている。
軸側磁石69は、右突出軸部66の磁石取付凹部68に固着されている。一方、キャップ側磁石70は、右キャップ61の磁石取付凹部62に固着されている。軸側磁石69とキャップ側磁石70とは、その磁力によりスプール30の回転を規制するものである。具体的には、スプール30のストロークが小さいときには、軸側磁石69とキャップ側磁石70との距離が十分に離れているので磁力の影響が少なく、スプール30の回転を許容する。一方、スプール30がストロークエンドに近付いたときには、軸側磁石69とキャップ側磁石70との距離が近づくので磁力が強く働き、スプール30の回転を規制する。
かくして、第4の実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、キャビテーションによる気泡の衝撃圧と、スプール30の過剰な回転によるスプール30とハウジング22との摩耗との両方を抑制することができるので、スプール弁装置21の寿命を向上させることができる。特に、第4の実施の形態では、磁力によりスプール30の回転を規制しているので、スプール30にかかる衝撃圧を低減することができる。また、右キャップ61と右突出軸部66とに磁石(キャップ側磁石70、軸側磁石69)を設けるだけでよいので、加工を簡単に行うことができる。
次に、図19、図20は、本発明の第5の実施の形態を示している。第5の実施の形態の特徴は、アクチュエータポートとタンクポートとの間を連通させるノッチをポンプポートとアクチュエータポートとの間を連通させるノッチに対して周方向にずらして配置したことにある。なお、本実施の形態では、第1、第2の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
ノッチ71は、右側ランド32Bの左端側に軸方向に延びるように形成されている。このノッチ71は、周方向に離間して複数個(例えば2個)形成されている。ノッチ71は、右側油溝25Bと右端側油溝26Bとの間、即ち右アクチュエータポート29Bと右タンクポート28Bとの間を流れる圧油を小流量で連通させるものである。
そして、ノッチ71は、中央ランド31の右端部31Cに形成され、ポンプポート27と右アクチュエータポート29Bとの間を連通させるノッチ31B,31D(31Dのみ図示)に対して周方向にずらした位置に配置されている。これにより、スプール30の回転を許容するストローク位置で、スプール30を円滑に回転させることができる。
その結果、キャビテーションによる気泡を分散させることができ、気泡の破裂による衝撃圧をハウジング22の同じ位置に集中させるのを抑制することができる。なお、図示しない左側ランドに形成されたノッチも、中央ランド31に形成されたノッチ31B,31Dに対して周方向にずらした位置に配設されている。
なお、上述した第1、第2の実施の形態では、スプール30と左,右のスプリング37A,37Bの摺動部材として左,右のばね受36A,36Bを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図21に示す変形例のように、スプール30の右端部32B3と右スプリング37Bとの間に摺動部材としての玉軸受81を設けてもよい。これにより、スプール30と右スプリング37Bとの間の摺動抵抗を小さくすることができるので、スプール30を円滑に回転させることができる。また、スプール30と右スプリング37Bとの摩耗も低減することができる。なお、左ばね受36Aについても同様に玉軸受を用いてもよい。
また、各実施の形態では、ブームシリンダ4D用のスプール弁装置21を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばアームシリンダ4E、バケットシリンダ4F、および油圧モータ等のスプール弁装置に適用してもよい。また、これ以外に圧力制御弁、流量制御弁等のスプール弁装置に適用することができる。