JP6460690B2 - ロボット装置、ロボット制御方法、プログラム及び記録媒体 - Google Patents

ロボット装置、ロボット制御方法、プログラム及び記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、ロボットアームの力制御に関するものである。
産業用のロボットは、多関節のロボットアームと、ロボットアームの先端に取り付けられたロボットハンドとを有して構成されている。この種のロボットを用いた嵌合作業や作業対象物取得作業では、作業対象物の公差や設置誤差、ロボットハンド内で把持中の作業対象物の把持位置ズレなどが生じる。これにより、作業対象物とロボットハンドとの間に、ロボットアームからロボットハンドに延びる先端軸に対して交差する方向に位置ズレが発生する。
そのため、ロボットの各関節の角度を角度指令値に制御する位置制御のみ行うと、作業対象物とロボットハンドとの位置ズレにより、嵌合ミスや作業対象物取得ミスが発生する。そこで、ロボットがロボットハンドに作用する力を検出する力検出器を有し、制御装置によりロボットアームの力制御が行われている(特許文献1参照)。
力制御には、軌道補正の制御と到達位置検知の制御とがある。軌道補正の制御は、嵌合時やワーク取得時に、作業対象物とロボットハンドとの位置ズレにより発生する接触力が力検出器で検出され、先端軸に交差する方向に発生した接触力が小さくなる(0に近づく)ようにロボットアームの軌道を補正する制御である。到達位置検知の制御は、先端軸の延びる方向であるアプローチ方向の到達位置を検知して、ロボットアームを停止させる制御である。
特開平5−69358号公報
力検出器を有するロボットの構成では、ロボット動作時の振動等により、検出したい力以外の出力が力検出器の出力にノイズとして乗ることがある。力検出器の出力によって軌道補正の制御を行う際に、そのノイズの影響で補正が不安定になることがある。そのため、力検出器の出力にローパスフィルタをかけ、軌道補正の制御を行っている。
しかし、到達位置検知の制御を行う際に、軌道補正の制御を行う場合と同様、力検出器の出力に同様の特性のフィルタを通して制御すると、到達時に発生する力を低い感度でしか検出することができない。そのため、ロボットアームを停止させるタイミングが遅くなる問題があった。ロボットアームを停止させるタイミングが遅くなると、ロボットハンドや力検出器、即ちロボットに過負荷がかかった状態で停止することがあった。
逆に、到達位置検知の制御を優先して、高感度に力を検出するようにフィルタの特性を設定すれば、到達時に発生する力の過渡応答が速くなるので、ロボットへの過負荷を小さくすることは可能である。しかし、軌道補正の制御を行う際には、力検出結果に含まれる振動成分の除去が不十分であり、軌道の補正動作が不安定となっていた。
そこで、本発明は、移動方向と交差する方向のロボットハンドの位置ズレを安定して補正し、かつ移動方向のロボットハンドの到達を迅速に検知することを目的とする。
本発明のロボット装置は、多関節のロボットアームと、前記ロボットアームの先端に取り付けられたロボットハンドと、前記ロボットハンドに把持された把持物の移動方向の力としての第1検出力及び前記移動方向と交差する方向の力としての第2検出力を検出する力検出器と、前記ロボットアームの軌道データに基づき、前記把持物を前記移動方向にある対象物に向けて、離れた位置から移動作業を行うよう、前記ロボットアームの動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記移動作業中、第1カットオフ周波数の第1ローパスフィルタにて、前記第1検出力に対してフィルタ処理を行う第1検出力補正処理と、前記移動作業中、前記把持物と前記対象物とが接触して前記第1検出力が閾値を上回ったときに前記ロボットハンドの前記移動方向への移動を停止させる第1力制御処理と、前記移動作業中、前記第1カットオフ周波数よりも周波数の低い第2カットオフ周波数の第2ローパスフィルタにて、前記第2検出力に対してフィルタ処理を行う第2検出力補正処理と、前記移動作業中、前記第2検出力が小さくなるように前記ロボットアームの軌道を前記移動方向とは交差する方向に補正する第2力制御処理と、を実行することを特徴とする。
本発明によれば、感度の高い到達位置検知の制御と安定した軌道補正の制御とが同時に実施される。
本発明の第1実施形態に係るロボット装置を示す模式図である。 本発明の第1実施形態に係るロボット装置を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態に係るロボット装置のロボットコントローラの構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態における嵌合物と被嵌合物との嵌合作業を行っている状態を示す説明図である。 本発明の第2実施形態に係るロボット装置を示す模式図である。 本発明の第2実施形態における嵌合物と被嵌合物との嵌合作業を説明するための説明図である。
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るロボット装置を示す模式図である。図2は、本発明の第1実施形態に係るロボット装置を示すブロック図である。図1に示すロボット装置100は、把持物と対象物との嵌合作業を行い組立部品Wを製造する製造方法を実行するものである。把持物及び対象物のうち、一方(第1実施形態では把持物)が、嵌合物Wであり、他方(第1実施形態では対象物)が、嵌合物Wが嵌合する穴Hを有する被嵌合物Wである。被嵌合物Wは、第1実施形態では、基台Bに載置されているものとするが、別のロボットに把持されていてもよい。嵌合物Wは、円柱状のピンであり、被嵌合物Wの穴Hは、嵌合物Wが嵌合する円柱状のピン穴である。
ロボット装置100は、多関節のロボット200と、ロボット200にケーブル等で接続されたロボットコントローラ300と、を備えている。
ロボット200は、多関節(例えば垂直多関節)のロボットアーム201と、エンドエフェクタであるロボットハンド202と、ロボットハンド202(フィンガ)に作用した力を検出する力検出器203と、を有している。ロボットアーム201は、複数のリンクが複数の関節J〜Jで旋回又は回転可能に連結されて構成されている。ロボットアーム201の基端(基端リンク、ベース部ともいう)が基台Bの上面に固定されている。ロボットアーム201の先端(先端リンク、フランジ部ともいう)には、力検出器203を介してロボットハンド202が取り付けられている。なお、図1では、ロボットアーム201の先端リンクが力検出器203と一体に形成されている場合について図示しているが、先端リンクと力検出器203とが別体に形成されていて、力検出器203が先端リンクに固定具等で固定されている場合であってもよい。ロボットハンド202は、複数のフィンガを有し、嵌合物Wを把持又は把持解放することができるよう構成されている。
ロボット200(ロボットアーム201)の基端には、ワールド座標系Σが設定されている。ワールド座標系Σは、基台Bに垂直なZ軸と、Z軸に対して交差(直交)し、互いに交差(直交)するX軸及びY軸とで規定されている。
また、ロボット200(ロボットアーム201)の先端には、手先座標系Σが設定されている。手先座標系Σは、ロボットアーム201の先端からロボットハンド202に向かって延びる先端軸であるZ軸と、Z軸に対して交差(直交)し、互いに交差(直交)するX軸及びY軸とで規定されている。
力検出器203は、いわゆる力覚センサであり、負荷されている力の大きさ及び方向を検出することがきるよう構成されている。即ち、力検出器203は、ロボットハンド202(フィンガ)に作用した、X軸及びY軸の方向の力(第検出力)Fx,Fy、及びZ軸の方向の力(第検出力)Fzを検出する。
またロボットアーム201は、各関節J〜Jに対応して設けられた、各関節J〜Jを駆動するモータ(図2)211と、各モータ211の回転位置を検出する位置検出器212と、各モータ211の回転を制御するモータ制御器213と、を有している。
各モータ211は、ブラシレスDCモータやACモータ等のサーボモータである。各位置検出器212は、ロータリエンコーダで構成されている。各モータ制御器213は、各位置検出器212で検出した各関節J〜Jの角度がロボットコントローラ300から取得した軌道、即ち角度指令値(位置指令値)となるように、各モータ211の回転を制御する。
図3は、本発明の第1実施形態に係るロボット装置100のロボットコントローラ300の構成を示すブロック図である。図3に示すように、ロボットコントローラ300は、コンピュータで構成されている。ロボットコントローラ300は、コンピュータの中枢となる制御部(演算部)としてのCPU(Central Processing Unit)301を備えている。また、ロボットコントローラ300は、記憶部として、ROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303、及びHDD(Hard Disk Drive)304を備えている。また、ロボットコントローラ300は、記録ディスクドライブ305及び各種のインタフェース311〜314を備えている。
CPU301には、ROM302、RAM303、HDD304、記録ディスクドライブ305及びインタフェース311〜314が、バス310を介して接続されている。
ROM302には、BIOS等の起動プログラムが格納されている。RAM303は、CPU301の演算処理結果等、各種データを一時的に記憶する記憶装置である。HDD304には、プログラム321が格納(記録)される。そして、CPU301がプログラム321を読み出して実行することにより、図2に示す各部332,333,335,336,337,338として機能し、後述するロボット制御方法の各工程を実行する。なお、HDD304には、ユーザにより作成されたロボット動作プログラム320が格納される。記録ディスクドライブ305は、記録ディスク322に記録された各種データやプログラム等を読み出すことができる。
インタフェース311には、ロボット200の各モータ制御器213が接続されている。CPU301は、バス310及びインタフェース311を介して、各モータ制御器213に、関節J〜Jの角度指令値(位置指令値)を出力し、ロボット200の動作を制御する。
インタフェース312には、マウスやキーボード等、作業者が操作して、操作に応じた指令をCPU301に送信する入力装置600が接続されている。インタフェース313には、画像を表示するディスプレイ等の表示装置700が接続されている。インタフェース314には、USBメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリ、或いは外付けHDD等の外部記憶装置800が接続されている。
CPU301は、軌道データに基づき、ロボットハンド202に把持された嵌合物Wと被嵌合物Wとの嵌合作業を行うようロボット200(ロボットアーム201)の動作を制御する。
軌道データは、CPU301が、ロボット動作プログラム320に基づいて生成する。ロボット動作プログラム320は、ロボット200に対してどのような動きをさせるかを指示する動作指示であり、ロボット専用のプログラミング言語を用いてユーザにより作成されたプログラムである。ロボット200に何らかの動作を行わせる際には、ロボット動作プログラム320内で位置制御や力制御などの制御方法や位置、速度、力目標値等のパラメータをプログラムし、動作の指示を行う。
CPU301は、図3に示すプログラム321を実行することにより、図2に示す軌道計算部332、位置出力部333、軌道補正計算部335、軌道補正フィルタ部336、到達位置判定部337及び到達位置判定フィルタ部338として機能する。
軌道計算部332は、ロボット動作プログラム320に記載されている情報をもとに、ロボット200(ロボットアーム201)の経路を作成し、ロボット200の経路に基づいて、ロボット200(ロボットアーム201)の軌道を生成する。
ここで、ロボット200の経路とは、ロボット200の各関節J〜Jの軌跡である。換言すれば、ロボット200の経路とは、関節J〜Jの角度を座標軸とした関節空間における点(ポーズ)の順序集合である。ロボット200の軌道とは、時間をパラメータとしてポーズ(経路)を表したものであり、第1実施形態では、所定時間(例えば2ms)間隔のロボット200の関節J〜Jの角度指令値の集合である。
ここで、CPU301によるロボットアーム201の動作の制御は、大別して、位置制御と力制御の2つの方法がある。
位置制御は、ロボット動作プログラム320により生成した軌道に従ってロボットアーム201を動作させる制御である。力制御は、ロボット動作プログラム320により生成した軌道に従ってロボットアーム201を動作させているときに、力検出器203により検出された力Fx,Fy,Fzに基づいて動作を修正する制御である。
また、力制御は、軌道補正の制御と到達位置検知の制御とがある。軌道補正の制御は、第検出力である力Fx,Fyが小さくなるように(0に近づくように)ロボットハンド202をX軸,Y軸の方向に移動させて、ロボットアーム201の軌道を補正する制御である。到達位置検知の制御は、第検出力である力Fzに対して閾値判定を行い、力Fzが閾値を上回ったときにロボットハンド202のZ軸の方向の移動を停止させる制御である。
ユーザは、CPU301(ロボットコントローラ300)に位置制御でロボット200を制御させる際は、位置制御を行う旨をロボット動作プログラム320に記載する。軌道計算部332は、このように記述されたロボット動作プログラム320に基づき、目標位置までの軌道を生成する。
位置出力部333は、生成された軌道(角度指令値)を、所定時間(例えば2ms)毎にモータ制御器213に通知する。モータ制御器213は、位置出力部333から受領した軌道と位置検出器212から取得した現在位置を用いてモータ211をフィードバック制御する。
この位置制御の際には、図2に示す軌道補正計算部335、軌道補正フィルタ部336、到達位置判定部337及び到達位置判定フィルタ部338は機能しない。
次に、ユーザは、CPU301(ロボットコントローラ300)に力制御でロボット200を制御させる際は、力制御を行う旨をロボット動作プログラム320に記載する。ロボット動作プログラム320内では、到達位置検知の制御や軌道補正の制御の力制御を実施する旨が記載される。
CPU301は、記載されたロボット動作プログラム320の情報を解析する。到達位置判定フィルタ部338は、ロボット動作プログラム320内で到達位置検知の制御が指定された場合に、ロボット動作プログラム320で指定されたローパスフィルタを設定する。軌道補正フィルタ部336は、ロボット動作プログラム320内で軌道補正の制御が指定された場合に、ロボット動作プログラム320で指定されたローパスフィルタを設定する。第1実施形態では、嵌合物Wと被嵌合物Wとの嵌合作業を行う際には、軌道補正の制御及び到達位置検知の制御の両方を同時に実行する。
軌道補正フィルタ部336及び到達位置判定フィルタ部338は、力検出器203で出力された力Fx,Fy,Fzのデータの高周波のノイズ成分をカットするためのローパスフィルタ(デジタルフィルタ)として機能する。各フィルタ部336,338は、カットオフ周波数FC1,FC2がパラメータとして指定され、そのパラメータはロボット動作プログラム320内で記載することができる。具体的には、軌道補正フィルタ部336は、第カットオフ周波数であるカットオフ周波数FC1の第ローパスフィルタとして動作し、力Fx,Fyに対してフィルタ処理を行う。到達位置判定フィルタ部338は、嵌合作業中、第カットオフ周波数であるカットオフ周波数FC2の第ローパスフィルタとして動作し、力Fzに対してフィルタ処理を行う。
軌道計算部332は、力制御が指定された場合、ロボット動作プログラム320に記載された動作指示通りに、位置制御と同様な方法で軌道を生成する。位置出力部333は、所定時間(例えば2ms)毎に角度指令値をモータ制御器213に通知する。モータ制御器213は、モータ211の回転をフィードバック制御し、ロボット200を動作させる。
同時に、各フィルタ部336,338は、力検出器203よりロボット200にかかる力Fx,Fy,Fzを取得する。具体的には、軌道補正フィルタ部336は力Fx,Fyを取得し、到達位置判定フィルタ部338は力Fzを取得する。
軌道補正フィルタ部336は、嵌合作業中、カットオフ周波数FC1の第ローパスフィルタを用いて、力Fx,Fyに対してフィルタ処理を行う(第検出力補正処理、第検出力補正工程)。同時に、到達位置判定フィルタ部338は、嵌合作業中、カットオフ周波数FC2の第ローパスフィルタを用いて、力Fzに対してフィルタ処理を行う(第検出力補正処理、第検出力補正工程)。
軌道補正計算部335は、軌道補正フィルタ部336を通して取得した力Fx,Fyのデータに合わせた(比例する)軌道補正量を計算し、軌道計算部332で計算した軌道に加えることで、軌道を補正する。即ち、軌道補正計算部335は、嵌合作業中、力Fx,Fyが小さくなるように(0に近づくように)ロボットハンド202をX軸,Y軸の方向に移動するよう、ロボットアーム201の軌道を補正する(第力制御処理、第力制御工程)。
位置出力部333は、補正された軌道データ(補正された角度指令値)をモータ制御器213に通知する。これにより、モータ制御器213は、補正された軌道データに基づいてモータ211の回転を制御する。このように、CPU301は、力制御による軌道補正の制御を実施する。
一方、到達位置判定部337は、ロボット動作プログラム320に記載された力目標値(閾値)と到達位置判定フィルタ部338を通して取得した力Fzのデータとを比較する。そして、到達位置判定部337は、力Fzが力目標値(閾値)を上回ったタイミングで位置出力部333にロボットハンド202がZ軸の方向に移動するのを停止させる停止指令を通知する。即ち、到達位置判定部337は、嵌合作業中、力Fzに対して閾値判定を行い、力Fzが閾値を上回ったときにロボットハンド202のZ軸の方向の移動が停止するようロボットアーム201の動作を制御する(第力制御処理,第力制御工程)。
第1実施形態では、到達位置判定部337は、ロボットハンド202のX軸の方向及びY軸の方向の移動も停止するよう停止指令を通知する。つまり、第1実施形態では、停止指令はロボットアーム201の動作を停止させる指令である。
位置出力部333は、停止指令を受信したタイミングで各モータ制御器213へ停止するよう通知し、各モータ制御器213はモータ211を停止させる。このように、CPU301は、力制御による到達位置検知の制御を実施する。
ここで、位置出力部333から停止指令をモータ制御器213が受信した際、モータ211を即停止させず、モータ制御器213が各モータ211を減速させて停止しても良い。また、位置出力部333で到達位置判定部337から停止指令を受信した際に、軌道計算部332を通して減速軌道を計算し、算出された軌道をモータ制御器213に通知して、停止させても良い。
次に、ロボットコントローラ300によるロボットハンド202が嵌合物Wを把持し、嵌合物Wを被嵌合物Wの穴Hに嵌合させる嵌合作業を行う場合の力制御について、具体的に説明する。図4は、嵌合物Wと被嵌合物Wとの嵌合作業を行っている状態を示す説明図である。
図4に示すように、被嵌合物Wの穴Hは、凹み穴であり、底部Bが形成されている。穴Hの開口端には、嵌合物Wを誘い込むための面取り部Cが形成されている。なお、面取り部は、嵌合物W及び被嵌合物Wのうち少なくとも一方に形成されていればよく、嵌合物Wに面取り部が形成されていても、嵌合物Wと被嵌合物Wの両方に面取り部が形成されていてもよい。
嵌合物Wと被嵌合物Wはそれぞれ、不図示の供給装置により供給され、取得位置に供給された嵌合物Wをロボットハンド202で把持し、被嵌合物Wは組付け位置に供給される。
このような供給方法をとると、ロボットハンド202に対する嵌合物Wの位置ズレや、被嵌合物Wの組み付け位置に対する位置ズレにより、被嵌合物Wに対する嵌合物Wの相対的な位置ズレが生じることがある。また、嵌合物W及び被嵌合物Wは製作時の公差分バラつきが生じている。
上記の要因から被嵌合物Wに対する嵌合物Wの組付け方向(図4に示すZ軸の方向)と組付け方向に鉛直な面方向(図4に示すX,Y軸の方向)それぞれの相対位置ズレが生じる。位置制御だけで嵌合作業を行うと、被嵌合物Wの穴Hに嵌合物Wが嵌合されない場合がある。
そのため、第1実施形態では、穴Hの中心軸に対する嵌合物Wの中心軸の、X,Y軸の方向の相対的なズレΔX,ΔYを補正する軌道補正の制御と、Z軸の方向の到達位置検知の制御の2つの力制御を同時に行う。
ここで、デジタルフィルタを介した力検出の感度は、デジタルフィルタのカットオフ周波数で決まる。即ち、カットオフ周波数を高い周波数にするほど、感度が高くなり、逆にカットオフ周波数を低い周波数にするほど、感度が低くなる。
到達位置検知の制御を実施する際に、仮に接触したことを検知する感度が低い場合、嵌合物Wを底部Bに押し付け続けることとなり、ロボットハンド202と力検出器203、即ちロボット200に過負荷がかかった状態を維持し続けることとなる。
そこで、第1実施形態では、到達位置検知の制御に使用する到達位置判定フィルタ部338におけるローパスフィルタのカットオフ周波数FC2を、カットオフ周波数FC1よりも高い周波数に設定し、急峻な力の変化を検知できるような設定とする。
また、嵌合物Wと被嵌合物Wの穴HとのX,Y軸の方向のズレを補正するための軌道補正の制御では、相対位置ズレの影響で、嵌合物Wの下端が面取り部Cに接触することで、X,Y軸の方向に力Fx,Fyが発生する。その発生した力Fx,Fyを力検出器203で検出し、軌道補正計算部335は、軌道補正の制御を実施する。
ここで、力検出器203はロボット200に設置されているため、面取り部Cに接触して発生した力以外もロボット200(ロボットアーム201)の振動によるノイズが同時に検出される。そのため、軌道補正フィルタ部336で使用するローパスフィルタのカットオフ周波数FC1をカットオフ周波数FC2よりも低い周波数に設定し、力の急峻な変化を無視するような設定とする。
例えば、カットオフ周波数FC1を20Hzに設定し、カットオフ周波数FC2を100Hzに設定する。これらカットオフ周波数FC1,FC2は、実験を行って決定すればよい。
以上、第1実施形態によれば、軌道補正フィルタ部336に使用する第ローパスフィルタと、到達位置判定フィルタ部338に使用する第ローパスフィルタとを別々に設定している。そして、第ローパスフィルタのカットオフ周波数FC2を第ローパスフィルタのカットオフ周波数FC1よりも高い周波数に設定している。
これにより、軌道補正の制御では、軌道補正フィルタ部336によって、力検出器203により検出された力Fx,Fyにおいて周波数FC1以上の高周波のノイズがカットされる。したがって、安定した軌道補正を実施することができる。
また、到達位置検知の制御では、軌道補正フィルタ部336により、力検出器203により検出された力Fzにおいて、周波数FC2以上の周波数のノイズはカットされ、周波数FC1〜FC2の周波数成分については、カットされずに残っている。よって、軌道補正フィルタ部336に用いるフィルタよりも感度良く力を検出することができる。これにより、Z軸方向の到達位置に達した時に発生する力Fzを感度よく検知することが可能になる。
このように、感度の高い到達位置検知の制御と安定した軌道補正の制御とが同時に実施されるので、嵌合物Wと被嵌合物Wとの安定した嵌合作業を実現することが可能になる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るロボット装置によるロボット制御について説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係るロボット装置を示す模式図である。なお、第2実施形態のロボット装置は、上記第1実施形態のロボット装置と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。第2実施形態では、嵌合を行う嵌合物及び被嵌合物の形状が上記第1実施形態と異なる。なお、ロボットハンド202は、ロボットアーム201の先端リンクが関節Jで回転することによりZ軸を中心に回転する。
嵌合物W10は、円柱状の円柱部W11と、円柱部W11の中心軸の延びる方向の先端部と後端部との間の中間部における外周面に突設された突起部であるボスW12と、を有している。被嵌合物W20には、穴H20が形成されている。穴H20は、円柱部W11が嵌合する円柱状の円柱穴H21と、円柱穴H21に繋がり、ボスW12が嵌合する溝であるボス穴H22と、を有している。
第2実施形態では、ロボットハンド202が把持する把持物が、嵌合物W10であり、対象物が被嵌合物W20である。第2実施形態では、嵌合作業として、円柱部W11を円柱穴H21に嵌合させ、かつボスW12をボス穴H22に嵌合させる作業を行う。
以下、嵌合物W10の回転し押し付けながらボスW12をボス穴H22に嵌合させる動作について説明する。
CPU301は、ロボットハンド202によってボスW12を有した嵌合物W10を把持させ、ロボットハンド202が把持している嵌合物W10を被嵌合物W20に設けられた穴H20に嵌合する嵌合作業を行う。この嵌合作業はボスW12をボス穴H22に嵌合することで完了する。
円柱穴H21は上記第1実施形態の穴Hと同様の凹み穴であり、円柱穴H21の開口端に、円柱部W11の先端部を誘い込むための面取り部が形成されている。なお、面取り部は、円柱部W11及び円柱穴H21のうち少なくとも一方に形成されていればよく、円柱部W11に面取り部が形成されていても、円柱部W11と円柱穴H21の両方に面取り部が形成されていてもよい。
また、嵌合物W10及び被嵌合物W20は、上記第1実施形態と同様の方法で供給される。また、嵌合物W10及び被嵌合物W20の公差、嵌合物W10の把持位置、被嵌合物W20の設置位置の影響で、被嵌合物W20に対して嵌合物W10に相対位置のズレが生じる。このため、第2実施形態においても、到達位置検知の制御と軌道補正の制御の2つの力制御で嵌合作業を行う。
ここで、ボスW12は、円柱部W11の先端部(下端部)より一定距離上方に離れた場所に取り付けられている。
図6は、本発明の第2実施形態における嵌合物W10と被嵌合物W20との嵌合作業を説明するための説明図である。図6(a)は、嵌合作業の途中状態を示し、図6(b)は、嵌合作業の終了状態を示している。
CPU301は、図6(a)に示すように、円柱部W11の先端部を穴H20の円柱穴H21に嵌合する工程を実施した後、図6(b)に示すように、ボスW12をボス穴H22に嵌合するために位相を合わせて嵌合する2つの工程を実施する。
まず、図6(a)に示す円柱部W11の先端部を穴H20に嵌合する処理は、上記第1実施形態に記載の内容とほぼ同様の方法で嵌合作業を行うため、詳細な説明は省略する。上記第1実施形態と異なる点として、第2実施形態では、CPU301は、到達位置検知の制御により、ボスW12を被嵌合物W20上面に接触させたとき、ロボットアーム201の動作を停止させる点である。即ち、到達位置判定部337は、嵌合作業中、円柱部W11の先端部を円柱穴H21に嵌合させて、力Fzが閾値を上回ったとき、嵌合物W10のZ軸の方向の移動を停止させる。
次に、CPU301は、ボスW12をボス穴H22に嵌合させる際に、図6(b)に示すように、ロボットハンド202で把持している嵌合物W10の円柱部W11の先端部を円柱穴H21に嵌合させている状態で、嵌合物W10をZ軸まわりに回転させる。
即ち、CPU301は、嵌合作業中、円柱部W11の先端部を円柱穴H21に嵌合させて第力制御処理にて嵌合物W10のZ軸方向の移動を停止させたとき、力Fzが閾値を下回るまで、嵌合物W10を、Z軸を中心に回転させる。具体的には、ロボットハンド202をロボットアーム201に対してZ軸を中心に回転させる。
ボスW12がボス穴H22に到達すると、ボス穴H22に到達したタイミングでZ軸方向の力Fzが抜け、力Fzが閾値を下回る。その力Fzを到達位置検知の力制御で検知することで、ボスW12をボス穴H22に嵌合するための位相が検知可能になる。
ここで、ボス穴H22の位相を検知する際、仮に到達位置検知の感度が低いと、組付け位相に到達しても閾値を下回る力を検知せずに通り過ぎてしまい、ボス穴H22の位相を検知することができなくなるおそれがある。そのため、上記第1実施形態と同様、到達位置検知に使用する到達位置判定フィルタ部338で使用するフィルタのカットオフ周波数FC2をカットオフ周波数FC1よりも大きく設定し、急峻な力の変化を検知できるような設定とする。その後、検知した位相で嵌合物W10をZ軸の方向に押し込んで、再度、閾値判定を行うことにより、嵌合物W10を穴H20に嵌合する嵌合作業が完了する。
ここで、嵌合物W10を回転させる際、嵌合物W10を回転させる回転軸と穴H20の回転軸にズレが生じている場合、回転中にX,Y軸の方向の力Fx,Fyが生じることがある。
よって、第2実施形態では、ロボットハンド202と力検出器203、即ちロボット200に過負荷がかかるのを回避するため、嵌合物W10を回転させるのと同時に、回転軸のズレを補正するための軌道補正の制御を実施する。
この軌道補正の制御では、回転時のロボット200の振動によるノイズを検出し、嵌合物W10と穴H20が接触することによって発生する力以外の力も同時に検出する。そのため、上記第1実施形態と同様、軌道補正フィルタ部336で使用するフィルタのカットオフ周波数FC1を小さくし、力の急峻な変化を無視するような設定とする。
以上の如くカットオフ周波数FC1,FC2を設定することで、感度の高い到達位置検知によりボスW12を組付ける位相を検知するのと同時に、嵌合物W10と穴H20との相対位置ズレにより発生する回転軸のズレを吸収した嵌合作業を実現できる。
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
上記第2実施形態では、力Fzを検知して到達位置検知を実施したが、力Fzだけでなく、力Fzの時間変化量を使用して、到達位置検知を実施しても良い。また、上記第2実施形態で使用した到達位置検知では、挿入方向の力Fzをモニタリングして検知していたが、Z軸まわりの回転方向の力成分を利用して、到達位置検知を実施してもよい。
上記第1,第2実施形態では、ロボットハンドが嵌合物を把持して嵌合物と被嵌合物との嵌合作業を行う場合について説明したが、これに限定するものではない。ロボットハンドが被嵌合物を把持して嵌合作業を行う場合であっても本発明は適用可能である。
上記実施形態の各処理動作は具体的にはCPU301により実行されるものである。従って上述した機能を実現するプログラムを記録した記録媒体をロボットコントローラに供給し、ロボットコントローラを構成するコンピュータが記録媒体に格納されたプログラムを読み出し実行することによって達成されるようにしてもよい。この場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、プログラム自体及びそのプログラムを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。
また、上記実施形態では、コンピュータ読み取り可能な記録媒体がHDD304であり、HDD304にプログラム321が格納される場合について説明したが、これに限定するものではない。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であれば、いかなる記録媒体に記録されていてもよい。例えば、プログラムを供給するための記録媒体としては、図3に示すROM302、記録ディスク322、外部記憶装置800等を用いてもよい。具体例を挙げて説明すると、記録媒体として、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、書き換え可能な不揮発性のメモリ(例えばUSBメモリ)、ROM等を用いることができる。
また、上記実施形態におけるプログラムを、ネットワークを介してダウンロードしてコンピュータにより実行するようにしてもよい。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施形態の機能が実現されるだけに限定するものではない。そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれてもよい。そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上記実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
また、上記実施形態では、コンピュータがHDD等の記録媒体に記録されたプログラムを実行することにより、処理を行う場合について説明したが、これに限定するものではない。プログラムに基づいて動作する演算部の一部又は全部の機能をASICやFPGA等の専用LSIで構成してもよい。なお、ASICはApplication Specific Integrated Circuit、FPGAはField-Programmable Gate Arrayの頭字語である。
100…ロボット装置、201…ロボットアーム、202…ロボットハンド、203…力検出器、301…CPU(制御部)、FC1…カットオフ周波数(第カットオフ周波数)、FC2…カットオフ周波数(第カットオフ周波数)

Claims (6)

  1. 多関節のロボットアームと、
    前記ロボットアームの先端に取り付けられたロボットハンドと、
    前記ロボットハンドに把持された把持物の移動方向の力としての第1検出力及び前記移動方向と交差する方向の力としての第2検出力を検出する力検出器と、
    前記ロボットアームの軌道データに基づき、前記把持物を前記移動方向にある対象物に向けて、離れた位置から移動作業を行うよう、前記ロボットアームの動作を制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、
    前記移動作業中、第1カットオフ周波数の第1ローパスフィルタにて、前記第1検出力に対してフィルタ処理を行う第1検出力補正処理と、
    前記移動作業中、前記把持物と前記対象物とが接触して前記第1検出力が閾値を上回ったときに前記ロボットハンドの前記移動方向への移動を停止させる第1力制御処理と、
    前記移動作業中、前記第1カットオフ周波数よりも周波数の低い第2カットオフ周波数の第2ローパスフィルタにて、前記第2検出力に対してフィルタ処理を行う第2検出力補正処理と、
    前記移動作業中、前記第2検出力が小さくなるように前記ロボットアームの軌道を前記移動方向とは交差する方向に補正する第2力制御処理と、を実行することを特徴とするロボット装置。
  2. 前記把持物及び前記対象物のうち、一方が嵌合物であり、他方が、前記嵌合物が嵌合する穴を有する被嵌合物であり、
    前記制御部は、前記移動作業として、前記嵌合物を前記被嵌合物の穴に嵌合させる嵌合作業を行うことを特徴とする請求項1に記載のロボット装置。
  3. 前記嵌合物は、円柱状の円柱部と、前記円柱部の先端部と後端部との間の中間部における外周面に突設された突起部と、を有しており、
    前記穴は、前記円柱部が嵌合する円柱状の円柱穴と、前記円柱穴に繋がり、前記突起部が嵌合する溝と、を有しており、
    前記制御部は、前記嵌合作業として、前記円柱部を前記円柱穴に嵌合させ、かつ前記突起部を前記溝に嵌合させる作業中、前記円柱部の先端部を前記円柱穴に嵌合させて前記第力制御処理にて前記把持物の前記移動方向の移動を停止させたとき、前記第検出力が前記閾値を下回るまで、前記把持物を、前記移動方向を軸に回転させることを特徴とする請求項2に記載のロボット装置。
  4. 多関節のロボットアームの先端に、力検出器を介してロボットハンドが取り付けられており、前記力検出器が、前記ロボットハンドに把持された把持物の移動方向の力としての第1検出力、及び前記移動方向と交差する方向の力としての第2検出力を検出するよう構成されており、制御部が、前記ロボットアームの軌道データに基づき、前記把持物を前記移動方向にある対象物に向けて、離れた位置から移動作業を行うよう前記ロボットアームの動作を制御するロボット制御方法であって、
    前記制御部が、前記移動作業中、第1カットオフ周波数の第1ローパスフィルタにて、前記第1検出力に対してフィルタ処理を行う第1検出力補正工程と、
    前記制御部が、前記移動作業中、前記把持物と前記対象物とが接触して前記第1検出力が閾値を上回ったときに前記ロボットハンドの前記移動方向への移動を停止させる第1力制御工程と、
    前記制御部が、前記移動作業中、前記第1カットオフ周波数よりも周波数の低い第2カットオフ周波数の第2ローパスフィルタにて、前記第2検出力に対してフィルタ処理を行う第2検出力補正工程と、
    前記制御部が、前記移動作業中、前記第2検出力が小さくなるように前記ロボットアームの軌道を前記移動方向とは交差する方向に補正する第2力制御工程と、を備えたことを特徴とするロボット制御方法。
  5. コンピュータに、請求項4に記載のロボット制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。
  6. 請求項5に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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