JP7310347B2 - ニオブ酸リチウム単結晶の育成方法 - Google Patents

ニオブ酸リチウム単結晶の育成方法 Download PDF

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本発明は、チョクラルスキー法によるニオブ酸リチウム単結晶の育成方法に係り、特に、結晶化後において結晶内にマイクロボイド(空孔の集合体)を顕在化させる原料融液中のガス成分が育成中の結晶内に取込まれ難いニオブ酸リチウム単結晶の育成方法に関するものである。
ニオブ酸リチウム(LiNbO3;以後、LNと略称する)単結晶は、融点が約1250℃、キュリー温度が約1140℃の人工の強誘電体結晶である。そして、LN単結晶から得られるニオブ酸リチウム単結晶基板(以後、LN基板と称する)の用途は、主に移動体通信機器に用いられる電気信号ノイズ除去用の表面弾性波素子(SAWフィルター)用材料である。
上記SAWフィルターは、LN単結晶をはじめとする圧電材料で構成された基板上に、AlCu合金等の金属薄膜で櫛形電極を形成した構造となっており、この櫛形電極がデバイスの特性を左右する重要な役割を担っている。また、上記櫛形電極は、スパッタ法等により圧電材料上に金属薄膜を成膜した後、櫛形パターンを残しフォトリソグラフ技術により不要な部分をエッチング除去することにより形成される。
また、SAWフィルターの材料となるLN単結晶は、産業的にはチョクラルスキー法により、通常、白金るつぼを用い、酸素濃度が20%程度の窒素-酸素混合ガス雰囲気の電気炉中で育成され、電気炉内で所定の冷却速度で冷却された後、電気炉から取り出されて得られている。
育成されたLN単結晶は、無色透明若しくは透明感の高い淡黄色を呈している。育成後、育成時の熱応力による残留歪みを取り除くため、融点に近い均熱下で熱処理を行い、更に単一分極とするためのポーリング処理、すなわち、LN単結晶を室温からキュリー温度以上の所定温度まで昇温し、単結晶に電圧を印加し、電圧を印加したままキュリー温度以下の所定温度まで降温した後、電圧印加を停止して室温まで冷却する一連の処理を行う。ポーリング処理後、単結晶の外形を整えるために外周研削されたLN単結晶(インゴット)はスライス、ラップ、ポリッシュ工程等の機械加工を経てLN基板となる。最終的に得られた基板はほぼ無色透明であり、体積抵抗率は1×1015Ω・cm程度以上である。
このような従来法で得られたLN基板では、SAWフィルター製造プロセスにおいて焦電破壊が問題となる。焦電破壊とは、LN単結晶の特性である焦電性のため、プロセスで受ける温度変化によって電荷がLN基板表面にチャージアップし、これにより生ずるスパークが原因となってLN基板表面に形成した櫛形電極が破壊され、更にはLN基板の割れ等が発生する現象のことである。焦電破壊は、素子製造プロセスでの歩留まり低下の大きな要因である。また、基板の高い光透過率は、素子製造プロセスの1つであるフォトリソグラフ工程で基板内を透過した光が基板裏面で反射されて表面に戻り、形成パターンの解像度を悪化させるという問題も生じさせる。
この問題を解決するため、特許文献1においては、LN基板を500~1140℃の範囲内で、アルゴン、水、水素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素およびこれ等の組合せから選択されたガスといった化学的還元性雰囲気に晒して黒化させることにより、LN基板の抵抗値を低くし、焦電性を低減させる方法が提案されている。
尚、上記熱処理を施すことによりLN結晶は無色透明であったものが有色不透明化する。そして、観察される有色不透明化の色調は透過光では褐色から黒色に見えるため、この有色不透明化現象をここでは「黒化」と称している。黒化現象は、還元処理によってLN基板中に酸素欠陥(空孔)が導入されることでカラーセンターが形成されるためと考えられている。また、抵抗値の変化は、酸素欠陥生成によるチャージバランスのズレを補償するために、Nbイオンの価数が+5価から+4価に変化することで基板内にNbイオンから放出された自由電子が増えるためと考えられる。このため、黒化の程度と抵抗値はほぼ比例関係にある。
しかし、特許文献1に記載された方法は、LN基板(結晶)を500℃以上の高い温度に加熱するため、処理時間は短い反面、処理バッチ間において黒化のバラつきが生じ易く、また、熱処理した基板内に黒化による色ムラ、すなわち、抵抗率の面内分布が生じ易く、素子製造プロセスでの歩留まり低下が依然として十分に防止できない問題があった。
そこで、特許文献2においては、LN基板(結晶)を、Al、Ti、Si、Ca、Mg、Cからなる群より選択される少なくとも1種の元素で構成された粉末に埋め込んだ状態で、300℃以上、500℃未満の低温で熱処理する方法が提案されている。
特許文献2に記載された方法によれば、処理温度が500℃未満と低温であるため、簡易な装置を用いて、黒化による色ムラ、すなわち、体積抵抗率の面内分布が少なく、焦電性が抑制されたLN基板の提供を可能にする方法であった。
但し、LN単結晶(融点が1250℃)は、同じくSAWフィルターに利用されるタンタル酸リチウム単結晶(融点が1650℃)に較べて還元され易い性質を有しているため、500℃未満の低温で還元処理がなされる特許文献2に記載の方法においても、LN基板面内の僅かな処理条件の違いにより、黒化による色ムラ、すなわち体積抵抗率の面内分布にバラツキを生ずることがあり、また、処理されるLN基板内の僅かな結晶性の違いにより、体積抵抗率の面内分布にバラツキを生ずることがあった。
この場合、LN基板面内の処理条件に係る問題は、LN基板面内の位置による温度管理、および、LN基板面内の位置によるAl、Ti、Si、Ca、Mg、Cから選択された元素の粉末中における濃度管理を厳密に行うことで対処することは可能であった。
しかし、LN基板内の結晶性に係る問題は、当該LN基板に使用されるLN単結晶の結晶性に係る問題であるため、LN基板内の結晶性の違いによる上記体積抵抗率のバラツキを防止するには、結晶性に優れたLN単結晶を育成できる方法が必要となる。
特開平11-92147号公報 特開2005-179177公報
ところで、上述したチョクラルスキー法によるLN単結晶の育成方法においては、結晶化後において結晶内にマイクロボイド(空孔の集合体)を顕在化させる原料融液中のガス成分が育成中の結晶内に取込まれ易い問題があり、LN単結晶の結晶肩部に近い部位から得られたLN基板を上記特許文献2に記載の方法で熱処理した場合、LN基板のマイクロボイドが存在する部位はマイクロボイドの無い部位に較べて還元(黒化)され易い(結晶にマイクロボイドが存在すると、マイクロボイドの酸素ポテンシャルが雰囲気の酸素ポテンシャルよりも低いためマイクロボイドが存在する部位は黒化され易い)ため、マイクロボイドの存在に起因した図4に示すリング状の色ムラ(還元ムラ)を生じさせてしまう問題が存在した。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、結晶化後において結晶内にマイクロボイド(空孔の集合体)を顕在化させる原料融液中のガス成分が育成中の結晶内に取込まれ難いLN単結晶の育成方法を提供し、これにより、LN単結晶の結晶肩部に近い部位から得られたLN基板を特許文献2に記載の方法で熱処理した場合にリング状の色ムラ(還元ムラ)が生じ難いLN基板を提供することにある。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
育成炉内に配置された坩堝の原料融液に種結晶を接触させ、該種結晶を引き上げ軸により回転させながら引上げて結晶肩部とこれに続く結晶直胴部を育成するチョクラルスキー法によるニオブ酸リチウム単結晶の育成方法において、
上記結晶肩部の長さをNmm、上記結晶直胴部の結晶径をLmmとした場合、N/Lが1/7.5以下となるように設定し、かつ、結晶肩部の育成中における引き上げ軸の回転数を7rpm以上10rpm以下に設定することを特徴とする。
本発明に係るニオブ酸リチウム単結晶の育成方法によれば、
結晶肩部の長さをNmm、結晶直胴部の結晶径をLmmとした場合、N/Lが1/7.5以下となるように設定し、かつ、結晶肩部の育成中における引き上げ軸の回転数を7rpm以上10rpm以下に設定するため、結晶化後において結晶内にマイクロボイド(空孔の集合体)を顕在化させる原料融液中のガス成分が育成中の結晶内に取込まれ難くなる。
このため、ニオブ酸リチウム単結晶の結晶肩部に近い部位から得られたニオブ酸リチウム基板にマイクロボイドが存在しないことから、当該ニオブ酸リチウム基板を特許文献2に記載の方法で熱処理した場合、マイクロボイドに起因するリング状色ムラ(還元ムラ)が生じ難く、体積抵抗率における面内分布のバラツキが少ないニオブ酸リチウム単結晶基板を安定して提供することが可能となる。
ニオブ酸リチウム単結晶の育成方法に用いられる育成装置の一例を示す構成説明図。 ニオブ酸リチウム単結晶育成中の結晶肩部と結晶直胴部を示す説明図。 図3(a)~(b)は原料融液の「自然対流」と「強制対流」による融液の流れを示す説明図。 マイクロボイドに起因するリング状色ムラ(還元ムラ)を示すニオブ酸リチウム基板の写真図。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(1)ニオブ酸リチウム単結晶の育成装置と育成方法
図1を用いて、チョクラルスキー法(以下、Cz法と略称する)によるニオブ酸リチウム(LN)単結晶の育成装置10、および、育成方法の概要について説明する。
図1は、高周波誘導加熱式単結晶育成装置10の概略構成を模式的に示す断面図であるが、LN単結晶の育成では抵抗加熱式単結晶育成装置も用いられている。高周波誘導加熱式単結晶育成装置と抵抗加熱式単結晶育成装置の違いは、高周波誘導加熱式の場合は、ワークコイル15によって形成される高周波磁場によりワークコイル15内に設置されている金属製坩堝12の側壁に渦電流が発生し、その渦電流によって坩堝12自体が発熱体となり、坩堝12内にある原料の融解や結晶育成に必要な温度環境の形成を行う。抵抗加熱式の場合は、坩堝の外周部に設置されている抵抗加熱ヒーターの発熱で原料の融解や結晶育成に必要な温度環境の形成を行っている。どちらの加熱方式を用いても、Cz法の本質は変わらないので、以下、高周波誘導加熱式単結晶育成装置による単結晶育成方法に関して説明する。
図1に示すように、高周波誘導加熱式単結晶育成装置10は、チャンバー11内に坩堝12を配置する。坩堝12は、坩堝台13上に載置される。チャンバー11内には、坩堝12を囲むように耐火材14が配置されている。坩堝12を囲むようにワークコイル15が配置され、ワークコイル15が形成する高周波磁場によって坩堝12壁に渦電流が流れ、坩堝12自体が発熱体となる。チャンバー11の上部には引き上げ軸16が回転可能かつ上下方向に移動可能に設けられている。引き上げ軸16下端の先端部には、種結晶1を保持するためのシードホルダ17が取り付けられている。
Cz法では、坩堝12内の単結晶原料18の融液表面に種結晶1となる単結晶片を接触させ、この種結晶1を引き上げ軸16により回転させながら上方に引き上げることにより結晶肩部とこれに続く結晶直胴部を育成する。結晶育成に際しては、成長界面で融液の結晶化によって生じる固化潜熱を、種結晶を通して上方に逃がす必要があるため、成長界面から上方に向って温度が低下する温度勾配下で行う必要がある。加えて、育成結晶の形状が曲がったり、捩れたりしないようにするため、原料融液内においても、成長界面から坩堝壁に向って水平方向に、かつ、成長界面から坩堝底に向って垂直方向に温度が高くなる温度勾配下で行う必要がある。
LN単結晶を育成する場合は、LN結晶の融点が1250℃であり、育成雰囲気に酸素が必要であることから、融点が1760℃程度で化学的に安定な白金(Pt)製の坩堝12が用いられる。育成時における引き上げ軸の引上速度は、通常、結晶肩部が2mm/hr程度、結晶直胴部が1.5mm/hr程度であり、また、引き上げ軸の回転数は、通常、3rpm以上で行われる。また、育成時の炉内は、大気若しくは酸素濃度20%程度の窒素-酸素の混合ガス雰囲気とするのが一般的である。このような条件下で、所望の大きさまで結晶を育成した後、引上速度の変更や融液温度を徐々に高くする等の操作を行うことで、育成結晶を融液から切り離し、その後、育成炉のパワーを所定の速度で低下させることで徐冷し、炉内温度が室温近傍となった後に育成炉内から結晶を取り出す。
このような方法で育成されたLN単結晶は、上述したように育成時の熱応力による残留歪みを取り除くため、融点に近い均熱下で熱処理を行い、更に単一分極とするためのポーリング処理、すなわち、LN単結晶を室温からキュリー温度以上の所定温度まで昇温し、単結晶に電圧を印加し、電圧を印加したままキュリー温度以下の所定温度まで降温した後、電圧印加を停止して室温まで冷却する一連の処理を行う。ポーリング処理後、単結晶の外形を整えるために外周研削されたLN単結晶(インゴット)はスライス、ラップ、ポリッシュ工程等の機械加工を経てLN基板となる。
(2)マイクロボイドを顕在化させる原料融液中のガス成分
Cz法においては、原料融液の温度差に起因する「自然対流」[図3(a)に示すように坩堝12の底部から坩堝12壁に沿って上昇し、融液20表面に到達した後に融液20表面の中心部に向かって流れ、中心部において坩堝12の底部に向かう流れ]αと、育成される結晶の回転(引き上げ軸16の回転)により引き起こされる「強制対流」[図3(b)に示す融液20表面の中心部から坩堝12壁へ向かう流れ]βが生じており、図3(b)に示すように「自然対流」αによる融液20の流れ方向と「強制対流」βによる融液20の流れ方向が互いに反対であるため、原料融液における成長界面の近傍に「自然対流」αと「強制対流」βのバランスする位置[融液20の流れが停滞する位置A:図3(b)参照]が存在する。
そして、「自然対流」αと「強制対流」βのバランスする上記位置[融液20の流れが停滞する位置A]においては、融液20が結晶化する際、結晶に取込むことができないガス成分(結晶の溶解度に対して余剰となるガス成分)が成長界面の融液側に吐き出されてガス成分濃度が高くなっているため育成中のLN結晶内にガス成分が取込まれ易く、取込まれたガス成分は結晶化後に拡散によって集積し、上述したマイクロボイド(空孔の集合体)として顕在化される。このため、LN単結晶の結晶肩部に近い部位から得られたLN基板を特許文献2に記載の方法で熱処理した場合、上記マイクロボイド(空孔の集合体)の存在に起因したリング状の色ムラ(還元ムラ)を生じさせる問題を引き起こす。
そこで、本発明においては、種結晶から目標の結晶径になるまでの結晶肩部の長さを短く(すなわち、図2示す結晶肩部21の長さをNmm、結晶直胴部22の結晶径をLmmとした場合、N/Lが1/7.5以下に)設定し、かつ、目標の結晶径になるまでの種結晶の回転数を速く(すなわち、結晶肩部の育成中における引き上げ軸の回転数を7rpm以上に)設定している。例えば、結晶直胴部22の結晶径Lが150mmである場合、結晶肩部21の長さNについては、N/150が1/7.5以下、すなわち、Nを150/7.5(=20mm)以下に設定し、結晶直胴部22の結晶径Lが100mmである場合、結晶肩部21の長さNについては、N/100が1/7.5以下、すなわち、Nを100/7.5(=13.3mm)以下に設定する。尚、引き上げ軸における回転数の上限については特に定めないが、回転数が15rpmを超えた場合、単結晶の育成が困難になることがあるため、7rpm以上15rpm以下に設定することが望ましく、下記実施例に示されているように、本発明においては7rpm以上10rpm以下である
そして、上記N/Lが1/7.5以下となるように設定し、かつ、結晶肩部の育成中における引き上げ軸の回転数を7rpm以上10rpm以下に設定することにより、結晶肩部が成長される早期の段階で、「自然対流」αと「強制対流」βのバランスする位置[融液20の流れが停滞する位置A]が育成中におけるLN結晶肩部の外側に移動するため、結晶化後にマイクロボイド(空孔の集合体)を顕在化させるガス成分の結晶肩部内への取り込みが防止される。このため、結晶肩部に近い部位から得られたLN基板を熱処理(黒化処理)した際に問題となった「リング状の色ムラ(還元ムラ)」について回避することが可能となる。
(3)ニオブ酸リチウム基板の黒化処理
LN単結晶は、結晶内に存在する酸素欠陥濃度によって体積抵抗率と色(光透過率スペクトル)が変化する。つまり、LN単結晶中に酸素欠陥が導入されると、-2価の酸素イオンの欠損によるチャージバランスを補償する必要から一部のNbイオンの価数が5+から4+に変わり、体積抵抗率に変化を生じる。加えて、酸素欠陥に起因したカラーセンターが生成することで光吸収を起こす。
体積抵抗率の変化は、キャリアである電子がNb5+イオンとNb4+イオンの間を移動するために生ずると考えられる。結晶の体積抵抗率は、単位体積あたりのキャリア数とキャリアの移動度の積で決まる。移動度が同じであれば、体積抵抗率は酸素空孔数に比例する。光吸収による色変化は、酸素欠陥に捕獲された準安定状態の電子が起因となって形成されるカラーセンターによるものと考えられる。
上記酸素空孔数の制御は、いわゆる雰囲気下熱処理により行うことができる。特定の温度におかれた結晶中の酸素空孔濃度は、その結晶がおかれている雰囲気の酸素ポテンシャル(酸素濃度)と平衡するように変化する。雰囲気の酸素濃度が平衡濃度より低くなれば結晶中の酸素空孔濃度は増加する。また、雰囲気の酸素濃度を一定として温度を高くすることで、雰囲気の酸素濃度を平衡濃度より低くしても酸素空孔濃度は増加する。従って、酸素空孔濃度を増やし、不透明度を上げるためには、高温でかつ雰囲気の酸素濃度を下げればよい。
ところで、結晶にマイクロボイド(空孔の集合体)が存在すると、マイクロボイドの酸素ポテンシャルが雰囲気の酸素ポテンシャルよりも低いため、マイクロボイド付近の色はマイクロボイドの無い部分よりも黒化する。すなわち、マイクロボイドの存在に起因した図4に示す「リング状の色ムラ(還元ムラ)」を生じさせてしまう。
そこで、本発明は、結晶化後において結晶内にマイクロボイド(空孔の集合体)を顕在化させる原料融液中のガス成分が育成中の結晶内に取込まれ難いLN単結晶の育成方法を提供し、これにより、上記「リング状の色ムラ(還元ムラ)」が生じ難いLN基板の提供を可能とする。
以下、本発明の実施例について比較例も挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
コングルエント組成のLN原料を用い、かつ、図1に示す高周波誘導加熱式単結晶育成装置を用いて結晶直胴部の結晶径Lが150mm、結晶肩部の長さNが10mm(すなわち、種結晶から目標の結晶径150mmになるまでの結晶肩長さが10mm)で、結晶直胴部の長さが120mmであるLN単結晶の育成を行った。
尚、結晶肩部の育成中における引き上げ軸の回転数(種結晶の回転数)を10rpmに設定した。また、育成雰囲気は、酸素濃度約20%の窒素-酸素混合ガスである。
育成されたLN単結晶に対し均熱下で残留熱歪除去のための熱処理と単一分極とするためのポーリング処理を行った後、結晶の外形を整えるため外周研削し、スライスしてLN基板とした。
得られたLN基板について、0.8%Al-Al23粉末中に埋め込み、真空雰囲気下で490℃、17時間の熱処理(黒化処理)を行った。
熱処理後のLN基板は暗緑褐色で、体積抵抗率は1×1010Ω・cm程度であり、基板面内における体積抵抗率のバラツキ(σ/Ave.)は3%未満であった。
また、目視によりLN基板の色ムラ(リング状色ムラ)を調べたところ、全てのLN基板で色ムラ、リング状色ムラは生じていなかった。
ここで、Aveとは基板中心部1点と外周部4点の面内5点測定の体積抵抗率の平均値、σはそれらの標準偏差のことである。尚、上記体積抵抗率は、JIS K-6911に準拠した3端子法により測定した。
これ等の結果を下記表1に示す。
[実施例2]
結晶肩部の長さNを20mmとした以外は実施例1と同一の条件でLN単結晶を育成し、かつ、残留熱歪除去のための熱処理とポーリング処理、および、熱処理(黒化処理)を行った。
熱処理後のLN基板は暗緑褐色で、体積抵抗率は1×1010Ω・cm程度であり、基板面内における体積抵抗率のバラツキ(σ/Ave.)は3%未満であった。
また、目視によりLN基板の色ムラ(リング状色ムラ)を調べたところ、実施例1と同様、全てのLN基板で色ムラ、リング状色ムラは生じていなかった。
これ等の結果を下記表1に示す。
[実施例3]
結晶肩部の育成中における引き上げ軸の回転数(種結晶の回転数)を7rpmに設定した以外は実施例1と同一の条件でLN単結晶を育成し、かつ、残留熱歪除去のための熱処理とポーリング処理、および、熱処理(黒化処理)を行った。
熱処理後のLN基板は暗緑褐色で、体積抵抗率は1×1010Ω・cm程度であり、基板面内における体積抵抗率のバラツキ(σ/Ave.)は3%未満であった。
また、目視によりLN基板の色ムラ(リング状色ムラ)を調べたところ、実施例1と同様、全てのLN基板で色ムラ、リング状色ムラは生じていなかった。
これ等の結果を下記表1に示す。
[比較例1]
結晶肩部の長さNを25mm(すなわち、種結晶から目標の結晶径150mmになるまでの結晶肩長さが25mm)とした以外は実施例1と同一の条件でLN単結晶を育成し、かつ、残留熱歪除去のための熱処理とポーリング処理、および、熱処理(黒化処理)を行った。
熱処理後のLN基板は暗緑褐色で、体積抵抗率は1×1010Ω・cm程度であったが、基板面内における体積抵抗率のバラツキ(σ/Ave.)は3%以上であった。
また、目視によりLN基板の色ムラ(リング状色ムラ)を調べたところ、LN単結晶の結晶肩部に近い部位から得られたLN基板でリング状色ムラが生じており、熱処理(黒化処理)を行ったLN基板の10%が色ムラ不良となった。
[比較例2]
結晶肩部の育成中における引き上げ軸の回転数(種結晶の回転数)を5rpmに設定した以外は実施例1と同一の条件でLN単結晶を育成し、かつ、残留熱歪除去のための熱処理とポーリング処理、および、熱処理(黒化処理)を行った。
熱処理後のLN基板は暗緑褐色で、体積抵抗率は1×1010Ω・cm程度であったが、基板面内における体積抵抗率のバラツキ(σ/Ave.)は3%以上であった。
また、目視によりLN基板の色ムラ(リング状色ムラ)を調べたところ、LN単結晶の結晶肩部に近い部位から得られたLN基板でリング状色ムラが生じており、熱処理(黒化処理)を行ったLN基板の15%が色ムラ不良となった。
Figure 0007310347000001
本発明方法で育成されたニオブ酸リチウム単結晶の結晶肩部に近い部位から得られたニオブ酸リチウム基板においても該基板内に含まれるマイクロボイド(空孔の集合体)が極めて少ないため、熱処理(黒化処理)のニオブ酸リチウム基板に生じ易いリング状色ムラを低減させることが可能となる。このため、表面弾性波素子(SAWフィルター)用の基板材料に用いられる産業上の利用可能性を有している。
L 結晶直胴部の結晶径
N 結晶肩部の長さ
α 自然対流
β 強制対流
1 種結晶
10 単結晶育成装置
11 チャンバー
12 坩堝
13 坩堝台
14、19 耐火物
15 ワークコイル
16 シード棒
17 シードホルダ
18 単結晶育成原料
20 原料融液
21 結晶肩部
22 結晶直胴部

Claims (1)

  1. 育成炉内に配置された坩堝の原料融液に種結晶を接触させ、該種結晶を引き上げ軸により回転させながら引上げて結晶肩部とこれに続く結晶直胴部を育成するチョクラルスキー法によるニオブ酸リチウム単結晶の育成方法において、
    上記結晶肩部の長さをNmm、上記結晶直胴部の結晶径をLmmとした場合、N/Lが1/7.5以下となるように設定し、かつ、結晶肩部の育成中における引き上げ軸の回転数を7rpm以上10rpm以下に設定することを特徴とするニオブ酸リチウム単結晶の育成方法。
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