以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1はブレーキ装置の概要を示す斜視図を、図2はブレーキ装置の内部構造を説明する断面図を、図3はアクチュエータのケース側を示す斜視図を、図4はアクチュエータのカバー側を示す斜視図を、図5はアクチュエータの内部構造を説明する断面図を、図6はケースの製造手順を説明する側面図を、図7はケースの製造手順を説明する平面図を、図8はカバーのケースへの溶着手順を説明する断面図をそれぞれ示している。
図1および図2に示すように、ブレーキ装置(ディスクブレーキ)10は、電動パーキングブレーキ装置(Electric Parking Brake)を備えたものであって、車両の車軸(図示せず)に一体回転可能に取り付けられたロータ11を備えている。ロータ11は、複数のハブボルト12(図示では4つ)を有するロータ本体11aと、ロータ本体11aの径方向外側に一体に設けられたディスク部11bとを備えている。ディスク部11bは、一対のパッド13a,13bによって挟まれる摩擦面を形成している。また、ロータ本体11aにはホイール(図示せず)が装着され、各ハブボルト12にはホイールナット(図示せず)がねじ結合されるようになっている。
ブレーキ装置10は、車両のナックル等の非回転部分(図示せず)に固定されるマウンティングブラケット14を備えている。マウンティングブラケット14は、鋳造成形により所定形状に形成され、一対のスライドピン15がそれぞれ摺動自在に装着される一対のピン装着部14aが一体に設けられている。各ピン装着部14aはロータ11の軸方向に延びており、各スライドピン15はロータ11の軸方向に移動自在となっている。そして、各ピン装着部14aの間には橋渡し部14bが一体に設けられ、各ピン装着部14aは、ロータ11の周方向に所定の間隔を持って配置されている。
ブレーキ装置10は、マウンティングブラケット14に移動自在に取り付けられるキャリパ16を備えている。キャリパ16は、マウンティングブラケット14と同様に鋳造成形により所定形状に形成され、キャリパ本体16aと、一対のピン固定部16bとを備えている。キャリパ本体16aは、ロータ11のディスク部11bを跨ぐように断面が略U字形状に形成され、爪部16c,シリンダ部16dおよび連結部16eを備えている。連結部16eは、爪部16cとシリンダ部16dとを連結している。
爪部16cは、ロータ11の軸方向に沿うハブボルト12側に配置され、シリンダ部16dは、ロータ11の軸方向に沿うハブボルト12側とは反対側に配置されている。ここで、ロータ11の軸方向に沿うハブボルト12側とは反対側には、車両の振動を減衰するショックアブソーバ(図示せず)が配置される。そのため、ブレーキ装置10は、ショックアブソーバを避けて車両に固定されている。
図2に示すように、シリンダ部16dは有底筒状に形成されており、シリンダ部16dの内部には、ピストン17が摺動自在に設けられている。つまり、ピストン17は、キャリパ16に移動自在に保持されており、ロータ11の軸方向に摺動するようになっている。ここで、シリンダ部16dの径方向内側は切削加工されており、ピストン17がスムーズに摺動可能となっている。
また、シリンダ部16dの内部であって、かつピストン17の背面側(図中右側)には、ブレーキペダル(図示せず)の操作によりブレーキ液(図示せず)が供給されるようになっている。つまり、運転者のブレーキペダル操作による通常の制動時には、ブレーキ液の供給により制動力が発生するようになっている。
図1に示すように、一対のピン固定部16bは、シリンダ部16dの径方向外側に、互いに対向するよう相反する方向に突出して設けられている。各ピン固定部16bの先端部にはボルト18がそれぞれ挿通され、これらのボルト18はスライドピン15にそれぞれ固定されている。これにより、キャリパ16は、マウンティングブラケット14に対して、ロータ11の軸方向に移動自在となっている。
図2に示すように、爪部16cは、ディスク部11bのハブボルト12側にある一方のパッド(アウターパッド)13aを、ディスク部11bに向けて押し付ける。また、ピストン17は、ディスク部11bのハブボルト12側とは反対側にある他方のパッド(インナーパッド)13bを、ディスク部11bに向けて押し付ける。
より具体的には、運転者のブレーキペダル操作により、ピストン17の背面側にブレーキ液が供給されると、ピストン17がシリンダ部16dの内部から外部に押し出されて、図2中左側に移動する。これにより、ピストン17はパッド13bをディスク部11bに向けて押圧する。一方、ピストン17がパッド13bを押圧する際の反力によって、キャリパ16がマウンティングブラケット14に対して、図2中右側に移動する。これにより、爪部16cはパッド13aをディスク部11bに向けて押圧する。
ピストン17は中空となっており、その内部には送りねじ機構17a(詳細図示せず)が収容されている。送りねじ機構17aは、アクチュエータ20によって正逆回転される雄ねじ部材17bを備えている。また、送りねじ機構17aは、雄ねじ部材17bがねじ結合される雌ねじ部材(図示せず)を備えている。これにより、運転者が車室内のパーキングブレーキスイッチ(図示せず)を操作することで、アクチュエータ20によって雄ねじ部材17bが正逆方向に回転駆動される。つまり、アクチュエータ20の出力軸40(図2参照)は、ブレーキ装置10のピストン17を往復移動させるようになっている。
図1および図2に示すように、ブレーキ装置10は、送りねじ機構17aを駆動するアクチュエータ20を備えている。アクチュエータ20は、シリンダ部16dのロータ11側とは反対側の底部側に固定されている。以下、パーキングブレーキスイッチの操作時に作動するアクチュエータ20の構造について、図面を用いて詳細に説明する。
図3ないし図5に示すように、アクチュエータ20は、略L字形状に形成されたケース21を備えている。ケース21の開口部21a(図2および図5参照)は、カバー22によって閉塞され、これによりケース21の内部に雨水や埃等が進入するのを防止している。ケース21およびカバー22は、いずれも樹脂材料を射出成形することで所定形状に形成されている。
ここで、ケース21は、アクチュエータ20の外郭の大部分を占めており、かつ車両の足回りの近傍の劣悪な環境に曝される。そのため、ケース21は、耐候性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)によって形成されている。PBT樹脂の特性としては、熱安定性,寸法安定性,耐薬品性等に優れていることが挙げられる。熱安定性とは、長時間高温環境に曝しても熱変形し難い特性のことである。寸法安定性とは、多湿環境に曝しても吸水率が低いため寸法が変化し難い特性のことである。耐薬品性とは、有機溶剤,ガソリン,油等に対して変質し難い特性のことである。
ここで、ケース21は、カーボンブラック(炭素微粒子)を含有するPBT樹脂によって形成されている。つまり、ケース21は、カバー22の溶着時において、レーザ光線LS(図8参照)を吸収する「光吸収性樹脂部品」となっている。なお、ケース21の材質としてはPBT樹脂に限らず、上述のような耐候性に優れた材質であれば、例えば、ポリフェニレンスルファイド樹脂(PPS樹脂)等の他の材料としても良い。
また、カバー22においても、ケース21と同じ劣悪な環境に曝されるため、ケース21と同じPBT樹脂で形成しても良いし、耐候性に優れた他の材料(PPS樹脂等)で形成しても良い。ただし、カバー22は、カーボンブラック(炭素微粒子)を含まない樹脂材料で形成するようにする。つまり、カバー22は、ケース21への溶着時において、レーザ光線LSを透過させる「光透過性樹脂部品」とする。
このように、ケース21およびカバー22は、互いの樹脂材料をレーザ光線LSで溶融させて、互いに強固に結合させている。これにより、ケース21およびカバー22の溶着部分において、両者は組織的に一体化されて、ひいては上述のような劣悪な環境に曝されても、アクチュエータ20の気密性が保持される。なお、ケース21とカバー22との溶着方法やその手順については、後述する。
ここで、ケース21の内部には、電動モータ(モータ)30および減速機構50が収容されており、以下、ケース21の詳細構造を説明する前に、電動モータ30および減速機構50の構造について説明する。
図5に示すように、電動モータ30はモータケース31を備えている。モータケース31は、鋼板(磁性材料)をプレス加工等することで有底の略円筒形状に形成されている。モータケース31の内側には、断面が略円弧形状に形成された複数のマグネット32(図示では2つのみ示す)が固定されている。そして、これらのマグネット32の内側には、コイル33が巻装されたアーマチュア34が、所定の隙間(エアギャップ)を介して回転自在に収容されている。
アーマチュア34の回転中心には、アーマチュア軸(回転軸)35の基端側が固定されている。アーマチュア軸35の基端部(図中上側)は、モータケース31の小径底部31aがある部分に配置され、小径底部31aの内側には軸受部材36が固定されている。そして、アーマチュア軸35の基端部は、軸受部材36によって回転自在に支持されている。ここで、軸受部材36としては、インナーレース,アウターレースおよびボールを有する玉軸受や、円筒鋼管の内側にフッ素樹脂層が形成されたメタル軸受(すべり軸受)等を採用することができる。
一方、アーマチュア軸35の先端部(図中下側)は、モータケース31の外部に配置されている。そして、アーマチュア軸35の先端部には、ピニオンギヤ37が固定されている。
アーマチュア軸35の軸方向に沿うアーマチュア34とピニオンギヤ37との間には、コイル33の端部が電気的に接続されたコンミテータ38が固定されている。コンミテータ38の外周部分には、一対のブラシ39が摺接するようになっている。なお、コンミテータ38および各ブラシ39についても、モータケース31の内部にそれぞれ収容されている。
そして、車両の停車時にパーキングブレーキスイッチを操作することで、各ブラシ39に駆動電流が供給される。すると、各ブラシ39およびコンミテータ38を介してコイル33に駆動電流が供給され、これによりアーマチュア34に電磁力が発生する。よって、アーマチュア軸35(ピニオンギヤ37)が所定の回転数で所定の方向に回転駆動される。ここで、各ブラシ39に供給される駆動電流は、ケース21に設けたコネクタ接続部25に接続される車両側コネクタ(図示せず)から供給される。
図5に示すように、ケース21には、雄ねじ部材17b(図2参照)に一体回転可能に連結され、電動モータ30の動力をピストン17に伝達する出力軸40が設けられている。出力軸40は、アーマチュア軸35の回転を外部に出力するもので、減速機構50を形成する遊星キャリヤ56に一体に設けられている。これにより、高トルク化された回転力が雄ねじ部材17bに伝達される。そして、アーマチュア軸35と出力軸40とは、それぞれ平行となるよう並んでケース21に設けられ、アーマチュア軸35と出力軸40との間に、減速機構50が設けられている。
また、減速機構50とピニオンギヤ37との間には、アーマチュア軸35と平行に並べられた出力軸40に動力を伝達するための入力側二段ギヤ41が設けられている。入力側二段ギヤ41は、ピニオンギヤ37に噛み合わされる大径ギヤ42と、減速機構50を形成する出力側二段ギヤ51の大径ギヤ52に噛み合わされる小径ギヤ43とを備えている。
減速機構50は遊星歯車減速機構であって、出力側二段ギヤ51を有している。出力側二段ギヤ51は、入力側二段ギヤ41の小径ギヤ43に噛み合わされる大径ギヤ52と、サンギヤ(太陽歯車)として機能する小径ギヤ53とを備えている。また、減速機構50は、4つのプラネタリギヤ(遊星歯車)54(図示では2つのみ示す)を備えており、これらのプラネタリギヤ54は、それぞれ小径ギヤ53および内歯車55の双方に噛み合わされている。
各プラネタリギヤ54は、遊星キャリヤ56に支持ピン57を介してそれぞれ回転自在に支持されている。内歯車55は、ケース21にインサート成形により固定され、遊星キャリヤ56は内歯車55に対して相対回転可能となっている。これにより、アーマチュア軸35の回転が、入力側二段ギヤ41および出力側二段ギヤ51を介して減速機構50に伝達され、減速機構50により減速される。その後、減速機構50により減速されて高トルク化された回転力は、出力軸40から雄ねじ部材17b(図2参照)に伝達されて、ピストン17が大きな力で移動される。よって、小型の電動モータ30を用いて電動パーキングブレーキ装置を構築することができる。
図3ないし図5に示すように、ケース21は、キャリパ16のシリンダ部16d(図2参照)に固定されるキャリパ固定部23と、電動モータ30(図5参照)を収容するモータ収容部(収容部)24とを備えている。
キャリパ固定部23は、ケース21の出力軸40が配置される部分に設けられ、出力軸40および減速機構50と同軸上に配置されている。つまり、キャリパ固定部23は、出力軸40を回転自在に支持しており、本発明における支持部を構成している。また、キャリパ固定部23は、モータ収容部24に対してその軸方向と交差する方向に並んで設けられている。
キャリパ固定部23の径方向内側には、円筒固定部23aが設けられ、円筒固定部23aの軸方向先端側には、シリンダ部16dの底部側が嵌合して固定されている。また、キャリパ固定部23の径方向外側には、ケース21の外郭の一部を形成する外周壁部23bが設けられている。
モータ収容部24は、一端側(図中上側)が閉塞され、かつ他端側(図中下側)が開口された筒状に形成されており、ケース21の電動モータ30が配置される部分に設けられている。モータ収容部24には電動モータ30が収容され、モータ収容部24はアーマチュア軸35と同軸上に配置されている(図5参照)。モータ収容部24は、アーマチュア軸35の軸方向に延びる円筒本体部24aと、円筒本体部24aの軸方向に沿うカバー22側とは反対側にある底壁部24bとを備えている。また、底壁部24bの中心部分には、モータ収容部24の内部から外部に向けて突出された軸受収容部24cが設けられている。このように、モータ収容部24の一端側は、段付きの底部となっている。
そして、電動モータ30は、モータ収容部24の内部にその開口側(図中下側)から挿入される。このとき、図5に示すように、電動モータ30のモータケース31における小径底部31aは、軸受収容部24cの内側に配置される。このように、軸受収容部24cの内側には、小径底部31aを介して軸受部材36が収容されている。なお、電動モータ30は、モータ収容部24に対して締結手段(図示せず)により強固に固定されており、互いに相対回転不能となっている。
図3に示すように、モータ収容部24の軸方向長さL1は、キャリパ固定部23の軸方向長さL2よりも長い寸法となっている(L1>L2)。ここで、モータ収容部24の軸方向長さL1は、ケース21の開口部21a(図5参照)からモータ収容部24の軸受収容部24cまでの長さ寸法であり、キャリパ固定部23の軸方向長さL2は、ケース21の開口部21aからキャリパ固定部23の円筒固定部23aの先端部分までの長さ寸法である。また、軸方向長さL1は、軸方向長さL2の略2倍となっている。
これにより、アクチュエータ20をキャリパ16に固定した際に、アーマチュア軸35および出力軸40が互いに平行となるよう、図1に示すように、シリンダ部16dの真横に電動モータ30を配置することができる。よって、シリンダ部16dの軸方向寸法が増大するのを抑制して、ブレーキ装置10がショックアブソーバ等に接触されるのを回避することができる。
ここで、図5に示すように、ケース21の長手方向(図中左右方向)に沿うモータ収容部24を挟むキャリパ固定部23側とは反対側には、車両側コネクタが電気的に接続されるコネクタ接続部25が一体に設けられている。コネクタ接続部25は、図1に示すように、アクチュエータ20をキャリパ16に固定した状態のもとで、シリンダ部16d側とは反対側に向けられている。これにより、ブレーキ装置10を車両に取り付けた状態のもとで、車両側コネクタを容易かつ確実にコネクタ接続部25に接続することができる。
図3ないし図5に示すように、キャリパ固定部23は、円筒固定部23aと外周壁部23bとを備えている。外周壁部23bには、径方向外側に部分的に突出するようにして、一対のねじ挿通部23cが一体に設けられている。つまり、各ねじ挿通部23cは、キャリパ固定部23の径方向外側に配置されている。各ねじ挿通部23cには、アクチュエータ20をキャリパ16に固定するための固定ねじS(図1参照)が挿通され、各ねじ挿通部23cはキャリパ16に固定される。
各ねじ挿通部23cは、円筒固定部23aを中心として互いに対向配置されており、これにより図2に示すように、出力軸40の軸心がピストン17の軸心に対してずれないように、アクチュエータ20がキャリパ16に均等な固定力により固定される。なお、各ねじ挿通部23cは、ケース21の長手方向と交差するケース21の短手方向に対して、出力軸40を挟んで所定間隔を持って配置されている。
図3および図4に示すように、各ねじ挿通部23cと外周壁部23bとの間には、各ねじ挿通部23cの外周壁部23bに対する固定強度を高めるための固定部用補強リブ23dが一体に設けられている。これにより、アクチュエータ20の作動時におけるケース21のキャリパ16に対する捩れやがたつきが抑制される。
モータ収容部24の径方向外側には、一対の第1補強リブ24dが一体に設けられている。これらの第1補強リブ24dは、図3に示すように、軸方向長さがL1のモータ収容部24が、軸方向長さがL2のキャリパ固定部23に対して、特にキャリパ固定部23側へ傾斜(倒れ)したり捩れたりするのを抑制するために設けたものである。また、ケース21は樹脂材料(PBT樹脂)を射出成形することで形成されるため、その硬化時には樹脂が収縮してヒケが発生する。各第1補強リブ24dは、ケース21の硬化時において、ヒケの発生に起因するモータ収容部24のキャリパ固定部23に対する傾斜や歪みも抑制する。
各第1補強リブ24dは、モータ収容部24の軸方向に沿う一端側(図3中上側)から他端側(図3中下側)に亘って設けられている。各第1補強リブ24dは断面が略三角形形状に形成されており、モータ収容部24の径方向外側への各第1補強リブ24dの突出量は、モータ収容部24の軸方向に沿う一端側から他端側に向かうにつれて徐々に大きくなっている。これにより、ケース21を射出成形する際に用いる上金型70(図6参照)の型抜きが、容易に行えるようになっている。
また、各第1補強リブ24dは、モータ収容部24のキャリパ固定部23がある側にそれぞれ配置され、かつ各第1補強リブ24dの突出方向は、モータ収容部24をその軸方向から見たときに、キャリパ固定部23の各ねじ挿通部23cに向けられている。これにより、ケース21のデッドスペースDSに各第1補強リブ24dが配置される。よって、各第1補強リブ24dを比較的大きく形成して、各第1補強リブ24d自身の剛性を高めることができる。
さらに、ケース21のデッドスペースDSに各第1補強リブ24dを配置することで、モータ収容部24のキャリパ固定部23側へ傾斜を抑制しつつ、シリンダ部16dとモータ収容部24とが干渉しない範囲、つまりシリンダ部16dを避けた位置で、互いに近接させて配置可能となっている。つまり、各第1補強リブ24dの配置箇所は、ブレーキ装置10の小型軽量化に有利な配置箇所となっている。
図3に示すように、各第1補強リブ24dにおけるモータ収容部24の軸方向に沿う他端側は、キャリパ固定部23の外周壁部23bに向けて設けられている。これにより、各第1補強リブ24dに負荷される応力がねじ挿通部23cを介して外周壁部23bに逃がされる。よって、モータ収容部24のキャリパ固定部23に対する傾斜や捩れがより確実に抑制される。ここで、出力軸40の軸方向に沿う外周壁部23bの肉厚は厚く、出力軸40の軸方向に沿う外周壁部23bの剛性は高くなっている。また、外周壁部23bは、ねじ挿通部23cと連結されている。したがって、各第1補強リブ24dから負荷される応力により、外周壁部23bが変形することが抑制される。
図3に示すように、キャリパ固定部23には、複数の肉盗み部23eが設けられている。これらの肉盗み部23eは、キャリパ固定部23のシリンダ部16d側(図中上側)で、かつ円筒固定部23aの周囲に設けられている。各肉盗み部23eは、円筒固定部23aと外周壁部23bとの間に配置され、円筒固定部23aの周方向に並んで配置されている。各肉盗み部23eは、キャリパ固定部23のヒケに起因した変形を防止し、かつケース21を軽量化するために設けたものであり、出力軸40の軸方向に窪んで設けられている。
各肉盗み部23eは、出力軸40を中心に放射状に設けられた複数の放射状リブ23fによって互いに仕切られている。これらの放射状リブ23fは、円筒固定部23aと外周壁部23bとの間,円筒固定部23aと各ねじ挿通部23cとの間,円筒固定部23aとモータ収容部24との間にそれぞれ設けられている。
そして、これらの放射状リブ23fのうち、円筒固定部23aと各ねじ挿通部23cとの間にある放射状リブ23f1は、両者間の剛性を高めてケース21のキャリパ16に対する捩れやがたつきを抑制する機能を有している。また、各放射状リブ23fのうち、円筒固定部23aとモータ収容部24との間にある放射状リブ23f2は、モータ収容部24のキャリパ固定部23に対する傾斜や歪みを抑制する機能を有している。
ここで、一対の第1補強リブ24dは、モータ収容部24を軸方向から見たときに、各肉盗み部23eと重ならない位置で、かつ外周壁部23bと繋がるように一体に設けられている。これにより、ケース21を射出成形する際に用いる上金型70(図6参照)の形状を簡素化することができ、かつ各第1補強リブ24dから負荷される応力が、ケース21の薄肉となった肉盗み部23eに負荷されるのを防止している。
図3ないし図5に示すように、キャリパ固定部23のモータ収容部24側とは反対側には、出力軸40と直交する方向に張り出した小フランジ部(凸部)23gが一体に設けられている。また、モータ収容部24のキャリパ固定部23側とは反対側には、第2補強リブ24eが一体に設けられている。
小フランジ部23gは、ケース21を射出成形する際に、溶融樹脂(溶融材料)MRを上下金型60,70内のキャビティCA内に注入するためのゲートGに対向して形成され、図6に示すように、溶融樹脂MRの上下金型60,70の内部への入口部を成すものである。小フランジ部23gは、キャリパ固定部23の外周壁部23bから径方向外側に突出して設けられている。つまり、小フランジ部23gは、カバー22の厚み方向と交差する方向に突出されている。そして、小フランジ部23gの断面は略台形形状となっている。
一方、第2補強リブ24eは、ケース21を射出成形する際に、図7に示すように、溶融した溶融樹脂(溶融材料)MRが合流して形成される合流部WL(ウェルドライン)の部分に設けられている。つまり、合流部WLは、モータ収容部24から突出して設けられた第2補強リブ24eに形成されている。このように第2補強リブ24eを設けることで、合流部WLの強度を向上させている。
第2補強リブ24eの厚み寸法は、一対の第1補強リブ24dと略同じ厚み寸法とされ、第2補強リブ24eは、各第1補強リブ24dと同様に、モータ収容部24のキャリパ固定部23に対する傾斜や捩れを抑制する機能も備えている。このように、第2補強リブ24eは、各第1補強リブ24dとともにモータ収容部24を補強するのは勿論のこと、ケース21の製造上の副産物、つまり合流部WLが形成されることによるケース21の強度低下を補っている。
第2補強リブ24eは、モータ収容部24の軸方向に沿う一端側(図3中上側)から他端側(図3中下側)に亘って設けられる垂直部24fと、モータ収容部24の円筒本体部24aと軸受収容部24cとの間に設けられる水平部24gとを備えている。つまり、第2補強リブ24eは、円筒本体部24aおよび底壁部24bに倣って形成され、軸受収容部24cまで延在されている。
水平部24gの一端側(図3中左側)は、軸受収容部24cと一体に連結され、水平部24gの他端側(図3中右側)は、垂直部24fの一端側と一体に連結されている。これにより、軸受収容部24cについても補強されて、軸受収容部24cの歪み等が防止される。また、図5に示すように、水平部24gの底壁部24bからの突出高さは、軸受収容部24cの底壁部24bからの突出高さと同じ高さとなっている。これにより、モータ収容部24の軸方向寸法が増大するのを抑制しつつ、軸受収容部24cの強度向上、さらには底壁部24bの合流部WLが形成される部分の強度向上を実現している。
垂直部24fの他端側は、ケース21の長手方向に沿うモータ収容部24とコネクタ接続部25との間に形成された一対の肉盗み部23hを仕切る第3補強リブ23kと一体に連結している。ここで、各肉盗み部23hは、モータ収容部24のヒケに起因した変形を防止し、かつケース21を軽量化するために設けたものであり、各肉盗み部23eと同様に、出力軸40の軸方向に窪んで設けられている。また、第3補強リブ23kは、第2補強リブ24eと協働することで、各放射状リブ23f2と同様に、モータ収容部24のキャリパ固定部23に対する傾斜や歪みを抑制する機能に加えて、円筒本体部24aの合流部WLが形成される部分の強度向上を実現している。
さらに、図5に示すように、垂直部24fの一端側の円筒本体部24aからの突出高さh1は、垂直部24fの他端側の円筒本体部24aからの突出高さh2よりも、若干低い高さに設定されている(h1<h2)。より具体的には、垂直部24fの円筒本体部24aからの突出高さは、モータ収容部24の軸方向に沿う一端側から他端側に向かうにつれて徐々に高くなっている。これにより、各第1補強リブ24dと同様に、ケース21を射出成形する際に用いる上金型70(図6参照)の型抜きが、容易に行えるようになっている。
図5に示すように、ケース21の開口部21a側には、当該開口部21aの略長円弧形状に倣って形成されたケース側平坦面21bが設けられている。ケース側平坦面21bは、カバー22の厚み方向(図中上下方向)と交差する方向(図中左右方向)に延びる平坦面となっている。ケース側平坦面21bは、カバー22のカバー側平坦面22fに対して、アーマチュア軸35や出力軸40の軸方向から対向している。ケース側平坦面21bには、カバー側平坦面22fが溶着されるようになっており、本発明における第1溶着部を構成している。
また、図3の網掛け部分に示すように、ケース21の開口部21a側とは反対側で、かつモータ収容部24の周囲の一部には、モータ収容部側平坦面24hが設けられている。
モータ収容部側平坦面24hは、ケース21の長手方向に沿うモータ収容部24とコネクタ接続部25との間に設けられ、ケース21の外周部分を、ケース21の底部21c(図5参照)からモータ収容部24の軸方向に突出させて形成した外周リブ(リブ)21dの先端に設けられている。また、モータ収容部側平坦面24hは、第3補強リブ23kの先端にも設けられている。
ここで、第3補強リブ23kおよび外周リブ21dの先端に設けられるモータ収容部側平坦面24hは、本発明における第1平面部を構成している。
さらに、図3の網掛け部分に示すように、ケース21の開口部21a側とは反対側で、かつキャリパ固定部23の円筒固定部23aの周囲には、キャリパ固定部側平坦面26が設けられている。キャリパ固定部側平坦面26は、ケース21の長手方向に沿うキャリパ固定部23側に設けられている。
キャリパ固定部側平坦面26は、ケース21の外周部分および各ねじ挿通部23cの外周部分を、それぞれケース21の底部21c(図5参照)からモータ収容部24の軸方向に突出させて形成した外周リブ(リブ)26aの先端に設けられている。また、キャリパ固定部側平坦面26は、放射状リブ23f,23f1,23f2の先端にも設けられている。
ここで、放射状リブ23f,23f1,23f2および外周リブ26aの先端に設けられるキャリパ固定部側平坦面26は、本発明における第2平面部を構成している。
そして、図5に示すように、モータ収容部24の軸方向に沿う開口部21aからモータ収容部側平坦面24hまでの距離L3と、モータ収容部24の軸方向に沿う開口部21aからキャリパ固定部側平坦面26までの距離L4とは、同じ距離となっている(L3=L4)。つまり、モータ収容部側平坦面24hおよびキャリパ固定部側平坦面26は、同一平面上に位置するとともにケース側平坦面21bに対して平行となっている。
図2,図4および図5に示すように、カバー22は略平板状に形成されている。カバー22は、ケース21側の内側面(第1面)22aと、ケース21側とは反対側の外側面(第2面)22bとを備えている。また、カバー22は、ケース21の開口部21aを閉塞するとともに、ケース21側に向けて窪んだ本体部22cと、当該本体部22cの外周部分に設けられ、ケース21側とは反対側に突出された外周縁部22dとを備えている。
カバー22の内側面22aで、かつ本体部22cがある部分には、入力側二段ギヤ41および出力側二段ギヤ51をそれぞれ回転自在に支持する支持ピンPNが固定されるピン固定部22eが形成されている。一方、カバー22の内側面22aで、かつ外周縁部22dがある部分には、ケース側平坦面21bに溶着されるカバー側平坦面22fが設けられている。カバー側平坦面22fは、本発明における第2溶着部を構成しており、ケース側平坦面21bと同様に、カバー22の厚み方向と交差する方向に延在する平坦面となっている。よって、カバー22をケース21に溶着する際に、カバー側平坦面22fとケース側平坦面21bとは互いに全面で接触可能に構成されている。
また、カバー22の外側面22bで、かつ外周縁部22dがある部分には、カバー側平坦面22fをケース側平坦面21bに溶着する際に押圧される押圧面(押圧部)22gが設けられている。押圧面22gにおいても、ケース側平坦面21bおよびカバー側平坦面22fと同様に、カバー22の厚み方向と交差する方向に延在する平坦面となっている。ここで、図4においては、押圧面22gを分かり易くするために、当該押圧面22gに網掛けを施している。
このように、押圧面22gを、カバー22の外側面22bで、かつ外周縁部22dがある部分に設けることで、当該押圧面22gは、カバー22の厚み方向に沿うケース21から最も離れた位置に配置される。
ここで、図8に示すように、押圧面22gは、平板状の押圧部材92によって押圧される部分を形成し、押圧面22gの略全面に押圧部材92が面で接触するようになっている。ここで、押圧面22gは、カバー22の厚み方向に対して、ケース側平坦面21bおよびカバー側平坦面22fと重なっている。よって、押圧部材92によりカバー22の厚み方向から押圧面22gを均一に押圧することで、ケース側平坦面21bおよびカバー側平坦面22fは、互いに全面で密着される。
また、図8の破線円部分(拡大図)に示すように、押圧部材92と押圧面22gとの接触面CS1の大きさは、ケース側平坦面21bとカバー側平坦面22fとの接触面CS2の大きさよりも大きくなっている。したがって、ケース側平坦面21bとカバー側平坦面22fとを、互いに全面でかつ均等な押圧力Fで、確実に密着させることができる。
次に、アクチュエータ20を構成するケース21の製造手順について、図面を用いて詳細に説明する。
図6に示すように、下金型60は、ケース21の開口部21a側(図5参照)を成形するもので、射出成形装置の基台(図示せず)に固定されている。つまり、下金型60は固定金型となっている。一方、上金型70は、ケース21のモータ収容部24側を成形するもので、射出成形装置に搭載された油圧シリンダ等の駆動機構(図示せず)によって上下動するようになっている。つまり、上金型70は移動金型であり、下金型60に対して近接または離間するようになっている。また、上金型70には、溶融樹脂MRが通過する供給通路71が形成されており、供給通路71には、溶融樹脂MRを供給通路71に圧送するディスペンサDPが接続されている。
さらに、上下金型60,70に対して、横方向に移動可能なスライド金型80が設けられている。スライド金型80は、射出成形装置に搭載された油圧シリンダ等の駆動機構によって基台上を摺動するようになっている。スライド金型80には、ケース21のコネクタ接続部25の内側を成形するコネクタ成形凸部81が設けられており、コネクタ成形凸部81は、上下金型60,70を突き合わせて形成されるパーティングラインPLの近傍で、かつ下金型60の窪み(図示せず)に、所定の隙間を介してセットされる。
そして、ケース21を製造するには、まず、下金型60に対して、ケース21にインサート成形により設けられる内歯車55等をセットする(詳細図示せず)。その後、駆動機構を作動させて、図中矢印(1)に示すように、上金型70を下金型60に突き合わせる。また、駆動機構を作動させて、図中矢印(2)に示すように、スライド金型80を下金型60に向けて移動させ、コネクタ成形凸部81を下金型60の窪みに差し込む。これにより、上下金型60,70の内側には、ケース21を形作るキャビティCAが形成される。
次いで、ディスペンサDPを作動させて、図中矢印(3)に示すように、上金型70の供給通路71に溶融樹脂MR(PBT樹脂)を所定圧で供給する。これにより、上金型70の供給通路71の先端部のゲートGから、図中破線矢印に示すように、キャビティCAの内部に溶融樹脂MRが射出されていく。ここで、キャビティCAの内部に供給される溶融樹脂MRは、最初に下金型60の段差部61に衝突される。これにより、キャビティCAの内部に供給される溶融樹脂MRの進行方向が屈曲(邪魔)されて、外観成形不良現象である「ジェッティング現象」の発生が抑制される。ここで、「ジェッティング現象」とは、溶融樹脂が蛇行するように流れて、成形品の表面に蛇行する線状の模様が形成される現象のことである。このように、カバー22の厚み方向から供給される溶融樹脂MRの流れ方向を、下金型60の段差部61に屈曲させることにより、ケース21に小フランジ部23gが設けられる。
これにより、ケース側平坦面21bが、基準面BS1上に歪むこと無く平滑に形成され、かつモータ収容部側平坦面24hおよびキャリパ固定部側平坦面26においても基準面BS2上に歪むこと無く平滑に形成される。よって、ケース側平坦面21bとモータ収容部側平坦面24hおよびキャリパ固定部側平坦面26との平行度が高精度で管理できる。
そして、キャビティCAの内部に供給された溶融樹脂MRは、図7に示すように、センターラインCを境に分流されて、徐々にモータ収容部24が成形されていく。ここで、センターラインCは、ケース21の長手方向に延びるとともに、図5に示すように、出力軸40の軸心とアーマチュア軸35の軸心とを通過する線分である。ケース21は、センターラインCを境に鏡像対象の形状となっており、これによりセンターラインC上にある供給通路71から供給される溶融樹脂MRは、略50:50で正確に分流される。
次いで、センターラインCを境に分流された溶融樹脂MRは、モータ収容部24を形作った後に、センターラインC上に設けられて、かつキャビティCAの第2補強リブ24eを成形する部分に入り込む。その後、キャビティCAの第2補強リブ24eを成形する部分で溶融樹脂MRが合流される。これにより、第2補強リブ24eに合流部WL(ウェルドライン)が形成される。ここで、合流部WLが形成される部分(第2補強リブ24e)は、図5に示すように、ケース21の他の部分に比して、その肉厚寸法が厚くなっている。したがって、合流部WLの強度は十分に高められるようになっている。
その後、キャビティCAの内部に溶融樹脂MRを隙間無く充填した後に、ディスペンサDPを停止させて、溶融樹脂MRを硬化させるべく冷却する。ここで、溶融樹脂MRを硬化させるには、所定時間放置しても良いし、冷却装置(図示せず)で強制的に冷却しても良い。
次いで、溶融樹脂MRが硬化した後に、駆動機構を作動させて、スライド金型80を上下金型60,70から引き抜くとともに、上金型70を下金型60に対して離間させる。その後、下金型60に設けられた押し出しピン(図示せず)を上昇させて、完成したケース21を下金型60から取り外す。これにより、ケース21の製造が終了する。
次に、カバー22のケース21への溶着手順について、図面を用いて詳細に説明する。本実施の形態においては、カバー22のケース21への溶着には、図8に示すレーザ溶着装置90を用いている。
以下、カバー22のケース21への溶着手順の説明に先立ち、レーザ溶着装置90の構成の概要について説明する。
図8に示すように、レーザ溶着装置90は、断面が略長方形形状に形成された台座(保持治具)91を有しており、当該台座91は、レーザ溶着装置90の基台(図示せず)に固定されている。台座91の上面は、平滑化されたケース設置面91aが形成され、ケース設置面91aは水平方向に延在されている。そして、ケース設置面91aには、平滑化されたモータ収容部側平坦面24hとキャリパ固定部側平坦面26とが、面接触されるようになっている。
また、台座91には、ケース21のモータ収容部24を収容する深い深さ寸法の第1凹部91bと、ケース21の円筒固定部23aを収容する浅い深さ寸法の第2凹部91cとが形成されている。ここで、モータ収容部24の第1,第2補強リブ24d,24e(図3参照)は、型抜きし易いように底壁部24bに向けて徐々に高さが低くなっている。よって、台座91にケース21をセットする際に、台座91でモータ収容部24が傷付けられることが抑制される。
また、レーザ溶着装置90は、略平板状に形成された押圧部材(押圧治具)92を有している。この押圧部材92は、台座91にセットされたケース21に向けて、カバー22を押圧力Fで押圧するためのもので、台座91の上方で上下動可能となっている。より具体的には、押圧部材92は、レーザ溶着装置90の基台等に設けられた昇降機構(図示せず)の動作によって、上下動可能となっている。ここで、押圧部材92は、透過率が99%等の透明材料で、かつある程度の強度を備えた、例えばアクリルガラスによって形成されている。これにより押圧部材92は、レーザ光線LSを透過しつつ、カバー22を押圧することができる。
さらに、レーザ溶着装置90は、ケース21のケース側平坦面21bおよびカバー22のカバー側平坦面22fを溶融させるレーザ光線LSを照射するレーザ光源93を有している。レーザ光源93は、押圧部材92の上方で水平方向(二点鎖線矢印Mの方向)に移動可能となっている。より具体的には、レーザ光源93は、レーザ溶着装置90の基台等に設けられた移動機構(図示せず)の動作によって、移動可能となっている。
なお、レーザ光源93は、カバー22の押圧面22gの上方を、カバー側平坦面22fに沿って二点鎖線矢印Mに示すようにトレースするようになっている。ここで、レーザ光源93は、当該レーザ光源93の近傍に設けられた撮像カメラ(図示せず)の撮像結果に応じて移動し、撮像カメラは、透明な押圧部材92を介して押圧面22gの位置を検出するようになっている。
そして、カバー22をケース21に溶着するに際しては、まず、ケース21の開口部21a側が上方を向くように、ケース21を台座91にセットする。このとき、ケース21の内部には、電動モータ30や減速機構50等を予め組み込んでおく。そして、モータ収容部24を第1凹部91bに差し込み、かつ円筒固定部23aを第2凹部91cに差し込む。これにより、モータ収容部側平坦面24hとキャリパ固定部側平坦面26とが、台座91のケース設置面91aに全面で接触して、ケース21が台座91に対してがたつくこと無く水平保持される。
次いで、ケース21の開口部21aに、カバー22を装着する。ここで、ケース21のケース側平坦面21bと、カバー22のカバー側平坦面22fとを、互いに突き合わせるようにする。これにより、カバー22をケース21に仮装着する。その後、押圧部材92を下降させて、当該押圧部材92をカバー22の押圧面22gに突き合わせる。ここで、押圧部材92とカバー22との接触部分は、押圧面22gのみであり、押圧部材92をカバー22に対してがたつくこと無く突き合わせることができる。そして、押圧部材92を継続して下降させて、押圧力Fで押圧部材92をカバー22に押し付ける。これにより、ケース側平坦面21bとカバー側平坦面22fとが全面で密着される。
その後、レーザ光源93を点灯させる。すると、レーザ光線LSは、透明な押圧部材92を通過して押圧面22gに垂直に照射される。次いで、押圧面22gに照射されたレーザ光線LSは、光透過性樹脂部品であるカバー22を通過して、光吸収性樹脂部品であるケース21に到達する。すると、レーザ光線LSがケース側平坦面21bに吸収されて、当該ケース側平坦面21bが高温となって溶融する。すると、ケース側平坦面21bの高温がカバー側平坦面22fに伝播して、カバー側平坦面22fも溶融する。これにより、ケース側平坦面21bとカバー側平坦面22fとの接触部分が、図8に示すように溶着部WPとなって、互いに組織的に一体化(固着)される。
そして、レーザ光源93を点灯させた状態のもとで、図中二点鎖線矢印Mに示すように移動させて、レーザ光源93を押圧面22gに倣ってトレースさせる。これにより、ケース側平坦面21bとカバー側平坦面22fとの接触部分の全てが溶着されて、カバー22のケース21に対する溶着(固定)が完了する。
ここで、ケース21は台座91に水平保持され、かつモータ収容部側平坦面24hおよびキャリパ固定部側平坦面26と、ケース側平坦面21bとの平行度が高精度で保持されているので、ケース側平坦面21bとカバー側平坦面22fとを、全ての部分において均等な力で密着させることができる。したがって、溶着部WPの形成も全ての部分において安定して形成され、カバー22がケース21に対して傾斜して固着されるようなことは無い。
以上詳述したように、本実施の形態によれば、押圧面22gが、カバー22の厚み方向に沿うケース21から最も離れた位置に配置されるので、押圧面22gを押圧する押圧部材92を単純な形状の平板状にできる。これにより、カバー22の溶着部であるカバー側平坦面22fを均一に精度良くケース側平坦面21bに押圧することが可能となり、押圧部材92を押圧面22gに対して高精度で位置決めする必要が無くなり、ひいては製品毎に溶着作業がばらつくのを抑制することができる。したがって、歩留まりを向上させることができ、かつアクチュエータ20の製造を容易に自動化することが可能となる。
また、ケース21の開口部21a側とは反対側でかつモータ収容部24の周囲にモータ収容部側平坦面24hを設け、ケース21の開口部21a側とは反対側でかつキャリパ固定部23の円筒固定部23aの周囲にキャリパ固定部側平坦面26を設け、モータ収容部24の軸方向に沿う開口部21aからモータ収容部側平坦面24hまでの距離L3と、モータ収容部24の軸方向に沿う開口部21aからキャリパ固定部側平坦面26までの距離L4とを、同じ距離(L3=L4)にした。これにより、ケース21の底部を平坦形状として、ケース21をがたつくこと無く台座91により確実に水平保持させることができる。
また、本実施の形態によれば、ケース側平坦面21b,カバー側平坦面22fおよび押圧面22gを、カバー22の厚み方向と交差する方向に延在する平坦面としたので、カバー22のケース21に対する溶着状態を安定化させることができる。よって、アクチュエータ20の信頼性向上が図れる。
さらに、本実施の形態によれば、押圧面22gは、押圧部材92により押圧され、ケース側平坦面21bとカバー側平坦面22fとの接触面CS2の大きさよりも、押圧部材92と押圧面22gとの接触面CS1の大きさの方が大きい。よって、ケース側平坦面21bとカバー側平坦面22fとを、互いに均一に全面で確実に密着させることができる。
また、モータ収容部側平坦面24hおよびキャリパ固定部側平坦面26を、ケース21の底部21cからモータ収容部24の軸方向に突出された外周リブ21d,26aの先端に設けたので、ケース21の底部21cを補強することができる。さらには、ケース21を台座91にセットしたときのケース21の台座91に対するがたつきをより確実に抑えることができる。つまり、リブを備えないケースの底部を台座にセットした場合には、ケースの底部がヒケ等により歪む虞があるため、ケースを台座にセットしたときにケースが台座に対してがたつく虞がある。
さらに、ケース21は、上下金型60,70の内部に溶融樹脂MRを射出することで形成され、ケース21に、カバー22の厚み方向と交差する方向に突出した小フランジ部23gを設け、小フランジ部23gを、カバー22の厚み方向から供給される溶融樹脂MRの流れ方向が下金型60の段差部61により屈曲されることで形成されるようにした。したがって、供給通路71の延長上にあるケース側平坦面21bの近傍において、所謂「ジェッティング現象」が発生するのが確実に抑制されて、ケース側平坦面21bを歪むこと無く平滑に形成できる。よって、製品毎に溶着作業がばらつくのを、さらに抑制することが可能となる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、ケース21に対するカバー22の溶着方法に、レーザ光線LSを用いるレーザ溶着法(レーザ透過溶着法)を用いた場合を示したが、本発明はこれに限らず、超音波溶着法や振動溶着法、さらには溶着部分を直接加熱する加熱溶着法などの他の溶着方法を採用することもできる。
また、上記実施の形態においては、図7に示すように、ケース21の長手方向に沿うキャリパ固定部23側でかつセンターラインC上に、1つの供給通路71が配置され、当該供給通路71から溶融樹脂MRが分流されるようにしたものを示した。本発明はこれに限らず、例えば、2つの供給通路から同時かつ同圧でキャビティCAの内部に溶融樹脂MRを射出させるようにしても良い。この場合、センターラインCを挟んで鏡像対象となる位置に供給通路を設けるようにする。また、供給通路を下金型(固定金型)60に設けても良く、これによりディスペンサDPを移動させずに済む。
さらに、上記実施の形態においては、ブレーキ装置10を電動パーキングブレーキ装置としたものを示したが、本発明はこれに限らず、運転者のブレーキペダル操作により作動するアクチュエータを備え、電気配線のみで繋がったバイワイヤ方式のブレーキ装置(Brake by wire)にも適用することができる。
また、上記実施の形態においては、図5に示すように、電動モータ30をブラシ付きの電動モータとしたものを示したが、本発明はこれに限らず、ブラシレスの電動モータを採用することもできる。この場合、電動モータからのノイズの発生を抑えて、他の車載機器への悪影響をより効果的に低減することができる。
さらに、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良等が可能である。その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。