JP6459276B2 - 車両用ドアクローザ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両ドアに組付けられる車両用ドアクローザ装置に関する。
下記特許文献1には、この種の車両用ドアクローザ装置(以下、単に「ドアクローザ装置」ともいう)の一例が開示されている。このドアクローザ装置は、半ドア状態の車両ドアを全閉状態に設定するクローズ作動を行うように構成される一方で、操作ハンドルのドア開操作によってこのクローズ作動をキャンセルするキャンセル機構を備えている。このドアクローザ装置の構造について具体的に説明すると、ラッチが車両本体側のストライカに不完全に噛み合うハーフラッチ位置にある場合に、アクチュエータを構成するラッチ駆動モータの駆動力をセクターギヤ、キャンセルレバー、第1クローズレバー及び第2クローズレバーを介してラッチに伝達することによって、ラッチの位置をハーフラッチ位置からフルラッチ位置へと切り替えるクローズ作動を行う。一方で、キャンセル機構は、操作ハンドルのドア開操作によって作動し、且つセクターギヤとキャンセルレバーとの係合を解除するように作動するフェールセーフレバーを備えている。このキャンセル機構よれば、フェールセーフレバーの作動時にラッチ駆動モータの駆動力がキャンセルレバーに伝達されなくなってクローズ作動がキャンセルされるため、ラッチの位置がフルラッチ位置へと切り替わる動作が中断される。
特開2005−139790号公報
(発明が解決しようとする課題)
ところで、この種のドアクローザ装置の設計に際しては、構造の簡素化を図りたいという要請が高い。このような要請に対して、特許文献1に開示のドアクローザ装置では、アクチュエータを構成するラッチ駆動モータの駆動力をラッチに伝達するまでの動力伝達経路上に、セクターギヤ、キャンセルレバー、第1クローズレバー及び第2クローズレバー、更にはフェールセーフレバー等の複数の要素が必要になるため、装置の部品点数の増加、装置の複雑化、装置の大型化の要因に成り得る。例えば、セクターギヤとキャンセルレバーとの係合を解除するためのフェールセーフレバーを設けており、このフェールセーフレバーを配置するための配置スペースや、このフェールセーフレバーを作動させるためのコントロールニット及びケーブル等の制御手段が別途必要になる。
そこで本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、車両用ドアクローザ装置の構造の簡素化を図るのに有効な技術を提供することである。
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ドアクローザ装置は、車両ドアに組付けられる装置であって、ラッチ、駆動力伝達機構及びキャンセル機構を備えている。ラッチは、車両本体に設けられたストライカに対して噛み合い方向及び噛み合い解除方向の双方向に回転可能に構成され、車両ドアが閉じられる際にストライカと噛み合って噛み合い方向に回転する。
駆動力伝達機構は、ラッチをストライカとの噛み合いが不完全なハーフラッチ位置からストライカに完全に噛み合ったフルラッチ位置まで噛み合い方向に回転させるクローズ作動のためにアクチュエータの駆動力をラッチに伝達する機能を果たすものであり、駆動力伝達レバーを備える。この駆動力伝達レバーは、アクチュエータとラッチとの間に形成される駆動力伝達経路上に介装され、アクチュエータの駆動力をラッチに伝達する伝達位置とアクチュエータの駆動力をラッチに伝達しない非伝達位置との間で回転可能に構成され、クローズ作動の際に伝達位置に設定される。これにより、ラッチがハーフラッチ位置にあるときにアクチュエータの駆動力が駆動力伝達レバーを介してラッチに伝達されると、ラッチがストライカに対する噛み合い方向に回転してフルラッチ位置に設定される。
キャンセル機構は、駆動力伝達機構によるクローズ作動をキャンセルする機能を果たすものであり、第1作動レバー及び第2作動レバーを備える。また、駆動力伝達機構の駆動力伝達レバーは、第1作動レバー及び第2作動レバーが当接可能な単一の当接部を有し、第1作動レバー及び第2作動レバーは、それぞれ独立して単一の当接部に係合して回転し駆動力伝達レバーを伝達位置から非伝達位置へと回転させる。これにより、第1作動レバー及び第2作動レバーのいずれか一方の回転を利用して、駆動力伝達レバーを伝達位置から非伝達位置へと回転させることができ、クローズ作動をキャンセル(無効化)することができる。
上記構成の車両用ドアクローザ装置によれば、駆動力伝達機構の駆動力伝達レバーにそれぞれ独立して係合する第1作動レバー及び第2作動レバーを用いてキャンセル機構を構築することができる。これにより、キャンセル機構の構造を簡素化することができ、以って車両用ドアクローザ装置の構造の簡素化を図ることが可能になる。この場合、装置の部品点数を削減したり装置を小型化したりするのに効果的である。
上記構成の車両用ドアクローザ装置は、更にポール及びオープンレバーを備える。ポールは、ラッチの噛み合い解除方向の回転を規制する規制位置とラッチの噛み合い解除方向の回転を規制しない非規制位置との間で回転可能に構成される。オープンレバーは、ポールを規制位置から非規制位置へと駆動し且つ駆動力伝達レバーを伝達位置から非伝達位置へと回転させるように回転する。この場合、キャンセル機構の第1作動レバー及び第2作動レバーのいずれか一方の作動レバーがオープンレバーによって構成されるのが好ましい。この場合、ドアクローザ装置のオープンレバーを利用してキャンセル機構の作動レバーを構築することができる。即ち、オープンレバーがキャンセル機構の作動レバーを兼務している。これにより、駆動力伝達レバーに割り当てる専用の作動レバーの数を抑えることでキャンセル機構の構造を更に簡素化することができる。
上記構成の車両用ドアクローザ装置では、駆動力伝達レバー、第1作動レバー及び第2作動レバーのそれぞれを回転可能に支持する回転軸のうちの少なくとも2つの回転軸は同方向に延在しているのが好ましい。これにより、駆動力伝達レバー、第1作動レバー及び第2作動レバーのための配置スペースを小さく抑えることが可能になる。
上記構成の車両用ドアクローザ装置では、駆動力伝達レバー、第1作動レバー及び第2作動レバーのそれぞれを回転可能に支持する回転軸のうちの少なくとも2つの回転軸は、駆動力伝達経路上に介装されてアクチュエータによって回転駆動される回転駆動部材を回転可能に支持する回転軸と同方向に延在しているのが好ましい。これにより、車両用ドアクローザ装置の複数の構成要素のうち、回転軸が同方向に延在する構成要素の数を増やすことができ、当該構成要素を配置するための配置スペースを小さく抑えることが可能になる。
上記構成の車両用ドアクローザ装置では、駆動力伝達レバー、第1作動レバー及び第2作動レバーのうちの少なくとも2つのレバーが1つの回転軸によって回転可能に支持された同軸構造を有するのが好ましい。この場合、少なくとも2つのレバーが1つの回転軸を共用するため、駆動力伝達レバー、第1作動レバー及び第2作動レバーのための配置スペースを小さく抑えるとともに、装置の部品点数を削減したり装置を小型化したりすることが可能になる。
上記構成の車両用ドアクローザ装置では、駆動力伝達レバー、第1作動レバー及び第2作動レバーの全てが1つの回転軸によって回転可能に支持された同軸構造を有するのが好ましい。これにより、駆動力伝達レバー、第1作動レバー及び第2作動レバーのための配置スペースを小さく抑える効果や、装置の部品点数を削減したり装置を小型化したりする効果を更に高めることができる。
上記構成の車両用ドアクローザ装置では、キャンセル機構は、第1作動レバー及び第2作動レバーの双方が車両ドアのアンロック状態において車両ドアに割り当てられた操作部材のドア開操作に連動して回転し、第1作動レバー及び第2作動レバーのうちの一方の作動レバーのみが車両ドアのロック状態において操作部材のドア開操作に連動して回転するように構成されるのが好ましい。この場合、車両ドアのアンロック状態では、第1作動レバー及び第2作動レバーの双方は、操作部材のドア開操作のみに連動して回転するように構成されてもよいし、或いは操作部材のドア開閉操作に連動して回転するように構成されてもよい。これにより、第1作動レバー及び第2作動レバーの双方を使い分けることによって、車両ドアがアンロック状態であるかロック状態であるかにかかわらず常時に駆動力伝達機構による車両ドアのクローズ作動をキャンセルすることが可能になる。
本発明に係る別の態様の車両用ドアクローザ装置は、前述のラッチ、ポール及び駆動力伝達機構と同構造のラッチ、ポール及び駆動力伝達機構と、オープンレバーと、キャンセル機構とを備える。オープンレバーは、ポールを規制位置から非規制位置へと駆動するように回転する。キャンセル機構は、オープンレバーとは別に設けられ駆動力伝達レバーに係合して回転し駆動力伝達レバーを伝達位置から非伝達位置へと回転させる作動レバーを備え、作動レバーは駆動力伝達レバーの回転軸と同一の回転軸によって回転可能に支持された同軸構造を有する。
この車両用ドアクローザ装置によれば、駆動力伝達機構の駆動力伝達レバーとキャンセル機構の作動レバーとが1つの回転軸を共用するため、駆動力伝達レバー及び作動レバーのための配置スペースを小さく抑えるとともに、装置の部品点数を削減したり装置を小型化したりすることが可能になる。その結果、車両用ドアクローザ装置の構造の簡素化を図ることが可能になる。
本発明に係る更なる別の態様の車両用ドアクローザ装置は、前述のラッチ、ポール及び駆動力伝達機構と同構造のラッチ、ポール及び駆動力伝達機構と、オープンレバーと、キャンセル機構とを備える。オープンレバーは、ポールを規制位置から非規制位置へと駆動するように回転する。キャンセル機構は、オープンレバーとは別に設けられ駆動力伝達レバーに係合して回転し駆動力伝達レバーを伝達位置から非伝達位置へと回転させる作動レバーを備え、作動レバーの回転軸が駆動力伝達レバーの回転軸と同方向に延在している。
この車両用ドアクローザ装置によれば、駆動力伝達レバー及び作動レバーのための配置スペースを小さく抑えて装置を小型化することが可能になる。
以上のように、本発明によれば、車両用ドアクローザ装置の構造を簡素化することが可能になった。
スライド式の車両ドア10を備える車両1の概略構成を示す平面図である。 図1中の車両ドア10の概略構成を示す側面図である。 図2中の車両用ドアクローザ装置100の構成を示す側面図である。 図3中のラッチ機構110においてラッチ112がアンラッチ位置にある状態を示す図である。 図3中のラッチ機構110においてラッチ112がフルラッチ位置にある状態を示す図である。 図3中のラッチ機構110においてラッチ112がハーフラッチ位置にある状態を示す図である。 図3中のキャンセル機構210をオープンレバー150及び第2キャンセルレバー160が取り外された状態にて示す図である。 図3中のキャンセル機構210を第2キャンセルレバー160が取り外された状態にて示す図である。 図3中のキャンセル機構210が第1キャンセルモードにある状態を示す図である。 図9に示すキャンセル機構210の第1キャンセルモードの変形例を示す図である。 図3中のキャンセル機構210が第2キャンセルモードにある状態を示す図である。
以下、本発明の実施形態を複数の図面を参照しながら説明する。尚、これらの図面では、車両前方及び車両後方をそれぞれ矢印X1及び矢印X2で示し、車両左方及び車両右方をそれぞれ矢印Y1及び矢印Y2で示し、車両上方及び車両下方をそれぞれ矢印Z1及び矢印Z2で示している。車両ドアに組付けられる前の状態の車両用ドアクローザ装置に対して、また車両ドアに組付けられた後の状態の車両用ドアクローザ装置に対して、これらの方向を適用することができる。また、本明細書中では、所定の要素が軸を中心に回る動作をその動作量にかかわらず単に「回転」と記載しているが、この動作を必要に応じて「回動」や「揺動」と記載することもできる。
図1に示される車両1は、車両後席に対応したスライド式の車両ドア10を備えている。この車両ドア10は、乗員が乗降するための乗降口を完全に閉鎖した全閉状態とその乗降口をその開口面積が最大になるように開放した全開状態との間で動作可能に構成されている。この車両ドア10は、全閉状態から斜め後方へと後退し、その途中から真っ直ぐ後退することによって全開状態になる。この車両ドア10には、第1ドアロック装置20、第2ドアロック装置30、リモコン装置50及び車両用ドアクローザ装置(以下、単に「ドアクローザ装置」ともいう)100が組付けられている。車両本体のドア枠には、3つの装置20,30,100のそれぞれに対応したストライカ40が設けられている。
第1ドアロック装置20は、車両ドア10を閉鎖状態にて保持する機能を果たす。この第1ドアロック装置20は、図2に示されるようにオープンケーブルW3によってリモコン装置50に連結されている。第2ドアロック装置30は、車両ドア10を全開状態にて保持する機能を果たす。この第2ドアロック装置30は、図2に示されるようにオープンケーブルW4によってリモコン装置50に連結されている。これら第1ドアロック装置20、第2ドアロック装置30及びリモコン装置50の更なる詳細な構造については、特開2013−163966号公報に記載の閉鎖ドアロック装置10A、全開ドアロック装置10C及びリモコン装置91の構造が参照される。
ドアクローザ装置100は、本発明の「車両用ドアクローザ装置」に相当する装置であり、半ドア状態にある車両ドア10を全閉状態に設定するクローズ作動を遂行するための駆動力伝達機構200と、駆動力伝達機構200によるクローズ作動をキャンセルするためのキャンセル機構210と、を備えている。ここで、半ドア状態とは、車両ドア10が車両本体に密着固定するまで完全に閉まっていない、閉まりかけ(開きかけ)の状態として規定される。このドアクローザ装置100は、図2に示されるように第1ケーブルW1及び第2ケーブルW2のそれぞれによってリモコン装置50に連結されている。
図2に示されるように、リモコン装置50には、車両ドア10の車内側及び車外側のそれぞれに別々に設けられた2つのドアハンドル60,60が割り当てられている。車両ドア10の車内側に設けられた一方のドアハンドル60がインサイドハンドルであり、車両ドア10の車外側に設けられた他方のドアハンドルがアウトサイドハンドルである。リモコン装置50は、各ドアハンドル60がドア開操作されたことを検出するためのドアハンドル操作検出センサ51を備えている。また、このリモコン装置50は、車両ドア10の開放動作がロックされていないアンロック状態では、ドアハンドル60のドア開操作に連動してケーブルW2,W3,W4をリモコン装置50側に引っ張る動作を行うように構成されている。一方で、車両ドア10の開放動作がロックされたロック状態では、ドアハンドル60のドア開操作に連動してケーブルW2,W3,W4をリモコン装置50側に引っ張る動作を阻止するように構成されている。
図3に示されるように、ドアクローザ装置100は、ストライカ40を受け入れるためのストライカ受容溝(図4中のストライカ受容溝101a参照)が形成されたベース盤101と、ベース盤101に連結された連結板102と、を備えている。ベース盤101には、ラッチ機構(「ラッチアンドポール機構」ともいう)110が組付けられている。このラッチ機構110は、ベース盤101とラッチカバー111との間に介装されている。
図4に示されるように、ラッチ機構110は、ラッチカバー111によって覆われたラッチ112と、ラッチカバー111を貫通して延出する回転軸113aを有するポール113とを備えている。
ラッチ112は、ベース盤101に設けられた回転軸112aによって回転可能に支持されており、ストライカ40に対して噛み合い方向及び噛み合い解除方向の双方向に回転することができる。このラッチ112は、アンラッチ位置、フルラッチ位置、アンラッチ位置とフルラッチ位置との間のハーフラッチ位置を含む複数の位置に設定される。このラッチ112は、概ね平行に延在する第1係止爪112b及び第2係止爪112cを備え、これらの係止爪112b,112cが対向する領域は、ストライカ40を受け入れるためのストライカ受容部112dとして構成される。
車両ドア10が閉じられる際にベース盤101のストライカ受容溝101aに進入したストライカ40は、ラッチ112の第1係止爪112bのうちストライカ受容部112d側の対向面を押圧しつつストライカ受容部112dに進入する(図4中の矢印参照)。これにより、ラッチ112は、車両ドア10が閉じられる際に図4に示されるアンラッチ位置からストライカ40と噛み合って回転軸112aを中心に噛み合い方向(図4中の矢印R2で示される方向)に回転する。即ち、ラッチ112がストライカ40との噛み合いを深めてロックされるロック方向に回転する。このラッチ112が本発明の「ラッチ」に相当する。このラッチ112にはラッチ位置検出センサ116が割り当てられている。このラッチ位置検出センサ116は、ラッチ112がアンラッチ位置、ハーフラッチ位置、フルラッチ位置のいずれの回転位置にあるかを検出するように構成されている。
ポール113は、ベース盤101に設けられた回転軸113aによって回転可能に支持されている。この場合、ポール113の回転軸113aはラッチ112の回転軸112aと同方向に延在している。このポール113は、ラッチ112の噛み合い解除方向の回転を規制する規制位置とラッチ112の前記噛み合い解除方向の回転を規制しない非規制位置との間で回転できるように構成されている。このポール113が本発明の「ポール」に相当する。
図3に示されるように、ポール113の回転軸113aにはポール駆動レバー114が取り付けられている。このポール駆動レバー114は、トーションスプリング(弾性コイルバネ)115によって初期位置に向けて弾性付勢されている。この目的のために、トーションスプリング115の一方のバネ端部がラッチカバー111のバネ係合部111aに係止され、且つトーションスプリング115の他方のバネ端部がポール駆動レバー114のバネ係合部114aに係止されている。
ポール駆動レバー114の被係合片114bは、後述のオープンレバー150の係合片151によって押圧されて押し下げられるように構成されている。ポール駆動レバー114の被係合片114bがトーションスプリング115の弾性付勢力に抗して押し下げられることによって、ポール駆動レバー114は初期位置から作動位置に向けて回転する。これによりポール113は、図4中の実線で示す規制位置(「初期位置」ともいう)から図4中の二点鎖線で示す非規制位置(「リリース位置」ともいう)へと駆動される。ポール113が規制位置にあるときには係合片113bによってラッチ112の噛み合い解除方向の回転が規制される一方で、ポール113が非規制位置にあるときにはラッチ112の噛み合い解除方向の回転が規制されない。
ラッチ112が図4に示されるアンラッチ位置から回転軸112aを中心に時計回り方向に回転して図5に示されるフルラッチ位置に設定されると、ラッチ112の第2係止爪112cとポール113の係合片113bとが当接することによって、ラッチ112はフルラッチ位置に位置決めされて回転軸112aを中心とした反時計回り方向(図5中の矢印R3で示される方向)への回転が阻止される。即ち、フルラッチ位置においてラッチ112のロック解錠方向(アンラッチ方向)への回転が阻止される。その結果、車両ドア10は全閉状態に保持される。
これに対して、ラッチ112が図5に示されるフルラッチ位置よりも手前の位置、即ち図6に示されるハーフラッチ位置に留まると、ラッチ112は、ハーフラッチ位置に位置決めされて回転軸112aを中心とした反時計回り方向(図6中の矢印R4で示される方向)への回転が阻止される。即ち、ハーフラッチ位置においてラッチ112のロック解錠方向(アンラッチ方向)への回転が阻止される。その結果、車両ドア10は全閉状態に至る手前の状態、所謂、半ドア状態に保持される。
図3に戻り、駆動力伝達機構200は、ラッチ112をストライカ40との噛み合いが不完全なハーフラッチ位置からストライカ40に完全に噛み合ったフルラッチ位置まで噛み合い方向に回転させるクローズ作動のために、アクチュエータ170の駆動力をラッチ112に伝達する機能を果たす。この駆動力伝達機構200が本発明の「駆動力伝達機構」に相当する。この駆動力伝達機構200は、アクチュエータ170とラッチ112との間に形成される駆動力伝達経路上に介装されてアクチュエータ170によって回転駆動される複数の回転駆動部材によって構成されている。これら複数の回転駆動部材には、アクティブレバー120、パッシブレバー130及び第1キャンセルレバー140が含まれる。これら複数の回転駆動部材はいずれも本発明の「回転駆動部材」に相当する。
アクティブレバー120は、ドアクローザ装置100の連結板102に回転軸121を中心に回転可能となるように取り付けられている。このアクティブレバー120は、回転軸121よりもラッチ機構110側に設けられた支持片122と、回転軸121を挟んで支持片122とは反対側に設けられた回転板123と、を備えている。
アクティブレバー120の支持片122は、パッシブレバー130を回転軸131を中心に回転可能に支持するように構成されている。アクティブレバー120の回転板123は、扇形状であり、その外周縁にギヤ123aが形成されている。この回転板123にアクチュエータ170が割り当てられている。
アクチュエータ170は、電動のラッチ駆動モータ171と、このラッチ駆動モータ171によって駆動される減速機構172とを備え、減速機構172は、更にウォームギヤ173及びウォームホイール174を備えている。この減速機構172では、ウォームホイール174に一体的に設けられたギヤ174aが回転板123のギヤ123aに噛み合うように構成されている。このため、車両に搭載された既知の電気制御装置(ECU70)によってラッチ駆動モータ171が制御されることによって、ラッチ駆動モータ171のモータ軸の回転が減速機構172において減速されてアクティブレバー120の回転板123に伝達される。この場合、ラッチ駆動モータ171の制御態様に応じて、アクティブレバー120を回転軸121を中心に時計回り方向及び反時計回り方向のいずれの方向にも回転させることができる。
尚、ECU70は、信号処理回路、CPU(演算処理装置)、メモリ回路などを含み、前述のドアハンドル操作検出センサ51及びラッチ位置検出センサ116において検出した検出信号に基づいてアクチュエータ170のラッチ駆動モータ171を制御するように構成されている。
パッシブレバー130は、駆動レバーであるアクティブレバー120によって受動的に駆動される被動レバーである。このパッシブレバー130は、回転軸131を挟んでその両側に2つの回転片が張り出すように構成されたシーソー形状を有する。パッシブレバー130の回転軸131はアクティブレバー120の回転軸121と同方向(車両左右方向Y1,Y2に沿った方向)に延在している。パッシブレバー130は、2つの回転片のうちラッチ機構110側の一方の回転片132に、図4中のラッチ112に当接可能な当接壁132aを備えている。このパッシブレバー130には、回転片132の当接壁132aを図4中のラッチ112から離間する方向(図3中の矢印R1で示される方向)に弾性付勢するためのトーションスプリング(弾性コイルバネ)134が割り当てられている。
このパッシブレバー130は、2つの回転片のうちラッチ機構110とは反対側の他方の回転片133に回転自在に支持された当接コロ133aを備えている。回転片133の当接コロ133aには第1キャンセルレバー140が割り当てられている。図7に示されるように、第1キャンセルレバー140は、アクチュエータ170の駆動力をラッチ112に伝達する伝達位置(実線で示される位置)P1とアクチュエータ170の駆動力をラッチ112に伝達しない非伝達位置(二点鎖線で示される位置)P2との間で回転可能に構成され、前述のクローズ作動の際に伝達位置P1に設定される。この第1キャンセルレバー140が本発明の「駆動力伝達レバー」に相当する。
第1キャンセルレバー140が伝達位置P1に設定されている場合、その先端部143がパッシブレバー130の回転片133に設けられた当接コロ133aに突き当たることによって当接コロ133aの位置決めがなされる。このため、第1キャンセルレバー140の先端部143がパッシブレバー130の当接コロ133aに突き当たった伝達位置P1にあるときにアクティブレバー120が回転軸121を中心に反時計回り方向(図7中の矢印R5で示される方向)に回転すると、パッシブレバー130はトーションスプリング134の弾性付勢力に抗して、第1キャンセルレバー140に対しては当接コロ133aを中心に反時計回り方向(図7中の矢印R6で示される方向)に回転し、且つアクティブレバー120の支持片122に対しては回転軸131を中心に反時計回り方向に回転する。その結果、パッシブレバー130は、回転軸131が上方へと持ち上げられるように移動する。この場合、ラッチ機構110のラッチ112は、パッシブレバー130の回転片132に設けられた当接壁132aによって押し上げられて、図5に示されるフルラッチ位置に向けて回転する。これにより、駆動力伝達機構200によるクローズ作動によって、車両ドア10を全閉状態へと移行させることが可能になる。
これに対して、第1キャンセルレバー140の先端部143がパッシブレバー130の当接コロ133aから離間した非伝達位置P2にある場合には、パッシブレバー130は、アクティブレバー120に対して独立して回転自在な状態になる。その結果、アクティブレバー120からパッシブレバー130への動力の伝達が遮断されるため、ラッチ機構110のラッチ112は、パッシブレバー130の回転片132に設けられた当接壁132aによって押し上げられないため、図5に示されるフルラッチ位置に向けて回転しない。これにより、駆動力伝達機構200により車両ドア10を全閉状態へと移行させるクローズ作動がキャンセルされる。
図3に戻り、ドアクローザ装置100は、第1キャンセルレバー140、オープンレバー150及び第2キャンセルレバー160を備えている。これら3つのレバー140,150,160は、前述の駆動力伝達機構200によるクローズ作動をキャンセルするためのキャンセル機構210を構成している。このキャンセル機構210が本発明の「キャンセル機構」に相当する。
ドアクローザ装置100の連結板102のうちアクティブレバー120の回転軸121よりも車両上方Z1側には、第1キャンセルレバー140、オープンレバー150及び第2キャンセルレバー160に共通の回転軸141が設けられている。即ち、ドアクローザ装置100は、第1キャンセルレバー140、オープンレバー150及び第2キャンセルレバー160の全てが車両左右方向Y1,Y2に沿って延在する1つの回転軸141によって回転可能に支持された同軸構造を有する。このため、これら3つのレバー140,150,160はいずれも回転軸141を中心に回転することができるように構成されている。この同軸構造の場合、3つのレバー140,150,160のそれぞれを回転可能に支持する回転軸のうちの少なくとも2つの回転軸が、或いは全ての回転軸が同方向(車両左右方向Y1,Y2に沿った方向)に延在していることにもなる。3つのレバー140,150,160が1つの回転軸141を共用するため、各レバーのための配置スペースを小さく抑えるとともに、装置の部品点数を削減したり装置を小型化したりすることが可能になる。
更に、3つのレバー140,150,160の共通の回転軸141は、アクティブレバー120の回転軸121及びパッシブレバー130の回転軸131と同方向(車両左右方向Y1,Y2に沿った方向)に延在している。これにより、3つのレバー140,150,160に加えて、回転軸が同方向に延在する構成要素の数を増やすことができ、当該構成要素を配置するための配置スペースを小さく抑えることが可能になる。
オープンレバー150は、回転軸141から下方に延出した部位に金属製の第2ケーブルW2の一端部が連結されており、その第2ケーブルW2の他端部は図2中のリモコン装置50に連結されている。また、このオープンレバー150は、トーションスプリング(図示省略)によって反時計回り方向に弾性付勢されて図3に示す初期位置に保持されている。一方で、このオープンレバー150は、回転軸141から上方に延出した部位にポール駆動レバー114の被係合片114bに向けて延出する前述の係合片151を備えている。このため、第2ケーブルW2がリモコン装置50側に引っ張られると、オープンレバー150は回転軸141を中心にトーションスプリング(図示省略)の弾性付勢力に抗して時計回り方向に回転して、係合片151においてポール駆動レバー114の被係合片114bを下向きに押し下げる。このオープンレバー150が本発明の「オープンレバー」に相当する。
尚、車両ドア10がその開放動作がロックされていないアンロック状態にある場合にドアハンドル60のドア開操作に連動して第2ケーブルW2がリモコン装置50側に引っ張られるように、リモコン装置50が構成されている。これに対して、車両ドア10がその開放動作がロックされたロック状態にある場合にはドアハンドル60のドア開操作が行われても第2ケーブルW2がリモコン装置50側に引っ張られるのを阻止するように、リモコン装置50が構成されている。即ち、オープンレバー150は、車両ドア10がアンロック状態にあるときに作動する一方で、車両ドア10がロック状態にあるときには作動しない。
図8が参照されるように、第1キャンセルレバー140は、オープンレバー150よりも車両内方に配置され、且つオープンレバー150の車両前方X1側に設けられた当接片152に対向するように立設された当接片142を備えている。このため、オープンレバー150が回転軸141を中心に時計回り方向に回転したとき、第1キャンセルレバー140は当接片142においてオープンレバー150の当接片152によって押圧されて回転軸141を中心にオープンレバー150とともに時計回り方向に回転するように構成されている。即ち、オープンレバー150は、第1キャンセルレバー140に独立して係合して回転軸141を中心に回転し第1キャンセルレバー140を伝達位置P1から非伝達位置P2へと回転させるように回転することができる。このオープンレバー150が本発明の「第1作動レバー」又は「第2作動レバー」に相当する。この場合、第1キャンセルレバー140はオープンレバー150の回転に伴って当接コロ133aから離間した位置に移動する結果、アクティブレバー120からパッシブレバー130への動力の伝達が遮断される。これにより、ラッチ112はパッシブレバー130の回転片132の当接壁132aによって押し上げられず図5に示されるフルラッチ位置に移動しないため、駆動力伝達機構200による車両ドア10のクローズ作動がキャンセルされる。
ところで、前述のように車両ドア10のロック状態では、ドアハンドル60が操作されてもオープンレバー150が作動しないため、第1キャンセルレバー140によって車両ドア10のクローズ作動をキャンセルすることができない。従って、車両ドア10がアンロック状態であるかロック状態であるかにかかわらず常時に駆動力伝達機構200による車両ドア10のクローズ作動をキャンセルしたいという要請に応えることができない。
そこで、図3に示されるように、本実施の形態のキャンセル機構210は、第1キャンセルレバー140を駆動するために割り当てられたオープンレバー150に加えて、オープンレバー150と同様の機能を有する第2キャンセルレバー160を備えている。この第2キャンセルレバー160は、回転軸141から下方に延出した部位に金属製の第1ケーブルW1の一端部が連結されており、その第1ケーブルW1の他端部は図2中のリモコン装置50に連結されている。また、この第2キャンセルレバー160は、第1キャンセルレバー140よりも車両外方(図3中の紙面手前側)に重ねられるように配置され、且つ第1キャンセルレバー140の当接片142の車両後方X2側の部位に対向するように立設された当接片161を備えている。
この第2キャンセルレバー160に対しては、リモコン装置50は、車両ドア10がアンロック状態及びロック状態のいずれの状態であっても、ドアハンドル60のドア開操作に連動して常時に第1ケーブルW1をリモコン装置50側に引っ張る動作を行うように構成された第1の作動機構や、車両ドア10がロック状態の場合にのみ、ドアハンドル60のドア開操作に連動して第1ケーブルW1をリモコン装置50側に引っ張る動作を行うように構成された第2の作動機構を備えるのが好ましい。
第1の作動機構については、第2キャンセルレバー160は、車両ドア10がアンロック状態及びロック状態のいずれの状態であってもドアハンドル60のドア開操作時に第1ケーブルW1を介して作動する。即ち、この第1の作動機構によれば、車両ドア10がアンロック状態の場合にはドアハンドル60のドア開操作時にオープンレバー150及び第2キャンセルレバー160の双方が作動し、車両ドア10がロック状態の場合にはドアハンドル60のドア開操作時にオープンレバー150及び第2キャンセルレバー160のうちの第2キャンセルレバー160のみが作動する。
第2の作動機構については、第2キャンセルレバー160は、車両ドア10がロック状態の場合にのみドアハンドル60のドア開操作時に第1ケーブルW1を介して作動する。即ち、この第2の作動機構によれば、車両ドア10がアンロック状態の場合にはドアハンドル60のドア開操作時にオープンレバー150及び第2キャンセルレバー160のうちのオープンレバー150のみが作動し、車両ドア10がロック状態の場合にはドアハンドル60のドア開操作時にオープンレバー150及び第2キャンセルレバー160のうちの第2キャンセルレバー160のみが作動する。
このため、車両ドア10のロック状態でドアハンドル60のドア開操作時にオープンレバー150が作動しない代わりに、第2キャンセルレバー160が回転軸141を中心に時計回り方向に回転する。このとき、第1キャンセルレバー140は当接片142において第2キャンセルレバー160の当接片161によって押圧されて回転軸141を中心に第2キャンセルレバー160とともに時計回り方向に回転するように構成されている。即ち、第2キャンセルレバー160は、オープンレバー150とは別に第1キャンセルレバー140に対して設けられた作動レバーであり、第1キャンセルレバー140に独立して係合して回転軸141を中心に回転し第1キャンセルレバー140を伝達位置P1から非伝達位置P2へと回転させるように回転することができる。この第2キャンセルレバー160が本発明の「第1作動レバー」又は「第2作動レバー」に相当し、且つ本発明の「作動レバー」に相当する。この第2キャンセルレバー160は、第1作動レバーとしてのオープンレバー150に対しては第2作動レバーとなり、第2作動レバーとしてのオープンレバー150に対しては第1作動レバーとなる。この場合、第2キャンセルレバー160は第1キャンセルレバー140の回転に伴ってパッシブレバー130の当接コロ133aから離間した位置に移動する結果、アクティブレバー120からパッシブレバー130への動力の伝達が遮断される。これにより、オープンレバー150が作動しなくても、第2キャンセルレバー160を介して第1キャンセルレバー140を作動させることによって、駆動力伝達機構200による車両ドア10のクローズ作動をキャンセルすることができる。
以下、上記構成の車両ドア10が閉じられる際の第1ドアロック装置20及びドアクローザ装置100の動作について具体的に説明する。
図1が参照されるように、車両ドア10がスライド操作によって閉じられると、第1ドアロック装置20及びドアクローザ装置100の各ラッチが対応したストライカ40と噛み合う。このとき、車両ドア10がスライド操作によって勢いよく閉じられた場合には、第1ドアロック装置20及びドアクローザ装置100の各ラッチはフルラッチ位置まで回転してポールと係合する。その結果、各ラッチのロック解除方向(アンラッチ方向)への回転が規制されて、車両ドア10が全閉状態に保持される。
これに対して、車両ドア10を閉じる際の勢いが弱い場合や衣類等の挟み込みによって車両ドア10の閉操作が阻止された場合に半ドア状態になると、第1ドアロック装置20及びドアクローザ装置100の各ラッチは、フルラッチ位置に至る手前のハーフラッチ位置まで回転してポールと係合する。その結果、各ラッチのロック解除方向(アンラッチ方向)への回転が規制されて、車両ドア10が半ドア状態に保持される。
ドアクローザ装置100では、ラッチ位置検出センサ116によって、図6が参照されるようにラッチ112がハーフラッチ位置にあることが検出される。この場合、ECU70はその検出結果に基づいてアクチュエータ170のラッチ駆動モータ171を制御する。具体的に説明すると、ECU70は、アクティブレバー120を図3中の反時計回り方向に回転させるようにラッチ駆動モータ171の回転方向を制御する。この場合、第1キャンセルレバー140によってパッシブレバー130の当接コロ133aが位置決めされているため、パッシブレバー130が当接コロ133aを中心に反時計回り方向に回転することによって、ラッチ112は図6に示されるハーフラッチ位置から図5に示されるフルラッチ位置へと回転する。その結果、車両ドア10が半ドア状態から全閉状態に移行して全閉状態に保持される。
ここで、車両ドア10が半ドア状態から全閉状態に移行する途中でドアハンドル60がドア開操作されると、キャンセル機構210が第1キャンセルモード及び第2キャンセルモードのうちのいずれかの作動モードによって作動する。
(第1キャンセルモード)
第1キャンセルモードは、車両ドア10の開放動作がロックされていないアンロック状態でのキャンセル機構210の作動モードである。この第1キャンセルモードでは、図9に示されるように、ドアハンドル60のドア開操作に連動して第2ケーブルW2がリモコン装置50側へ引かれてオープンレバー150が回転軸141を中心に時計回り方向に回転する。即ち、オープンレバー150は、車両ドア10のアンロック状態においてドアハンドル60のドア開操作に連動して回転する。この場合、第1キャンセルレバー140は当接片142においてオープンレバー150の当接片152によって押圧されて回転軸141を中心にオープンレバー150とともに時計回り方向に回転する。即ち、第1キャンセルレバー140は、オープンレバー150の回転に伴って連れまわる。これにより、第1キャンセルレバー140がパッシブレバー130の当接コロ133aから離間することによって、第1キャンセルレバー140による当接コロ133aの支えが解除される。この場合、アクティブレバー120からパッシブレバー130への動力の伝達が遮断されるため、駆動力伝達機構200によって車両ドア10を半ドア状態から全閉状態へと移行させるクローズ作動をキャンセル(無効化)することができる。
尚、オープンレバー150が回転軸141を中心に時計回り方向に回転する際、オープンレバー150とは別に第1キャンセルレバー140に割り当てられた第2キャンセルレバー160は、図9に示されるようにオープンレバー150と同方向に回転するように構成されてもよいし、或いは図10に示されるように図3に示される初期位置に留まるように構成されてもよい。特に、図9に示される構成では、車両ドア10のアンロック状態においてオープンレバー150及び第2キャンセルレバー160の双方がドアハンドル60のドア開操作に連動して回転する。これに関連して、車両ドア10のアンロック状態では、オープンレバー150及び第2キャンセルレバー160の双方がドアハンドル60のドア開閉操作に連動して回転する構造を採用することもできる。また、車両ドア10のアンロック状態においてオープンレバー150及び第2キャンセルレバー160(第1作動レバー及び第2作動レバー)の双方が回転(作動)するような構成に代えて、車両ドア10のアンロック状態において第1作動レバー及び第2作動レバーのいずれか一方の作動レバーが回転し、第1作動レバー及び第2作動レバーのうちこのアンロック状態で作動していない他方の作動レバーが車両ドア10のロック状態において回転するような構成を採用することもできる。
また、オープンレバー150が回転軸141を中心に時計回り方向に回転することによって、ポール駆動レバー114の被係合片114bがオープンレバー150の係合片151によって押圧されて押し下げられるため、ポール113は、ラッチ112の噛み合い解除方向の回転を規制しない非規制位置へと駆動される。これにより、車両ドア10を容易に開くことが可能になる。
(第2キャンセルモード)
第2キャンセルモードは、車両ドア10の開放動作がロックされたロック状態でのキャンセル機構210の作動モードである。この第2キャンセルモードでは、図11が参照されるように、ドアハンドル60のドア開操作に連動して第1ケーブルW1がリモコン装置50側へ引かれて第2キャンセルレバー160のみが回転軸141を中心に時計回り方向に回転する。即ち、第2キャンセルレバー160は、車両ドア10のロック状態においてドアハンドル60のドア開操作に連動して回転する。この場合、第1キャンセルレバー140は当接片142において第2キャンセルレバー160の当接片161によって押圧されて回転軸141を中心に第2キャンセルレバー160とともに時計回り方向に回転する。即ち、第1キャンセルレバー140は、第2キャンセルレバー160の回転に伴って連れまわる。これにより、第1キャンセルレバー140がパッシブレバー130の当接コロ133aから離間することによって、第1キャンセルレバー140による当接コロ133aの支えが解除される。この場合、アクティブレバー120からパッシブレバー130への動力の伝達が遮断されるため、オープンレバー150を用いる場合と同様に、駆動力伝達機構200によるクローズ作動をキャンセルすることができる。
以上のように、本実施の形態のドアクローザ装置100によれば、駆動力伝達機構200の第1キャンセルレバー140にそれぞれ独立して係合するオープンレバー150及び第2キャンセルレバー160を用いてキャンセル機構210を構築することができる。特に、ポール113を駆動するための既存のオープンレバー150が第1キャンセルレバー140のための作動レバーを兼務している。これにより、第1キャンセルレバー140に割り当てる専用の作動レバーの数を抑えることでキャンセル機構210の構造を簡素化することができ、以ってドアクローザ装置100の構造の簡素化を図ることが可能になる。この場合、装置の部品点数を削減したり装置を小型化したりするのに効果的である。
また、本実施の形態のドアクローザ装置100によれば、第1キャンセルレバー140にそれぞれ割り当てられたオープンレバー150及び第2キャンセルレバー160の双方を使い分けることによって、車両ドア10がアンロック状態であるかロック状態であるかにかかわらずキャンセル機構210を用いて常時に駆動力伝達機構200によるクローズ作動をキャンセルすることが可能になる。この場合、キャンセル機構210は、特にクローズ作動のキャンセルのための機構に機械的(物理的)な構造を利用しているため、当該機構に要するコストを低く抑えることが可能になる。
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
上記の実施形態態のドアクローザ装置100では、第1キャンセルレバー140を伝達位置から非伝達位置へと回転させるために、オープンレバー150及び第2キャンセルレバー160の2つの作動レバーを用いる場合について記載したが、本発明ではオープンレバー150及び第2キャンセルレバー160のうちの少なくとも1つの作動レバーを第1キャンセルレバー140に割り当てることができる。その場合の作動レバーは、オープンレバー150や第2キャンセルレバー160に限定されるものではなく、必要に応じて種々の作動レバーを選択可能である。例えば、第2キャンセルレバー160に代えて或いは加えて、オープンレバー150以外の1又は複数の作動レバーを第1キャンセルレバー140に割り当てるようにしてもよい。
上記の実施形態のドアクローザ装置100は、第1キャンセルレバー140、オープンレバー150及び第2キャンセルレバー160の回転軸141がアクティブレバー120の回転軸121及びパッシブレバー130の回転軸131と同方向に延在する場合について記載したが、本発明では、回転軸141が回転軸121,131と異なる方向に延在するように構成することもできる。
上記の実施形態のドアクローザ装置100は、第1キャンセルレバー140、オープンレバー150及び第2キャンセルレバー160の3つのレバー全てが1つの回転軸141によって回転可能に支持された同軸構造を有する場合について記載したが、本発明ではこれら3つのレバー140,150,160のうちの少なくとも2つのレバーが1つの回転軸によって回転可能に支持された同軸構造を採用することができる。また、この構造に関連して、キャンセルレバー160や第2キャンセルレバー160に相当する作動レバーのみを第1キャンセルレバー140に割り当てる構成において、これら2つのレバーが1つの回転軸によって回転可能に支持された同軸構造を採用することができる。これらの同軸構造によれば、少なくとも2つのレバーが1つの回転軸を共用するため、当該レバーのための配置スペースを小さく抑えるとともに、装置の部品点数を削減したり装置を小型化したりすることが可能になる。その結果、車両用ドアクローザ装置の構造の簡素化を図ることが可能になる。
また、本発明では、3つのレバー140,150,160の全てが別々の回転軸によって回転可能に支持された構造を採用することもできる。この場合、3つのレバー140,150,160のそれぞれの回転軸のうちの少なくとも2つが同方向に延在する構造を採用するのが好ましい。また、この構造に関連して、キャンセルレバー160や第2キャンセルレバー160に相当する作動レバーのみを第1キャンセルレバー140に割り当てる構成において、2つのレバーのそれぞれの回転軸が同方向に延在する構造を採用することができる。これらの構造によれば、当該レバーの配置スペースを小さく抑える効果が更に高くなり装置の小型化を図るのに有利である。
上記の実施形態では、第1ケーブルW1が第2キャンセルレバー160を介して第1キャンセルレバー140をキャンセル位置まで作動させるキャンセル機能のみを担うケーブルとして構成され、第2ケーブルW2がオープンレバー150を介して前述のキャンセル機能とポール113をラッチ112のためのリリース位置に回転させるオープン機能との両機能を担うケーブルとして構成される場合について記載している。これに対して、本発明では、第1ケーブルW1及び第2ケーブルW2のそれぞれの機能を入れ替えることもできる。具体的には、第1ケーブルW1が前述のキャンセル機能及びオープン機能との両機能を担うケーブルとして構成され、第2ケーブルW2が前述のキャンセル機能のみを担うケーブルとして構成されるように、3つのレバー140,150,160の形状及び配置を適宜に変更することもできる。
上記の実施形態では、車両ドア10に割り当てられたドアハンドル60のドア開操作に連動してオープンレバー150及び第2キャンセルレバー160が回転する場合について記載したが、本発明では、車両ドア10に割り当てられた、ドアハンドル60とは別の操作部材のドア開操作に連動してオープンレバー150及び第2キャンセルレバー160が回転するように構成することもできる、
上記実施の形態では、車両後席に対応したスライド式の車両ドア10に組付けられたドアクローザ装置100について記載したが、本発明では、このドアクローザ装置100の本質的な構造を車両の種々の部位に設けられるスライド式の車両ドアに適用することができる。
1…車両、10…車両ドア、20…第1ドアロック装置、30…第2ドアロック装置、40…ストライカ、50…リモコン装置、51…ドアハンドル操作検出センサ、60…ドアハンドル、70…ECU、100…(車両用)ドアクローザ装置、101…ベース盤、101a…ストライカ受容溝、102…連結板、110…ラッチ機構、111…ラッチカバー、112…ラッチ、113…ポール、114…ポール駆動レバー、115…トーションスプリング、116…ラッチ位置検出センサ、120…アクティブレバー、122…支持片、123…回転板、130…パッシブレバー、132,133…回転片、134…トーションスプリング、140…第1キャンセルレバー、150…オープンレバー、160…第2キャンセルレバー、170…アクチュエータ、171…ラッチ駆動モータ、172…減速機構、173…ウォームギヤ、174…ウォームホイール、200…駆動力伝達機構、210…キャンセル機構

Claims (11)

  1. 車両ドアに組付けられる車両用ドアクローザ装置であって、
    車両本体に設けられたストライカに対して噛み合い方向及び噛み合い解除方向の双方向に回転可能に構成され、前記車両ドアが閉じられる際に前記ストライカと噛み合って前記噛み合い方向に回転するラッチと、
    前記ラッチを前記ストライカとの噛み合いが不完全なハーフラッチ位置から前記ストライカに完全に噛み合ったフルラッチ位置まで前記噛み合い方向に回転させるクローズ作動のためにアクチュエータの駆動力を前記ラッチに伝達する駆動力伝達機構と、
    前記駆動力伝達機構による前記クローズ作動をキャンセルするためのキャンセル機構と、を備え、
    前記駆動力伝達機構は、
    前記アクチュエータと前記ラッチとの間に形成される駆動力伝達経路上に介装され、前記アクチュエータの駆動力を前記ラッチに伝達する伝達位置と前記アクチュエータの駆動力を前記ラッチに伝達しない非伝達位置との間で回転可能に構成され、前記クローズ作動の際に前記伝達位置に設定される駆動力伝達レバーを備え、
    前記キャンセル機構は、
    前記駆動力伝達レバーにそれぞれ独立して係合して回転し前記駆動力伝達レバーを前記伝達位置から前記非伝達位置へと回転させる第1作動レバー及び第2作動レバーを備え
    前記駆動力伝達レバーは、前記第1作動レバー及び前記第2作動レバーが当接可能な単一の当接部を有し、前記第1作動レバー及び前記第2作動レバーがそれぞれ独立して単一の前記当接部に係合して回転することにより、前記伝達位置から前記非伝達位置に回転するように構成される、車両用ドアクローザ装置。
  2. 請求項1に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
    前記ラッチの前記噛み合い解除方向の回転を規制する規制位置と前記ラッチの前記噛み合い解除方向の回転を規制しない非規制位置との間で回転可能に構成されたポールと、
    前記ポールを前記規制位置から前記非規制位置へと駆動し且つ前記駆動力伝達レバーを前記伝達位置から前記非伝達位置へと回転させるように回転するオープンレバーと、を備え、
    前記キャンセル機構の前記第1作動レバー及び前記第2作動レバーのいずれか一方の作動レバーが前記オープンレバーによって構成されている、車両用ドアクローザ装置。
  3. 請求項1又は2に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
    前記駆動力伝達レバー、前記第1作動レバー及び前記第2作動レバーのそれぞれを回転可能に支持する回転軸のうちの少なくとも2つの回転軸は同方向に延在している、車両用ドアクローザ装置。
  4. 請求項3に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
    前記少なくとも2つの回転軸は、前記駆動力伝達経路上に介装されて前記アクチュエータによって回転駆動される回転駆動部材を回転可能に支持する回転軸と同方向に延在している、車両用ドアクローザ装置。
  5. 請求項1又は2に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
    前記駆動力伝達レバー、前記第1作動レバー及び前記第2作動レバーのうちの少なくとも2つのレバーが1つの回転軸によって回転可能に支持された同軸構造を有する、車両用ドアクローザ装置。
  6. 請求項5に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
    前記駆動力伝達レバー、前記第1作動レバー及び前記第2作動レバーの全てが1つの回転軸によって回転可能に支持された同軸構造を有する、車両用ドアクローザ装置。
  7. 請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
    前記キャンセル機構は、前記第1作動レバー及び前記第2作動レバーの双方が前記車両ドアのアンロック状態において前記車両ドアに割り当てられた操作部材のドア開操作に連動して回転し、前記第1作動レバー及び前記第2作動レバーのうちの一方の作動レバーのみが前記車両ドアのロック状態において前記操作部材のドア開操作に連動して回転するように構成されている、車両用ドアクローザ装置。
  8. 請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
    前記当接部は、前記駆動力伝達レバーの延設方向に沿って折り曲げられるように形成されており、
    前記第1作動レバーが前記当接部に当接する位置と前記第2作動レバーが前記当接部に当接する位置は、前記駆動力伝達レバーの延設方向に沿って並んで位置している、車両用ドアクローザ装置。
  9. 請求項1に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
    前記第1作動レバー及び前記第2作動レバーが1つの回転軸によって回転可能に支持された同軸構造を有し、
    前記第1作動レバーと前記第2作動レバーは、それぞれ、前記当接部に当接していない非作動状態において、同一方向に延設している、車両用ドアクローザ装置。
  10. 車両ドアに組付けられる車両用ドアクローザ装置であって、
    車両本体に設けられたストライカに対して噛み合い方向及び噛み合い解除方向の双方向に回転可能に構成され、前記車両ドアが閉じられる際に前記ストライカと噛み合って前記噛み合い方向に回転するラッチと、
    前記ラッチの前記噛み合い解除方向の回転を規制する規制位置と前記ラッチの前記噛み合い解除方向の回転を規制しない非規制位置との間で回転可能に構成されたポールと、
    前記ポールを前記規制位置から前記非規制位置へと駆動するように回転するオープンレバーと、
    前記ラッチを前記ストライカとの噛み合いが不完全なハーフラッチ位置から前記ストライカに完全に噛み合ったフルラッチ位置まで前記噛み合い方向に回転させるクローズ作動のためにアクチュエータの駆動力を前記ラッチに伝達する駆動力伝達機構と、
    前記駆動力伝達機構による前記クローズ作動をキャンセルするためのキャンセル機構と、を備え、
    前記駆動力伝達機構は、
    前記アクチュエータと前記ラッチとの間に形成される駆動力伝達経路上に介装され、前記アクチュエータの駆動力を前記ラッチに伝達する伝達位置と前記アクチュエータの駆動力を前記ラッチに伝達しない非伝達位置との間で回転可能に構成され、前記クローズ作動の際に前記伝達位置に設定される駆動力伝達レバーを備え、
    前記キャンセル機構は、
    前記オープンレバーとは別に設けられ前記駆動力伝達レバーに係合して回転し前記駆動力伝達レバーを前記伝達位置から前記非伝達位置へと回転させる作動レバーを備え、前記作動レバーは前記駆動力伝達レバーの回転軸と同一の回転軸によって回転可能に支持された同軸構造を有し、
    前記駆動力伝達レバーは、前記オープンレバー及び前記作動レバーが当接可能な単一の当接部を有し、前記オープンレバー及び前記作動レバーがそれぞれ独立して単一の前記当接部に係合して回転することにより、前記伝達位置から前記非伝達位置に回転するように構成される、車両用ドアクローザ装置。
  11. 車両ドアに組付けられる車両用ドアクローザ装置であって、
    車両本体に設けられたストライカに対して噛み合い方向及び噛み合い解除方向の双方向に回転可能に構成され、前記車両ドアが閉じられる際に前記ストライカと噛み合って前記噛み合い方向に回転するラッチと、
    前記ラッチの前記噛み合い解除方向の回転を規制する規制位置と前記ラッチの前記噛み合い解除方向の回転を規制しない非規制位置との間で回転可能に構成されたポールと、
    前記ポールを前記規制位置から前記非規制位置へと駆動するように回転するオープンレバーと、
    前記ラッチを前記ストライカとの噛み合いが不完全なハーフラッチ位置から前記ストライカに完全に噛み合ったフルラッチ位置まで前記噛み合い方向に回転させるクローズ作動のためにアクチュエータの駆動力を前記ラッチに伝達する駆動力伝達機構と、
    前記駆動力伝達機構による前記クローズ作動をキャンセルするためのキャンセル機構と、を備え、
    前記駆動力伝達機構は、
    前記アクチュエータと前記ラッチとの間に形成される駆動力伝達経路上に介装され、前記アクチュエータの駆動力を前記ラッチに伝達する伝達位置と前記アクチュエータの駆動力を前記ラッチに伝達しない非伝達位置との間で回転可能に構成され、前記クローズ作動の際に前記伝達位置に設定される駆動力伝達レバーを備え、
    前記キャンセル機構は、
    前記オープンレバーとは別に設けられ前記駆動力伝達レバーに係合して回転し前記駆動力伝達レバーを前記伝達位置から前記非伝達位置へと回転させる作動レバーを備え、前記作動レバーの回転軸が前記駆動力伝達レバーの回転軸と同方向に延在し
    前記駆動力伝達レバーは、前記オープンレバー及び前記作動レバーが当接可能な単一の当接部を有し、前記オープンレバー及び前記作動レバーがそれぞれ独立して単一の前記当接部に係合して回転することにより、前記伝達位置から前記非伝達位置に回転するように構成される、車両用ドアクローザ装置。
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