以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図1、2において左方を「前方」、右方を「後方」とする。
図1において、Dは、車体側面に設けられる前後方向のガイドレールG1、G2、G3により前後方向へ開閉可能に支持されるスライドドア(以下、「ドア」と記す)、OHは、ドアDの外側面(アウタパネル)に設けられ、ドアDを車外側から開閉する際に操作されるアウトサイドハンドル、IHは、ドアDの車内側面に設けられ、ドアDを車内側から開閉する際に操作されるインサイドハンドル、FDは、ドアDの前部に設けられ、ドアDを閉鎖位置に保持するためのフロントドアラッチ装置、ODは、ドアDの下部に設けられ、ドアDを全開位置に保持するための全開保持ラッチ、1は、ドアDの後部に設けられ、フロントドアラッチ装置FDと共にドアDを閉鎖位置に保持可能なドアラッチ装置、100は、ドアDの内部に設けられ、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIH等の各操作を中継制御し、当該中継制御した操作をドアラッチ装置1、フロントドアラッチ装置FD及び全開保持ラッチODにそれぞれ中継制御するための操作中継装置、PSDは、ドアDを電動で開閉移動させるための電動開閉装置である。
なお、本実施形態においては、ドアラッチ装置1及び操作中継装置100をそれぞれドアD側に設けた例を説明するが、本発明は、本実施形態に限定されるものでなく、ドアラッチ装置1及び操作中継装置100をそれぞれ車体側に設けても良い。この場合は、ドアラッチ装置1に噛合可能な後述のストライカSはドアD側に設けられる。さらには、ドアラッチ装置1と操作中継装置100とを分離しないで一体構造としても良い。
図2〜5に示すように、ドアラッチ装置1は、車体側に固定されるストライカSと噛合しドアDを閉鎖位置に保持するラッチユニット2と、ドアDの閉動作時、ドアDをハーフラッチ状態(半ドア状態)からフルラッチ状態(全閉状態)に強制的に閉め込むように、ラッチユニット2をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に作動させるクローズ機能及びストライカSと噛合した噛合状態にあるラッチユニット2をストライカSから外すリリース作動させるリリース機能を有するクローザ・リリースユニット3とを備える。
ラッチユニット2は、ドアDに対する取付面が金属製の平面視L字状のカバープレート4により閉塞される合成樹脂製のハウジング5を備える。ハウジング5内には、前後方向を向くラッチ軸6により枢支され、ストライカSと係合可能なラッチ7と、前後方向を向くラチェット軸8により枢支され、ラッチ7の外周縁に設けられたフルラッチ係合部7aまたはハーフラッチ係合部7bに選択的に係合可能なラチェット9とを含むラッチ機構が収容される。なお、図2、4、5は、ラッチユニット2の内部構造を明示するため、カバープレート4を省略している。
ラッチユニット2におけるカバープレート4及びハウジング5には、ドアDの閉鎖時、ストライカSがハウジング5内に進入し得るように車内側が開口した車内外方向を向くストライカ進入溝4a、5aがそれぞれ設けられる。
ラッチ7は、ストライカSから離脱したドアDの開放状態に対応する図6に示すオープン位置から、ラッチ軸6に巻装されるスプリング16(図3参照)の付勢力に抗してクローズ方向(図6において時計方向)へ所定角度回動してストライカSに辛うじて係合する図7に示すハーフラッチ位置を経由して、ストライカSに完全に係合する図9に示すフルラッチ位置に回動可能である。なお、以下の説明において、ラッチ7の「オープン位置」、「ハーフラッチ位置」及び「フルラッチ位置」は、必要に応じてラッチ機構の「オープン状態」、「ハーフラッチ状態」及び「フルラッチ状態」と記す。
ハウジング5の前面側には、ラッチ軸6により枢支され、ラッチ7と一体的に回動可能な検知レバー10及びラッチレバー11と、ラチェット軸8により枢支され、ラチェット9と一体的に回動可能なオープンレバー12とが配置される。
ラッチレバー11は、ラッチ7と一体回動することによって、図6に示すように、ラッチ7がオープン位置にあるときには、先端部に設けられた作動部11aが後述の遊星歯車機構33の一部を構成するクローズレバー38のクローズ部38aの移動軌跡外に退避し、図7に示すように、ラッチ7がハーフラッチ位置に回動したときには、作動部11aがクローズ部38aの移動軌跡内に進入し、また図9に示すように、ラッチ7がフルラッチ位置にあるときには、作動部11aが前方を向く位置に回動する。
検知レバー10及びラッチレバー11の回転面には、後方を向く連結シャフト13が固着される。連結シャフト13は、ハウジング5を貫通して検知レバー10及びラッチ7のアーム部7cに固着されることによって、検知レバー10、ラッチレバー11及びラッチ7が一体回動するようにそれぞれを連結する。
ラッチ7のハーフラッチ位置及びフルラッチ位置は、ハウジング5の前面側に設けられるハーフラッチ検出スイッチ14及びフルラッチ検出スイッチ15(共に図25参照)により検出され、それらの検出信号は、図25に示すようにクローザ・リリースユニット3における電気駆動源をなすモータ32の停止、駆動制御の契機となるように、車両に搭載される制御回路装置1000へ送信される。
ラチェット9は、ハウジング5の前面側に設けられるスプリング17の付勢力によりオープンレバー12と一緒に常時係合方向(例えば、図5において時計方向)へ付勢されると共に、ラッチ7が図6に示すオープン位置にあるときにはラッチ7の外周縁に当接し、ラッチ7が図7に示すハーフラッチ位置にあるときにはラッチ7のハーフラッチ係合部7bに係合する係合位置に保持されることでラッチ7のハーフラッチ位置からオープン方向(例えば、図7において反時計方向)への回動を阻止し、また、ラッチ7が図9に示すフルラッチ位置にあるときにはラッチ7のフルラッチ係合部7aに係合する係合位置に保持されることでラッチ7のフルラッチ位置からオープン方向への回動を阻止する。
ラチェット9がラッチ7のフルラッチ係合部7aまたはハーフラッチ係合部7bに係合した係合位置にあって、操作中継装置100の後述の施解錠機構がアンロック状態にあるときには、アウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHがドア開操作されると、ラチェット9は、スプリング17の付勢力に抗して、各種要素を介してリリース方向(例えば、図7、9において反時計方向)へ回動して図11に示すリリース位置に移動することによって、フルラッチ係合部7aまたはハーフラッチ係合部7bから外れてドアDの開扉を可能にする。
図3に示すように、カバープレート4における前方へ折曲形成された支持面4bには、車内外方向を向く支軸18によりリリース入力レバー19、ブロックレバー20及び緊急入力レバー21がそれぞれ回動可能に枢支される。
リリース入力レバー19は、ドアD内に配索されるボーデンケーブル等により構成される第1操作力伝達部材501を介して操作中継装置100の後述のリリース出力レバー106に連結される。これにより、操作中継装置100の施解錠機構がアンロック状態にあるとき、アウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHのいずれかがドア開操作されると、リリース入力レバー19は、例えば図7、9に示す待機位置からスプリング23の付勢力に抗してリリース方向(図7、9において時計方向)へ回動し、図11に示すリリース位置に移動する。リリース入力レバー19がリリース位置に移動すると、リリース入力レバー19の後端部に設けられた解除部19aがオープンレバー12のアーム部12aを押し下げることで、ラチェット9は、リリース方向へ回動してラッチ7のフルラッチ係合部7aまたはハーフラッチ係合部7bとの係合から外れてドア開を可能にする。
なお、リリース入力レバー19は、操作中継装置100の施解錠機構がロック状態にあるときにはアウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHがドア開操作されても待機位置に止まりリリース方向へ移動しない。したがって、施解錠機構がロック状態にあるときには、ドアDを開けることはできない。
ブロックレバー20は、スプリング23の付勢力をもって、前向きのアームの先端に形成したブロック部20aが前方を向くブロック位置(例えば、図6〜9に示す位置)に保持され、リリース入力レバー19がリリース方向へ回動してリリース位置(例えば、図10、11に示す位置)に移動したときには、自体に設けた当接部20bにリリース入力レバー19の折曲部19bが下方から当接することで、ブロック位置から反時計方向へ所定角度回動した図10、11に示すキャンセル位置に回動する。
ブロック部20aは、ブロックレバー20がブロック位置(例えば、図6〜9に示す位置)に保持されている場合には、遊星歯車機構33における後述するサンギヤ35の時計方向への回動を阻止し、また、同じくキャンセル位置(例えば、図10、11に示す位置)に移動することで、サンギヤ35における時計方向への回動をフリーにする。これにより、ブロックレバー20がブロック位置にある場合には、遊星歯車機構33の減速回転をラッチ7に伝達可能とし、また同じくキャンセル位置に移動した場合には、遊星歯車機構33の減速回転をラッチ7に伝達不能にする。
緊急入力レバー21は、下部に設けた連結部21aがドアD内に配索される第2操作力伝達部材502を介して操作中継装置100の後述の緊急出力レバー107に連結され、操作中継装置100の施解錠機構がアンロック状態またはロック状態にあるか否かに無関係に、アウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHのいずれかのドア開操作に連動して待機位置(例えば、図6〜9に示す位置)からリリース方向(図6〜9において時計方向)へ回動して図10に示すリリース位置にリリース作動する。
緊急入力レバー21がリリース作動した場合には、上端に設けた当接部21bがブロックレバー20の折曲部20bに下方から当接することで、ブロックレバー20は、スプリング23の付勢力に抗してリリース方向へ回動する。なお、この場合には、リリース入力レバー19は、待機位置に保持されたままであり、ラチェット9はリリース作動しない。これにより、施解錠機構の状態に無関係に、アウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHのいずれかがドア開操作されることにより、ブロックレバー20をキャンセル位置に移動させて、クローザ・リリースユニット3のクローズ動作を中断させることが可能となる。
次に、クローザ・リリースユニット3について説明する。
図3に示すように、クローザ・リリースユニット3は、ラッチユニット2におけるカバープレート4の支持面4bに固定される金属製のベースプレート31と、ベースプレート31における車外側を向く面の前部に配置されるクローザ・リリース用のモータ32と、ベースプレート31における車外側を向く面の中央部(ラッチユニット2におけるラッチ7とモータ32との間)に配置され、モータ32の動力を出力する車内外方向の軸回りに回転可能な出力ギヤ32aに噛合して出力ギヤ32aの回転をさらに減速して出力可能な減速機構をなす遊星歯車機構33と、ベースプレート31に枢支される第1リリース出力レバー41と、第2リリース出力レバー42、キャンセル入力レバー43及びフローティングピン45を含むリリースキャンセル機構とを備える。
遊星歯車機構33は、ラッチユニット2におけるラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態、すなわちラッチ7をハーフラッチ位置からフルラッチ位置に移動させるクローズ機能、及びラチェット9をリリース作動させてドア開を可能にするリリース機能を兼ね備える。
図2に示すように、遊星歯車機構33は、ベースプレート31における車外側を向く面に車内外方向を向く支軸34により枢支されるサンギヤ35と、サンギヤ35に自転しつつ公転可能に噛み合う単一のプラネタリーギヤ36と、支軸34に枢支されると共に、車内外方向を向く軸37によりプラネタリーギヤ36を枢支するクローズレバー38と、支軸34により枢支されると共に、円周の外側に出力ギヤ32aに噛み合う外歯ギヤ39a、円周の内側にプラネタリーギヤ36に噛み合う内歯ギヤ39bをそれぞれ有するセクタギヤ39とを含んで構成される。
サンギヤ35は、扇形の円周の外側にプラネタリーギヤ36に噛み合う外歯ギヤ35aを有し、外歯ギヤ35aを形成していない上部の回転面には、車内側へ突出する円柱状の当接部35bが設けられる。
当接部35bは、サンギヤ35の時計方向への回動を阻止し得るように、サンギヤ35の例えば図6において時計方向への回動に対してブロックレバー20のブロック部20aに対して当接可能であり、また、サンギヤ35が例えば図6において反時計方向へ回動して第1リリース出力レバー41のリリース部41aに当接することで、第1リリース出力レバー41をリリース方向へ作動させることが可能である。これにより、サンギヤ35は、通常状態(ブロックレバー20が待機位置にある状態)において、中立位置(例えば、図6に示す位置)から反時計方向へ回動可能であるが時計方向へは回動不能に構成される。
ブロックレバー20がブロック位置(例えば、図6〜9に示す位置)にあって、ブロックレバー20のブロック部20aがサンギヤ35の当接部35bの移動軌跡内にある状態において、サンギヤ35が図6に示す中立位置から時計方向へ若干回動することで、当接部35bがブロック部20aに対して当接してサンギヤ35の時計方向への回動をブロックする。また、ブロックレバー20がキャンセル位置(例えば、図11に示す位置)に移動した場合には、ブロックレバー20のブロック部20aが当接部35bの移動軌跡外に退避して、サンギヤ35の時計方向への回転をフリーにする。
遊星歯車機構33が作動していない状態、すなわちニュートラル状態(例えば、図6に示す状態)において、サンギヤ35は、当接部35bが最上位に位置する中立位置にセットされる。
クローズレバー38は、例えば図6に示すように、後方へ延出するアームの先端部、すなわち支軸34よりもラッチユニット2のラッチ7に近接する方の一端部に、ラッチレバー11の作動部11aに対して当接可能な上向きのクローズ部38aを有し、前方斜め下方に延出するアームの先端部、すなわち支軸34よりもラッチ7に対して離れた方の他端部に、プラネタリーギヤ36を軸37により枢支するための枢支部38bを有する。
遊星歯車機構33のニュートラル状態(例えば、図6に示す状態)において、クローズレバー38は、一端がクローズレバー38に掛止され、他端がベースプレート31に掛止されたスプリング40により時計方向へ付勢されてベースプレート31に設けたストッパ部31aに上方から当接することで、クローズ部38aが後方斜め下方へ向き、枢支部38bが前方斜め下方、すなわち出力ギヤ32aが位置する方向へ向くような待機位置に保持される。よって、クローズレバー38が待機位置にある場合には、プラネタリーギヤ36及び出力ギヤ32aは、互いにセクタギヤ39の外歯ギアや39a及び内歯ギヤ39bを挟んだ状態で対向する。
なお、遊星歯車機構33のニュートラル状態において、セクタギヤ39は、外歯ギヤ39aが前方、すなわちラッチユニット2のラッチ7が配置される方向と反対方向を向く中立位置にセットされる。セクタギヤ39の中立位置は、セクタギヤ39の下方に配置される検出スイッチ48(図4、25参照)によって検出される。検出スイッチ48の検出信号は、制御回路装置1000に送信される。
図7に示すように、ラッチ機構がハーフラッチ状態にあるとき、ブロックレバー20がブロック位置にあって、遊星歯車機構33がニュートラル状態にある状態において、モータ32のクローズ駆動(正転)に伴って、セクタギヤ39が支軸34を中心にしてクローズ方向(反時計方向)へ回動すると、このときサンギヤ35の時計方向への回動は、ブロックレバー20のブロック部20aによりブロックされるため、プラネタリーギヤ36は反時計方向へ自転しつつ公転する。これにより、クローズレバー38は、ハーフラッチ位置にあるラッチ7をフルラッチ位置へ回動させるように、プラネタリーギヤ36の公転に追従して支軸34を中心にクローズ方向(反時計方向)へセクタギヤ39よりも減速されて回動し、図8に示すように、クローズ部38aが真上を向くクローズ位置まで回動する。
また、図7または図9に示すように、ラッチ機構がハーフラッチ状態またはフルラッチ状態にあるとき、ブロックレバー20がブロック位置にあって、遊星歯車機構33がニュートラル状態にある状態において、モータ32のリリース駆動(逆転)に伴って、セクタギヤ39が支軸34を中心にしてリリース方向(時計方向)へ回動した場合には、クローズレバー38は、スプリング40の付勢力により、反時計方向へ付勢されて待機位置に保持されて移動しないため、クローズレバー38に枢支されたプラネタリーギヤ36は、公転しないで時計方向へ自転する。この結果、サンギヤ35は、プラネタリーギヤ36の自転に基づいて反時計方向、すなわちリリース方向へ所定角度回動し、当接部35bが第1リリース出力レバー41の後述のリリース部41aに対して後方から当接し第1リリース出力レバー41をリリース方向(図7、9において時計方向)へ作動させる。この結果、モータ32及び減速機構を構成する遊星歯車機構33を含む電動リリース機構のリリース作動は、後述の操作力伝達経路を経由してラチェット9をリリース作動させるように、ラチェット9に伝達される。
第2リリース出力レバー42、キャンセル入力レバー43及びフローティングピン45を含むリリースキャンセル機構は、モータ32のリリース駆動による遊星歯車機構33のリリース作動をラチェット9に伝達可能な図6〜11に示す接続状態と当該接続状態を切断する図12に示す切断状態とに変化可能である。
第1リリース出力レバー41は、ベースプレート31に車内外方向を向く支軸44により前後方向へ回動可能に枢支されると共に、下部に設けられるリリース部41aと、車内外方向を向くフローティングピン45が上下方向へ摺動可能に係合する上下方向の長孔41bとを有し、スプリング46により例えば図6において反時計方向へ付勢されて、非作動時には図6〜10に示す待機位置に保持されると共に、遊星歯車機構33のリリース作動に基づいて、待機位置からスプリング46の付勢力に抗して、リリース方向(図6〜10において時計方向)へ所定角度回動する。
第2リリース出力レバー42は、ベースプレート31に第1リリース出力レバー41と同軸により枢支されると共に、上部には第1リリース出力レバー41のリリース作動した状態から待機位置への回動に対して当接可能な折曲部42aが設けられる。
第2リリース出力レバー42の上端部は、第2リリース出力レバー42の待機位置(例えば、図9に示す位置)からリリース方向(図9において時計方向)へのリリース作動を操作中継装置100の後述のアウトサイドレバー102に伝達可能な第3操作力伝達部材503を介してアウトサイドレバー102に連結される。さらに、第2リリース出力レバー42には、フローティングピン45が上下及び前後方向へ摺動可能に係合する逆L字型の長孔42bが設けられる。
キャンセル入力レバー43は、ベースプレート31に車内外方向を向く支軸43aにより前後方向へ回動可能に枢支され、通常はスプリング47の付勢力により接続位置(例えば、図6〜11に示す位置)に保持される。キャンセル入力レバー43における後方へ延出するアーム部43bには、一部が第2リリース出力レバー42の長孔42bに重なってフローティングピン45が前後方向へ摺動可能に係合する前後方向の長孔43cが設けられる。
キャンセル入力レバー43の上部は、操作力伝達部材504を介して操作中継装置100の後述のキャンセル出力レバー104に連結される。これにより、キャンセル入力レバー43は、通常はリリースキャンセル機構を接続状態(例えば、図6〜11に示す状態)にする接続位置に保持され、後述のようにインサイドハンドルIHのドア閉操作における初期操作ではキャンセル作動しないが、初期操作後の後期操作でキャンセル出力レバー104がキャンセル作動したときには、接続位置からスプリング47の付勢力に抗して切断方向(図6〜11において反時計方向)へ所定角度回動してリリースキャンセル機構を切断状態とする切断位置(図12参照)に移動する。リリースキャンセル機構が切断状態に変化した場合には、電動リリース機構のリリース作動はラチェット9に対して伝達不能な状態となる。
フローティングピン45は、キャンセル入力レバー43に従動し、キャンセル入力レバー43が図6〜11に示す接続位置にある場合には、第2リリース出力レバー42の長孔42bの下部に位置にしてリリースキャンセル機構を接続状態とする接続位置に保持され、また、キャンセル入力レバー43が切断位置に移動した場合には、長孔42bの上部に位置(図11に示す位置)してリリースキャンセル機構を切断状態とする切断位置に移動する。
キャンセル入力レバー43及びフローティングピン45が接続位置にあってリリースキャンセル機構が図6〜11に示す接続状態にある場合には、第1リリース出力レバー41と第2リリース出力レバー42間の機械的連結の操作力伝達経路は、フローティングピン45により接続されている。これにより、操作中継装置100の施解錠機構がアンロック状態にあれば、電動リリース機構のリリース作動は、第1リリース出力レバー41、フローティングピン45、第2リリース出力レバー42、第3操作力伝達部材503、操作中継装置100(アウトサイドレバー102、リリース出力レバー106)、第1操作力伝達部材501、リリース入力レバー19、オープンレバー12を介してラチェット9に伝達される。この結果、ラチェット9は、リリース作動してドアDの開きを可能にする。また、ラッチ機構のリリース作動が完了した後、モータ32は、制御回路装置1000により反転制御され、遊星歯車機構33はニュートル状態に復帰する。
キャンセル入力レバー43及びフローティングピン45が図12に示すキャンセル位置に移動した場合には、第1リリースレバー41と第2リリース出力レバー42間の操作力伝達経路は切断される。これにより、電動リリース機構がリリース作動している最中、電気的故障または他の原因によって電動リリース機構の動きが停止して、図11に示すように、第1リリース出力レバー41がリリース作動した位置に拘束されて、第1リリース出力レバー41、第2リリース出力レバー42等が待機位置に戻ることができなくなって、ラチェット9がリリース位置に拘束されてドアDの閉鎖ができなくなる所謂リリース拘束状態が発生しても、図12に示すように、キャンセル入力レバー43をキャンセル作動させて、第1リリース出力レバー41と第2リリース出力レバー42間の操作力伝達経路を切断させることによって、リリース拘束状態を解除して、電動リリース機構及び第1リリース出力レバー41をリリース状態としたまま、第2リリース出力レバー42、リリース入力レバー19の待機位置への戻り、及びラチェット9の係合位置への戻りを可能にして、ラッチユニット2に対するストライカSの噛合を可能にしてドアDの閉鎖を可能にする。
なお、本実施形態においては、モータ32の回転を減速してラチェット9に伝達可能とする減速機構として遊星歯車機構33を採用したが、本発明は、本実施形態に限定されるものでなく、減速機構をウォームギヤや平歯車等で構成しても良い。
次に、図13〜24に基づいて、操作中継装置100、インサイドハンドルIH及びロックノブLKについて説明する。
図13、14に示すように、操作中継装置100は、ドアD内に固定されるベースプレート101を備え、ベースプレート101には、アウトサイドレバー102、インサイドレバー103、キャンセル出力レバー104、クランクレバー105、リリース出力レバー106、緊急出力レバー107、施解錠機構を構成するロックレバー108及び制御ピン120、チャイルドプルーフレバー109、コネクトレバー110及びロック・アンロック操作用の電動式のアクチュエータ111等が設けられる。
図13〜16に示すように、インサイドハンドルIH及びロックノブLKは、操作中継装置100のベースプレート101に固定されるベース部IH1に支持される。
インサイドハンドルIHは、図15に示すように上下方向を向く支軸IH2により前後方向へ揺動可能に枢支され、常時は支軸IH2に巻装されたスプリングIH3の付勢力により中立位置に保持され、ドアDを開ける際にあっては、中立位置から図16、17において矢印R方向(後方)へ所定角度回動するドア開操作が可能であり、またドアDを閉じる際にあっては、中立位置から図16、17において矢印F方向(前方)へ所定角度回動するドア閉操作が可能である。
インサイドハンドルIHは、図15に示すように車外側向けて延出する上、下の連結アーム部IHa、IHb、及び下の連結アーム部IHbの下方にあって、車外側、すなわちアクチュエータ111へ向けて突出する平面視コ字状の連結部IHcを有する。下の連結アーム部IHbは、インサイドハンドルIHのドア開操作を伝達可能な第5操作力伝達部材505を介してインサイドレバー103に連結され、上の連結アーム部IHaは、インサイドハンドルIHのドア閉操作を伝達可能な第6操作力伝達部材506を介して、キャンセル出力レバー104及びクランクレバー105に所定の遊びを介して連結される。また、連結部IHcは、アクチュエータ111のカバー111aに枢支される被検出レバー136に前後から挟み込むようにして連結される。
インサイドハンドルIHのドア閉操作における初期操作(図17に示すスイッチ作動範囲)及びドア開操作は、インサイドハンドルIHの操作に常時連動する被検出レバー136と一体的に揺動可能な内部被検出レバー137を介してアクチュエータ111内に設けられるインサイドハンドル検出スイッチ138により検出される。
インサイドハンドル検出スイッチ138は、インサイドハンドルIHの操作方向を検出し、当該検出信号を制御回路装置1000に送信する。制御回路装置1000は、インサイドハンドル検出スイッチ138の開操作信号(インサイドハンドルIHがドア開操作されたときの信号)を入力したときには、モータ32をリリース駆動制御して、ドアラッチ装置1及びフロントドアラッチ装置FDをリリース作動させた後、引き続いて電動開閉装置PSDを開駆動制御(ドアDを開方向へ移動させるための制御)し、また、同じく閉操作信号(インサイドハンドルIHのドア閉操作における初期操作を検出したときの信号)を入力したときには、モータ32をリリース駆動制御して、全開保持ラッチODをリリース作動させた後、引き続いて電動開閉装置PSDを閉駆動制御(ドアDを閉方向へ移動させるための制御)を実行する。
アウトサイドレバー102は、車内外方向を向くシャフト112によりベースプレート101の車内側を向く面のほぼ中央部に回動可能に枢支されると共に、下部の前後方向を向く長孔の連結孔102aには、ドアラッチ装置1の第2リリース出力レバー42のリリース作動、すなわち電動リリース機構のリリース作動を伝達可能な第3操作力伝達部材503の端部が前後方向へ摺動可能に連結され、また同じく連結孔102bには、アウトサイドハンドOHの操作を伝達可能な第8操作力伝達部材508の連結される。これにより、モータ32のリリース駆動により第2リリース出力レバー42がリリース作動して第3操作力伝達部材503が図19に示す矢印方向へ牽引されるか、またはアウトサイドハンドルOHがドア開操作されて第8操作力伝達部材508が図19に示す矢印方向へ牽引されると、アウトサイドレバー102は、下端部がベースプレート101に設けられたストッパ部101aに後方から当接した待機位置からリリース方向(図19において反時計方向)へ所定角度揺動して図22に示すリリース作動位置へ移動する。アウトサイドレバー102のリリース方向へのリリース作動は、後述のようにクランクレバー105、緊急出力レバー107及びコネクトレバー110にそれぞれ伝達される。
アウトサイドレバー102には、アウトサイドレバー102のリリース作動をクランクレバー105に伝達可能な押部102c、コネクトレバー110に伝達可能な押部102d及び緊急出力レバー107に伝達可能な押部102eが設けられる。これにより、アウトサイドレバー102がリリース作動した場合には、これに連動して、クランクレバー105、コネクトレバー110及び緊急出力レバー107もリリース作動する。
さらに、アウトサイドレバー102の最下部には、アクチュエータ111におけるハウジング111b内に配置され、アウトサイドレバー102のリリース作動を検出可能なアウトサイドハンドル検出スイッチ139のセンサー部139aに接触可能な被検出部102fが設けられる。アウトサイドハンドル検出スイッチ139の検出信号は、制御回路装置1000に送信される。制御回路装置1000は、該検出信号の入力に基づいて、電動開閉装置PSDを駆動制御する。
クランクレバー105は、車内外方向を向く支軸114によりベースプレート101の車内側を向く面に枢支されると共に、スプリング115の付勢力により待機方向(例えば図19において反時計方向)へ付勢され、常時はベースプレート101に設けられたストッパ部101bに上方から当接した待機位置に保持される。
クランクレバー105の上部に設けられた前後方向を向く長孔の連結孔105aには、インサイドハンドルIHのドア閉操作における後期操作(図17に示す初期操作を超えた位置からフルストローク位置までの範囲の操作)をキャンセル出力レバー104及びクランクレバー105に伝達可能な第6操作力伝達部材506の端部が摺動可能に連結される。なお、第6操作力伝達部材506の端部と連結孔105aの後縁との間には、図17に示すように、インサイドハンドルIHのドア閉操作における初期操作に相当する遊びLが設けられる。またクランクレバー105の下部は、クランクレバー105のリリース作動を全開保持ラッチODに伝達可能な第9操作力伝達部材509の端部が連結される。さらに、クランクレバー105の下部には、アウトサイドレバー102の押部102cが後方から当接可能な被押部105bが設けられる。
キャンセル出力レバー104は、ベースプレート101にクランクレバー105と同軸上に枢支されると共に、下部が第4操作力伝達部材504を介してドアラッチ装置1のキャンセル入力レバー43に連結され、通常は待機位置(例えば図19に示す位置)に保持される。
さらに、キャンセル出力レバー104は、インサイドハンドルIHのドア閉操作における初期操作では待機位置に停止したままであるが、後期操作で例えば図19において待機位置から時計方向の所定角度回動するキャンセル作動するように、インサイドハンドルIHに前記初期操作に相当する遊びL(図17参照)を介して連結される。具体的には、キャンセル出力レバー104の上部に設けられ、第6操作力伝達部材506に当接可能な当接部104aは、キャンセル出力レバー104が待機位置にあるとき、第6操作力伝達部材506の端部に対して遊びLを介して対向する。
全開保持ラッチODがストライカに噛合してドアDが全開位置に保持されている場合、インサイドハンドルIHがドア閉操作されると、当該操作における初期操作において、第6操作力伝達部材506は、図19に示す矢印方向へ遊びL分だけ移動して図20に示す位置まで移動する。インサイドハンドル検出スイッチ138は、インサイドハンドルIHのドア閉操作における初期操作を検出し、当該検出信号は制御回路装置1000に送信される。なお、この場合においては、図20に示すように、第6操作力伝達部材506の端部は、キャンセル出力レバー104の当接部104a及びクランクレバー105の連結孔105aの後端に当接しない(または当接しても強く当接しない)ため、インサイドハンドルIHのドア閉操作における初期操作は、キャンセル出力レバー104及びクランクレバー105に対しては伝達されない。
制御回路装置1000は、インサイドハンドル検出スイッチ138の検出信号を入力すると、全開保持ラッチODがリリース作動するようにモータ32をリリ駆動制御した後、引き続いてドアDが閉方向へ移動するように、電動開閉装置PSDを閉駆動制御し、さらにラッチ機構がハーフラッチ状態になるとクローザ・リリースユニット3のクローザ機能によりドアDを全閉位置に移動させる。したがって、ドアDを全開位置から電動開閉装置PSD及びクローザ・リリースユニット3のクローザ機能の動力で閉移動させる場合には、乗員に対してドアDを閉方向へ移動させるための大きな力を要求しないため、インサイドハンドルIHのドア閉方向への操作量は、インサイドハンドル検出スイッチ138を作動させるだけの軽い操作の初期操作で十分である。これにより、リリース拘束状態が発生していない正常状態において、インサイドハンドルIHが通常の操作力でドア閉操作される限り、インサイドハンドルIHのドア閉操作は、キャンセル出力レバー104及びリリースキャンセル機構には伝達されることがないため、リリースキャンセル機構はリリース作動することはない。
しかし、リリース拘束状態が発生して電動開閉装置PSD及びクローザ・リリースユニット3のクローザ機能の動力によりドアDの閉鎖ができなくなった異常事態の場合には、乗員は、一般的にインサイドハンドルIHを掴んでドアDを閉方向へ移動させようとする動作を行うこととなる。この場合には、インサイドハンドルIHに対してドア閉方向へ大きな力が入力されるため、インサイドハンドルIHは、ドア閉操作における初期操作を超えて後期操作に突入することとなる。したがって、第6操作力伝達部材506の端部は、図21に示すように、遊びL以上に移動してキャンセル出力レバー104の当接部104a及びクランクレバー105の連結孔105aの後縁に当接する。これにより、キャンセル出力レバー104及びクランクレバー105は、スプリング115の付勢力に抗して待機位置からリリース方向へリリース作動する。
キャンセル出力レバー104のリリース作動は、第4操作力伝達部材504を介してキャンセル入力レバー43に伝達される。キャンセル入力レバー43は、前述のように待機位置からリリース作動してリリースキャンセル機構をキャンセル作動させることにより、リリース拘束状態を解除してラチェット9の係合位置への戻りを可能にしてラッチ機構に対するストライカSの噛合を可能にしてドアDを閉じることが可能となる。
インサイドレバー103は、シャフト112、すなわちアウトサイドレバー102と同軸によりアウトサイドレバー102に対して車外側に重なった状態でベースプレート101の車内側を向く面に枢支され、待機状態(インサイドレバー103が作動していない状態)においてはベースプレート101に設けられたストッパ部101cに下方から当接したニュートラル位置(例えば、図19に示す位置)に保持される。
インサイドレバー103の上部に設けられた前後方向を向く長孔の連結孔103aには、インサイドハンドルIHのドア開操作を伝達可能な第5操作力伝達部材505の端部が摺動自在に連結される。これにより、インサイドハンドルIHがドア開方向へ操作されると、第5操作力伝達部材505が図19に示す矢印方向(前方)へ移動することにより、インサイドレバー103は、待機位置からリリース方向(図19において反時計方向)へ所定角度揺動する。
さらに、インサイドレバー103の上部に設けられた上下方向を向く制御孔103bには、チャイルドプルーフレバー109の後述のアンロック位置、ロック位置への作動に基づいて上下移動可能な制御ピン117が摺動可能に係合する。
緊急出力レバー107は、ベースプレート101にシャフト112により枢支されると共に、第2操作力伝達部材502を介してドアラッチ装置1の緊急入力レバー21に連結され、アウトサイドレバー102またはインサイドレバー103のいずれか一方がリリース方向へ作動すると、換言するとアウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHのいずれか一方がドア開操作されると、シャフト112を中心にスプリング116の付勢力に抗してリリース方向(例えば、図19において反時計方向)へ所定角度回動し、当該回動を第2操作力伝達部材502を介して緊急入力レバー21に伝達する。緊急出力レバー107の回動が緊急入力レバー21に伝達された場合には、前述のように、ブロックレバー20をキャンセル位置に移動させて、クローザ・リリースユニット3のクローズ動作を中断させる。
チャイルドプルーフレバー109は、車内外方向を向く支軸118によりベースプレート101の車内側を向く面に枢支され、人為的な操作に基づいて、図19〜23に示すアンロック位置と、アンロック位置から反時計方向へ所定角度揺動した図24に示すロック位置に移動可能であって、各位置に所定の保持力で弾性保持される。
チャイルドプルーフレバー109の前部には、ドアDが開いた状態にあるときのみ人為的に操作可能な操作部109aが設けられ、同じく下部には、アクチュエータ111のハウジング111b内に配置され、チャイルドプルーフレバー109の作動を検出可能なチャイルドプルーフレバー検出スイッチ140に接触可能な被検出部109bが設けられ、また同じく後部には、制御ピン117が前後方向へ摺動可能に係合する長孔109cが設けられる。チャイルドプルーフレバー検出スイッチ140の検出信号は、制御回路装置1000に送信される。
制御ピン117は、チャイルドプルーフレバー109のアンロック・ロック作動に基づいてインサイドレバー103の制御孔103bを上下移動であると共に、インサイドレバー103のリリース作動に基づいて前方へ移動可能であって、チャイルドプルーフレバー109がアンロック位置にあるときには、インサイドレバー103の制御孔103bの下部に位置してインサイドレバー103のリリース作動をコネクトレバー110に伝達可能なアンロック位置(例えば図19に示す位置)にあり、また同じくロック位置にあるときには、制御孔103bの上部に位置してインサイドレバー103のリリース作動をコネクトレバー110に伝達不能なロック位置(図24に示す位置)にある。
コネクトレバー110は、シャフト112によりベースプレート101の車内側を向く面に枢支されると共に、スプリング119の付勢力により図19において時計方向へ付勢され、待機状態(コネクトレバー110が作動していない状態)においては例えば図19に示す待機位置に保持される。
コネクトレバー110の上部には、チャイルドプルーフレバー109がアンロック位置にあるとき制御ピン117が後方から当接可能で、同じくロック位置にあるとき制御ピン117が後方から当接不能な被当接部110aが設けられる。これにより、チャイルドプルーフレバー109及び制御ピン117がアンロック位置にときには、インサイドレバー103のリリース作動は制御ピン117及び被当接部110aを介してコネクトレバー110に伝達されることにより、コネクトレバー110は、スプリング119の付勢力に抗して待機位置からリリース方向へ所定角度揺動する。チャイルドプルーフレバー109及び制御ピン117がロック位置にあるときには、制御ピン117が被当接部110aに対して当接不能であるため、インサイドレバー103のリリース作動は、コネクトレバー110に伝達されない。
さらに、コネクトレバー110の後部には、アウトサイドレバー102の押部102dが下方から当接可能な被押部110bが設けられる。これにより、アウトサイドレバー102がリリース作動すると、アウトサイドレバー102の押部102dがコネクトレバー110の被押部110bに下方から当接することにより、コネクトレバー110は、チャイルドプルーフレバー109の位置に無関係に、スプリング119の付勢力に抗してリリース方向へリリース作動する。
さらに、コネクトレバー110の下部には、ロックレバー108に連動可能な制御ピン120が上下方向へ摺動可能に係合する上下方向の長孔110cが設けられる。
ロックレバー108は、車内外方向を向く支軸121によりベースプレート101の車内側を向く面に枢支されると共に、一端がロックレバー108、他端がベースプレート101にそれぞれ掛止されたターンオーバースプリング122の付勢力により、例えば図19に示すアンロック位置及びアンロック位置から時計方向へ所定角度回動した図23に示すロック位置に弾性保持される。
ロックレバー108の下部は、乗員によるロックノブLKのロック・アンロック操作を伝達可能な第7操作力伝達部材507が連結される。これにより、ロックレバー108は、ロックノブLKのアンロック操作に基づいてアンロック位置に移動し、また、同じくロック操作に基づいてロック位置に移動する。
さらに、ロックレバー108の最下部は、アクチュエータ111における出力レバー123に連結され、同じく後部には、制御ピン120が前後方向へ摺動可能に係合する前後方向を向く長孔108aが設けられる。これにより、ロックレバー108は、アクチュエータ111の作動によってもアンロック位置及びロック位置に移動し、また、これに従動して、制御ピン120もアンロック位置及びロック位置に移動する。
なお、操作中継装置100の施解錠機構は、ロックレバー108及び制御ピン120を含んで構成され、そのアンロック状態とは、ロックレバー108及び制御ピン120がアンロック位置にある状態を指し、ロック状態とは、ロックレバー108及び制御ピン120がロック位置にある状態を指す。
リリース出力レバー106は、シャフト112、すなわちアウトサイドレバー102、インサイドレバー103、緊急出力レバー107及びコネクトレバー110と同軸によりベースプレート101の車内側を向く面に枢支されると共に、待機状態(リリース出力レバー106が作動していない状態)においては例えば図19に示す待機位置に保持される。
リリース出力レバー106の上部は、第1操作力伝達部材501を介してドアラッチ装置1のリリース入力レバー19に連結され、さらには第10操作力伝達部材510を介してフロントドアラッチ装置FDに連結される。これにより、リリース出力レバー106がリリース方向(例えば図19において反時計方向)へ所定角度回動して図22に示すようにリリース作動すると、当該リリース作動は、第1操作力伝達部材501、第10操作力伝達部材510を介してドアラッチ装置1のリリース入力レバー19及びフロントドアラッチ装置FDにそれぞれ伝達され、各ドアラッチ装置1、FDは、それぞれラッチ解除作動して、全閉位置に保持されているドアDの開作動を可能にする。
リリース出力レバー106の下部には、制御ピン120が摺動可能に係合する側面視ほぼL字状の制御孔106aが設けられる。
制御ピン120は、コネクトレバー110の長孔110c、リリース出力レバー106の制御孔106a及びロックレバー108の長孔108aにそれぞれ摺動可能に係合することによって、ロックレバー108がアンロック位置にあるときには、制御孔106aの上部に位置するアンロック位置に位置し、また、ロックレバー108がロック位置にあるときには、制御孔106aの下部に位置するロック位置に位置する。
ロックレバー108及び制御ピン120がアンロック位置にある場合、すなわち施解錠機構がアンロック状態にある場合には、コネクトレバー110のリリース作動をもって、制御ピン120を介してリリース出力レバー106に伝達可能であって、リリース出力レバー106のリリース作動に基づいて各ドアラッチ装置1、FDをラッチ解除作動させることができる。
また、ロックレバー108及び制御ピン120がロック位置にある場合、すなわち施解錠機構がロック状態にある場合には、コネクトレバー110がリリース作動しても、制御ピン120が制御孔106aの下部を相対的に後方へ空振り移動するだけで、コネクトレバー110のリリース作動は、リリース出力レバー106には伝達されない。よって、施解錠機構がロック状態にある場合には、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHがドア開操作されても、各ドアラッチ装置1、FDをラッチ解除作動させることはできない。
次に、アクチュエータ111について説明する。
アクチュエータ111は、側面視ほぼ矩形のベースプレート101の外形の前下部の角部に沿うように固定される側面視ほぼL字状のハウジング111b及びハウジング111bを閉塞するカバー111aを備え、ハウジング111bにおける車外側を向く外面には、車内外方向を向く軸により出力レバー123が枢支される。
ハウジング111b内には、モータ124と、車内外方向を向く支軸125により枢支されるウォームホイール126と、支軸127により枢支され、出力レバー123と一体的に回動可能なアクティブレバー128と、前述のインサイドハンドル検出スイッチ138、アウトサイドハンドル検出スイッチ139及びチャイルドプルーフレバー検出スイッチ140と、アクティブレバー128の位置を検出するアクティブレバー検出スイッチ141と、内部被検出レバー137とが設けられる。
ウォームホイール126は、モータ124の回転軸に止着されたウォーム124aに噛合し、モータ124の回転により正逆回転可能であって、両側の回転面には軸方向へ突出する係合部126aが設けられる。なお、ウォームホイール126の車外側の回転面に設けられる係合部126aについては、図面の関係上、図示は省略する。
アクティブレバー128は、モータ124の正転によるウォームホイール126のアンロック方向(例えば図19において反時計方向)への回転に基づいて、ウォームホイール126の車内側の回転面に設けられた係合部126aに当接することで例えば図19に示すアンロック位置に回動し、また、モータ124の逆転によるウォームホイール126のロック方向(例えば図19において時計方向)への回転に基づいて、ウォームホイール126の車外側の回転面に設けられた係合部126aに当接することでアンロック位置から反時計方向へ所定角度揺動したロック位置(図23に示す位置)に回動する。
出力レバー123は、アクティブレバー128と一体的に回動可能であると共に、上端部がロックレバー108の下部に連結されることにより、モータ124の回転によりアクティブレバー128と共にアンロック位置及びロック位置に移動することにより、施解錠機構をアンロック状態及びロック状態に切り替え可能である。
次に、ドアラッチシステムの作用について説明する。
(ドアラッチ装置1のクローズ動作)
図6に示すように、ドアDが開いた状態、すなわち、ラッチユニット2がオープン状態にある状態において、電動開閉装置PSDによる電動操作または乗員による手動操作によりドアDが半ドア位置まで閉じられると、このとき、正常状態(リリース拘束状態等の異常状態の発生がない状態)であれば、図7に示すように、ストライカSがラッチ7に噛合することで、ラッチ7は、オープン位置からハーフラッチ位置に回動し、ラチェット9は、ラッチ7のハーフラッチ係合部7bに係合する。この作動で、ラッチレバー11の作動部11aは、ラッチ7のハーフラッチ位置への回動によりクローズレバー38のクローズ部38aの移動軌跡内に進入する。
ラッチ7がハーフラッチ位置に回動し、当該回動をハーフラッチ検出スイッチ14が検出すると、制御回路装置1000は、モータ32を正転制御する。これにより、図7に示すハーフラッチ状態から、出力ギヤ32aは、矢印方向の反時計方向へ回動し、セクタギヤ39は、支軸34を中心に矢印方向のクローズ方向へ揺動する。この場合、ブロックレバー20がブロック位置にあって、ブロック部20aがサンギヤ35の当接部35bに当接可能な位置にあるため、サンギヤ35は、時計方向へ若干揺動したあと当接部35bがブロック部20aに当接することで時計方向への揺動がブロックされる。この結果、プラネタリーギヤ36は、反時計方向へ自転しつつ公転する。
クローズレバー38は、プラネタリーギヤ36の反時計方向への公転に伴って、スプリング40の付勢力に抗して、矢印方向のクローズ方向(反時計方向)へ揺動し、クローズ部38aの上方移動によりラッチレバー11の作動部11aを押し上げ、ラッチレバー11を時計方向へ揺動させる。これにより、ラッチ7がハーフラッチ位置から図8に示すフルラッチ位置へ揺動する。そして、フルラッチ検出スイッチ15がラッチ7のフルラッチ位置を検出すると、制御回路装置1000は、モータ32を一旦停止制御した後、即座に反転制御する。
モータ32が反転制御されると、セクタギヤ39は、時計方向へ反転し、プラネタリーギヤ36は、時計方向へ自転しつつ公転する。続いて、クローズレバー38は、プラネタリーギヤ36の公転と相俟ってスプリング40の時計方向への付勢力によって反転して図9に示すように待機位置に戻る。そして、検出スイッチ48がセクタギヤ39の待機位置を検出すると、モータ32は停止制御され、遊星歯車機構33は作動前のニュートラル状態に戻り、一連のクローズ動作は終了する。
(操作中継装置100がアンロック状態、チャイルドプルーフレバー111がアンロック位置にあって、ラッチユニット2がフルラッチ状態にある状態で、アウトサイドハンドルOHがドア開操作されたとき)
図19に示すように、操作中継装置100(施解錠機構)のアンロック状態において、アウトサイドハンドルOHが操作されると、アウトサイドハンドルOHの操作は、第8操作力伝達部材508を介してアウトサイドレバー102に伝達される。アウトサイドレバー102は、待機位置からリリース方向(図19において反時計方向)へ回動する。これにより、アウトサイドレバー102の押部102dがコネクトレバー110の被押部110bに下方から当接し、コネクトレバー110をスプリング119の付勢力に抗してリリース方向(図19において反時計方向)へ回動させる。このとき、制御ピン120がコネクトレバー110の回動をリリース出力レバー106に伝達可能なアンロック位置に位置しているため、コネクトレバー110のリリース作動は、制御ピン120を介してリリース出力レバー106に伝達され、リリース出力レバー106もリリース方向へ回動する。
リリース出力レバー106のリリース作動は、第1操作力伝達部材501、第10操作力伝達部材510を介してドアラッチ装置1のリリース入力レバー19、フロントドアラッチ装置FDにそれぞれ伝達される。これにより、図11に示すように、ドアラッチ装置1のリリース入力レバー19は、待機位置からリリース方向へ所定角度回動し、ラチェット9をリリース作動させ、ドアDの開きを可能にする。
そして、図22に示すように、アウトサイドレバー102のリリース作動により、アウトサイドレバー102の被検出部102fがアウトサイドハンドル検出スイッチ139に接触すると、アウトサイドハンドル検出スイッチ139は、アウトサイドレバー102がリリース作動したことを検出し、その検出信号を制御回路装置1000に送信する。
次いで、制御回路装置1000は、アウトサイドハンドル検出スイッチ139の検出信号に基づいて、電動開閉装置PSDを開駆動制御する。これにより、ドアDは、電動開閉装置PSDの動力をもって開方向へ電動移動する。
(操作中継装置100がアンロック状態、チャイルドプルーフレバー111がアンロック位置にあって、ラッチユニット2がフルラッチ状態にある場合、ドア開閉用の操作スイッチOSが開操作されたとき)
ドアラッチ装置1が図9に示すフルラッチ状態で、かつ操作中継装置100が図19に示すアンロック状態において、車内に設けられた操作スイッチまたはワイヤレス操作スイッチ等の操作スイッチOSが開操作されると、当該操作信号は、制御回路装置1000に送信され、制御回路装置1000はモータ32をリリース駆動制御する。これにより、セクタギヤ39は、モータ32のリリース駆動により、図9に示す位置から支軸34を中心にしてリリース方向(図9において反時計方向)へ回動するが、プラネタリーギヤ36は、待機位置に保持されて時計方向への回動が阻止されたクローズレバー38に枢支されているため、公転しないで反時計方向へ自転する。サンギヤ35は、プラネタリーギヤ36の自転に基づいて中立位置からリリース方向へ所定角度回動する。これにより、図11に示すように、サンギヤ35が回転することで、サンギヤ35の当接部35bが第1リリース出力レバー41のリリース部41aに当接し、第1リリース出力レバー41はリリース方向へ回動する。
このとき、キャンセル入力レバー43が接続位置にある場合には、第1リリース出力レバー41のリリース作動は、フローティングピン45を介して第2リリース出力レバー42に伝達され、第2リリース出力レバー42のリリース作動は、第3操作力伝達部材503を介して、図19に示す状態の操作中継装置100のアウトサイドレバー102に伝達される。
図22に示すように、アウトサイドレバー102がリリース作動すると、アウトサイドレバー102のリリース作動は、コネクトレバー110、制御ピン120、リリース出力レバー106、第1操作力伝達部材501及び第10操作力伝達部材510を介して、ドアラッチ装置1のリリース入力レバー19及びフロントドアラッチ装置FDにそれぞれ伝達される。これにより、図12に示すように、ドアラッチ装置1は、ラチェット9がリリース作動してラッチ7との係合を解除してドアDの開きを可能にする。また、これとほぼ同時にフロントドアラッチ装置FDのラッチ解除作動する。次いで、制御回路装置1000は、電動開閉装置PSDを開駆動制御する。これにより、ドアDは、電動開閉装置PSDの動力をもって開方向へ電動移動する。
(ドアラッチ装置1がフルラッチ状態で、操作中継装置100がアンロック状態において、インサイドハンドルIHがドア開操作された場合)
操作中継装置100が図19に示すアンロック状態において、インサイドハンドルIHがドア開操作されると、インサイドハンドルIHのドア開操作は、第5操作力伝達部材505を介してインサイドレバー103に伝達される。インサイドレバー103は、待機位置からリリース方向(図19において反時計方向)へ回動し、インサイドレバー103のリリース作動は、緊急出力レバー107及びコネクトレバー110に伝達され、さらに、コネクトレバー110のリリース作動は、リリース出力レバー106、第1操作力伝達部材501及び第10操作力伝達部材510を介してドアラッチ装置1のリリース入力レバー19及びフロントドアラッチ装置FDに伝達される。これにより、アウトサイドハンドルOHが操作された場合と同様に、ラッチ解除作動が完了した後、制御回路装置1000は、インサイドハンドルIHのドア開操作を検出したインサイドハンドル検出スイッチ138の開検出信号に基づいて電動開閉装置PSDを開駆動制御する。これにより、ドアDは、電動開閉装置PSDの動力をもって開方向へ電動移動する。
(ドアDが全開位置に保持されている状態のとき、インサイドハンドルIHがドア閉操作された場合)
ドアDが全開位置に保持されているとき、インサイドハンドルIHがドア閉操作されると(図26に示すタイムチャートのa点)、インサイドハンドルIHのドア閉操作における初期操作は、インサイドハンドル検出スイッチ138により検出される(同タイムチャートのa点)。また、インサイドハンドルIHのドア閉操作における初期操作は、図20に示すように、第6操作力伝達部材506に伝達されるが、第6操作力伝達部材506の端部がキャンセル出力レバー104の当接部104aに当接しないため、キャンセル出力レバー104及びリリースキャンセル機構には伝達されない。
制御回路装置1000は、インサイドハンドル検出スイッチ138から送信される閉操作信号を受信すると、これを契機に、モータ32をリリース駆動制御する(同タイムチャートのa点)。モータ32がリリース駆動すると、前述のように、リリースキャンセル機構が接続状態あるならば、ドアラッチ装置1は、図11に示すように、サンギヤ35、第1リリース出力レバー41及び第2リリース出力レバー42がリリース作動したリリース作動状態となる。そして、第2リリース出力レバー42のリリース作動は、第3操作力伝達部材503を介して、操作中継装置100のアウトサイドレバー106に伝達され、アウトサイドレバー102のリリース作動は、図22に示すようにクランクレバー105に伝達される。そして、クランクレバー105のリリース作動は、第9操作力伝達部材509を介して全開保持ラッチODに伝達されることにより、全開保持ラッチODは、ラッチ解除作動してドアDの閉方向への移動を可能にする。続いて、制御回路装置1000は、ドアDが閉方向へ移動するように電動開閉装置PSD(同タイムチャートのb点)を閉駆動制御する。
そして、ドアDの閉移動により、ストライカSがドアラッチ装置1のラッチ7に係合してドアラッチ装置1がハーフラッチ状態になると、正常状態、すなわちリリース拘束状態が発生していなければ、制御回路装置1000は、電動開閉装置PSDの閉駆動制御を停止して、モータ32をクローズ駆動制御する。これにより、前述のように、ラッチ7がクローズレバー38のクローズ作動によりハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動することによって、ドアラッチ装置1はフルラッチ状態になって、ドアDを全閉状態とする。ラッチ7がフルラッチ位置に回動した後は、制御回路装置1000は、クローズレバー38が待機位置に反転するようにモータ32を反転制御する。
上述のように、正常状態において、インサイドハンドルIHのドア閉操作によりドアDを閉じる場合には、ドアDは電動開閉装置PSDの動力により閉移動させられるものであるから、通常の操作にあっては、インサイドハンドルIHに対してドア閉方向へ大きな力を入力する必要がない。よって、インサイドハンドルIHのドア閉操作は、初期操作、すなわちインサイドハンドル検出スイッチ138をオン作動させるだけの操作で十分であって、インサイドハンドルIHを後期操作まで動かす必要はない。したがって、この場合には、ドアラッチ装置1のリリースキャンセル機構は作動することはない。
(リリース拘束状態が発生した場合)
図11に示すように、サンギヤ35がモータ32のリリース駆動によりリリース作動した状態において、電気的故障、または他のトラブルの発生によってサンギヤ35がリリース作動した位置に停止して待機位置への復帰が不能なリリース拘束状態が発生すると、サンギヤ35の当接部35bが第1リリース出力レバー41のリリース部41aに当接したままとなって、第1リリース出力レバー41及び第2リリース出力レバー42がリリース作動した位置に拘束され、これに起因してラチェット9もリリース作動した状態に保持されたままとなる。したがって、この状態でドアDを閉じようとしても、ドアDを閉じることはできない。
しかし、本実施形態においては、ドアDの閉操作に使用されるインサイドハンドルIHを、リリース拘束状態を解除する操作の操作対象と兼用したので、リリース拘束状態に発生した場合にあっても、乗員に特別な操作を強いることなく、インサイドハンドルIHを掴んでドアDを閉じ方向へ移動させるだけの通常操作で、リリース拘束状態を解除してドアDを閉じることができる。
すなわち、リリース拘束状態が発生してドアDを閉じることができない場合には、乗員は、一般的に半開位置にあるドアDのインサイドハンドルIHを掴んでドアDを閉方向へ移動させようとする(図26に示すタイムチャートのc点)。このとき、インサイドハンドルIHにはドアDを閉移動させ得るだけの大きな力が入力されるため、インサイドハンドルIHのドア閉操作は、初期操作に止まらず、後期操作に突入する。
インサイドハンドルIHのドア閉操作が後期操作に突入した場合には、インサイドハンドルIHがフルストローク位置まで移動して、図21に示すように、第6操作力伝達部材506の端部がキャンセル出力レバー104の当接部104aに当接して、キャンセル出力レバー104がキャンセル方向へ作動する。これにより、キャンセル出力レバー104のキャンセル作動は、第4操作力伝達部材504を介してキャンセル入力レバー43に伝達される。この結果、図12に示すように、キャンセル入力レバー43は、スプリング47の付勢力を抗して切断位置に移動し、またフローティングピン45も切断位置に移動するため、第1リリース出力レバー41と第2リリース出力レバー42間の操作力伝達経路が切断されて、リリースキャンセル機構が切断状態となって、第2リリース出力レバー42の待機位置への移動が可能にする。これにより、第2リリース出力レバー42は、第1リリース出力レバー41を拘束位置に残したまま待機位置へ戻りが可能となることで、ラチェット9の係合位置への戻りを可能にする。したがって、この状態でドアDを閉じると、ドアDの全閉位置において、ストライカSがラッチ7に噛合すると共に、ラチェット9がラッチ7のフルラッチ係合部7aに係合することで、ドアDを全閉位置に拘束することができる。
そして、ドアDが閉じられた時点(図26に示すタイムチャートのd点)で、インサイドハンドルIHのドア閉操作を中立位置に戻し、その後、電気的故障等が解消されてサンギヤ35が中立位置に戻った際には、キャンセル入力レバー43は、スプリング47の付勢力により切断位置から接続位置に戻り、キャンセルリリース機構は接続状態に復帰する(図26に示すタイムチャートのe点)。
上述により、インサイドハンドルIHを掴んでドアDを閉方向へ移動させるだけの通常操作をもって、リリース拘束状態を解除させることが可能であるから、リリース拘束状態が発生した場合であっても、乗員に特別な操作を強いることなくドアDを迅速に閉じることが可能なる。
なお、本発明は、本実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して種々変形や変更を施すことが可能である。
(i)リリース拘束状態を解除する操作の操作対象を、ドアDの閉操作に使用されるインサイドハンドルIHに代えてアウトサイドハンドルOHとすること、またはインサイドハンドルIH及びアウトサイドハンドルOHの両方とすること。
(ii)第6操作力伝達部材506の端部がキャンセル出力レバー104の当接部104a及びクランクレバー105の連結孔105aの後縁に当接するタイミングを、クランクレバー105、キャンセル出力レバー104の順序とする。このような当接順序とすることで、正常状態において、インサイドハンドルIHのドア開操作が後記操作に突入した場合にも、先に前回保持ラッチODがラッチ解除されるため、作動に影響を及ぼすことがない。