JP2010280525A - タンタル酸リチウム基板と、タンタル酸リチウム単結晶の製造方法 - Google Patents
タンタル酸リチウム基板と、タンタル酸リチウム単結晶の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】音速の温度依存性が改善された低コストのタンタル酸リチウム基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム単結晶から成るタンタル酸リチウム基板であって、Ni(ニッケル)を0.05wt%以上1wt%以下の範囲で含有させることにより、結晶の音速温度依存性が改善される。前記タンタル酸リチウム単結晶は、種結晶のNi濃度(n1)に対する育成結晶のNi濃度(n2)の比(n2/n1)が1以上3以下となるように調製された種結晶を用い、原料融液の最高到達温度を1800℃以下としてチョクラルスキー法により製造される。
【選択図】図1
【解決手段】基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム単結晶から成るタンタル酸リチウム基板であって、Ni(ニッケル)を0.05wt%以上1wt%以下の範囲で含有させることにより、結晶の音速温度依存性が改善される。前記タンタル酸リチウム単結晶は、種結晶のNi濃度(n1)に対する育成結晶のNi濃度(n2)の比(n2/n1)が1以上3以下となるように調製された種結晶を用い、原料融液の最高到達温度を1800℃以下としてチョクラルスキー法により製造される。
【選択図】図1
Description
本発明は、表面弾性波(SAW)デバイス用基板等に用いられるタンタル酸リチウム基板に係り、特に、Ni(ニッケル)が含有(ドープ)されたタンタル酸リチウム基板と、この基板を得るためのタンタル酸リチウム単結晶を製造する方法に関するものである。
タンタル酸リチウム(以下、LTと略称する場合がある)基板は、携帯電話やテレビ等に搭載されているSAWデバイス用基板として主に用いられている。
また、基板の状態に加工されてLT基板として利用されるLT単結晶は、一般的に引上げ法(チョコラルスキー法:Cz法)を用いて育成されている。Cz法は、坩堝内の原料融液に種結晶を接触させ、種結晶を回転させながらゆっくりと上昇させることにより種結晶と同一方位の単結晶を得る方法である。育成中における結晶形状の制御は、引上げ軸の上部に設置された重量センサーからの信号に基づき行なわれる。つまり、単位時間当りの重量変化量が所望の値となるように融液温度を調整する。また、育成に用いる坩堝の材質は、育成温度と雰囲気、原料融液との反応性等を考慮して選定されるが、融点1650℃のLT単結晶の育成の場合はイリジウム(Ir)製が一般的である。LT単結晶を育成した後、冷却されかつ炉から取り出された結晶は、冷却中における結晶内の温度分布に起因した熱応力による残留歪を取り除くため、融点に近い均熱下でアニール処理が施され、更に、結晶全体を単一分極とするため、電圧印加の下で熱処理(ポーリング処理)が施される。そして、ポーリング処理後の結晶は、外周研削、スライス、ラップ、ポリッシュ等の工程を経て製品基板となる。
ところで、従来のLT基板は、SAWの振動エネルギーと電気的エネルギーの変換効率を示す電気機械結合係数が大きく、デバイス設計上有利であるが、SAWの伝搬速度の温度依存性が大きく、デバイスの周波数特性が温度で変化し易いという不利な点があった。ここで、SAWフィルタの中心周波数fは、表面弾性波の音速(伝搬速度)をv、電極の間隔をLとすると、f=v/Lで表される。そして、音速(伝搬速度)、電極間隔は温度に依存するため、温度変化があると中心周波数fのシフトが起る。この温度による周波数シフトのため、デバイスのS/Nが大きく低下してしまう等の問題が発生している。従って、音速(伝搬速度)の温度依存性が改善されたLT基板が必要とされている。
そこで、LT単結晶における音速(伝搬速度)の温度依存性を改善するため、LT単結晶よりも熱膨張係数の小さい材料をLT単結晶に貼り合せ、LT単結晶の熱膨張を押さえ込む方法が特許文献1〜3で提案されている。しかし、これ等文献で提案された方法で作製された基板は、熱膨張係数が異なる材料を貼り合せているため、一般に300℃程度の熱履歴を経るSAWデバイス製造プロセスでは割れが発生し、収率を悪化させている。加えて、2枚の材料を貼り合せるため基板の厚さが厚くなり、デバイス低背化の流れに逆行している。更に、LT単結晶に貼り合わされる低熱膨張材料のコスト、貼り合せ工程のコスト、および貼り合せ工程の収率が掛かるため、非常に高コストな基板となっている。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、音速(伝搬速度)の温度依存性が改善された低コストのタンタル酸リチウム基板を提供し、かつ、このタンタル酸リチウム基板を得るためのタンタル酸リチウム単結晶を製造する方法を提供することにある。
そこで、上記課題を解決するため、LT単結晶の結晶構造を変えること無しにLiサイト若しくはTaサイトを置換する元素を添加してLT単結晶の音速温度依存性を改善させる実験を試みたところ、置換元素としてNi(ニッケル)を適用した場合に上記音速温度依存性が改善されることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見により完成されている。
すなわち、請求項1に係る発明は、
基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム単結晶から成るタンタル酸リチウム基板において、
Ni(ニッケル)が0.05wt%以上1wt%以下の範囲で含有されたことを特徴とし、
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の発明に係るタンタル酸リチウム基板において、
Ni(ニッケル)が0.15wt%以上0.8wt%以下の範囲で含有されたことを特徴とする。
基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム単結晶から成るタンタル酸リチウム基板において、
Ni(ニッケル)が0.05wt%以上1wt%以下の範囲で含有されたことを特徴とし、
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の発明に係るタンタル酸リチウム基板において、
Ni(ニッケル)が0.15wt%以上0.8wt%以下の範囲で含有されたことを特徴とする。
次に、請求項3に係る発明は、
Ni(ニッケル)が0.1wt%以上含有されたタンタル酸リチウム単結晶をチョクラルスキー法により製造する方法において、
種結晶のNi濃度(n1)に対する育成結晶のNi濃度(n2)の比(n2/n1)が1以上3以下となるように調製された種結晶を用いることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項3に記載の発明に係るタンタル酸リチウム単結晶の製造方法において、
原料融液の最高到達温度を1800℃以下とすることを特徴とするものである。
Ni(ニッケル)が0.1wt%以上含有されたタンタル酸リチウム単結晶をチョクラルスキー法により製造する方法において、
種結晶のNi濃度(n1)に対する育成結晶のNi濃度(n2)の比(n2/n1)が1以上3以下となるように調製された種結晶を用いることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項3に記載の発明に係るタンタル酸リチウム単結晶の製造方法において、
原料融液の最高到達温度を1800℃以下とすることを特徴とするものである。
本発明に係るタンタル酸リチウム基板によれば、
Ni(ニッケル)が0.05wt%以上1wt%以下の範囲で含有(ドープ)されているため、従来のタンタル酸リチウム基板と比較して音速(伝搬速度)の温度係数を改善させることが可能となる。
Ni(ニッケル)が0.05wt%以上1wt%以下の範囲で含有(ドープ)されているため、従来のタンタル酸リチウム基板と比較して音速(伝搬速度)の温度係数を改善させることが可能となる。
また、Ni(ニッケル)が0.1wt%以上含有されたタンタル酸リチウム単結晶をチョクラルスキー法により製造する本発明に係るタンタル酸リチウム単結晶の製造方法によれば、
種結晶のNi濃度(n1)に対する育成結晶のNi濃度(n2)の比(n2/n1)が1以上3以下となるように調製された種結晶を用いているため、種結晶と育成結晶との界面で発生するクラックを抑制することが可能となる。
種結晶のNi濃度(n1)に対する育成結晶のNi濃度(n2)の比(n2/n1)が1以上3以下となるように調製された種結晶を用いているため、種結晶と育成結晶との界面で発生するクラックを抑制することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、LT基板における電気機械結合係数、音速等のSAW特性を維持するため、変形イルメナイト構造を有するLT結晶の結晶構造を変えること無しにLiサイト若しくはTaサイトを置換する元素を添加して、結晶の音速温度依存性を改善させることを目的としたものである。置換元素としては、置換による結晶構造の歪みをできるだけ小さくするため、Li、Taの中間のイオン半径を持つものが適当である。そして、発明者は、各種元素を用いたドープ育成を検討した結果、結晶育成の容易さ、音速温度係数の改善効果にとって、Ni(ニッケル)が最も有効であることを見出した。
育成結晶中のNi濃度と音速温度係数との関係は、図1に示すようにNi濃度が0.05wt%未満の結晶の温度係数はアンドープ結晶と大きな違いは見られず、十分な改善効果は表れない。また、結晶中Ni濃度が1wt%を越えて高くなると、Ni元素による結晶の着色が濃くなり、結晶成長の進行に伴う潜熱の逃げが阻害されるため結晶成長が困難となる。従って、上記音速温度係数改善のためには、結晶中のNi濃度を0.05wt%以上1wt%以下とする必要がある。
また、添加するドーパントの形態としては、金属Ni粉、酸化物であるNiO粉が考えられるが、酸化物であるLT融液への溶解度を考えるとNiO粉とするのが望ましい。具体的にその差異を説明すると、LT原料中のNi濃度が1wt%となるように金属Ni粉を秤量して混合した後、イリジウム(Ir)製坩堝内に混合粉をチャージし、高周波誘導加熱により融解させた。冷却後、坩堝内原料をサンプリングし、ICP−AES法によりNi濃度分析を行ったところ、Ni濃度は0.54wt%で、仕込み量とは異なる濃度であった。これに対し、LT原料中のNi濃度が1wt%となるようなNiO粉を用いた場合、Ni濃度は1.0wt%で、仕込み量と同等の濃度が得られている。従って、添加するドーパントの形態としては、NiO粉とするのが望ましい。
次に、NiドープのLT単結晶を育成する場合、種結晶と育成結晶のNi濃度の差が大きいと種結晶と育成結晶の界面でクラックが発生してしまう。この原因は、図2に示すキュリー温度(強誘電体から常誘電体に相転移する点)において結晶の熱膨張係数[図2中、例えばX軸熱膨張係数(/K)欄の数値「2.4E−05」は「2.4×10-5」を意味する。以下同様]が変化し、かつ、図3に示すようにNi濃度によって結晶のキュリー温度が変化することに起因する。結晶の育成は約1650℃付近で行われるが、育成終了後、室温まで冷却する過程で、種結晶、育成結晶共にキュリー温度を通過する。このときに、種結晶と育成結晶のキュリー温度が異なれば、両結晶のキュリー温度の間の温度帯で、例えばZ軸方向においては、キュリー温度の低い結晶部は収縮する方向に、キュリー温度の高い結晶部は膨張する方向に変化する。従って、Ni濃度が大きく異なる場合、種結晶と育成結晶の界面において発生する応力が臨界せん断応力を超えてしまいクラックが発生する。この現象を回避するためには、育成結晶のNi濃度が0.1wt%以上であることを条件に、種結晶のNi濃度(n1)と育成結晶のNi濃度(n2)の比(n2/n1)を1以上3以下とする必要があることを実験的に本発明者は確かめている。また、育成結晶のNi濃度が0.1wt%未満の場合、種結晶としてアンドープ結晶を用いてもクラックの発生が起こらないことも実験的に本発明者は確かめている。
また、NiドープのLT単結晶をチョクラルスキー法により育成する場合、原料融液の最高到達温度が高過ぎると、添加したNiドーパントが原料融液から失われ、育成されるLT結晶の組成が安定しなくなることがある。この現象を回避するためには、原料融液の最高到達温度を1800℃以下にすればよいことも実験的に本発明者は確かめている。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
Cz法を用いてLT単結晶の育成を行った。育成には、高周波誘導加熱炉を用いた。炉内にφ160mmのイリジウム(Ir)製坩堝を設置し、坩堝内にコングルエント組成で調合したLT仮焼粉と、Ni濃度が0.08wt%となるように秤量したNiO粉をチャージして融解させた。融解時、放射温度計でモニターした融液温度は、最高で1780℃となった。
その後、融液温度を種付け温度に調整し、Ni濃度が0.1wt%のLT単結晶から切り出した種結晶を回転させながら融液表面に接触させ、十分に馴染ませた後、引上げを開始した。Ni濃度が0.1wt%のLT単結晶を種結晶に用いた理由は、育成結晶と種結晶のNi濃度を近づけることで、冷却中に熱膨張係数の違いによって育成結晶と種結晶の界面で発生するクラックを抑制するためである。
育成後、炉内を室温付近まで冷却して結晶を取り出し、φ4インチのLT単結晶をクラック・フリーで得ることができた。そして、得られたLT単結晶をアニール、ポーリングした後にスライス、研磨を行って音速測定用試料を作製した。
得られた音速測定用試料のバルク波横波の音速を−30℃〜+125℃の範囲で測定したところ「−62ppm」であり、アンドープ結晶の値「−74ppm」と比較して温度依存性に約16%の改善が見られた。音速絶対値の変化は、0.5%以下であった。更に、得られたLT単結晶中のNi濃度分析をICP−AES法で行ったところ、0.12wt%であった。
実施例1と同様の方法により原料中のNi濃度を0.1wt%として、φ4インチのLT単結晶の育成を行った。冷却後に炉内から取り出した結晶は、クラック・フリーであった。
得られた結晶から切り出した試料のバルク波音速測定を実施例1と同様の条件で行ったところ、温度依存性は「−61ppm」であり、アンドープ結晶に対して約18%の改善が見られた。音速絶対値の変化は、0.5%以下であった。更に、得られた結晶中のNi濃度は0.15wt%であった。
実施例1と同様の方法により原料中のNi濃度を0.2wt%として、φ4インチのLT単結晶の育成を行った。冷却後に炉内から取り出した結晶は、クラック・フリーであった。
得られた結晶から切り出した試料のバルク波音速測定を実施例1と同様の条件で行ったところ、温度依存性は「−55ppm」であり、アンドープ結晶に対して約26%の改善が見られた。音速絶対値の変化は、0.5%以下であった。更に、得られた結晶中のNi濃度は0.28wt%であった。
実施例1と同様の方法により原料中のNi濃度を0.04wt%として、φ4インチのLT単結晶の育成を行った。種結晶には、アンドープ結晶を用いた。冷却後に炉内から取り出した結晶は、クラック・フリーであった。
得られた結晶から切り出した試料のバルク波音速測定を実施例1と同様の条件で行ったところ、温度依存性は「−64ppm」であり、アンドープ結晶に対して約14%の改善が見られた。音速絶対値の変化は、0.5%以下であった。更に、得られた結晶中のNi濃度は0.05wt%であった。
実施例1と同様の方法により原料中のNi濃度を0.5wt%として、φ4インチのLT単結晶の育成を行った。このとき、種結晶のNi濃度を育成結晶に近づけるため、Ni濃度が0.4wt%のLT単結晶から切り出した種結晶を用いた。冷却後に炉内から取り出した結晶は、クラック・フリーであった。
得られた結晶から切り出した試料のバルク波音速測定を実施例1と同様の条件で行ったところ、温度依存性は「−52ppm」であり、アンドープ結晶に対して約30%の改善が見られた。音速絶対値の変化は、0.5%以下であった。更に、得られた結晶中のNi濃度は0.66wt%であった。
実施例1と同様の方法により原料中のNi濃度を0.8wt%として、φ4インチのLT単結晶の育成を行った。このとき、種結晶のNi濃度を育成結晶に近づけるため、Ni濃度が0.6wt%のLT単結晶から切り出した種結晶を用いた。冷却後に炉内から取り出した結晶は、形状に若干の歪みがあるもののクラック・フリーであった。
得られた結晶から切り出した試料のバルク波音速測定を実施例1と同様の条件で行ったところ、温度依存性は「−45ppm」であり、アンドープ結晶に対して約39%の改善が見られた。音速絶対値の変化は、0.5%以下であった。更に、得られた結晶中のNi濃度は1.00wt%であった。
LT原料に対して、Ni濃度が0.5wt%となるNiO粉を秤量し、それをLT原料と混合して仮焼した。得られた仮焼粉を原料として、実施例5と同様の育成条件でLT単結晶の育成を行った。冷却後に炉内から取り出した結晶は、クラック・フリーであった。
得られた結晶中のNi濃度は0.67wt%で、実施例5と同等であった。音速絶対値、温度依存性も実施例5で得られた結果と同等であった。
[比較例1]
実施例1と同様の方法により原料中のNi濃度を0.01wt%として、φ4インチのLT単結晶の育成を行った。得られた結晶から切り出した試料のバルク波音速測定を実施例1と同様の条件で行ったところ、温度依存性は「−70ppm」であり、アンドープ結晶と大きな違いは見られなかった。
[比較例2]
実施例1と同様の方法により原料中のNi濃度を0.3wt%として、φ4インチのLT単結晶の育成を行った。このとき、種結晶はアンドープ結晶から切り出したものを用いた。冷却後に炉から取り出した結晶は、種結晶と育成結晶の界面付近から発生したクラックが結晶下部まで伸びており、単結晶を得ることができなかった。尚、このときに得られた結晶中のNi濃度は0.39wt%であった。
[比較例3]
実施例1と同様の方法により原料中のNi濃度を0.5wt%として、φ4インチのLT単結晶の育成を行った。このとき、種結晶はNi濃度が0.2wt%のLT単結晶から切り出したものを用いた。冷却後に炉から取り出した結晶は、種結晶と育成結晶の界面付近から発生したクラックが結晶下部まで伸びており、単結晶を得ることができなかった。尚、このときに得られた結晶中のNi濃度は0.67wt%であった。
[比較例4]
実施例1と同様の方法により原料中のNi濃度を1.0wt%として、φ4インチのLT単結晶の育成を行った。このとき、種結晶はNi濃度が0.6wt%のLT単結晶から切り出したものを用いた。しかし、本育成においては、育成中の結晶形状の制御が非常に困難で、育成途中で結晶重量信号が異常となったため、その時点で育成を中止した。
[比較例1]
実施例1と同様の方法により原料中のNi濃度を0.01wt%として、φ4インチのLT単結晶の育成を行った。得られた結晶から切り出した試料のバルク波音速測定を実施例1と同様の条件で行ったところ、温度依存性は「−70ppm」であり、アンドープ結晶と大きな違いは見られなかった。
[比較例2]
実施例1と同様の方法により原料中のNi濃度を0.3wt%として、φ4インチのLT単結晶の育成を行った。このとき、種結晶はアンドープ結晶から切り出したものを用いた。冷却後に炉から取り出した結晶は、種結晶と育成結晶の界面付近から発生したクラックが結晶下部まで伸びており、単結晶を得ることができなかった。尚、このときに得られた結晶中のNi濃度は0.39wt%であった。
[比較例3]
実施例1と同様の方法により原料中のNi濃度を0.5wt%として、φ4インチのLT単結晶の育成を行った。このとき、種結晶はNi濃度が0.2wt%のLT単結晶から切り出したものを用いた。冷却後に炉から取り出した結晶は、種結晶と育成結晶の界面付近から発生したクラックが結晶下部まで伸びており、単結晶を得ることができなかった。尚、このときに得られた結晶中のNi濃度は0.67wt%であった。
[比較例4]
実施例1と同様の方法により原料中のNi濃度を1.0wt%として、φ4インチのLT単結晶の育成を行った。このとき、種結晶はNi濃度が0.6wt%のLT単結晶から切り出したものを用いた。しかし、本育成においては、育成中の結晶形状の制御が非常に困難で、育成途中で結晶重量信号が異常となったため、その時点で育成を中止した。
冷却後に炉から取り出した結晶は、引上げ軸に対して結晶形状の曲がりが大きく、結晶底部が凹界面となっていた。更に、育成途中から多結晶化が起っていた。結晶の曲がりは、高濃度のNiドープによって、結晶の着色度が高くなり、光吸収係数が大きくなったため、成長に伴う潜熱の逃げが阻害されたためと考えられる。尚、このときに得られた結晶中のNi濃度は1.33wt%であった。
原料に仕込むNi源をNiO粉ではなく金属Ni粉とした以外は、実施例1と同条件でφ4インチのLT単結晶の育成を行った。冷却後に炉内から取り出した結晶は、クラック・フリーであった。
得られた結晶から切り出した試料のバルク波音速測定を実施例1と同様の条件で行ったところ、温度依存性は「−63ppm」であり、アンドープ結晶に対して約15%の改善が見られた。音速絶対値の変化は、0.5%以下であった。但し、得られた結晶中のNi濃度は0.15wt%であり、NiO粉を仕込んだ場合の1/2程度であった。
原料融解時の最高温度を1890℃とした以外は、実施例1と同条件でφ4インチのLT単結晶の育成を行った。冷却後に炉内から取り出した結晶は、クラック・フリーであった。
得られた結晶から切り出した試料のバルク波音速測定を実施例1と同様の条件で行ったところ、温度依存性は「−57ppm」であり、アンドープ結晶に対して約23%の改善が見られた。音速絶対値の変化は、0.5%以下であった。但し、得られた結晶中のNi濃度は0.19wt%であり、実施例1の2/3程度であった。
本発明によれば、従来のタンタル酸リチウム基板と比較して音速(伝搬速度)の温度係数が改善されたタンタル酸リチウム基板を低コストで製造できるため、携帯電話やテレビ等に搭載されるSAWデバイス用基板に適用される産業上の利用可能性を有している。
Claims (4)
- 基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム単結晶から成るタンタル酸リチウム基板において、
Ni(ニッケル)が0.05wt%以上1wt%以下の範囲で含有されたことを特徴とするタンタル酸リチウム基板。 - Ni(ニッケル)が0.15wt%以上0.8wt%以下の範囲で含有されたことを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウム基板。
- Ni(ニッケル)が0.1wt%以上含有されたタンタル酸リチウム単結晶をチョクラルスキー法により製造する方法において、
種結晶のNi濃度(n1)に対する育成結晶のNi濃度(n2)の比(n2/n1)が1以上3以下となるように調製された種結晶を用いることを特徴とするタンタル酸リチウム単結晶の製造方法。 - 原料融液の最高到達温度を1800℃以下とすることを特徴とする請求項3に記載のタンタル酸リチウム単結晶の製造方法。
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KR20160149208A (ko) * | 2014-05-09 | 2016-12-27 | 신에쓰 가가꾸 고교 가부시끼가이샤 | 압전성 산화물 단결정 기판 |
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