JP6449495B2 - ポリベンズイミダゾール炭素繊維 - Google Patents

ポリベンズイミダゾール炭素繊維 Download PDF

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Description

本発明は、ポリベンズイミダゾールを含む前駆体繊維を繊維原料とするポリベンズイミダゾール炭素繊維に関する。
炭素繊維は、航空機から建材まで幅広く使われており、生産性が向上し、低価格化が進めば、自動車ボディなどでも鋼板に代わる材料となり得る。現在のところ、炭素繊維は、
ポリアクリロニトリル(PAN)繊維及びピッチ繊維を繊維原料(前駆体繊維)として製造されるのが主流となっている。
しかしながら、これらの前駆体繊維は、炭素化に先立って不融化処理と呼ばれる前処理が必要であり、この処理が製造に要するコスト及びエネルギーの低減、並びに生産性向上に対する大きな障壁となっている。
即ち、PAN繊維及びピッチ繊維は、炭素化処理(1,000℃以上の高温熱処理)の過程で溶融し、繊維形状を保てないことから、不融化処理と呼ばれる空気酸化処理によって溶融しない耐炎化繊維に変化させ、これを炭素化することで炭素繊維を得ている。この不融化処理では、酸化反応を均一に制御する必要があることに加え、発熱反応による熱暴走を抑えるための厳密な温度条件管理を必要とし、処理時間としても長時間(およそ30分から1時間程度)となる。
そのため、本願発明者らは、前記不融化処理を必要としない前駆体繊維を種々検討し、ポリベンズイミダゾール(以下、「PBI」と称する)繊維を前駆体繊維とするPBI炭素繊維の研究報告を発表している(非特許文献1参照)。このPBI繊維は、前記不融化処理を行わなくとも、繊維形状を維持したまま炭素化することができる。
また、古くは、PBI繊維を紡糸・炭素化し、弾性率80GPa、強度670MPaの炭素繊維が得られることが知られている(特許文献1参照)。更に、塩基性であるPBI繊維を酸性溶媒で処理して塩にすることで、直径100μmを超える炭素繊維が製造できることが知られており、その弾性率は100GPaとされ、強度は420MPaとされる(特許文献2参照)。
しかしながら、前記PBI繊維を炭素化させた前記PBI炭素繊維は、弾性率及び強度が低いという問題がある。したがって、前記PBI炭素繊維の実用化に向けては、弾性率及び強度のいずれも向上させる必要がある。
ところで、前駆体繊維としての前記PBI繊維の強度を向上させる方法として、PBI繊維を中和溶液に接触させて、ポリマー製造に用いたポリリン酸を繊維中から除去する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、こうしたPBI繊維を前駆体繊維とした炭素繊維は、知られておらず、また、実用的な弾性率及び強度を有する前記PBI炭素繊維としては、依然として何ら存在しない状況である。即ち、前駆体繊維としての弾性率及び強度は、この前駆体繊維を炭素化させた炭素繊維の弾性率及び強度と必ずしも一致せず、また、目的とする弾性率及び強度が得られるかは、不明であることから、実用的な弾性率及び強度を有する前記PBI炭素繊維を新たに開発する必要があった。
米国特許第3,528,774号明細書 米国特許第3,903,248号明細書 特表2008−507637号公報
第39回炭素材料学会年会要旨集3B02、3B03(2012年)
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、不融化処理が不要で効率的に製造でき、かつ、弾性率及び強度に優れたPBI炭素繊維を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記一般式(1)及び(2)のいずれかで表される構造を構造単位とするポリベンズイミダゾールを含む前駆体繊維を加熱して炭素繊維化させた構造を有し、引張弾性率が100GPa以上であり、引張強度が0.8GPa以上であり、かつ、繊維直径が8μm以上の連続繊維であることを特徴とするポリベンズイミダゾール炭素繊維。
ただし、前記一般式(1)及び(2)中のR及びRは、それぞれ下記構造式(1)〜(10)のいずれかの構造で表される3価又は4価のアリール基又は不飽和複素環式基を示し、Rは、前記構造式(1)〜(10)のいずれかの構造で表される2価のアリール基又は不飽和複素環式基、炭素数2〜4のアルケニレン基、酸素原子、硫黄原子及びスルホニル基のいずれかを示す。
本発明によれば、従来技術における前記諸問題を解決することができ、不融化処理が不要で効率的に製造でき、かつ、弾性率及び強度に優れたPBI炭素繊維を提供することができる。
実施例3に係るPBI炭素繊維の断面電子顕微鏡像を示す図である。 実施例10に係るPBI炭素繊維の断面電子顕微鏡像を示す図である。 比較例1に係るPBI炭素繊維の断面電子顕微鏡像を示す図である。 比較例1に係るPBI炭素繊維の断面電子顕微鏡像を示す図である。 引張弾性率の測定結果を示す図である。 引張強度の測定結果を示す図である。 到達可能強度の推定条件を説明する説明図である。 実施例15に係るPBI炭素繊維の断面電子顕微鏡像を示す図である。 実施例16に係るPBI炭素繊維の断面電子顕微鏡像を示す図である。 密度の測定結果を示す図である。 黒鉛結晶における炭素網面の面間隔c/2及び炭素網面の積層厚Lを示す概略図である。 広角X線回折プロファイルを測定する際の光学系を示す概略図である。 炭素網面の面間隔c/2と積層厚Lcとの関係を表す図である。 ミクロボイド平均断面積の測定結果を示す図である。 ミクロボイド体積分率の測定結果を示す図である。
(PBI炭素繊維)
本発明のポリベンズイミダゾール(PBI)炭素繊維は、下記一般式(1)及び(2)のいずれかで表される構造を構造単位とするPBIを含む前駆体繊維を加熱して炭素繊維化させた構造を有し、引張弾性率が100GPa以上であり、かつ、引張強度が0.8GPa以上である。
ただし、前記一般式(1)及び(2)中のR及びRは、それぞれ下記構造式(1)〜(10)のいずれかの構造で表される3価又は4価のアリール基又は不飽和複素環式基を示し、Rは、前記構造式(1)〜(10)のいずれかの構造で表される2価のアリール基又は不飽和複素環式基、炭素数2〜4のアルケニレン基、酸素原子、硫黄原子及びスルホニル基のいずれかを示す。
前記アルケニレン基としては、例えば、ビニレン基等が挙げられる。
このようなPBIを含む前駆体繊維(PBI前駆体繊維)においては、不融化処理を行わなくとも、繊維形状を維持したまま炭素化することができる。したがって、前記不融化処理が必要なPAN系繊維やピッチ系繊維を前駆体繊維として炭素繊維を製造することよりも、効率的に炭素繊維を製造することができる。
また、前記PBI前駆体繊維においては、高い炭素化収率で炭素化することができる。これにより、炭素化時に発生して放出される熱分解ガスによる構造の乱れや、炭素繊維の機械的強度を低下させるボイド(空孔)の発生(発泡を含む)を抑制することができる。更に、炭素化収率が高い、即ち、炭素化時に熱分解で放出されるガスやタール分が少ないことを一因として、急速に昇温して炭素化される場合であっても、瞬時の大量分解ガス発生を避けることができるため、極めて高速に炭素化処理を行うことができる。また、これによって、外表面に対して体積が大きく、炭素化時にガスが逃げにくい太い繊維を炭素化することができる。
前記PBI炭素繊維は、引張弾性率が100GPa以上、引張強度が0.8GPa以上であり、弾性率及び強度のいずれにも優れる。
このような弾性率及び強度が得られる理由としては、後述する製造方法において、前記PBI前駆体繊維中の酸性溶液を塩基性溶液により中和除去することが一因に挙げられ、前記PBI炭素繊維の発明は、前記中和除去により得られた前駆体繊維の繊維構造が維持されたまま炭素繊維化できることの知見に基づく。
なお、前記引張弾性率及び前記引張強度は、JIS7606法に従った単繊維引張試験により測定することができる。
前述の通り、前記PBI炭素繊維は、太い繊維を炭素化させて太径化させた場合であっても、高い弾性率及び強度が維持される。PAN系炭素繊維等の市販炭素繊維としては、繊維直径が7μm程度のものが一般的であるが、前記PBI炭素繊維としては、繊維直径が2μm〜8μm未満の細径である場合はもちろんのこと、繊維直径を8μm以上、更には、16μm以上に太径化しても高い弾性率及び強度が維持される。なお、前記繊維直径の上限としては、30μm程度である。
また、前記PBI炭素繊維としては、連続繊維(フィラメント)とすることができる。
以上に述べた本発明に係る前記PBI炭素繊維は、以下に述べる本発明に係る前記PBI炭素繊維の製造方法により製造することができる。
(PBI炭素繊維の製造方法)
前記PBI炭素繊維の製造方法は、1次前駆体繊維取得工程と、2次前駆体繊維取得工程と、炭素繊維化工程とを含む。
<1次前駆体繊維取得工程>
前記1次前駆体繊維取得工程は、酸性溶液中の下記一般式(1)及び(2)のいずれかで表される構造を構造単位とするポリベンズイミダゾールを含む重合体を紡糸して前記重合体の1次前駆体繊維を取得する工程である。
ただし、前記一般式(1)及び(2)中のR及びRは、それぞれ下記構造式(1)〜(10)のいずれかの構造で表される3価又は4価のアリール基又は不飽和複素環式基を示し、Rは、前記構造式(1)〜(10)のいずれかの構造で表される2価のアリール基又は不飽和複素環式基、炭素数2〜4のアルケニレン基、酸素原子、硫黄原子及びスルホニル基のいずれかを示す。
また、前記アルケニレン基としては、例えば、ビニレン基等が挙げられる。
前記PBIとしては、市販のものを用いてもよいし、合成したものを用いてもよい。
合成する場合、前記PBIとしては、例えば、和光純薬社等のテレフタル酸と、アルドリッチ社等の4,4’−ビフェニル−1,1’,2,2’−テトラミンとを出発原料として、前記酸性溶液中で縮重合反応させることで行うことができる。
前記重合体としては、前記PBIそのものであってもよいし、本発明の効果を妨げない限り、前記PBIの構造単位と他の構造単位で構成される共重合体や他のポリマーとのポリマーブレンド体であってもよい。
また、前記前駆体繊維としては、前記重合体そのものから得られる繊維体であってもよいが、本発明の効果を損なわない限り、前記重合体末端に任意の置換基が付加されたものから得られる繊維体であってもよい。
前記置換基としては、例えば、エステル基、アミド基、イミド基、水酸基、ニトロ基等が挙げられる。
前記紡糸の方法としては、大きく分けて2通りの方法で実施することができる。即ち、前記酸性溶液中で前記重合体の縮重合反応を行った反応溶液を紡糸原液として直接紡糸する第1の方法と、前記反応溶液を構成する前記酸性溶液を第1の酸性溶液として、前記反応溶液から一旦前記重合体の凝固物を取得した後、これを紡糸用の第2の酸性溶液に溶解させた溶解液を紡糸原液として紡糸する第2の方法とで実施することができる。
前記第1の方法に用いる前記酸性溶液としては、前記出発物質及び生成する前記重合体を溶解し、重合を促進する触媒としての作用を有する物であれば、特に制限はなく、具体的には、ポリリン酸、ポリリン酸エステル、リン酸ジフェニルクレシル等や五酸化二リン等を溶解したメタンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも、前記重合反応の制御の観点から、前記ポリリン酸が好ましい。
前記第2の方法で紡糸を行う場合、前記1次前駆体繊維取得工程は、1次凝固物取得工程と、2次凝固物取得工程とを含み、前記2次凝固物取得工程で得られた2次凝固物を第2の酸性溶液中に溶解させて紡糸原液を調製し、前記紡糸原液を紡糸して前記重合体の1次前駆体繊維を取得する工程とされる。
−1次凝固物取得工程−
前記1次凝固物取得工程は、前記第1の酸性溶液中で重合させた前記重合体の前記反応溶液を凝固浴中で凝固させ、前記重合体の1次凝固物を取得する工程である。
前記第1の酸性溶液としては、前記第1の方法に用いる前記酸性溶液と同様のものを用いることができる。
前記凝固浴の凝固液としては、前記重合体を凝固させることができるものであれば、特に制限はなく、例えば、水、アルコール、メタンスルホン酸、ポリリン酸、希硫酸等が挙げられ、中でも、前記水が好ましい。
−2次凝固物取得工程−
前記2次凝固物取得工程は、前記1次凝固物を第1の塩基性溶液と接触させ、前記1次凝固物中に残存する前記第1の酸性溶液が中和除去された2次凝固物を取得する工程である。
前記第1の塩基性溶液としては、前記第1の酸性溶液を中和させるものであれば、特に制限はなく、例えば、炭酸水素ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム、トリエチルアミンのエタノール溶液等が挙げられるが、重合度の低下を防ぐの観点から、前記炭酸水素ナトリウム水溶液が好ましい。
なお、前記第1の塩基性溶液による洗浄と前後して、前記凝固物を水やアルコールを用いて洗浄してもよい。
前記第2の方法で紡糸を行う場合、前述の通り、洗浄後の前記2次凝固物を前記第2の酸性溶液中に溶解させて前記紡糸原液を調製する。
前記第2の酸性溶液としては、前記2次凝固物が可溶であれば、特に制限はなく、メタンスルホン酸、ポリリン酸或いは濃硫酸等が挙げられるが、前記紡糸原液に対し、前記紡糸に適した粘性を付与する観点から、前記メタンスルホン酸が好ましい。
前記第1の方法及び前記第2の方法における紡糸方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の湿式紡糸法、乾湿式紡糸法等が挙げられる。
なお、前記1次前駆体繊維及び後述の2次前駆体繊維に対して、必要に応じて延伸処理・熱処理を行なってもよい。前記延伸処理に関しては、紡出糸を直接凝固浴中で延伸してもよいし、巻取糸を洗浄した後、浴中で延伸してもよい。また、前記延伸処理と前記熱処理を同時に行なってもよい。前記熱処理に関しては、雰囲気に制限はないが、空気中あるいは窒素雰囲気下中で行なうのが好ましい。熱処理温度、時間としては、適宜選択することができるが、前記熱処理温度に関しては、200℃〜600℃が好ましい。また、延伸倍率としては、1.2倍〜10倍程度が好ましい。
以上により、前記1次前駆体繊維を取得することができる。
<2次前駆体繊維取得工程>
前記2次前駆体繊維取得工程は、前記1次前駆体繊維を塩基性溶液と接触させ、前記1次前駆体繊維中に残存する前記酸性溶液が中和除去された2次前駆体繊維を取得する工程である。
前記1次前駆体繊維取得工程を前記第1の方法で実施する場合、前記2次前駆体繊維取得工程における前記塩基性溶液としては、前記酸性溶液を中和させるものであれば、特に制限はなく、例えば、トリエチルアミンのエタノール溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム等が挙げられるが、中和反応後に繊維中に残る過剰量のアルカリの除去が容易であるとの観点から、前記トリエチルアミンのエタノール溶液が好ましい。
また、前記接触の方法としては、特に制限はなく、前記1次前駆体繊維に前記塩基性溶液を噴き掛けて行ってもよいが、前記1次前駆体繊維を前記塩基性溶液の浴槽中に通過させる方法が好ましい。
特に、前記1次前駆体繊維取得工程を前記第1の方法で実施する際、前記酸性溶液が前記ポリリン酸であり、前記塩基性溶液が前記トリエチルアミンのエタノール溶液である場合には、前記1次前駆体繊維を前記トリエチルアミンのエタノール溶液の浴槽中に5秒間〜30秒間通過させる方法が好ましい。
このような方法によれば、前記1次前駆体繊維中の前記酸性溶液を効果的に中和除去させることができる。
なお、前記塩基性溶液による洗浄と前後して、前記前駆体繊維を水やアルコールを用いて洗浄してもよい。
前記1次前駆体繊維取得工程を前記第2の方法で実施する場合、前記2次前駆体繊維取得工程は、前記1次前駆体繊維を第2の塩基性溶液と接触させ、前記1次前駆体繊維中に残存する前記第2の酸性溶液が中和除去された2次前駆体繊維を取得する工程として実施される。
前記第2の塩基性溶液としては、前記第2の酸性溶液を中和させるものであれば、特に制限はなく、例えば、トリエチルアミンのエタノール溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム等が挙げられるが、中和反応後に繊維中に残る過剰量のアルカリの除去が容易であるとの観点から、前記トリエチルアミンのエタノール溶液が好ましい。
前記接触の方法としては、特に制限はなく、前記1次前駆体繊維に前記第2の塩基性溶液を噴き掛けて行ってもよいが、前記1次前駆体繊維を前記第2の塩基性溶液の浴槽中に通過させる方法が好ましい。
特に、前記第2の酸性溶液が前記メタンスルホン酸であり、前記第2の塩基性溶液が前記トリエチルアミンのエタノール溶液である場合には、前記1次前駆体繊維を前記トリエチルアミンのエタノール溶液の浴槽中に5秒間〜30秒間通過させる方法が好ましい。
このような方法によれば、前記1次前駆体繊維中の前記第2の酸性溶液を効果的に中和除去させることができる。
なお、前記第2の塩基性溶液による洗浄と前後して、前記前駆体繊維を水やアルコールを用いて洗浄してもよい。
<炭素繊維化工程>
前記炭素繊維化工程は、前記2次前駆体繊維を不活性ガス下、1,000℃〜1,600℃の温度で加熱して炭素繊維化する工程である。
前記炭素化繊維化工程における加熱温度が1,200℃〜1,400℃であると、より弾性率及び強度に優れた前記PBI炭素繊維を製造することができる。
また、前記PBI繊維は、前述の通り、急速な昇温速度で高速炭素化処理を行っても繊維形状が維持される特徴を有する。
したがって、前記加熱時における昇温速度としては、特に制限はなく、5℃/分といった低速から、15℃/秒〜1,000℃/秒といった高速の昇温速度とすることができる。
なお、前記不活性ガスとしては、特に制限はなく、例えば、窒素、アルゴンガス等が挙げられる。
また、前記PBI炭素繊維の製造方法としては、前記炭素化により得られる前記PBI炭素繊維の機械的特性(弾性率、強度等)を制御するため、前記炭素繊維化工程後、或いは、前記炭素繊維化工程と連続して、より高温で加熱することにより、前記PBI炭素繊維を黒鉛化する黒鉛化工程を含んでもよい。
前記黒鉛化工程(場合により、前記炭素化工程と連続した加熱工程)の加熱温度としては、特に制限はないが、2,000℃〜3,200℃が好ましい。このような加熱温度とすると、高炭素化収率、高密度で、十分な機械的特性を有する前記炭素繊維を製造することができる。
なお、前記黒鉛化工程は、前記炭素繊維化工程と同様に前記不活性ガス下で実施することが好ましい。
なお、前記PBI炭素繊維の製造方法としては、公知の炭素繊維製造プロセスで実施される表面処理、サイジング付与を実施する工程を更に含むこととしてもよい。
(前駆体繊維の調製)
<PBI前駆体繊維1>
先ず、1モルのテレフタル酸(和光純薬工業社製、販売元コードNo.208−08162)と、1モルの4,4’−ビフェニル−1,1’,2,2’−テトラアミン(アルドリッチ社製、販売元コードNo.D12384)とを重合体原料として、これらを第1の酸性溶液としてのポリリン酸(シグマアルドリッチ社製、販売元コードNo.208213)中で縮重合反応させ、PBI重合体としてのポリ2,2’−(p−フェニレン)−5,5’−ビベンゾイミダゾールを含む反応溶液を調製した。
次に、前記反応溶液を凝固浴としての水浴中に導入して前記PBI重合体を繊維状に凝固させ、1次凝固物を取得した(1次凝固物取得工程)。
前記1次凝固物をジメチルアセトアミド(DMAc)中で撹拌して不純物の洗浄を行った後、前記1次凝固物を第1の塩基性溶液としての5wt%濃度の炭酸水素ナトリウム水溶液中で撹拌して、前記1次凝固物に含まれる前記第1の酸性溶液を中和除去し、前記PBI重合体の2次凝固物を取得した。次いで、前記2次凝固物に対し、水及びアルコールを用いて洗浄を行った後、240℃で1日間真空乾燥した(2次凝固物取得工程)。
なお、前記PBI重合体の縮重合反応は、ほぼ定量的に進むことが知られているが、前記2次凝固物取得工程を実施せず、前記1次凝固物をそのまま乾燥させた場合、前記1次凝固物における前記PBI重合体の理論収量に対する収量、即ち、収率は、110%以上であり、前記PBI重合体内に前記第1の酸性溶液(ポリリン酸)が残留していることが確認されるのに対して、前記2次凝固物工程を実施した場合の収率は、98%程度であった。
次に、前記2次凝固物を第2の酸性溶液としてのメタンスルホン酸(和光純薬工業社製、販売元コードNo.138−01576)中に溶解させ、前記2次凝固物を3.2wt%含む紡糸原液を調製した。
前記紡糸原液を湿式紡糸により凝固浴としての水浴中に導入しつつ、402個のノズル孔が形成されたマルチホールノズル部材に挿通させて402本の繊維束として吐出させ、これを巻取装置で巻取ることで、前記PBI重合体の1次前駆体繊維を取得した(1次前駆体繊維取得工程)。なお、前記湿式紡糸は、巻取速度/吐出線速度で表されるジェットストレッチ比が1.5となるように、張力を掛けながら実施した。また、前記繊維束を構成する前記1次前駆体繊維1本の直径がそれぞれ20μmとなるように前記マルチホールノズル部材のノズル孔径を設定した。
次に、前記1次前駆体繊維を第2の塩基性溶液としてのトリエチルアミンのエタノール溶液の浴槽中に30秒間通過させ、前記1次前駆体繊維に含まれる前記第2の酸性溶液を中和除去し、前記PBI重合体の2次前駆体繊維を取得した。次いで、前記2次前駆体繊維に対し、水洗を行った後、乾燥させた(2次前駆体繊維取得工程)。
得られた前記2次前駆体繊維内に前記第2の酸性溶液が残留していないか確認するため、CHNS元素分析を行なった。なお、前記CHNS元素分析は、前記第2の酸性溶液としての前記メタンスルホン酸中の硫黄成分(S成分)を検出することとして実施するものである。
分析の結果、前記2次前駆体繊維中に硫黄成分(S成分)が検出されず、前記メタンスルホン酸が完全に中和除去されたことが確認された。
以上により、2次前駆体繊維としてのPBI前駆体繊維1を調製した。
<PBI前駆体繊維2>
前記PBI前駆体繊維1の調製において、前記マルチホールノズル部材のノズル孔径の設定を変更し、1本の繊維直径が11μmとなるように調整したこと以外は、前記PBI前駆体繊維1の調製方法と同様にして、PBI前駆体繊維2を調製した。
<PBI前駆体繊維3>
前記PBI前駆体繊維1の調製において、前記2次前駆体繊維取得工程に代えて、前記1次前駆体繊維に対して水の浴槽中に30秒間通過させた後、水洗、乾燥させて前記2次前駆体繊維を取得した。
前記PBI前駆体繊維1の調製方法と同様にして、1本の繊維直径が11μmのPBI前駆体繊維3を調製した。
このPBI前駆体繊維3に対し、前記CHNS分析を行ったところ、前記2次前駆体繊維中に硫黄成分(S成分)が8%程度検出され、前記メタンスルホン酸が完全に中和除去されていないことが確認された。
<PBI前駆体繊維4>
前記PBI前駆体繊維1の調製において、前記マルチホールノズル部材に代えてノズル孔径が250μmのシングルホールノズル部材を用い、1本の繊維直径が40μmとなるように調整して繊維を取得し、前記2次前駆体繊維取得工程を経ることなく、これをそのまま乾燥させてPBI前駆体繊維4を調製した。
(前駆体繊維の炭素化)
<実施例1>
前記2次前駆体繊維としてのPBI前駆体繊維1に対し、窒素雰囲気下で、室温から1,000℃の所定昇温温度まで10℃/分の昇温速度で加熱し、更に、前記所定昇温温度で10分間加熱を継続し、PBI前駆体繊維1を炭素繊維化させ、実施例1に係るPBI炭素繊維を製造した(炭素繊維化工程)。なお、実施例1に係るPBI炭素繊維1本の直径は、16μmであり、以降に説明する実施例2〜7に係る各PBI炭素繊維1本の直径も同様であった。
<実施例2>
実施例1の炭素繊維化工程において、前記所定昇温温度を1,000℃から1,100℃に変更したこと以外は、実施例1の炭素繊維化工程と同様にして、実施例2に係るPBI炭素繊維を製造した。
<実施例3>
実施例1の炭素繊維化工程において、前記所定昇温温度を1,000℃から1,200℃に変更したこと以外は、実施例1の炭素繊維化工程と同様にして、実施例3に係るPBI炭素繊維を製造した。
<実施例4>
実施例1の炭素繊維化工程において、前記所定昇温温度を1,000℃から1,300℃に変更したこと以外は、実施例1の炭素繊維化工程と同様にして、実施例4に係るPBI炭素繊維を製造した。
<実施例5>
実施例1の炭素繊維化工程において、前記所定昇温温度を1,000℃から1,400℃に変更したこと以外は、実施例1の炭素繊維化工程と同様にして、実施例5に係るPBI炭素繊維を製造した。
<実施例6>
実施例1の炭素繊維化工程において、前記所定昇温温度を1,000℃から1,500℃に変更したこと以外は、実施例1の炭素繊維化工程と同様にして、実施例6に係るPBI炭素繊維を製造した。
<実施例7>
実施例1の炭素繊維化工程において、前記所定昇温温度を1,000℃から1,600℃に変更したこと以外は、実施例1の炭素繊維化工程と同様にして、実施例7に係るPBI炭素繊維を製造した。
<実施例8>
前記2次前駆体繊維としてのPBI前駆体繊維2に対し、窒素雰囲気下で、室温から1,000℃の所定昇温温度まで10℃/分の昇温速度で加熱し、更に、前記所定昇温温度で10分間加熱を継続し、PBI前駆体繊維2を炭素繊維化させ、実施例8に係るPBI炭素繊維を製造した(炭素繊維化工程)。なお、実施例8に係るPBI炭素繊維1本の直径は、9μmであり、以降に説明する実施例9〜14に係る各PBI炭素繊維1本の直径も同様であった。
<実施例9>
実施例8の炭素繊維化工程において、前記所定昇温温度を1,000℃から1,100℃に変更したこと以外は、実施例8の炭素繊維化工程と同様にして、実施例9に係るPBI炭素繊維を製造した。
<実施例10>
実施例8の炭素繊維化工程において、前記所定昇温温度を1,000℃から1,200℃に変更したこと以外は、実施例8の炭素繊維化工程と同様にして、実施例10に係るPBI炭素繊維を製造した。
<実施例11>
実施例8の炭素繊維化工程において、前記所定昇温温度を1,000℃から1,300℃に変更したこと以外は、実施例8の炭素繊維化工程と同様にして、実施例11に係るPBI炭素繊維を製造した。
<実施例12>
実施例8の炭素繊維化工程において、前記所定昇温温度を1,000℃から1,400℃に変更したこと以外は、実施例8の炭素繊維化工程と同様にして、実施例12に係るPBI炭素繊維を製造した。
<実施例13>
実施例8の炭素繊維化工程において、前記所定昇温温度を1,000℃から1,500℃に変更したこと以外は、実施例8の炭素繊維化工程と同様にして、実施例13に係るPBI炭素繊維を製造した。
<実施例14>
実施例8の炭素繊維化工程において、前記所定昇温温度を1,000℃から1,600℃に変更したこと以外は、実施例8の炭素繊維化工程と同様にして、実施例14に係るPBI炭素繊維を製造した。
<比較例1>
実施例1の炭素繊維化工程において、PBI前駆体繊維1に代えてPBI前駆体繊維3を炭素繊維化させたこと以外は、実施例1の炭素繊維化工程と同様にして、比較例1に係るPBI炭素繊維を製造した。
<比較例2>
実施例6の炭素繊維化工程において、PBI前駆体繊維1に代えてPBI前駆体繊維4を炭素繊維化させたこと以外は、実施例6の炭素繊維化工程と同様にして、比較例2に係るPBI炭素繊維を製造した。
<電子顕微鏡による構造確認>
実施例3,10に係る各PBI炭素繊維及び比較例1に係るPBI炭素繊維の断面電子顕微鏡像(SEM像)を図1(a)〜(d)に示す。なお、図1(a)が実施例3に係るPBI炭素繊維の断面電子顕微鏡像を示す図であり、図1(b)が実施例10に係るPBI炭素繊維の断面電子顕微鏡像を示す図であり、図1(c),(d)が比較例1に係るPBI炭素繊維の断面電子顕微鏡像を示す図である。
これら図1(a)〜(d)に示すように、実施例3,10に係る各PBI炭素繊維は、断面形状が真円形に近く、繊維間での膠着が少ない炭素繊維であるのに対し、比較例1に係るPBI炭素繊維は、断面形状が楕円形であり、繊維間で激しく膠着していることが確認される。
<単繊維引張試験>
実施例1〜14に係る各PBI炭素繊維に対し、JIS7606法に従って単繊維引張試験を行い、各PBI炭素繊維1本の引張弾性率及び引張強度の測定を行った。
測定結果を図2(a)、(b)に示す。なお、図2(a)が引張弾性率の測定結果を示す図であり、図2(b)が引張強度の測定結果を示す図である。また、各図中の値は、10回の試験の平均値をヒストグラムで表したものに係り、エラーバーは、試験中の最大値と最小値を示している。
これら図2(a),(b)に示すように、実施例1〜14に係る各PBI炭素繊維は、引張弾性率が全て100GPa以上の高い値を示し、更に、150GPa以上の高い値を示すことが確認された。また、引張弾性率は、全て0.8GPa以上の高い値を示すことが確認された。引張弾性率及び引張強度のそれぞれでこのような高い値が、9μm、16μmといった太径の炭素繊維でも得られることは、本発明に係るPBI炭素繊維の有利な特徴と考えられる。中でも、炭素化処理温度が1,200℃〜1,400℃である実施例3〜5,10〜12に係る各PBI炭素繊維が比較的高い引張弾性率と引張強度を兼ね備えることが確認された。
なお、比較例1に係るPBI炭素繊維は、繊維間での膠着が激しく、単繊維の取出しを行うことができなかったため、引張弾性率及び引張強度の測定を行うことができなかった。しかしながら、塩として残留した溶媒分子が熱処理において放出される際に炭素繊維中に欠陥を発生させるため、その欠陥を起点とする破断が起こり、その結果、得られる引張弾性率及び引張強度は、低いものと考えられる。
また、比較例2に係るPBI炭素繊維に対し、前記単繊維引張試験を行ったところ、引張弾性率が85GPaであり、引張強度が720MPaであった。
<到達可能強度の推定>
特に優れた引張弾性率と引張強度を備える実施例11に係るPBI炭素繊維(炭素化処理温度が1,300℃)について、更に、到達可能強度の推定を下記参考文献1に従って行った。図3に到達可能強度の推定条件を説明する説明図を示す。なお、到達可能強度とは、集束イオンビームによって表面ノッチを図3に示す通りに導入した炭素繊維に対し、前述の単繊維引張試験を行い、ノッチ先端部の応力集中を考慮することによって推定される無欠陥強度のことを示す。この到達可能強度は、下記数式(1),(2)によって計算される。
ただし、前記数式(1)及び(2)中、σは、到達可能強度を示し、σは、引張荷重を繊維断面積で除した値を示し、αは、応力集中率、cは、ノッチ深さ、ρは、ノッチ先端部分の曲率半径である。
以上の到達可能強度を実施例11に係るPBI炭素繊維に対して算出したところ、到達可能強度の推定値は、5.2GPaであり、極めて高い値であることが確認された。このことは、前記1次前駆体繊維取得工程及び前記2次前駆体繊維取得工程の条件を最適化することによって繊維中の欠陥を減らすことが可能であることから、前記各実施例で得られた値以上の引張強度を期待することができる。
参考文献1;M. Shioya, H. Inoue, Y. Sugimoto, Carbon, v65, 63-70 (2013)
(高速炭素化)
<実施例15>
前記2次前駆体繊維としてのPBI前駆体繊維1に対し、キュリーポイントパリロライザ(日本分析工業社製)を用いて、窒素雰囲気下、0.2秒間に室温から1,040℃まで急速に昇温させ、5秒間保持する高速炭素化処理を行い、実施例15に係るPBI炭素繊維を製造した。
<実施例16>
実施例15に係るPBI炭素繊維の製造において、PBI前駆体繊維1に代えてPBI前駆体繊維2を用いたこと以外は、実施例15に係るPBI炭素繊維を製造方法と同様にして、実施例16に係るPBI炭素繊維を製造した。
<電子顕微鏡による構造確認>
実施例15,16に係る各PBI炭素繊維の断面電子顕微鏡像(SEM像)を図4(a),(b)に示す。なお、図4(a)が実施例15に係るPBI炭素繊維の断面電子顕微鏡像を示す図であり、図4(b)が実施例16に係るPBI炭素繊維の断面電子顕微鏡像を示す図である。
これら図4(a),(b)に示すように、実施例15,16に係る各PBI炭素繊維は、断面形状が真円形に近く、繊維間での膠着が少ない炭素繊維である。
(PBI炭素繊維の特徴)
本発明に係るPBI炭素繊維の他の炭素繊維と異なる特徴を明らかにするため、密度、結晶性及びミクロボイド(空孔)の各測定を行った。
<密度の測定>
浮沈法により、実施例1〜6,8〜13に係る各PBI炭素繊維の密度を測定した。この密度の測定結果を図5に示す。
この図5に示すように、実施例1〜6,8〜13に係る各PBI炭素繊維の密度は、高くとも約1.7g/cm程度であった。
市販されるPAN系炭素繊維の密度が1.75g/cm〜1.85g/cmの範囲内であることから、本発明に係るPBI炭素繊維は、他の炭素繊維よりも低密度であることがわかる。
<結晶性の測定>
炭素繊維の黒鉛結晶性を指標とするパラメータとして、炭素網面の面間隔c/2及び炭素網面の積層厚Lを測定した。黒鉛結晶における炭素網面の面間隔c/2及び炭素網面の積層厚Lを示す概略図を図6(a)に示す。なお、図6(a)中の符号1a,1b,1cは、炭素網面を示す。
炭素網面の面間隔c/2及び炭素網面の積層厚Lの測定は,Niフィルターで単色化されたCuKα線をX線源とするX線回折装置により、広角X線回折プロファイルを測定することにより行なった。即ち、図6(b)に示す赤道方向の光学系について、赤道方向プロファイルの2θ=26°付近に観察される(002)のピークから、炭素網面の面間隔c/2及び炭素網面の積層厚Lcを求めた。なお,図6(b)は,広角X線回折プロファイルを測定する際の光学系を示す概略図であり、検出器を繊維軸に対して垂直な方向すなわち赤道方向を示したものである。
実施例6,13に係る各PBI炭素繊維(炭素化処理温度1,500℃)の面間隔c/2及び積層厚Lcを下記表1に示す。
また、実施例6,13に係る各PBI炭素繊維を、更に、2,800℃の黒鉛化温度にて加熱し、黒鉛化処理をした各PBI炭素繊維の面間隔c/2及び積層厚Lcを併せて下記表1に示す。
上記表1に示した実施例6,13に係る各PBI炭素繊維の面間隔c/2及び積層厚Lcは、それぞれ下記参考文献2,3に記載されている、ほぼ同様の炭素化処理(1,500℃での炭素化処理)を施されたPAN系炭素繊維の面間隔c/2及び積層厚Lcと同程度であったが、ほぼ同様の炭素化処理を施されたピッチ系炭素繊維と比較すると、面間隔c/2が広く、積層厚Lcが薄い結果であった。即ち、本発明に係るPBI炭素繊維は、ピッチ系炭素繊維と比較して、面間隔c/2が広く、積層厚Lcが薄いことから、両者を区別することができる。
更に、実施例6,13に係る各PBI炭素繊維を2,800℃で黒鉛化処理した各炭素繊維の面間隔c/2及び積層厚Lcは、図7に示すように、それぞれ下記参考文献2,3に記載されているのと、ほぼ同様の黒鉛化処理を施されたPAN系あるいはピッチ系黒鉛繊維と比較した場合に、同様の面間隔c/2において、積層厚Lcが薄いという特徴を有し、これによりPAN系、ピッチ系炭素繊維と区別することができる。
参考文献2;E. Fitzer, Carbon 27, 5, 621 (1989)
参考文献3;A. Takaku, et al., J. Mater. Sci., 25, 4873 (1990)
<ミクロボイドの測定>
炭素繊維のミクロボイド(空孔)を評価するパラメータとして、炭素繊維に含まれるミクロボイド体積及びミクロボイドの平均断面積を測定した。
炭素繊維に含まれるミクロボイド体積及びミクロボイドの平均断面積の測定には、Niフィルターで単色化されたCuKα線をX線源とするX線回折装置により、小角X線散乱プロファイルを測定することにより行なった。即ち、図6(b)に示す赤道方向の光学系について、2θ=0.5°〜8°の範囲の赤道方向プロファイルに観察される散乱パターンから、ミクロボイド体積及びミクロボイドの平均断面積を求めた。なお、これらの解析法及び算出法は、前記参考文献3に記載の方法に準じた方法である。
また、前記ミクロボイド体積及び前記ミクロボイドの平均断面積に関し、比較対象としては、PAN系炭素繊維として市販されているものとして代表的な東レ社製T300(参考例1)及び東邦テナックス社製IMS60(参考例2)とした。
先ず、実施例1〜6,8〜13に係る各PBI炭素繊維のミクロボイド体積分率を図8に示す。この図8に示すように、実施例1〜6,8〜13に係る各PBI炭素繊維のミクロボイド体積は、参考例1及び2の値(参考例1;4.9%、参考例2;5.7%)に比べて同等かそれよりも小さい値を示し、破壊の原因となるミクロボイドの発生が少ないことを示している。
次に、実施例1〜6,8〜13に係る各PBI炭素繊維のミクロボイド平均断面積を図9に示す。この図9に示すように、実施例1〜6,8〜13に係る各PBI炭素繊維では、ミクロボイド平均断面積について、大きな差異がみられないが、この図9に示すミクロボイド平均断面積の値は、参考例1及び2の値(参考例1;2.52nm、参考例2;2.11nm)に比べて半分程度と極めて小さい値であった。
1a,1b,1c 炭素網面
c/2 炭素網面の面間隔
炭素網面の積層厚

Claims (1)

  1. 下記一般式(1)及び(2)のいずれかで表される構造を構造単位とするポリベンズイミダゾールを含む前駆体繊維を加熱して炭素繊維化させた構造を有し、引張弾性率が100GPa以上であり、引張強度が0.8GPa以上であり、かつ、繊維直径が8μm以上の連続繊維であることを特徴とするポリベンズイミダゾール炭素繊維。
    ただし、前記一般式(1)及び(2)中のR及びRは、それぞれ下記構造式(1)〜(10)のいずれかの構造で表される3価又は4価のアリール基又は不飽和複素環式基を示し、Rは、前記構造式(1)〜(10)のいずれかの構造で表される2価のアリール基又は不飽和複素環式基、炭素数2〜4のアルケニレン基、酸素原子、硫黄原子及びスルホニル基のいずれかを示す。

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