以下、図面を参照しながら、この発明に係るステープラについて説明をする。
図1は、本発明に係る実施形態としてのステープラ100の構成例を示す断面図である。
図1に示す携帯型のステープラ100は、後端被覆機構50を備えており、所定の綴り力に基づいてステープル30を綴じる機能を有している。ステープラ100は、所定形状の主体枠1aを備えたクリンチャアーム1を有している。主体枠1aは金属板を所定の形状に折曲して構成され、ステープラ100の本体ベース部を構成している。主体枠1aの先端にはクリンチャ溝部1hが設けられ、ステープル30の先端をメガネ状又は平形状に折り曲げる機能構造を有している。
なお、実施例で図示する構成のクリンチャ溝部1hは、ステープル30の先端をメガネ形状に折り曲げるのに好適な例を示している。主体枠1aの裏面側は、意匠形状を施した合成樹脂製のクリンチャアーム用のカバー(以下クリンチャカバー2という)で套装するように被覆(保護)されている。
クリンチャアーム1の主体枠1aには、装填部の機能の一例を構成するマガジン3が可動自在に取り付けられている。マガジン3は、所定形状の主体枠3aを有している。マガジン3は、その主体枠3aの一端にステープル打出口12を有し、かつ、他端に第1の駆動軸支点用の孔部(以下孔部3b,3cという)を有してステープル30が装填される。マガジン3の後部側で、主軸用のピン(以下主ピン21という)が主体枠1aの孔部3b,3cに係合される。マガジン3には、1連接着本数が50本であるステープル30を1連乃至2連を装填可能となされている。
マガジン3には、押圧部の機能の一例を構成するプッシャ6がスライド自在に係合(摺嵌)され、マガジン3に装填されたステープル30を先端のステープル打出口12に向けて押圧する(送る)ように動作する。
マガジン3の後部側とクリンチャアーム1の後部側との間には、コイルバネ10が介在するように配置される。コイルバネ10は、クリンチャアーム1とマガジン3との間に用紙束を介在させるために、そのクリンチャ溝部1hとそのステープル打出口12との間に所定の隙間を保持するようになされる。
上述の主ピン21には、駆動腕部の機能の一例を構成するドライバアーム4が可動自在に取り付けられる。ドライバアーム4は、本体枠4aを有している。本体枠4aは、天板面及び両側面を有するように、金属板を折り曲げ加工して、所定形状に折曲されて形成される。ドライバアーム4は、その一端(先端)にドライバ5(駆動部)を有し、かつ、他端(後端)に主ピン21を受けるための孔部4b,4cを有している。ドライバ5は、プッシャ6により押圧されるステープル30の先頭の上部に当接され、ドライバアーム4に加えられる押下力でステープル30の上部を押下するようになされる。
ドライバアーム4の本体枠4aの内側であって、マガジン3上にはステープルカバー7が配置され、マガジン3に装填されたステープル30を下方に向けて押え込むようになされる。ステープルカバー7は主ピン21に回動自在に取り付けられる。この例でステープルカバー7の端部は、U状を成し、主ピン21に覆い被さるように回動自在に係合される。
ドライバアーム4の本体枠4aと、マガジン3上のステープルカバー7との間には、コイルバネ10よりも弾性を強く設定されたコイルバネ11が備えられ、ドライバ5をマガジン3内から引き出してステープル打出口12上で待機するように付勢される。この状態はステープラ100の待機状態である。
ドライバアーム4の上方には操作部の機能の一例を構成するハンドル8が設けられ、当該ドライバアーム4のドライバ5に綴じ力を加えるように操作される。ハンドル8は、金属板を所定の形状に折曲して構成した主体枠8aを有している。
ハンドル8の上部には操作被覆部の機能の一例を構成するハンドルカバー9が設けられ、当該ハンドル8の主体枠8aの表面を被覆するように套装されている。
ハンドルカバー9は、クリンチャカバー2と同様にして、意匠形状を施した合成樹脂製の整形枠から構成されている。
ハンドル8及びハンドルカバー9は、その後端部において、主ピン21より上方に配置した第2の駆動軸支点部(以下接続軸22という)で、回動自在に係合(枢着)されている。接続軸22は、例えば、クリンチャアーム1の板金側面をバーリング加工等よって環状に設けられた凸状の軸部1d、1eと、ハンドル8の板金側面に設けられたU状の軸受け部8d,8eで構成されている(図9参照)。
しかも、ハンドル8及びハンドルカバー9の接続軸22からその先端部(ステープル打出口方向)に至る途中にドライバアーム4を押下する作用点qが設定されている。この作用点qには、ハンドル8とドライバアーム4とを自在に係合する作用点用のピン(以下作用ピン23という)が設けられる。
このように、マガジン3及びドライバアーム4が共有する主ピン21の位置よりも接続軸22の位置を上方に設定すると、ハンドル8及びハンドルカバー9の先端部を力点pとしたとき、この接続軸22が支点となって、作用点qでドライバアーム4を押下すると共にハンドルカバー9の力点pとで、少ない押下力でステープル30を綴じることができる(倍力機構)。
この例で、マガジン3、ドライバアーム4及びステープルカバー7の主ピン21や、ハンドル8及びハンドルカバー9の接続軸22等が構成されたステープラ100の後端部には、被覆部材の機能の一例を構成するバックカバー15が設けられる。
バックカバー15は湾曲カバー部15dを有している。湾曲カバー部15dには2つの折り曲げ支点部P1−P1及びP2−P2が設定されている。第1の折り曲げ支点部P1−P1の位置は、マガジン3の主ピン21の位置よりも下方であって、湾曲カバー部15dの根元に設定される。この例で、第2の折り曲げ支点部P2−P2の位置は、折り曲げ支点部P1−P1の位置よりも当該バックカバー15の一端の側に設定される。例えば、マガジン3の主ピン21の位置と同等の位置に設定される。もちろん、これに限定されることはなく、折り曲げ支点部P2−P2を当該主ピン21よりも上方に設定してもよい。また、折り曲げ支点部P1−P1、P2−P2は2箇所だけでなく、主ピン21を基準にして前後に設け、計3箇所の折り曲げ支点部を湾曲カバー部15dに設けてもよい。
この例で、湾曲カバー部15dは、一端がハンドル8とハンドルカバー9の間を通り、かつ、ドライバアーム4とハンドル8の間に滑り込むようになされ、他端がマガジン3に取り付けられる(後端被覆機構50)。
この例で、ハンドルカバー9の上面後方には、予備ステープル収納部17が設けられる。この例では、予備のステープル30を2つ重ねた状態で収納可能となされている。予備ステープル収納部17には収納蓋18が可動自在に取り付けられ、その上部を覆うように閉められる。
予備ステープル収納部17の下方は、カバー先端移動領域I(移動路)となされる。カバー先端移動領域Iは予備ステープル収納部17の下方のみならずドライバアーム4とハンドル8又はハンドルカバー9の間に設定され、上述の湾曲カバー部15dの先端部分を、当該ハンドル8やハンドルカバー9等の動きに対応して相対的に移動するようになされる。ハンドル8からドライバアーム4に至る経路は、ハンドル8を構成する板金に所定開口幅の孔部8fが設けられ、この孔部8fに湾曲カバー部15dの先端部分を通すことで、カバー先端移動領域Iを自在に移動できるようになされる。
また、バックカバー15は、その幅が湾曲カバー部15dの側端部位とハンドルカバー9の後端側部位や、クリンチャカバー2の後端側部位の間に隙間が生じない程度に、これらの後端側部位の開口幅とほぼ等しくなされる。バックカバー15の長さは、ステープル綴じ動作時、湾曲カバー部15dの先端部がカバー先端移動領域Iから外れない程度の全長を有していればよい。もちろん、バックカバー15の幅と、ハンドルカバー9やクリンチャカバー2等の後端側部位の開口幅とが一致していなくてもよい。
このクリンチャカバー2やハンドルカバー9等の後端側部位で形成される開口部に異物(例えば、指先等)が入り込むのを防止し、かつ、外観デザイン上、当該部分がすっきりとすればよい。
図2は、バックカバー15の構成例を示す拡大斜視図である。図2に示すバックカバー15は、カバー本体を構成する所定形状の座部15aを有している。座部15aには、係止用の爪状の突起部15b、係止用の逆L状(双頭爪状)の突起部(以下双頭突起部15cという)及び被覆用の湾曲カバー部15dが連設されている。
座部15aは、所定の位置で折れ曲がった形状(断面「く」状)を有し、その前半部分と後半部分とが画定されている。前半部分の座部表面側には、係止用の突起部15bが設けられる。突起部15bは、所定の長さl0及び幅w0を有しており、その双頭部側がなだらかな斜面を有し、その座部端部側は垂直に切り立った形状を有している。
突起部15bから所定距離だけ離れた位置に設けられた双頭突起部15cは、所定の長さl及び2つの幅w1,w2を有している。突起部15cの根元の幅はw1であり、頭部の幅はw2である。根元の幅w1と頭部の幅w2との関係はw2>w1に規定されている(図3参照)。このように寸法を規定したのは、バックカバー15をマガジン3の底部に装着後の堅固な抜け止めを考慮したためである。
更に、座部後半部分の表面側には、湾曲カバー部15dが連設されている。湾曲カバー部15dは、例えば、合成樹脂を金型射出成形したもので、板厚方向に弾性変形可能な硬い性質を有している。この例で、湾曲カバー部15dは、座部後半部分の所定の面を基準にして根元付近から垂直に立ち上がり、その後、ほぼ90°に折り曲げられ、更にその先で、水平部分を保つような湾曲形状に整型されている。湾曲カバー部15dの根元付近から垂直に立ち上がった部分には、所定の間隔を置いて、2つの折り曲げ支点部P1−P1、P2−P2が順に設置されている。
バックカバー15は、例えば、当該ステープラ100の背面側方向に延在するようにしたとき、2つの折り曲げ支点部P1−P1、P2−P2を備え、折り曲げ支点部P1−P1で背面側方向に対して反対側に湾曲カバー部15dが折曲変形(谷折り)できるようになされている。折り曲げ支点部P2−P2で背面側方向と同等側に湾曲カバー部15dが折曲変形(山折り)できるようになされている。折り曲げ支点部P1−P1、P2−P2はセルフヒンジを構成している。このような構成にしたのは、クリンチャアーム21に対するハンドルカバー9のオープン時、ドライバアーム4と独立してハンドル8が戻る構造としたことにより、綴り加重への影響を考慮したこと、及び、ハンドル8の全開状態を維持できるようにして、予備のステープルの装填作業や、ステープルジャム(針詰まり)時の除針作業を容易にできるようにしたためである。
なお、「く」状を有する座部15aを補強するために、座部前半部分と座部後半部分との裏面側及び表面側には、それぞれ所定形状のリブ15f、15gが連設されている。リブ15fは、座部後半部分の表面側と湾曲カバー部15dの内側との間に連設され、リブ15gは、座部前半部分から座部後半部分に至る裏面側と湾曲カバー部15dの内側との間に各々連設される。
リブ15gはクリンチャアーム1と座部後半部分の裏面側との間を埋めるような形状を有しており、バックカバー15をマガジン3に取り付けた後、リブ15gの底面がクリンチャアーム1に、ほぼ当接する状態となされる。この結果、湾曲カバー部15dの折り曲げ支点部P1−P1が下方へ移動するような力が働いたとき、クリンチャアーム1からリブ15gが受ける反力によって当該力を打ち消すことができる(反力の確保)。これにより、座部15aに対する湾曲カバー部15dの所定の姿勢を維持できるようになる。
図3は、バックカバー15を背面から見た構成例を示す図である。図3に示すバックカバー15は、先端部位が2つに分割された双頭状の摺動部(以下先端双頭部15eという)を有している。この例で、湾曲カバー部15dの自由端となる先端は、M状にカットされて二股に分割されている。二股に分割されたM状部位は、各々の角部が法面加工されている。例えば、2つの台形状にカットされた各々の台形状部位が先端に向かって傾斜が施される。この形状は釘抜きの先端形状に類似している。このように先端部を2つに分割すると、バックカバー15をドライバアーム4とハンドル8の間へ摺動させたとき、その先端双頭部15eの摩擦抵抗を減らすことができる。この先端双頭部15eの摩擦抵抗が減ることで、バックカバー15を円滑にカバー先端移動領域Iに挿抜できるようになる。図中には、突起部15bの幅w0、双頭突起部15cの幅w1,w2や、2つの折り曲げ支点部P1−P1、P2−P2を示している。
図4は、バックカバー15の機能例を示す図であり、図3に示したバックカバー15のX−X矢視断面図である。
図4に示すバックカバー15の機能例によれば、図5で示したような90°に折り曲げられた湾曲姿勢を維持した湾曲カバー部15dを時計方向に回転すると、湾曲カバー部15dが第1の折り曲げ支点部P1−P1を基準にして同じ姿勢を保ったまま変位するようになる。この例で、図中、二点鎖線で示す湾曲カバー部15dが、例えば、角度0°から90°へ角度10°置きにその姿勢を変えた場合の位置を示している。
湾曲カバー部15dの0°から90°への動きは、当該ステープラ100の待機姿勢からステープル装填時の動きを想定した場合である。この例で、ハンドル8の全開状態を想定したとき、角度180°付近では、湾曲カバー部15dが第2の折り曲げ支点部P2−P2を基準にして山折り姿勢に成る。つまり、バックカバー15が湾曲カバー部15dの谷折り姿勢(ε状)からZ状に姿勢を変えるようになる。このような変位が得られることで、クリンチャカバー2やハンドルカバー9等の後端側部位で形成される開口部を隙間なく閉塞できるようになる。当該開口部に異物が入り込むのを防止できるようになる。しかも、ハンドル8の開動作に対する反力が低減されるようになる。この結果、ハンドル8の全開状態を維持できるようになる。
図5〜図7は、バックカバー15の装着例(その1〜3)を示す図である。図5Aは、バックカバー15の構成例を示す側面図であり、図5Bは、マガジン3の構成例を示す上面図である。図5〜図7において、P1−P1、P2−P2は2つの折り曲げ支点部を示している。
まず、図5Aに示すようなバックカバー15を準備する。バックカバー15は、係止用の突起部15b、係止用の双頭突起部15e及び被覆用の湾曲カバー部15dを象ったコア及びキャビティから成る金型を作成し、この金型に合成樹脂を封入することで整型される。
また、図5Bに示すような前方に切り曲げ孔3jを備え、後方に切り曲げ孔3kを備えたマガジン3を準備する。この例で、マガジン3の主体枠3aの底部の後方(ステープル打出口12の位置と反対側)には、バックカバー15の取り付け領域IIが画定されている。この取り付け領域IIには、矩形状の第1の開口部(以下矩形孔部3hという)が所定の位置に設けられる。矩形孔部3hは幅w0’および長さl0’を有しており、その幅w0’は、突起部15bの幅w0よりも大きく、また、矩形孔部3hの長さl0’は、突起部15bの長さl0よりも長く設定される。
この矩形孔部3hから所定距離だけ離れた位置には、第2の開口部(以下T状孔部3iという)が設けられる。T状孔部3iは細幅w1’および太幅w2’を有しており、太幅w2’部の方が矩形孔部3hに向くように配置される。T状孔部3iの細幅w1’は、双頭突起部15cの幅w1よりも大きく、また、T状孔部3iの太幅w2’は、双頭突起部15cの幅w2よりも大きく、更に、T状孔部3iの長さl’は、双頭突起部15cの長さlの約2倍に設定される。
図6Aは、マガジン3へのバックカバー15の装着例(その2)を示す側面図であり、図6Bは、その装着例を示す上面図である。
この例で、図5A及びBに示したマガジン3及びバックカバー15が準備できたら、マガジン3にバックカバー15を取り付ける。まず、図6Aに示すマガジン3のT状孔部3iにバックカバー15の双頭突起部15cを嵌め込む。このとき、双頭突起部15cがT状孔部3iの太幅に位置合わせして嵌入される。この時点で、突起部15bは、矩形孔部3hに係合されることなく、ずれた位置でマガジン3の背面に当接される。このとき、図中、矢印に示すようにバックカバー15の背面からマガジン3の上面に向けて強く押すようになされる。次に、図6Aに示した矢印の向きに押下した状態で、図6Bに示すようにバックカバー15を矢印の方向(紙面の左側から右側)にスライド(摺動)するようになされる。
図7Aは、マガジン3へのバックカバー15の装着例(その3)を示す側面図であり、図7Bは、その装着例を示す上面図である。
この例で図6に示した矢印方向へのスライド操作を完了した時点で、図7Aに示すように、突起部15bの垂直に切り立った部分が矩形孔部3hに嵌合される。これにより、図7Bに示すように双頭突起部15cがT状孔部3iに各々係合されて固定される。このように嵌合固定することで、バックカバー15の後端部をマガジン3の所定の位置にしっかりと固定(止着)できるようになる。
図8及び図9は、ステープラ100の組立例(その1、2)を示す斜視図である。この例ではクリンチャアーム1を基準にしてマガジン3及びバックカバー15の部品部分と、クリンチャカバー2、ドライバアーム4、ハンドル8、ハンドルカバー9の部品部分の2つに分けて説明する。
まず、図8に示すクリンチャアーム1にマガジン3、ステープルカバー7及びバックカバー15を取り付ける。クリンチャアーム1には、所定形状の主体枠1a、主軸受け用の孔部1b、1c、接続軸構成用の凸状の軸部1d,1e、ロック用の孔部1f、1g及びクリンチャ溝部1hを備えたものが使用される。例えば、最初にマガジン3にバックカバー15を取り付ける。この際の取付方法は、図5〜図7で説明しているので省略する。もちろん、バックカバー15を先にマガジン3に組み込む必要はなく、組立て順序はこれに限られることはない。
次に、マガジン3内にプッシャ6、バネガイド6a、スプリングバネ6bを取り付ける。マガジン3には、所定形状の主体枠3a、主軸受け用の孔部3b、3c、ロック用の孔部3d、3e、ステープル確認窓部3f、3g及びステープル打出口12を備えている他、図5Bに示した矩形孔部3h及びT状孔部3iを備えたものが使用される。プッシャ6にはプッシャ6には二股状の本体枠64、平面凸状の係合部65及びガイド孔部66を有したものが使用される。
例えば、プッシャ6のガイド孔部66にバネガイド6aを通してスプリングバネ6bを挿入し、この状態でマガジン3内において、前後の切り曲げ孔3j、3kとの間に嵌入するように部品が組み立てられる。スプリングバネ6bは、ステープル30が装填されない側であって、プッシャ6の端面側と、マガジン3内の後端側との間に挿入する。
次に、マガジン3上にステープルカバー7を係合する。ステープルカバー7には所定形状を有した本体枠7a、主軸係合用のU状部7b、7c及びプッシャバンド係合用の開口部7dを備えたものが使用される。ステープルカバー7は、ドライバアーム4と共に主ピン21によって係合される。
更に、プッシャバンド6cをプッシャ6とステープルカバー7の間に取り付ける。プッシャバンド6cには、所定の長さを有し、剣先部61、T状部62及び突起部63を有した舌状のものが使用される。プッシャバンド6cには、合成樹脂製のものが使用される。例えば、上述のプッシャ6の係合部65に剣先部61を取り付ける。T状部62及び突起部63をステープルカバー7の開口部7dに取り付ける。
この時点で、クリンチャアーム1及びマガジン3にロックピン13及びロックキャップ14を取り付けてもよい。マガジン3には、所定の位置にピン挿入用の孔部3d,3eを備えたものが使用される。ロックピン13には、一端が抜け止め加工がなされ、他方が係止部を有した棒状体が使用される。ロックキャップ14には、段付きの係合部品が使用される。ロックキャップ14は、小径部位及び大径部位を有している。
クリンチャアーム1の所定の位置には、ロック用のだるま状の開口部1fと、長孔形状の孔部1gとが設けられる。開口部1fは小口径部位及び大口径部位を有している。開口部1fの小口径部位はロックピン13の外径とほぼ等しくなされる。また、開口部1fの大口径部位はロックキャップ14の小径部位とほぼ等しくなされる。ロックキャップ14の大径部位は、開口部1fの大口径部位よりも大きくなされている。
ロックピン13は、クリンチャアーム1の長孔形状の孔部1gから挿入され、マガジン3の孔部3d,3eを通して、だるま状の開口部1fに至り、その先端にロックキャップ14が取り付けられる。このように、開口部1f及びロックキャップ14を構成すると、ロックキャップ14を手前に引っ張ったとき、ロックピン13が開口部1fの小口径部位に移動することから、クリンチャアーム1に対するマガジン3のロックが解除される。
この動きと反対に、キャップ14を押し下げると、ロックピン13が開口部1fの小口径部位から大口径部位へ移動する。その後、キャップ14を奥に押出すと、開口部1fの大口径部位にキャップ14の小径部位が嵌合される。これにより、クリンチャアーム1に対して、マガジン3をロックできるようになる(ロック機構)。
また、図8で組み上げたクリンチャアーム1、マガジン3、ステープルカバー7及び、バックカバー15から成る中途組上げ部品に、図9に示すクリンチャカバー2、ドライバアーム4、ハンドル8、ハンドルカバー9、コイルバネ10、コイルバネ11を取り付ける。ドライバ5は予めドライバアーム4に取り付けて置く。
この例では、コイルバネ10をドライバアーム4とクリンチャアーム1の間に配置し、コイルバネ11をドライバアーム4とハンドル8の間に配置し、主ピン21を主体枠1aの主軸受け用の孔部1bからドライバアーム4の主軸受け用の孔部4bを通して、更に、マガジン3の主軸受け用の孔部3b及び3cを通して、再び、ドライバアーム4の孔部4cを通して、主体枠1aの孔部1cに至るように組立てる。
次に、接続軸22をハンドル8の主体枠8aの作用点用の孔部8bから、ドライバアーム4の主体枠4aの作用点用の孔部4dを通して孔部4eに至り、更に、主体枠8aの孔部8cに至るように組立てる。その後、クリンチャアーム1にクリンチャカバー2を取り付け、ハンドル8にハンドルカバー9を取り付け、ハンドルカバー9の上部に収納蓋18を取り付ける。そして、バックカバー15で後端部の開口部を套装する。これにより、図10に示すステープラ100を完成する。
図10は、ステープラ100におけるバックカバー装着後の外観例を示す斜視図である。
図10に示すステープラ100によれば、クリンチャカバー2やハンドルカバー9等の後端側部位で形成される開口部(以下後端側開口部40という)は、バックカバー15の湾曲カバー部15dによって套装される。この状態は、図10に示した湾曲カバー部15dの機能によって、予備ステープル収納部17の後端側下面への当該湾曲カバー部15dの板厚方向の弾性による圧接によって保持される。このような圧接保持が得られることで、クリンチャカバー2やハンドルカバー9等の後端側部位で形成される後端側開口部40を隙間なく閉塞できるようになる。このことで、当該後端側開口部40に異物が入り込むのを防止できるようになる。
図11〜図15は、ステープラ100の動作例(その1〜5)を示す断面図である。この例では、ステープラ100の待機状態、クリンチ状態、半開状態、全開直前状態及び全開状態の5つに分けて説明する。
図11に示す待機状態のステープラ100によれば、ハンドルカバー9とクリンチャカバー2とが成す角度を待機角θ1としたとき、例えば、θ1=30°程度を成して姿勢が維持される。この状態では、ロックが開放されており、マガジン3が水平に保持され、ドライバアーム4は、水平位置からやや起立され、そのドライバ5がマガジン3のステープル打出口12上であって、ステープル30の押圧動作に支障を来さない位置で待機した状態を維持する。この待機状態で、バックカバー15は、クリンチャカバー2やハンドルカバー9等の後端側開口部40を、その湾曲カバー部15dによる套装状態を維持する。
また、図11に示した待機状態から図12に示すクリンチ状態に至るステープラ100によれば、図中に示す接続軸22(第2の駆動軸支点部)を中心にして、ハンドルカバー9の先端側をクリンチャカバー2の方向に押下すると、ハン
ドルカバー9はハンドル8を介して接続軸22を押圧すると共に、ドライバアーム4を押圧する。
この押圧を受けてドライバアーム4は主ピン21(第1の駆動軸支点部)を中心に回動降下しようとするが、コイルバネ11よりコイルバネ10の方が弾性(ばね性)が弱く設定されているため、ドライバアーム4に加えられた押圧力は、コイルバネ10を縮小させる。
この縮小の結果、マガジン3は、ドライバアーム4及びステープルカバー7に押される形態で、主ピン21を中心に回動降下(前傾)し、クリンチャカバー2のクリンチャ溝部1hとの間で、例えば、用紙束を挟持するようになる。
そして、ハンドルカバー9の回動降下操作を更に継続すると、ドライバアーム4には、コイルバネ11の弾性よりも強い力がハンドル8を介して加えられるので、コイルバネ11は縮小し、この縮小に伴う押圧力がドライバ5に伝達される。
この押圧力を受けたドライバ5がマガジン3中の先頭に位置するステープル30をステープル打出口12から打出し、マガジン3とクリンチャカバー2とで挟持された用紙束を貫通するようになる。このステープル30をクリンチャ溝部1hに押圧すると、ステープル30の先端がメガネ状に変形し、用紙束の綴じ込み操作を完了できるようになる。
この一連の動作において、ハンドルカバー9は、その先端側がマガジン3等を介してクリンチャカバー2の方向に押圧されることにより、接続軸22を支点にして回動する。その押圧(回動)操作が先端側と接続軸22との間のピン23に作用点となって現われる。この例で、ハンドル8及びハンドルカバー9の先端部を力点pとしたとき、この接続軸22が支点となり、作用ピン23が作用点qとなって、ハンドルカバー9の先端部と協調して接続軸22でドライバアーム4を二重に押下する(てこの原理)ので、少ない押下力でステープル30を綴じることができる(倍力機構)。
この一連の動作において、バックカバー15は、後端側開口部40を湾曲カバー部15dによる套装状態を維持する。図12中に、二点鎖線に示すように湾曲カバー部15dの先端双頭部15eが跳ね上がることなく、予備ステープル収納部17の後端側下面への板厚方向の弾性による圧接によって、図12中に実線で示すように当該湾曲カバー部15dの姿勢が保持される。これにより、クリンチ状態においても、後端側開口部40を隙間なく閉塞できるようになる。
なお、ハンドルカバー9に対する押圧を解放すると、ステープラ100は、コイルバネ10,11によって、マガジン3や、ドライバアーム4、ドライバ5、ハンドルカバー9等が原状位置に復帰し、図11に示したθ1=30°を成す待機姿勢を維持するようになされる。
更に、図11に示す待機状態から半開状態に至るステープラ100によれば、接続軸22を中心にハンドルカバー9を後方に反転させた場合である。この場合、ハンドルカバー9とクリンチャカバー2とが成す角度を起立角θ2としたとき、例えば、θ2=90°程度を成している。この例で、ハンドルカバー9には、ハンドル8を介してドライバアーム4が接続されているので、ドライバアーム4は、主ピン21を中心にして反転起立し、原状位置に待機していたマガジン3の上面側が開放される。これにより、ステープル装填ができる状態となされる。この状態でステープル30を簡単に装填できるようになる。例えば、予備のステープル30を予備ステープル収納部17から取り出してマガジン3へ装填する。
このステープル30の装填時、ハンドルカバー9の接続軸22を中心とする反転操作において、後部開口部を閉塞したバックカバー15の湾曲カバー部15dの先端双頭部15eは、ハンドルカバー9の反転に伴ってカバー先端移動領域Iを相対的に移動して、ハンドルカバー9に伴われて反転してきた、ドライバアーム4の本体枠4aの上部に接し、その上部に相対的に摺接する。この移動によっても、バックカバー15は、後端側開口部40を湾曲カバー部15dによる套装状態を維持する。図13中に、実線で示すように予備ステープル収納部17の後端側下面への板厚方向の弾性による圧接によって当該湾曲カバー部15dの姿勢が保持される。
このとき、リブ15gの底面がクリンチャアーム1に、ほぼ当接する状態となされ、この結果、クリンチャアーム1からリブ15gが反力を受けるので、湾曲カバー部15dの折り曲げ支点部P1−P1の下方向への移動を阻止できるようになる。これにより、座部15aに対する湾曲カバー部15dの所定の姿勢を維持でき、ステープル30の装填時のハンドルカバー9の反転操作においても、後端側開口部40を隙間なく閉塞できるようになる。
更に、図13に示した半開状態から図14に示す全開直前状態に至るステープラ100によれば、接続軸22を中心にハンドルカバー9を半開状態から更に後方に反転させた場合である。この場合、ハンドルカバー9とクリンチャカバー2とが成す角度を全開角θ3としたとき、例えば、θ3=160°程度を成している。この例で、ハンドルカバー9には、半開状態でのハンドル8に接続されているドライバアーム4がそのまま主ピン21を中心にして連れ回りし更に起立する。
このハンドルカバー9の全開直前時、ハンドルカバー9の接続軸22を中心とする更なる反転操作においても、後部開口部を閉塞したバックカバー15の湾曲カバー部15dの先端双頭部15eは、ハンドルカバー9の反転に伴ってカバー先端移動領域Iを相対的に更に移動して、ハンドルカバー9に伴われて反転してきた、ドライバアーム4の本体枠4aの上部に接したまま、その上部に相対的に更に摺接する。
この移動によっても、バックカバー15は、後端側開口部40を湾曲カバー部15dによる套装状態を維持する。図13中に、実線に示すように予備ステープル収納部17の後端側下面への板厚方向の弾性による圧接及びドライバアーム4の本体枠4aの上部と接することによって当該湾曲カバー部15dの姿勢が保持される。このときも半開状態と同様にして、クリンチャアーム1からリブ15gが反力を受けるので、湾曲カバー部15dの折り曲げ支点部P1−P1の下方向への移動を阻止できるようになり、ハンドルカバー9の全開時においても、後端側開口部40を隙間なく閉塞できるようになる。この状態で、折り曲げ支点部P1−P1は、後端側開口部40の内側に隠れる状態になる。
更に、図14に示した全開直前状態から図15に示す全開状態に至るステープラ100によれば、接続軸22を中心にハンドルカバー9を全開直前状態から更に後方に反転させた場合である。この場合、ハンドルカバー9とクリンチャカバー2とが成す角度を全開角θ4としたとき、例えば、θ4=180°程度を成している。ドライバアーム4は、原状位置に待機しているマガジン3を残してその上面側が更に開放される。これにより、ステープル装填時の操作性がより一層向上する。
このハンドルカバー9の全開時、ハンドルカバー9の接続軸22を中心とする更なる反転操作において、後部開口部を閉塞したバックカバー15の湾曲カバー部15dの先端双頭部15eは、ハンドルカバー9の反転に伴ってカバー先端移動領域Iを相対的に更に移動して、ハンドルカバー9に伴われて反転してきた、ドライバアーム4の本体枠4aの上部に接したまま、その上部に相対的に更に摺接する。
この移動によって、バックカバー15は、後端側開口部40を湾曲カバー部15dによる套装状態を維持する。このとき、湾曲カバー部15dの折り曲げ支点部P2−P2は山折り姿勢をとる。この例で、バックカバー15は後端側開口部40の内側で、折り曲げ支点部P1−P1の谷折り姿勢によるε状から、折り曲げ支点部P2−P2の山折り姿勢によるZ状へ態様を変化するようになる。
なお、図13乃至図15において、接続軸22を構成する部位では、クリンチャアーム1の主体枠1aの凸状の軸部1d、1eからハンドル8のU状部8d、8eが外れて、ハンドルカバー9の回転動作は、主ピン21へ移行される。このようにすると、クリンチャアーム1に対してハンドルカバー9を全開角θ4=180°に展開できるようになる。
このように、実施形態としてのステープラ100によれば、後端被覆機構50を備え、後端被覆機構50には、後端側開口部40を隠せる大きさの合成樹脂製の湾曲カバー部15dを有しており、綴じ動作時、この湾曲カバー部15dがハンドル8とハンドルカバー9の間を通り、ドライバアーム4と、ハンドル8の間に滑り込むようになされる。上述した例で、湾曲カバー部15dの先端がハンドルカバー9の動きに合わせて2態に変形しながら、湾曲カバー部15dがハンドルカバー9の後端側とドライバアーム4の天井面との間を自由に移動する。
従って、マガジン3及びドライバアーム4の主ピン21(第1の駆動軸支点部)と異なった接続軸22(第2の駆動軸支点部)を基準にしたハンドルカバー9の開閉動作に伴う第1の折り曲げ支点部P1−P1が谷折り姿勢に成ることで、当該バックカバー15の外側への移動(開き)を最小限に抑制することができる。
これにより、従来方式のバックカバー15に比べて後端側開口部40に、ほとんど隙間を生じさせることなく、マガジン3及びドライバアーム4の主ピン21や、ハンドル8及びハンドルカバー9の接続軸22等の機構部分を被覆できるようになる。しかも、クリンチャアーム1や、マガジン3、ドライバアーム4、ハンドル8等の板金切り口部分をバックカバー15で隠せるので、ステープラ本体の見栄えが良くなるばかりか、その安全性を向上できるようになる。
更に、ハンドル8の開動作を継続すると、主ピン21とほぼ同等位置に設定された第2の折り曲げ支点部P2−P2が山折り姿勢に成ることで、ハンドル8の開動作に対する反力が低減されるようになる。これにより、ハンドル8の全開状態を維持できるので、予備のステープル30の装填作業や、ステープルジャム(針詰まり)時の除針作業を容易にできるようになった。
この例では、2つの折り曲げ支点部P1−P1、P2−P2を設定する場合について説明したが、これに限られることはなく、第3の折り曲げ支点部を第2の折り曲げ支点部P2−P2の前側又は/及び後側に配置するようにしてもよい。