JP6452204B2 - 熱電対およびその製造方法ならびに熱電対製造用構造体およびその製造方法 - Google Patents

熱電対およびその製造方法ならびに熱電対製造用構造体およびその製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、熱電対およびその製造方法ならびに熱電対製造用構造体およびその製造方法に関し、特に、K型またはN型の熱電対およびその製造方法ならびにK型またはN型の熱電対製造用構造体およびその製造方法に関する。
各種工業炉の温度測定と制御には熱電対が使用されているが、例えば、浸炭処理炉等では熱電対素線に緑色の酸化物(グリーンロット(green rot)腐食と呼ばれている) が形成され、指示温度が実際の温度に比べて低下する現象がみられる。この温度(起電力) 低下は、徐々に進行するため検知が遅れ、さらに、性能劣化の程度を予測することが難しいため、現在、熱電対は短期間での交換を余儀なくされている。このような状況の下で、各種工業炉とケミカルプラントの安定・高効率稼働のため、高信頼性・長寿命の熱電対素線の開発が望まれている。
特許文献1には、熱電対素線の全体を被覆層で被覆し、第1の被覆層はポリイミド膜、第2の被覆層はガス不透過な緻密部材であり、Cr(クロム)膜である燃料電池用温度センサが提案されている。特許文献2には、二重シース構造の熱電対が提案されている。特許文献3には、金属シース内にマグネシア、アルミナ等を材質とする粉末の無機絶縁材を介在させてK型またはN型熱電対素線を収容し、端部を樹脂等でシールしたシース熱電対において、無機絶縁材粉末間に不活性ガスを封入することが提案されている。さらに、特許文献4には、外径が100μm以下の熱電対素線の表面に膜厚が0.1〜3μmの無機系絶縁物被覆層を有する熱電対が提案されている。
特開2008−185437号公報 特開2008−261686号公報 特開2010−60445号公報 特開2013−234950号公報
日本工業規格 JIS C 1602(2015) 山田正治、荒克之; 計測と制御、第33巻 第12号 1070−1074(1994)
しかしながら、特許文献1〜4に提案された上述の従来の技術では、熱電対素線のグリーンロット腐食による起電力の低下を抑制することはできない。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、K型またはN型熱電対の+側導体用素線のグリーンロット腐食を防止することができ、それによって起電力の低下を抑制することことができる熱電対およびその製造方法を提供することである。
この発明が解決しようとする他の課題は、上記のK型またはN型熱電対を製造するのに適用して好適な半製品としての熱電対製造用構造体およびその製造方法を提供することである。
本発明者は上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。すなわち、本発明者の研究によれば、上記のグリーンロット腐食は、熱電対を浸炭処理炉等で使用した時に見られ、保護管には顕著な損傷が見られないのに対して、保護管内に挿入した熱電対素線、特に、Ni(ニッケル)−Al(アルミニウム)線とNi(ニッケル)−Cr(クロム)合金線とが接続されたK型熱電対素線、Ni(ニッケル)−Si(シリコン)線とNi(ニッケル)−Cr(クロム)−Si(シリコン)合金線とが接続されたN型熱電対素線において、素線に含まれるCrが選択的に酸化されるという特徴を有する。このグリーンロット形成の腐食機構について、本発明者は、浸炭雰囲気に含まれる水素(H2 )が保護管(通常、ステンレス鋼製である) を拡散して保護管の内部に到達して、内部空間の酸素(O2 )と反応して、または酸化物(MO、M=Fe, Co, Ni) を還元して、水蒸気(H2 O)を形成し、このH2 、O2 およびH2 Oの混合ガス雰囲気で、K型熱電対素線ではNi−Cr合金線が、N型熱電対素線ではNi−Cr−Si合金線のCrが選択的に酸化される現象であることを明らかにし、その防止法について鋭意検討を行った。すなわち、Crよりも酸素親和力の大きいAlをNi−Cr合金に添加したNi−Cr−Al合金線およびAlをNi−Cr−Si合金に添加したNi−Cr−Si−Al合金線では保護皮膜となるAl2 3 膜が形成され、Crの選択酸化を抑制できる。しかし、このAl2 3 膜を形成するに十分な量のAlを基材(Ni−Cr合金またはNi−Cr−Si合金)に添加すると、熱電対素線の起電力そのものを変化させるので、基材へのAlの添加は現実的でない。本発明者は、Alを熱電対素線の表面に被覆し、続いて、Alを酸化させて保護的Al2 3 皮膜を熱電対素線の表面に形成し、同時に、Ni−Al線とNi−Cr合金線あるいはNi−Si線とNi−Cr−Si合金線に残留するAlは起電力に影響を与えない範囲、非特許文献1によると、JIS規格の2級では1000℃で±7.5℃以内に制御する、ことによってグリーンロット腐食を抑制できることを見出し、本発明を案出するに至ったものである。
すなわち、上記課題を解決するために、この発明は、
一端で互いに接合された+側導体用素線と−側導体用素線とからなるK型またはN型熱電対であって、
上記+側導体用素線が、
NiおよびCrを主とした合金またはNi、CrおよびSiを主とした合金からなる線状の第1金属基材と、
上記第1金属基材の外周面に形成されたAl含有合金皮膜と、
上記Al含有合金皮膜の表面に連続的に形成されたAl2 3 皮膜と、
を有し、
上記Al含有合金皮膜と上記第1金属基材との界面の近傍の上記Al含有合金皮膜のAl濃度が6原子%以下であり、
上記−側導体用素線が、
上記第1金属基材がNiおよびCrを主とした合金からなる場合はNiおよびAlを主とした合金からなり、上記第1金属基材がNi、CrおよびSiを主とした合金からなる場合はNiおよびSiを主とした合金からなる線状の第2金属基材と、
上記第2金属基材の外周面に形成されたAl含有合金皮膜と、
上記Al含有合金皮膜の表面に連続的に形成されたAl2 3 皮膜と、
を有することを特徴とするものである。
この熱電対では、典型的には、第1金属基材の外周面に形成されたAl含有合金皮膜は第1金属基材を構成する元素のうちの少なくとも一種を含み、第2金属基材の外周面に形成されたAl含有合金皮膜は第2金属基材を構成する元素のうちの少なくとも一種を含む。Al含有合金皮膜と第1金属基材との界面の近傍のAl含有合金皮膜のAl濃度は、好適には、3原子%以下である。Al含有合金皮膜は、表面に連続的にAl2 3 皮膜が形成されていることに加えて、その内部にAl2 3 が内部酸化物として含まれてもよい。この場合、Al含有合金皮膜とこの内部酸化物としてのAl2 3 との界面の近傍のAl含有合金皮膜のAl濃度は6原子%以下、好適には3原子%以下である。この熱電対がいわゆるソリッドパック熱電対である場合は、熱電対が挿入されたステンレス鋼製保護管をさらに有し、このステンレス鋼製保護管と熱電対との間の空間がマグネシア(MgO)粉末により充填される。マグネシア粉末により充填するのは酸素(O2 )を遮断するためであり、こうすることで熱電対の劣化を防止することができる。
また、この発明は、
K型またはN型の熱電対の製造方法であって、
NiおよびCrを主とした合金またはNi、CrおよびSiを主とした合金からなる線状の第1金属基材と、この第1金属基材がNiおよびCrを主とした合金からなる場合はNiおよびAlを主とした合金からなり、この第1金属基材がNi、CrおよびSiを主とした合金からなる場合はNiおよびSiを主とした合金からなる線状の第2金属基材とが一端で互いに接合されたものをAl粉末またはFeAl合金粉末とAl2 3 粉末との混合粉末に埋没させ、真空または不活性ガス雰囲気において800℃以上1150℃以下の温度で5分以上4時間加熱することにより上記第1金属基材および上記第2金属基材の外周面にAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を形成した上記第1金属基材および上記第2金属基材を大気中または減圧雰囲気において900℃以上1200℃以下の温度で2時間以上24時間以下加熱することにより上記Al含有合金皮膜の表面にAl2 3 皮膜を形成する工程と、
を有することを特徴とするものである。
この熱電対の製造方法においては、典型的には、第1金属基材の外周面に形成されたAl含有合金皮膜は表面のAl濃度が25原子%以上50原子%以下、厚さが5μm以上15μm以下、Al含有合金皮膜の重量と第1金属基材の重量との和に対するAl含有合金皮膜に含まれるAlの重量の比が3.1重量%以下である。ここで、このAl含有合金皮膜の表面のAl濃度を25原子%以上50原子%以下とするのは、表面のAl濃度が25原子%より低いと保護的Al2 3 皮膜の形成が困難となり、表面のAl濃度が50原子%より高いとAl含有合金皮膜にクラック等が形成されるためである。また、このAl含有合金皮膜の厚さを5μm以上15μm以下とするのは、このAl含有合金皮膜の厚さが5μmより小さいと保護的Al2 3 皮膜の形成が困難となり、このAl含有合金皮膜の厚さが15μmより大きいと第1金属基材に残存するAl濃度が高くなり、起電力を変化させるので好ましくないためである。このAl含有合金皮膜の表面のAl濃度は、好適には30原子%以上50原子%未満、より好適には35原子%以上48原子%以下である。このAl含有合金皮膜の厚さは、好適には、7μm以上15μm以下である。
Al粉末およびFeAl合金粉末の平均粒径は、0.5μmより小さいと加熱中に酸化されてAl蒸気源としての機能を喪失し、5μmより大きすぎると加熱時に皮膜表面に固着してしまうため、好適には0.5μm以上5μm以下に選ばれ、より好適には1μm以上3μm以下に選ばれる。焼結防止剤として用いられるAl2 3 粉末の平均粒径は、0.5μmより小さいと軽量であることから飛散等により取り扱いが困難となり、5μmより大きすぎるとAl粉末またはFeAl合金粉末との混合が不均一になり、さらに皮膜表面に固着するおそれがあるため、好適には0.5μm以上3μm以下に選ばれ、より好適には0.5μm以上2μm以下に選ばれる。この混合粉末中のAl粉末とAl2 3 粉末との重量比(=Al/Al2 3 )およびFeAl合金粉末とAl2 3 粉末との重量比(=FeAl/Al2 3 )は、混合粉末中のAl粉末またはFeAl合金粉末の量が0.05より少ないときには皮膜の表面Al濃度が低くなりすぎ、0.3より高いとAl粉末またはFeAl合金粉末が互いに凝着して取り扱いが難しくなるため、好適には0.05以上0.3以下に選ばれ、より好適には0.1以上0.2以下に選ばれる。
第1金属基材および第2金属基材をAl粉末またはFeAl合金粉末とAl2 3 粉末との混合粉末に埋没させて行う加熱を真空または不活性ガス雰囲気において行う理由は、第1金属基材、第2金属基材、Al粒子またはFeAl合金粒子の酸化を抑制するためであり、真空は油回転ポンプによる排気で得られるもので足り、不活性ガス雰囲気は例えばアルゴン(Ar)ガスである。この真空または不活性ガス雰囲気中の加熱の条件を800℃以上1150℃以下の温度で5分以上4時間以下とするのは、800℃より低温あるいは5分より短時間ではAlの拡散量が不足し、1150℃より高温あるいは4時間より長時間ではAlの拡散量の制御が困難であるためである。この加熱は、好適には、900℃以上1100℃以下で10分以上(より好適には15分以上)、2時間以下で行う。
Al含有合金皮膜を形成した第1金属基材および第2金属基材の加熱を900℃以上1200℃以下の温度で2時間以上24時間以下加熱することによりAl含有合金皮膜の表面にAl2 3 皮膜を形成するのは、900℃より低温では酸化に長時間を要し、1200℃より高温では第1金属基材および第2金属基材の組織変化による強度低下が問題となり、2時間より短時間では十分な厚さのAl2 3 皮膜が形成されず、24時間より長時間ではAl2 3 皮膜の厚さが大きくなりすぎるためである。この加熱は、好適には、1000℃以上1100℃以下で4時間以上12時間以下で行う。
ここで、第1金属基材および上記第2金属基材の表面にAl含有合金皮膜を形成する方法として、第1金属基材および第2金属基材が一端で互いに接合されたものをAl粉末またはFeAl合金粉末とAl2 3 粉末との混合粉末に埋没させ、真空または不活性ガス雰囲気で加熱する方法を採用した理由を説明する。すなわち、一般に、Al含有合金皮膜の形成方法として、物理蒸着法としてAlの真空蒸着、スパッターコーティング、電子ビーム蒸着(EBPVD)、溶射、等がある。化学蒸着法として、AlCl3 をガス化させて基材表面でAlとして析出させる方法、AlとNH4 Clとを反応させてAlCl3 を形成して基材表面でAlを析出させる方法がある。電気めっき法として、溶融塩からのAlの電気めっき、非水溶媒からのAlの電気めっき、等が知られている。上記技術はそれぞれ特有の得失を有しているが、現在、生産性に優れていることから、基材をAlとNH4 ClとAl2 3 との混合粉末中に埋没させて、加熱する、いわゆるカロライジング処理が採用されており、インパック(In-pack)処理とアウトパック(Out-pack)処理とに大別される。インパック処理は混合粉末(AlとNH4 ClとAl2 3 )の中に基材を直接埋没させる処理法で、低温・短時間で皮膜形成が可能であるが、Al拡散層の表面にAl蒸気源粉末とAl2 3 粒子とが付着または巻き込まれる、という問題があり、したがって、Al拡散層の表面が粗面化し、研削除去する必要があった。アウトパック処理は基材が混合粉末(AlとNH4 ClとAl2 3 ) に直接接触しないように分離して行う処理法で、Al蒸気源とAl2 3 粉末等の付着や巻き込み等を軽減することができる。しかし、このアウトパック処理では、蒸気源と基材との間のAl蒸気の飛行距離が長くなることから基材表面のAl濃度の制御が困難であり、装置が複雑となり、基材のサイズと形状に限界がある。さらに、これらのインパック処理およびアウトパック処理のいずれにおいても、排ガス処理の設備等が必要である。上述のように、本発明者は、Al含有合金皮膜の形成方法として、Al蒸気源としてAl粉末またはFeA合金粉末を採用し、Al2 3 粉末との混合粉末中で行うインパック処理が優れていると考え、鋭意工夫を重ね、上記の従来のインパック処理法に由来する問題点を克服した新規なインパック処理法(高温低活量Alパック処理法と呼ぶ)を開発し、採用したものである。この新規インパック処理法によれば、次のような利点を得ることができる。すなわち、Al蒸気源としてAl粉末またはFeAl合金粉末、焼結防止剤にAl2 3 粉末を採用したことにより、特に、最適なサイズのAl粉末またはFeAl合金粉末とAl2 3 粉末とを採用することによって、Al拡散層の表面が平滑となり、Al2 3 粉末等の巻き込みが少なくなり、後処理平滑化が不要である。皮膜表面のAl濃度と皮膜内のAl量を最適に制御することによって、保護的Al2 3 皮膜を形成することができるとともに、素線の起電力変化をJIS規格内に制御することができる。さらに、基材をAl粉末またはFeAl合金粉末とAl2 3 粉末との混合粉末に埋没させるインパック処理法であるため、NH4 Cl等の排ガス処理設備が不要である。
また、この発明は、
K型またはN型の熱電対の製造方法であって、
NiおよびCrを主とした合金またはNi、CrおよびSiを主とした合金からなる線状の第1金属基材と、この第1金属基材がNiおよびCrを主とした合金からなる場合はNiおよびAlを主とした合金からなり、この第1金属基材がNi、CrおよびSiを主とした合金からなる場合はNiおよびSiを主とした合金からなる線状の第2金属基材とが一端で互いに接合されたものをAl粉末またはFeAl合金粉末とAl2 3 粉末との混合粉末に埋没させ、真空または不活性ガス雰囲気において800℃以上1150℃以下の温度で5分以上4時間加熱することにより上記第1金属基材および上記第2金属基材の外周面にAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を形成した上記第1金属基材および上記第2金属基材をステンレス鋼製保護管に挿入し、このステンレス鋼製保護管と上記Al含有合金皮膜を形成した上記第1金属基材および上記第2金属基材との間の空間をマグネシア粉末により充填する工程と、
上記ステンレス鋼製保護管を大気中または減圧雰囲気において塑性加工が可能な温度に加熱した状態で上記ステンレス鋼製保護管を塑性加工することにより、上記ステンレス鋼製保護管の内部に存在する隙間を減少させるとともに、上記Al含有合金皮膜の表面にAl2 3 皮膜を形成する工程と、
を有することを特徴とするものである。
この熱電対の製造方法は、いわゆるソリッドパック熱電対の製造方法である。塑性加工は、具体的には、例えば、圧縮、曲げ、引っ張り等である。ステンレス鋼製保護管を塑性加工する際には、その内部に挿入された、Al含有合金皮膜を形成した第1金属基材および第2金属基材にも外力が加わるが、このAl含有合金皮膜を形成した第1金属基材および第2金属基材は塑性変形が可能であり、Al含有合金皮膜に亀裂等が入ったりすることはない。こうしてAl含有合金皮膜が塑性変形した後、ほぼ同時にAl2 3 皮膜が連続膜として形成されるため、Al2 3 皮膜の破壊等を避けることができる。塑性加工が可能な温度は、必要に応じて選ばれるが、最低限、Al含有合金皮膜の表面に連続膜としてAl2 3 皮膜が形成される温度である必要があり、具体的には、例えば、900℃以上1100℃以下である。大気中または減圧雰囲気において塑性加工が可能な温度に加熱した状態でAl含有合金皮膜の表面に形成されるAl2 3 皮膜は、必ずしも保護皮膜として十分に良好な特性を有していない場合もあるが、その場合でも、この製造方法により製造された熱電対が実際に高温で使用される際にAl2 3 皮膜の特性が向上し、保護皮膜として十分に良好な特性を有するようになる。この熱電対の製造方法においては、上記以外のことについては、先に説明した熱電対の製造方法に関連して説明したことが成立する。
また、この発明は、
K型またはN型の熱電対製造用構造体であって、
NiおよびCrを主とした合金またはNi、CrおよびSiを主とした合金からなる線状の第1金属基材と、この第1金属基材がNiおよびCrを主とした合金からなる場合はNiおよびAlを主とした合金からなり、この第1金属基材がNi、CrおよびSiを主とした合金からなる場合はNiおよびSiを主とした合金からなる線状の第2金属基材とが一端で互いに接合されたものと、
上記第1金属基材および上記第2金属基材の外周面に形成されたAl含有合金皮膜と、
を有し、
上記第1金属基材の外周面に形成された上記Al含有合金皮膜は表面のAl濃度が25原子%以上50原子%以下、厚さが5μm以上15μm以下、上記Al含有合金皮膜の重量と上記第1金属基材の重量との和に対する上記Al含有合金皮膜に含まれるAlの重量の比が3.1重量%以下であることを特徴とするものである。
この熱電対製造用構造体を大気中または不活性ガス雰囲気において900℃以上1200℃以下の温度で2時間以上24時間以下加熱することによりAl含有合金皮膜の表面にAl2 3 皮膜を形成することができ、それによってK型またはN型の熱電対を製造することができる。この熱電対製造用構造体においては、上記以外のことについては、先に説明した熱電対およびその製造方法に関連して説明したことが成立する。
また、この発明は、
K型またはN型の熱電対製造用構造体の製造方法であって、
NiおよびCrを主とした合金またはNi、CrおよびSiを主とした合金からなる線状の第1金属基材と、この第1金属基材がNiおよびCrを主とした合金からなる場合はNiおよびAlを主とした合金からなり、この第1金属基材がNi、CrおよびSiを主とした合金からなる場合はNiおよびSiを主とした合金からなる線状の第2金属基材とが一端で互いに接合されたものをAl粉末またはFeAl合金粉末とAl2 3 粉末との混合粉末に埋没させ、真空または不活性ガス雰囲気において800℃以上1150℃以下の温度で5分以上4時間加熱することにより上記第1金属基材および上記第2金属基材の外周面にAl含有合金皮膜を形成する工程を有することを特徴とするものである。
この熱電対製造用構造体の製造方法によれば、上記の熱電対製造用構造体を容易に製造することができ、この熱電対製造用構造体を用いてK型またはN型の熱電対を製造することができる。この熱電対製造用構造体の製造方法においては、その性質に反しない限り、先に説明した熱電対およびその製造方法に関連して説明したことが成立する。
この発明によれば、K型またはN型の熱電対の+側導体用素線がNiおよびCrを主とした合金またはNi、CrおよびSiを主とした合金からなる線状の第1金属基材の表面にAl含有合金皮膜および連続膜としてのAl2 3 皮膜を順次形成したものからなり、−側導体用素線がNiおよびAlを主とした合金またはNiおよびSiを主とした合金からなる線状の第2金属基材の表面にAl含有合金皮膜および連続膜としてのAl2 3 皮膜を順次形成したものからなるので、第1金属基材の外周面に形成されたAl2 3 皮膜が第1金属基材に含まれるCrやSiの酸化に対する保護皮膜として働くことにより、+側導体用素線のグリーンロット腐食を防止することができるとともに、第2金属基材の外周面に形成されたAl2 3 皮膜が第2金属基材に含まれるAlやSiの酸化に対する保護皮膜として働くことにより、−側導体用素線の酸化を防止することができ、それによって熱電対の起電力の低下を抑制することができる。
この発明の一実施の形態によるK型またはN型熱電対を示す正面図である。 この発明の一実施の形態によるK型またはN型熱電対の+側導体用素線および−側導体用素線の横断面図である。 この発明の一実施の実施の形態によるK型またはN型熱電対の製造方法を示す横断面図である。 この発明の一実施の形態によるK型またはN型熱電対の製造方法を示す横断面図である。 実施例1の試料の断面構造を示す図面代用写真およびこの断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例2の試料の断面構造を示す図面代用写真およびこの断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例3の試料の断面構造を示す図面代用写真およびこの断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 比較例2の試料の断面構造を示す図面代用写真およびこの断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例1〜3および比較例2の試料の外周面に形成されたAl含有合金皮膜の平均Al含有量に対して熱電対の指示温度の比較例1に対する温度差を示す略線図である。 実施例2および比較例1の熱電対の指示温度の経時変化を示す略線図である。 比較例1の試料を1000℃で1時間腐食した後の試料の断面構造を示す図面代用写真およびこの断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例1の試料を1000℃で1時間腐食した後の試料の断面構造を示す図面代用写真およびこの断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例2の試料を1000℃で1時間腐食した後の試料の断面構造を示す図面代用写真およびこの断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 比較例1の試料を1000℃で144時間腐食した後の試料の断面構造を示す図面代用写真およびこの断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例2の試料を1000℃で144時間腐食した後の試料の断面構造を示す図面代用写真およびこの断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例3の試料を1000℃で144時間腐食した後の試料の断面構造を示す図面代用写真およびこの断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
以下、発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」と言う。)について説明する。
〈実施の形態〉
[K型またはN型熱電対]
図1は一実施の形態によるK型またはN型熱電対を示す。図1に示すように、このK型またはN型熱電対は、+側導体用素線10と−側導体用素線20とが一端で接合されたものからなる。符号30は接合部を示す。
図2Aは+側導体用素線10の横断面図である。図2Aに示すように、+側導体用素線10は、従来のK型またはN型熱電対の+側導体用素線に相当する線状の第1金属基材11の外周面にAl含有合金皮膜12が設けられ、このAl含有合金皮膜12の外周面に保護皮膜であるAl2 3 皮膜13が連続膜として設けられたものである。第1金属基材11は、K型熱電対ではNiおよびCrを主とした合金、N型熱電対ではNi、CrおよびSiを主とした合金からなる。Al含有合金皮膜12は、Alに加えて、第1金属基材11を構成する元素の少なくとも一種を含む。具体的には、例えば、Al含有合金皮膜12は、K型熱電対では、Alに加えてNiおよびCrを含み、N型熱電対では、Alに加えてNi、CrおよびSiを含む。Al含有合金皮膜12と第1金属基材11との界面の近傍のAl含有合金皮膜12のAl濃度は6原子%以下、好適には3原子%以下である。
図2Bは−側導体用素線20の横断面図である。図2Bに示すように、−側導体用素線20は、従来のK型またはN型熱電対の−側導体用素線に相当する線状の第2金属基材21の外周面にAl含有合金皮膜22が設けられ、このAl含有合金皮膜22の外周面に保護皮膜であるAl2 3 皮膜23が連続膜として設けられたものである。第2金属基材21は、K型熱電対ではNiおよびAlを主とした合金、N型熱電対ではNiおよびSiを主とした合金からなる。Al含有合金皮膜22は、Alに加えて、金属基材21を構成する元素の少なくとも一種を含む。具体的には、例えば、Al含有合金皮膜22は、K型熱電対では、Alに加えてNiを含み、N型熱電対では、Alに加えてNiおよびSiを含む。Al含有合金皮膜22と第2金属基材21との界面の近傍のAl含有合金皮膜12のAl濃度は6原子%以下、好適には3原子%以下である。
[K型またはN型熱電対の製造方法]
図3A〜Cおよび図4A〜CはこのK型またはN型熱電対の製造方法を示す。ここで、図3A〜Cは+側導体用素線の製造方法を示し、図4A〜Cは−側導体用素線の製造方法を示す。
図3Aおよび図4Aに示すように、NiおよびCrを主とした合金またはNi、CrおよびSiを主とした合金からなる線状の第1金属基材11と、この第1金属基材11がNiおよびCrを主とした合金からなる場合はNiおよびAlを主とした合金、この第1金属基材11がNi、CrおよびSiを主とした合金からなる場合はNiおよびSiを主とした合金からなる線状の第2金属基材21とが一端で接合されたものを用意する。
次に、図3Bおよび図4Bに示すように、第1金属基材11および第2金属基材21が一端で接合されたものを、Al粉末またはFeAl合金粉末とAl2 3 粉末との混合粉末中に埋没させ、真空または不活性ガス雰囲気において800℃以上1150℃以下の温度で5分以上4時間以下加熱することにより、第1金属基材11の表面にAl含有合金皮膜12を形成するとともに、第2金属基材21の表面にAl含有合金皮膜22を形成する。
次に、図3Cおよび図4Cに示すように、第1金属基材11の表面にAl含有合金皮膜12が形成され、第2金属基材21の表面にAl含有合金皮膜22が形成されたものを大気中または減圧雰囲気において900℃以上1200℃以下の温度で2時間以上24時間以下加熱することによりAl含有合金皮膜12、23の表面にそれぞれAl2 3 皮膜13、24を形成する。この時、Al含有合金皮膜12、23中のAlが酸化されてAl2 3 に変化し、Al2 3 皮膜13、24が形成される。場合によっては、Al含有合金皮膜12、23中に内部酸化物としてAl2 3 が形成されることがある。
以上により、目的とするK型またはN型熱電対が製造される。
この実施の形態によれば、K型またはN型熱電対の+側導体用素線10が、NiおよびCrを主とした合金またはNi、CrおよびSiを主とした合金からなる線状の第1金属基材11の表面にAl含有合金皮膜12および連続膜としてのAl2 3 皮膜13を順次形成したものからなり、−側導体用素線20が、NiおよびAlを主とした合金またはNiおよびSiを主とした合金からなる線状の第2金属基材21の表面にAl含有合金皮膜22および連続膜としてのAl2 3 皮膜23を順次形成したものからなる。このため、第1金属基材11の外周面に形成されたAl2 3 皮膜13が第1金属基材11に含まれるCrの酸化に対する保護皮膜として働くことにより、+側導体用素線10のグリーンロット腐食を防止することができるとともに、第2金属基材21の外周面に形成されたAl2 3 皮膜23が第2金属基材21に含まれるAlやSiの酸化に対する保護皮膜として働くことにより、−側導体用素線20の酸化を防止することができ、それによってK型またはN型熱電対の起電力の低下を抑制することができる。以上により、高性能のK型またはN型熱電対を実現することができる。
以下、実施例に基づいて、より詳細に説明する。
〈皮膜の組織観察と元素分析について〉
(1)蛍光X線装置(日本電子株式会社製エレメントアナライザー)を用いて、皮膜表面の元素分析を行った。なお、本測定では、酸素、窒素、炭素、ホウ素等の軽元素の分析は行っていない。
(2)走査型電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型元素分析装置(EDAX)を用いて、皮膜の断面組織を観察し、各元素の濃度分布を測定した。
一端が接合された金属基材11および金属基材21として、従来のK型熱電対素線であるアルメルとクロメルとにより構成されたものを用いた。非特許文献2によると、アルメルは、重量%で、残Ni、0.1Fe、2.0Al、1.2Si、1.75Mnを含有し、クロメルは、重量%で、残Ni、9.46Cr、0.2Fe、0.4Siを含有する。
〈Al含有合金皮膜の形成〉
一端が接合されたアルメル・クロメル素線をAl粉末またはFeAl粉末とAl2 3 粉末との混合粉末中に埋没させた後、真空またはArガス雰囲気で加熱した。加熱は、温度は900℃〜1100℃、時間は15分〜60分とした。混合粉末中で加熱して皮膜を形成したアルメル・クロメル素線の重量変化を測定し、素線の表面積当たりのAl重量増加を算出した。続いて、素線を素線に垂直に切断した後、樹脂埋めし、断面を研磨・琢磨を経て鏡面とした。この試験片をSEM−EDX装置を用いて、断面組織観察および各元素の濃度分布測定を行った。高温腐食の程度は、試験片の重量変化と高温腐食試験後の金属基材と保護膜を垂直に切断して、組織観察と各元素の濃度分布から評価した。
〈Al2 3 皮膜の形成〉
上記のAl含有合金皮膜を形成する工程に続いて、減圧雰囲気で加熱することによりAl2 3 皮膜を形成した。
〈グリ−ンロット腐食模擬環境での高温腐食試験について〉
本発明者は、このグリーンロット腐食は、H2 Oを含む高温雰囲気でCrが金属基材の内部で酸化物に変化する、いわゆるCrの内部酸化で合金中のCr濃度が低下するためであることを明らかにした。この腐食環境を模擬した腐食試験は以下のようにして行った。すなわち、透明石英管の下部より、水蒸気(空気の混入あり) を流し、水蒸気の上昇気流中に素線を設置し、種々の時間経過後に取り出して観察に供した。温度1000℃では最長144時間の高温腐食試験を行った。比較のため、コーティングなしの従来のK型熱電対素線(アルメル・クロメル素線)についても高温腐食試験を行った。高温腐食の程度は、試験片の重量変化と高温腐食試験後の金属基材と保護膜を垂直に切断して、組織観察と各元素の濃度分布から評価した。
アルメル・クロメル素線を用意し、種々の割合のAl粉末またはFeAl粉末とAl2 3 粉末との混合粉末中に埋没させ、900〜1000℃で、15〜60分、真空(油回転ポンプによる排気環境) 中で加熱した。表1に、実施例1〜3および比較例2のAl含有合金皮膜の形成条件をまとめて示す。また、表2に、得られた結果をまとめて示す。
実施例1〜3および比較例2でAl含有合金皮膜を形成したアルメル・クロメル素線の断面組織および各元素の濃度分布を図5〜図8に示す。ここで、図5Bは図5Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布、図6Bは図6Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布、図7Bは図7Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布、図8Bは図8Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布を示す。図5〜図8および表2から分かるように、表面Al濃度が約45〜48原子%で、厚さが7〜15μmのAl含有合金皮膜が形成された。Al蒸気源としてAl粉末を使用した場合(実施例1および比較例2)には、得られたAl含有合金皮膜は緻密であるのに対し、FeAl粉末を使用した場合(実施例2、3)には、Al含有合金皮膜内にボイド等の存在が認められた。
図5〜図8に示す、Al含有合金皮膜を形成したアルメル・クロメル素線の温度を、温度校正した比較例1の従来のK型熱電対(アルメル・クロメル素線、線径3.2mm)の1000℃を基準として、その温度差として測定した。種々の条件で形成した実施例1〜3および比較例2のAl含有合金皮膜を有するK型熱電対の起電力を測定した結果、表2に示すように、いずれにおいても温度低下が観察され、温度低下の程度はAl拡散の処理条件(温度、時間、Al蒸気源粉末の組成) 、皮膜の組成と厚さ、Al拡散量、さらには基材素線の径、等に複雑に依存して変化することが明らかとなった。Al含有合金皮膜の形成による温度低下について、これらの要因との相関性を種々検討した。その結果は、単位長さ当たりの基材素線において、Al含有合金皮膜に含まれているAl量(Al拡散処理時の重量増加から求められる) を素線の重量(=体積と密度とから求まる) で除した値を平均Al含有量と定義することによって、整理できることが明らかとなった。上記温度差(基準温度1000℃) および平均Al含有量を図9に示す。図9より、Al含有合金皮膜に含まれる平均Al含有量が大きくなるにつれて、温度低下が大きくなることが分かる。非特許文献1によるとK型熱電対の許容温度差は±0.75%であり、1000℃では±7.5℃である。従って、Al含有合金皮膜の形成による許容温度差は±7.5℃以内であり、図9に示す結果から、許容される平均Al含有量は3.1重量%であることが分かる。
〈模擬腐食雰囲気での高温腐食挙動〉
実施例2でAl含有合金皮膜を形成したアルメル・クロメル素線の1000℃、水蒸気含有雰囲気での温度(起電力) の経時変化を最長144時間に亘って測定した。その結果、図10に一例を示すように、実施例2では温度変化は観察されなかった。一方、比較のため、図10に、比較例1の従来のK型熱電対素線の温度変化を示す。図10より、従来のK型熱電対素線では腐食の初期から温度低下が生じていることが分かる。
〈模擬腐食雰囲気での温度の時間変化〉
比較例1のアルメル・クロメル素線と実施例1、2でAl含有合金皮膜を形成したアルメル・クロメル素線の水蒸気含有雰囲気での高温腐食挙動を調査した。図11は、比較例1の熱電対素線、図12および図13は実施例1、2でAl含有合金皮膜を形成したアルメル・クロメル素線を1000℃、1時間高温腐食した後の断面組織および各元素の濃度分布を示す。ここで、図11Bは図11Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布、図12Bは図12Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布、図13Bは図13Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布を示す。表3〜5はそれぞれ図11B、図12Bおよび図13Bに示した各元素の濃度をまとめた組成表である。図12および図13より、Al含有合金皮膜を形成したアルメル・クロメル素線では、表面にAl2 3 の連続膜が形成し、皮膜層内ではAl濃度の低下が観察され、Al含有合金皮膜と金属基材との界面の近傍のAl含有合金皮膜のAl濃度は5.8原子%となっているが、起電力の低下は見られない。これに対して、図11に示すように、比較例1のアルメル・クロメル素線は、Cr2 3 を含む内部酸化層が形成されており、起電力低下が観察される。
図14は比較例1のアルメル・クロメル素線を、図15および図16はそれぞれ実施例2、3で形成したAl含有合金皮膜を有するアルメル・クロメル素線を、1000℃、144時間、高温腐食した後の断面組織および各元素の濃度分布を示す。ここで、図14Bは図14Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布、図15Bは図15Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布、図16Bは図16Aに示す写真の分析線LG5に沿っての濃度分布を示す。表6〜8はそれぞれ図14B、図15Bおよび図16Bに示した各元素の濃度をまとめた組成表である。図15より、外周面にAl含有合金皮膜を形成した実施例2のアルメル・クロメル素線では、表面にAl2 3 の連続膜が形成されており、Al含有合金皮膜層内では、Al濃度の低下が観察され、Al含有合金皮膜と金属基材との界面の近傍のAl含有合金皮膜のAl濃度は1.8原子%となっており、温度変化は殆ど観察されなかった。また、図16より、外周面にAl含有合金皮膜を形成した実施例3のアルメル・クロメル素線では、表面にAl2 3 の連続膜が形成されており、さらに、Al含有合金皮膜の内部にもAl2 3 が表面に平行に形成されているが、Al含有合金皮膜のCr濃度はほぼ一定値(10原子%程度)を維持しており、この場合でも温度低下は観察されない。すなわち、このAl2 3 内部酸化物は、図7に示すように、Al含有合金皮膜層内にボイド等が存在しており、このボイド等が選択的に酸化されてAl2 3 が形成されたものであるが、この内部Al2 3 は起電力には影響を与えていないことが明らかとなった。一方、図14に示すように、比較例1のアルメル・クロメル素線では、Cr2 3 を含む内部酸化層がより厚く形成されており、温度低下も顕著である。
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
10…+側導体用素線、11…第1金属基材、12…Al含有合金皮膜、13…Al2 3 皮膜、20…−側導体用素線、21…第2金属基材、22…Al含有合金皮膜、23…Al2 3 皮膜、30…接合部

Claims (11)

  1. 一端で互いに接合された+側導体用素線と−側導体用素線とからなるK型またはN型の熱電対であって、
    上記+側導体用素線が、
    NiおよびCrを主とした合金またはNi、CrおよびSiを主とした合金からなる線状の第1金属基材と、
    上記第1金属基材の外周面に形成されたAl含有合金皮膜と、
    上記Al含有合金皮膜の表面に連続的に形成されたAl2 3 皮膜と、
    を有し、
    上記Al含有合金皮膜と上記第1金属基材との界面の近傍の上記Al含有合金皮膜のAl濃度が6原子%以下であり、
    上記−側導体用素線が、
    上記第1金属基材がNiおよびCrを主とした合金からなる場合はNiおよびAlを主とした合金からなり、上記第1金属基材がNi、CrおよびSiを主とした合金からなる場合はNiおよびSiを主とした合金からなる線状の第2金属基材と、
    上記第2金属基材の外周面に形成されたAl含有合金皮膜と、
    上記Al含有合金皮膜の表面に連続的に形成されたAl2 3 皮膜と、
    を有することを特徴とする熱電対。
  2. 上記第1金属基材の外周面に形成された上記Al含有合金皮膜は上記第1金属基材を構成する元素のうちの少なくとも一種を含み、上記第2金属基材の外周面に形成された上記Al含有合金皮膜は上記第2金属基材を構成する元素のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1記載の熱電対。
  3. 上記熱電対が挿入されたステンレス鋼製保護管をさらに有し、このステンレス鋼製保護管と上記熱電対との間の空間がマグネシア粉末により充填されていることを特徴とする請求項1または2記載の熱電対。
  4. K型またはN型の熱電対の製造方法であって、
    NiおよびCrを主とした合金またはNi、CrおよびSiを主とした合金からなる線状の第1金属基材と、この第1金属基材がNiおよびCrを主とした合金からなる場合はNiおよびAlを主とした合金からなり、この第1金属基材がNi、CrおよびSiを主とした合金からなる場合はNiおよびSiを主とした合金からなる線状の第2金属基材とが一端で互いに接合されたものをAl粉末またはFeAl合金粉末とAl2 3 粉末との混合粉末に埋没させ、真空または不活性ガス雰囲気において800℃以上1150℃以下の温度で5分以上4時間加熱することにより上記第1金属基材および上記第2金属基材の外周面にAl含有合金皮膜を形成する工程と、
    上記Al含有合金皮膜を形成した上記第1金属基材および上記第2金属基材を大気中または減圧雰囲気において900℃以上1200℃以下の温度で2時間以上24時間以下加熱することにより上記Al含有合金皮膜の表面にAl2 3 皮膜を形成する工程と、
    を有することを特徴とする熱電対の製造方法。
  5. 上記第1金属基材の外周面に形成された上記Al含有合金皮膜は表面のAl濃度が25原子%以上50原子%以下、厚さが5μm以上15μm以下、上記Al含有合金皮膜の重量と上記第1金属基材の重量との和に対する上記Al含有合金皮膜に含まれるAlの重量の比が3.1重量%以下であることを特徴とする請求項4記載の熱電対の製造方法。
  6. 上記第1金属基材の外周面に形成された上記Al含有合金皮膜は表面のAl濃度が45原子%以上48原子%以下、厚さが7μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項6記載の熱電対の製造方法。
  7. 上記Al粉末または上記FeAl合金粉末の平均粒径は0.5μm以上5μm以下、上記Al2 3 粉末の平均粒径は0.5μm以上3μm以下であることを特徴とする請求項5または6記載の熱電対の製造方法。
  8. 上記混合粉末中の上記Al2 3 粉末に対する上記Al粉末または上記FeAl合金粉末の重量比は0.05以上0.3以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項記載の熱電対の製造方法。
  9. K型またはN型の熱電対の製造方法であって、
    NiおよびCrを主とした合金またはNi、CrおよびSiを主とした合金からなる線状の第1金属基材と、この第1金属基材がNiおよびCrを主とした合金からなる場合はNiおよびAlを主とした合金からなり、この第1金属基材がNi、CrおよびSiを主とした合金からなる場合はNiおよびSiを主とした合金からなる線状の第2金属基材とが一端で互いに接合されたものをAl粉末またはFeAl合金粉末とAl2 3 粉末との混合粉末に埋没させ、真空または不活性ガス雰囲気において800℃以上1150℃以下の温度で5分以上4時間加熱することにより上記第1金属基材および上記第2金属基材の外周面にAl含有合金皮膜を形成する工程と、
    上記Al含有合金皮膜を形成した上記第1金属基材および上記第2金属基材をステンレス鋼製保護管に挿入し、このステンレス鋼製保護管と上記Al含有合金皮膜を形成した上記第1金属基材および上記第2金属基材との間の空間をマグネシア粉末により充填する工程と、
    上記ステンレス鋼製保護管を大気中または減圧雰囲気において塑性加工が可能な温度に加熱した状態で上記ステンレス鋼製保護管を塑性加工することにより、上記ステンレス鋼製保護管の内部に存在する隙間を減少させるとともに、上記Al含有合金皮膜の表面にAl2 3 皮膜を形成する工程と、
    を有することを特徴とする熱電対の製造方法。
  10. K型またはN型の熱電対製造用構造体であって、
    NiおよびCrを主とした合金またはNi、CrおよびSiを主とした合金からなる線状の第1金属基材と、この第1金属基材がNiおよびCrを主とした合金からなる場合はNiおよびAlを主とした合金からなり、この第1金属基材がNi、CrおよびSiを主とした合金からなる場合はNiおよびSiを主とした合金からなる線状の第2金属基材とが一端で互いに接合されたものと、
    上記第1金属基材および上記第2金属基材の外周面に形成されたAl含有合金皮膜と、
    を有し、
    上記第1金属基材の外周面に形成された上記Al含有合金皮膜は表面のAl濃度が25原子%以上50原子%以下、厚さが5μm以上15μm以下、上記Al含有合金皮膜の重量と上記第1金属基材の重量との和に対する上記Al含有合金皮膜に含まれるAlの重量の比が3.1重量%以下であることを特徴とする熱電対製造用構造体。
  11. K型またはN型の熱電対製造用構造体の製造方法であって、
    NiおよびCrを主とした合金またはNi、CrおよびSiを主とした合金からなる線状の第1金属基材と、この第1金属基材がNiおよびCrを主とした合金からなる場合はNiおよびAlを主とした合金からなり、この第1金属基材がNi、CrおよびSiを主とした合金からなる場合はNiおよびSiを主とした合金からなる線状の第2金属基材とが一端で互いに接合されたものをAl粉末またはFeAl合金粉末とAl2 3 粉末との混合粉末に埋没させ、真空または不活性ガス雰囲気において800℃以上1150℃以下の温度で5分以上4時間加熱することにより上記第1金属基材および上記第2金属基材の外周面にAl含有合金皮膜を形成する工程を有することを特徴とする熱電対製造用構造体の製造方法。
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