JP5984058B2 - タンタル酸リチウム単結晶の製造方法及びタンタル酸リチウム単結晶 - Google Patents

タンタル酸リチウム単結晶の製造方法及びタンタル酸リチウム単結晶 Download PDF

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本発明は、タンタル酸リチウム単結晶の製造方法及びタンタル酸リチウム単結晶に関し、より詳しくは、化学量論点と調和融解点とが一致する組成を有するタンタル酸リチウム単結晶の製造方法及びその製造方法により得られるタンタル酸リチウム単結晶に関する。
情報端末機器の著しい利用増加に伴い、例えば、場所を選ばずに容易にプレゼンテーションすることができる超小型プロジェクタ等の利用が注目されている。このプロジェクタ等には、明るい場所でも十分に文字や絵の識別を可能とするために、高輝度で分解能に優れたレーザー・ビームが必要となる。
ある種の酸化物単結晶は、その光学的性質により、例えば電気光学効果を使用した光素子として使用されている。中でも、タンタル酸リチウム(LiTaO)単結晶は、光学特性、電気光学特性等に優れ、光損傷に強く、その構造上から他の酸化物単結晶に比べて2倍近く大きな熱伝導率が期待できるので、高強度の変換光でも発熱の影響が小さく、例えば緑色光源用変換素子として使用することで、高出力の緑色光を安定的に得ることができる。
ところで、そのタンタル酸リチウム単結晶においては、光学特性等の特性の観点では、アンチサイト欠陥がない化学量論(ストイキオメトリー)組成が好ましいが、結晶育成の観点では、組成ずれ(組成揺らぎ)がなく均一な組成の結晶を容易に得ることができる調和融解(一致溶融、コングルエント)組成が好ましい。
タンタル酸リチウム単結晶としては、育成が容易で組成ずれがなく、特性に優れたものであることが好ましい。しかしながら、このタンタル酸リチウム単結晶においては、化学量論点と調和融解点(一致溶融点)とが一致しないという問題がある。
これまで、ストイキオメトリー組成を有するタンタル酸リチウム単結晶の育成では、例えば二重坩堝法によって、ストイキオメトリー組成の原料を連続チャージしながら、育成に伴う原料融液組成の変化をなくす方法が用いられてきた(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、この方法では、追加した原料を十分に攪拌することが困難で、育成させた結晶はその育成方向に組成分布を持つようになってしまう。また、融液のわずかな温度変動によって、結晶の組成が変動してしまうという問題もある。このようにして得られた組成むらのある結晶では、波長変換特性等の光学特性を安定して発現させることが困難となる。
また、特許文献2では、コングルエント組成で育成したタンタル酸リチウム単結晶を使用して、リチウムを含む原料を用いて気相平衡法により処理し、結晶中にリチウムを拡散させることでストイキオメトリー組成に近づけたタンタル酸リチウム単結晶を得る方法が提案されている。しかしながら、この方法では、拡散処理工程が追加されていることにより、その拡散処理に時間が掛かり効率的ではなく、また特に深さ方向の組成の均一化が困難となる。
特開2008−176335号公報 特開2009−92712号公報
そこで、本発明は、上述した種々の問題を解決するために提案されたものであり、二重坩堝や連続原料供給装置等の高価な装置を用いず、また製造に長時間を要することなく、容易に、組成むらがなく結晶全体に亘る組成が均一であって、しかも光学特性等の特性に優れた結晶を得ることができるタンタル酸リチウム単結晶の製造方法及びそのタンタル酸リチウム単結晶を提供する。
本発明者らは、上述した種々の問題に鑑みて鋭意検討を重ねた。その結果、酸化マグネシウム(MgO)を添加物として添加した、酸化リチウム(LiO)と、酸化タンタル(Ta)と、そのMgOの3成分系において、Taを50mol%に固定し、LiO、MgOを所定の割合に調整した組成の原料融液を用いて結晶育成を行うことによって、融液組成と育成結晶組成とを一致させることができ、またその育成した結晶がストイキオメトリー組成となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るタンタル酸リチウム単結晶の製造方法は、酸化タンタルが50.0mol%、酸化リチウムが39.8〜41.8mol%、添加物としての酸化マグネシウムが8.2〜10.2mol%の組成となるように調整した融液を用いて結晶を育成することを特徴とする。
ここで、結晶の育成は、チョクラルスキー法により行うことが好ましい。
また、本発明に係るタンタル酸リチウム単結晶は、酸化マグネシウムを添加物として含有し、酸化タンタル50.0mol%と、酸化リチウム39.8〜41.8mol%と、酸化マグネシウム8.2〜10.2mol%の組成で構成されてなる。
ここで、当該タンタル酸リチウム単結晶は、結晶全体に亘るキュリー温度の温度差が0.1℃以下であることを特徴とする。
本発明によれば、ストイキオメトリー組成であるとともにコングルエント組成を有する結晶を製造することができるので、煩雑な処理や高価な装置等を用いることなく、極めて容易に、組成むらがなく結晶全体に亘る組成が均一であって、しかも光学特性等の特性に優れたタンタル酸リチウム単結晶を得ることができる。
タンタル酸リチウムの平衡状態図である。 (a)がストイキオメトリー組成のタンタル酸リチウム単結晶(s−LT)の、(b)がコングルエント組成のタンタル酸リチウム単結晶(c−LT)の、Li、Ta、Oの各サイトへの配置状態を模式的に表した図である。 MgOを添加物として添加したときの融液の組成状態図である。 ストイキオメトリー組成とコングルエント組成とが一致したタンタル酸リチウム単結晶(cs−MgO:LT)のLi、Ta、O、及びMgの各サイトへの配置状態を模式的に表した図である。 結晶化起電力について説明するための図である。
以下、本発明の具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、図面を参照しながら以下の順で詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
1.タンタル酸リチウム単結晶の製造方法
1−1.cs−MgO:LTの決定
1−2.cs−MgO:LTの製造方法
2.タンタル酸リチウム単結晶(cs−MgO:LT)
2−1.コングルエント組成に基づく組成均一性
2−2.ストイキオメトリー組成に基づく優れた光学特性
3.実施例
<1.タンタル酸リチウム単結晶の製造方法>
本実施の形態に係るタンタル酸リチウム単結晶の製造方法は、酸化タンタルが50.0mol%、酸化リチウムが39.8〜41.8mol%、添加物としての酸化マグネシウムが8.2〜10.2mol%の組成となるように調整した融液を用いて結晶を育成することを特徴とする。
このような製造方法によれば、原料融液組成と育成結晶組成とを一致させることができ、しかもその育成結晶は化学量論(ストイキオメトリー)組成とすることができる。すなわち、調和融解(一致溶融、コングルエント)組成から、ストイキオメトリー組成のタンタル酸リチウム単結晶を得ることができ、容易な操作で、組成ずれ(組成揺らぎ)がなく均一な組成であって、しかも優れた光学特性等の特性を有する単結晶を得ることができる。
ここで、従来、タンタル酸リチウム単結晶においては、化学量論点と調和融解点(一致溶融点)とが一致しないという問題があった。このことは、図1に示す平衡状態図からも分かる。そのため、これまでの単結晶では、組成の揺らぎやアンチサイト欠陥を有するものとなっていた。そこで、本発明者は、“酸化物の化学量論の本質は、酸素で飽和した酸素サイトの存在をもとにすべての構成要素の活量が1になることである”という概念に基づいて、不純物等の欠陥を積極的に結晶内に導入し、不純物成分を含む3成分系の組成を所定の割合に制御することにより、化学量論点と調和融解点とが一致した組成となることを見出した。
以下では、タンタル酸リチウム単結晶の具体的な製造方法の説明に先立ち、上述の組成とする技術的思想並びにそのメカニズムについて説明する。
<1−1.cs−MgO:LTの決定>
[MgO添加による拡張化学量論組成]
酸化物は、酸素や陽イオンや欠陥が位置する複数のサイトからなる。ここで、図2(a)及び(b)に、ストイキオメトリー組成のタンタル酸リチウム単結晶(以下、「s−LT」とする。)と、コングルエント組成のタンタル酸リチウム単結晶(以下、「c−LT」とする。)における、Li、Ta、Oの元素の各サイトへの配置状態を模式的に表した図を示す。
図2(a)に示すように、s−LTは、酸化リチウム(LiO)と酸化タンタル(Ta)の成分が1:1の量比を持ち、結晶内ではLi、Ta、Oがそれぞれ規定のサイトを過不足なく占有して、完全な構造を有する結晶(定比化合物)となっている。この結晶は、その定比性により、優れた光学特性等の特性を示す。しかしながら、このs−LTでは、結晶育成中に組成ずれが起こり易く、結晶育成が困難であるという問題がある。
一方で、c−LTは、育成が容易で均質な組成を有する。しかしながら、図2(b)に示すように、この結晶は、LiOとTaの成分比が1:1からずれており、不完全な構造となっているため、光学特性等の特性が十分に表れない。
本発明者は、“酸化物の化学量論の本質は、酸素で飽和した酸素サイトの存在をもとにすべての構成要素の活量が1になることである”という概念のもと、これらの元素や欠陥等の各要素が必ず1種類のサイトにのみ存在すれば、化学量論物質は、空格子点や不純物を含んでもよく、その結果、化学量論組成の存在は点から線に拡張されるとの知見を得た。そして、その拡張された化学量論組成から、その化学量論点と調和融解点とが一致する組成が求まるとの知見を得た。
ここで、構成要素(元素)の「活量」とは、酸化物融液中に存在するイオン種を含めたすべて成分(元素)が結晶中の各サイトに入る活動度をいい、その活量が1とは、結晶を構成する元素が、その元素が入るべきサイトにスムースに入る状態をいう。上述したように、図2(a)に示したs−LTの結晶では、Li、Ta、Oが各サイトを過不足なく占有しており、Li、Ta、Oのサイト並びにそれら元素の活量は1の状態となっている。
本発明者は、上述した酸化物の化学量論の本質に基づいて、原料融液に酸化マグネシウム(MgO)を添加物として添加することで、その添加物であるMgOを含むLiO、Ta、MgOの3成分系において、化学量論組成を拡張できることを見出した。そして、この化学量論組成が拡張されることによって、化学量論点と調和融解点とが一致し、s−LTとc−LTのそれぞれの良好な特性を兼ね備えた単結晶、すなわち、育成が容易であって組成ずれがなく光学特性に優れた単結晶(cs−MgO:LT)となる組成を見出すことが可能となる。
図3に、MgOを添加物として添加したときの融液の組成状態図を示す。この図3において、s−LTの組成(2成分系)は、図中に「s−LT点」として示す50mol%−Ta濃度線(図3中のA線)の端(端点)組成である。そして、上述した化学量論の本質に基づくと、タンタル酸リチウム単結晶のストイキオメトリー組成は、端点(s−LT点)組成だけでなく、50mol%−Ta濃度線(A線)上にまで拡張されることになる。すなわち、この50mol%−Ta濃度線が、ストイキオメトリー(化学量論)組成を有する、いわゆる化学量論組成線となる。
つまり、この50mol%−Ta濃度線上にある単結晶のLiサイトは、図4のcs−MgO:LTのサイト配置状態模式図に示すように、正味電荷量がOサイト及びTaサイトと釣り合うようにLi、Mg、及び空格子点で満たされており、Liサイトの活量は1となっている。このことは、50mol%−Ta濃度線上のすべての組成で成り立つことから、Liサイトの各要素(Li、Mg、空格子点)の活量は1となる。したがって、このことから、この50mol%−Ta濃度線上の単結晶は、ストイキオメトリー組成を有する。
なお、一方で、2成分系の調和融解組成のc−LTも、図2(b)で示したように、TaサイトとOサイトではそれぞれの原子が過不足なく埋められているが、50mol%−Ta濃度線上にはなく(図3のc−LT点)、Ta原子がLiサイトにも存在している。単結晶の各構成要素の活量が1となって化学量論組成となるには、各要素は必ず1種類のサイトにのみ存在し、2種類以上のサイトに存在するといったアンチサイト欠陥がないことが必要となる。
[cs−MgO:LTの決定]
ところで、例えば図5(a)に示すように、結晶成長に伴って融液中に存在するイオン種が融液界面に偏在すると、界面電位(以下、「結晶化起電力」という。)が発生する(図5(b))。この結晶化起電力は、イオン種の活量を反映しており、その大きさは融液の組成に依存するが、特に、この結晶化起電力がゼロ(0)となる組成では、すべての化学種が偏在せずにスムースに固相に取り込まれ、これらの平衡分配係数は1となる。そして、この組成がコングルエント組成となる。
なお、結晶化起電力は、図5(c)に示すように、マイクロ引き下げ装置で1mm径のタンタル酸リチウム単結晶を融液から下降成長させ、その後、上昇再溶融させるときに電極P−P間に現れるヒステリシス電位に相当する(図5(d))。
一方でまた、この結晶化起電力がゼロのときは、すべての要素(Li、Ta、O、空格子点)が固相にスムースに取り込まれることから、上述した化学量論の本質に基づくと、その活量としては“1”となる。つまり、その結晶は、ストイキオメトリー組成である。
したがって、各要素の活量が1である、スイキオメトリー組成である図3の50mol%−Ta濃度線上において、結晶化起電力がゼロとなるコングルエント組成が存在することが分かる。すなわち、50mol%−Ta濃度線上において、ストイキオメトリー組成とコングルエント組成とが一致したタンタル酸リチウム結晶(以下、「cs−MgO:LT」とする。)の組成が求まる(図3中の楕円囲み部におけるA線上)。
そこで、ストイキオメトリー組成である50mol%−Ta濃度線上においてコングルエント組成を決定することになるが、コングルエント組成は、最も高い融点を示すことが分かっている。したがって、上述のようにMgOの添加により拡張したストイキオメトリー組成(図3の50mol%−Ta濃度線上の組成)から、示差熱分析(DTA)等により最高融点を検出するようにする。そして、このようにして最高融点を示す組成を検出すると、その組成が、コングルエント組成(調和融解点)であるとともにストイキオメトリー組成(化学量論点)であり、すなわち、cs−MgO:LTとなる。
具体的に、LiO、MgO、Taの3成分系において、Taを50mol%で固定し、LiO、MgOの組成をそれぞれ変化させて、示差熱分析計を用いて融点測定を行った。そして、融点測定の結果に基づき、融点分布マップを作成した。
その結果、Taが50.0mol%、LiOが40.8mol%、MgOが9.2mol%である組成において、最高融点を示した。なお、この組成におけるキュリー温度(Tc)は、700.0℃であった。また、その融点測定の結果、Taが50.0mol%であって、MgOが9.2±0.3mol%の組成、さらにはMgOが9.2±1mol%の組成においても、その最高融点とほぼ同程度(1℃未満)の融点を示すことが確認された。
したがって、このことから、Taが50.0mol%であって、LiOが39.8〜41.8mol%、MgOが8.2〜10.2mol%となる組成、好ましくはLiOが40.5〜41.1mol%、MgOが8.9〜9.5mol%となる組成、より好ましくはLiOが40.8mol%、MgOが9.2mol%である組成が、化学量論点と調和融解点とが一致した組成となり、この融液を用いることによって、ストイキオメトリー組成とコングルエント組成とを有するタンタル酸リチウム単結晶(cs−MgO:LT)を得ることができる。
<1−2.cs−MgO:LTの製造方法>
次に、具体的な結晶育成方法について説明する。
上述したように、Taが50.0mol%であって、LiOが39.8〜41.8mol%、MgOが8.2〜10.2mol%となる組成、好ましくはLiOが40.5〜41.1mol%、MgOが8.9〜9.5mol%となる組成、より好ましくはLiOが40.8mol%、MgOが9.2mol%となる組成が、化学量論点と調和融解点とが一致した組成となる。したがって、本実施の形態に係るタンタル酸リチウムの製造方法では、このような組成となるように調整した融液を用いて結晶を育成する。
具体的には、先ず、所定の融液組成となるように秤量した単結晶用原料(酸化物粉末)を坩堝に投入し、育成装置のヒータにより加熱することによって原料融液を作製する。
使用する坩堝やヒータとしては、特に限定されるものではなく、例えば白金、モリブデン、タングステン、イリジウム、ロジウム、レニウム、又はこれらの合金等からなるもの等を使用することができる。その中でも特に、タンタル酸リチウムは、比較的融点が高いため、耐熱性に優れた素材からなるものを用いることが好ましい。
具体的に、本実施の形態に係る製造方法においては、Ta、LiO、MgOの酸化物粉末を使用し、加熱して得られる融液組成が、Taが50.0mol%、LiOが39.8〜41.8mol%、MgOが8.2〜10.2mol%となるように、各原料を秤量する。なお、使用する原料酸化物粉末は、特に限定されないが、その純度が4N以上のものであることが好ましい。
ここで、本実施の形態においては、MgOを用いて結晶内にMgを導入するようにしている。このようにしてMgOを用いる理由としては、Mgが結晶内に導入されることで、単結晶の光損傷をより効果的に防ぐことができ、またMgOが融液中でマグネシウムイオンと酸素イオンに完全に分解するからである。
続いて、坩堝内に投入した酸化物粉末を加熱融解させる。その際、炉内の雰囲気としては、酸素と窒素やアルゴン等の不活性ガスとの混合ガス雰囲気とすることが好ましい。
次に、原料酸化物粉末を溶融して得られた融液から、単結晶を育成する。単結晶の育成方法としては、特に限定されず周知の方法を用いることができるが、その中でも、チョクラルスキー法(引き上げ法)を用いることが好ましい。チョクラルスキー法とは、原材粉末を溶融して得られた融液に、種結晶を浸けて引き上げることにより単結晶を成長させる育成方法であり、例えば高周波誘導加熱装置等を用いて行うことができる。このチョクラルスキー法によれば、大型の結晶を安定的に製造することができる。
具体的に、引き上げ法による単結晶の育成に際しては、チャンバ内を上述した混合ガス雰囲気に保ち、所望の組成とした融液内に種結晶を浸して、その回転数や引き上げ速度を調整しながら、ネック部や肩部を形成し、引き続き直胴部を形成する。結晶形状の調節は、例えば、育成中の結晶重量を測定して直径や育成速度等を計算によって導き出し、回転速度や引き上げ速度を調整して行うことができる。また、結晶重量の変化を加熱ヒータへの投入電力にフィードバックして融液温度をコントロールしてもよい。
また、タンタル酸リチウム単結晶は、比較的融点が高いため、育成過程におけるLiの蒸発を考慮して、蒸発に見合う過剰のLiO成分を融液中に添加してもよい。
以上のように、本実施の形態に係る製造方法は、Taが50.0mol%、LiOが39.8〜41.8mol%、MgOが8.2〜10.2mol%の組成となるように調整した融液を用いて結晶を育成することを特徴としている。上述したように、この融液組成は、化学量論点と調和融解点とが一致した組成となっている。したがって、この製造方法によれば、ストイキオメトリー組成を有するとともにコングルエント組成を有する単結晶を製造することができる。
また、このような製造方法では、例えばLiを拡散させる等の処理を施してストイキオメトリー組成に近づけるようにしたり、高価な二重坩堝等を用いたりすることなく、上述した所定の組成からなる融液を用いて結晶を育成させることのみの極めて容易な方法で、組成が均一で、特性に優れたタンタル酸リチウム単結晶を製造することができる。
なお、上述した融液組成(各成分の融液含有量)に関して、結晶を構成する元素の種類によって、得られる単結晶の融点は相違するとともに、結晶へのドープのされ易さは元素によって大きく異なる。そのため、たとえ同族元素であったとしても、上述した化学量論点と調和融解点とが一致する組成は、容易に導き出されるものではない。したがって、タンタル酸リチウム単結晶の製造方法においては、Taが50.0mol%、LiOが39.8〜41.8mol%、MgOが8.2〜10.2mol%の組成となるように調整した融液を用いることが重要となる。
<2.タンタル酸リチウム単結晶(cs−MgO:LT)>
次に、上述した製造方法により得られるタンタル酸リチウム単結晶について説明する。
本実施の形態に係るタンタル酸リチウムは、上述した製造方法により得られるものであり、Ta50.0mol%と、LiO39.8〜41.8mol%と、MgO8.2〜10.2mol%の組成で構成されてなる。また、好ましくは、Ta50.0mol%と、LiO40.5〜41.1mol%と、MgO8.9〜9.5mol%の組成、より好ましくはTa50.0mol%と、LiO40.8mol%と、MgO9.2mol%の組成で構成されてなる。したがって、このタンタル酸リチウム単結晶は、ストイキオメトリー組成を有するとともにコングルエント組成を有する単結晶(cs−MgO:LT)であり、それぞれの組成の結晶が有する特性を兼ね備えた特徴を有する。以下、それぞれの特徴を説明する。
<2−1.コングルエント組成に基づく組成均一性>
このcs−MgO:LTは、コングルエント組成であるという観点から、融液中に存在しているすべての物質が結晶内にスムースに取り込まれて製造されたものであり、組成むら(組成揺らぎ)がなく極めて均一な組成を有している。このような均質な単結晶によれば、例えば波長変換特性等の特性を、変動なく安定的に発現させることができる。
また、この組成の均一性は、キュリー温度(Tc)の測定からも分かる。キュリー温度とは、強誘電体から常誘電体に転移する温度のことをいう。タンタル酸リチウム単結晶のキュリー温度は、タンタル酸リチウム単結晶を構成する成分のモル比によって変化する。そのため、結晶に組成むらの度合いに応じて、結晶全体に亘るキュリー温度の温度差は大きくなる。このことより、結晶全体に亘る複数の異なる部位において測定したキュリー温度の温度差から、その結晶の組成むらの状態を判別することができる。
具体的に、本実施の形態に係るcs−MgO:LTでは、結晶の深さ方向(成長方向)における上部、中部、下部のキュリー温度の温度差が、固化率(=結晶重量/原料重量)に依らずに0.1℃以下となる。なお、例えば従来のs−LTの場合においては、同様にして測定したキュリー温度の温度差が、固化率0.6程度の結晶で3〜5℃程度となる。
<2−2.ストイキオメトリー組成に基づく優れた特性>
また、本実施の形態に係るcs−MgO:LTでは、上述のようにコングルエント組成であるとともに、ストイキオメトリー組成を有していることから、波長変換特性等の光特性が極めて優れている。
具体的には、MgOの添加により熱伝導率が上昇し、高強度の変換光でも発熱の影響が小さく、緑色光源素子として使用することで高出力の緑色光を安定的に得ることができる。また、この単結晶では、コングルエント組成とストイキオメトリー組成が一致しているので結晶育成時点において完全な組成均質性が保証され、電荷を有する点欠陥が生じないのでレーザー・ビーム入射時にビームの散乱がない。
<3.実施例>
以下に、本発明について実施例を用いてより詳しく説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[タンタル酸リチウム単結晶(cs−MgO:LT)の作製]
LiO、Ta、及び添加物としてのMgOの3成分系において、Taは50mol%で固定し、LiO及びMgOの組成を変化させて、示差熱分析(DTA)による融点測定を行った。その結果、MgO:9.2mol%、LiO:40.8mol%、Ta:50mol%組成において最高融点を示すことが分かった。
そこで、上述の組成となるようにLiO、Ta、及びMgOの各酸化物粉末を調合した原料を用いて、チョクラルスキー法による単結晶の育成を行った。
先ず、直径160mm、高さ160mm、厚さ2mmのイリジウム製坩堝を用い、その坩堝に15kgの原料をチャージして、高周波誘導加熱で原料を溶融して融液とした。続いて、誘導加熱コイルの出力を調整し、融液の表面温度を結晶成長の適性温度に安定させた。
次に、その融液中に、種結晶として育成方位36゜RYのタンタル酸リチウム単結晶を浸漬し、引き上げ軸を回転させながら引き上げることにより、種結晶の下にタンタル酸リチウム単結晶を成長させた。なお、引き上げ速度は3mm/h、結晶回転速度は10rpmとした。
これにより、直径105mm、直胴長120mm、重量10kgのタンタル酸リチウム単結晶を得ることができた。得られた単結晶は、室温まで40時間かけて徐冷してアニールし、ポーリング用電極を介して連結通電することによって育成結晶を1時間ポーリングした。そして、そのポーリング処理を実施した後にスライスし、鏡面研磨加工を行った。
このようにして得られた単結晶の融点は、1652℃であり、またキュリー温度(Tc)は、700.0℃であった。
[cs−MgO:LTの組成均一性評価]
坩堝内に残った原料に、育成結晶分の原料を追加チャージして、2run目の結晶育成を行った。このようにして得られた単結晶の融点、キュリー温度は、1run目の結晶と同一の値を示した。
また、同様の方法で追加チャージを繰り返して5runの結晶育成を実施し、融点及びキュリー温度の測定を行った。このようにして得られた単結晶の融点、キュリー温度は、どちらとも、結晶トップ(育成初期)と結晶ボトム(育成末期)とで差が見られず、さらに各runにおいて得られた単結晶間においても差が見られなかった。このことから、育成した単結晶は、コングルエント組成であることが確認された。

Claims (4)

  1. 酸化タンタルが50.0mol%、酸化リチウムが39.8〜41.8mol%、添加
    物としての酸化マグネシウムが8.2〜10.2mol%の組成となるように調整した融
    液を用いて結晶を育成することを特徴とするタンタル酸リチウム単結晶の製造方法。
  2. チョクラルスキー法により結晶を育成することを特徴とする請求項1記載のタンタル酸
    リチウム単結晶の製造方法。
  3. 化タンタル50.0mol%と、酸化リチウム39.8〜41.8mol%と、酸化マグネシウム8.2〜10.2mol%の組成で構成されてなることを特徴とするタンタル酸リチウム単結晶。
  4. 結晶全体に亘るキュリー温度の温度差が0.1℃以下であることを特徴とする請求項3記載のタンタル酸リチウム単結晶。
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