JP6485307B2 - タンタル酸リチウム単結晶及びその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1では、線熱膨張係数の差が特定値以内にある2枚の基板を用い、いずれかの基板に応力を緩和する切り込みを設けること、特許文献2では、LT基板とサファイア基板を接合し、その界面にアモルファスの接合領域を設けること、また、特許文献3では、圧電基板と特定の厚みで表面が酸化されたSi支持基板とを接着層を介して貼り合わせることが提案されている。
すなわち、本発明のタンタル酸リチウム単結晶は、ドーパントとしてガリウム(Ga)を0.01重量%以上0.3重量%以下の範囲で含有する。
熱伝導率が、4.0W/m・K未満であると、放熱性が悪く、特性の良いSAWデバイスが得られない。一方、熱伝導率が、4.5W/m・Kを超えるようなLT単結晶の製造は難しくコストがかかる。
本発明は、タンタル酸リチウム単結晶の原料粉末に、ドーパントとなるガリウム原料粉末を添加して、チョクラルスキー法により結晶を育成するタンタル酸リチウム単結晶の製造方法であって、ガリウム原料粉末は、原料融液中のGa濃度が0.05重量%以上、1.5重量%以下になるように添加することを特徴とする。
使用する坩堝としては、特に限定されるものではなく、例えば白金、モリブデン、タングステン、イリジウム、ロジウム、レニウム、又はこれらの合金等からなるもの等を使用することができる。その中でも特に、タンタル酸リチウムは、比較的融点が高いため、イリジウムのような耐熱性に優れた素材からなるものを用いることが好ましい。
ここで、原料融液中のGa濃度が0.05重量%以上2.0重量%以下となるように添加するのは、結晶育成に用いる原料融液へ添加するのがGa2O3である場合、LT単結晶育成におけるGaの偏析係数(すなわち、結晶中のGa濃度/融液中のGa濃度)が概ね0.2であるためであり、これにより育成した結晶中のGa濃度を0.01重量%以上0.4重量%以下とすることができる。
結晶形状の調節は、例えば、育成中の結晶重量を測定して直径や育成速度等を計算によって導き出し、回転速度や引き上げ速度を調整して行うことができる。また、結晶重量の変化をヒータへの投入電力にフィードバックして融液温度をコントロールしてもよい。
得られた単結晶(インゴット)は、所定の厚さにスライス、研磨して下記のSAWフィルターなどの基板とすることができる。
本発明のSAWフィルターは、上記タンタル酸リチウム単結晶を用いた素子であり、圧電体基板上に形成された櫛形電極に高周波電力を入力して圧電体基板表面に弾性表面波を発生させ、この弾性表面波を別の櫛形電極により再び高周波電気信号に戻すデバイスである。
チョクラルスキー法により、高周波誘導加熱炉を用いてGaを含有するLT単結晶の育成を行った。
まず、炉内にφ170mmのイリジウム(Ir)製坩堝を設置し、坩堝内にコングルエント組成、すなわち組成ずれ(組成揺らぎ)がなく均一な組成の結晶を容易に得ることができる調和溶融(一致溶融)で調合したLT仮焼粉とGa2O3粉を充填して、約1750℃で融解させた。
Ga2O3粉の添加量は、原料融液中のGa濃度(以下、仕込みGa濃度と称す)が0.05重量%となるように秤量した。
育成後、炉内を室温付近まで冷却して結晶を取り出し、φ4インチのクラック・フリーのGaドープLT単結晶を得た。
そして、得られた単結晶をアニール、ポーリングした後に熱伝導率測定用試料を結晶から切り出し、また、結晶のスライス、研磨を行って音速測定用試料(基板)を作製した。
また、音速測定用に作製したLT基板上に、図1に示したような電極周期が4μmの1ポートSAWデバイスを作製し(電極材質:Cu)、ネットワークアナライザーにより共振周波数を測定し、音速を求めたところ3850m/secであった。更に、得られたLT単結晶中のGa濃度分析をICP−AES法で行ったところ、0.01重量%であった。結果を表1に示した。
実施例2では、仕込みGa濃度を1.5重量%となるようにGa2O3粉を坩堝にチャージした以外は、実施例1と同様にして結晶育成を行い、クラック・フリーのGaドープLT単結晶を得た。
得られた結晶の熱伝導率を測定したところ、4.40W/m・Kであり、アンドープ結晶の熱伝導率と比較して約14%の改善が見られた。また、音速は3840m/secでアンドープと比較して変化は見られなかった。更に、得られたLT単結晶中のGa濃度分析をICP−AES法で行ったところ、0.29重量%であった。
実施例3では、仕込みGa濃度を0.5重量%となるようにGa2O3粉を坩堝にチャージした以外は、実施例1と同様にして結晶育成を行い、クラック・フリーのGaドープLT単結晶を得た。
得られた結晶の熱伝導率を測定したところ、4.45W/m・Kであり、アンドープ結晶の熱伝導率と比較して約14%の改善が見られた。また、音速は3840m/secでアンドープと比較して変化は見られなかった。更に、得られたLT単結晶中のGa濃度分析をICP−AES法で行ったところ、0.11重量%であった。
実施例4では、仕込みGa濃度を0.9重量%となるようにGa2O3粉を坩堝にチャージした以外は、実施例1と同様にして結晶育成を行い、クラック・フリーのGaドープLT単結晶を得た。
得られた結晶の熱伝導率を測定したところ、4.43W/m・Kであり、アンドープ結晶の熱伝導率と比較して約14%の改善が見られた。また、音速は3840m/secでアンドープと比較して変化は見られなかった。更に、得られたLT単結晶中のGa濃度分析をICP−AES法で行ったところ、0.18重量%であった。
実施例5では、仕込みGa濃度を0.2重量%となるようにGa2O3粉を坩堝にチャージした以外は、実施例1と同様にして結晶育成を行い、クラック・フリーのGaドープLT単結晶を得た。
得られた結晶の熱伝導率を測定したところ、4.32W/m・Kであり、アンドープ結晶の熱伝導率と比較して約12%の改善が見られた。また、音速は3840m/secでアンドープと比較して変化は見られなかった。更に、得られたLT単結晶中のGa濃度分析をICP−AES法で行ったところ、0.04重量%であった。
実施例6では、仕込みGa濃度を0.4重量%となるようにGa2O3粉を坩堝にチャージした以外は、実施例1と同様にして結晶育成を行い、クラック・フリーのGaドープLT単結晶を得た。
得られた結晶の熱伝導率を測定したところ、4.35W/m・Kであり、アンドープ結晶の熱伝導率と比較して約13%の改善が見られた。また、音速を求めたところ3850m/secであった。更に、得られたLT単結晶中のGa濃度分析をICP−AES法で行ったところ、0.08重量%であった。
実施例7では、仕込みGa濃度を1.7重量%となるようにGa2O3粉を坩堝にチャージした以外は、実施例1と同様にして結晶育成を行い、クラック・フリーのGaドープLT単結晶を得た。
得られた結晶の熱伝導率を測定したところ、4.16W/m・Kであり、アンドープ結晶の熱伝導率と比較して約8%の改善が見られた。また、音速は3840m/secでアンドープと比較して変化は見られなかった。更に、得られたLT単結晶中のGa濃度分析をICP−AES法で行ったところ、0.34重量%であった。
実施例8では、仕込みGa濃度を1.9重量%となるようにGa2O3粉を坩堝にチャージした以外は、実施例1と同様にして結晶育成を行い、クラック・フリーのGaドープLT単結晶を得た。
得られた結晶の熱伝導率を測定したところ、4.08W/m・Kであり、アンドープ結晶の熱伝導率と比較して約6%の改善が見られた。また、音速を求めたところ3850m/secであった。更に、得られたLT単結晶中のGa濃度分析をICP−AES法で行ったところ、0.38重量%であった。
チョクラルスキー法を用いてアンドープLT単結晶の育成を行った。育成には、実施例1と同様に高周波誘導加熱炉を用いた。炉内にφ170mmのイリジウム(Ir)製坩堝を設置し、坩堝内にコングルエント組成で調合したLT仮焼粉を充填して、約1700℃で融解させた。
その後、融液温度をLTの融点(1650℃)付近に調整し、種結晶を10rpmで回転させながら融液表面に接触させ、十分に馴染ませた後、引上げを開始した。
また、音速測定用に作製したLT基板上に、図1に示したような電極周期が4μmの1ポートSAWデバイスを作製し(電極材質:Cu)、ネットワークアナライザーにより共振周波数を測定し、音速を求めたところ3840m/secであった。
比較例1では、仕込みGa濃度を0.03重量%となるようにGa2O3粉を坩堝にチャージした以外は、実施例1と同様にして結晶育成を行い、クラック・フリーのGaドープLT単結晶を得た。
得られた結晶の熱伝導率を測定したところ、3.89W/m・Kであり、アンドープ結晶の熱伝導率に対してほとんど変化は見られなかった。音速は3840m/secでアンドープと比較して変化は見られなかった。更に、得られたLT単結晶中のGa濃度分析をICP−AES法で行ったところ、0.006重量%であった。
比較例2では、仕込みGa濃度を2.0重量%となるようにGa2O3粉を坩堝にチャージした以外は、実施例1と同様にして結晶育成を行った。冷却後に炉から取り出した結晶はクラックが発生しており、単結晶を得ることができなかった。なお、この時に得られた結晶中のGa濃度は0.42重量%であった。
実験結果を示す表1から明らかなように、実施例1〜8で得られたLT単結晶中のGa濃度は、0.01〜0.38重量%、また、熱伝導率は、4.08〜4.43W/m・Kであり、従来例のアンドープ結晶の熱伝導率と比較して約6〜15%の改善が見られた。また、得られた結晶を用いて基板上に作製したSAWデバイスで求めた音速は、3840〜3850m/secで音速の変化はほとんど見られなかった。
これに対して、比較例1では、得られたLT単結晶中のGa濃度が0.006重量%と低かったため、熱伝導率が、3.89W/m・Kとなり、従来例のアンドープ結晶の熱伝導率と比べ、さほど改善が見られなかった。また、比較例2では得られたLT単結晶中のGa濃度が0.42重量%と高かったため、クラックが発生した。
Claims (5)
- タンタル酸リチウム単結晶のLiサイト若しくはTaサイトの一部が、ガリウム(Ga)元素で置換されており、単結晶中のガリウム(Ga)含有量が0.11重量%以上、0.4重量%以下の範囲であることを特徴とするタンタル酸リチウム単結晶。
- 単結晶の熱伝導率が、4.0〜4.5W/m・Kであることを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウム単結晶。
- タンタル酸リチウム単結晶の原料粉末に、ドーパントとなるガリウム原料粉末を添加して、チョクラルスキー法により結晶を育成するタンタル酸リチウム単結晶の製造方法であって、
ガリウム原料粉末は、原料融液中のGa濃度が0.05重量%以上、1.5重量%以下になるように添加することを特徴とする請求項1又は2に記載のタンタル酸リチウム単結晶の製造方法。 - 前記ガリウム原料粉末が、Ga2O3粉末であることを特徴とする請求項3に記載のタンタル酸リチウム単結晶の製造方法。
- 上記請求項1又は2に記載のタンタル酸リチウム単結晶を基板として用いたSAWフィルター。
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