JP7147985B2 - 銅複合板材、銅複合板材を用いたベーパーチャンバーおよびベーパーチャンバーの製造方法 - Google Patents

銅複合板材、銅複合板材を用いたベーパーチャンバーおよびベーパーチャンバーの製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、銅複合板材およびそれを用いたベーパーチャンバーの製造方法に関する。
近年、ノート型パソコン、モバイル用ノートパソコン(モバイルパソコン)、タブレット端末、ファブレット端末およびスマートフォン(携帯電話端末)などの携帯機器では、小型化、薄型化および軽量化に加え、高機能化および高性能化が図られている。こうした携帯機器に搭載されるCPUは、その動作速度の高速化および高密度化が急速に進展し、その発熱量が増大している。携帯機器内での温度上昇が過度になると、CPUの不具合(誤作動、熱暴走など)の原因になるため、携帯機器内に搭載されるCPUおよびその他の半導体装置からの放熱効果の向上が急務になっている。
携帯機器の小型化、薄型化および軽量化に有効と考えられる放熱手段として、平板状の筐体の内部に冷媒が減圧封止されたベーパーチャンバーが検討されている。ベーパーチャンバーは、放熱効果の高い平板状のヒートパイプといえ、内部に封止された冷媒の蒸発と凝縮により熱を伝導することができる熱拡散部品である。なお、ベーパーチャンバーの冷媒には、安全、低コスト、取扱い容易などの理由で、専ら純水が採用されている。
例えば、特開2017-172871号公報には、平板状の上板部材と平板状の下板部材とを接合して筐体を構成した、ベーパーチャンバーが開示されている。このベーパーチャンバーは、筐体となる上板部材および下板部材が析出硬化型銅合金(Cu-Ni-Si系、Cu-Fe-P系、Cu-Fe-Ni-P系、Cu-Cr系およびCu-Cr-Zr系)で構成されているため、650℃以上に加熱する接合により低下した筐体(上板部材および下板部材)の機械的強さおよび熱伝導率が時効処理(析出硬化処理)により向上される。なお、上記したCu-Ni-Si系の銅合金は、コルソン合金と呼ばれる。このコルソン合金によって構成された部材は、日本銅学会誌「銅と銅合金」第57巻1号2018、論文「銅被覆銅合金板の拡散接合性と機械的特性」、橋本大輔(株式会社神戸製鋼所)著に開示されるように、銅めっき処理を行って表面を被覆することが可能である。
例えば、特開2007-315745号公報には、平板状の上板部材と、冷媒の流路となる微細孔を備える平板状の中板部材と、平板状の下板部材とを接合して筐体を構成した、ベーパーチャンバーが開示されている。このベーパーチャンバーは、上板部材、中板部材および下板部材が銅(純銅)で構成されているため、高い放熱効果(熱伝導性)が期待できる。また、このベーパーチャンバーは、冷媒と接触する上板部材および下板部材の内側に溝状の凹部が設けられ、冷媒との接触面積が増大されているため、放熱効果(熱伝導性)がより向上される。
特開2017-172871号公報 特開2007-315745号公報
日本銅学会誌「銅と銅合金」第57巻1号2018、論文「銅被覆銅合金板の拡散接合性と機械的特性」、橋本大輔(株式会社神戸製鋼所)著
最近、ベーパーチャンバーの筐体を構成する際に、筐体内部の汚染防止、接合強度向上および冷媒の減圧封止の信頼性向上などの観点で、銀ろうなどの接合剤を用いる接合手段に替えて、被接合面に荷重を加えた状態で加熱して生じさせた拡散現象を利用して被接合面同士を接合する手段、すなわち拡散接合が適用されつつある。なお、被接合面の材質にもよるが、一般的に、拡散接合には600℃以上1000℃以下の加熱保持が必要とされている。ところが、筐体を構成する部材が銅(純銅)であると鈍されて筐体の機械的強さが低下するし、部材の厚さを大きくすると上記した携帯機器の薄型化および軽量化を阻むことになる。
材質の観点で、拡散接合後の筐体の機械的強さを確保するには、特許文献1に開示されるコルソン合金(Cu-Ni-Si系)またはCu-Co-Si系などの析出硬化型銅合金の適用が考えられる。筐体を構成する部材が析出硬化型銅合金であると、拡散接合の加熱保持を利用して時効処理(析出硬化処理)が可能である。なお、ベーパーチャンバーの筐体の内側(内面)は、冷媒が接触しても特段の反応が起こらないこと、例えば、ガスが発生しないこと、腐食が進行しないこと、が求められている。ところが、上記したコルソン合金などに含まれるSiは、冷媒が純水または水溶液であると反応し、二酸化珪素(SiO2)および水素(H2)を生成する可能性がある。また、拡散接合時に酸素と接触する接合界面にSiがあると反応し、二酸化珪素(SiO2)を含む脆い組織(SiO2相)を形成する可能性がある。
Siと水との反応防止およびSiと酸素との反応防止の観点で、非特許文献1に開示される銅めっき処理を適用し、上記したコルソン合金などで構成された部材の表面を被覆してSiを露出させないことが考えられる。ところが、一般的な銅めっき処理で形成された銅めっき膜は、ピンホールまたは部分剥離が発生することがあるため、下地(コルソン合金)が露出する可能性がある。また、量産に見合う電流密度で形成された銅めっき膜の表面は一般的な仕上げ圧延による表面粗さよりも粗くなるため、拡散接合時に被接合面に加える荷重を増大せねばならず、生産性が低下する。銅めっき膜の表面粗さはSなどの添加剤を加えることにより改善されるが、Sなどの添加元素が冷媒と反応する可能性がある。また、上記した上板部材および下板部材の内側に溝状の凹部を設ける場合、エッチング処理が行われる可能性がある。ところが、薄い銅めっき膜ではエッチングにより下地(コルソン合金)が露出する可能性があるし、厚い銅めっき膜を形成するとめっき時間が増大するので生産性が低下する。
この発明の目的の1つは、ベーパーチャンバーの構成部材(筐体など)として好適な拡散接合性、耐食性および0.2%耐力を有する銅系板材を提供し、および、この銅系板材を用いたベーパーチャンバーの製造方法を提供することである。
本発明者は、拡散接合後に機械的強さが確保される銅系板材と、ベーパーチャンバーに用いられる溶媒と反応し難い銅系板材とを組み合せることによって、上記した課題が解決できることを見出し、この発明に想到することができた。
この発明の第1の局面による銅複合板材は、第1銅層の一方面に第2銅層が圧接されて成る銅複合板材であって、前記第1銅層は、析出強化型銅合金によって構成され、前記第2銅層は、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されており、前記第1銅層の厚さをT1とし、前記第2銅層の厚さをT2とするとき、T2/(T1+T2)×100≦30%かつT2>1μmを満たす、銅複合板材である。
この発明の第1の局面による銅複合板材では、前記第2銅層は、表面粗さRZJISが0.8μm以下で、尖度Rkuが4以下である、ことが好ましい。
また、この発明の第2の局面による銅複合板材は、第1銅層の一方面に第2銅層が圧接され、前記第1銅層の他方面に第3銅層が圧接されて成る銅複合板材であって、前記第1銅層は、析出強化型銅合金によって構成され、前記第2銅層および前記第3銅層は、いずれも、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている、銅複合板材である。
この発明の第2の局面による銅複合板材では、前記第1銅層の厚さをT1とし、前記第2銅層の厚さをT2とし、前記第3銅層の厚さをT3とするとき、(T2+T3)/(T1+T2+T3)×100≦30%かつT2>1μmおよびT3>1μmを満たすことが好ましい。また、前記第2銅層および前記第3銅層は、表面粗さRZJISが0.8μm以下で、尖度Rkuが4以下であることが好ましい。
この発明の第1の局面および第2の局面による銅複合板材では、前記第1銅層を構成する銅合金は、0.8質量%以上5.0質量%以下のNi、0.2質量%以上1.5質量%以下のSi、残部Cuおよび不可避的不純物からなる銅合金であってよい。また、この発明の第1の局面および第2の局面による銅複合板材では、前記第1銅層を構成する銅合金は、さらに、2.0質量%以下の範囲で、Co、Sn、Zn、Mg、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn、BおよびAgのうちの1種または1種以上を含むことができる。
この発明の第3の局面によるベーパーチャンバーは、第1の局面または第2の局面の銅複合板材を用いて形成された上板部材および下板部材を備え、上板部材の第2銅層と下板部材の第2銅層とによって囲まれた空間を形成するように、上板部材と下板部材とが拡散接合されて構成されている。
この発明の第1の局面および第2の局面による銅複合板材のいずれか一方または両方を用いて、ベーパーチャンバーを製造することができる。
すなわち、この発明の第1の局面によるベーパーチャンバーの製造方法は、この発明の上記した第1の局面および第2の局面による銅複合板材のいずれか一方または両方を用いて形成された、上板部材および下板部材を備え、前記上板部材と前記下板部材とが拡散接合されて構成されたベーパーチャンバーの製造方法であって、(1)第1熱処理、(2)第2熱処理および(3)第3熱処理のうちのいずれか1つの熱処理を行うことによって、前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層とを、拡散接合するとともに、前記上板部材および前記下板部材の0.2%耐力を240MPa以上にする工程を備える、ベーパーチャンバーの製造方法である。
(1)第1熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、毎分25℃以下の冷却速度で100℃まで冷却し、次いで、常温まで冷却するステップを含む。
(2)第2熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、100℃以下に冷却し、次いで、400℃以上550℃以下に加熱して保持した後に、常温まで冷却するステップを含む。
(3)第3熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、400℃以上550℃以下まで冷却して保持し、次いで、常温まで冷却するステップを含む。
また、上板部材を構成する銅複合板材の第2銅層と、下板部材を構成する銅複合板材の第2銅層とを、拡散接合する工程は、上板部材を構成する銅複合板材の第2銅層と、下板部材を構成する銅複合板材の第2銅層との間に空間を形成する工程を含む。
この発明の第2の局面によるベーパーチャンバーの製造方法は、この発明の上記した第1の局面および第2の局面による銅複合板材のいずれか一方または両方を用いて形成された、上板部材および下板部材と、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている、中板部材と、を備え、前記上板部材と前記中板部材とが拡散接合され、かつ、前記中板部材と前記下板部材とが拡散接合されて構成されたベーパーチャンバーの製造方法であって、(1)第1熱処理、(2)第2熱処理および(3)第3熱処理のうちのいずれか1つの熱処理を行うことによって、前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と前記中板部材とを拡散接合し、かつ、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と前記中板部材とを拡散接合するとともに、前記上板部材および前記下板部材の0.2%耐力を240MPa以上にする工程を備える、ベーパーチャンバーの製造方法である。
(1)第1熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、毎分25℃以下の冷却速度で100℃まで冷却し、次いで、常温まで冷却するステップを含む。
(2)第2熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、100℃以下に冷却し、次いで、400℃以上550℃以下に加熱して保持した後に、常温まで冷却するステップを含む。
(3)第3熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、400℃以上550℃以下まで冷却して保持し、次いで、常温まで冷却するステップを含む。
また、上板部材を構成する銅複合板材の第2銅層と、下板部材を構成する銅複合板材の第2銅層とを、拡散接合する工程は、上板部材を構成する銅複合板材の第2銅層と、下板部材を構成する銅複合板材の第2銅層との間に空間を形成する工程を含む。
上記した銅複合板材に係る発明によれば、ベーパーチャンバーの構成部材(筐体など)として好適な拡散接合性、耐食性および0.2%耐力を有する銅複合板材を提供することができる。また、上記したベーパーチャンバーの製造方法に係る発明によれば、銅系の筐体として好適な機械的強さを有し、溶媒(特に純水)と反応し難い好適な耐食性を有する、ベーパーチャンバーを製造することができる。
この発明の第1の局面による銅複合板材の一実施形態(第1実施形態)について、その層構成を模式的に示す図である。 この発明の第2の局面による銅複合板材の一実施形態(第2実施形態)について、その層構成を模式的に示す図である。 この発明の銅複合板材(第1実施形態)を用いた、ベーパーチャンバーの一実施形態(第1構成例)について、その要部の断面構成を模式的に示す図である。 この発明の銅複合板材(第2実施形態)を用いた、ベーパーチャンバーの一実施形態(第2構成例)について、その要部の断面構成を模式的に示す図である。 この発明の銅複合板材(第1実施形態)を用いた、ベーパーチャンバーの一実施形態(第3構成例)について、その要部の断面構成を模式的に示す図である。 この発明の銅複合板材(第2実施形態)を用いた、ベーパーチャンバーの一実施形態(第4構成例)について、その要部の断面構成を模式的に示す図である。 この発明の銅複合板材(第1実施形態および第2実施形態)を用いた、ベーパーチャンバーの一実施形態(第5構成例)について、その要部の断面構成を模式的に示す図である。 この発明の銅複合板材(第2実施形態)を用いた、ベーパーチャンバーの一実施形態(第6構成例)について、その要部の断面構成を模式的に示す図である。
以下、この発明に係る銅複合板材の実施形態について、適宜図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
この発明の第1の局面による銅複合板材は、第1銅層の一方面に第2銅層が圧接されて成る銅複合板材であって、第1銅層は、析出強化型銅合金によって構成され、第2銅層は、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている、銅複合板材である。なお、この発明の第1の局面による銅複合板材において、第1銅層を構成する銅合金は、例えば、0.8質量%以上5.0質量%以下のNi、0.2質量%以上1.5質量%以下のSi、残部Cuおよび不可避的不純物からなる銅合金であってよい。上記した構成を有する銅複合板材を、以下、第1実施形態という。
図1は、この発明の第1の局面による銅複合板材の第1実施形態について、その層構成を模式的に示すものである。
図1に示す銅複合板材10は、第1銅層11の一方面に第2銅層12が圧接されて成る銅複合板材である。図1に示す銅複合板材10において、第1銅層11は、析出強化型銅合金によって構成されている。この析出強化型銅合金は、例えば、0.8質量%以上5.0質量%以下のNi(ニッケル)、0.2質量%以上1.5質量%以下のSi(珪素)、残部Cu(銅)および不可避的不純物からなる銅合金であってよい。上記した析出強化型銅合金は、純銅よりも引張強さ、0.2%耐力および伸びなどの機械的特性が高く、曲げ加工性、応力緩和特性および熱伝導率も確保されている。この組成から成る銅合金には、一般的にコルソン合金と呼ばれる銅合金が含まれる。この組成から成る銅合金により構成された第1銅層11は、後述する第1熱処理、第2熱処理または第3熱処理により析出硬化する。こうした銅合金によって構成された第1銅層11を備える銅複合板材10を用いて、例えばベーパーチャンバーを製造することができる。その場合、ベーパーチャンバーの筐体を形成する際の拡散接合で行われる加熱保持により析出硬化が生じて第1銅層11の機械的強さが向上されるため、良好な機械的強さを有する筐体を形成することができる。
図1に示す第1銅層11を構成する銅合金は、析出強化型銅合金である。第1銅層11を構成する銅合金は、例えば、0.8質量%以上5.0質量%以下のNi、0.2質量%以上1.5質量%以下のSi、残部Cuおよび不可避的不純物からなる銅合金であってよい。この銅合金において、Niは0.8質量%以上5.0質量%以下とし、Siは0.2質量%以上1.5質量%以下とする。この銅合金において、NiおよびSiは、析出硬化作用により機械的強さを向上させるための重要な添加元素である。なお、Ni含有比が過小(0.8質量%未満)またはSi含有比が過小(0.2質量%未満)であると、析出物(Ni2Si)の生成が不十分になり、銅合金の機械的強さが向上され難い。また、Ni含有比が過大(5.0質量%超)またはSi含有比が過大(1.5質量%超)であると、析出物(Ni2Si)の生成が過剰になって銅合金が脆くなり、圧延などによる板材の製造が困難になる。
また、上記した銅合金において、NiおよびSiを除く残部は、Cuおよび不可避的不純物によって構成されている。Cuは第1銅層11を構成する銅合金の母相を構成する基本元素である。Cuは高い熱伝導率を有する第1銅層11を構成するために特に重要になる元素である。熱伝導率および曲げ加工性の観点では、Cu含有比は可能な限り大きいことが好ましい。
また、上記した銅合金において、Ni、SiおよびCuを除く残部は不可避的不純物である。不可避的不純物の含有比が過大(例えば0.1質量%超)であると、第1銅層11の加工性が低下するため、不可避的不純物の含有比は可能な限り小さくする。不可避的不純物の含有比は、例えば、0.1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.05質量%以下である。なお、不可避的不純物(元素)としては、例えば、S、Pbなどが考えられる。
また、上記した銅合金において、Cuに対して、NiおよびSi以外の添加元素を、さらに、2.0質量%以下の範囲で含むことができる。具体的には、上記した銅合金には、Co(コバルト)、Sn(錫)、Zn(亜鉛)、Mg(マグネシウム)、Fe(鉄)、Ti(チタン)、Zr(ジルコン)、Cr(クロム)、Al(アルミニウム)、P(リン)、Mn(マンガン)、B(硼素)、およびAg(銀)のうちの1種または1種以上を、2.0質量%以下の範囲で含むことができる。上記した銅合金において、先に挙げたCoからAgまでのうちの1種または1種以上を、2.0質量%以下の範囲で含むことにより、さらなる機械的強さの向上や曲げ加工性の改善を図ることができる。
図1に示す銅複合板材10において、第2銅層12は、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている。つまり、純銅または非析出強化型銅合金によって構成されている第2銅層12は、たとえSiを含んでいたとしても、Si含有比は0.1質量%未満である。Si含有比が0.1質量%未満である第2銅層12の露出表面は、耐食性などの電気化学的な性質がより安定な純銅と実質的に同等の性質を有すると考えられる。こうした純銅または非析出強化型銅合金によって構成されている第2銅層12を備える銅複合板材を用いて、例えばベーパーチャンバーを製造した場合、ベーパーチャンバーの筐体の内側(内面)にSi含有比が0.1質量%未満である第2銅層12を用いることにより、筐体の内部に封止される純水または水溶液からなる冷媒が接触しても特段の反応が起こり難くなるため、反応性ガスが発生し難く、腐食が進行し難い、高い信頼性を有する筐体を形成することができる。なお、ベーパーチャンバーの筐体の内側(内面)にSi含有比が0.1質量%以上である銅層を用いると、ベーパーチャンバーの筐体を形成する際の拡散接合で行われる加熱保持により銅層の露出表面に析出物が形成されるおそれがある。筐体の内側(内面)に析出物が存在していた場合、その析出物を起点とする腐食が進行し、筐体の機械的強さの低下、ベーパーチャンバーの寿命劣化などのおそれがある。
第2銅層12を純銅によって構成する場合、純銅としては、UNS規定NoのC10200(無酸素銅)、C10300(低リン脱酸銅)およびC11000(タフピッチ銅)などを用いることができる。また、第2銅層12をSiが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成する場合、非析出強化型銅合金としては、UNS規定Noで表される、C15150(Cu-Zr系)、C14415(Cu-Sn系)、C10700(Cu-Ag系)、C18665(Cu-Mg系)、C70200(Cu-Ni系)およびC40410(Cu-Zn系)などを用いることができる。なお、こうした純銅または非析出強化型銅合金によって構成されている第2銅層12を備える銅複合板材を用いてベーパーチャンバーを製造した場合、ベーパーチャンバーの筐体を形成する際の拡散接合で行われる加熱保持によっても第2銅層12の表面に析出物が生成されない。
この発明の第1の局面による銅複合板材では、第1銅層の厚さをT1とし、第2銅層の厚さをT2とするとき、T2/(T1+T2)×100≦30%かつT2>1μmを満たすことが好ましい。図1に示す銅複合板材10は、全体の厚さがTであり、第1銅層11の厚さがT1であり、第2銅層12の厚さがT2である。銅複合板材10は、第1銅層11および第2銅層12が、T2/(T1+T2)×100≦30%かつT2>1μm(好ましくはT2≧2μm)の関係を満たす。なお、銅複合板材10の全体の厚さTは、T1+T2と等しい。こうした構成を有する第2銅層12を備える銅複合板材10は、全体の厚さTに占める第2銅層12の厚さT2が小さくなり、全体の厚さTに占める第1銅層11の厚さT1が大きくなる。
また、銅複合板材10を用いて、例えばベーパーチャンバーを製造する場合、上記したように、ベーパーチャンバーの筐体を形成する際の拡散接合で行われる加熱保持によって、析出硬化を生じない第2銅層12の機械的強さよりも、析出硬化を生じる第1銅層11の機械的強さが大きくなる。例えば、ベーパーチャンバーを製造する場合、機械的強さが大きくなる第1銅層11の占める割合が大きい銅複合板材10を用いてベーパーチャンバーの筐体を形成することにより、良好な機械的強さを有する筐体を形成することができる。また、ベーパーチャンバーの筐体の0.2%耐力は、240MPa以上であることが好ましく、300MPa以上がより好ましいと考えられる。この観点から、ベーパーチャンバーの筐体を構成する銅複合板材10において、第1銅層11および第2銅層12は、T2/(T1+T2)×100≦30%を満足するように構成することが好ましい。このように構成された銅複合板材10は、その0.2%耐力を240MPa以上にすることができる。
また、例えばベーパーチャンバーを製造する場合、エッチングによってベーパーチャンバーの筐体の内側(内面)に凹凸加工を行うことがある。上記した厚み構成を有する銅複合板材10を用いて、T2>1μm(好ましくはT2≧2μm)の関係を満たす第2銅層12をベーパーチャンバーの筐体の内側(内面)に配置することにより、過度なエッチングにより第2銅層12が除去されて第1銅層11が露出するような不具合を起こり難くすることができる。なお、第2銅層12の表面に対してエッチングを行う場合、そのエッチングによる除去量(最大深さ)をD(単位μm)とするとき、第2銅層12の厚さT2は、T2≧D+1μmを満足することが好ましく、T2≧D+2μmを満足することがより好ましい。
この発明の第1の局面による銅複合板材では、第2銅層は、表面粗さRZJISが0.8μm以下で、尖度Rkuが4以下であることが好ましい。図1に示す銅複合板材1の第2銅層12は、表面粗さ(十点平均粗さ)RZJISが0.8μm以下であり、尖度Rkuが4以下である。なお、表面粗さRZJISおよび尖度Rkuは、JIS B0601:2013(またはJIS B0601:2001)に準拠する。図1に示す銅複合板材1を用いて、例えばベーパーチャンバーを製造する場合、表面粗さRZJISが0.8μm以下であり、尖度Rkuが4以下である第2銅層12を筐体の内側(内面)に配置して加熱保持による拡散接合を行うことにより、第2銅層12と被接合部材との接触状態が面接触に近付いて密着度が向上し、拡散接合による接合強度が向上されるため、良好な機械的強さを有する筐体(接合部材)を形成することができる。
上記した第1実施形態において、銅複合板材10の厚さTは、例えば0.01mm以上1mm以下であってよく、好ましくは0.02mm以上0.3mm以下、より好ましくは0.02mm以上0.1mm以下である。また、第1銅層11の厚さT1は、例えば0.007mm以上0.999mm以下であってよく、好ましくは0.014mm以上0.299mm以下、より好ましくは0.014mm以上0.099mm以下である。なお、上記した厚さTと厚さT1との差分は、第2銅層12の厚さT2に対応する。また、第2銅層12の厚さT2は、上記した銅複合板材10の厚さTおよび第1銅層11の厚さT1との関係を考慮して設定することが好ましい。
<第2実施形態>
この発明の第2の局面による銅複合板材は、第1銅層の一方面に第2銅層が圧接され、第1銅層の他方面に第3銅層が圧接されて成る銅複合板材であって、第1銅層は、析出強化型銅合金によって構成され、第2銅層および第3銅層は、いずれも、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている、銅複合板材である。なお、この発明の第2の局面による銅複合板材において、第1銅層を構成する銅合金は、例えば、0.8質量%以上5.0質量%以下のNi、0.2質量%以上1.5質量%以下のSi、残部Cuおよび不可避的不純物からなる銅合金であってよい。上記した構成を有する銅複合板材を、以下、第2実施形態という。
図2は、この発明の第2の局面による銅複合板材の第2実施形態について、その層構成を模式的に示すものである。
図2に示す銅複合板材20は、第1銅層21の一方面に第2銅層22が圧接され、第1銅層21の他方面に第3銅層23が圧接されて成る銅複合板材である。この第2実施形態において、第2銅層22の構成と第3銅層23の構成とが同等または略同等であると、例えば各層の厚さ(T2、T3)、表面性状および諸特性を含む材質などの構成が同等または略同等であると、銅複合板材20の表裏の区別を特段に行うことなく用いることができるので、生産には好都合である。また、より薄肉化を目指す観点では、第2銅層22の厚さT2と第3銅層23の厚さT3とが同等または略同等であることが好ましく、圧延の際に大きな反りが発生するなどの特段の不都合なく容易に薄肉化することができる。
図2に示す銅複合板材20において、第1銅層21は、析出強化型銅合金によって構成されている。この析出強化型銅合金は、例えば、0.8質量%以上5.0質量%以下のNi(ニッケル)、0.2質量%以上1.5質量%以下のSi(珪素)、残部Cu(銅)および不可避的不純物からなる銅合金であってよい。この第1銅層21の構成および好ましい構成は、その構成によって奏する作用を含め、上記した第1実施形態における第1銅層11の構成と同等である。よって、第1銅層21の構成についての説明は上記した第1実施形態の説明を参照するものとし、ここでの説明は略す。
図2に示す銅複合板材20において、第2銅層22は、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている。つまり、純銅または非析出強化型銅合金によって構成されている第2銅層22には、たとえSiが含まれていたとしても、そのSi含有比は0.1質量%未満である。この第2銅層22の構成および好ましい構成は、その構成によって奏する作用を含め、上記した第1実施形態における第2銅層12の構成と同等である。よって、第2銅層22の構成についての説明は上記した第1実施形態の説明を参照するものとし、ここでの説明は略す。
図2に示す銅複合板材20において、第3銅層23は、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている。すなわち、第3銅層23の構成は、第2銅層22の構成と同等である。つまり、第2銅層22と同じく、純銅または非析出強化型銅合金によって構成されている第3銅層23には、たとえSiが含まれていたとしても、そのSi含有比は0.1質量%未満である。この第3銅層23の構成および好ましい構成は、その構成によって奏する作用を含め、上記した第2銅層22の構成と同等であり、すなわち第1実施形態における第2銅層12の構成と同等である。よって、第3銅層23の構成についての説明は上記した第1実施形態の説明を参照するものとし、ここでの説明は略す。
上記した第2実施形態において、銅複合板材20の厚さTは、例えば、0.01mm以上1mm以下であってよく、好ましくは0.02mm以上0.3mm以下、より好ましくは0.02mm以上0.1mm以下である。また、第1銅層21の厚さT1は、例えば0.007mm以上0.998mm以下であってよく、好ましくは0.014mm以上0.298mm以下、より好ましくは0.014mm以上0.098mm以下である。なお、上記した厚さTと厚さT1との差分は、第2銅層22の厚さT2および第3銅層23の厚さT3の合計に対応する。また、第2銅層22の厚さT2および第3銅層23の厚さT3は、上記した銅複合板材20の厚さTおよび第1銅層21の厚さT1との関係を考慮して設定することが好ましい。また、第2銅層22の厚さT2と第3銅層23の厚さT3を同等または略同等に設定することは好ましく、表裏を区別することなく銅複合板材20を用いることができる。
上記した銅複合板材の第1実施形態または第2実施形態のいずれかを用いて、または第1実施形態および第2実施形態の両方を用いて、ベーパーチャンバーを製造することができる。
以下、ベーパーチャンバーの構成例について、適宜図面を参照して説明する。
<第1構成例>
図3は、ベーパーチャンバーの要部断面の構成例(第1構成例)を模式的に示すものである。図3に示すベーパーチャンバー100は、全体的に平板状の外観を有し、図1に示す銅複合板材10(第1実施形態)を用いて構成されている。具体的には、ベーパーチャンバー100は、銅複合板材10を用いて構成された上板部材101と、銅複合板材10を用いて構成された下板部材102とが、接合部105において接合されている。ベーパーチャンバー100の内部106は、銅複合板材10を構成する第2銅層12によって囲まれた空間であり、銅複合板材10を構成する第1銅層11は露出していない。ベーパーチャンバー100の内部106には、冷媒(例えば純水)を減圧封止することができる。上板部材101を構成する第2銅層12は、第1銅層11が圧接されている面と反対側の面の一部が除去される。また、下板部材102を構成する第2銅層12は、第1銅層11が圧接されている面と反対側の面の一部が除去される。これにより、上板部材101と下板部材102とを拡散接合されたときに、第2銅層12によって囲まれた空間(内部106)が形成される。
ベーパーチャンバー100を構成する上板部材101および下板部材102は、銅複合板材10を所定の形状に切断加工して個片化し、個片化された銅複合板材10の端部を曲げ加工する製造方法により、形成されている。なお、銅複合板材10は、第1銅層11を構成するための第1銅板材および第2銅層12を構成するための第2銅板材を積層した状態で圧延し、最終的に所定の厚み(例えば図1に示す厚さT)に形成する製造方法により、形成することができる。
ベーパーチャンバー100の接合部105は、所定の加熱パターンによる拡散接合により形成されている。具体的には、下板部材102を下方に配置し、上板部材101の上方から被接合面(接合部105参照)に荷重を加えた状態で加熱保持を行う。この加熱保持中に、上板部材101の被接合面と下板部材102の被接合面との間に拡散現象が生じることにより被接合面同士が接合(拡散接合)され、接合部105が形成される。なお、この加熱保持において、後述する(1)第1熱処理、(2)第2熱処理および(3)第3熱処理のうちのいずれか1つの熱処理を行うとよい。なお、いずれの熱処理も、例えば、窒素ガス、アルゴンガスまたは窒素とアルゴンとの混合ガスなどを用いた非酸化性雰囲気において行うと、加熱酸化による被熱処理材の表面の粗化が抑制されるので好ましい。
(1)第1熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、毎分25℃以下の冷却速度で100℃まで冷却し、次いで、常温まで冷却するステップを含む。
(2)第2熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、100℃以下に冷却し、次いで、400℃以上550℃以下に加熱して保持した後に、常温まで冷却するステップを含む。
(3)第3熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、400℃以上550℃以下まで冷却して保持し、次いで、常温まで冷却するステップを含む。
上記した第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理のいずれにおいても、上板部材101を構成する銅複合板材10の第2銅層12と、下板部材102を構成する銅複合板材10の第2銅層12とが、拡散接合される。同様に、上板部材101を構成する銅複合板材10の第1銅層11と、下板部材102を構成する銅複合板材10の第1銅層11とが、拡散接合される。また、上板部材101および下板部材102の0.2%耐力を、2400MPa以上、さらには300MPa以上にすることが可能である。また、上板部材101の第2銅層12と下板部材102の第2銅層12との間に、冷媒を減圧封止するための空間(内部106)が形成される。
上記した第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理では、最初の加熱保持として、600℃以上1000℃以下に加熱して保持する。上板部材101および下板部材102を構成する銅複合板材10は、上記したように純銅および/または銅合金から成る。そのため、1000℃を超える過度な加熱保持は純銅および/または銅合金として得られる機械的強さ(0.2%耐力など)が低下しやすいし、ベーパーチャンバー100の機械的強さ(0.2%耐力など)などの諸特性が不十分になりやすい。なお、600℃未満の加熱保持では上記した拡散接合が不十分になるとともに、銅複合板材10の第1銅層11を構成する銅合金が析出硬化されないため、ベーパーチャンバー100の機械的強さ(0.2%耐力など)および接合部105の接合強度などが不十分になる。
また、上記した最初の加熱保持における保持時間は、特に限定されないが、0時間以上4時間以下が好ましく、0時間以上2時間以下がより好ましい。保持時間は、例えば、ベーパーチャンバー100の機械的強さ、接合部105の接合強度、内部106の表面性状などに対して所望する構成に応じて設定することができる。この場合、所定の保持温度に達するだけでよいと考えられるのであれば、その保持時間は0時間でよい。なお、比較的高温(例えば900℃以上1000℃以下)の雰囲気下で4時間を超えるような過度な保持を行うと、純銅および/または銅合金として得られる機械的強さ(0.2%耐力など)などの諸特性が不十分になりやすい。また、比較的低温(例えば600℃以上900℃以下)の雰囲気下で4時間を超えるような過度な保持を行っても、純銅および/または銅合金として得られる諸特性が向上され難い。
また、第1熱処理において、上記した最初の加熱保持の後に、毎分25℃以下の冷却速度で100℃まで冷却する。なお、毎分25℃を超えるような冷却速度であると、ベーパーチャンバー100の機械的強さ(0.2%耐力など)などの諸特性が不十分になりやすい。
また、第2熱処理において、上記した最初の加熱保持の後に、100℃以下に冷却し、次いで、400℃以上550℃以下に加熱して保持する。ベーパーチャンバー100の機械的強さ(0.2%耐力など)などの諸特性を向上する観点から、保持温度は400℃以上550℃以下とするのが好ましく、より好ましくは450℃以上540℃以下とする。また、保持時間は、好ましくは10分以上4時間以下とし、より好ましくは30分以上2時間以下とする。
また、第3熱処理において、上記した最初の加熱保持の後に、400℃以上550℃以下まで冷却して保持する。ベーパーチャンバー100の機械的強さ(0.2%耐力など)などの諸特性を向上する観点から、冷却して保持する際の保持温度(冷却保持温度)は400℃以上550℃以下とし、好ましくは450℃以上540℃以下とする。また、保持時間(冷却保持時間)は10分以上4時間以下とするのが好ましく、より好ましくは30分以上2時間以下とする。
<第2構成例>
図4は、ベーパーチャンバーの要部断面の構成例(第2構成例)を模式的に示すものである。図4に示すベーパーチャンバー200は、全体的に平板状の外観を有し、図2に示す銅複合板材20(第2実施形態)を用いて構成されている。具体的には、ベーパーチャンバー200は、銅複合板材20を用いて構成された上板部材201と、銅複合板材20を用いて構成された下板部材202とが、接合部205において接合されている。ベーパーチャンバー200の内部206は、銅複合板材20を構成する第2銅層22によって囲まれた空間であり、銅複合板材20を構成する第1銅層21は露出していない。ベーパーチャンバー200の内部206には、冷媒(例えば純水)を減圧封止することができる。上板部材201を構成する第2銅層22は、第1銅層21が圧接されている面と反対側の面の一部が除去されている。また、下板部材202を構成する第2銅層22は、第1銅層21が圧接されている面と反対側の面の一部が除去されている。これにより、上板部材201と下板部材202とを拡散接合されたときに、第2銅層22によって囲まれた空間(内部206)が形成される。
ベーパーチャンバー200を構成する上板部材201および下板部材202は、銅複合板材20を所定の形状に切断加工して個片化し、個片化された銅複合板材20の端部を曲げ加工する製造方法により、形成されている。なお、銅複合板材20は、第1銅層21を構成するための第1銅板材と、第2銅層22を構成するための第2銅板材と、第3銅層23を構成するための第3銅板材とを、第2銅板材と第3銅板材との間に第1銅板材を挟むように積層した状態で圧延し、最終的に所定の厚み(例えば図2に示す厚さT)に形成する製造方法により、形成することができる。
ベーパーチャンバー200の接合部205は、所定の加熱パターンによる拡散接合により形成されている。具体的には、下板部材202を下方に配置し、上板部材201の上方から被接合面(接合部205参照)に荷重を加えた状態で加熱保持を行う。この加熱保持中に、上板部材201の被接合面と下板部材202の被接合面との間に拡散現象が生じることにより被接合面同士が接合(拡散接合)され、接合部205が形成される。なお、この加熱保持においても第1構成例と同様に、上記した(1)第1熱処理、(2)第2熱処理および(3)第3熱処理のうちのいずれか1つの熱処理を行うとよい。第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理のいずれにおいても、上板部材201を構成する銅複合板材20の第2銅層22および第3銅層23と、下板部材202を構成する銅複合板材10の第2銅層22とが、拡散接合される。同様に、上板部材201を構成する銅複合板材20の第1銅層21と、下板部材202を構成する銅複合板材20の第1銅層21とが、拡散接合される。また、上板部材201および下板部材202の0.2%耐力を、240MPa以上、さらには300MPa以上にすることが可能である。また、上板部材201を構成する第2銅層22と下板部材202を構成する第2銅層22との間には、冷媒を減圧封止するための空間(内部206)が形成される。
<第3構成例>
図5は、ベーパーチャンバーの要部断面の構成例(第3構成例)を模式的に示すものである。図5に示すベーパーチャンバー300は、全体的に平板状の外観を有し、図1に示す銅複合板材10(第1実施形態)を用いて構成されている。具体的には、ベーパーチャンバー300は、銅複合板材10を用いて構成された上板部材301と、銅複合板材10を用いて構成された下板部材302とが、接合部305aにおいて接合されているとともに、上板部材301を構成する第2銅層12および下板部材302を構成する第2銅層12に対して、両者の間に配置された複数の中板部材303が接合部305bにおいて接合されている。なお、複数の中板部材303は、純銅または非析出硬化型銅合金から構成されていてよく、好ましくは第2銅層12と同等または略同等の材質から構成されている。ベーパーチャンバー300の内部306は、銅複合板材10を構成する第2銅層12によって囲まれた空間であり、銅複合板材10を構成する第1銅層11は露出していない。ベーパーチャンバー300の内部306には、冷媒(例えば純水)を減圧封止することができる。上板部材301を構成する第2銅層12は、第1銅層11が圧接されている面と反対側の面の一部が除去される。また、下板部材302を構成する第2銅層12は、第1銅層11が圧接されている面と反対側の面の一部が除去される。これにより、上板部材301と下板部材302とを拡散接合されたときに、第2銅層12によって囲まれた空間(内部306)が形成される。また、ベーパーチャンバー300の内部306は、複数の中板部材303により複数の空間に仕切られ、複数の空間は複数の中板部材303を貫通して設けられた複数の孔303aにより連結されている。この複数の孔303aにより、冷媒はベーパーチャンバー300の内部306(複数の空間内)を移動することができる。
ベーパーチャンバー300を構成する上板部材301および下板部材302は、銅複合板材10を所定の形状に切断加工して個片化し、個片化された銅複合板材10の端部を曲げ加工する製造方法により、形成されている。なお、銅複合板材10は、第1銅層11を構成するための第1銅板材および第2銅層12を構成するための第2銅板材を積層した状態で圧延し、最終的に所定の厚み(例えば図1に示す厚さT)に形成する製造方法により、形成することができる。
ベーパーチャンバー300の接合部305a、305bは、所定の加熱パターンによる拡散接合により形成されている。具体的には、下板部材302を下方に配置し、上板部材301の上方から被接合面(接合部305a、305b参照)に荷重を加えた状態で加熱保持を行う。この加熱保持中に、上板部材301の被接合面と下板部材302の被接合面との間に拡散現象が生じることにより被接合面同士が接合(拡散接合)され、接合部305aが形成される。同時に、この加熱保持中に、上板部材301および下板部材302を構成する銅複合板材10の第2銅層12の表面(被接合面)と複数の中板部材303の被接合面との間に拡散現象が生じることにより被接合面同士が接合(拡散接合)され、接合部305bが形成される。なお、この加熱保持においても第1構成例と同様に、上記した(1)第1熱処理、(2)第2熱処理および(3)第3熱処理のうちのいずれか1つの熱処理を行うとよい。第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理のいずれにおいても、上板部材301を構成する銅複合板材10の第2銅層12と、下板部材302を構成する銅複合板材10の第2銅層12とが、拡散接合される。同様に、上板部材301を構成する銅複合板材10の第1銅層11と、下板部材302を構成する銅複合板材10の第1銅層11とが、拡散接合される。また、上板部材301および下板部材302の0.2%耐力を、240MPa以上、さらには300MPa以上にすることが可能である。また、上板部材301を構成する第2銅層12と下板部材302を構成する第2銅層12との間に、冷媒を減圧封止するための空間(内部306)が形成される。
<第4構成例>
図6は、ベーパーチャンバーの要部断面の構成例(第4構成例)を模式的に示すものである。図6に示すベーパーチャンバー400は、全体的に平板状の外観を有し、図2に示す銅複合板材20(第2実施形態)を用いて構成されている。具体的には、ベーパーチャンバー400は、銅複合板材20を用いて構成された上板部材401と、銅複合板材20を用いて構成された下板部材402とが、接合部405aにおいて接合されているとともに、上板部材401を構成する第2銅層22および下板部材402を構成する第2銅層22に対して、両者の間に配置された複数の中板部材403が接合部405bにおいて接合されている。なお、複数の中板部材403は、純銅または非析出硬化型銅合金から構成されていてよく、好ましくは第2銅層22と同等または略同等の材質から構成されている。ベーパーチャンバー400の内部406は、銅複合板材20を構成する第2銅層22によって囲まれた空間であり、銅複合板材20を構成する第1銅層21は露出していない。ベーパーチャンバー400の内部406には、冷媒(例えば純水)を減圧封止することができる。上板部材401を構成する第2銅層22は、第1銅層21が圧接されている面と反対側の面の一部が除去されている。また、下板部材402を構成する第2銅層22は、第1銅層21が圧接されている面と反対側の面の一部が除去されている。これにより、上板部材401と下板部材402とを拡散接合されたときに、第2銅層22によって囲まれた空間(内部406)が形成される。また、ベーパーチャンバー400の内部406は、複数の中板部材403により複数の空間に仕切られ、複数の空間は複数の中板部材403を貫通して設けられた複数の孔403aにより連結されている。この複数の孔403aにより、冷媒はベーパーチャンバー400の内部406(複数の空間内)を移動することができる。
ベーパーチャンバー400を構成する上板部材401および下板部材402は、銅複合板材20を所定の形状に切断加工して個片化し、個片化された銅複合板材20の端部を曲げ加工する製造方法により、形成されている。なお、銅複合板材20は、第1銅層21を構成するための第1銅板材と、第2銅層22を構成するための第2銅板材と、第3銅層23を構成するための第3銅板材とを、第2銅板材と第3銅板材との間に第1銅板材を挟むように積層した状態で圧延し、最終的に所定の厚み(例えば図2に示す厚さT)に形成する製造方法により、形成することができる。
ベーパーチャンバー400の接合部405a、405bは、所定の加熱パターンによる拡散接合により形成されている。具体的には、第3構成例と同様に下板部材402を下方に配置し、上板部材401の上方から被接合面(接合部405a、405b参照)に荷重を加えた状態で加熱保持を行う。この加熱保持中に、上板部材401の被接合面と下板部材402の被接合面との間に拡散現象が生じることにより被接合面同士が接合(拡散接合)され、接合部405aが形成される。同時に、この加熱保持中に、上板部材401および下板部材402を構成する銅複合板材20の第2銅層22の表面(被接合面)と複数の中板部材403の被接合面との間に拡散現象が生じることにより被接合面同士が接合(拡散接合)され、接合部405bが形成される。なお、この加熱保持においても第1構成例と同様に、上記した(1)第1熱処理、(2)第2熱処理および(3)第3熱処理のうちのいずれか1つの熱処理を行うとよい。第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理のいずれにおいても、上板部材401を構成する銅複合板材20の第2銅層22と、下板部材402を構成する銅複合板材20の第2銅層22とが、拡散接合される。同様に、上板部材401を構成する銅複合板材20の第1銅層21と、下板部材402を構成する銅複合板材20の第1銅層21とが、拡散接合される。また、上板部材401を構成する銅複合板材20の第2銅層22と中板部材403とが拡散接合され、かつ、下板部材402を構成する銅複合板材20の第2銅層22と中板部材403とが拡散接合される。また、上板部材401および下板部材402の0.2%耐力を、240MPa以上、さらには300MPa以上にすることが可能である。また、上板部材401を構成する第2銅層22と下板部材402を構成する第2銅層22との間に、冷媒を減圧封止するための空間(内部406)が形成される。
<第5構成例>
図7は、ベーパーチャンバーの要部断面の構成例(第5構成例)を模式的に示すものである。図7に示すベーパーチャンバー500は、全体的に平板状の外観を有し、図1に示す銅複合板材10(第1実施形態)および図2に示す銅複合板材20(第2実施形態)を用いて構成されている。具体的には、ベーパーチャンバー500は、銅複合板材20を用いて構成された上板部材501と、銅複合板材10を用いて構成された下板部材502とが、接合部505において接合されている。ベーパーチャンバー500の内部506は、銅複合板材10を構成する第2銅層12および銅複合板材20を構成する第2銅層22によって囲まれた空間であり、銅複合板材10を構成する第1銅層11および銅複合板材20を構成する第1銅層21は露出していない。ベーパーチャンバー500の内部506には、冷媒(例えば純水)を減圧封止することができる。上板部材501を構成する第2銅層22は、第1銅層21が圧接されている面と反対側の面の一部が除去される。また、下板部材502を構成する第2銅層12は、第1銅層11が圧接されている面と反対側の面の一部が除去される。これにより、上板部材501と下板部材502とを拡散接合されたときに、第2銅層12および第2銅層22によって囲まれた空間(内部506)が形成される。
また、ベーパーチャンバー500の内部506の壁面には、複数の凹部504が設けられている。具体的には、ベーパーチャンバー500の上板部材501を構成する銅複合板材20の第2銅層22の表面(内部506の壁面)に、複数の凹部504が設けられている。ベーパーチャンバー500の内部506の壁面に複数の凹部504が設けられていることにより内部506の壁面の表面積が大きくなるため、冷媒が接触可能な表面積を大きくすることができる。冷媒の接触面積が複数の凹部504の分だけ大きくなることによって、冷媒と上板部材501との間の熱伝導性が向上され、ベーパーチャンバー500の熱拡散性能の向上が期待できる。
こうした複数の凹部504は、ベーパーチャンバー500を構成する前の銅複合板材20の第2銅層22の表面に対してエッチングを行って、第2銅層22の表面の複数の凹部504に対応する位置を所定の深さだけ除去する製造方法により形成することができる。なお、ベーパーチャンバー500の内部506の壁面を構成する第2銅層22の表面に対してエッチングを行う場合は、第2銅層22が完全に除去されて第1銅層21が表面に露出することがないように、エッチング条件などを適切に制御する。また、こうした複数の凹部504は、エッチングによる形成方法に限られず、例えばプレス加工などの塑性加工によっても形成可能である。
ベーパーチャンバー500を構成するエッチング前の上板部材501は、銅複合板材20を所定の形状に切断加工して個片化する製造方法により、形成されている。また、ベーパーチャンバー500を構成する下板部材502は、銅複合板材10を所定の形状に切断加工して個片化し、個片化された銅複合板材10の端部を曲げ加工する製造方法により、形成されている。なお、銅複合板材10は、上記した第1構成例における銅複合板材10と同様な製造方法により、形成することができる。また、銅複合板材20は、上記した第2構成例における銅複合板材20と同様な製造方法により、形成することができる。
することができる。
ベーパーチャンバー500の接合部505は、所定の加熱パターンによる拡散接合により形成されている。具体的には、下板部材502を下方に配置し、上板部材501の上方から被接合面(接合部505参照)に荷重を加えた状態で加熱保持を行う。この加熱保持中に、上板部材501を構成する銅複合板材20の第2銅層22の表面(被接合面)と下板部材502の被接合面との間に拡散現象が生じることにより被接合面同士が接合(拡散接合)され、接合部505が形成される。なお、この加熱保持においても第1構成例と同様に、上記した(1)第1熱処理、(2)第2熱処理および(3)第3熱処理のうちのいずれか1つの熱処理を行うとよい。第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理のいずれにおいても、上板部材501を構成する銅複合板材20の第2銅層22と、下板部材502を構成する銅複合板材10の第2銅層22とが、拡散接合される。同様に、上板部材501を構成する銅複合板材20の第2銅層22と、下板部材502を構成する銅複合板材10の第1銅層11とが、拡散接合される。また、上板部材501および下板部材502の0.2%耐力を、240MPa以上、さらには300MPa以上にすることが可能である。また、上板部材501を構成する第2銅層22と下板部材502を構成する第2銅層12との間に、冷媒を減圧封止するための空間(内部506)が形成される。
<第6構成例>
図8は、ベーパーチャンバーの要部断面の構成例(第6構成例)を模式的に示すものである。図8に示すベーパーチャンバー600は、全体的に平板状の外観を有し、図2に示す銅複合板材20(第2実施形態)を用いて構成されている。具体的には、ベーパーチャンバー600は、銅複合板材20を用いて構成された上板部材601と中板部材603とが、および、銅複合板材20を用いて構成された下板部材602と中板部材603とが、それぞれ、接合部605において接合されている。なお、中板部材603は、純銅または非析出硬化型銅合金から構成されていてよく、好ましくは第2銅層22と同等または略同等の材質から構成されている。ベーパーチャンバー600の内部606は、銅複合板材20を構成する第2銅層22によって囲まれた空間であり、銅複合板材20を構成する第1銅層21は露出していない。ベーパーチャンバー600の内部606には、冷媒(例えば純水)を減圧封止することができる。また、ベーパーチャンバー600の内部606は、中板部材603に設けられた複数の孔603a、603bにより複数の空間に仕切られており、複数の空間は上板部材601および下板部材602に設けられた複数の凹部604a、604bにより連結されている。こうした複数の孔603a、603bおよび複数の凹部604a、604bにより、冷媒はベーパーチャンバー600の内部606(複数の空間内)を移動することができる。
また、ベーパーチャンバー600の内部606の壁面には、複数の凹部604a、604bが設けられている。具体的には、ベーパーチャンバー600の上板部材601を構成する銅複合板材20の第2銅層22の表面(内部606の壁面)に、複数の凹部604aが設けられている。また、ベーパーチャンバー600の下板部材602を構成する銅複合板材20の第2銅層22の表面(内部606の壁面)に、複数の凹部604bが設けられている。ベーパーチャンバー600の内部606の壁面に複数の凹部604a、604bが設けられていることにより内部606の壁面の表面積が大きくなるため、冷媒が接触可能な表面積を大きくすることができる。冷媒の接触面積が、上板部材601の複数の凹部604aの分だけ大きくなり、さらに下板部材602の複数の凹部604bの分だけ大きくなることによって、冷媒と上板部材601および下板部材602との間の熱伝導性がより向上され、ベーパーチャンバー600の熱拡散性能のさらなる向上が期待できる。
こうした複数の凹部604a、604bは、ベーパーチャンバー600を構成する前の銅複合板材20の第2銅層22の表面に対してエッチングを行って、第2銅層22の表面の複数の凹部604a、604bに対応する位置を所定の深さだけ除去する製造方法により形成することができる。なお、ベーパーチャンバー600の内部606の壁面を構成する第2銅層22の表面に対してエッチングを行う場合は、第2銅層22が完全に除去されて第1銅層21が表面に露出することがないように、エッチング条件などを適切に制御する。また、こうした複数の凹部604a、604bは、エッチングによる形成方法に限られず、例えばプレス加工などの塑性加工によっても形成可能である。
ベーパーチャンバー600を構成するエッチング前の上板部材601は、銅複合板材20を所定の形状に切断加工して個片化する製造方法により、形成されている。また、ベーパーチャンバー600を構成する下板部材602は、銅複合板材20を所定の形状に切断加工して個片化し、個片化された銅複合板材20の端部を曲げ加工する製造方法により、形成されている。なお、上板部材601を構成する銅複合板材20は、上記した第2構成例における銅複合板材20と同様な製造方法により、形成することができる。また、下板部材602を構成する銅複合板材20は、上記した第2構成例における銅複合板材20と同様な製造方法により、形成することができる。
ベーパーチャンバー600の接合部605a、605bは、所定の加熱パターンによる拡散接合により形成されている。具体的には、下板部材602を下方に配置し、上板部材601の上方から被接合面(接合部605参照)に荷重を加えた状態で加熱保持を行う。この加熱保持中に、上板部材601を構成する銅複合板材20の第2銅層22の表面(被接合面)と中板部材603の表面(被接合面)との間に拡散現象が生じることにより、同様に、下板部材602構成する銅複合板材20の第2銅層22の表面(被接合面)と中板部材603の表面(被接合面)との間に拡散現象が生じることにより、それぞれ、被接合面同士が接合(拡散接合)され、接合部605が形成される。なお、この加熱保持においても第1構成例と同様に、上記した(1)第1熱処理、(2)第2熱処理および(3)第3熱処理のうちのいずれか1つの熱処理を行うとよい。第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理のいずれにおいても、上板部材601を構成する銅複合板材20の第2銅層22と中板部材603とが、拡散接合される。同様に、下板部材602を構成する銅複合板材20の第2銅層22と中板部材603とが、拡散接合される。また、上板部材601および下板部材602の0.2%耐力を、240MPa以上、さらには300MPa以上にすることが可能である。また、上板部材601と、下板部材602との間に中板部材603を断続的に設けることにより、上板部材601と下板部材602とを拡散接合されたときに、第2銅層22と中板部材601とによって囲まれた空間(内部606)が形成される。
<銅複合板材の評価>
次に、この発明に係る銅複合板材が、例えば、ベーパーチャンバー(筐体)の構成部材として好適な拡散接合性、耐食性および0.2%耐力を有するかの確認のため、各種の評価を行った。具体的には、この発明に係る銅複合板材と、比較のための銅複合板材、銅合金板材および銅めっき被覆銅合金材を用いて、各種の評価に適する試験体をそれぞれ作製した。これらの試験体について、表2に示す熱処理を行う前の試験体を用いて表面性状、0.2%耐力および耐食性を調べ、また、表1に示す熱処理を行う前の試験体を用いて表2に示す熱処理と同様の加熱ステップで拡散接合した場合の拡散接合性を調べて、ベーパーチャンバーの構造部材(筐体など)への適合性を評価した。なお、銅複合板材の各種の評価は、図1に示す2層構造の銅複合板材10を用いて行った。これは、図1に示す2層構造の銅複合板材10の第2銅層12と、図2に示す銅複合板材20の第2銅層22および第3銅層23とが、同等の材質(Cuが99.9質量%以上の純銅、または、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金)によって構成されているので、図1に示す2層構造の銅複合板材10の第2銅層12によって代表することが可能と考えられるからである。
例えば、この発明に係る銅複合板材を用いた試験体は、図1に示す2層構造の銅複合板材10を作製し、その銅複合板材10から所定の形状の個片を切り出すことにより作製した。具体的には、まず、銅複合板材10の第1銅層11を構成するための第1銅板材および第2銅層12を構成するための第2銅板材を作製した。第1銅板材は、2.5質量%のNi、0.5質量%のSi、残部Cuおよび不可的不純物からなる、コルソン合金の1種である銅合金製の板素材を熱間圧延し、さらに冷間圧延と焼鈍とを組み合せることにより、所定の厚さ(約1.235mm)のものを作製した。なお、この第1銅板材には、上記したNiおよびSi以外の添加元素である、1.7質量%のZn(亜鉛)および0.3質量%のSn(錫)が含まれる。また、第2銅板材は、Cuが99.9質量%以上の純銅の1種である無酸素銅製の板素材を準備し、上記した第1銅板材と同様な製造方法により、所定の厚さ(約0.065mm)のものを製作した。続いて、第1銅板材と第2銅板材とを積層した状態で約60%の圧下率で圧延を行うことにより、第1銅板材と第2銅板材とが接合(圧接)された、厚さが約0.52mmの2層構造の銅複合板素材を作製した。続いて、この銅複合板素材を用いて、拡散焼鈍(保持条件:約900℃で約1分間)後に冷間圧延を行うことにより、所定の厚さ(約0.1mm)の2層構造の銅複合板材を作製した。
次に、作製した銅複合板材に対して特定のステップを含む熱処理を行って、評価用の2層構造の銅複合板材を作製した。具体的には、銅複合板材を窒素雰囲気中で加熱し、室温から昇温時間約30分間で900℃まで昇温し、900℃に到達してから約5分間の保持を行った後に、毎分約6.7℃の冷却速度(降温時間約2時間)で100℃まで冷却し、次いで、常温まで冷却するステップを含む熱処理(表2に示す第1熱処理を参照)を行うことにより、図1に示す銅複合板材10に対応する構成であって、厚さTが約0.1mm、第1銅層の厚さT1が約95μm、第2銅層の厚さT2が約5μmである、評価用の2層構造の銅複合板材を作製した。
<試験体No.1>
上記した製造方法により作製した評価用の銅複合板材から所定の形状の個片を切り出すことにより、表1に示すNo.1の試験体を作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、5%である。
<試験体No.2>
表1に示す試験体No.2は、上記した試験体No.1の製造方法において、第1銅層と第2銅層との厚さの比率を変更し、第1銅層の厚さT1が約98μm、第2銅層の厚さT2が約2μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、2%である。
<試験体No.3>
表1に示す試験体No.3は、上記した試験体No.1の製造方法において、第1銅層と第2銅層との厚さの比率を変更し、第1銅層の厚さT1が約75μm、第2銅層の厚さT2が約25μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、25%である。
<試験体No.4>
表1に示す試験体No.4は、上記した試験体No.1の製造方法において、第1銅層と第2銅層との厚さの比率を変更し、第1銅層の厚さT1が約70μm、第2銅層の厚さT2が約30μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、30%である。
<試験体No.5~8>
表1に示す試験体No.5~8は、ぞれぞれ、上記した試験体No.1の製造方法において、第2銅層の材質を表1に示す純銅または非析出強化型銅合金に変更し、第1銅層の厚さT1が約95μm、第2銅層の厚さT2が約5μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、いずれも、5%である。
<試験体No.9~11>
表1に示す試験体No.9~11は、それぞれ、上記した試験体No.1の製造方法において、表1に示すように第1銅層を構成するNiおよびSi以外の添加元素(Sn)をMg、CoまたはCrに替えて、第1銅層の厚さT1が約95μm、第2銅層の厚さT2が約5μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、いずれも、5%である。
<試験体No.12~20>
表1に示す試験体No.12~20は、それぞれ、上記した試験体No.1の製造方法における特定のステップを含む熱処理において、表2に示す熱処理ステップに変更し、第1銅層の厚さT1が約95μm、第2銅層の厚さT2が約5μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、いずれも、5%である。また、表2に示す試験体No.17~20における二重線の囲みは、第1熱処理、第2熱処理または第3熱処理の処理条件から外れることを表している。
<試験体No.21>
表1に示す試験体No.21は、上記した試験体No.1の製造方法において第2銅層を用いず、表1に示す析出強化型銅合金(C19400)に変更し、第1銅層の厚さT1が約95μm、第2銅層の厚さT2が約5μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、5%である。また、表1に示す試験体No.21における二重線の囲みは、この銅複合板材に係る発明の範囲から外れることを表している。
<試験体No.22>
表1に示す試験体No.21は、量産に見合う電流密度を行う一般的な銅めっき処理により、銅複合板材の第1銅層に対応する銅合金板材の表面に対して、第2銅層に対応する銅めっき層を形成したものである。具体的には、まず、試験体No.1において用いたコルソン合金の1種である銅合金製の板素材を圧延し、最終的に厚さT1が約98μmの銅合金板材を作製した。続いて、一般的な銅めっき処理により銅合金板材の表面に厚さT2が約2μmの銅めっき層を形成し、銅めっき被覆銅合金板材を作製した。次いで、試験体No.1と同様に、銅めっき被覆銅合金板材に対して表2に示す熱処理ステップ(第1熱処理)を行った後に、銅めっき被覆銅合金板材から所定の形状の個片を切り出し、試験体No.21を作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、2%である。また、表1に示す試験体No.22における二重線の囲みは、この銅複合板材に係る発明の範囲から外れることを表している。
<試験体No.23>
表1に示す試験体No.23は、銅複合板材の第1銅層に対応する厚さT1部分のみから成り、第2銅層に対応する厚さT2部分を有さない、厚さTの銅合金板材である。具体的には、まず、試験体No.1において用いたコルソン合金の1種である銅合金製の板素材を圧延し、最終的に厚さTが約100μmの銅合金板材を作製した。次いで、試験体No.1と同様に、表2に示す熱処理ステップ(第1熱処理)を行った後に、所定の形状の個片を切り出し、試験体No.23を作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、0%である。また、表1に示す試験体No.23における二重線の囲みは、この銅複合板材に係る発明の範囲から外れることを表している。
<試験体No.24>
表1に示す試験体No.24は、上記した試験体No.1の製造方法において、第1銅層と第2銅層との厚さの比率を変更し、第1銅層の厚さT1が約99.5μm、第2銅層の厚さT2が約0.5μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、0.5%である。また、表1に示す試験体No.24における二重線の囲みは、T2/(T1+T2)×100≦30%かつT2>1μmを満たさないことを表している。
Figure 0007147985000001
Figure 0007147985000002
以下、上記した試験体No.1~24を用いて行った各種の評価およびその結果について、表3を参照しながら説明する。なお、表3に示す試験体No.21~24における二重線の囲みは、ベーパーチャンバーの構成部材(筐体など)への適合性を毀損する原因となった評価結果を表している。
Figure 0007147985000003
<表面性状>
表2に示す熱処理を行った後の試験体No.1~24相当の試料(以下、単に試験体No.1~24という。)を用いて、表面性状(十点平均粗さRZJIS、尖度Rku)を調べた。表面性状は、JIS B0601:2001に準拠する、株式会社キーエンス製のレーザー顕微鏡(VK-8710)を用いて、試験体No.1~22および試験体24では第2銅層の表面を、試験体No.22では銅めっき層の表面を、試験体No.23では厚さTの銅合金板材の表面を、それぞれ、測定した。
その結果、銅めっき層を有する試験体No.22を除き、いずれの試験体も、RZJISが0.8μm以下で、Rkuが4以下であることが確認された。この傾向は表2に示す熱処理を行う前の試験体の表面性状と同様である。また、RZJISおよびRkuが過大である観点から、銅めっき層を有する試験体No.22は拡散接合性が期待できないと予測される。なお、銅めっき層を有する試験体No.22のRZJISおよびRkuが過大になったのは、銅めっき層(銅めっき膜)を構成する結晶粒の成長にばらつきやピンホールによる。
<0.2%耐力>
表2に示す熱処理を行った後の試験体No.1~24相当の試料(以下、単に試験体No.1~24という。)を用いて、0.2%耐力を調べた。具体的には、試験体No.1~21および試験体24を作製したそれぞれの銅複合板材、試験体No.22を作製した銅めっき被覆銅合金板材、および試験体No.23を作製した銅合金板材から、JIS Z2241:2011に規定される板状試験片(13A号)を、その長手方向が圧延方向と平行になるように作製した。それぞれの板状試験片(試験体No.1~24)を用いて、JIS Z2241:2011に準拠した常温引張試験を行って、0.2%耐力を求めた。
その結果、0.2%耐力は、試験体No,1~3、試験体No.5~16および試験体No.21~24では300MPa以上であり、試験体No.4および試験体No.17~20では300MPa未満であることが確認された。また、試験体No.1~4および試験体No.24において、第1銅層の厚さの減少(第2銅層の厚さの増加)とともに0.2%耐力が低下する顕著な傾向が確認される。これは、表2に示す熱処理による析出硬化作用により、析出強化型銅合金から構成された第1銅層の機械的強さが向上されたことによる。また、試験体No.9~12において、Cuに対するNiおよびSi以外の添加元素(Mg、Co、CrおよびSn)の違いにより0.2%耐力が異なることが確認された。この場合、適量のMg、CoまたはCrの添加により、0.2%耐力が350MPa以上になることが判明した。なお、試験体No.17~20における0.2%耐力が300MPa未満であったのは、表2に示す熱処理の条件が上記した(1)第1熱処理、(2)第2熱処理および(3)第3熱処理の範囲外であり、第1銅層の析出硬化作用が不十分だったことによる。
<耐食性>
表2に示す熱処理を行った後の試験体No.1~24相当の試料(以下、単に試験体No.1~24という。)を用いて、耐食性を調べた。調査対象とした被腐食面は、試験体No.1~21では第2銅層の表面、試験体No.22は銅めっき層の表面、およびNo.23は厚さTの銅合金板材の表面である。腐食試験は、試験体を、約50℃に保温した純水に浸漬した状態で放置し、24時間経過後に取り出し、乾燥させた。続いて、乾燥後の試験体の表面色を観察し、浸漬前後の表面色の変化の度合いを観察した。なお、浸漬前の表面色(銅色)の変化が視認できなかった場合を耐食性が良いとして「○」と評価し、浸漬前の表面色(銅色)の変化が視認できなかった場合を耐食性が劣るとして「×」と評価した。
その結果、試験体No.1~20および試験体No.24はいずれも「○」となり、耐食性が良いことが確認された。これは、純銅または非析出強化型銅合金により構成された第2銅層の表面に純水と反応しやすい析出物が存在していないことによる。また、試験体No.21~23はいずれも「×」となり、耐食性が劣ることが確認された。試験体No.21の場合は、第2銅層が非析出強化型銅合金ではないC19400により構成されていたことによる。試験体No.22の場合は、銅めっき層にピンホールなどの欠陥が存在することによって下地である析出強化型銅合金が露出し、その表面に純水と反応しやすい析出物が存在していたことによる。試験体No.23の場合は、析出硬化型銅合金により構成された表面に純水と反応しやすい析出物が存在していたことによる。
<拡散接合性>
表2に示す熱処理を行う前の試験体No.1~24相当の試料(以下、単に試験体No.1~24という。)を用いて、拡散接合性を調べた。調査対象とした被接合面は、試験体No.1~21では第2銅層の表面、試験体No.22は銅めっき層の表面、およびNo.23は厚さTの銅合金板材の表面である。具体的には、試験体No.1~21および試験体24を作製したそれぞれの銅複合板材、試験体No.22を作製した銅めっき被覆銅合金板材、および試験体No.23を作製した銅合金板材から、長方形状の個片(10mm×50mm)を切り出し、被接合試験片を作製した。また、C10200から構成された厚さ100μmの純銅板材から、長方形状の個片(10mm×50mm)を切り出し、被接合試験片の接合相手となる接合標準片を作製した。拡散接合は、被接合試験片と接合標準片とを長手方向に重ね合わせたオーバーラップ部のオーバーラップ量が約10mmとなるように配置し、オーバーラップ部に約3MPaの圧力が作用するように荷重した状態にして行った。拡散接合を行う際の加熱ステップは、被接合試験片(試験体No.1~24)それぞれに対応する表2に示す熱処理と同様のステップとした。この場合、表2に示す熱処理の第1ステップの保持状態(900℃、5分間)において拡散が進行する。
拡散接合性は、一般的な引張試験機を用いて常温引張試験を行って、評価した。常温引張試験は、オーバーラップ部に対して剪断力(剪断応力)が作用するように、被接合試験片および接合標準片の長手方向と平行に破断するまで荷重した。なお、オーバーラップ部以外の箇所で破断(母材破断)した場合を拡散接合性が良いとして「○」と評価し、オーバーラップ部に剥離が生じて破断(接合部剥離)した場合を拡散接合性が劣るとして「×」と評価した。その結果、試験体No.1~21はいずれも「○」となり、拡散接合性が良いことが確認された。また、試験体No.22~24はいずれも「×」となり、拡散接合性が劣ることが確認された。試験体No.22の場合は、被接合面である銅めっき層(銅めっき膜)のRZJISおよびRkuが過大であるため拡散が進み難かったこと、また、銅めっき層(銅めっき膜)と析出強化型銅合金から成る銅合金板材との密着強度が比較的小さく銅めっき層(銅めっき膜)に剥離が生じたことによる。試験体No.23の場合は、析出硬化型銅合金により構成された試験体の表面にSi酸化物の皮膜が生成され、この皮膜が拡散を阻害したことによる。試験体No.24の場合は、析出硬化型銅合金により構成された第1銅層は純銅により構成された第2銅層によって被覆され、試験体の表面には第2銅層が存在する。しかし、その第2銅層の厚さ(0.5μm)が薄く、第1銅層に含まれるSiが拡散して第2銅層の表面(試験体の表面)に達したため、試験体の表面にSi酸化物の皮膜が生成され、この皮膜が拡散を阻害したことによる。
<ベーパーチャンバー適合性>
試験体No.1~24それぞれについて、ベーパーチャンバーの構造部材(筐体など)への適合性を、上記した表面性状、0.2%耐力、耐食性および拡散接合性の評価結果に基づいて評価した。この発明におけるベーパーチャンバー適合性は、後述する条件A~条件Dのすべてが「適合性が良い」の場合をベーパーチャンバーへの適合性が良いとして「○」と評価し、条件Bが「適合性あり」で、それ以外が「適合性が良い」の場合をベーパーチャンバーへの適合性があるとして「△」と評価し、条件A~条件Dのいずれか1つまたは1つ以上に「適合性なし」がある場合をベーパーチャンバーへの適合性がないとして「×」と評価した。
条件Aとして、表3に示す表面性状において、十点平均粗さRZJISが0.8μm以下で、尖度Rkuが4以下の場合を「適合性が良い」とし、それ以外の場合を「適合性なし」とする。
条件Bとして、表3に示す0.2%耐力において、300MPa以上の場合を「適合性が良い」とし、240MPa以上の場合を「適合性あり」とし、240MPa未満の場合を「適合性なし」とする。
条件Cとして、表3に示す耐食性において、評価が「○」も場合を「適合性が良い」とし、評価が「×」の場合を「適合性なし」とする。
条件Dとして、表3に示す拡散接合性において、評価が「○」の場合を「適合性が良い」とし、評価が「×」の場合を「適合性なし」とする。
その結果、試験体No.1~3および試験体No.5~16は、いずれも「○」となり、ベーパーチャンバーの構造部材(筐体など)への適合性が良いことが確認された。また、試験体No.4および試験体No.17~20は、いずれも「△」となり、ベーパーチャンバーの構造部材(筐体など)への適合性があることが確認された。なお、試験体No.21~24は、いずれも「×」となり、ベーパーチャンバーの構造部材(筐体など)への適合性がないことが確認された。これにより、この発明の銅複合板材、すなわち、第1銅層の一方面に第2銅層が圧接されて成り、第1銅層は、0.8質量%以上5.0質量%以下のNi、0.2質量%以上1.5質量%以下のSi、残部Cuおよび不可避的不純物からなる銅合金によって構成され、第2銅層は、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている、銅複合板材は、ベーパーチャンバーの構造部材(筐体など)への適合性を有することが確認された。
この発明は、ベーパーチャンバーに適用可能な銅複合板材を提供することができる点において、また、ベーパーチャンバー以外の例えば、熱伝導部材または放熱部材、導電部材、シャーシ、ケースおよびフレームなどの各種用途にも適用可能な銅複合板材を提供することができる点において、産業上の利用可能性を有する。

Claims (12)

  1. 第1銅層の一方面に第2銅層が圧接されて成る銅複合板材であって、
    前記第1銅層は、析出強化型銅合金によって構成され、
    前記第2銅層は、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されており、前記第1銅層の厚さをT1とし、前記第2銅層の厚さをT2とするとき、T2/(T1+T2)×100≦30%かつT2>1μmを満たす、銅複合板材。
  2. 前記第2銅層は、表面粗さRZJISが0.8μm以下で、尖度Rkuが4以下である、請求項に記載の銅複合板材。
  3. 第1銅層の一方面に第2銅層が圧接され、前記第1銅層の他方面に第3銅層が圧接されて成る銅複合板材であって、
    前記第1銅層は、析出強化型銅合金によって構成され、
    前記第2銅層および前記第3銅層は、いずれも、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている、銅複合板材。
  4. 前記第1銅層の厚さをT1とし、前記第2銅層の厚さをT2とし、前記第3銅層の厚さをT3とするとき、(T2+T3)/(T1+T2+T3)×100≦30%かつT2>1μmおよびT3>1μmを満たす、請求項に記載の銅複合板材。
  5. 前記第2銅層および前記第3銅層は、表面粗さRZJISが0.8μm以下で、尖度Rkuが4以下である、請求項またはに記載の銅複合板材。
  6. 前記第1銅層を構成する銅合金は、0.8質量%以上5.0質量%以下のNi、0.2質量%以上1.5質量%以下のSi、残部Cuおよび不可避的不純物からなる析出強化型銅合金である、請求項1~5のいずれか1項に記載の銅複合板材。
  7. 前記第1銅層を構成する銅合金は、さらに、2.0質量%以下の範囲で、Co、Sn、Zn、Mg、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn、BおよびAgのうちの1種または1種以上を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の銅複合板材。
  8. 請求項1~のいずれか1項に記載の銅複合板材を用いて形成された上板部材および下板部材を備え、
    前記上板部材の第2銅層と前記下板部材の第2銅層とによって囲まれた空間を形成するように、前記上板部材と前記下板部材とが拡散接合されて構成されている、ベーパーチャンバー。
  9. 請求項1~7のいずれか1項に記載の銅複合板材を用いて形成された、上板部材および下板部材を備え、前記上板部材と前記下板部材とが拡散接合されて構成されたベーパーチャンバーの製造方法であって、
    第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理のうちのいずれか1つの熱処理を行うことによって、前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層とを、拡散接合するとともに、前記上板部材および前記下板部材の0.2%耐力を240MPa以上にする工程を備え、
    前記第1熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、毎分25℃以下の冷却速度で100℃まで冷却し、次いで、常温まで冷却するステップを含み、
    前記第2熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、100℃以下に冷却し、次いで、400℃以上550℃以下に加熱して保持した後に、常温まで冷却するステップを含み、
    前記第3熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、400℃以上550℃以下まで冷却して保持し、次いで、常温まで冷却するステップを含む、ベーパーチャンバーの製造方法。
  10. 前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層とを、拡散接合する工程は、前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層との間に空間を形成する工程を含む、請求項に記載のベーパーチャンバーの製造方法。
  11. 請求項1~7のいずれか1項に記載の銅複合板材を用いて形成された、上板部材および下板部材と、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている、中板部材と、を備え、前記上板部材と前記中板部材とが拡散接合され、かつ、前記中板部材と前記下板部材とが拡散接合されて構成されたベーパーチャンバーの製造方法であって、
    第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理のうちのいずれか1つの熱処理を行うことによって、前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と前記中板部材とを拡散接合し、かつ、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と前記中板部材とを拡散接合するとともに、前記上板部材および前記下板部材の0.2%耐力を240MPa以上にする工程を備え、
    前記第1熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、毎分25℃以下の冷却速度で100℃まで冷却し、次いで、常温まで冷却するステップを含み、
    前記第2熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、100℃以下に冷却し、次いで、400℃以上550℃以下に加熱して保持した後に、常温まで冷却するステップを含み、
    前記第3熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、400℃以上550℃以下まで冷却して保持し、次いで、常温まで冷却するステップを含む、ベーパーチャンバーの製造方法。
  12. 前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層とを、拡散接合する工程は、前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層との間に空間を形成する工程を含む、請求項11に記載のベーパーチャンバーの製造方法。
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