以下、本発明に係る綴じ機構カートリッジの一例を示し、図面を用いて詳細に説明を行う。
[実施の形態1]
図1(a)(b)は、実施の形態1に係る綴じ機構カートリッジと、綴じ装置本体と,ステープルカートリッジとを示した斜視図である。綴じ装置本体200は、一般的に、業務用コピー機等のシート処理装置10(図24参照)の内部に設置される。
[綴じ装置概略]
綴じ装置本体200は、モータ212と、モータ212に連動して回転駆動等される様々なギア214,215と、プレートおよびドライバを昇降させるためのステープラ駆動機構280と、ステープラ駆動機構280によるプレートおよびドライバの昇降駆動に連動してテーブル部211を昇降駆動させるテーブル可動機構210と、紙束を突き抜けたステープルの針脚を紙束の紙面方向へと折り曲げるクリンチ機構250等とを備えている。これらのステープラ駆動機構280、テーブル可動機構210およびクリンチ機構250は、本発明に係る駆動機構に該当する。
綴じ装置本体200における各駆動機構210、250、280等の構造およびその詳細な駆動方法については、特許文献1(特許第4096931号公報)に詳細に開示されている。このため、実施の形態1〜実施の形態4では、綴じ機構カートリッジにおける各動作を説明するために必要とされる駆動機構等について、簡単に説明する。
綴じ装置本体200の上部には、収納部201が形成されている。収納部201には、ステープルカートリッジ300および綴じ機構カートリッジ100のいずれか一方を綴じ装置本体200に対して着脱可能に収納することが可能な収納空間が確保されている。収納空間は、図1(b)に示すように、上部後方および上部中央が開放された空間となっている。この収納空間に対して、後方からステープルカートリッジ300あるいは綴じ機構カートリッジ100を前方方向へとスライド挿入させることにより、収納部201に、ステープルカートリッジ300あるいは綴じ機構カートリッジ100を収納することが可能となる。
ここで、綴じ装置本体200に対して着脱可能に収納される綴じ機構カートリッジ100は、紙束を綴じる方式によって、複数種類用意されている。例えば、図2(a)に示すような、ステッチング方法により綴じ処理を行う綴じ機構カートリッジや、図2(b)に示すような、半抜き綴じ方法により綴じ処理を行う綴じ機構カートリッジや、図2(c)に示すような、凹凸綴じ方法により綴じ処理を行う綴じ機構カートリッジや、図2(d)に示すような、紙針綴じ方法により綴じ処理を行う綴じ機構カートリッジや、図2(e)に示すような、クリップを用いたクリップ綴じ方法により綴じ処理を行う綴じ機構カートリッジなどが用意される。実施の形態1〜実施の形態4では、一例として、ステッチング方法により綴じ処理を行う綴じ機構カートリッジを用いて説明を行う。
収納部201の底面には、図3(a)に示すように、収納部201に収納されたステープルカートリッジ300、あるいは、綴じ機構カートリッジ100の種類を判別するためセンサ203が設けられている。また、ステープルカートリッジ300の底面、および、綴じ機構カートリッジ100の底面には、図3(b)(c)に示すように、突起部301、108が設けられている。突起部は、ステープルカートリッジ300および綴じ機構カートリッジ100の種類に応じて、それぞれ異なった位置に設けられている。
綴じ装置本体200は、ステープルカートリッジ300、あるいは、綴じ機構カートリッジ100が収納された状態において、突起部301、108が設けられる位置をセンサ203で判断することにより、収納されたカートリッジの種類を判別する。突起部301、108の位置を検出するセンサ203は、光センサ等を用いて突起部301、108の有無を検出する構造であってもよく、あるいは突起部301、108の設置位置に対応する凹所を収納部201の底面に設けて、突起部301、108が嵌め込まれた凹所の位置を、センサ203で検出する構造であってもよい。
綴じ装置本体200の上部前方には、上方視でコ字状を成し、後側のコ字状端部を揺動軸として、前側部分を上下方向へと揺動することが可能なコ字状アーム部202が設けられている。コ字状アーム部202が揺動すると、コ字状アーム部202の前側端部が、紙束へと近接あるいは離反する構造になっている。紙束に近接するコ字状アーム部202の前側端部は、テーブル可動機構210のテーブル部211として機能する。また、コ字状アーム部202の前側端部は、紙束に近接された状態においてテーブル部211へ突出されたステープルの針脚を折り曲げ加工するクリンチャ270(図14参照)を設けることが可能となっている。
コ字状アーム部202には、左右のアーム片に架設される連結軸204が設けられている。コ字状アーム部202が上下方向へと揺動することにより、連結軸204も上下方向へと昇降される構造になっている。
なお、上述したクリンチャ270が設けられるクリンチ機構250については、実施の形態2において説明する。また、実施の形態1〜実施の形態4では、説明の便宜上、綴じ装置本体200の収納部201に、綴じ機構カートリッジ100がスライド挿入およびスライド引き出しされる方向を、前後方向と規定し、綴じ装置本体200の幅方向を左右方向と規定し、さらに、テーブル部211の昇降方向を上下方向と規定して説明を行う。
[テーブル可動機構]
次に、綴じ装置本体200におけるテーブル可動機構210について説明する。テーブル可動機構210は、上述したようにテーブル部211として機能するコ字状アーム部202を上下動させることにより、紙束を挟み込む機構としての役割を有している。
図4(a)(b)は、綴じ装置本体200におけるモータ212および各種ギア214、215の構成を示した概略図である。図4(a)は、テーブル部211が上昇した状態を示し、(b)は、モータ212の駆動により、テーブル部211が降下した状態を示している。
綴じ装置本体200には、シート処理装置10の制御により駆動されるモータ212が設けられている。モータ212の出力軸212aには減速ギア214が噛合されており、モータ212の駆動に応じて減速ギア214が回転される。減速ギア214の駆動軸には図示を省略した小径ギアが設けられており、この小径ギアに駆動ギア215が噛合されている。このため、モータ212に連動して減速ギア214が回転すると、減速ギア214に連動して小径ギアが回転し、駆動ギア215が回転されることになる。
図4(c)(d)は、綴じ装置本体200におけるテーブル可動機構の構成を示した概略図である。図4(c)は、テーブル部211が上昇した状態を示し、(d)は、モータ212の駆動により、テーブル部211が降下した状態を示している。
テーブル可動機構210は、テーブル駆動カム220と、第1テーブルリンク222と、第2テーブルリンク223と、紙厚調整バネ225とを備えている。テーブル駆動カム220は、略楕円形状の異径円盤により形成されており、異径円盤の中心よりも外側寄りに偏心した位置に回転軸220aが設けられている。この回転軸220aは、駆動ギア215の回転に伴って回転される構造となっている。第1テーブルリンク222は、矢印に示した略上下方向に往復動可能な構造となっており、下側端部に形成された突起軸のローラ222aを介してテーブル駆動カム220の外周に当接された状態となっている。また、第1テーブルリンク222の上側端部にも突起軸222bが形成されており、第2テーブルリンク223の略中央位置に形成された長孔223aに突起軸222bが挿入されて係合された状態となっている。
第2テーブルリンク223は、コ字状アーム部202における側部側のアームの一部を担っている。第2テーブルリンク223は、後方側の端部において駆動軸223bに軸支されており、この駆動軸223bを中心として前方側の端部を揺動させることが可能となっている。また、第2テーブルリンク223の後方側端部の上側寄りの位置には、紙厚調整バネ225の一端が連結されている。また、紙厚調整バネ225の他端は、第1テーブルリンク222の上側端部に連結されており、紙厚調整バネ225によって、第1テーブルリンク222が後方斜め上方向へと付勢された状態となっている。
第1テーブルリンク222は、上述したように、矢印に示した略上下方向に往復動可能な構造となっており、さらに第1テーブルリンク222の上側端部において、紙厚調整バネ225によって後方斜め上方向へと付勢された状態になっているので、テーブル駆動カム220とローラ222aとの当接状態に応じて、第1テーブルリンク222が上下動することになる。一方で、第1テーブルリンク222の上側端部は、長孔223aに突起軸222bが挿入されることにより、第2テーブルリンク223の略中央位置で係合された状態となっている。このため、テーブル駆動カム220とローラ222aとの当接状態に応じて、第1テーブルリンク222が上方に移動した場合には、第2テーブルリンク223の前側端部が上方へと押し上げられた状態となり、第1テーブルリンク222が下側に移動した場合には、第2テーブルリンク223の前側端部が下方向へと押し下げられた状態になる。
ここで、第2テーブルリンク223は、コ字状アーム部202における側部側のアームの一部を担っているため、第2テーブルリンク223の前側端部が下方向へと押し下げられると、図4(b)(d)に示すように、綴じ装置本体200のテーブル部211が下方向へと押し下げられて降下することになる。また、第2テーブルリンク223の前側端部が上方向へと押し上げられると、図4(a)(c)に示すように、綴じ装置本体200のテーブル部211が上方向へと押し上げられて上昇することになる。このようにして、テーブル駆動カム220に連動して第1テーブルリンク222が上下動し、第1テーブルリンク222の上下動に連動して第2テーブルリンク223の前側部分が昇降移動することにより、テーブル部211が上下動されることになる。
[前後方向スライド機構を備えた綴じ機構カートリッジ]
図5〜図6は、ステッチング方法により綴じ処理を行う綴じ機構カートリッジの一例を示した図である。図5(a)および図6(a)(c)(e)は、綴じ機構カートリッジの綴じ刃が後側に位置した状態を示し、図5(b)および図6(b)(d)(f)は、綴じ機構カートリッジの綴じ刃が前側に位置した状態を示している。
実施の形態1に係る綴じ機構カートリッジ100は、ステッチングを行うための綴じ刃を前後方向にスライド移動させるための構成を備えている。綴じ機構カートリッジ100は、本体部101と、昇降部102と、土台部103と、綴じ部(綴じ刃)104と、前後方向スライド機構部106と、綴じ位置固定ねじ107とを備えている。
本体部101は、略直方体形状を呈する基部101aと、後側上部において後方へと突出形成される把持部101bと、前側下部において前方へと突出形成される土台支持部101cとにより概略構成されている。基部101aの外幅寸法は、綴じ装置本体200における収納部201の内幅寸法に対応した寸法となっており、基部101aが収納部201に挿入されると、収納部201に本体部101が保持される構造になっている。収納部201に本体部101が保持された状態において、ユーザが把持部101bを掴んで本体部101を引き出すことによって、綴じ機構カートリッジ100を綴じ装置本体200から簡単に取り外すことが可能になっている。
土台支持部101cは、土台部103を下側から支持するために設けられている。本体部101が収納部201に収納された場合、土台支持部101cは、ステープラ駆動機構280により昇降されるプレートおよびドライバの設置箇所の上方位置であって、さらに、テーブル可動機構210により昇降駆動されるテーブル部211の下方位置に配置されることになる。
本体部101の前面部分には、前後方向スライド機構部106が設けられている。前後方向スライド機構部106は、箱形状を呈する前後方向スライド本体部106aにより構成されており、前後方向スライド本体部106aの前側下部には、土台部103が一体に形成されている。本体部101の基部101aには、図6(c)(d)に示すように、前後方向スライド本体部106aの後側部分を前後方向へとスライド可能に収納することが可能な収納空間101sが形成されている。また、本体部101の天井面101d(収納空間の天井面)には、綴じ位置調節ねじ109を自由回転可能に取り付けるための調節孔が上下に貫設されている。
綴じ位置調節ねじ109は、図6(a)(b)に示すように、つまみが形成された頭部109aと、調節孔内の高さ(孔の嵩高)に対応する高さを有する首部109bと、首部の下方向に延接されて外周にピニオンギアが形成される先端部109cとが一体に形成されている。
また、前後方向スライド本体部106aが収納空間101sに収納された状態において、調節孔の開口から臨む前後方向スライド本体部106aの上面部分には、凹所部106bが形成されている。この凹所部106bの側面には、綴じ位置調節ねじ109のピニオンギアに噛合するラックが形成されている。凹所部106bの左右方向の幅は、ラックに噛合した綴じ位置調節ねじ109の先端部109cが収納可能かつ回転可能な寸法に規定されている。また、凹所部106bの前後方向の寸法は、前後方向スライド本体部106aのスライド量に対応する寸法に規定されている。
綴じ位置調節ねじ109は、前後方向スライド本体部106aが収納空間101sに収納された状態において、調節孔に首部109bが位置するようにして、本体部101の基部101aに取り付けられる。このようにして綴じ位置調節ねじ109が取り付けられることにより、ユーザがつまみを摘まんで綴じ位置調節ねじ109を自由に左右回転させことができる。また、ユーザがつまみを回転させて綴じ位置調節ねじ109を回転させることにより、先端部109cのピニオンギアに噛合するラックが前後方向に押し出されることになる。このため、つまみの回転操作に伴って、前後方向スライド本体部106aを、紙束の縁に対して近接離反するようにして、前後方向へスライド移動させることが可能になる。
また。収納空間101sの天井面101dであって、調節孔の近傍には、綴じ位置固定ねじ107に螺合する固定孔が形成されている。綴じ位置固定ねじ107は、つまみが形成された頭部107aと、固定孔内のねじ溝に螺合するねじ部107bとにより構成されている。ユーザがつまみを回して綴じ位置固定ねじ107を回転させることにより、ねじ部107bの先端を、前後方向スライド本体部106aの上面に当接させたり、あるいは当接から退避させたりすることが可能になっている。このように、綴じ位置固定ねじ107と固定孔とによって前後方向スライド本体部106aの前後方向のスライド移動を規制することができるため、綴じ位置固定ねじ107と固定孔とによって前後方向スライド規制部が構成されることになる。
綴じ位置固定ねじ107のねじ部107b先端を前後方向スライド本体部106aとの当接から退避させることにより、前後方向スライド規制部による規制が解除された状態となる。規制が解除された状態において、ユーザが綴じ位置調節ねじ109を回転させることにより、前後方向スライド本体部106aの前後方向のスライド量を調整することができる。また、前後方向スライド本体部106aにおける前後方向のスライド量を調整した後に、ユーザが綴じ位置固定ねじ107を回転させて、ねじ部107b先端を前後方向スライド本体部106aの上面に当接させることにより、前後方向スライド規制部による規制が行われた状態となる。前後方向スライド規制部により、前後方向スライド本体部106aのスライド移動を規制することによって、前後方向スライド本体部106aのスライド位置を固定することが可能になる。
土台部103は、水平に設けられた2枚の板状部材103a、103bにより構成されている。2枚の板状部材103a、103bは、上下方向に一定の間隙が確保された状態で、前後方向スライド本体部106aの前側下部に設けられている。綴じ対象となる紙束は、この2枚の板状部材103a、103bの間に挿入される。2枚の板状部材103a、103bの間に紙束が挿入された場合、紙束は、土台部103の下側の板状部材103bにより下面側から支持されることになる。
上下の板状部材103a、103bには、綴じ部(綴じ刃)104を上下動させるための開口103c、103dが形成されている。また、土台部103の下側に位置する土台支持部101cには、下側の板状部材103bの開口103dを通過した綴じ刃104の先端部分を受け入れ可能な深さであって、前後方向スライド本体部106aのスライド量に対応する前後方向の長さを備えた凹所101eが形成されている。このため、前後方向スライド本体部106aのスライド移動に応じて土台部103が前後方向に移動する場合であっても、土台部103の下方に、綴じ刃104の先端部分を受け入れ可能な深さの空間が凹所101eにより確保されることになる。
昇降部102は、略箱状態を呈しており、前後方向スライド本体部106aの前面側に、昇降可能に設けられている。より詳細に、昇降部102は、前後方向スライド本体部106aに対して、図示を省略したレール等のスライド機構により、昇降可能に取り付けられている。また、スライド機構にはバネ等による付勢手段が設けられており、昇降部102は、付勢手段によって、前後方向スライド本体部106aの前面側上部に位置するように付勢された状態を維持する構成になっている。
昇降部102の上部には、コ字状アーム部202に設けられた連結軸204と係合する駆動連結部102aが設けられている。駆動連結部102aは、左右方向に貫設された凹状溝であって、側方視で⊃字状に形成されている。綴じ機構カートリッジ100が綴じ装置本体200の収納部201に収納されると、連結軸204が、凹状溝の前側開口を通って駆動連結部102aの内部へと案内される構造になっている。また、駆動連結部102aは、側方視で⊃字状の凹状溝によって形成されているため、連結軸204が駆動連結部102aの内部に案内された場合には、駆動連結部102a(凹状溝)の上面あるいは下面が連結軸204に当接することが可能となっている。このため、連結軸204が駆動連結部102aに係合された状態で上下方向に昇降移動する場合には、昇降部102も上下に昇降移動する構造になっている。
また、昇降部102の底面には、綴じ部104が設けられている。綴じ部104は、ステッチング用の切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとの2つの綴じ刃により概略構成されている。切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとは、下方へと刃先が臨むようにして、昇降部102の底面に取り付けられる。切り抜き刃104aは、紙束を貫通することにより、紙束の一部をU字状に切り抜くと共に、U字状に切り抜かれた紙片を引き抜き刃104b側へと折り曲げる役割を有している。一方で、引き抜き刃104bは、紙束を貫通することにより、U字に切り抜かれる紙片の根元部分(U字の紙片の切り抜かれていない部分)の近傍位置にI字状の切り込みを入れると共に、切り抜き刃104aにより引き抜き刃104b側へと折り曲げられたU字状の紙片の先端部分(舌部)を刃先に引っ掛ける役割を有している。また、引き抜き刃104bは、引き抜き刃104bが紙束から引き抜かれる際に、刃先に引っ掛けられた紙片の先端部分を、I字状の切り込み部分に誘導して紙束の裏面から表面へと引っ張り出す役割を有している。
[綴じ機構カートリッジの動作]
上述した綴じ機構カートリッジ100を、綴じ装置本体200に装着すると、綴じ装置本体200が、綴じ機構カートリッジ100の底面に設けられた突起部108に基づいて、綴じ機構カートリッジ100の種類を判断し、綴じ装置本体200が設置されたシート処理装置10の制御部(CPU)へ伝達する。シート処理装置10では、綴じ機構カートリッジ100の土台部103に(より詳細には、土台部103における2枚の板状部材103a、103bの間に)紙束が差し込まれたことを検出した場合に、伝達された綴じ機構カートリッジ100の種類に応じて、綴じ装置本体200のモータ212に対する回転駆動制御を行う。
モータ212が回転駆動されると、モータ212の回転駆動に応じてテーブル駆動カム220が回転し、テーブル駆動カム220の外周に当接するローラ222aを介して、第1テーブルリンク222が略下方向へと移動される。第1テーブルリンク222が略下方向へと移動されることにより、第1テーブルリンク222に係合される第2テーブルリンク223が駆動軸223bを回転軸として前側端部を下方向へと押し下げる動作を行う。第2テーブルリンク223は、コ字状アーム部202における側部側のアームの一部を担っているため、第2テーブルリンク223の前側端部が下方向へと押し下げられると、図4(b)(d)に示すように、コ字状アーム部202における連結軸204が下方向へと押し下げられることになり、連結軸204に係合する駆動連結部102aを介して、綴じ機構カートリッジ100の昇降部102が下方向へと押し下げられて降下する。
昇降部102が降下すると、昇降部102の底面に設けられた切り抜き刃104aと引き抜き刃104bも、土台部103の2枚の板状部材103a、103bの間に差し込まれた紙束に向かって降下することになる。2枚の板状部材103a、103bには、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとを上下動させるための開口103c、103dが設けられているため、昇降部102が降下すると、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが開口103c、103dを通過して紙束を貫通すると共に、昇降部102の底面が上側の板状部材103aの上面に当接した状態となる。このようにして、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが紙束を貫通することにより、紙束がU字状に切り抜かれると共に、I字状の切り込み部が形成され、切り抜き刃104aにより折り曲げられたU字状の紙片の先端部分が、引き抜き刃104bの刃先に引っ掛けられる。
その後、モータ212の回転駆動によって、テーブル駆動カム220が回転して、第1テーブルリンク222が上昇するのに伴って、第2テーブルリンク223の前側端部が上方向へと押し上げられる。このようにして、第2テーブルリンク223の前側端部が押し上げられることにより、図4(a)(c)に示すように、昇降部102も上側に押し上げられて上昇することになる。昇降部102が上昇すると、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが紙束から引き抜かれると共に、U字状の紙片の先端がI字状の切り込み部において裏面側から表面側へと引っ張り出されて、紙束がU字状の紙片により綴じられることになる。このため、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが設けられた綴じ機構カートリッジ100を用いることにより、ステープルを用いることなくステッチングにより紙束を綴じることが可能になる。
以上説明したように、実施の形態1に係る綴じ機構カートリッジ100では、綴じ装置本体200の収納部201に本体部101が着脱可能に保持され、この本体部101に昇降部102および土台部103が設けられると共に、昇降部102にステープルを用いることなく紙束を綴じるための綴じ部104が設けられている。このようにして、綴じ機構カートリッジ100を構成することにより、ステープルカートリッジ300を着脱することが可能な綴じ装置本体200に対して、ステープルを用いずに紙束を綴じる綴じ手段を簡単に取り付けることが可能になる。このため、ステープルを用いて綴じ処理を行う綴じ装置本体200に対して、綴じ装置本体200の駆動機構(ステープラ駆動機構280、テーブル可動機構210およびクリンチ機構250)等に改良等行うことなく、ステープルを用いずに紙束を綴じる綴じ機構を、容易かつ新しく追加することが可能になる。また、綴じ装置本体200に対して、実施の形態1に係る綴じ機構カートリッジ100をセットすることにより、ステッチング方法による綴じ機構、半抜き綴じによる綴じ機構、凹凸綴じによる綴じ機構等の様々な種類の綴じ機構を、簡単に追加することができる。
さらに、ステープルを用いず綴じ処理を行う綴じ機構を、綴じ機構カートリッジ100の着脱によって簡単に追加することができるので、綴じ機構毎に異なる綴じ装置本体200を、シート処理装置10の内部に複数種類を設ける場合に比べて、シート処理装置10の小型化や、部品点数の低減等を図ることが容易となり、装置の大型化やコスト上昇を抑えることが可能になる。
また、ステープルを用いない綴じ機能は、綴じ機構カートリッジ100における昇降部102、土台部103および綴じ部(綴じ刃)104の働きによって実現されている。このため、昇降部102、土台部103または綴じ部104のいずれかに不具合等が生じた場合には、綴じ機構カートリッジ100そのものを交換することにより、簡単に綴じ機能を回復することが可能になる。また、ステープルを用いない綴じ機構の不具合等に対して、綴じ装置本体200等を修理等する必要がないので、ステープルを用いない綴じ機能の回復を、迅速かつ低コストで実現することが可能になる。
さらに、実施の形態1に係る綴じ機構カートリッジ100では、綴じ部104が設けられた昇降部102が、綴じ装置本体200のテーブル可動機構210に連動して紙束方向へと昇降する構造になっている。このように、綴じ装置本体200のテーブル可動機構210を利用することにより、昇降部102および綴じ部104を昇降させることができるので、綴じ機構カートリッジ100そのものに、昇降部102および綴じ部104を駆動させるためのモータ等を設ける必要がない。このため、綴じ機構カートリッジ100の構造を簡易にすることができると共に、綴じ機構カートリッジ100のコスト低減を図ることが可能になる。
また、実施の形態1に係る綴じ機構カートリッジ100は、前後方向スライド機構部106によって、昇降部102および土台部103の前後方向のスライド移動量を調整することができる。このため、綴じ機構カートリッジ100が綴じ装置本体200から取り外された状態において、ユーザが位置調節ねじ109のつまみを回転させて綴じ部104の綴じ刃位置を前後に調整することによって、ユーザが目視等で確認しながら、綴じ刃による紙束への貫通位置を容易に調整することができる。
ここで、ステープルを用いない綴じ機構により綴じ処理が行われた紙束、例えば、ステッチング方法による綴じ処理や、半抜き綴じによる綴じ処理等が行われた紙束では、U字状の切り込み部が紙束の端部から紙面内側寄りに形成されると、紙面において印字可能なスペースが狭くなってしまい、紙面の視認性・利便性を大きく損なうおそれが生ずる。また、U字状の切り込み部が紙束の端部寄りに形成されると、紙面の視認性は確保され易くなる一方で、紙束の端部に切り込みによる綴じ孔が形成されることになるので、紙束の綴じ力が弱くなってしまうおそれがある。このため、ステープルを用いない綴じ方法による綴じ処理では、紙束に対する綴じ部分の綴じ位置により綴じ力および利便性が大きく左右されることになる。
実施の形態1に係る綴じ機構カートリッジ100では、ユーザが位置調節ねじ109のつまみを回転させて綴じ部104の綴じ刃位置を前後に調整することによって、ユーザ自身が目視によって綴じ刃による貫通位置を確認しながら、スライド量を調整することができるので、ユーザの感覚に沿った細やかな位置調整を行うことが可能になる。このため、綴じ部分の綴じ力および利便性等に対するユーザの要望を反映させた綴じ位置に、綴じ刃による紙束の貫通位置を調整・設定することが可能になる。
以上、前後方向スライド機構部106を備えた綴じ機構カートリッジ100について説明を行ったが、本実施の形態に係る綴じ機構カートリッジ100のスライド機構部は、前後方向にスライドさせる機構には限定されない。
[左右方向スライド機構を備えた綴じ機構カートリッジ]
図7〜図8は、左右方向にスライド移動させる左右方向スライド機構部を備えた綴じ機構カートリッジの概略構成を示した図である。図7(a)および図8(a)(c)(e)は、綴じ機構カートリッジの綴じ刃が左側に位置した状態を示し、図7(b)および図8(b)(d)(f)は、綴じ機構カートリッジの綴じ刃が右側に位置した状態を示している。また、左右方向スライド機構部を備えた綴じ機構カートリッジにおいても、様々な綴じ方法を備えた綴じ部を設けることができるが、図7および図8では、一例としてステッチング方法による綴じ機構を備えた綴じ機構カートリッジを示している。
綴じ機構カートリッジ120は、本体部101と、昇降部102と、土台部103と、綴じ部104と、左右方向スライド機構部121と、左右方向スライド規制部とを備えている。本体部101と、昇降部102と、土台部103と、綴じ部104とは、上述した前後方向スライド機構部106を備える綴じ機構カートリッジ100と同じ構成であるため、同一符号を用いるものとし、ここでの説明は省略する。また、左右方向スライド規制部には、上述した綴じ位置固定ねじ107と同じ固定ねじが用いられている。このため、前後方向スライド規制部における綴じ位置固定ねじ107の説明も、ここでは省略する。
左右方向スライド機構部121は、本体部101の前面部分に設けられている。左右方向スライド機構部121は、箱形状を呈する左右方向スライド本体部121aにより構成されており、左右方向スライド本体部121aの前側下部には、土台部103が一体に形成されている。本体部101の基部101aには、図8(c)(d)に示すように、左右方向スライド本体部121aの後側部分を受け入れ可能な収納空間121sが形成されている。また、収納空間121sの左右方向の幅寸法は、左右方向スライド本体部121aの幅寸法よりも長く規定されており、収納空間121sに左右方向スライド本体部121aの後側部分が受け入れられた状態において、左右方向スライド本体部121aを左右方向に移動させることが可能になっている。また、本体部101における収納空間121sの天井面101dには、調節孔が上下に貫設されており、この調節孔に、前後方向スライド機構部106に用いられた調節ねじと同じ綴じ位置調節ねじ109が、自由回転可能に取り付けられる。
また、左右方向スライド本体部121aが収納空間121sに収納された状態において、調節孔の開口から臨む左右方向スライド本体部121aの上面部分には、凹所部121bが形成されている。凹所部121bの前側面には、綴じ位置調節ねじ109のピニオンギアに噛合するラックが形成されている。凹所部121bの前後方向の幅は、ラックに噛合した綴じ位置調節ねじ109の先端部109cを収納可能かつ回転可能な寸法に規定されており、また、凹所部121bの左右方向の寸法は、左右方向スライド本体部121aのスライド量に対応する寸法に規定されている。
ユーザが綴じ位置調節ねじ109のつまみを摘まんで綴じ位置調節ねじ109を右又は左に回転させることにより、綴じ位置調節ねじ109の先端部109cにおけるピニオンギアと噛合したラックが、左右方向に送り出されることになる。このため、つまみの回転操作に伴って、左右方向スライド本体部121aを、紙束の縁に沿うようにして、左右方向へスライド移動させることが可能になる。
また、収納空間121sの天井面101dであって、調節孔の近傍には、上述した綴じ位置固定ねじ107と螺合する固定孔が形成されている。ユーザが、頭部107aのつまみを回して綴じ位置固定ねじ107を回転させて、ねじ部107bの先端を左右方向スライド本体部121aの上面に当接させることにより、左右方向スライド規制部による規制が行われた状態となる。また、綴じ位置固定ねじ107を回転させて、ねじ部107bの先端を左右方向スライド本体部121aとの当接から退避させることにより、左右方向スライド規制部による規制が解除された状態となる。
このようにして、綴じ機構カートリッジ120に左右方向スライド機構部121および左右方向スライド規制部を設けることにより、昇降部102および土台部103の左右方向のスライド移動量を調整することができる。このため、綴じ機構カートリッジ120が綴じ装置本体200から取り外された状態において、ユーザが位置調節ねじ109のつまみを回転させて綴じ部104の綴じ刃位置を左右に調整することによって、ユーザが目視等で確認しながら、綴じ刃による紙束への貫通位置を容易に調整することができる。
また、左右方向スライド機構部121を備えた綴じ機構カートリッジ120では、ユーザが位置調節ねじ109のつまみを回転させて綴じ部104の綴じ刃位置を左右に調整することによって、ユーザ自身が目視により綴じ刃による貫通位置を確認しながらスライド量を調整することができるので、ユーザの感覚に沿った細やかな位置調整を行うことが可能になる。このため、綴じ部分の綴じ力および利便性等に対するユーザの要望を反映させた綴じ位置に、綴じ刃による紙束の貫通位置を調整・設定することが可能になる。
[角度調整機構を備えた綴じ機構カートリッジ]
また、実施の形態1に係る綴じ機構カートリッジは、前後方向スライド機構部106あるいは左右方向スライド機構部121が設けられたカートリッジだけには限定されない。前後方向あるいは左右方向にスライドされる機構だけでなく、綴じ刃の角度を調整することが可能な角度調整機構を、綴じ機構カートリッジが備えるものであってもよい。
図9(a)は、角度調整機構を備えた綴じ機構カートリッジの概略構成を示した斜視図であり、図9(b)は、角度調整機構部および回転規制部を示した展開斜視図である。また、図10(b)(e)は、図10(a)(d)示した綴じ機構カートリッジおよび綴じ装置本体に対して、綴じ部の角度を45度回転させた状態を示した図であり、図10(c)(f)は、図10(a)(d)示した綴じ機構カートリッジおよび綴じ装置本体に対して、綴じ部の角度を90度回転させた状態を示した図である。また、角度調整機構を備えた綴じ機構カートリッジにおいても、様々な綴じ方法を備えた綴じ部を設けることができるが、図9および図10では、一例としてステッチング用の綴じ部104を備えた綴じ機構カートリッジ140を示している。
綴じ機構カートリッジ140は、図9(a)に示すように、本体部101と、綴じ部104と、角度調整機構部145と、回転規制部146とを備えている。ここで、本体部101と、綴じ部104とは、上述した前後方向スライド機構部106、あるいは、左右方向スライド機構部121を備える綴じ機構カートリッジ100、120と同じ機能を奏するものであり、ここでの説明を省略する。
綴じ機構カートリッジ140における角度調整機構部145は、図9(b)に示すように、土台部143と、昇降部142と、スライダ軸148と、綴じ位置固定ねじ149と、押さえ板152により概略構成されている。また、スライダ軸148と、綴じ位置固定ねじ149と、押さえ板152とは、回転規制部146にも該当する。
土台部143は、円柱形状を呈する下部土台部143bと、下部土台部143bの上面側に一定の間隙を設けて水平に設置される円盤プレート部143aとを有している。円盤プレート部143aは、下部土台部143bの上面端部に形成されたスライダ軸受部143cを介して、下部土台部143bに取り付けられている。
また、綴じ機構カートリッジ140には、本体部101の前側面が、上下方向に向けて半円柱状に削られると共に、この円柱形状に対応する円柱状凹所150が、本体部101の前側下部に前方へ突出形成された土台支持部101cに設けられている。円柱状凹所150における平面円の直径と、削られた半円柱状部分における水平円の直径とは、下部土台部143bの円柱形状における平面円の直径に比べて、極僅かに大きい寸法となっている。このため、土台支持部101cの円柱状凹所150に、下部土台部143bを収納することが可能になっている。
また、円柱状凹所150の深さは、下部土台部143bが円柱状凹所150に収納された状態において、土台支持部101cの上面(円柱状凹所150の周縁部の上面)と下部土台部143bの上面とが面一になるように設計されている。この面一となる平面(土台支持部101cの上面および下部土台部143bの上面)に対して、水平方向から紙束が挿入されると、この土台支持部101cおよび下部土台部143bによって、紙束が下面より支持されることになる。
また、土台部143は、下部土台部143bが円柱状凹所150に収納された状態において、回転することが可能になっている。円柱状凹所150に円柱形状を呈する下部土台部143bが収納されるため、円柱状凹所150内の側壁に沿って回転することが可能であるが、この回転を円滑にするために、下部土台部143bを回転させるための回転プレート等を円柱状凹所150の底面に設置してもよい。回転プレート等を設置することによって、下部土台部143bを回転させる場合に、引っ掛かり等が生ずることなく円滑に回転させることが可能になる。
また、土台部143の円盤プレート部143aには、綴じ部104の綴じ刃を上下動させるための開口143dが形成されている。また、下部土台部143bにも、円盤プレート部143aの開口143dを通過した綴じ部104の先端部分を受け入れ可能な深さの凹所空間143eが形成されている。下部土台部143bは、図9(b)に示すように、円柱形状を呈しており、ある程度の厚みを備えている。このため、角度調整機構部145を備えた綴じ機構カートリッジ140では、綴じ部104の先端を受け入れ可能な凹所空間143eが、土台支持部101cではなく、下部土台部143bに形成される。
下部土台部143bのスライダ軸受部143cには、スライダ軸148の先端を嵌め込むことができるように、矩形状の凹部が形成されている。スライダ軸148は、矩形断面を有する棒状体であり、この下端部148aが、スライダ軸受部143cに嵌入される。また、スライダ軸148の上端面には、綴じ位置固定ねじ149のねじ脚149bと螺合するねじ穴148bが形成されている。
昇降部142は、円盤プレート部143aと同じ直径からなる円柱形状を呈しており、昇降部142の外周上部には、外周を一周するくびれ部142aが形成されている。くびれ部142aは、角度調整機構部145を備えた綴じ機構カートリッジ140における駆動連結部としての役割を有している。図10(d)(e)(f)に示すように、くびれ部142aに、コ字状アーム部202に設けられる連結軸204が係合することによって、昇降部142の昇降が行われることになる。昇降部142の外周面には、上下方向に向けて矩形状の筒部材142bが固設されている。筒部材142bの中空内部にスライダ軸148を貫通させることによって、昇降部142がスライダ軸148にガイドされて昇降移動されることになる。また、昇降部142の底面には、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとからなる綴じ部104が、土台部143を臨むようにして設けられている。
なお、昇降部142は、図示を省略したバネ部材等によって上方向へ付勢された状態となっている。このため、昇降部142は、筒部材142bにスライダ軸148が貫通された状態において、スライダ軸148の上側位置を維持した状態となる。この位置に昇降部142が維持されることによって、綴じ機構カートリッジ140を綴じ装置本体200に取り付けた際に、昇降部142の上下位置を調整しなくても、連結軸204が昇降部142のくびれ部142aに係合することになる。
押さえ板152は、昇降部142の上面の約半分を覆う半円形状部分152aと、昇降部142の上面の残り半分を覆うと共に、本体部101の前側部において削られた半円柱状部分の上側の開放された部分を覆う長方形状部分152bとからなる一枚板により構成されている。本体部101の前側上部には、この押さえ板152が填め込まれる段差部が形成されており、押さえ板152が填め込まれることによって、本体部101の上面と押さえ板152の上面とが面一になる。押さえ板152が本体部101に填め込まれると、押さえ板152は、簡単に外れないように本体部101に固定されることになる。
また、押さえ板152には、円弧形状のガイド孔152cが設けられている。ガイド孔152cは、スライダ軸148が土台部143に取り付けられた状態で、土台部143が回転された際に、スライダ軸148の上端部が移動する位置に沿って設けられている。綴じ位置固定ねじ149は、頭部149aにつまみが設けられたねじ部材であり、押さえ板152の上面側からガイド孔152cを介して、ねじ脚149bをスライダ軸148の上端部のねじ穴148bに螺合させることが可能になっている。ここで、ガイド孔152cの孔径(孔の幅寸法)に比べて、スライダ軸148の上端部の幅の方が幅広となっている。このため、ガイド孔152cに、綴じ位置固定ねじ149のねじ脚149bを通すことは可能であるが、ガイド孔152cに、スライダ軸148を通すことはできない。
角度調整機構部145を備えた綴じ機構カートリッジ140では、上述した角度調整機構部145を本体部101に取り付けることにより、昇降部142、土台部143および綴じ部104を一体にして角度調整することが可能になる。角度調整機構部145を本体部101に取り付ける場合には、まず、土台部143のスライダ軸受部143cにスライダ軸148の下端部148aを嵌入した状態で、土台部143を土台支持部101cの円柱状凹所150内に設置した後に、昇降部142の筒部材142bにスライダ軸148を貫通させ、その後に押さえ板152を本体部101に固設して、最後に、ガイド孔152cを介して綴じ位置固定ねじ149のねじ脚149bをスライダ軸148のねじ穴148bに螺合させる。
このようにして綴じ位置固定ねじ149を締めることによって、綴じ位置固定ねじ149とスライダ軸148とによって押さえ板152を挟み込むことになる。このようにして、押さえ板152を挟み込むことによって、スライダ軸148および綴じ位置固定ねじ149をガイド孔152cに沿って移動させることができなくなるので、スライダ軸148よって筒部材142bを介して位置調整される昇降部142と、スライダ軸受部143cを介して位置調整される土台部143の角度が固定されることになる。また、綴じ位置固定ねじ149とスライダ軸148とによって押さえ板152を挟み込むことによって、角度調整ができなくなり、昇降部142等の回転が規制されることになるので、スライダ軸148と、綴じ位置固定ねじ149と、押さえ板152とが、回転規制部146としての機能を奏することになる。
一方で、ユーザがつまみを回して綴じ位置固定ねじ149とスライダ軸148との締結を緩めることによって、押さえ板152の挟み込みが解放され、スライダ軸148および綴じ位置固定ねじ149をガイド孔152cに沿って移動させることが可能となる。このため、綴じ位置固定ねじ149をガイド孔152cに沿って移動させることにより、昇降部142、土台部143および綴じ部104の角度を変更することが可能になる。
このようにして、締結が緩んだ状態で綴じ位置固定ねじ149を動かして綴じ部104の綴じ角度調整を行った後に、綴じ位置固定ねじ149を締めて綴じ部104の綴じ角度を固定する。その後、綴じ機構カートリッジ140を綴じ装置本体200の収納部201に収納させることによって、図10(d)(e)(f)に示すように、コ字状アーム部202の連結軸204が、昇降部142のくびれ部142aに填まり込んで、駆動連結部に係合された状態になる。そして、綴じ装置本体200のテーブル可動機構210の動きに伴って、連結軸204が昇降することによって、連結軸204に係合される昇降部142が昇降することになり、綴じ刃104a、104bによって紙束に切り込みが設けられて、ステッチング方法による綴じ処理が行われることになる。
上述した角度調整機構部145を備える綴じ機構カートリッジ140によれば、昇降部142および綴じ刃104a、104bが、本体部101の前側部分に露出した状態で設けられているので、ガイド孔152cに沿って角度調整を行う場合に、綴じ刃104a、104bの角度を目視によって確認することができる。
例えば、ステッチング方法による綴じ処理や、半抜き綴じによる綴じ処理等が行われた紙束では、U字状の切り込み部におけるU字先端の切り込み方向が、紙束における紙面の紙めくり方向と同じ方向である場合に、紙束の綴じ部分がばらばらになり易くなり、紙束の綴じ力が弱くなる傾向がある。一方で、U字状の切り込み部におけるU字先端の切り込み方向が、紙束における紙面の紙めくり方向と直交する場合には、紙束の綴じ部分がばらばらになり難く、紙束の綴じ力が比較的強く保持される傾向がある。このため、ステープルを用いないで紙束の綴じ処理を行う場合には、紙束に対する綴じ角度の違いによって、紙束の綴じ力に大きな変化が生じるおそれがある。
このため、綴じ機構カートリッジ140に角度調整機構部145を設けることにより、ユーザが目視等で確認しながら、綴じ角度を細かく調整することができ、綴じ部分の綴じ力等に対するユーザの要望を反映させた角度に、綴じ刃104a、104bによる紙束の貫通位置の角度を調整・設定することが可能になる。
以上、綴じ装置本体200のテーブル可動機構210を利用して綴じ処理を行う綴じ機構カートリッジに関して、前後方向スライド機構部106を備えた綴じ機構カートリッジ100と、左右方向スライド機構部121を備えた綴じ機構カートリッジ120と、角度調整機構部145を備えた綴じ機構カートリッジ140との3種類の綴じ機構カートリッジについて説明を行った。しかしながら、綴じ部104の位置調整等を行う綴じ機構カートリッジは、前後方向スライド機構部106、左右方向スライド機構部121および角度調整機構部145のいずれか1つの機構だけが設けられたものには限定されない。
例えば、前後方向スライド機構部106、左右方向スライド機構部121および角度調整機構部145のいずれか2つ、あるいは全ての機構を綴じ機構カートリッジに設けることも可能である。例えば、綴じ機構カートリッジに対して、前後方向スライド機構部106と左右方向スライド機構部121とを設けることによって、綴じ刃を前後左右方向に移動させて位置調整することが可能となる。また、綴じ機構カートリッジに対して、前後方向スライド機構部106と角度調整機構部145とを設けることによって、綴じ刃の位置を前後方向に移動させることができるだけでなく、綴じ刃の角度を調整することが可能になる。さらに、綴じ機構カートリッジに対して、左右方向スライド機構部121と角度調整機構部145とを設けることによって、綴じ刃の位置を左右方向に移動させることができ、さらに、綴じ刃の角度を調整することが可能になる。そして、綴じ機構カートリッジに対して、前後方向スライド機構部106と左右方向スライド機構部121と角度調整機構部145とを設けることによって、綴じ刃の位置を前後左右方向に移動させることができるだけでなく、綴じ刃の角度を調整することが可能になる。
[前後方向スライド機構部、左右方向スライド機構部又は角度調整機構部を備えない綴じ機構カートリッジ]
また、綴じ機構カートリッジは、必ずしも前後方向あるいは左右方向のスライド機構や角度調整機構を備えたものには限定されず、スライド機構部106、121および角度調整機構部145を備えていないものであってもよい。
図11(a)(b)は、スライド機構部106、121および角度調整機構部145を備えていない綴じ機構カートリッジを示した斜視図である。綴じ機構カートリッジ165(165a、165b)は、本体部101の前面側に、昇降部160が上下方向に昇降可能に取り付けられている。昇降部160は、図示を省略したレール等のスライド機構によって、本体部101に昇降可能に取り付けられている。昇降部160は、スライド機構に設けられるバネ等の付勢手段によって、本体部101の前面側上部に位置するように付勢されている。また、本体部101の前側下部には、土台部161および土台部支持部162が形成されている。
昇降部160の上部に設けられる駆動連結部160aに連結軸204が係合された状態で、コ字状アーム部202が昇降動作されると、昇降部160の底面に設けられる綴じ部104の綴じ刃104a、104bが、土台部161の開口161aを介して紙束に圧接して、綴じ処理が行われる。
また、綴じ機構カートリッジ165に設けられる綴じ刃104a、104bの大きさや、土台部161における開口161aの大きさ、土台部161と土台部支持部162との間隙の高さ幅等を変更・調整することによって、ステープルを用いない綴じ方法により綴じ処理を行うことが可能な紙束の枚数等を変更・調整することも可能である。図11(a)に示す綴じ機構カートリッジ165aの綴じ部(綴じ刃)104の大きさよりも、図11(b)に示す綴じ機構カートリッジ165bの綴じ部(綴じ刃)104の大きさの方が明らかに大きく、図11(a)に示す土台部161と土台部支持部162との間隙よりも、図11(b)に示す土台部161と土台部支持部162との間隙の方が明らかに大きい。このため、図11(b)に示す綴じ機構カートリッジ165bの方が、図11(a)に示す綴じ機構カートリッジ165aよりも、多くの枚数を一度にステッチングにより綴じることが可能である。
[複数の綴じ機構を備えた綴じ機構カートリッジ]
また、上述したように、昇降部160に設けられる綴じ部104として、ステッチング方法による綴じ機構や、半抜き綴じ方法による綴じ機構や、凹凸綴じ方法による綴じ機構などの綴じ部を、綴じ機構カートリッジ毎にそれぞれ別々に設けることによって、綴じ機構カートリッジの交換により簡単に綴じ方法を変更することができる。この綴じ機構は、必ずしも1つの綴じ機構カートリッジに1種類ずつ設置される構成には限定されず、1つの綴じ機構カートリッジに複数種類の綴じ機構が設置される構成とすることも可能である。
既に説明したように、テーブル可動機構210を利用した綴じ機構カートリッジでは、コ字状アーム部202の連結軸204に連結した昇降部160が昇降することにより綴じ処理を行う構成となっている。このため、図12(a)に示すように、綴じ機構カートリッジの一方(例えば前側)にステッチングによる綴じ機構166を設けて、図12(b)に示すように、他方(例えば後ろ側)に凹凸綴じによる綴じ機構167を設けることも可能である。このように前後に異なる綴じ機構を設ける場合であっても、綴じ装置本体200の収納部201に綴じ機構カートリッジを収納させる方向を前後で変えることにより、それぞれの綴じ機構に基づく綴じ処理を行うことができる。例えば、ステッチング方法による綴じ機構が設けられる部分を前側にして綴じ装置本体200に綴じ機構カートリッジを収納させることにより、ステッチングによる綴じ処理を行うことが可能となり、凹凸綴じによる綴じ機構が設けられる部分を前側にして綴じ装置本体200に綴じ機構カートリッジを収納させることにより、凹凸綴じによる綴じ処理を行うことが可能となる。
その他、一方に、図12(c)に示すようなステープルカートリッジ168を設けて、他方に、図12(d)に示すようなステッチングによる綴じ機構166を設けることにより、収納される向きに応じて、ステープルによる綴じ処理とステッチングによる綴じ処理とを選択的に選んで実現することが可能となる。その他、ステープルによる綴じ機構、ステッチングによる綴じ機構、半抜き綴じによる綴じ機構、凹凸綴じによる綴じ機構、紙針による綴じ機構、クリップによる綴じ機構等のうち、いずれか2つの綴じ機構を選んで前後方向にそれぞれ異なる綴じ機構を設けることにより、1つの綴じ機構カートリッジにおいて複数の綴じ方法を実現することが可能になる。
[実施の形態2]
実施の形態1に係る綴じ機構カートリッジ100、120、140、165では、綴じ装置本体200の駆動機構のうち、テーブル可動機構210を利用して綴じ処理が行われる場合について説明を行った。しかしながら綴じ機構カートリッジにおける綴じ処理は、必ずしもテーブル可動機構210に連動して行われる場合には限定されず、他の可動機構部を利用して綴じ処理を行うものであってもよい。実施の形態2に係る綴じ機構カートリッジでは、テーブル可動機構210だけでなく、クリンチ機構250におけるクリンチ動作にも連動して昇降部の綴じ部を紙束に圧接させる場合について説明する。
[綴じ装置本体のクリンチ機構]
図13(a)は、クリンチ機構を備えた綴じ装置本体と、綴じ機構カートリッジと示した斜視図であり、図13(b)は綴じ装置本体の正面図を示し、図13(c)は側面図を示している。また、図14(a)〜(f)はクリンチ機構の構成を示した概略図であって、(a)(b)はテーブル可動機構が駆動する前の状態、(c)(d)はテーブル可動機構が駆動したときの状態、(e)(f)はクリンチ機構が駆動したときの状態を示している。また、実施の形態2における綴じ機構カートリッジとして、既に図11を示して説明した綴じ機構カートリッジ165を一例として説明を行う。
綴じ装置本体200には、クリンチ機構250が設けられている。クリンチ機構250は、図14に示すように、クリンチカム260と、クリンチレバー262と、クリンチャアーム263とを備えている。クリンチカム260は、略楕円形状の異径円盤により形成されており、異径円盤の中心よりも外側寄りに偏心した位置に回転軸260aが設けられている。この回転軸260aは、駆動ギア215の回転に伴って回転される構造となっている。クリンチレバー262は、下部に設けられた軸部262aを揺動軸として、斜め上側端部262cを一定の角度だけ揺動させることが可能となっている。クリンチレバー262の中央部には、突起軸が設けられており、突起軸に設けられたローラ262bを介してクリンチカム260の外周と当接された状態になっている。
クリンチャアーム263は、略へ字状に形成されたアーム部材であって、屈曲部近傍に設けられる軸部263aを揺動軸として揺動可能な構造となっている。また、クリンチャアーム263の後側端部263bは、クリンチレバー262の上側端部262cに当接する構造となっており、クリンチレバー262の上側端部262cが揺動されると、この揺動に伴ってクリンチャアーム263の後側端部263bが前後方向へと揺動され、クリンチャアーム263の後側端部263bの揺動に伴って、クリンチャアーム263の前側端部263cが上下に昇降する構造となっている。
クリンチャアーム263の前側端部263cには、コ字状アーム部202の前側正面に設けられるクリンチャ270が連結されている。テーブル可動機構210によりテーブル部211が一番下側まで降下した状態(図14(c)(d)参照)において、クリンチャアーム263の前側端部263cが降下する構造となっており、クリンチャアーム263の前側端部263cが降下することによって、図14(e)(f)に示すように、クリンチャ270がステープルの針脚を紙面方向へと押し曲げる構造となっている。
ここで、クリンチャアーム263には、連結軸204が設けられており、綴じ機構カートリッジ165が綴じ装置本体200の収納部201に収納された場合には、綴じ機構カートリッジ165の駆動連結部160aに連結軸204が連結される。このため、クリンチャアーム263の前側端部263cが昇降した場合には、綴じ機構カートリッジ165の昇降部160も連動して昇降することになる。
[クリンチ機構を利用した綴じ機構カートリッジの動作]
綴じ装置本体200に綴じ機構カートリッジ165が取り付けられたシート処理装置10では、綴じ機構カートリッジ165の土台部161と土台部支持部162との間に紙束が差し込まれた場合に、綴じ装置本体200のモータ212に対する回転駆動制御を行う。
モータ212が回転駆動されると、図4(c)(d)を示して既に説明したように、モータ212の回転駆動に応じてテーブル可動機構210のテーブル駆動カム220が回転し、第1テーブルリンク222および第2テーブルリンク223が駆動されて、クリンチャアーム263の連結軸204が下方向へと押し下げられる。そして、連結軸204に係合する駆動連結部160aを介して、図14(c)(d)に示すように、綴じ機構カートリッジ165の昇降部160が下方向へと押し下げられて降下する。
昇降部160が降下すると、昇降部160の底面に設けられた綴じ部104の切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが、土台部161と土台部支持部162との間に差し込まれた紙束に向かって降下して、紙束がU字状に切り抜かれると共に、I字状の切り込み部が形成される。
さらに、クリンチャアーム263により昇降部160が降下した状態において、図14(e)(f)に示すように、クリンチカム260の回転によってクリンチレバー262の上側端部262cが時計回り方向に回転されて、クリンチャアーム263の後側端部263bが後方向へと押し動かされ、クリンチャアーム263の後側端部263bの移動に伴って、クリンチャアーム263の前側端部263cが降下する。このようにしてクリンチャアーム263の前側端部263cが降下すると、昇降部160における切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとをさらに紙束方向へと押し下げるので、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが、より紙束に切り込まれることになる。また、クリンチャアーム263の前側端部263cの降下に伴って、クリンチャ270が可動することになる。
そして、モータ212の回転駆動に伴ってクリンチカム260が回転することにより、クリンチレバー262の上側端部262cが戻る方向(反時計回り方向)へと回転され、クリンチャアーム263の後側端部263bが前方向へと戻されて、クリンチャアーム263の前側端部263cが上昇する。このようにしてクリンチャアーム263の前側端部263cが上昇することにより、昇降部160の切り抜き刃104aおよび引き抜き刃104bにおける紙束方向への押し下げが解除されて、昇降部160が上昇する。
その後、モータ212の回転駆動によって、テーブル可動機構210のテーブル駆動カム220が回転して、第1テーブルリンク222が上昇し、第2テーブルリンク223の前側端部263cが上方向へと押し上げられて、昇降部160が上昇することになる。昇降部160が上昇すると、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが紙束から引き抜かれると共に、U字状の紙片の先端がI字状の切り込み部において裏面側から表面側へと引っ張り出されて、紙束がU字状の紙片により綴じられることになり、ステープルを用いないステッチングによる紙束の綴じ処理が完了することになる。
このように、クリンチ機構250を用いて綴じ機構カートリッジ165の綴じ処理を行う構成であっても、綴じ装置本体200のクリンチ機構250等を利用することにより、綴じ機構カートリッジ165の昇降部160および綴じ部104を昇降駆動させることができるので、綴じ機構カートリッジ165そのものに、昇降部160および綴じ部104を駆動させるためのモータ等を設ける必要がない。このため、綴じ機構カートリッジ165の構造を簡易にすることができると共に、綴じ機構カートリッジ165のコスト低減を図ることが可能になる。
[実施の形態3]
実施の形態1に係る綴じ機構カートリッジ100、120、140、165では、綴じ装置本体200の駆動機構のうち、テーブル可動機構210を利用して綴じ処理が行われる場合について説明を行い、実施の形態2に係る綴じ機構カートリッジ165では、クリンチ機構250を利用して綴じ処理が行われる場合について説明を行った。実施の形態3では、綴じ装置本体200におけるステープラ駆動機構280を利用して綴じ処理を行う綴じ機構カートリッジについて説明する。
[綴じ装置本体のステープラ駆動機構]
図15および図16は、綴じ装置本体におけるステープラ駆動機構の構成を示した概略図である。図15(a)は、綴じ装置本体とステープラ駆動機構を利用する綴じ機構カートリッジとを示し、図15(b)は綴じ機構カートリッジの内部構造を示した図である。図16(a)(c)はステープラ駆動機構により昇降部が降下する前の動作状況を示し、(b)(d)はステープラ駆動機構により昇降部が降下したときの動作状況を示している。
綴じ装置本体200は、ステープラ駆動機構280を備えている。ステープラ駆動機構280は、図16(a)(b)に示すように、ドライバカム281と、ドライバリンク282と、ドライバ283と、フォーミングプレート(プレート)284とを備えている。ドライバカム281は、略楕円形状に形成された円盤部材であって、中心よりも偏心した位置に回転軸281aが設けられている。この回転軸281aは、駆動ギア215の回転に伴って回転される構造となっている。ドライバリンク282は、後部寄りに設けられる軸282aを中心にして回動可能に設けられている。ドライバリンク282には、ドライバカム281の周面に当接されるフォロアローラー282bが設けられており、ドライバカム281の回転に応じて、ドライバカム281の周面に当接するフォロアローラー282bが揺動移動されることによって、ドライバリンク282の前側端部282cが上下方向に往復動する構造となっている。ドライバリンク282の前側端部282cには、ドライバ283およびフォーミングプレート284が設けられており、ドライバリンク282の前側端部282cが上下方向に往復動することによって、ドライバ283およびフォーミングプレート284が昇降する構造となっている。
[ステープラ駆動機構に伴って駆動される綴じ機構カートリッジ]
綴じ機構カートリッジ180では、綴じ装置本体200のステープラ駆動機構280に連動して綴じ処理が行われる。綴じ機構カートリッジ180の綴じ部104として、半綴じ機構や、凹凸綴じ機構等の様々な綴じ機構を実現するための綴じ刃を用いることが可能であるが、実施の形態3において説明を行う綴じ機構カートリッジ180では、一例としてステッチング方法による綴じ機構を実現するための切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが綴じ刃として設けられる場合について説明を行う。
綴じ機構カートリッジ180は、図15に示すように、本体部181と、スライダ機構部182と、土台部183と、綴じ部104とを備えている。
本体部181は、略直方体形状を呈する基部181aと、後方上部において後方へと突出形成される把持部181bにより概略構成されている。また、本体部181の前側下部には、水平に設けられた上下2枚の板状部材により構成される土台部183が、本体部181に一体に形成されている。2枚の板状部材には、綴じ部104を上下動させるための開口183aがそれぞれ形成されている。また、土台部183の下側の板状部材の下方には、下側の板状部材を通過した切り抜き刃104aおよび引き抜き刃104bの先端部分を受け入れ可能な深さの空間が形成されている。
スライダ機構部182は、本体部181に対して上下方向スライド可能に設けられる昇降部本体186と、ドライバ283の先端に係合し、ドライバ283に連動して揺動される打込みレバー187と、打込みレバー187の後端部と昇降部本体186の後下部との連結を行う連結リンク188とを有している。
昇降部本体186は、本体部181の前側部より前方に露出される昇降部186aと、本体部181の内部に収納された状態を維持する後部本体部186bとにより構成されており、昇降部186aおよび後部本体部186bが一体となって上下にスライド移動する構造となっている。また、昇降部本体186は、図示を省略したバネ等の付勢手段によって、上側へと付勢された状態となっており、通常は、スライド機構により本体部181の上側に位置する状態を保っている。さらに、昇降部186aの底面には、上述した切り抜き刃104aおよび引き抜き刃104bが綴じ部104の綴じ刃として設けられている。
打込みレバー187は、土台部183の下側の板状部材を通過した切り抜き刃104aおよび引き抜き刃104bの先端部分を受け入れ可能な開口187aが形成された平板状の部材であり、打込みレバー187の前後端部を揺動させるための揺動軸部187bが、略中央部に設けられている。また、打込みレバー187の前側端部には、ドライバ283の先端に係合される係合突起187cが駆動連結部として設けられている。連結リンク188は、打込みレバー187の後端部に連結されると共に、後部本体部186bの後部に連結されている。
[ステープラ駆動機構を利用した綴じ機構カートリッジの動作]
綴じ機構カートリッジ180を綴じ装置本体200の収納部201に収納させた場合には、図16(a)(c)に示すように、打込みレバー187の係合突起187cが、ドライバ283先端の真上位置にセットされる。綴じ装置本体200を備えるシート処理装置10は、綴じ機構カートリッジ180の土台部183における2枚の板状部材の間に紙束が差し込まれた場合に、綴じ装置本体200のモータ212に対する回転駆動制御を行う。
モータ212が回転駆動されると、モータ212の回転駆動に応じてステープラ駆動機構280のドライバカム281が回転し、ドライバカム281の回転に応じてドライバリンク282の前側端部282cが上昇し始めて、フォーミングプレート284およびドライバ283が上昇する。ドライバ283が上昇すると、図16(b)(d)に示すように、ドライバ283の先端に打込みレバー187の係合突起187cが係合して上側へと押し上げられることになる。打込みレバー187の前側端部が押し上げられると、揺動軸部187bを介して打込みレバー187の後部が押し下げられるため、連結リンク188を介して後部本体部186bが押し下げられる。後部本体部186bが押し下げられることによって、昇降部186aが降下すると、昇降部186aの底面に設けられた切り抜き刃104aと引き抜き刃104bが、土台部183の2枚の板状部材の間に差し込まれた紙束に向かって降下して、紙束がU字状に切り抜かれると共に、I字状の切り込み部が形成される。
なお、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bの先端部分が、土台部183の2枚の板状部材に形成された開口183aを通過して土台部183の下側へと進入した場合であっても、土台部183の下方には、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとの先端部分を受け入れ可能な深さの空間が形成されており、さらに、打込みレバー187には、土台部183を通過した切り抜き刃104aおよび引き抜き刃104bの先端部分を受け入れ可能な開口187aが形成されているので、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bの動作が阻害されることはない。
その後、モータ212の回転駆動によって、ステープラ駆動機構280のドライバカム281が回転して、ドライバリンク282の前側端部282cが降下し、フォーミングプレート284およびドライバ283が降下すると、係合突起187cを介してドライバ283により押し上げられていた打込みレバー187の前側端部も下側へ降下することになる。打込みレバー187の前側端部が降下すると、図16(a)(c)に示すように、打込みレバー187の後側端部が連動して上昇すると共に、連結リンク188を介して連結される後部本体部186bが本体部181において上側へとスライド移動して、昇降部186aが上昇することになる。昇降部186aが上昇すると、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが紙束から引き抜かれると共に、U字状の紙片の先端がI字状の切り込み部において裏面側から表面側へと引っ張り出されて、紙束がU字状の紙片により綴じられることになり、ステッチングによる紙束の綴じ処理が完了することになる。
実施の形態3に示すような綴じ機構カートリッジ180を綴じ装置本体200に装着して綴じ処理を行う構成であっても、綴じ装置本体200のステープラ駆動機構280を利用することにより、綴じ機構カートリッジ180の昇降部186aおよび綴じ部104を昇降させることができるので、綴じ機構カートリッジ180そのものに、昇降部186aおよび綴じ部104を駆動させるためのモータ等を設ける必要がない。このため、綴じ機構カートリッジ180の構造を簡易にすることができると共に、綴じ機構カートリッジ180のコスト低減を図ることが可能になる。
なお、実施の形態3に係る綴じ機構カートリッジ180として、図15および図16に示すように、綴じ位置調整あるいは綴じ角度調整を行わない構成のカートリッジを一例として示して説明を行った。しかしながら、綴じ装置本体200のステープラ駆動機構280を利用する綴じ機構カートリッジ180は、必ずしも綴じ位置調整あるいは綴じ角度調整を行わない構成のカートリッジには限定されず、実施の形態1において説明したように、前後方向スライド機構部106、左右方向スライド機構部121または角度調整機構部145のいずれか1つあるいは少なくとも2つ以上の機構を組み合わせることも可能である。このように、綴じ位置の前後方向・左右方向調整、綴じ角度調整を行うことが可能な綴じ機構カートリッジを、綴じ装置本体200のステープラ駆動機構280を利用する綴じ機構カートリッジとして用いることにより、ユーザが目視等で確認しながら、綴じ位置や綴じ角度を細かく調整することができ、綴じ部分の綴じ力等に対するユーザの要望を反映させた位置・角度に、綴じ刃による紙束の綴じ位置および綴じ角度を調整・設定することが可能になる。
[実施の形態4]
実施の形態1〜実施の形態3に係る綴じ機構カートリッジ100、120、140、165、180では、ステープルカートリッジ300に替えて、綴じ装置本体200の収納部201に着脱可能に設けられる綴じ機構カートリッジについて説明を行った。しかしながら、特定の綴じ装置本体では、巻き束ねられたステープルシートを収納すると共に、フォーミングプレートやドライバからなるドライバ機構部が設けられたステープルカートリッジを、着脱可能に保持することができ、ステープルシートがなくなった場合に、ステープルカートリッジを交換することによって、ステープルシートだけでなく、フォーミングプレートやドライバからなるドライバ機構部を一緒に交換することを特徴とするものも存在する。実施の形態4では、ドライバ機構部が設けられたステープルカートリッジに替えて、綴じ装置本体に着脱することが可能な綴じ機構カートリッジについて説明する。
なお、実施の形態4に係る綴じ機構カートリッジにおいても、綴じ機構カートリッジの綴じ部として、半綴じ機構や、凹凸綴じ機構等の様々な綴じ機構を実現するための綴じ刃を用いることが可能であるが、一例としてステッチング方法による綴じ機構を実現するための切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが綴じ部(綴じ刃)104として設けられる場合について説明を行う。
図17および図18(a)は、実施の形態4に係る綴じ装置本体と、綴じ装置本体の収納部に着脱可能に設置されるステープルカートリッジと、ステープルカートリッジに替えて収納部に着脱することが可能な綴じ機構カートリッジとを示した斜視図である。また、図18(b)(d)は、ステープラ駆動機構により綴じ部が上昇する前の状態を示しており、図18(c)(e)は、ステープラ駆動機構により綴じ部が上昇したときの状態を示した図である。
綴じ装置本体400には、実施の形態3で説明したように、ステープラ駆動機構280が設けられている。ステープラ駆動機構280は、図17に示すように、ドライバカム281と、ドライバリンク282とを備えており、実施の形態3においてステープラ駆動機構を構成していたドライバ283と、フォーミングプレート284とは、ステープルカートリッジ350に設けられている。
綴じ装置本体400には、図18(b)(c)に示すように、シート処理装置10の制御により駆動されるモータ212が設けられており、モータ212の出力軸212aには、減速ギア214が噛合されている。モータ212の駆動に応じて減速ギア214が回転されると、減速ギア214の駆動軸に設けられる小径ギア214aを介して駆動ギア215が回転駆動される。駆動ギア215の回転軸には、略楕円形状に形成されたドライバカム281が取り付けられている。駆動ギア215の回転に伴ってドライバカム281が回転すると、図18(d)(e)に示すように、後部寄りに設けられる軸282aを中心にして、ドライバリンク282が揺動されて、ドライバリンク282の前側端部が上下方向に往復動する構造となっている。ドライバリンク282の前側端部には、後述する連結軸353の端部を係合させるための把持溝282dが形成されている。
また、綴じ装置本体400には、テーブル可動機構210が設けられている。テーブル可動機構210の可動により、綴じ装置本体400の上部に設けられるテーブル部410が紙束方向へと下降し、綴じ処理完了後にテーブル部410が上昇する構造となっている。テーブル部410の前側部分には、実施の形態2において説明したクリンチ機構(図示省略)が設けられており、下方より紙束を貫通して打ち出されるステープルの針脚を折り曲げる処理が行われる。一方で、テーブル部410の中央内側部分には、後述する土台部503を収納可能な開口部410aが形成されている。
綴じ装置本体400の前面部分には、図17に示すように、ステープルカートリッジ350あるいは綴じ機構カートリッジ500を収納するための収納部401が形成されている。収納部401には、ドライバリンク282の前側端部を臨む前面開口部402が形成されており、前面開口部402よりステープルカートリッジ350あるいは綴じ機構カートリッジ500を収納することが可能になっている。
ステープルカートリッジ350は、筐体351と、ドライバ駆動部360と、ステープルシート352とを有している。筐体351の内部には、ステープルシート352を収納するための収納空間が形成されており、この収納空間にステープルシート352が収納される。ステープルシート352は、ステープルを連結させてシート状にしたものを巻き束ねたものである。筐体351の前側部分であって、収納されたステープルシート352の先端部分には、連結軸353に取り付けられたドライバ283とフォーミングプレート284とが、ステープルシート352の先端のステープルを下側から打ち出すことが可能な状態で設けられている。連結軸353の両端部は、ステープルカートリッジ350の筐体351の外部へ水平に突出された状態となっており、筐体351の左右側面に設けられる上下方向の長孔に沿って連結軸353を上下動させることによって、ドライバ283とフォーミングプレート284とをステープルシート352の先端に向けて打ち出し、あるいは引き戻すことが可能になっている。ここで、ドライバ駆動部360は、ドライバ283と、フォーミングプレート284と、連結軸353とにより概略構成される。また、筐体351の天井面には、フォーミングプレート284およびドライバ283により紙束に向けて打ち出されるステープルを案内するためのステープル用通過孔351aが設けられている。
綴じ機構カートリッジ500は、筐体501と、昇降部(スライダ)502と、綴じ部104a、104bと、連結軸353と、土台部503とを有している。ステープルカートリッジ350と同様に、筐体501の左右側面には、上下方向に延びる長孔が形成されており、長孔に両端部を突出させるようにして連結軸353が設けられている。連結軸353は、長孔に沿って昇降することが可能になっている。連結軸353には、昇降部502が取り付けられており、連結軸353の昇降に連動して昇降部502が上下方向に移動(昇降)することが可能になっている。また、昇降部502の上面には、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとからなる綴じ刃が取り付けられている。また、筐体501の天井面であって、綴じ刃104a、104bの真上位置には、綴じ刃104a、104bを通過させるための開口が形成されており、昇降部502の昇降動作に連動して綴じ刃104a、104bが上昇した場合には、綴じ刃104a、104bが開口を通過することにより、綴じ刃104a、104bの先端を筐体501の上側に露出させる構造になっている。さらに筐体501の上方には、綴じ刃104a、104bが通過する開口に対向するようにして、土台部503が設けられている。土台部503の内部には、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとの先端部分を収納可能な空間が形成されており、さらに、土台部503の下面には、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが通過可能な開口が形成されている。土台部503は、筐体501の天井面と、土台部503の下面との間に、紙束を差し込み可能な間隙を確保した状態で、筐体501の後部側の天井面に取り付けられている。この間隙に紙束が差し込まれた場合には、土台部503と筐体501との連結部分に紙束の先端が当接されることにより、綴じ刃による綴じ位置が決定されることになる。
このようにして構成される綴じ機構カートリッジ500を、綴じ装置本体400の収納部401に収納すると、ドライバリンク282の把持溝282dに連結軸353の両端部が填まり込んで、ドライバリンク282に連結軸353が係合した状態となる。また、テーブル部410の中央部分に形成された開口部410aの内部に、土台部503の一部が収納された状態となる。このようにして綴じ機構カートリッジ500が綴じ装置本体400に設置された状態で、紙束が、土台部503と筐体501の間に差し入れられると、綴じ装置本体400を備えたシート処理装置10の制御部が、綴じ装置本体400のモータ212に対する回転駆動制御を開始する。
モータ212が回転駆動されると、モータ212の回転駆動に応じてステープラ駆動機構280のドライバカム281が回転し、ドライバカム281の回転に応じてドライバリンク282の前側端部が上昇し始める。ドライバリンク282の前側端部が上昇すると、図18(c)(e)に示すように、ドライバリンク282に係合する連結軸353が上昇し、昇降部502が上昇する。昇降部502が上昇すると、昇降部502の上面に設けられた切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが、筐体501の天井面に形成された開口を通過して紙束に向かって上昇し、紙束がU字状に切り抜かれると共に、I字状の切り込み部が形成される。
なお、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとは、紙束にU字状に切り抜きとI字状の切り込みを形成しつつ、その先端部分を紙束の上面方向へと貫通した状態となるが、土台部503の内部に先端部分を収納可能な空間が形成されており、また、土台部503の下面に、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが通過可能な開口が形成されているので、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとの動作が阻害されることはない。
また、モータ212の回転に応じて、テーブル可動機構210が駆動して、テーブル部410が降下する。テーブル部410の中央部分には、土台部503を収納可能な開口部410aが形成されているため、テーブル部410が降下した場合には、土台部503が開口部410aの内部に収容された状態となる。このように土台部503が開口部410aの内部に収納されるため、ステープラ駆動機構280を利用する綴じ機構カートリッジ500を用いて綴じ処理を行う場合であっても、テーブル部410の可動状態によって綴じ処理に支障が生じることはない。
その後、モータ212の回転駆動によって、ステープラ駆動機構280のドライバカム281が回転して、ドライバリンク282の前側端部が降下すると、図18(b)(d)に示すように、昇降部502も連動して降下する。昇降部502が降下すると、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが紙束から引き抜かれると共に、U字状の紙片の先端がI字状の切り込み部において上面側から下面側へと引っ張り出されて、紙束がU字状の紙片により綴じられることになり、ステッチングによる紙束の綴じ処理が完了することになる。また、モータ212の回転に応じて、テーブル可動機構210が駆動して、テーブル部410が上昇する。
このように、ステープルシート352だけでなく、フォーミングプレート284やドライバ283からなるドライバ駆動部360も交換することが可能なステープルカートリッジ350に替えて、綴じ装置本体400に着脱することが可能な綴じ機構カートリッジ500を用いる場合であっても、綴じ装置本体400のステープラ駆動機構280を利用することにより、綴じ機構カートリッジ500の昇降部502および綴じ部104を昇降させることができるので、綴じ機構カートリッジ500そのものに、昇降部502および綴じ部104を駆動させるためのモータ等を設ける必要がない。このため、綴じ機構カートリッジ500の構造を簡易にすることができると共に、綴じ機構カートリッジ500のコスト低減を図ることが可能になる。
なお、実施の形態4に係る綴じ機構カートリッジ500においても、綴じ位置調整あるいは綴じ角度調整を行わない構成のカートリッジを一例として示して説明を行った。しかしながら、綴じ装置本体400のステープラ駆動機構280を利用する綴じ機構カートリッジ500は、必ずしも綴じ位置調整あるいは綴じ角度調整を行わない構成のカートリッジには限定されず、実施の形態1において説明したように、前後方向スライド機構部106、左右方向スライド機構部121または角度調整機構部145のいずれか1つあるいは少なくとも2つ以上の機構を組み合わせることも可能である。このように、綴じ位置の前後方向・左右方向調整、綴じ角度調整を行うことが可能な綴じ機構カートリッジを、綴じ装置本体400のステープラ駆動機構280を利用する綴じ機構カートリッジとして用いることにより、ユーザが目視等で確認しながら、綴じ位置や綴じ角度を細かく調整することができ、綴じ部分の綴じ力等に対するユーザの要望を反映させた位置・角度に、綴じ刃による紙束の綴じ位置および綴じ角度を調整・設定することが可能になる。
[紙束検出について]
上述したように、綴じ機構カートリッジ100、120、140、165、180、500がシート処理装置10の綴じ装置本体200、400に装着されると、シート処理装置10の制御部は、紙束が綴じ機構カートリッジの土台部に挿入された状態であるか否かを検出し、紙束が綴じ位置まで差し入れられたことを検出された場合に、モータ212の回転駆動を開始させることによって、綴じ処理を実行する。このように、紙束が綴じ位置まで差し入れられたか否かの検出は、いくつかの方法によって実現される。
例えば、用紙位置に対応した複数の検出センサを、綴じ装置本体に設けて、綴じ機構カートリッジの種類に応じて最適な綴じ位置まで紙束が挿入されたことを検出する構成にすることができる。紙束の挿入方向の上流側に第1の用紙検出用センサを設け、さらに下流側に第2の用紙検出センサを設けることによって、紙束がどの位置まで差し入れられているかを検出することが可能である。2つの用紙検出センサにより紙束が検出された場合に、シート処理装置10の制御部は、紙束の先端が最適な綴じ位置まで挿入されたものと判断して、モータ212の回転駆動を実行する。
また、綴じ機構カートリッジに対して、所定の綴じ位置まで紙束が挿入されたことを検出するための部材を設けてもよい。例えば、屈曲形成されたアクチュエータを、綴じ機構カートリッジの側方に対して揺動可能に設ける。このアクチュエータの形状、あるいは、アクチュエータが取り付けられる揺動軸の位置は、各綴じ機構カートリッジに応じて異なっている。
図19(a)(c)(e)は、ステッチング方法による綴じ機構カートリッジ600および綴じ機構カートリッジ600が装着された綴じ装置本体200の一例を示し、図19(b)(d)(f)は、ステープルを用いる方法による綴じ機構カートリッジ(ステープルカートリッジ)610および綴じ機構カートリッジ610が装着された綴じ装置本体200の一例を示している。図19(c)(d)に示すように、ステープルを用いる方法による綴じ機構カートリッジ610では、アクチュエータ611の前端部611a位置が、紙束(用紙)Pの挿入方向の上流側に位置しているのに対して、ステッチング方法による綴じ機構カートリッジ600では、アクチュエータ601の前端部601a位置が、紙束Pの挿入方向の下流側に位置している。ステッチングにより綴じ処理が行われた紙束Pは、U字状の切り込み部分の幅(綴じ孔の幅)がステープルの幅よりも広くなってしまうため、紙束Pの端部から少し内側にステッチングを行うことが好ましい傾向がある。このため、図19(c)〜(f)に示すように、ステッチングによる綴じ機構カートリッジ600におけるアクチュエータ601は、ステープルによる綴じ機構カートリッジ610におけるアクチュエータ611に比べて、奥側(下流側)まで紙束Pが挿入されないと、アクチュエータの揺動が開始されない。
また、それぞれ綴じ機構カートリッジ600、610には、アクチュエータ601、611の後側端部の近傍(綴じ機構カートリッジの把持部近傍)に、アクチュエータ600、610の揺動を検出するセンサ602、612が設けられている。アクチュエータ600、610の後側端部がセンサ602、612の設置位置まで揺動された場合に、センサ602、612による検出が行われる(検出信号がOFFからONに切り替わる)構成になっている。このため、ステッチングによる綴じ機構カートリッジ600では、紙束Pが奥まで差し入れられた場合に、センサ602によって検出が行われて綴じ処理が開始されるのに対して、ステープルによる綴じ機構カートリッジ610では、ステッチングによる綴じ機構カートリッジ600よりも浅く紙束Pが差し入れられた状態で、センサ612による検出が行われて綴じ処理が開始されることになる。
[駆動軸連結駆動タイプの綴じ機構カートリッジ]
実施の形態1〜実施の形態4において説明した綴じ機構カートリッジ100、120、140、165、180、500、600は、ステープルカートリッジ300、350、610に替えて綴じ装置本体200、400の収納部201、401に着脱可能に保持される構成であった。しかしながら、綴じ機構カートリッジは、必ずしも綴じ装置本体200、400の収納部201、401に対して、着脱される構成には限定されない。例えば、綴じ装置本体200、400におけるモータ212の駆動機構を利用して綴じ処理を行うことが可能な構成であれば、実施の形態1〜実施の形態4に示した綴じ機構カートリッジ100、120、140、165、180、500、600のように、綴じ機構カートリッジそのものに駆動用のモータ等を設ける必要がないので、綴じ機構カートリッジの構造を簡易にすることができると共に、綴じ機構カートリッジのコスト低減を図ることが可能になる。
図20および図21は、綴じ装置本体200の側方に綴じ機構カートリッジを収納するためのカートリッジ収納部を並設し、このカートリッジ収納部に綴じ機構カートリッジを収納することにより、綴じ装置本体200の駆動機構を利用して綴じ処理を行う構成を示した図である。カートリッジ収納部650の内部側面には、図20(b)に示すように、綴じ装置本体200の駆動ギアにおける駆動軸の回転を伝達するための装置側連結部290が設けられている。装置側連結部290は、綴じ装置本体200の駆動軸の回転に伴って回転される円盤部材290aと、円盤部材290aの中央部分に設けられる凸部290bとにより構成されている。
一方で、綴じ機構カートリッジ651における本体部659の側面には、図20(a)(b)および図21(a)に示すように、装置側連結部290に係合するカートリッジ側連結部652が設けられている。カートリッジ側連結部652には、凸部290bに対して強固に係合するための係合爪652aが設けられており、凸部290bの側部を1対の係合爪652a、652aで挟み込むことによって、綴じ装置本体の駆動力が、装置側連結部290の回転を介して綴じ機構カートリッジ651に確実に伝達される構造となっている。
綴じ機構カートリッジ651における本体部659の内部には、図21(a)(b)(c)に示すように、カム655と、リンク656とが設けられ、さらに、昇降部657と、綴じ部104とが備えられている。カム655は、略楕円形状に形成されて、回転軸655aが中心から偏心した位置に設けられている。カム655の回転軸655aは、カートリッジ側連結部652の回転軸と連結されており、カートリッジ側連結部652の回転に伴って、カム655が回転する構造になっている。リンク656は、ローラ656bを介してカム655の周面に当接する構造となっており、後部の軸656aを揺動中心として、カム655の回転状態に応じて、リンク656の前側部分を昇降させる構造となっている。リンク656の前側部分には、昇降部657が昇降可能に取り付けられており、昇降部657の上面には、綴じ部104の綴じ刃が設けられている。綴じ部104には、綴じ機構に応じて様々な綴じ刃を設けることが可能であるが、図21に示す場合には、ステッチング方法による綴じ処理に用いられる切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが設けられている。
また、綴じ機構カートリッジ651の前側上部であって、昇降部657および綴じ刃(綴じ部104)の上方には、綴じ刃に対向するようにしてテーブル部660が設けられている。テーブル部660には、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとの先端を収納可能な空間660aが形成されており、さらに、テーブル部660の下面には、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが通過可能な開口660bが形成されている。テーブル部660は、図示を省略したテーブル可動機構によって昇降可能となっている。なお、テーブル部660は、降下時に紙束の上面を押さえる役割を有するため、土台部としての機能も奏することになる。
このようにして構成される綴じ機構カートリッジ651を、綴じ装置本体200に並設されるカートリッジ収納部650にセットして、装置側連結部290の凸部290bを、カートリッジ側連結部652の係合爪652aで挟み込むようにして係合させることにより、図21(d)(e)に示すように、綴じ装置本体200のモータ212の回転駆動に連動させて、綴じ機構カートリッジ651の昇降部657および綴じ刃104を昇降駆動させ、また、テーブル部660を昇降駆動させることが可能となり、綴じ機構による綴じ操作を行うことが可能になる。
[中綴じ機構に用いられるステッチング用の綴じ機構カートリッジ]
実施の形態1〜実施の形態4に示した綴じ機構カートリッジ100、120、140、165、180、500、600、651では、土台部と綴じ刃との間の間隙、あるいは土台部における2枚の平板部材の間の間隙に紙束が差し込まれた場合に、ステッチング方法等の綴じ機構によって紙束の端部を綴じる場合について説明した。しかしながら、綴じ機構カートリッジおよび綴じ装置本体の構造を変更することにより、綴じ装置本体に着脱可能な綴じ機構カートリッジを用いて、紙束を中綴じすることが可能となる。
図22(a)は、中綴じ処理を実現するための綴じ装置本体と、綴じ装置本体に着脱可能に設けられるステッチング用の綴じ機構カートリッジと、ステープルカートリッジとを示した斜視図である。また、図22(b)は、ステッチング用の綴じ機構カートリッジを用いて綴じ処理を行う装置本体の概略断面図と、クリンチャユニットの紙面と対向する部位の概略平面図とを示し、図22(c)は、ステープルカートリッジを用いて綴じ処理を行う綴じ装置本体の概略断面図と、クリンチャユニットの紙面と対向する部位の概略平面図とを示している。
なお、図22に示すステープルカートリッジ350は、実施の形態4において説明したステープルカートリッジと同一の構造となっている。また、図22に示す綴じ機構カートリッジ550は、実施の形態4において説明した綴じ機構カートリッジ500に対して土台部503が設けられていない点を除くと、同一の構造となっている。さらに、綴じ装置本体におけるステープラ駆動機構280に関しても実施の形態4において説明したステープラ駆動機構と同一構造となっている。このため、これらの構造について共通する部分には同一符号を附すと共に、ここでの説明は省略する。また、綴じ機構カートリッジ550の綴じ部104には、一例として、ステッチング方法により綴じ処理を行うための切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとが設けられるものとする。
綴じ装置本体700の収納部701に収納された綴じ機構カートリッジ550の上方位置、あるいは収納部701に収納されたステープルカートリッジ350の上方位置であっては、綴じ機構カートリッジ550の天井面あるいはステープルカートリッジ350の天井面から一定の間隙を保った位置に、クリンチャユニット710が設けられている。クリンチャユニット710は、綴じ装置本体700に直接取り付けられるのではなく、綴じ装置本体700が取り付けられるシート処理装置10に対して、綴じ装置本体700との間に間隙が形成されるようにして設置される。
クリンチャユニット710の前側端部には、実施の形態2において説明したように、ステープルの針脚を紙面側に折り曲げるためのステープルクリンチャ(図示省略)が設けられている。さらに、本例では、クリンチャユニット710における紙束の差し込み方向の下流側(ステープルクリンチャの設置位置711よりもクリンチャユニット710の後部側の位置712)には、切り抜き刃104aと引き抜き刃104bとの先端を収納可能な凹所がステッチングクリンチャとして形成されている。
また、綴じ装置本体700にステープルカートリッジ350が取り付けられた場合には、図22(c)に示すように、クリンチャユニット710におけるステープルクリンチャの設置位置711に対向する位置で、フォーミングプレート284およびドライバ283の昇降駆動が行われて、ステープルの打ち出し処理が実行される。一方で、綴じ装置本体700にステッチング方法による綴じ機構カートリッジ550が取り付けられた場合には、図22(b)に示すように、クリンチャユニット710におけるステッチングクリンチャの設置位置712に対向する位置で、昇降部502および綴じ部104(切り抜き刃104aと引き抜き刃104b)が昇降駆動される構造となっている。
このように、ステープルにより中綴じ処理が行われる場合の綴じ位置711に対して、ステッチングにより中綴じ処理が行われる場合の綴じ位置712を少しずらして設定する。このように綴じ位置をずらすことによって、ステープルにより中綴じされた用紙では、図23(c)に示すように、用紙を半分に折り曲げた場合に背部となる折り目部分にステープル720が位置するように綴じ処理を行うことができる。また、同じようにステッチングを用いて綴じ処理を行った場合には、図23(a)(b)に示すように、ステッチングによる綴じ位置721が、背部となる折り目部分から少しずれた位置(オフセットさせた位置)になるようにして綴じ処理を行うことが可能になる。ステッチングによる綴じ位置721を、図23(a)に示すように、表紙側にオフセットさせるか、あるいは、図23(b)に示すように、裏表紙側にオフセットさせるかは、表紙部分が紙束の前側半分となり裏表紙部分が紙束の後側半分になるようにして、綴じ装置本体700とクリンチャユニット710との間隙に紙束を差し込むか、あるいは、紙束を逆にして差し込むかによって、調整することが可能である。
また、図23(d)に示すように、ステッチングによる綴じ孔722を紙束の端部に2カ所設ける場合には、一般的に、シート処理装置10の内部にステッチングによる綴じ機構カートリッジを2つ設けて、ステッチングによる綴じ処理を2カ所同時に行う方法や、ステッチング用の綴じ機構カートリッジを1つだけ設けて、紙束を左右方向にスライドさせることによりステッチングによる綴じ位置を順番に2カ所設ける方法を用いている。このようにしてステッチングによる綴じ処理を行う場合には、ステッチングによる2つの綴じ孔722の間隔(綴じピッチ)を、図23(e)に示すように、紙束をファイリングするためのファイルの留め具723の間隔(ピッチ)と同一にすることも可能である。このようにファイルの留め具723の間隔(ピッチ)に合わせてステッチングによる綴じ孔722を設けることによって、ファイリングするための綴じ孔(パンチ孔)をステッチングによる綴じ孔722で代用することが可能となり、ステッチングによる綴じ処理を行うだけで、ファイリング用の綴じ孔を形成することが可能となる。
[シート処理装置における綴じ機構カートリッジの判別処理]
次に、シート処理装置10において綴じ機構カートリッジの種類を判別する方法について説明する。シート処理装置10で、綴じ装置本体に装着された綴じ機構カートリッジの種類を判別する方法として、図3を用いて既に説明したように、綴じ機構カートリッジ100の底面に突起部108を設けて、綴じ装置本体200で、突起部108の位置をセンサ203で検出等することによって判別する場合について説明した。このようにして綴じ装置本体200で綴じ機構カートリッジ100の種類を判別した後に、判別された種類の情報を、シート処理装置10の制御部に伝達することにより、綴じ機構カートリッジ100により実行される綴じ方法(綴じ機構の種類)を判断することが可能となる。
一方で、シート処理装置10が綴じ装置本体を介して綴じ機構カートリッジの種類を判別する構成ではなく、シート処理装置10が、センサ等を用いて綴じ機構カートリッジの種類を直接にチェックすることにより、綴じ機構カートリッジの種類を判別する構成とすることも可能である。
図24(a)(b)は、シート処理装置10に設けられる綴じ装置本体200に、綴じ機構カートリッジ100が装着された状態を示した図である。綴じ装置本体200は、シート処理装置10の内部に設けられており、綴じ装置本体200の設置箇所には、綴じ機構カートリッジ100を着脱交換するための収納扉11が設けられている。収納扉11を開けると、シート処理装置10内の綴じ装置本体200に簡単にアクセスできようになっており、ユーザは、収納扉11を介して、綴じ装置本体200から綴じ機構カートリッジ100を取り外したり、あるいは、取り付けたりすることによって、綴じ機構カートリッジ100の交換を行うことが可能になっている。
シート処理装置10が、綴じ機構カートリッジ100の種類を判別する方法の一例として、収納扉11に対し、綴じ装置本体200に取り付けられた綴じ機構カートリッジ100の種類を判別するためのセンサ12を設ける構成とすることが可能である。
綴じ機構カートリッジ100には、図24(d)に示すように、本体部の把持部(本体部の後側上部において後方へと突出形成される部分)であって、綴じ機構(綴じ方法)に応じて異なる位置に、切り欠き部750が設けられている。また、ステープルカートリッジ300には、図24(c)に示すように、切り欠き部が設けられていない。収納扉11に設けられるセンサ12では、把持部における切り欠き部750の有無、および切り欠き部750が設けられる位置等を検出することによって、綴じ機構カートリッジ100の種類を判別することが可能になる。
また、把持部に切り欠き部750を設けるのではなく、バーコード等による識別マークを設けて、識別マークをセンサ12で読み取ることによって、綴じ機構カートリッジ100の種類を判別する構成にすることも可能である。さらに、ユーザが綴じ装置本体200に綴じ機構カートリッジ100を取り付ける毎に、綴じ機構カートリッジ100の種類を、シート処理装置10に設けられるタッチパネル等の入力手段13を用いて設定入力する構成とするものであってもよい。例えば、綴じ機構カートリッジ100が綴じ装置本体200から取り外された場合に、シート処理装置10の制御部では、綴じ機構カートリッジ100の種類に関する情報をリセットし、新しい綴じ機構カートリッジが取り付けられた場合に、ユーザが入力手段13を介して綴じ機構カートリッジの種類を入力しないと、エラーメッセージ等を表示させて、シート処理装置10における処理を開始しない構成等にすることも可能である。
さらに、図24(f)に示すように、綴じ機構カートリッジ100の天井面や側面等に、綴じ機構の種類を示す模式的なマーク(識別マーク:例えば、ステッチング方法による綴じ機構カートリッジの場合には、U字の切り込み等を模したマークM1や、ステープルカートリッジの場合には、綴じられたステープルのマークM2等)を設けることによって、ユーザに綴じ機構カートリッジ100の種類を直感的に認識させることができる。また、図24(e)に示すように、綴じ機構カートリッジ100天井面や側面等に、綴じ機構カートリッジ100の種類を区別するための数字や記号を大きく設けることによって、綴じ機構カートリッジ100の種類が、数字や記号の違いに応じて異なることを、ユーザに認識させることが可能となる。さらに、綴じ機構カートリッジ100に設ける識別マーク、数値あるいは記号に立体的な凹凸を設けることにより、目の不自由な方々に対しても容易に綴じ機構カートリッジ100の種類を判別できるようにすることが可能になる。
[シート処理装置における綴じ装置本体の制御]
また、シート処理装置10の制御部が、綴じ機構カートリッジ100の種類に応じて、綴じ装置本体200におけるモータ212の制御方法を変更したり、あるいは、綴じ処理が行われた紙束(冊子)の排出処理タイミング等を変更する構成とすることも可能である。
例えば、図25(a)に示すように、綴じ機構カートリッジの種類(綴じ方法)と、綴じ対象となる用紙の種類(坪量(g/m2))とに応じて、綴じ処理可能な紙束の最大枚数等の設定・変更を行う構成にすることができる。また、図25(b)に示すように、綴じ機構カートリッジの種類(綴じ方法)と、紙束(冊子)の枚数とに応じて、綴じ装置本体のモータ制御等に用いる電力供給量(供給割合)を制御する構成にすることも可能である。図25(b)に示す表において、ステープルで綴じ処理を行う場合には、紙束(坪量80g/m2)の枚数が増えるに従って動作に必要な力が大きくなるので、紙束の枚数に比例して供給電力量(電力のパーセント値)が増大する。しかしながら、凹凸綴じで綴じ処理を行う場合には、紙面に凹凸形状を形成する必要があるので、常に100%の電力によって電力供給が行われる。また、半抜き綴じで綴じ処理を行う場合や、ステッチング方法で綴じ処理を行う場合には、ステープルで同じ枚数の紙束を綴じるときよりも大きな力が必要とされるので、ステープルの場合(50%の電力)に比べて高い値(75%の電力)にモータの電力供給量が設定される。
また、綴じ機構カートリッジ100の種類に応じて、シート処理装置10における処理タイミングの調整を行う構成とすることも可能である。例えば、ステープルカートリッジを用いる場合、シート処理装置10の制御部は、綴じ装置本体のモータにより綴じ処理の動作が完了する直前(綴じ処理が1サイクル完了する直前、綴じ機構がホームポジションに戻る直前)に、綴じ処理の行われた紙束(綴じられた冊子)の排出動作を開始する。一方で、ステッチングや紙針等を用いる場合、シート処理装置10の制御部は、綴じ装置本体の綴じ処理の動作が完了した後に(綴じ処理が1サイクル完了して、綴じ機構がホームポジションにきちんと戻った後に)、綴じ処理の行われた紙束の排出動作を開始する。ステッチングや紙針を用いる場合には、綴じ装置本体の動作が終了する直前まで綴じ刃が紙束を貫通しているため、綴じ装置本体の動作が終了し(綴じ機構カートリッジの昇降部が上昇して綴じ刃が完全に紙束から引き抜かれて)、綴じ装置本体の動作が停止した後でなければ、紙束(綴じられた冊子)の排出処理を円滑に行うことができない。このため、シート処理装置10の制御部では、綴じ方法に応じて排出動作のタイミングの最適化を図ることが可能となる。
さらに、綴じ処理において異常が発生した場合に、シート処理装置10の制御部が、綴じ異常を検出する時間や、綴じ異常を検出した後に綴じ装置本体のモータを駆動させる方法等を、綴じ機構カートリッジの種類に応じて変更する構成にすることも可能である。
例えば、ステープルカートリッジを用いて綴じ処理を行う場合、あるいは、ステッチング方法による綴じ機構カートリッジを用いて綴じ処理を行う場合、シート処理装置10の制御部は、綴じ処理を実行後、例えば、400ms(0.4秒)経過しても綴じ処理が完了しないときに、綴じ異常(綴じエラー)が発生したものと判断する。一方で、凹凸綴じによる綴じ機構カートリッジを用いて綴じ処理を行う場合、シート処理装置10の制御部は、綴じ処理を実行後、例えば、500ms(0.5秒)経過しても綴じ処理が完了しないときに、綴じ異常(綴じエラー)が発生したものと判断する。凹凸綴じの場合には、綴じ装置本体や綴じ機構カートリッジにおける綴じ負担が大きいので、綴じ異常のエラー検出時間を、ステープルやステッチングを用いて綴じ処理する場合に比べて長く設定することにより、適切に綴じ異常を検出することが可能となる。
また、綴じ異常が発生した場合、ステープルカートリッジを用いて綴じ処理を行う場合と、凹凸綴じによる綴じ機構カートリッジを用いて綴じ処理を行う場合には、シート処理装置10の制御部が、綴じ装置本体部のモータ等を逆回転させた後にエラー報知処理を行う。しかしながら、ステッチング方法による綴じ機構カートリッジを用いて綴じ処理を行う場合、シート処理装置10の制御部は、綴じ装置本体部のモータ等を逆回転させることなく、エラー報知処理を行う。
ステープルの場合には、綴じ処理の途中で異常が発生しても、ステープルが用紙に刺さったまま(用紙に針を残したまま)となることが多い。このため、綴じ装置本体のモータを逆回転させてポームポジションまで戻すことができるので、シート処理装置10の制御部は、逆回転処理を行う。凹凸綴じの場合には、綴じ処理に異常が発生しても、凹凸綴じの綴じ部(綴じ刃)が、紙束に絡み合うことがないので、ステープルの場合と同様に、シート処理装置の制御部が、綴じ装置本体のモータを逆回転させてポームポジションまで戻すことができる。一方で、ステッチングの場合、綴じ処理の途中で異常が発生すると、昇降部に設けられる切り抜き刃と引き抜き刃とが紙束を貫通した状態になることが多い。ここで、ステッチングによる綴じ処理では、切り抜き刃で切り抜いたU字の先端部分(舌部)を、紙束を貫通した引き抜き刃の先端に引っ掛けて、U字の先端部分を、紙束の裏面から表面へと引っ張り出す処理を行う。このため、綴じ処理の途中で異常が発生すると、綴じ装置本体のモータを逆回転できないおそれが生じる。従って、ステッチング方法による綴じ機構カートリッジを用いて綴じ処理を行う場合、シート処理装置10の制御部は、逆回転処理を行うことなくエラー報知処理を行うことにより、綴じ異常に対する対応を円滑に進めることが可能になる。
以上、本発明に係る綴じ機構カートリッジ、綴じ装置本体およびシート処理装置について、様々な実施の形態を示して説明を行ったが、本発明に係る綴じ機構カートリッジ、綴じ装置本体およびシート処理装置は、上述したような実施の形態で示した構成に限定されるものではない。本発明に係る綴じ機構カートリッジ、綴じ装置本体およびシート処理装置は、実施の形態で示した構成に基づいて、あるいは実施の形態で示した構成とは異なる構成によって、様々に変更・改良を行うことも可能である。