JP2021139014A - 多層金属箔及びその製造方法 - Google Patents

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行一 三宅
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Abstract

【課題】電子デバイスの封止部材として有用な金属箔を提供する。【解決手段】第1金属層10と第2金属層20とを備え、熱重量・質量分析したときに質量数18、28、32及び44であるいずれかのフラグメントが観察されない多層金属箔である。第1金属層10は、少なくともFeとNiを含み、且つNiの含有率が20質量%以上50質量%以下である。第2金属層20は、第1金属層10の一面に配置され且つ第1金属層10の対向面にSnを80質量%以上含有する。第2金属層20は、第1金属層10に近い側に位置し且つSnを80質量%以上含有する近位層21と、第1金属層10から遠い側に位置し且つ少なくともSnを含む遠位層22とを含んでもよい。【選択図】図1

Description

本発明は、多層金属箔及びその製造方法に関する。
電子デバイスを封止してパッケージにするための材料(封止部材)として、一般に、樹脂や金属箔が用いられている。封止部材として用いられる金属箔として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載された封止部材は、コバール材や42アロイ材等の低熱膨張係数を有する基板の両面又は片面に、Cu層やCu合金層もしくはAu層からなる接合層を設け、更にその接合層の表面に、Au板及びSn板を交互に多段に積層した封着層を有する構造のものである。
特開2010−199600号公報
特許文献1に記載された封止部材においては、各層は例えばめっきによって形成されている。したがって、めっきにより形成されためっき層中には、めっき液中に添加された各種薬剤、例えば、錯化剤や還元剤等に由来する成分が不可避的に混入している。一般に、封止部材を用いて電子デバイスを封止する場合には、封止部材の加熱工程が含まれるところ、加熱されためっき層からは、該めっき層中に含まれる水素、炭素、酸素等を含む成分に由来するガスが発生する場合がある。このガスは、パッケージ内のボンディングワイヤ等の配線を腐食し、パッケージの信頼性低下の一因となる。
したがって、本発明の課題は、電子デバイスの封止部材として有用な金属箔を提供することにある。
本発明は、少なくともFeとNiを含み、且つNiの含有率が20質量%以上50質量%以下である第1金属層と、
第1金属層の一面に配置され且つ第1金属層の対向面にSnを80質量%以上含有する第2金属層と、を備え、
熱重量・質量分析したときに質量数18、28、32及び44であるいずれかのフラグメントが観察されない、多層金属箔を提供するものである。
また本発明は、少なくともFeとNiを含み、且つNiの含有率が20質量%以上50質量%以下である第1金属箔の少なくとも一面に溶融Snめっき層を形成し、
溶融Snめっき層を有する第1金属箔におけるめっき面に、Snを含み且つ熱重量・質量分析したときに質量数18、28、32及び44であるいずれかのフラグメントが観察されない第2金属箔を積層し、
第1金属箔と第2金属箔とをクラッド加工する、多層金属箔の製造方法を提供するものである。
更に本発明は、第1金属箔からなる第1金属層と、第1金属層の一面に配置された第2金属層とを備える多層金属箔の製造方法であって、
第1金属箔は、少なくともFeとNiを含み、且つNiの含有率が20質量%以上50質量%以下であり、
第2金属層は、Snを含むものであり、
第1金属箔に電解Snめっき処理を施して電解Snめっき層を形成し、
前記電解Snめっき層に対して加熱溶融処理を施して第2金属層を形成する、多層金属箔の製造方法を提供するものである。
また更に本発明は、開口部を有するパッケージ内に電子デバイスを配置し、該開口部を封止部材で被覆し、次いで加熱することによって該封止部材と該パッケージにおける該開口部の周縁部とを接合する、電子デバイスパッケージの製造方法において、該封止部材として上述の多層金属箔を用い、該多層金属箔における第2金属層側が該開口部と対向するように該多層金属箔で該開口部を被覆する、電子デバイスパッケージの製造方法を提供するものである。
本発明によれば、腐食性のガスが発生しづらく且つ製造が容易な金属箔が提供される。
図1(a)及び(b)は、本発明の多層金属箔の断面を示す説明図である。 図2は、本発明の多層金属箔の断面組織の一例を示す光学顕微鏡組織写真である。 図3は、溶融Snの流動性に及ぼす合金元素の影響を示すグラフである。 図4(a)ないし(c)は、本発明の多層金属箔の好ましい製造方法を模式的に示す説明図である。 図5は、実施例及び比較例における多層金属箔の熱分析結果を示すグラフである。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の多層金属箔は、図1に示すとおり、第1金属層10と、第1金属層10との対向面に配された第2金属層20とを備える。第1金属層と第2金属層とは、直接に接しており、両層間には意図して別の層を介在させていない。
第1金属層10は低熱膨張係数の金属層であることが好ましい。このような特性を有する層として、第1金属層10は、少なくともFeとNiを含むことが好ましい。これによって、多層金属箔を電子デバイスの封止部材として好適に用いることができる。この観点から、第1金属層10においては、Niの含有率が20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、24質量%以上46質量%以下であることが更に好ましく、28質量%以上42質量%以下であることが一層好ましい。
第1金属層10は、Fe及びNiに加えて他の金属元素を含有していてもよい。そのような元素としてはCoが挙げられる。これによって第1金属層10の熱膨張の程度を一層低くすることができ、多層金属箔を電子デバイスの封止部材として一層好適なものとすることができる。第1金属層10におけるCoの含有率は、該金属層10を低膨張のものとする観点から、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、4質量%以上19質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以上18質量%以下であることが一層好ましい。
第1金属層10を構成する材料としては、例えばコバール材、42アロイ及び、インバー材等が挙げられる。
第1金属層10は、その厚みが20μm以上500μm以下であることが好ましい。この範囲の厚みとすることで、ハンドリングし易くしつつ多層金属箔の剛性を十分に確保できる。この観点から、第1金属層10の厚みは30μm以上400μm以下であることが更に好ましく、40μm以上300μm以下であることが一層好ましい。
多層金属箔においては、図1(a)及び(b)に示すとおり、第1金属層10の一面に、第1金属層10に対向して第2金属層20が配置される。第2金属層20は、図1(a)に示すとおり単層である場合と、図1(b)に示すとおり第1金属層10に近い側に位置する近位層21と、第1金属層から遠い側に位置する遠位層22との2層である場合を含む。近位層21と遠位層22とは直接に接しており、両層間には何らの層も介在していない。
第2金属層20が単層である場合には、第2金属層20は、Snを好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、一層好ましくは98質量%以上含有する。
第2金属層20が2層構造である場合には、近位層21はSnを好ましくは80質量%以上含有し、更に好ましくは90質量%以上含有し、一層好ましくは98質量%以上含有する。一方、遠位層22は少なくともSnを含む層であることが好ましい。近位層21と遠位層22とは、Snの含有率が相違している。
なお、後述するように、第2金属箔として溶融Snめっき成分に近い成分(ほぼ純Sn)の材料を用いた場合には、表面に溶融Snめっきを形成した第1金属箔と第2金属箔とをクラッド加工により接合すると、溶融Snめっき層が低温で容易に再結晶して、溶融Snめっき領域と第2金属箔由来の領域との境界が不明確になり、図1(a)に示すとおり第2金属層20が単層となる。
図1(b)に示す実施形態の遠位層22においては、マトリックス相である純Snの中に、純Snより高融点の相が分散した状態を呈する組織を有することが好ましい。このような組織の一例を図2に示す。同図に示す遠位層22は、第2金属層用素材として3質量%Ni−Sn合金材を使用した例である。同図において、白色を呈する領域がマトリックス相であり、黒色を呈する領域は、高融点の相であり、同図においてはSnとNiからなる化合物相である。
図1(b)に示す実施形態において、遠位層22は、上述したSnに加えて、Al、Si、P、Ni、Cu、Ag及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むSn合金から構成されていてもよい。Al、Si、P、Ni、Cu、Ag及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素は、その合計で、0.03質量%以上10質量%以下含まれることが好ましく、0.05質量%以上8質量%以下含まれることが更に好ましく、0.1質量%以上5質量%以下含まれることが一層好ましい。Al、Si、P、Ni、Cu、Ag及びZnはいずれも、Sn(Sn合金)の組織に影響を与えて、固相率(析出相の量)の拡大に寄与する元素である。したがって、電子デバイスを封止及び実装する工程におけるリフロー時に第2金属層が、適正範囲内の流動性を有するようにするために、金属種を適切に選択することが好ましい。
一般的に言って、Snはこれを合金化することによって純Snの場合に比べて流動性が低下する。流動性の低下の度合いは、析出相の形状、析出量に影響されると考えられる。Sn合金の流動性は、例えば、ラゴンヌ流動長試験を利用して評価できる。ラゴンヌ流動長試験は、所定温度に保持した溶湯に、ガラス管の一端を浸漬し、他方を負圧(−20KPa)に保持して、ガラス管内に持ち上がった溶湯の長さを流動長とし、この流動長を、当該溶湯の流動性の指標とするものである。純Sn、Snに1〜3質量%Niを添加したSn−Ni合金、又はSnに1〜3質量%Ni及び0.25〜0.75質量%Alを添加したSn−Ni−Al合金について、260℃に保持した溶湯を用い、ラゴンヌ流動長試験を実施した。ラゴンヌ流動長とSn合金の種類との関係を図3に示す。同図から明らかなとおり、Sn合金溶湯の流動性は、純Sn溶湯に比べて低下することが理解される。
Al、Si、P、Ni、Cu、Ag及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素の含有率をそれらの合計で、0.03質量%以上とすることで、適正な流動性を確保できる。一方、10質量%以下とすることで、第2金属層の流動性の過度の低下を防止できる。
各元素のより好ましい含有率の範囲は以下のとおりである。
・Al:0.02質量%以上2.5質量%以下、特に0.1質量%以上1.5質量%以下、とりわけ0.3質量%以上1質量%以下。
・Si:0.02質量%以上2.0質量%以下、特に0.1質量%以上1.2質量%以下、とりわけ0.2質量%以上1.0質量%以下。
・P:0.03質量%以上3.0質量%以下、特に0.1質量%以上1.8質量%以下、とりわけ0.3質量%以上1.2質量%以下。
・Ni:0.1質量%以上10質量%以下、特に0.5質量%以上6質量%以下、とりわけ1質量%以上4質量%以下。
・Cu:1.0質量%以上10.0質量%以下、特に2.0質量%以上8.0質量%以下、とりわけ3.0質量%以上6.0質量%以下。
・Ag:5.0質量%以上10.0質量%以下、特に6.0質量%以上9.0質量%以下、とりわけ7.0質量%以上8.0質量%以下。
・Zn:0.1質量%以上10.0質量%以下、特に0.5質量%以上6.0質量%以下、とりわけ1.0質量%以上4.0質量%以下。
第2金属層20はその厚みが20μm以上500μm以下であることが好ましく、30μm以上400μm以下であることが更に好ましく、40μm以上300μm以下であることが一層好ましい。第2金属層20の厚みをこの範囲内に設定することで、多層金属箔を例えば封止部材として用いた場合に所望の封止効果が発揮される。
第2金属層20における近位層21は、その厚みが1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることが更に好ましく、5μm以上30μm以下であることが一層好ましい。近位層21の厚みをこの範囲内に設定することで、多層金属箔を例えば封止部材として用いた場合に所望の密着性が発揮される。
多層金属箔は、これを熱重量・質量分析したときに、質量数18、28、32及び44であるいずれかのフラグメントが観察されないことが好ましい。
質量数18であるフラグメントが観察されるとガス種としては例えばHOが挙げられる。
質量数28であるフラグメントが観察されるとガス種としては例えばN及びCOが挙げられる。
質量数32であるフラグメントが観察されるとガス種としては例えばOが挙げられる。
質量数44であるフラグメントが観察されるとガス種としては例えばCOが挙げられる。
上述した各種のガス種が多層金属箔から放出されると、該金属箔によって封止された電子デバイスの配線等が腐食するといった悪影響が生じるおそれがある。そこで、本発明では、質量数18、28、32及び44であるいずれかのフラグメントが観察されない多層金属箔とすることが好ましい。なかでもHOは、配線等への悪影響(腐食)が大きいため、本発明では、質量数18であるフラグメントが観察されない多層金属箔とすることが特に好ましい。このことに加えて、質量数28であるフラグメント及び/又は質量数44であるフラグメントが観察されないことが好ましい。このことに加えて、質量数32であるフラグメントが観察されないことが好ましい。
本発明の多層金属箔は、質量数18、質量数28、質量数44、及び質量数32であるフラグメントがいずれも観察されないことが最も好ましい。すなわち、ガス種としてHO、N、CO、CO及びOのいずれの放出も検出されない多層金属箔とすることが最も好ましい。このような多層金属箔は、以下に述べる方法によって好適に製造できる。
次に、上述した構成の多層金属箔の好ましい製造方法について説明する。本製造方法は、クラッド加工を利用して多層金属箔を製造する方法である。以下の説明においては、この製造方法を「乾式Snクラッド法」とも称する。
まず、第1金属箔1を用意する。第1金属箔1は、少なくともFeとNiを含み、且つNiの含有率が20質量%以上50質量%以下である組成を有することが好ましい。あるいは第1金属箔1は、更にCoを含み且つCoの含有率が3質量%以上20質量%以下である組成を有することが好ましい。更に第1金属箔1は、クラッド加工後に20μm以上500μm以下の範囲の厚さの第1金属層が形成できる厚みを有することが好ましい。
第1金属箔1は、その少なくとも一面にSnめっき処理が行われる。これによって第1金属箔1の少なくとも一面にSnめっき層が形成される。Snめっき層を形成することによって、第2金属箔2との接合が容易になる。またSnめっき層を形成することによって、加熱時にガスが発生することを効果的に抑制できる。めっき層は溶融めっき層であってもよい。溶融Snめっき層は、溶融Snめっき浴に第1金属箔を浸漬する方法によって容易に形成できる。形成する溶融Snめっき層の厚みは、クラッド加工後に1μm以上100μm以下の近位層が形成できる厚みとすることが好ましい。そのような厚みの近位層を形成するには、例えば溶融Snめっき浴の温度や浸漬時間等を調整すればよい。なお、第1金属箔1の両面に溶融Snめっきを形成しても何ら問題はない。
第1金属箔の表面に溶融Snめっき層を形成することに代えて、電解Snめっき処理を施して電解Snめっき層を形成し、次いで電解Snめっき層に対して加熱溶融処理を施してSnめっき層を形成してもよい。加熱溶融処理は、電解Snめっき層を構成するSnが溶融し、且つ電解Snめっき層に不純物として含まれるガス発生原因物質が除去される温度で行われることが好ましい。加熱温度は、Snが溶融しつつもできるだけ低温で行うことが有利である観点から、例えば235℃以上400℃以下であることが好ましく、320℃以下であることが更に好ましく、240℃以上280℃以下であることが一層好ましい。電解Snめっき層に対して加熱溶融処理を行うことで、当初から溶融Snめっき層を形成した場合と同様の利点がもたらされる。
このようにして図1(a)に示す多層金属箔が得られる。このようにして得られた多層金属箔(特に第2金属層)は、これを熱重量・質量分析したときに、質量数18、28、32及び44であるいずれかのフラグメントが観察されないことが好ましい。
本製造方法においては、必要に応じて以下の工程を行うこともできる。
上述の方法でSnめっき処理を行った第1金属箔1におけるめっき面に、第2金属箔2を積層する。第2金属箔2としては、Snを含み且つ熱重量・質量分析したときに質量数18、28、32及び44であるいずれかのフラグメントが観察されない金属箔を用いることが好ましい。第2金属箔2は、上述した第2金属層組成と同じ組成を有するか、又は上述した第2金属層における遠位層組成と同じ組成を有し、クラッド加工後に20μm以上500μm以下の範囲の厚みとすることができる厚みを有する金属箔であることが好ましい。第2金属箔2として、上述した第2金属層組成と同じ組成を有するものを用いた場合には、図1(a)に示す多層金属箔が得られる。一方、第2金属箔2として第2金属層における遠位層組成と同じ組成を有するものを用いた場合には、図1(b)に示す多層金属箔が得られる。
乾式Snクラッド法で使用する第2金属箔は、金属溶解炉等の常用の溶製方法を用いて溶製され、鋳造、圧延等を経て所定の形状に加工された箔とすることが好ましいが、それに限定されない。例えば、鋳造したままの材料から切削、研磨等の加工によって得られた所望の厚みを有する箔を用いてもよい。
上述した第2金属箔2はいずれも、熱重量・質量分析を行ったときに、質量数18、28、32及び44であるいずれかのフラグメントが観察されない金属箔であることが好ましい。
次いで、図4(a)に示すとおり、第2金属箔2を、第1金属箔1におけるめっき面に積層して、更に、圧延保護材100、100で挟み、圧延用素材とする。圧延用素材は、図4(b)に示すとおり圧延(クラッド加工)に供され、図4(c)に示す多層金属箔を得る。圧延保護材100としてはSUS板等を用いることができるが、圧延保護材を使用しなくてもよい。
クラッド加工のための圧延は、圧延用素材を好ましくは50℃以上200℃以下の温度域に加熱し、圧延ロールは冷間として、1パスあるいは複数パスの圧延とすることができる。圧下率は、特に限定する必要はないが、合計で5%以上20%以下程度の軽圧下で十分である。圧下率(%)は、[(圧延前の厚み−圧延後の厚み)/(圧延前の厚み)]×100%で定義される。これにより、第1金属層と第2金属層とを、強固に密着させることができる。圧延用素材を加熱することなく冷間で圧延すると、密着性不足となる傾向にある。
このようにして得られた多層金属箔は、電子デバイスパッケージの製造に好適に用いられる。電子デバイスパッケージの製造方法は一般に、開口部を有するパッケージ内に電子デバイスを配置し、該開口部を封止部材で被覆し、次いで好ましくは240℃以上350℃以下に加熱することによって該封止部材と該パッケージにおける該開口部の周縁部とを接合する工程を備える。この方法において、封止部材として本発明の多層金属箔を用い、該多層金属箔における第2金属層側が該開口部と対向するように該多層金属箔で該開口部を被覆する。本発明の多層金属箔はこれを加熱しても腐食性のガスが発生しづらいものであることから、該多層金属箔を電子デバイスパッケージの封止部材として用いれば、電子デバイスの腐食が効果的に防止される。電子デバイスの種類に特に制限はなく、例えば各種半導体デバイス、MEMS(MicroElectro Mechanical Systems)と呼ばれる微小電気機械システム全般、水晶発振子、表面弾性波フィルタ、バルク弾性波フィルタなどが挙げられる。また、電磁波を遮蔽する機能も兼ね揃えているため、フラッシュメモリ、MRAM(磁気抵抗メモリ)等の不揮発性メモリにおける、電磁ノイズ対策としての用途展開も期待できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1〕
厚み40μm、幅40mm、長さ100mmのコバール箔を第1金属箔として用意した。コバール箔の組成は29%Ni−17%Co−Feであった。コバール箔を溶融Snめっき浴に浸漬し、表面に厚み20μmの溶融Snめっき層(純Sn組成)を形成した。
これとは別に、純Sn箔からなる第2金属箔を用意した。純Sn箔は、真空溶解炉で溶製し、鋳造、圧延により作製した、純Sn箔は、その厚みが100μmであり、幅が40mmであり、長さが100mmであった。第2金属箔と同じ履歴の金属箔について、熱重量・質量分析を行ったところ、質量数18、28、32及び44のフラグメントのいずれも観察されず、ガスの発生は認められなかった。熱重量・質量分析の条件は、後述する条件と同じである。
第1金属箔の溶融Snめっきを施された面に対向して、上述した第2金属箔を積層した。次いで、第1金属箔と第2金属層とからなる積層体を、圧延保護材(SUS製板材:300μm厚み)で挟んで、圧延用素材とした。そしてまず、150℃に加熱された加熱炉に装入したのち、冷間圧延ロールで圧延(クラッド加工)を実施し、多層金属箔を得た。圧下率は10%とした。
多層金属箔について、圧延方向断面を研磨し、光学顕微鏡観察を行った。その結果、得られた多層金属箔は、厚み36μmの第1金属層と厚み111μmの第2金属層とからなる多層金属箔となっていた。
多層金属箔について、下記に示す条件で熱重量・質量分析を行った。熱重量・質量分析には株式会社リガク製のThermoMassPhotoを用いた。
測定温度範囲:室温〜400℃
試料量:約100mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気:Heガス
フラグメント測定範囲:10〜410
得られた結果を図5(a)に示す。質量数18、28、32及び44のフラグメントのいずれも観察されず、ガスの発生は認められなかった。
図5(a)のHeat flowの測定から、温度:230℃付近で融解していることがわかる。また、質量数:18、28、32及び44であるフラグメントのいずれも観察されなかった。表1に発生ガスの評価を示す。同表に示すとおり、ガス種として推定されるHO、N又はCO、O、COの放出は検出されなかった。
〔実施例2〕
厚み40μm、幅40mm、長さ50mmのコバール箔を第1金属箔として用意した。コバール箔の組成は29%Ni−17%Co−Feであった。
第1金属箔の片面に電解純Snめっき処理を施し、厚み100μmの電解純Snめっき層(Sn−残部不可避的不純物からなる組成)を形成した。この電解Snめっき層を250℃に加熱し、電解Snめっき層を溶融させたのち凝固させる加熱溶融処理を行いSnめっき層(第2金属層)を形成し、多層金属箔を得た。
多層金属箔について、実施例1と同様の条件で熱分析を行った。得られた結果を図5(b)に示す。図5(b)のHeat flow(熱量)の測定から、温度:230℃付近で融解していることがわかる。また、質量数:18、28、32及び44であるフラグメントのいずれも観察されなかった。表1に発生ガスの評価を示す。同表に示すとおり、ガス種として推定されるHO、N又はCO、O、COの放出は検出されなかった。
また、長手方向断面の光学顕微鏡観察から、多層金属箔は、厚み35μmのコバールからなる第1金属層と、厚み100μmの純Sn組成の第2金属層とから構成されていた。
〔比較例1〕
加熱溶融処理を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして、多層金属箔を得た。
多層金属箔について、実施例1と同様の条件で熱分析を行った。得られた結果を図5(b)に示す。図5(c)のHeat flow(熱量)の測定から、温度:230℃付近で融解していることがわかるが、質量数:18、28、32及び44であるフラグメントがいずれも観察された。表1に発生ガスの評価を示す。同表に示すとおり、ガス種として推定されるHO、N又はCO、CO、Oの放出が検出された。なお、質量数40であるフラグメントも観察されたが、ガス種は不明である。
Figure 2021139014
〔実施例3〕
厚み40μm、幅40mm、長さ100mmのコバール箔を第1金属箔として用意した。コバール箔の組成は29%Ni−17%Co−Feであった。コバール箔を溶融Snめっき浴に浸漬し、表面に厚み20μmの溶融Snめっき層(純Sn層)を形成した。
これとは別に、Sn合金箔からなる第2金属箔を用意した。Sn合金箔は、真空溶解炉で溶製し、鋳造、圧延により作製した。Sn合金箔は、その厚みが110μmであり、幅が40mmであり、長さが100mmであった。Sn合金箔は、Sn−2.9%Ni合金から構成されるものであった。
第1金属箔の溶融Snめっきを施された面に対向して、上述した第2金属箔を積層した。次いで、第1金属箔と第2金属層とからなる積層体を、圧延保護材(SUS製板材:300μm厚み)で挟んで、圧延用素材とした。そしてまず、150℃に加熱された加熱炉に装入し、5分以上保持したのち、冷間圧延ロールで圧延(クラッド加工)を実施し、多層金属箔を得た。圧下率は10%とした。
多層金属箔について、圧延方向断面を研磨し、光学顕微鏡観察を行った。その結果、多層金属箔は、厚み37μmの第1金属層と、厚み119μmの第2金属層とから構成されていることがわかった。第2金属層は、厚み15μmの純Sn組成の近位層と、2.9%Niを含むSn合金組成の遠位層とからなっていた。
多層金属箔について、実施例1と同様の条件で熱分析を行った。表2に発生ガスの評価を示す。同表に示すとおり、質量数:18、28、32及び44であるフラグメントのいずれも観察されず、ガス種として推定されるHO、N又はCO、O、COの放出は検出されなかった。
Figure 2021139014
1 第1金属箔
2 第2金属箔
10 第1金属層
20 第2金属層
21 近位層
22 遠位層
100 圧延保護材

Claims (14)

  1. 少なくともFeとNiを含み、且つNiの含有率が20質量%以上50質量%以下である第1金属層と、
    第1金属層の一面に配置され且つ第1金属層の対向面にSnを80質量%以上含有する第2金属層と、を備え、
    熱重量・質量分析したときに質量数18、28、32及び44であるいずれかのフラグメントが観察されない、多層金属箔。
  2. 第2金属層が、第1金属層に近い側に位置し且つSnを80質量%以上含有する近位層と、第1金属層から遠い側に位置し且つ少なくともSnを含む遠位層とを含み、
    前記近位層と前記遠位層とは、Snの含有量が相違している、請求項1に記載の多層金属箔。
  3. 前記近位層の厚みが、1μm以上100μm以下である、請求項2に記載の多層金属箔。
  4. 前記遠位層が、Snに加えて、Al、Si、P、Ni、Cu、Ag及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む請求項2又は3のいずれか一項に記載の多層金属箔。
  5. 前記遠位層におけるAl、Si、P、Ni、Cu、Ag及びZnの合計含有量が0.03質量%以上10質量%以下である、請求項4に記載の多層金属箔。
  6. 前記遠位層においては、Snのマトリックス相の中に、純Snより高融点の相が分散した状態になっている、請求項2ないし5のいずれか一項に記載の多層金属箔。
  7. 第2金属層の厚みが20μm以上500μm以下である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の多層金属箔。
  8. 第1金属層が更にCoを含み且つCoの含有率が3質量%以上20質量%以下である、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の多層金属箔。
  9. 第1金属層の厚みが20μm以上500μm以下である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の多層金属箔。
  10. 少なくともFeとNiを含み、且つNiの含有率が20質量%以上50質量%以下である第1金属箔の少なくとも一面にSnめっき層を形成し、
    Snめっき層を有する第1金属箔におけるめっき面に、Snを含み且つ熱重量・質量分析したときに質量数18、28、32及び44であるいずれかのフラグメントが観察されない第2金属箔を積層し、
    第1金属箔と第2金属箔とをクラッド加工する、多層金属箔の製造方法。
  11. 溶融Snめっき浴に第1金属箔を浸漬して前記Snめっき層を形成する、請求項10に記載の製造方法。
  12. 第1金属箔に電解Snめっき処理を施して電解Snめっき層を形成し、
    前記電解Snめっき層に対して加熱溶融処理を施して前記Snめっき層を形成する、請求項10に記載の製造方法。
  13. 第1金属箔からなる第1金属層と、第1金属層の一面に配置された第2金属層とを備える多層金属箔の製造方法であって、
    第1金属箔は、少なくともFeとNiを含み、且つNiの含有率が20質量%以上50質量%以下であり、
    第2金属層は、Snを含むものであり、
    第1金属箔に電解Snめっき処理を施して電解Snめっき層を形成し、
    前記電解Snめっき層に対して加熱溶融処理を施して第2金属層を形成する、多層金属箔の製造方法。
  14. 開口部を有するパッケージ内に電子デバイスを配置し、該開口部を封止部材で被覆し、次いで加熱することによって該封止部材と該パッケージにおける該開口部の周縁部とを接合する、電子デバイスパッケージの製造方法において、該封止部材として請求項1ないし9のいずれか一項に記載の多層金属箔を用い、該多層金属箔における第2金属層側が該開口部と対向するように該多層金属箔で該開口部を被覆する、電子デバイスパッケージの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115805236A (zh) * 2023-02-09 2023-03-17 西安稀有金属材料研究院有限公司 一种制备可伐合金/AgCu合金复合箔带材的工艺

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