JP7147985B2 - 銅複合板材、銅複合板材を用いたベーパーチャンバーおよびベーパーチャンバーの製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、この発明の第1の局面によるベーパーチャンバーの製造方法は、この発明の上記した第1の局面および第2の局面による銅複合板材のいずれか一方または両方を用いて形成された、上板部材および下板部材を備え、前記上板部材と前記下板部材とが拡散接合されて構成されたベーパーチャンバーの製造方法であって、(1)第1熱処理、(2)第2熱処理および(3)第3熱処理のうちのいずれか1つの熱処理を行うことによって、前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層とを、拡散接合するとともに、前記上板部材および前記下板部材の0.2%耐力を240MPa以上にする工程を備える、ベーパーチャンバーの製造方法である。
(2)第2熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、100℃以下に冷却し、次いで、400℃以上550℃以下に加熱して保持した後に、常温まで冷却するステップを含む。
(3)第3熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、400℃以上550℃以下まで冷却して保持し、次いで、常温まで冷却するステップを含む。
(2)第2熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、100℃以下に冷却し、次いで、400℃以上550℃以下に加熱して保持した後に、常温まで冷却するステップを含む。
(3)第3熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、400℃以上550℃以下まで冷却して保持し、次いで、常温まで冷却するステップを含む。
この発明の第1の局面による銅複合板材は、第1銅層の一方面に第2銅層が圧接されて成る銅複合板材であって、第1銅層は、析出強化型銅合金によって構成され、第2銅層は、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている、銅複合板材である。なお、この発明の第1の局面による銅複合板材において、第1銅層を構成する銅合金は、例えば、0.8質量%以上5.0質量%以下のNi、0.2質量%以上1.5質量%以下のSi、残部Cuおよび不可避的不純物からなる銅合金であってよい。上記した構成を有する銅複合板材を、以下、第1実施形態という。
図1に示す銅複合板材10は、第1銅層11の一方面に第2銅層12が圧接されて成る銅複合板材である。図1に示す銅複合板材10において、第1銅層11は、析出強化型銅合金によって構成されている。この析出強化型銅合金は、例えば、0.8質量%以上5.0質量%以下のNi(ニッケル)、0.2質量%以上1.5質量%以下のSi(珪素)、残部Cu(銅)および不可避的不純物からなる銅合金であってよい。上記した析出強化型銅合金は、純銅よりも引張強さ、0.2%耐力および伸びなどの機械的特性が高く、曲げ加工性、応力緩和特性および熱伝導率も確保されている。この組成から成る銅合金には、一般的にコルソン合金と呼ばれる銅合金が含まれる。この組成から成る銅合金により構成された第1銅層11は、後述する第1熱処理、第2熱処理または第3熱処理により析出硬化する。こうした銅合金によって構成された第1銅層11を備える銅複合板材10を用いて、例えばベーパーチャンバーを製造することができる。その場合、ベーパーチャンバーの筐体を形成する際の拡散接合で行われる加熱保持により析出硬化が生じて第1銅層11の機械的強さが向上されるため、良好な機械的強さを有する筐体を形成することができる。
この発明の第2の局面による銅複合板材は、第1銅層の一方面に第2銅層が圧接され、第1銅層の他方面に第3銅層が圧接されて成る銅複合板材であって、第1銅層は、析出強化型銅合金によって構成され、第2銅層および第3銅層は、いずれも、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている、銅複合板材である。なお、この発明の第2の局面による銅複合板材において、第1銅層を構成する銅合金は、例えば、0.8質量%以上5.0質量%以下のNi、0.2質量%以上1.5質量%以下のSi、残部Cuおよび不可避的不純物からなる銅合金であってよい。上記した構成を有する銅複合板材を、以下、第2実施形態という。
図2に示す銅複合板材20は、第1銅層21の一方面に第2銅層22が圧接され、第1銅層21の他方面に第3銅層23が圧接されて成る銅複合板材である。この第2実施形態において、第2銅層22の構成と第3銅層23の構成とが同等または略同等であると、例えば各層の厚さ(T2、T3)、表面性状および諸特性を含む材質などの構成が同等または略同等であると、銅複合板材20の表裏の区別を特段に行うことなく用いることができるので、生産には好都合である。また、より薄肉化を目指す観点では、第2銅層22の厚さT2と第3銅層23の厚さT3とが同等または略同等であることが好ましく、圧延の際に大きな反りが発生するなどの特段の不都合なく容易に薄肉化することができる。
以下、ベーパーチャンバーの構成例について、適宜図面を参照して説明する。
図3は、ベーパーチャンバーの要部断面の構成例(第1構成例)を模式的に示すものである。図3に示すベーパーチャンバー100は、全体的に平板状の外観を有し、図1に示す銅複合板材10(第1実施形態)を用いて構成されている。具体的には、ベーパーチャンバー100は、銅複合板材10を用いて構成された上板部材101と、銅複合板材10を用いて構成された下板部材102とが、接合部105において接合されている。ベーパーチャンバー100の内部106は、銅複合板材10を構成する第2銅層12によって囲まれた空間であり、銅複合板材10を構成する第1銅層11は露出していない。ベーパーチャンバー100の内部106には、冷媒(例えば純水)を減圧封止することができる。上板部材101を構成する第2銅層12は、第1銅層11が圧接されている面と反対側の面の一部が除去される。また、下板部材102を構成する第2銅層12は、第1銅層11が圧接されている面と反対側の面の一部が除去される。これにより、上板部材101と下板部材102とを拡散接合されたときに、第2銅層12によって囲まれた空間(内部106)が形成される。
(2)第2熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、100℃以下に冷却し、次いで、400℃以上550℃以下に加熱して保持した後に、常温まで冷却するステップを含む。
(3)第3熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、400℃以上550℃以下まで冷却して保持し、次いで、常温まで冷却するステップを含む。
図4は、ベーパーチャンバーの要部断面の構成例(第2構成例)を模式的に示すものである。図4に示すベーパーチャンバー200は、全体的に平板状の外観を有し、図2に示す銅複合板材20(第2実施形態)を用いて構成されている。具体的には、ベーパーチャンバー200は、銅複合板材20を用いて構成された上板部材201と、銅複合板材20を用いて構成された下板部材202とが、接合部205において接合されている。ベーパーチャンバー200の内部206は、銅複合板材20を構成する第2銅層22によって囲まれた空間であり、銅複合板材20を構成する第1銅層21は露出していない。ベーパーチャンバー200の内部206には、冷媒(例えば純水)を減圧封止することができる。上板部材201を構成する第2銅層22は、第1銅層21が圧接されている面と反対側の面の一部が除去されている。また、下板部材202を構成する第2銅層22は、第1銅層21が圧接されている面と反対側の面の一部が除去されている。これにより、上板部材201と下板部材202とを拡散接合されたときに、第2銅層22によって囲まれた空間(内部206)が形成される。
図5は、ベーパーチャンバーの要部断面の構成例(第3構成例)を模式的に示すものである。図5に示すベーパーチャンバー300は、全体的に平板状の外観を有し、図1に示す銅複合板材10(第1実施形態)を用いて構成されている。具体的には、ベーパーチャンバー300は、銅複合板材10を用いて構成された上板部材301と、銅複合板材10を用いて構成された下板部材302とが、接合部305aにおいて接合されているとともに、上板部材301を構成する第2銅層12および下板部材302を構成する第2銅層12に対して、両者の間に配置された複数の中板部材303が接合部305bにおいて接合されている。なお、複数の中板部材303は、純銅または非析出硬化型銅合金から構成されていてよく、好ましくは第2銅層12と同等または略同等の材質から構成されている。ベーパーチャンバー300の内部306は、銅複合板材10を構成する第2銅層12によって囲まれた空間であり、銅複合板材10を構成する第1銅層11は露出していない。ベーパーチャンバー300の内部306には、冷媒(例えば純水)を減圧封止することができる。上板部材301を構成する第2銅層12は、第1銅層11が圧接されている面と反対側の面の一部が除去される。また、下板部材302を構成する第2銅層12は、第1銅層11が圧接されている面と反対側の面の一部が除去される。これにより、上板部材301と下板部材302とを拡散接合されたときに、第2銅層12によって囲まれた空間(内部306)が形成される。また、ベーパーチャンバー300の内部306は、複数の中板部材303により複数の空間に仕切られ、複数の空間は複数の中板部材303を貫通して設けられた複数の孔303aにより連結されている。この複数の孔303aにより、冷媒はベーパーチャンバー300の内部306(複数の空間内)を移動することができる。
図6は、ベーパーチャンバーの要部断面の構成例(第4構成例)を模式的に示すものである。図6に示すベーパーチャンバー400は、全体的に平板状の外観を有し、図2に示す銅複合板材20(第2実施形態)を用いて構成されている。具体的には、ベーパーチャンバー400は、銅複合板材20を用いて構成された上板部材401と、銅複合板材20を用いて構成された下板部材402とが、接合部405aにおいて接合されているとともに、上板部材401を構成する第2銅層22および下板部材402を構成する第2銅層22に対して、両者の間に配置された複数の中板部材403が接合部405bにおいて接合されている。なお、複数の中板部材403は、純銅または非析出硬化型銅合金から構成されていてよく、好ましくは第2銅層22と同等または略同等の材質から構成されている。ベーパーチャンバー400の内部406は、銅複合板材20を構成する第2銅層22によって囲まれた空間であり、銅複合板材20を構成する第1銅層21は露出していない。ベーパーチャンバー400の内部406には、冷媒(例えば純水)を減圧封止することができる。上板部材401を構成する第2銅層22は、第1銅層21が圧接されている面と反対側の面の一部が除去されている。また、下板部材402を構成する第2銅層22は、第1銅層21が圧接されている面と反対側の面の一部が除去されている。これにより、上板部材401と下板部材402とを拡散接合されたときに、第2銅層22によって囲まれた空間(内部406)が形成される。また、ベーパーチャンバー400の内部406は、複数の中板部材403により複数の空間に仕切られ、複数の空間は複数の中板部材403を貫通して設けられた複数の孔403aにより連結されている。この複数の孔403aにより、冷媒はベーパーチャンバー400の内部406(複数の空間内)を移動することができる。
図7は、ベーパーチャンバーの要部断面の構成例(第5構成例)を模式的に示すものである。図7に示すベーパーチャンバー500は、全体的に平板状の外観を有し、図1に示す銅複合板材10(第1実施形態)および図2に示す銅複合板材20(第2実施形態)を用いて構成されている。具体的には、ベーパーチャンバー500は、銅複合板材20を用いて構成された上板部材501と、銅複合板材10を用いて構成された下板部材502とが、接合部505において接合されている。ベーパーチャンバー500の内部506は、銅複合板材10を構成する第2銅層12および銅複合板材20を構成する第2銅層22によって囲まれた空間であり、銅複合板材10を構成する第1銅層11および銅複合板材20を構成する第1銅層21は露出していない。ベーパーチャンバー500の内部506には、冷媒(例えば純水)を減圧封止することができる。上板部材501を構成する第2銅層22は、第1銅層21が圧接されている面と反対側の面の一部が除去される。また、下板部材502を構成する第2銅層12は、第1銅層11が圧接されている面と反対側の面の一部が除去される。これにより、上板部材501と下板部材502とを拡散接合されたときに、第2銅層12および第2銅層22によって囲まれた空間(内部506)が形成される。
することができる。
図8は、ベーパーチャンバーの要部断面の構成例(第6構成例)を模式的に示すものである。図8に示すベーパーチャンバー600は、全体的に平板状の外観を有し、図2に示す銅複合板材20(第2実施形態)を用いて構成されている。具体的には、ベーパーチャンバー600は、銅複合板材20を用いて構成された上板部材601と中板部材603とが、および、銅複合板材20を用いて構成された下板部材602と中板部材603とが、それぞれ、接合部605において接合されている。なお、中板部材603は、純銅または非析出硬化型銅合金から構成されていてよく、好ましくは第2銅層22と同等または略同等の材質から構成されている。ベーパーチャンバー600の内部606は、銅複合板材20を構成する第2銅層22によって囲まれた空間であり、銅複合板材20を構成する第1銅層21は露出していない。ベーパーチャンバー600の内部606には、冷媒(例えば純水)を減圧封止することができる。また、ベーパーチャンバー600の内部606は、中板部材603に設けられた複数の孔603a、603bにより複数の空間に仕切られており、複数の空間は上板部材601および下板部材602に設けられた複数の凹部604a、604bにより連結されている。こうした複数の孔603a、603bおよび複数の凹部604a、604bにより、冷媒はベーパーチャンバー600の内部606(複数の空間内)を移動することができる。
次に、この発明に係る銅複合板材が、例えば、ベーパーチャンバー(筐体)の構成部材として好適な拡散接合性、耐食性および0.2%耐力を有するかの確認のため、各種の評価を行った。具体的には、この発明に係る銅複合板材と、比較のための銅複合板材、銅合金板材および銅めっき被覆銅合金材を用いて、各種の評価に適する試験体をそれぞれ作製した。これらの試験体について、表2に示す熱処理を行う前の試験体を用いて表面性状、0.2%耐力および耐食性を調べ、また、表1に示す熱処理を行う前の試験体を用いて表2に示す熱処理と同様の加熱ステップで拡散接合した場合の拡散接合性を調べて、ベーパーチャンバーの構造部材(筐体など)への適合性を評価した。なお、銅複合板材の各種の評価は、図1に示す2層構造の銅複合板材10を用いて行った。これは、図1に示す2層構造の銅複合板材10の第2銅層12と、図2に示す銅複合板材20の第2銅層22および第3銅層23とが、同等の材質(Cuが99.9質量%以上の純銅、または、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金)によって構成されているので、図1に示す2層構造の銅複合板材10の第2銅層12によって代表することが可能と考えられるからである。
上記した製造方法により作製した評価用の銅複合板材から所定の形状の個片を切り出すことにより、表1に示すNo.1の試験体を作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、5%である。
表1に示す試験体No.2は、上記した試験体No.1の製造方法において、第1銅層と第2銅層との厚さの比率を変更し、第1銅層の厚さT1が約98μm、第2銅層の厚さT2が約2μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、2%である。
表1に示す試験体No.3は、上記した試験体No.1の製造方法において、第1銅層と第2銅層との厚さの比率を変更し、第1銅層の厚さT1が約75μm、第2銅層の厚さT2が約25μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、25%である。
表1に示す試験体No.4は、上記した試験体No.1の製造方法において、第1銅層と第2銅層との厚さの比率を変更し、第1銅層の厚さT1が約70μm、第2銅層の厚さT2が約30μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、30%である。
表1に示す試験体No.5~8は、ぞれぞれ、上記した試験体No.1の製造方法において、第2銅層の材質を表1に示す純銅または非析出強化型銅合金に変更し、第1銅層の厚さT1が約95μm、第2銅層の厚さT2が約5μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、いずれも、5%である。
表1に示す試験体No.9~11は、それぞれ、上記した試験体No.1の製造方法において、表1に示すように第1銅層を構成するNiおよびSi以外の添加元素(Sn)をMg、CoまたはCrに替えて、第1銅層の厚さT1が約95μm、第2銅層の厚さT2が約5μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、いずれも、5%である。
表1に示す試験体No.12~20は、それぞれ、上記した試験体No.1の製造方法における特定のステップを含む熱処理において、表2に示す熱処理ステップに変更し、第1銅層の厚さT1が約95μm、第2銅層の厚さT2が約5μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、いずれも、5%である。また、表2に示す試験体No.17~20における二重線の囲みは、第1熱処理、第2熱処理または第3熱処理の処理条件から外れることを表している。
表1に示す試験体No.21は、上記した試験体No.1の製造方法において第2銅層を用いず、表1に示す析出強化型銅合金(C19400)に変更し、第1銅層の厚さT1が約95μm、第2銅層の厚さT2が約5μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、5%である。また、表1に示す試験体No.21における二重線の囲みは、この銅複合板材に係る発明の範囲から外れることを表している。
表1に示す試験体No.21は、量産に見合う電流密度を行う一般的な銅めっき処理により、銅複合板材の第1銅層に対応する銅合金板材の表面に対して、第2銅層に対応する銅めっき層を形成したものである。具体的には、まず、試験体No.1において用いたコルソン合金の1種である銅合金製の板素材を圧延し、最終的に厚さT1が約98μmの銅合金板材を作製した。続いて、一般的な銅めっき処理により銅合金板材の表面に厚さT2が約2μmの銅めっき層を形成し、銅めっき被覆銅合金板材を作製した。次いで、試験体No.1と同様に、銅めっき被覆銅合金板材に対して表2に示す熱処理ステップ(第1熱処理)を行った後に、銅めっき被覆銅合金板材から所定の形状の個片を切り出し、試験体No.21を作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、2%である。また、表1に示す試験体No.22における二重線の囲みは、この銅複合板材に係る発明の範囲から外れることを表している。
表1に示す試験体No.23は、銅複合板材の第1銅層に対応する厚さT1部分のみから成り、第2銅層に対応する厚さT2部分を有さない、厚さTの銅合金板材である。具体的には、まず、試験体No.1において用いたコルソン合金の1種である銅合金製の板素材を圧延し、最終的に厚さTが約100μmの銅合金板材を作製した。次いで、試験体No.1と同様に、表2に示す熱処理ステップ(第1熱処理)を行った後に、所定の形状の個片を切り出し、試験体No.23を作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、0%である。また、表1に示す試験体No.23における二重線の囲みは、この銅複合板材に係る発明の範囲から外れることを表している。
表1に示す試験体No.24は、上記した試験体No.1の製造方法において、第1銅層と第2銅層との厚さの比率を変更し、第1銅層の厚さT1が約99.5μm、第2銅層の厚さT2が約0.5μmとなるように作製した。なお、T2/(T1+T2)×100(%)は、0.5%である。また、表1に示す試験体No.24における二重線の囲みは、T2/(T1+T2)×100≦30%かつT2>1μmを満たさないことを表している。
表2に示す熱処理を行った後の試験体No.1~24相当の試料(以下、単に試験体No.1~24という。)を用いて、表面性状(十点平均粗さRZJIS、尖度Rku)を調べた。表面性状は、JIS B0601:2001に準拠する、株式会社キーエンス製のレーザー顕微鏡(VK-8710)を用いて、試験体No.1~22および試験体24では第2銅層の表面を、試験体No.22では銅めっき層の表面を、試験体No.23では厚さTの銅合金板材の表面を、それぞれ、測定した。
表2に示す熱処理を行った後の試験体No.1~24相当の試料(以下、単に試験体No.1~24という。)を用いて、0.2%耐力を調べた。具体的には、試験体No.1~21および試験体24を作製したそれぞれの銅複合板材、試験体No.22を作製した銅めっき被覆銅合金板材、および試験体No.23を作製した銅合金板材から、JIS Z2241:2011に規定される板状試験片(13A号)を、その長手方向が圧延方向と平行になるように作製した。それぞれの板状試験片(試験体No.1~24)を用いて、JIS Z2241:2011に準拠した常温引張試験を行って、0.2%耐力を求めた。
表2に示す熱処理を行った後の試験体No.1~24相当の試料(以下、単に試験体No.1~24という。)を用いて、耐食性を調べた。調査対象とした被腐食面は、試験体No.1~21では第2銅層の表面、試験体No.22は銅めっき層の表面、およびNo.23は厚さTの銅合金板材の表面である。腐食試験は、試験体を、約50℃に保温した純水に浸漬した状態で放置し、24時間経過後に取り出し、乾燥させた。続いて、乾燥後の試験体の表面色を観察し、浸漬前後の表面色の変化の度合いを観察した。なお、浸漬前の表面色(銅色)の変化が視認できなかった場合を耐食性が良いとして「○」と評価し、浸漬前の表面色(銅色)の変化が視認できなかった場合を耐食性が劣るとして「×」と評価した。
表2に示す熱処理を行う前の試験体No.1~24相当の試料(以下、単に試験体No.1~24という。)を用いて、拡散接合性を調べた。調査対象とした被接合面は、試験体No.1~21では第2銅層の表面、試験体No.22は銅めっき層の表面、およびNo.23は厚さTの銅合金板材の表面である。具体的には、試験体No.1~21および試験体24を作製したそれぞれの銅複合板材、試験体No.22を作製した銅めっき被覆銅合金板材、および試験体No.23を作製した銅合金板材から、長方形状の個片(10mm×50mm)を切り出し、被接合試験片を作製した。また、C10200から構成された厚さ100μmの純銅板材から、長方形状の個片(10mm×50mm)を切り出し、被接合試験片の接合相手となる接合標準片を作製した。拡散接合は、被接合試験片と接合標準片とを長手方向に重ね合わせたオーバーラップ部のオーバーラップ量が約10mmとなるように配置し、オーバーラップ部に約3MPaの圧力が作用するように荷重した状態にして行った。拡散接合を行う際の加熱ステップは、被接合試験片(試験体No.1~24)それぞれに対応する表2に示す熱処理と同様のステップとした。この場合、表2に示す熱処理の第1ステップの保持状態(900℃、5分間)において拡散が進行する。
試験体No.1~24それぞれについて、ベーパーチャンバーの構造部材(筐体など)への適合性を、上記した表面性状、0.2%耐力、耐食性および拡散接合性の評価結果に基づいて評価した。この発明におけるベーパーチャンバー適合性は、後述する条件A~条件Dのすべてが「適合性が良い」の場合をベーパーチャンバーへの適合性が良いとして「○」と評価し、条件Bが「適合性あり」で、それ以外が「適合性が良い」の場合をベーパーチャンバーへの適合性があるとして「△」と評価し、条件A~条件Dのいずれか1つまたは1つ以上に「適合性なし」がある場合をベーパーチャンバーへの適合性がないとして「×」と評価した。
条件Bとして、表3に示す0.2%耐力において、300MPa以上の場合を「適合性が良い」とし、240MPa以上の場合を「適合性あり」とし、240MPa未満の場合を「適合性なし」とする。
条件Cとして、表3に示す耐食性において、評価が「○」も場合を「適合性が良い」とし、評価が「×」の場合を「適合性なし」とする。
条件Dとして、表3に示す拡散接合性において、評価が「○」の場合を「適合性が良い」とし、評価が「×」の場合を「適合性なし」とする。
Claims (12)
- 第1銅層の一方面に第2銅層が圧接されて成る銅複合板材であって、
前記第1銅層は、析出強化型銅合金によって構成され、
前記第2銅層は、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されており、前記第1銅層の厚さをT1とし、前記第2銅層の厚さをT2とするとき、T2/(T1+T2)×100≦30%かつT2>1μmを満たす、銅複合板材。 - 前記第2銅層は、表面粗さRZJISが0.8μm以下で、尖度Rkuが4以下である、請求項1に記載の銅複合板材。
- 第1銅層の一方面に第2銅層が圧接され、前記第1銅層の他方面に第3銅層が圧接されて成る銅複合板材であって、
前記第1銅層は、析出強化型銅合金によって構成され、
前記第2銅層および前記第3銅層は、いずれも、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている、銅複合板材。 - 前記第1銅層の厚さをT1とし、前記第2銅層の厚さをT2とし、前記第3銅層の厚さをT3とするとき、(T2+T3)/(T1+T2+T3)×100≦30%かつT2>1μmおよびT3>1μmを満たす、請求項3に記載の銅複合板材。
- 前記第2銅層および前記第3銅層は、表面粗さRZJISが0.8μm以下で、尖度Rkuが4以下である、請求項3または4に記載の銅複合板材。
- 前記第1銅層を構成する銅合金は、0.8質量%以上5.0質量%以下のNi、0.2質量%以上1.5質量%以下のSi、残部Cuおよび不可避的不純物からなる析出強化型銅合金である、請求項1~5のいずれか1項に記載の銅複合板材。
- 前記第1銅層を構成する銅合金は、さらに、2.0質量%以下の範囲で、Co、Sn、Zn、Mg、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn、BおよびAgのうちの1種または1種以上を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の銅複合板材。
- 請求項1~7のいずれか1項に記載の銅複合板材を用いて形成された上板部材および下板部材を備え、
前記上板部材の第2銅層と前記下板部材の第2銅層とによって囲まれた空間を形成するように、前記上板部材と前記下板部材とが拡散接合されて構成されている、ベーパーチャンバー。 - 請求項1~7のいずれか1項に記載の銅複合板材を用いて形成された、上板部材および下板部材を備え、前記上板部材と前記下板部材とが拡散接合されて構成されたベーパーチャンバーの製造方法であって、
第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理のうちのいずれか1つの熱処理を行うことによって、前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層とを、拡散接合するとともに、前記上板部材および前記下板部材の0.2%耐力を240MPa以上にする工程を備え、
前記第1熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、毎分25℃以下の冷却速度で100℃まで冷却し、次いで、常温まで冷却するステップを含み、
前記第2熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、100℃以下に冷却し、次いで、400℃以上550℃以下に加熱して保持した後に、常温まで冷却するステップを含み、
前記第3熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、400℃以上550℃以下まで冷却して保持し、次いで、常温まで冷却するステップを含む、ベーパーチャンバーの製造方法。 - 前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層とを、拡散接合する工程は、前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層との間に空間を形成する工程を含む、請求項9に記載のベーパーチャンバーの製造方法。
- 請求項1~7のいずれか1項に記載の銅複合板材を用いて形成された、上板部材および下板部材と、Cuが99.9質量%以上の純銅によって構成されているか、Siが0.1質量%未満の非析出強化型銅合金によって構成されている、中板部材と、を備え、前記上板部材と前記中板部材とが拡散接合され、かつ、前記中板部材と前記下板部材とが拡散接合されて構成されたベーパーチャンバーの製造方法であって、
第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理のうちのいずれか1つの熱処理を行うことによって、前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と前記中板部材とを拡散接合し、かつ、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と前記中板部材とを拡散接合するとともに、前記上板部材および前記下板部材の0.2%耐力を240MPa以上にする工程を備え、
前記第1熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、毎分25℃以下の冷却速度で100℃まで冷却し、次いで、常温まで冷却するステップを含み、
前記第2熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、100℃以下に冷却し、次いで、400℃以上550℃以下に加熱して保持した後に、常温まで冷却するステップを含み、
前記第3熱処理は、600℃以上1000℃以下に加熱して保持した後に、400℃以上550℃以下まで冷却して保持し、次いで、常温まで冷却するステップを含む、ベーパーチャンバーの製造方法。 - 前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層とを、拡散接合する工程は、前記上板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層と、前記下板部材を構成する前記銅複合板材の第2銅層との間に空間を形成する工程を含む、請求項11に記載のベーパーチャンバーの製造方法。
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