図1は、本発明に係る実施例としてのステープラ1の構成例を示す断面図である。図1に示すステープラ1は、所定の線径及びコ字形状を有したステープルの脚部を所定の綴じ力に基づいてフラットに折り曲げるフラットクリンチ機能付きのホッチキスを構成する。ステープラ1は、例えば、マガジン機構2、駆動腕部(以下ドライバアーム3という)、基枠部材(以下クリンチャアーム5という)、ハンドルアーム6及び軸支機構70を備え、マガジン機構2とドライバアーム3のそれぞれの後端部がクリンチャアーム5の後端部の軸支機構70により回動自在に支持されて構成される。
マガジン機構2は、装填部(以下マガジン9という)、プッシャ10(図6参照)、ステープルカバー11及び押圧用の案内部材(以下プッシャガイド21という:図6参照)を有して、多数のステープルを収容可能となされ、当該ステープルを所定の方向へ案内するようになされる。
マガジン9は、多数のステープルを収容するため箱状に形成され、前端部にはステープルを綴り用紙に向けて打ち出す打出口8を有している。プッシャガイド21はマガジン9内に配設され、当該プッシャガイド21にプッシャ10が摺動自在に組み込まれる(図6参照)。プッシャガイド21はプッシャ10を打出口8の方向へ案内する。例えば、プッシャ10は、マガジン9内に装填されたステープルを打出口8に向けて押圧付勢するように動作する。
この例で、マガジン9の上部は開口されている。この開口上部にはステープルカバー11が配置され、開口上部を覆うようになされる。マガジン9内に装填されたステープルは、プッシャ10によってマガジン9の前方へ押圧供給される。先頭のステープルは、打出口8で待機するようになされる。マガジン9はクリンチャアーム5との間に介在されたコイル状の圧縮バネ46(図6参照)によって先端部が上方へ向かう方向に回動付勢されている。
マガジン機構2には軸支機構70を介してドライバアーム3が回動自在に支持されている。ドライバアーム3は駆動部(以下ドライバ13という)を有しており、マガジン機構2の後端部に回動自在に軸支される。ドライバ13はマガジン9の打出口8と対向するように配置され、ドライバアーム3が回動されることによって、マガジン9に装填された先頭のステープルを綴じ用紙に向けて打ち出すようになされる。
ドライバアーム3はドライバ13の後方に配設されている圧縮バネ45(図7参照)をマガジン機構2のステープルカバー11の上面に当接させることによって、マガジン機構2に対して先端が上方へ向かう方向に回動付勢されている。
このドライバアーム3の上方にはハンドルアーム6が配置され、ドライバアーム3を押下する際に操作される。ハンドルアーム6を押下操作すると、ドライバアーム3がマガジン機構2に対して相対的に回動され、このドライバアーム3の回動によって圧縮バネ45を介してマガジン機構2も回動するようになされる。ハンドルアーム6の両側面と上面部位はハンドルカバー36で被覆されている。
上述の軸支機構70はクリンチャアーム5の後端部に設けられると共に、クリンチャアーム5の後端部内側に支持軸を成す軸部材(以下主ピン41という)を有している。この主ピン41は、ドライバアーム3を回動自在に軸支するように構成される。軸支機構70はドライバアーム3の他にマガジン機構2及びクリンチャアーム5を各々の後端部において回動自在に支持する。
クリンチャアーム5は、上述の軸支機構70を介してドライバアーム3の後端部を回動自在に軸支する。クリンチャアーム5は金属製の板材を断面がコ字形となるように折り曲げ成型して形成するようになされる。この例で、クリンチャアーム5の両側面と下面部位は、基枠被覆部材(以下アームカバー15という)で被覆され、クリンチャアーム5と一体に組み付けられる。この例で、アームカバー15の後端部には舌片部15cが設けられ、クリンチャアーム5の後端部にはリムーバ部5hが設けられ、綴り用紙に打ち込まれたステープルの除針処理(以下ステープル除針処理という)時に使用される。舌片部15cについては、図10〜図14に示す説明を参照されたい。クリンチャアーム5にはリムーバ部5hの他に、固定用の丸孔部5i及び矩形状孔部5jが設けられたものが使用される(図22参照)。
クリンチャアーム5は先端側に曲げ床機構(以下クリンチ機構4という)を有している。クリンチ機構4は、フラットクリンチ機能を構成し、曲げ床部(以下クリンチャ16という)、案内部材(以下クリンチャガイド18という)及摺動部材(以下スライド部材19という)を有して構成される。
クリンチャ16は、クリンチャアーム5の前方上面に設けられる。例えば、クリンチャ16は、アームカバー15の前端部分の側面に形成された溝に収容されて、上下方向に移動できるように配置され、ドライバ13によってマガジン9から打ち出されて綴り用紙を貫通したステープルの脚部先端を綴り用紙の裏面に沿って平坦に折曲するように動作する。
クリンチャ16は、ステープルの脚部を平坦に折り曲げるような湾曲溝付きの板状に形成される。クリンチャ16には溝部(図15参照)が設けられ、上端面にステープルの両脚部と当接して両脚部を綴り用紙の裏面に沿って互いに内側に向けて折り曲げるように誘導する。クリンチャ16とアームカバー15の底面との間には圧縮バネ22(図3参照)が介在され、この圧縮バネ22によってクリンチャ16を上方へ向けて付勢するようになされる。
この例では、ハンドルアーム6及びクリンチャアーム5の接続軸構成用の凸状の接続軸5d,5eからその先端部(ステープル打出口方向)に至る途中にドライバアーム3を押下する作用点qが設定されている。この作用点qには、ハンドルアーム6とドライバアーム3とを自在に係合する作用点用のピン(以下作用ピン43という)が設けられる。
このように、マガジン9及びドライバアーム3が共有する主ピン41の位置よりも接続軸5d,5eの位置を上方に設定すると、ハンドルアーム6及びハンドルカバー36の先端部を力点pとしたとき、この接続軸5d,5eが支点となって、作用点qでドライバアーム3を押下すると共にハンドルカバー36の力点pとで、少ない押下力でステープルを綴じることができる(倍力機構)。
図2は、クリンチャガイド18及びスライド部材19の組み合わせ例を示す分解斜視図である。
図2に示すクリンチャガイド18は、図1に示したクリンチャアーム5の両側壁間に配置され、クリンチャ16を案内するものである。クリンチャガイド18は、クリンチャ16を収容する開口部17を有すると共にクリンチャアーム5に対して揺動可能に支持されている。開口部17は、クリンチャガイド18の先端部に設けられている。クリンチャガイド18は、例えば、後方下端部が揺動支点となって、開口部17がクリンチャ16に沿って上下方向に揺動できるようになされている。
クリンチャガイド18の後端下面側には、挟持部材としてのフック片の一例を構成する一対の係合爪23(片側のみ図示)が突出して配設されている。係合爪23は、クリンチャアーム5の底面に形成した開口部24を経て当該開口部24の後方側の端縁に下面から係合され、クリンチャアーム5に対して揺動自在(可能)に支持されている。
また、挟持部材としての凸部を構成する凸部23aは、クリンチャガイド18の後端下面に形成されて係合爪23と対峙するように設けられた凸部23aとして設けられる。凸部23aは、クリンチャアーム5の底面に形成された開口部24の後方側の端縁に上面から係合するように組み込まれる。係合爪23は、クリンチャアーム5の底面に形成した開口部24を経て当該クリンチャアーム5の下面に突出され、係合爪23と凸部23aとが開口部24の後方側の端縁にそれぞれ上下面から係合する。このようにすると、クリンチャガイド18をクリンチャアーム5に揺動自在に組み付けることができる。
クリンチャガイド18の下面とクリンチャアーム5の底壁との間には圧縮バネ25が介在され、この圧縮バネ25によって、クリンチャガイド18の先端側が上方へ向く方向へ回動付勢されている。これにより、綴り用紙を上方位置に支持する上方位置と当該綴り用紙を貫通したステープルの脚部を折り曲げ成型する下方位置との間でクリンチャガイド18を移動可能とすることができる。
クリンチャガイド18の下面には、スライド部材19が配設されて組み合わされる。スライド部材19には、載置面を成した支持部19a、所定形状を有した爪片部28及び一対の係合片19bが設けられ、付勢手段の一例を構成する圧縮バネ29を介してクリンチャガイド18を上方位置に保持する前方位置の側へ付勢するように配置される。圧縮バネ29にはコイル状を有したねじりバネが使用される。
図3は、クリンチャガイド18、スライド部材19及び結合部材(以下リンク部材30という)の待機時の配置例を示す断面図である。
図3に示すクリンチャガイド18の両側面には突起部26が設けられ、クリンチャアーム5の側壁の前端には突片部27が設けられている。クリンチャガイド18の突起部26は、クリンチャアーム5の突片部27と係合される。これによって上方への回動位置が規制されている。突起部26が突片部27の下方に形成された誘導面Iaと当接して下方に誘導される。これにより、クリンチャガイド18の開口部17がクリンチャ16に沿って、ほぼ垂直方向に揺動されるようにされている。
クリンチャガイド18とクリンチャアーム5の間にはスライド部材19が配置される。スライド部材19は、例えば、クリンチャガイド18とクリンチャアーム5との間に配置され、クリンチャアーム5の前後方向に沿って移動可能に支持される。
図3に示すスライド部材19の下面側には爪片部28が突出形成され、クリンチャアーム5の底壁には開口部24が設けられる。スライド部材19の爪片部28がクリンチャアーム5の開口部24の縁部に係合される。スライド部材19の後部壁の後面には圧縮バネ29が配置されている。これによって、スライド部材19が、底壁に沿って前後方向に移動可能に支持されると共に、圧縮バネ29によって前方に向けて付勢するようになされる。
この例で、スライド部材19の側面には係合片19bが設けられ、その前端部には支持部19aが設けられる(図2参照)。スライド部材19は、圧縮バネ29の付勢力(弾力)によって、スライド方向の前方に配置されているとき、スライド部材19の支持部19aがクリンチャガイド18の下面18aの下方に進入してクリンチャガイド18が下方向へ揺動するのを阻止している。この状態でクリンチャガイド18はクリンチャアーム5に対して上方位置に保持され綴り用紙を上方位置で支持するようになされる。
この例で、クリンチャ16の上端面の溝部(図15参照)が、クリンチャガイド18の開口部17の上端縁に臨んだ位置に配設された状態となる。上述のスライド部材19は、圧縮バネ29の付勢力に打ち勝ってスライド方向の後方側へ移動されると、支持部19aがクリンチャガイド18の下面から離れてクリンチャガイド18の先端部が下方向へ揺動可能な状態になる。
一方、ドライバアーム3は、所定の長さ及び所定の方向に延在した一対の脚部を成すリンク部材30を有している。リンク部材30は、例えば、L字状を成し、その一端部が軸部31を介して枢支されている。リンク部材30の下方には他端部30bが延在している。リンク部材30はその中央部が中央折曲部30aを成している。この中央折曲部30aは、図1に示したマガジン9の上面を覆っているステープルカバー11の上面に摺接係合されている。リンク部材30の他端部30b(脚部)がスライド部材19の係合片19bに係合可能に対応している。
リンク部材30は、ドライバ13によりマガジン機構2内のステープルを打出口8から打ち出すため、ドライバアーム3がマガジン機構2に対して相対的に回動する。これにより、中央折曲部30aを支点として回動するので、他端部30bがスライド部材19の係合片19b(突起部)を後方側へ押圧してスライド部材19を圧縮バネ29の付勢力に打ち勝って後方へスライド移動させるようになる。これにより、リンク部材30の他端部30bを係合片19bに係合できるようになる。
図3に示す圧縮バネ29はクリンチャガイド18とスライド部材19との間に設けられ、圧縮コイルバネにより構成される。圧縮バネ29は、スライド部材19をスライド方向の前方へ向けてスライド付勢すると共に、クリンチャガイド18を後方へ向けて移動付勢するようになされる。
この例で、スライド部材19の中程には前壁19d(図4参照)が設けられ、当該前壁19dの後方側の面に圧縮バネ29の一端が当接している。圧縮バネ29の他端は、クリンチャガイド18の後端に形成された係合爪23の前壁面23b(図4参照)と当接している。
このように、圧縮バネ29はスライド部材19とクリンチャガイド18との間に介装されているので、圧縮バネ29によってスライド部材19がクリンチャガイド18を上方位置に支持する前方位置へ向けてスライド付勢される。これと共に、クリンチャガイド18を後方へ向けて揺動付勢できるようになる。
この例で、スライド部材19の下面には爪片部28が設けられ、クリンチャアーム5の底面には開口部24が設けられている。通常時には、スライド部材19の爪片部28がクリンチャアーム5の開口部24の前端縁24aと当接して、当該スライド部材19の前方へのスライド位置を規制するようになされている。この位置で支持部19aがクリンチャガイド18の下面に進入してクリンチャガイドを上方位置に支持している。
また、クリンチャガイド18の両側面には突起部26が設けられ、クリンチャアーム5には誘導面Iaが設けられる。このクリンチャガイド18の突起部26がクリンチャアーム5の誘導面Iaと当接することによって、スライド部材19の後方への揺動を規制するようになされている。これにより、クリンチャガイド18を上方位置に保持する前方位置と当該クリンチャガイド18を下方へ移動可能とする後方位置との間でスライド部材19をスライド可能とすることができる。
この例では、待機時のリンク部材30の他端部30bとスライド部材19の係合部19bとの間には所定の遊びとしての離隔距離S1が設定されている。この離隔距離S1は、少なくとも、ステープルの脚部の先端が用紙を貫通した後に、リンク部材30の他端部30b(脚部)がスライド部材19の係合部19bに当接するような関係に設定される。このようにすると、ステープルの脚部の先端が用紙を貫通し終わった後にスライド部材19を引き始めることができるので、ドライバアーム3の押下時、ステープルの脚部が用紙を貫通していく際のステープル脚部貫通荷重のピークと、摺動部材を移動させるためのスライド引き荷重のピークをずらすことができる。
図4は、ステープラ1の綴り用紙貫通後の姿勢例を示す断面図である。ステープルの脚部が綴り用紙を貫通した後に、リンク部材30の他端部30b(脚部)がスライド部材19の係合部19bに当接するので、ステープルの脚部が用紙を貫通していく際のステープル脚部貫通荷重のピークと、摺動部材を移動させるためのスライド引き荷重のピークをずらせるようになった。
図5は、ステープラ1の綴り荷重波形例を示す図である。図5に示す縦軸は、ドライバアーム3に加わる荷重である。横軸は、ドライバアーム3のストローク(位置又は時間)である。図中、実線は綴り時の合成荷重分布曲線IIを示している。合成荷重分布曲線IIによれば、2つのピーク波形が得られる。第1のピーク波形IIaは、ステープルの脚部が綴り用紙を貫通する位置(時刻)のステープル脚部貫通荷重分布曲線である。第2のピーク波形IIbは、綴り用紙貫通後、スライド部材19を引き始める位置(時刻)のスライダ引き荷重分布曲線である。
この合成荷重分布曲線IIによれば、ステープルの脚部が綴り用紙を貫通する位置(時刻)に対して、スライド部材19を引く位置(時刻)がずれている。このようにドライバアーム3に加わる荷重を分散化することで、ドライバアーム押下時、従来方式に比べて、使用者の手に反力として作用する綴り荷重を低減できるようになった。
続いて、ステープラ1の組立例について説明する。図6及び図7は、ステープラ1の組立例(その1,2)を示す分解斜視図である。
この例では、図6に示すマガジン機構2を基準にして、下方側のクリンチャアーム5、アームカバー15、クリンチャ16、クリンチャガイド18、スライド部材19、プッシャガイド21、バックカバー35等の組立部品と、図7に示すステープルカバー11の上方側のドライバアーム3、ハンドルアーム6、ハンドルカバー36、収納蓋38等の組立部品の2つに分けて説明する。
まず、図6に示すクリンチャアーム5にクリンチャ16、クリンチャガイド18及びスライド部材19を取り付ける。クリンチャアーム5には、所定形状の主体枠5a、主軸受け用の孔部5b,5c、接続軸構成用の凸状の接続軸5d,5e、当接用の突出部5f及び5gを備えたものが使用される。
クリンチャガイド18は、図2に示したようにスライド部材19と組合わせた状態でバネ29を取り付ける。その後、クリンチャアーム5とクリンチャガイド18との間に圧縮バネ25を挟んで、当該クリンチャアーム5及びクリンチャガイド18の組み合わせ部品をクリンチャアーム5に取り付ける。このとき、クリンチャ16をクリンチャガイド18の開口部17とクリンチャアーム5との間に圧縮バネ22を間に挟んで取り付ける。
その後、クリンチャアーム5の底面と側面を覆うようにアームカバー15を取り付ける。アームカバー15には、クリンチャアーム固定用の突起部15a,15b及び後端部に舌片部15cを有したものが使用される(図11参照)。この例では、係合用のボス15a(柱状突起部)に固定用の孔部5iを嵌合するようにクリンチャアーム5がアームカバー15内に包み込まれるように組み込まれる。
一方で、マガジン機構2を組み立てる。まず、マガジン9内にプッシャ10、プッシャバンド10a、引張りバネ10b及びプッシャガイド21を取り付ける。マガジン9には、所定形状の主体枠9a、主軸受け用の孔部9b,9c、ステープル確認窓部9f,9g及びステープル打出口8を備えている他、矩形孔部9h(図21参照)及び切曲げ孔部9i(図21参照)を備えたものが使用される。
プッシャ10には二股状の本体枠64及び本体枠内に凸状の係合部65を有したものが使用される。プッシャガイド21には、所定の長さのスライド本体部21a、その裏面に設けられた突起部21b、船底状の長手の巻装部21c及びバネ掛け部21dを有したものが使用される。
この例では、マガジン9にプッシャガイド21を取り付けるとき、引張りバネ10bは、ステープルが装填されない側であって、プッシャガイド21の下面側に配置される。例えば、プッシャガイド21の下方で巻装部21cを取り巻くように引張りバネ10bを配置する。引張りバネ10bの一端はバネ掛け部21dに固定する。引張りバネ10bの他端はプッシャ10の凸状の係合部65に固定する。このようにすると、プッシャ10をプッシャガイド21に摺動自在に係合できると共に、引張りバネ10bの付勢力を利用してプッシャ10をプッシャガイド21上に往復動作させることができる。
プッシャガイド21は、当該プッシャガイド21の突起部21bをマガジン9の矩形孔部9h(図21参照)に通して当該マガジン9に取り付ける。プッシャ10にはプッシャバンド10aが取り付けられる。プッシャバンド10aには、所定の長さを有し、丸孔部61、丸孔部62及び角孔部63を有したフィルム状のものが使用される。プッシャバンド10aは、フィルム状の合成樹脂帯に丸孔部61、丸孔部62及び角孔部63を形成することで形成される。
プッシャバンド10aは、一端側、例えば、当該プッシャバンド10aの丸孔部61を上述のプッシャ10の係合部65に取り付ける。また、他端側が、図7に示すようにステープルカバー11の開口部11dを経て、ステープルカバー11の下面側から上面側へと引き回されて、プッシャバンド10aの丸孔部62が係止突起11eに取り付けるようになされる。このようにマガジン機構2の部品が組み立てられる。なお、マガジン9の後端部に、バックカバー35を取り付ける。これにより、マガジン機構2の下方側のクリンチャアーム5、アームカバー15、クリンチャ16、クリンチャガイド18、スライド部材19、プッシャガイド21、バックカバー35等の組立部品が得られる。
また、図7に示すステープラ1の組立例によれば、図6で組み上げたマガジン機構2、クリンチャアーム5、ステープルカバー11及びバックカバー35から成る中途組上げ部品に、図7に示すステープルカバー11の上方側のドライバアーム3、ハンドルアーム6、ドライバ13、ハンドルカバー36、収納蓋38、圧縮バネ45及び46等を組み立てる。ドライバ13は予めドライバアーム3に取り付けて置く。
この例では、図6で組み上げたマガジン9上にステープルカバー11を係合する。ステープルカバー11には所定形状を有した本体枠11a、主軸係合用のU状部11b、11c及びプッシャバンド係合用の開口部11dを備えたものが使用される。ステープルカバー11は、ドライバアーム3と共に主ピン41によって係合される。
更に、プッシャバンド10aの他端をステープルカバー11に取り付ける。このとき、図6に示したプッシャバンド10aの丸孔部62を図7に示すステープルカバー11の係止突起11eに取り付ける。ドライバアーム3には、本体枠3a、主ピン軸受け用の孔部3b,3c及び、リンク部材係合用の孔部3d,3eを有したものが使用される。リンク部材30は先端側にU状部位を有し、中央部にステープルカバー係合用のフック部位を有し、他端側にL字形状に屈曲したものが使用される。リンク部材30のU状部位は、ドライバアーム3の内側から孔部3d,3eに係合され、その中央部のフック部位は、ステープルカバー11の上部側から開口部11fに係合される。このとき、フック部位をプッシャバンド10aの角孔部63に挿通し、プッシャバンド10aがリンク部材30とステープルカバー11とで挟持されるようにする。
この例では、圧縮バネ45をドライバアーム3とステープルカバー11との間に配置し、圧縮バネ45の下端部と、ステープルカバー11とで、プッシャバンド10aを挟持すると共に、圧縮バネ46をマガジン9とクリンチャアーム5との間に配置し、主ピン41を主体枠5aの主軸受け用の孔部5bからドライバアーム3の主軸受け用の孔部3bを通して、更に、マガジン9の主軸受け用の孔部9b及び9cを通して、再び、ドライバアーム3の孔部3cを通して、主体枠5aの孔部5cに至るように組立てる。圧縮バネ45及び46には、着座性が良い外観円錐状を成した螺旋コイルが使用される。もちろん、円柱状の圧縮コイルバネを使用してもよい。
この部品組み込みに際して、クリンチャアーム5とマガジン機構2との間で当該マガジン機構2の移動を規制する機構を組み立てる。この機構の組み立てでは、プッシャガイド21の下方に設けられた突起部21bと、クリンチャアーム5の内側の所定の位置に設けられた突出部5f,5gとを軸部材(以下中空ピン47という)を介して係合付けるようにする。中空ピン47は、クリンチャアーム5の内幅よりやや短い長さを有している。クリンチャアーム5の内側の所定の位置には突出部5f,5gが設けられ、プッシャガイド21の突起部21bの端部には開孔部201が設けられている。
この例では、まず、プッシャガイド21の突起部21bがマガジン機構2の矩形状孔部9hに挿入される。その後、中空ピン47をプッシャガイド21の突起部21bの開孔部201に挿入する。この状態の組み合わせ部品が、クリンチャアーム5の内側の所定の位置に嵌合される。そして、クリンチャアーム5の突出部5f,5gの下側から中空ピン47を当て付けるようになされる。これにより、ハンドルアーム6のオープン時、マガジン機構2の回動を規制する回動規制機構80を構成できるようになる(図19参照)。
次に、クリンチャアーム5の凸状の接続軸5d,5eに、ハンドルアーム6の主体枠6aに設けられた接続軸係合用の切り欠き状の接続孔6d,6e(不図示)を嵌合する。そして、主体枠6aの作用点用の孔部6bから、ドライバアーム3の主体枠3aの作用点用の孔部3hを通して孔部3iに至り、更に、主体枠6aの孔部6cに至るように作用ピン43を組付ける(倍力機構)。
そして、ハンドルアーム6にハンドルカバー36を取り付ける。ハンドルカバー36には、ステープル収納部37を有したものが使用される。ハンドルカバー36の上部には、収納蓋38が取り付けられる。ハンドルカバー36、収納蓋38及び上述したアームカバー15には樹脂を金型射出成形したものが使用される。そして、バックカバー35で軸支機構70の後端開口部を套装する。これにより、図1に示したステープラ1が完成する。
続いて、ステープラ1の動作例について説明する。図8及び図9は、フラットクリンチ機能付きのステープラ1の動作例(その1,2)を示す断面図である。図8及び図9においては、その構造を明確かつ簡単化するため、アームカバー15及びハンドルアーム6を省略している。また、マガジン9の内部に配設されている各部材も省略している。
図8Aに示すステープラ1の待機時のドライバアーム3によれば、リンク部材30の他端部30bとスライド部材19の係合部19bとの間に所定の離隔距離S1が設定されている。この設定状態のステープラ1において、クリンチャガイド18の上面に綴り用紙40を挿入する。
そして、図1に示したハンドルアーム6を押下操作すると、図8Aに示したドライバアーム3が回動されてドライバアーム3の図7に示した圧縮バネ45の付勢力に打ち勝ってマガジン機構2が押下回動されて、マガジン9の下面とクリンチャガイド18の間で綴り用紙40を挟持する。
この時点ではクリンチャガイド18の下面18aの下面側にはスライド部材19が進入した状態で、クリンチャガイド18を上方位置に保持しているので、綴り用紙40が上方位置で支持される。これと共に、マガジン機構2の回動が停止されてドライバアーム3が更に回動されることにより、ドライバアーム3のドライバ13によってマガジン9内の先頭のステープルが綴り用紙40に向けて打ち出される。そして、ドライバ13によってマガジン9内から打ち出されたステープルの脚部が綴り用紙40を貫通してクリンチャ16と当接する。
そして、図8Bに示すステープラ1の綴り用紙40の貫通時のドライバアーム3によれば、ステープルの脚部が用紙40を貫通し終わった後に、リンク部材30の他端部30bがスライド部材19の係合部19bと当接して、スライド部材19を移動させ始める。この状態は、ドライバ13によってステープルの脚部の先端部が綴り用紙40のうちの最下部に位置する用紙を貫通した位置まで打ち出されたタイミングである。
その後、引き続いてハンドルアーム6を押下操作するのに伴って、他端部30bが係合部19bを後方へスライドするようになされる。このとき、スライド部材19は、圧縮バネ29の付勢力(弾力)に打ち勝って後方への移動を開始する。スライド部材19の移動によって支持部19aがクリンチャガイド18の下面18aの領域を後方側へ移動する。
また、クリンチャ16は圧縮バネ22の付勢力に打ち勝って押し下げられる。このクリンチャ16を上方へ付勢する圧縮バネ22は、極めて弱いものであるので、ステープルの脚部の先端部が、綴り用紙40を貫通して、綴り用紙40の下面側から突出するのに応動して、ステープルの脚部によって、クリンチャ16が押し下げられるので、この時点では、ステープル脚部を折曲する作用に至らない。
その後、図9Aに示すステープラ1の如く、ドライバアーム3の更なる押下操作によって、他端部30bが係合部19bへ後方スライドを継続させる。このとき、クリンチャガイド18を上方位置へ支持していたスライド部材19が、クリンチャガイド18の下面18aの領域を後方へ移動しつつある状態であって、図7に示した圧縮バネ45を介して下方へ押下付勢されていたマガジン機構2が、当該圧縮バネ45の付勢力によりクリンチャガイド18を下方へ押圧しながら下方へ回動する。
なお、スライド部材19が移動して変位することで、スライド部材19の前壁19dが圧縮バネ29の一端を押圧することになる。圧縮バネ29の他端は、クリンチャガイド18の係合爪23の前壁面23bと当接しているので、スライド部材19を変位させようとする荷重は、圧縮バネ29を介してクリンチャガイド18へ伝播する。しかしながら、クリンチャガイド18の両側面に設けられている突起部26がクリンチャアーム5の誘導面Iaと当接しているので、スライド部材19の変位に応動してクリンチャガイド18が変位することはなく、スライド部材を変位させようとする荷重は、圧縮バネ29が収縮することで吸収される。この結果、クリンチャガイド18の上面に載置されている綴り用紙40がスライド部材19の変位に応じて変位することがない。
そして、クリンチャガイド18の下面18aの領域からスライド部材19の支持部19aが外れる直前に至るが、綴り用紙40を貫通したステープルの脚部先端がクリンチャ16の溝部から逸脱することがない。
図9Bに示すステープラ1によれば、ドライバアーム3の更なる押下操作によって、ドライバアーム3が更に回動して、クリンチャガイド18の下面18aの領域からスライド部材19の支持部19aが外れると、クリンチャガイド18が下方へ揺動可能となる。このとき、既にドライバ13によって打ち出されるステープルの先端がクリンチャ溝20aに当接して、クリンチャ16を押し下げた状態になっている。この状態で、クリンチャガイド18が下方へ揺動すると、ステープルの脚部は、クリンチャ溝20aによって、綴り用紙40の裏面に沿って一気に平坦(フラット)に折り曲げられる。この折り曲げでステープル綴じ処理が完了する。
このように、実施例に係るステープラ1によれば、フラットクリンチ機能によって、ステープルの脚部をフラットに折り曲げる場合に、ステープルの脚部の少なくとも先端部が綴り用紙40を貫通し終わった後にスライド部材19を引き始めることができるので、ドライバアーム3の押下時、ステープルの脚部が用紙を貫通していく際のステープル脚部貫通荷重のピークと、摺動部材を移動させるためのスライド引き荷重のピークをずらすことができる。従って、綴り荷重のピークが分散化するので、ドライバアーム3及びハンドルアーム6を介して使用者の手に反力として作用する綴り荷重及び機構部品への負荷を低減できるようになる。
この実施例では倍力機構を持ったステープラ1の場合について説明したが、倍力機構を備えていないステープラに本発明を適用できることは言うまでもない。
図10は、ステープラ1に係るアームカバー15の後部の構成例を示す斜視図である。 図10に示すステープラ1は、本体カバーの一例を構成するアームカバー15を備え、クリンチャアーム5の所定の部位を覆うようになされる。アームカバー15の係合用の円柱状のボス15aに、クリンチャアーム5の固定用の孔部5iを嵌合すると共に、その係合用の矩形状の凸部15baに、その固定用の孔部5jを嵌合して、クリンチャアーム5がアームカバー15内に包み込まれるように組み込まれている。
また、アームカバー15の後端側には舌片部15cが延出して設けられ、クリンチャアーム5の後端側にはリムーバ部5hが延出して設けられる。舌片部15cは、例えば、リムーバ部5hの上面側を覆うように延出し、当該リムーバ部5hの天井面を成し、リムーバ部5hの上面と舌片部15cの天井面との間にはステープルの線径前後の隙間δが設定されている。隙間δは、ステープルの大きさにも依存するが、汎用型のステープルの場合、例えば、0.5mm乃至1.0mm程度である(図12C参照)。
この例で、舌片部15cは可能な限り長く張り出すように設定している。このように設定したのは、用紙を綴じているステープルのクラウン部に対してリムーバ部5hを奥まで差し込まなくても、天井面の効果を出すためである。クラウン部とは、ステープルの両脚部に橋架されていてドライバ13が当接する部位をいう。舌片部15cは、アームカバー15の後端部をアーム状とすることで形成される。このアーム状を成す舌片部15cと、クリンチャアーム5のリムーバ部5hとは、綴じ済みステープルの除針処理時に、その天井面として機能する舌片部15cとステープル引掛け用のリムーバ部5hとで、用紙を綴じているステープルのクラウン部33’を挟持するように使用される。
図11A〜Cは、アームカバー15の構成例を補足する底面図、正面の断面図及び背面図である。
図11Aに示すアームカバー15に設けられた舌片部15cによれば、カバー後端部位には、リムーバ部5hを潜行するための開口部15eが設けられる。この開口部15eの後方部位は突出しており、その突出部位の先端部が半円切り欠き形状を成している。このように舌片部15cの先端部分を半円切り欠き形状としたのは、リムーバ部5hの先端位置の視認性をよくするためである。
舌片部15cは、アームカバー15と一体成形されて成る。例えば、アームカバー本体と舌片部15cの形状を象ったコア及びキャビティを作成し、このコア及びキャビティから成る金型に樹脂を封入して半円切り欠き形状の舌片部15cが一体化されたアームカバー15を形成する。これにより、ステープル除去性向上を可能とするクラウン部抑え機能付きのアームカバー15を提供できるようになる。
また、図11Bに示すアームカバー15の正面断面図において、舌片部15cの斜め左上部には、アーム後端固定用の凹部15dが設けられ、クリンチャアーム5の後端部を嵌合するようになされる。舌片部15cの端部は、斜めにカットされた形状を有しており、ステープル除針処理時、打ち込み済みのステープルのクラウン部33’を迎え入れ易くなされている。なお、図11Cに示すアームカバー15において、舌片部15cの背面側は、クリンチャアーム5を組み入れた後、リムーバ部5hの天井面IIIとなされ、ステープル除針処理時、舌片部15cの天井面とリムーバ部5hとでクラウン部33’を挟持するようになされる。
次に、舌片部15cとリムーバ部5hの組合せ例について説明する。図12A〜Cは、クリンチャアーム5とアームカバー15との組立例を示す図である。
まず、図12Aに示す形状のクリンチャアーム5を準備する。クリンチャアーム5の後端部にはステープル除針処理時に使用可能なリムーバ部5hが設けられたものを使用する。次に、図12Bに示す形状のアームカバー15を準備する。アームカバー15の後端部が、図11で説明したような半円切り欠き形状の舌片部15cとなされたものを使用する。
そして、アームカバー15でクリンチャアーム5を覆うとき、最初に、リムーバ部5hが当該アームカバー15の開口部15eに潜行され、その後、アームカバー15の凹部15dに、クリンチャアーム5の後端部が嵌合され、更に、凸部15b、ボス15aの順序で、孔部5j,5iを嵌合するように組み込む。これにより、図12Cに示すような中途組立済みの部品が得られ、しかも、クリンチャアーム5の後端部とリムーバ部5hとで舌片部15cを上下間で挟み込む構造を採ることができる。
続いて、ステープラ1によるステープル除針処理例について説明する。図13及び図14は、ステープラ1による打ち込み済みステープルの除針処理例(その1,2)を示す正面図である。
この例では、その後端部にリムーバ部5h及び舌片部15cを備えたステープラ1を使用してステープル除針処理をする場合を前提とする。図13Aに示すステープラ1によるステープル除針処理によれば、まず、そのリムーバ部5hを用紙40のクラウン部33’に位置合わせする。クラウン部33’は、綴り用紙40でステープル除針処理する対象となった打ち込み済みステープル33である。
次に、図13Bに示すリムーバ部5hを用紙40上のクラウン部33’の間に挿入する。このとき、リムーバ部5hの先端をクラウン部33’の間に挿入したら、ステープラ本体を綴り用紙40と平行する水平方向に滑り込ませ、クラウン部33’をリムーバ部5h及び舌片部15cとの間に深く差し込むようにする。
この状態で、図14Aに示すステープラ本体を綴り用紙40と直交する垂直方向(上方向)に徐々に引き上げ、綴り用紙40からクラウン部33’を引き抜くようにする。このとき、リムーバ部5hと舌片部15cの天井面IIIで挟み込んだクラウン部33’の左右の脚部を均等に引き抜くようにする。
なお、クラウン部33’の片脚部だけが抜けた場合であっても、リムーバ部5hと舌片部15cの天井面IIIでクラウン部33’を押さえ込んでおり、リムーバ部5hからクラウン部33’が外れないので、反対側で残ったクラウン脚部も簡単に引き抜くことができる。これにより、図14Bに示すようにクラウン部33’は、リムーバ部5hと舌片部15cとの間に挟持された状態で、綴り用紙40から引き抜かれ、クラウン部33’の引き抜き処理が完了する。なお、リムーバ部5hと舌片部15cとの間に挟持されたクラウン部33’は、これらの隙間δから取り出される。
このように本実施例に係るステープラ1によれば、後端部に舌片部15cを有したアームカバー15を備え、舌片部15cは、リムーバ部5hの上面に、綴り用紙40に打ち込まれたステープル33の線材としてのクラウン部33’を挿入可能なステープル33の線径相当の隙間δを有した天井面IIIを有している。従って、ステープル除針処理時、リムーバ部5hの上面と舌片部15cの天井面IIIとの間にクラウン部33’を積極的に上方から押さえ付け、かつ、挟んで左右の脚部を均等に引き抜くことができる。
また、一方の側の脚部だけが抜けた場合であっても、リムーバ部5hの上面と舌片部15cの天井面IIIとの間でクラウン部33’を押え込むことができるので、反対側の残った脚部も簡単に引き抜くことができる。これにより、ステープル除針処理時の作業性を向上できるようになった。
この実施例では、天井面IIIを有する舌片部15cをアームカバー15の後端部に連続して設ける場合について説明したが、バックカバー35に舌片部15cと同様な形状の天井面を設けてもよい。
また、ステープラ本体の落下などにより、リムーバ部5hが変形し、天井面IIIの隙間δが無くなった場合であっても、天井面IIIはアームカバー15と同じプラスチック等の比較的柔軟な樹脂素材でアーム形状を成しているため、撓み易く、クラウン部33’を再現性良く挟み込むことができる。もちろん、製品の初期状態において、間隙δを設けることなく、アームカバー15の弾性変形を利用して、舌片部15cとリムーバ部15hとでクラウン部33’を挟持するようにしてもよい。
なお、上述した構造は、リムーバ部15hがクリンチャアーム5の後端部から延出して設けられている場合だけでなく、クリンチャアーム5の側部から前方側へ向かって延出して設けられている場合にも、適用可能である。
図15は、ステープラ1に係るクリンチャ16の構成例を示す拡大斜視図である。図16A及びBは、その構成例を補足する図である。図16Aはその上面図であり、図16Bは、そのY1−Y1矢視断面図である。図16Cは、比較例としてのクリンチャ16’の構成例を示す断面図であり、図17はその溝角度θの設定例を示す図である。
この実施例では、図17に示すステープル33のクリンチ動作に必要なクリンチャ16の溝角度θ、深さd及び溝幅wの三要素を満足するクリンチャ形状を提供できるようにした。
図15に示すクリンチャ16は、ステープラ1に実装され、ステープル33の脚部をフラットに折り曲げるものである。(図18B参照)。クリンチャ16は、薄片凸状を成した本体部20及び、当該本体部20の上部に溝部(以下クリンチャ溝20aという)を有して構成される。なお、本体部20の下方側は二股部位(張り出し部)を有しており、クリンチャ16の上部から押下力が加わったとき、クリンチャアーム5の両側のガイド溝に沿って沈み込む構造を採るようになされる。
この例では、クリンチャ溝20aの左右の壁面と前後の壁面との間に段差部20bが設けられる。例えば、クリンチャ溝20aの左右の壁面上方は、内側に傾斜を有した突起状を成し、図17に示すようなステープル33を拾い込むように構成されている。このようにすると、クリンチ時、段差部20bに落とし込まれた綴り用紙40を貫通したステープル33を最適に拾い込むことができる。
図16Aに示す本体部20はその厚さをtとしたとき、t=2mm程度を有している。クリンチャ溝20aは上部(図1に示したマガジン機構2の前端部の打出口側)から見ると、図16Aに示すように、湾曲形状の底面と、左右に円弧状の壁面と前後に傾斜面状の壁面とを有している。この例では、クリンチャ溝20aの左右の壁面と前後の壁面との間には図16Bに示す段差部20bが設けられる。
図16Bにおいて、Δhは段差部20bにおける段差(高さ)である。ここに、第1の基準位置Poから本体部20の頂点Pmaxに至る高さをh1とし、当該基準位置Poから本体部20の傾斜面の最上点Pに至る高さをh2としたとき、段差Δhは、高さh1と高さh2の間の差を示す(1)式、すなわち、
Δh=h1−h2 ・・・・・・(1)
によって与えられる。但し、第1の基準位置Poとは、例えば、基準平面にクリンチャ16を載置したとき、その基準平面に属する位置をいう。
一方、クリンチャ16の溝深さをdとし、基準位置Poからクリンチャ溝20aの底点Pminに至る高さをh3とすると、(2)式、すなわち、
d=h1−h3 ・・・・・・(2)
で与えられる。また、クリンチャ16の見かけ上の溝深さをd’とすると、(1)式に(2)式を代入にして整理すると、(3)式、すなわち、
d’=h2−h3
=d−Δh ・・・・・・(3)
となり、クリンチャ16の見かけ上の溝深さd’を設定すると、クリンチ時、段差部20bに落とし込まれた綴り用紙40を貫通したステープル33を最適に拾い込むことができる(図18B参照)。
これに対して、図16Cに示すような比較例に係るクリンチャ16’によれば、本体部20’に図16Bに示すような段差部が設けられていない場合である。すなわち、基準位置Poから本体部20の頂点Pmaxに至る高さがh1であり、そのクリンチャ溝20’の底点に至る高さがh3であり、クリンチャ溝20’の溝深さdは、上述の(3)式によって与えられる。
比較例に係るクリンチャ20a’の溝深さdと、本発明に係るクリンチャ16の見かけ上の溝深さd’との間には、(4)式、すなわち、
d’<d ・・・・・・(4)
なる関係がある。
これによれば、本発明に係るクリンチャ16に比べて、比較例に係るクリンチャ16’の溝深さdが、本発明に係るクリンチャ16の見かけ上の溝深さd’と比べて深い。このため、比較例に係るクリンチャ16’によれば、ステープル33の流れがよくなるが、溝深さdが深いことから、綴り用紙の裏面と、クリンチャ溝20aの底部との距離が離れていて、クリンチ動作が甘くなるという問題がある。
そこで、本発明によれば、段差部20bによって見かけ上の溝深さd’を比較例に係るクリンチャ16’の溝深さdと比べて浅くし、その上で溝角度θを設定する。これにより、綴り用紙40を貫通したステープル33の脚部に係合して当該脚部をクリンチャ溝20aで折り曲げ成型するようにクリンチャ16の形状を設定できるようになる。この形状によれば、クリンチャ溝20aが平面視長方形状を成し、かつ、底部は幅方向において、円弧状を成し、長さ方向の両端において、湾曲すると共に、その四隅角部において、長さ方向の湾曲部と、幅方向の円弧状部分とが段差部20bの境界を介して接するようになる。
図17は、図16Aに示したクリンチャ16のX2−X2矢視断面図である。図17に示すクリンチャ16によれば、クリンチャ溝20aの底面は、所定形状を成す底面の一例として、隆起した略中央底部の両側底部が窪んだ湾曲状を成し、クリンチャ溝20aの底面の最下位(底点Pmin)から段差部20bに至る垂直距離が当該クリンチャ16の溝深さd=(d’+Δh)とされる。
また、図17に示すクリンチャ16において、クリンチャ溝20aの下方部位に第2の基準位置P2が設定され、当該基準位置P2から所定方向に延在する線分とクリンチャ溝20aの突起状の壁面の内側傾斜位置から所定の方向に延在する延長線とが成す角度が当該クリンチャ16の溝角度θとなされる。
この例で、クリンチャ16の溝角度θは、ステープル33の折り曲げに寄与するクリンチャ16の溝深さd=(d’+Δh)が保持された状態で、ステープル33の脚部の流れに寄与する角度に設定されて成る。
このようにすると、ステープル33の拾いこみ、ステープル33の脚部の流れ、ステープル33のつぶれの三要素を満足するクリンチャ16の湾形状を設定できるようになる。これにより、クリンチャ溝20aの耐久性及び綴り性能を維持したままステープル33の脚部の流れを向上できるようになる。
この例では、クリンチャ溝20aの左側の突起状の壁面(傾斜面の最上点P)と右側の突起状の壁面(傾斜面の最上点P)との間の距離を当該クリンチャ16の溝幅wとする。クリンチ時、マガジン機構2の前端部でステープル33が貫通された綴り用紙40を押圧して段差部20bに落とし込むことができる。
図18A及びBは、用紙クリンチ時のクリンチャ16の機能例を示す断面図である。この例では、クリンチ動作に必要な溝深さd=d’+Δhを確保し、ステープラ33の脚部の流れがよくなるように溝角度θを大きく設定する。この設定によって、溝幅wが狭くなるため、クリンチャ16の左右に拾い込みに必要な斜面(突起)を設ける。
これらをクリンチ条件にして、図18Aに示すステープラ1の用紙貫通前であって、そのクリンチ前の状態例によれば、クリンチャ16上の綴り用紙40の上部には、所定の綴じ力に基づいて、図8Bに示したドライバアーム3の打出口8から打ち出されたステープル33が到達する。更に、綴じ力が加わって、ドライバアーム3のドライバ13がステープル33の頭部位を押下すると、図18Bに示す状態に移行する。
図18Bに示すステープル33は、綴り用紙40の貫通後の状態であって、クリンチ完了後の構成例である。この状態に至る過程において、綴り用紙40を貫通したステープル33は、当該綴り用紙40と共に段差部20bに落とし込まれる。このとき、図8Bに示したマガジン機構2の前端部は、ステープル33が貫通された綴り用紙40を押圧して段差部20bに落とし込むように動作する。
この段差部20bに落とし込まれた状態の綴り用紙40を貫通したステープル33は、クリンチャ溝20aの左右に当接し、その壁面上方の突起状部位で画定された内側の斜面に拾い込まれる。その後、ステープル33の脚部が流れ、ステープル33がつぶれる。このとき、ステープル33の脚部がフラットに一気に折り曲げられる。これにより、ステープル33のクリンチ動作を完了する。
このように、本実施例に係るステープラ1によれば、綴り用紙40を貫通したステープル33の脚部に係合して当該脚部を折り曲げ成型する場合に、段差部20bを有したクリンチャ16を備え、左右の壁面を基準にしたクリンチャ溝20aの溝深さdに対し、段差部20bの段差Δhだけ浅くなされ、見かけ上のクリンチャ溝20aの溝深さd’を設定するようになされる。
従って、ステープル33のつぶれ、その脚部の流れ、その拾い込みの三要素を満足するクリンチャ湾曲形状を設定できるようになる。しかも、クリンチ時、ステープル33が貫通された綴り用紙40を段差部20bに落とし込むことができ、”溝深さdが浅いと、綴り用紙40の裏面とクリンチャ溝20aの底部との距離が接近してステープルのクリンチ(つぶれ)がよくなる”という効果と、”溝角度θが大きいとステープルの流れがよくなる”という効果と、”溝幅wが広いとステープルの拾いこみがよくなる”という効果とを得ることができるようになる。これにより、クリンチャ溝20aの耐久性及び綴り性能を維持したままステープル33の脚部の流れを向上できる。
この例では、クリンチャ溝20aの左右の壁面と前後の壁面との間に段差部20bを設ける場合について説明したが、これに限られることはなく、前後の壁面の無いクリンチャ溝形状であってもよい。この場合のクリンチャ溝形状によれば、前後に壁が無いので、ステープラ33の脚部が飛び出さないように、クリンチャ溝20aの表面にステープラ33の脚部を案内する細かい溝部を設けるようになされる。
図19は、ステープラ1に係る実施例としてのマガジン用の回動規制機構80の構成例を示す斜視図である。
図19に示すステープラ1はマガジン用の回動規制機構80を備え、クリンチャアーム5とマガジン機構2との間で当該マガジン機構2の回動を規制するようになされる。回動規制機構80は、プッシャガイド21の突起部21b、中空状のピン(以下中空ピン47という)及び、クリンチャアーム5の突出部5f,5gを有して構成される。
突起部21bは、プッシャガイド21の下方に設けられ、当該プッシャガイド21と同じ樹脂により一体成形されたものである。突起部21bの端部には所定の口径の開孔部201が設けられ、当該開孔部201には中空ピン47を挿入するようになされる。突起部21bは、図21に示すようなマガジン9の開口部9hに挿入され、マガジン9の背面に突起部21bを露出するようになされる。
中空ピン47は、クリンチャアーム5の内幅よりやや短い長さを有している。中空ピン47には、例えば、SUS等の金属板を管状に加工したものが使用される。中空ピン47は、当該ステープラ1の組立後、プッシャガイド21の突起部21bの開孔部201に貫通した状態で使用される。
クリンチャアーム5の内側面の所定の位置には突出部5f,5gが設けられ、当該クリンチャアーム5の突出部5f,5gの下側から中空ピン47を当て付けるようになされる。これにより、中空ピン47の抜け止めを目的としたカバー部材で覆う必要が無くなり、図11に示したようなアームカバー15のデザインの自由度を向上できるようになる。
なお、突出部5f,5gは、それぞれ端面5fa,5gaが下方へ臨むように突き出し加工がなされて設けられている(図22B参照)。このため、中空ピン47の両端部を端面5fa,5gaに当て付けることで、当て付けられている際の位置を精度良く定めることができる。
図20A及びBはプッシャガイド21の構成例を示す上面図及び正面図である。図20Aに示すプッシャガイド21は所定の長さのスライド本体部21aを有している。図20Bに示すスライド本体部21aの裏面には突起部21bが設けられ、更に、突起部21bには開孔部201が設けられている。プッシャガイド21の下方に設けられた突起部21bは、当該プッシャガイド21と同じ樹脂により一体成形されて構成される。突起部21bの端部に設けられた開孔部201には、所定の口径を有する中空ピン47を貫通するようになされる。
スライド本体部21aの裏面には、突起部21bの他に、船底状の長手の巻装部21c、バネ掛け部21d及び固定用の開口部21eが設けられている。いずれも、ステープラ1の組立時に使用される。これにより、スライド本体部21a、突起部21b、巻装部21c、バネ掛け部21d及び開口部21eを有したプッシャガイド21を構成する。
図21A〜Cはマガジン9の構成例を示す上面図、正面図及び側断面図である。図21Aに示すマガジン9は、例えば、板金を図21Bに示すような断面コ字状に折り曲げ加工し、更に、図21Aに示す底部の所定の位置に開口部9h,9iを形成し、その後、例えば、クロムメッキ等を施したものが使用される。開口部9iは切り曲げ凸部9jを有している。
開口部9hには、ステープラ1の組立時、プッシャガイド21の突起部21bが挿入される。開口部9iには、その組立時、スライド本体部21aの裏面の固定用の開口部21eが合わせ込まれると共に、その切り曲げ凸部9jに開口部21eを嵌合して固定するようになされる。
図21Cに示すマガジン9の側面には、ステープル残量を確認できる残量確認窓部9f,9gが設けられている。この例では、ステープル残量の目安を示す「10」、「20」、「30」の数字が刻印されている。
図22A〜Cは、クリンチャアーム5の構成例を示す上面図、正面図及び側面図である。図22Aに示すクリンチャアーム5は、例えば、板金部材にクリンチャアーム展開形状を罫書いて、当該板金部材の切断加工、孔開け加工及び、図22Bに示すような断面コ字状に折り曲げ加工して主体枠5aを作成する。このとき、クリンチャアーム展開形状には、図22Aに示す主体枠5aの底部の所定の位置に開孔部5i,5j及び開口部24が含まれる。他にクリンチャアーム5となる板金部材には、軸受け用の孔部5b,5c,5d,5eが開口される。更に、クリンチャアーム後端部に対応する部位には、リムーバ部5hが打ち抜かれる。
また、クリンチャアーム5の内側に対応する板金部材の一部位を所定方向(内側)に突き出し加工して突出部5f,5gを形成する。このように突出部5f,5gを形成すると、クリンチャアーム5の外側に対応する部位には、突き出し加工時の小さな窪み部のみが残るだけである。そして、板金部材を断面コ字状に折り曲げ加工する。その後、クリンチャアーム5の全体に、例えば、クロムメッキ等を施すようになされる。これにより、図22Aに示すような主体枠5aを有するクリンチャアーム5を作成できるようになる。
図23は、ステープラ1に係る回動規制機構80の組立例を示す上面図である。図24は、図23に示した部品組立構造のX3−X3矢視断面図である。
図23に示すステープラ1によれば、クリンチャアーム5とマガジン機構2との間に回動規制機構80を組み入れ、当該マガジン機構2の上下方向の回動を規制するようになされる。この回動規制機構80を含む部品組立構造を得るためには、まず、プッシャガイド21をマガジン9の底面から背面側へ突出させる。このとき、図21に示したマガジン9の開口部9hに突起部21bを挿入すると、この挿入によって、マガジン9の背面に突起部21bが露出する。
その後、突起部21bの開孔部201にクリンチャアーム5の内幅よりやや短い中空ピン47を貫通させる。中空ピン47には、例えば、SUS等の金属板を管状に加工したものが使用される。中空ピン47は、プッシャガイド21の突起部21bの開孔部201を貫通するように組み込まれる。そして、クリンチャアーム5の内側に切り出された突出部5f,5gの下側から中空ピン47を当て付けて上死点とする。その後、主ピン41を軸受け用の孔部5b,5c(軸支孔)に嵌合して軸受け(軸支機構)を組み立てる。
このようにすると、従来例のようなクリンチャアーム5の底面に一対の開口部を設けなくても済み、ピンを通す孔の数を3つも減らすことができる。従来例では4カ所の開口部にピンを通していた。本発明で1箇所のみであり、組み立てが容易になった。しかも、中空ピン47の抜け止めを目的としたカバー部材で覆う必要が無くなり、図11に示したようなアームカバー15のデザインの自由度を向上できるようになった。
図25A及びBは、回動規制機構80の動作例を示す断面図であって、図24に示した部品組立構造のY1−Y1矢視断面図である。
図25Aに示す待機時の回動規制機構80によれば、マガジン9の底面から突出されたプッシャガイド21の突起部21bは、クリンチャアーム5の内幅よりやや短い中空ピン47が開孔部201を貫通し、しかも、中空ピン47がクリンチャアーム5の内側に設けられた突出部5f,5gに下側から当て付けられるので、この上死点で静止する状態となされる。この中空ピン47を突出部5f,5gに当て付ける力は、図6に示した圧縮バネ46の付勢力によって実現される。
図25Bに示す押下時の回動規制機構80によれば、クリンチ時、マガジン9の上部から綴じ力が与えられるので、クリンチャアーム5の内側の所定の位置に設けられた突出部5f,5gの下側から中空ピン47が離れて当て付け動作が解除される。このとき、マガジン9の上部からの綴じ力は、図7に示したハンドルカバー36、アンドルアーム6及びドライバアーム3を介して圧縮バネ45の付勢力に打ち勝つ押下力がマガジン9に加わることで与えられる。
下死点は、図18に示したクリンチャ16が上部のマガジン9に押下され、当該クリンチャ16が圧縮バネ22の付勢力に打ち勝って、クリンチャ16の本体部20の二股部位がアームカバー15内の底面に当接したときの中空ピン47の位置である。図中、S3はマガジン9の回動ストロークであり、中空ピン47の上死点と下死点との間の離隔距離である。
なお、マガジン9に対する押下力が除かれると、圧縮バネ45の付勢力によって、ドライバアーム3、ハンドルアーム6及びハンドルカバー36が元へ戻ると共に、マガジン9も、圧縮バネ46の付勢力によって、図25Aに示した状態に復帰する。この復帰によって、中空ピン47がクリンチャアーム5の内側の突出部5f,5gに下側から当て付けられた状態に戻り、この上死点で静止する状態が維持される。
このように本発明に係るステープラ1によれば、マガジン機構2の回動を規制する場合に、クリンチャアーム5とマガジン機構2との間に回動規制機構80を備えたので、クリンチャアーム5の内側の突出部5f,5gの配設位置にマガジン機構2の上死点を設定できるようになった。しかも、クリンチャアーム5の内側で中空ピン47の左右の回動を規制できるので、従来方式のようなピンの抜け止め用のカバー部を考慮しなくても済む。従って、クリンチャアーム5の所定部位を被覆するアームカバー15のデザイン上の自由度を向上できるようになった。
この例で、中空ピン47を貫通する開孔部21bについては、スライド本体部21aから下方に延びた突起部21bに適用する場合について説明したが、これに限られることはなく、従来方式のステープラのようにマガジン9の裏面両側に設けられた一対の切り出し孔部に適用してもよい。この場合、マガジン9の裏面両側の両端の切り出し孔部に中空ピン47を貫通させ、クリンチャアーム5の突出部5f,5gに下側から当接する(引掛ける)ように構造を採ることができる。
図26は、ステープラ1に係るドライバアーム用の回動規制機構90の構成例を示す図である。図26Aはそのハンドルオープン時の断面図及び図26Bは、その拡大図を各々示している。図26Aに示すステープラ1はドライバアーム用の回動規制機構90を備え、クリンチャアーム5とドライバアーム3との間で、ハンドルオープン時、当該ドライバアーム3の回動回動を規制するようになされる。ここにハンドルオープンとは、アームカバー15の背面と、ハンドルカバー36の上面とが成す角度をハンドルオープン時の開角度θ2としたとき、クリンチャアーム5上のマガジン2を待機位置に残留させたまま、アームカバー15に対してドライバアーム3及び、ステープルカバー11を伴ったハンドルアーム6を内包するハンドルカバー36が開角度θ2=約170°〜180°に開いた状態をいう。
この例で、回動規制機構90は、アームカバー15に対してハンドルカバー36が、例えば、開角度θ2=170°以上に開かないように規制するようになされる。回動規制機構90は、第1突起部としてのクリンチャアーム5の一対の突起部5k,5m及び、第2突起部としてのドライバアーム3の一対の突起部3f,3gを有して構成される。
突起部5k,5mは、図26Bに示すように、クリンチャアーム5の軸支孔の左右の下方部分の内側において、当該下方部分から内側に突出するように設けられている。また、ドライバアーム3の後端部上方には一対の突起部3f,3gが設けられている。この例では、ドライバアーム3の突起部3fの回動軌跡上に、クリンチャアーム5の突起部5kが存在し、ドライバアーム3の突起部3gの回動軌跡上に、クリンチャアーム5の突起部5mが存在し、ドライバアーム3の回動完了時に両方の突起部3f,5k及び突起部3g,5mが当てつく位置関係に設定され、クリンチャアーム5とドライバアーム3とが組み立てられる。
また、ステープラ1は、ドライバアーム3の上部を押下するハンドルアーム6を有して、当該ドライバアーム3の後端部を回動自在に被覆するハンドルカバー36が設けられている。この例では、ハンドルカバー36のオープン時、ドライバアーム3の突起部3fがクリンチャアーム5の突起部5kに当てつき、ドライバアーム3の突起部3gがクリンチャアーム5の突起部5mに当てつくようになされる。このようにすると、ハンドルカバー36のオープン時、クリンチャアーム5に対するドライバアーム3を板金同士で係合することができ、クリンチャアーム5に対して撓み無くしっかりとドライバアーム3を係止できるようになる。
図27は、回動規制機構用のドライバアーム3の構成例を示す正面図である。図27に示すドライバアーム3の後端部上方(ヒンジ上部)には回動規制機構90を成す一対の突起部3f,3gが設けられる。突起部3f,3gは、突起形状を成している。この例で、図27に示すドライバアーム3のヒンジ上部において円弧状部位が直線状に変化する部分に突起部3f,3gが配置される。
ドライバアーム3は、例えば、板金部材にドライバーム展開形状を罫書いて、当該板金部材の切断加工、孔開け加工及び断面コ字状に折り曲げ加工して主体枠3aを作成する。このときのドライバアーム展開形状には、主体枠3aの後部側面の所定の位置に突起部3f,3gが含まれる。
他にドライバアーム3となる板金部材には、軸受け用の孔部3b,3c及び、リンク部材係合用の開口部3d,3eが開口される。そして、板金部材を断面コ字状に折り曲げ加工する。その後、ドライバアーム3の全体に、例えば、クロムメッキ等を施すようになされる。これにより、図27に示すような主体枠3aを有するドライバアーム3を作成できるようになる。
図28A及びBは、クリンチャアーム5の構成例を示す側面の断面図及び正面図である。
図28Bに示すクリンチャアーム5には、その左右の軸支孔5b,5c(ヒンジ孔)の下方部分から内側に一対の突起部5k,5mが突出されている。突起部5k,5mはクリンチャアーム5の下方部分を内側に曲げることで得られる。
クリンチャアーム5は、例えば、板金部材にクリンチャアーム展開形状を罫書いて、当該板金部材の切断加工、孔開け加工及び、図28Bに示すような断面コ字状に折り曲げ加工して主体枠5aを作成する。このとき、クリンチャアーム展開形状には、主体枠5aの軸支孔5b,5cの下方に一対の突起部5k,5mが含まれる。突起部5k,5mは内側に折り曲げ加工することで形成する。その他は、クリンチャアーム5と同様であるため、その形成方法については説明を省略する。これにより、図28A及びBに示すような主体枠5aに一対の突起部5k,5mを有するクリンチャアーム5を作成できるようになる。
図29A及びBは、回動規制機構90の動作例を示す軸支機構の周辺拡大図である。
図29Aに示す回動規制機構90は、ドライバアーム3の後端部上方に一対の突起部3f,3gが設けられ、一方の側で、ドライバアーム3の突起部3fの回転軌跡上に、クリンチャアーム5の突起部5kが存在し、他方の側でドライバアーム3の突起部3gの回転軌跡上に、クリンチャアーム5の突起部5mが存在する。例えば、突起部5kは軸支孔5bの真下に配置され、かつ、ハンドルオープン時、ドライバアーム3の突起部3fの回転を阻止する位置に配設されている。同様にして、突起部5mは軸支孔5cの真下に配置され、ドライバアーム3の突起部3gの回転を阻止する位置に配設されている。
図中、TPをステープラ1の待機位置とし、OPをそのオープン位置としたとき、この待機位置TPのドライバアーム3の突起部3g(3f)と、クリンチャアーム5の突起部5m(5k)とが成す角度を突起部間の開角度θ2’とすると、突起部間の開角度θ2’は170°程度に設定される。これはアームカバー15に対してハンドルカバー36が、開角度θ2=170°以上に開かないように規制するためである。クリンチャアーム5の突起部5m(5k)は、ドライバアーム3のオープン位置OPに配設されている。
図29Bに示すように、ハンドルカバー36のオープン時、すなわち、ドライバアーム3の回動完了時、回転軌跡上で、ドライバアーム3の突起部3g(3f)がクリンチャアーム5の突起部5m(5k)に当てつくようになされる。ハンドルオープン完了時には突起部間の開角度θ2’がθ2’=0°となる。これにより、アームカバー15に対して、ハンドルカバー36を開角度θ2=170°以上に開かないように規制できるようになる。
このように、本実施例に係るステープラ1によれば、ドライバアーム3の回動を規制する回動規制機構90を備え、ハンドルオープン時のドライバアーム3の突起部3f,3gの回動軌跡上に、クリンチャアーム5の突起部5k,5m(内側曲げ部)が存在し、ハンドルオープン完了時に、両者が当てつく位置関係になされている。
従って、ハンドルカバー36のオープン時、クリンチャアーム5に対してドライバアーム3を板金同士で係合することができ、クリンチャアーム5に対して撓み無くしっかりとドライバアーム3を係止することができる。これにより、従来方式のように上下のアームカバー同士で、当て付ける必要が無く、当て付け用の形状を省略できるので、デザインの自由度を向上できるようになった。
この実施例で、ドライバアーム3の突起部3f,3gと、クリンチャアーム5の突起部5k,5mとを当て付ける場合について説明したが、これに限られることはなく、ドライバアーム3から外側に、曲げ部もしくはダボ部等の突出部を設け、クリンチャアーム5側の突起部または板厚の端面部に、これらの突出部を当て付けるようにしてもよい。また、ドライバアーム3の突起部もしくは板厚端面部と、クリンチャアーム5の内側にダボ部等の突出部を設け、これらを当て付けるようにしてもよい。
なお、第1突起部及び第2突起部を、本実施例の如く、板金部材で設けることで、両突起部を撓み無く、しっかりと係止させることができる。また、第1突起部及び第2突起部を、本実施例の如く、それぞれ一対の構成として設けることで、当て付く際の荷重を分散して良好に受け止めることができる。
図30は、ステープラ1に係るステープル確認窓部の構成例を示す側面図である。
従来方式のホッチキスやタッカー等によれば、マガジンの側面に長孔や、丸孔が設けられているが、ステープル残量を確認するためのステープル確認窓部であることが視覚的に分かりづらく、その形状が単純であり、しかも、ステープル残確認機能を有していることが分かりづらい。
この例では、ステープル確認窓部の構成を工夫して、ステープル33の残量をより一層明確に確認できるようにしたものである。図30に示すステープラ1のマガジン91には、ステープル33の残量を確認するステープル確認窓部81が設けられている。
ステープル確認窓部81は、ドライバ13の側の曲率が小さく、軸支機構70の側の曲率が大きい長孔形状を成している。このようにすると、ステープル残量が多く、窓部の曲率が大きい長孔形状からステープル33が見える面積と、ステープル残量が減ってきて、その曲率が小さい長孔形状からステープル33が見える面積とで残量の多寡を区別できるようになる。
図31A〜Dは、ステープル確認窓部81〜84の構成例を示す側面図である。図31Aに示すステープル確認窓部81は、マガジン91の側面に、当該マガジン91の前端部側の曲率が小さく、その後端部側の曲率が大きい長孔形状部81aを有している。ステープル確認窓部81によれば、例えば、ステープル残量が減ってきた時点で、当該窓部81から見えているステープル33の面積が少なくなるので、視覚的にステープル残量が減っているように感じられる。従って、ステープル33の残量をより一層明確に確認できるようになる。
図31Bに示すステープル確認窓部82は、マガジン92の側面に長孔部82aが開口され、その上部に複数の縦筋(以下縦筋部82bという)を刻印して構成されている。この縦筋部82bの間隔は、ステープル33の残量を表すものである。この例では、当該マガジン92の前端部側から後端部側に向けて、5本の縦筋が刻印される。
これを第1から第5の縦筋とすると、例えば、第5の縦筋の位置でステープル33の最後部が確認できる場合は、「残量が30本である」こと、第4の縦筋の位置でステープル33の最後部が確認できる場合は、「残量が25本である」こと、第3の縦筋の位置でステープル33の最後部が確認できる場合は、「残量が20本である」こと、第2の縦筋の位置でステープル33の最後部が確認できる場合は、「残量が15本である」こと、第1の縦筋の位置でステープル33の最後部が確認できる場合は、「残量が10本である」ことが確認できるようになっている。
図31Cに示すステープル確認窓部83は、マガジン93の側面に半径の異なる丸孔(以下異口径丸孔部83aという)をその前端部側から後端部側に向けて、小→大の順て複数個並べて構成されている。これを第1から第4の丸孔83a〜83dとすると、例えば、第4の丸孔83dの位置でステープル33の最後部が確認できる場合は、「残量がほぼ25本程度である」こと、第3の丸孔83cの位置でステープル33の最後部が確認できる場合は、「残量がほぼ20本程度である」こと、第2の丸孔83bの位置でステープル33の最後部が確認できる場合は、「残量がほぼ15本程度である」こと、第1の丸孔83aの位置でステープル33の最後部が確認できる場合は、「残量がほぼ10本程度である」ことが確認できるようになっている。
図31Dに示すステープル確認窓部84は、マガジン94の側面に長孔部84aが開口され、その上部にステープル残量の数値(以下数値部84bという)を示す『10 20 30 』が刻印される。このようなステープル残量を示す数値部84b等の目盛りを入れることで、インジケータであることを感覚的に知らしめることができる。
このように本実施例としてのステープラ1によれば、ステープル33の残量を確認するステープル確認窓部81等が設けられ、確認窓の形状や縦筋部82b、数値部84b等の刻印によってステープル残量の減少を視覚的に分かり易くなされている。
従って、ステープル確認窓81〜84としての機能をユーザに直感的に伝えること、しかも、ステープルが減ってきていることを視覚的に伝えることができる。上述したステープル確認窓部81〜84は、ステープラの他に、クリンチャを持たず、直接、ステープルを対象面に打ち込むタッカーにも応用できることは言うまでもない。