JP6427110B2 - アスペルギルスニガー由来の新規グルコース酸化酵素 - Google Patents

アスペルギルスニガー由来の新規グルコース酸化酵素 Download PDF

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Description

本発明は、新規グルコース酸化酵素変異体に関する。本明細書において提供されるグルコース酸化酵素は、基質グルコースに特異的であり、そして、これにより、顕著に低下した酸素消費速度を示す。別の態様において、本発明は、基質グルコースに特異的であり、そして、これにより、顕著に低下した酸素消費速度および/または酸素以外の電子メディエーターに対する増大した酵素活性を示すグルコース酸化酵素を提供する。さらに、本発明は、グルコースの測定のためのキットおよびセンサーにおける使用のための前記グルコース酸化酵素に関する。
特には、本発明は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、追加で、S53;A137;A173;A332;F414;およびV560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を有するアスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)由来のグルコース酸化酵素に関する。
糖尿病は、世界中に広く見られ得る代謝性疾患である。糖尿病患者は、血糖のレベルを制御するインシュリンホルモンの産生が損なわれている、または産生が失なわれており、したがって、これら患者には、高血糖のリスクと同時に不適切なインシュリン適用の場合の低血糖のリスクがある(非特許文献1)。
高度に特異的であり、正確、かつ取扱いが容易なグルコース測定システムの正確な適用を確実なものとするには、自己測定システムおよび臨床スケールでのハイスループットな測定システムの両方が必要である。
血液中のグルコース濃度の適切な測定を可能とするためおよび測定を高度に特異的なものとするため、酵素的反応が関与している。今日まで、糖尿病分析において使用されている2種類の酵素として、グルコース脱水素酵素(以下「GDH(s)」)およびグルコース酸化酵素(以下「GOx(s)」)が示されている(非特許文献2)。
GDHsの主たる利点は、その酸素−非依存的グルコース酸化であるが、酵素はある種の他の臨床上関連する糖に対するわずかな副活性(side-acrivities)を示し、そしてこのため、GDHは非特異的である(非特許文献3)。これとは対照的に、GOxsは、グルコースに高度に特異的であるが、しかしながら、その酸化は、強い酸素依存性を示す(非特許文献4、非特許文献5)。
より詳細には、フラビンタンパク質としてのGOxsは、酸化還元酵素のファミリー(すなわち、β−D−グルコース:酸素 1−酸化還元酵素)に属する。天然または野生型(以下、「WT」)のGOxsは、電子受容体として酸素分子を用いることによるβ−D−グルコースのD−グルコノ−δ−ラクトンおよびH22への酸化を触媒する(例えば、非特許文献6などを参照のこと)。前記反応は、以下の式:
D−グルコース+O2→グルコノラクトン+H22
によって表される。
GOxsの基質は、2つの群に分けられ得る。すなわち、i)酸化的半反応の電子受容体、およびii)還元的半反応の電子供与体、例えば、非特許文献7などを参照のこと。当業者であれば、D−グルコースの他に、D−グルコースの様々な誘導体がGOxsの還元的半反応における潜在的な基質であることを認識する。
種々の起源からのGOxsがこれまでに開示されてきている。例えば、海藻ヤハズツノマタ(chondrus crispus)由来のGOxが特許文献1および特許文献2に記載されており、糸状菌クラドスポリウム(Cladosporium)種由来のGOxが特許文献3および特許文献4に記載されており、そして、タラロマイセス フラバス(Talaromyces flavus)由来のGOxが特許文献5に記載されている。
文献において最もよく記載されているGOxは、アスペルギルス ニガー由来のものである(非特許文献8、非特許文献9)。
特許文献6は、組換えシステムにおけるアスペルギルス ニガー由来のGOxsの産生を記載しており、そして特許文献7は、向上された保管安定性をもたらす組成物中に処方されているアスペルギルス ニガーから得られたGOxに関する。
それは大きさが160kDaである二量体を形成する特性が良く明らかにされているタンパク質であり、そして、その結晶構造は解析されている(非特許文献10)。
さらに、特にアスペルギルス ニガーの野生型のGOx(以下、「GOx−WT」)が、顕著な温度安定性および基質グルコースへの特異性を示すことが知られている。GOxは高マンノース型糖鎖の含有量が10〜16%である糖タンパク質である(非特許文献11、非特許文献12)。
今日では、GOxsは、工業用溶液中または被験者の体液中、例えば血液および尿中などのグルコースの検出のためのバイオセンサーにおいて一般に使用されている。
現在入手可能な自己測定装置の大部分は、原則的に
a)生物化学的成分、すなわち基質としてグルコースを有する各酵素、
b)インジケーター(電子的成分)、および
c)シグナル変換子
からなる電気化学的センサーである。
測定装置において、グルコースからの電子は、生物学的成分によって、(a)電極へと、(b)メディエーターを介して、移動される。シグナル変換子が、(c)その後、電気的信号を、移動された電子の量に比例しているリアルタイムのグルコース濃度へと変換する。
前述の電気化学的センサー以外に、測光センサーもまた使用され得る。ここでの違いは、グルコースからの電子が酸化還元インジケーター色素(インジケーターとして作用する)へと移動されていることである。還元された色素の結果として生じる色の変化が測光法で測定される。
他の主たる応用は、血流からのグルコースを燃焼そしてそれによって微小な診断装置またはポンプを動力で動かす埋め込まれたおよび微小化されたバイオ燃料セルの陽極コンパートメント中におけるGOxsの使用であり得る。
さらに、食品産業におけるGOxの応用は、抗菌効果を有する過酸化水素を産生するその能力が、ある種の食品製品、例えばチーズ、バターおよびフルーツジュースなどの保管安定性を改良するために使用され得るため、多数存在する。
化粧用組成物中でのGOxsの応用もまた、抗菌特性を利用し得る。医薬組成物および化粧用組成物におけるヘキソースオキシダーゼの使用の可能性が、例えば特許文献2、特許文献8および特許文献9に提案された。
さらに、GOxの使用は、害虫または病気へのより低下された感受性または増加された抵抗性を有する遺伝子組換えの植物および他の生物の産生において提案されている(特許文献10参照のこと)。
しかしながら、グルコースバイオセンサーにおけるGOxsの使用は、本発明によれば、非常に興味深いものである。この点について、特許文献11は、金属表面へのその付着性について改良された遺伝子組換えのGOx変異体を含むグルコースセンサーを開示している。
Zhuらは、2006および2007年に、T30Vおよび/またはI94Vで突然変異されているアスペルギルス ニガー由来のGOxの突然変異体を開示した。そして、対応する二重変異体T30V;I94Vもまた開示されている(非特許文献13、非特許文献14)(以下、「Zhuら、2006/2007」)。
特には、T30VおよびI94Vの置換を有する前述の二重変異体は、GOx−WTと比較して、酵素活性においてわずかに増大(kcatが69.5/sから137.7/sへ)しており、58℃〜62℃の範囲における増大された熱安定性、および、8〜11の範囲における向上されたpH安定性を示す。しかしながら、アスペルギルス ニガー由来の前記二重変異体は、GOx−WTと比較して等しい酸素消費速度を示す。
特許文献12は、GOx活性を有するが以下のアミノ酸位置、2、13、30、94および152位の少なくとも3つの位置で突然変異されている核酸分子およびそのポリペプチドを記載する。特に、特許文献12に記載の、N2Y、K13E、T30V、I94V、およびK152Rの置換を有するM12変異体は、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における増加された発現レベルに加えて、電子受容体としての酸素に対する2倍に増大された活性を示している。
Horaguchiら(非特許文献15)は、2012年に、ペニシリウム アマガサキエンス(Penicillium amagasakiense)のGOxおよびアスペルギルス ニガーのGOx変異体である、そこで記載されているGOx変異体の酸化的半反応に関与している1つのアミノ酸残基の位置を同定した。その一つの位置は、ペニシリウム アマガサキエンスGOx変異体のS114であり、および、アスペルギルス ニガー変異体の対応するT110である。両方の位置が、電子受容体としての酸素に対する活性における低下をもたらすアミノ酸アラニンによって置換された。例えば、アスペルギルス ニガーのGOx変異体は、6.6倍の低下した酸素消費を示し、そして、これゆえ、363%のメディエーター活性に加えて、30.4%の低下した酸素活性を有していた。
米国特許第7,544,795号明細書 米国特許第6,924,366号明細書 国際公開第95/29996号 国際公開第1998/020136号 米国特許第6,054,318号明細書 国際公開第89/126675号 国際公開第2008/079227号 米国特許第6,251,626号明細書 国際公開第2007/045251号 国際公開第1995/021924号 国際公開第2009/104836号 欧州特許出願公開第2415863号明細書
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グルコースに非特異的であるGDHsおよび酸素依存性GOxsは、現在のグルコース測定システムのカギとなる酵素である。
本発明の開示における意味において、「グルコースに非特異的(unspecific for glucose)」、「酸素依存度(oxygen-dependent)」および「酸素依存性(oxygen-dependency)」という表現は、定義の項において規定される意味を有する。
本発明の根底にある課題に対する解法は、特に修飾されそしてそれゆえ最適化された、真菌アスペルギルス ニガー由来のGOx変異体を提供することである。
驚くべきことに、および予期せぬことに、本発明者らは、グルコースに特異的であるが、グルコース酸化のための酸素には非依存性であり、したがってグルコース測定においてより正確であるアスペルギルス ニガー由来の新規GOx変異体を発見した。
さらに、本発明は、驚くべきことに、および予期せぬことに、グルコースに特異的であり、したがって、顕著に低減された酸素消費速度および/または酸素以外の電子メディエーターに対する顕著に増加されたメディエーター活性を示す、新規GOx変異体を提供する。
本明細書で提供されるGOx変異体における、酸素に対する活性の測定の原理を示す図である。GOxの還元的半反応のあいだに産生されるH22およびHRPが発色剤ABTSを酸化するために使用される。ABTSの色の変化が414nmでの吸収によってモニターされる。この原則は、材料および方法の段落のgg)の項において記載されるABTSアッセイの原則を形成する。 媒介された電子移動を検出するためのメディエーターアッセイまたはPMOアッセイ(りんモリブデン酸)を示す図である。メディエーター化合物はGOxの還元的半反応のあいだ2段階で還元される。メディエーターは酸化還元インジケーターPMOに2電子を移動し、そして、PMOはその後還元される。還元のあいだのPMOの色の変化が700nmでの吸収によってモニターされる。 本発明によるタンパク質構造中の、アミノ酸置換のための6つの位置の明確な場所を示す図である。 本発明による種々のGOx変異体の酸素消費速度を示す図である。a)時間の関数としての相対的酸素濃度の進行。アッセイの実施材料および方法の段落のhh)の項において記載される。酵素は2U/Lに標準化された。 本発明による種々のGOx変異体の酸素消費速度を示す図である。b)1分あたりの相対的酸素消費速度。アッセイの実施材料および方法の段落のhh)の項において記載される。酵素は2U/Lに標準化された。 本発明による種々のGOx変異体のミカエリス−メンテン速度論を示す図である。活性の測定のために、特性評価のためのメディエーターアッセイが材料および方法の段落のff)の項において説明されるように適用された。点線は、最小二乗法を適用するマイクロソフトエクセルで計算された。 本発明による種々のGOx変異体の温度安定性特性を示す図である。アッセイは、材料および方法の段落のii)の項において説明されるように実施された。追加のコントロールとして、脱グリコシル化されたおよび過度にグリコシル化されたGOxが使用された。 GOx−WT、GOx−T30V;I94V、および本発明のGOx変異体V(すなわち、T30VおよびI94Vの置換に加えた、A173V;A332S;F414I;V560T)の相対的酸素消費速度を示す図である。アッセイの実施は、材料および方法の段落のhh)の項において記載される。酵素濃度は1.7mg/Lに標準化された。 グルコースと比較した異なる糖に対する、GOx−WT、GOx−T30V;I94VおよびGOx変異体EZ07の残余活性を示す図である。残余活性の測定のため、特性評価のためのメディエーターアッセイが材料および方法の段落のff)の項において記載されるように適用された。基質濃度は、反応混合物中181.8mMであった。 GOx−WT、GOx−T30V;I94VおよびGOx変異体EZ07に関する酵素パラメータを示す図である。パラメータはマイクロソフトエクセルにおける最小二乗法を適用しているミカエリス−メンテンにしたがって計算された。活性測定のため、特性評価のためのメディエーターアッセイが材料および方法の段落のff)の項において記載されるように適用された。 25℃〜67℃のあいだの種々の温度において15分間インキュベーションした後の、GOx−WT、GOx−T30V;I94VおよびGOx変異体EZ07の残余活性を示す図である。
本発明の主題は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、追加で、S53;A137;A173;A332;F414;およびV560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を有する新規GOx変異体である。
本開示の意味において、「グルコースに対する酵素特異性(enzyme specificity for glucose)」または「グルコースに特異的(specific for glucose)」との表現は、本明細書において提供されるGOxsの基質グルコースに対する活性が、材料および方法の段落のff)の項において記載されるメディエーターアッセイによって決定される場合に、99.5%より大きい、または99.9%より大きいこと、特には、100%であることを示す。これは暗に、グルコース以外の糖、例えばガラクトース、マルトース、キシロース、およびマルトトリオースなどに対する本明細書で提供されるGOxsの残余活性が、材料および方法の段落のff)の項において記載されるメディエーターアッセイによって決定される場合に、6%より小さいことを示している。
本発明の開示の意味において、「顕著に低減された酸素消費速度(significantly reduced oxygen-consumption rates)」との表現は、本明細書において提供されるGOxs変異体において、酸素依存性が、材料および方法の段落のgg)の項において記載されるABTSアッセイにしたがって発色剤ABTSの酸化によって間接的に測定される場合に、3分間で残存酸素含有量が95%より大きいことを示す。
本発明の開示の意味において、「顕著に低減された酸素活性(significantly reduced oxygen activity)」または「電子受容体としての酸素に対する顕著に低減された活性(significantly reduced activity for oxygen as electron acceptor)」との表現は、材料および方法の段落のgg)の項において記載されるABTSアッセイによって決定される場合の残余の酸素活性が、30%以下、または25%より小さい、または20%より小さい、特には15%より小さい、または10%以下であることによって特徴付けられるGOx活性を示す。
本発明の開示の意味において、「顕著に増大されたメディエーター活性(significantly increased mediator activity)」または「酸素以外の電子メディエーターに対する顕著に増大された活性(significantly increased activity for electron mediators other than oxygen)」との表現は、材料および方法の段落のff)の項において記載されるメディエーターアッセイによって測定される場合に、配列番号1に記載されるグルコース酸化酵素の酸素以外の電子メディエーターに対する活性の少なくとも1.5倍の、増大した活性によって特徴付けられるGOx活性を示す。
本発明のこのように最適化されたGOx変異体は、改良された血糖測定システムに組み入れられることに適している。
発明の概要
驚くべきことに、および予期せぬことに、本発明者らは、Zhuら(2006、2007)において記載されたGOxの二重突然変異体T30V;I94V(以下、「GOx−T30V;I94V」と略される)が、基質グルコースに対する特異性を維持しながら、顕著に低減されたオキシダーゼ活性および同時に顕著に増大されたデヒドロゲナーゼ活性を有する酸素非依存性のGOx変異体を得るためのさらなる特異的アミノ酸置換(または複数の置換)の基礎として適切であることを発見した。さらに、本発明者らは、本発明にしたがい、追加でまたは単独で酸素以外の電子メディエーターに対する顕著に増大されたメディエーター活性を示すGOx変異体を発見した。この意味において、本発明者らはまた、本発明にしたがい、電子移動のための酸素以外の特定の電子メディエーターを受容するGOx変異体を発見した。したがって、本発明によるGOx変異体は、改良されたグルコース測定、とりわけ、改良された血糖測定に適切である。
本開示の意味において、「電子移動のための酸素以外の特定の電子メディエーターを受容する(accept certain electron mediators other than oxygen for electron transfer)」との表現は、本明細書において提供されるGOxの、ニトロソアニリンおよびその誘導体、アゾ化合物、フェナジンおよびその誘導体、フェノチアジンおよびその誘導体、フェノキサジンおよびその誘導体、フェロセンおよびその誘導体、フェリシアン化カリウム、Ru−およびOS−錯体、キノンおよびその誘導体、インドールフェノール、ビオロゲン、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、ならびに、フタロシアニンを含む群より選択される、媒介される電子移動のためのメディエーターと相互作用し、そして受容する能力を示す。
本発明は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、追加で、S53;A137;A173;A332;F414;およびV560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を有するアスペルギルス ニガー由来のGOx変異体に関する。
別の態様において、本発明は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、追加で、A173;A332;F414;およびV560の群より選択される4の位置のうちの任意の位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を有するアスペルギルス ニガー由来のGOx変異体に関する。
さらなる態様において、本発明は、配列番号1に記載のGOxのS53;A137;A173;A332;F414;およびV560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に、少なくとも2つ、または3つ、または4つ、または5つ、またはさらに6つの協同的な、そしてしたがって種々のアミノ酸置換を有し、これによって酸素消費速度における顕著な低下がもたらされているGOx変異体に関する。
さらに、本発明は、配列番号1に記載のGOxのS53;A137;A173;A332;F414;およびV560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に、少なくとも2つ、または3つ、または4つ、または5つ、またはさらに6つの協同的な、そしてしたがって種々のアミノ酸置換を有し、これによって酸素消費速度における顕著な低下および/または酸素以外の特定の電子メディエーターに対するメディエーター活性における顕著な増加がもたらされているGOx変異体に関する。
これにより、本発明の発明者らは、GOx−WTおよび配列番号1に記載のGOx−T30V;I94Vと比較してそのオキシダーゼ活性が顕著に低下されており、一方、同時に、酵素のデヒドロゲナーゼ活性は、GOx−WTおよびGOx−T30V;I94Vと比較して顕著に増大されているGOx変異体を提供することが可能となった。
この意味において、さらに、F414およびV560位における特異的なアミノ酸置換が、材料および方法の段落のgg)の項において記載されるABTSアッセイにおいて、GOx−WTおよびGOx−T30V;I94Vと比較した場合に、本明細書において提供されるGOx変異体の酸素消費速度を顕著に低下させることは予期できない、および驚くべき発見である。前記置換のために適切なアミノ酸は、残りの全ての19個のタンパク質を構成するアミノ酸である、特には、適切なアミノ酸は、F414位に関して、Arg、Asn、Asp、Cys、Gly、His、Met、Ile、Leu、Ser、Thr、Tyr、およびVa、ならびに、V560位に関して、Ala、Ile、Leu、Met、Pro、Tyr、Thr、およびValである。
他の予期せぬおよび驚くべき発見として、本明細書において提供されるGOx変異体において、T30VおよびI94Vの2つの置換に加えて、F414およびV560位の両方における組み合わされた特異的なアミノ酸置換が、GOx−T30V;I94Vと比較した場合に、酸素以外の電子メディエーターに対するメディエーター活性を顕著に増大させる。前記置換のために適切なアミノ酸は、残りの全ての19個のタンパク質を構成するアミノ酸である、特には、適切なアミノ酸は、F414位に関して、Arg、Asn、Asp、Cys、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Tyr、およびVal、ならびに、V560位に関して、Ala、Ile、Leu、Met、Pro、Thr、Tyr、およびValである。
さらなる発見として、本発明は、本明細書において提供されるGOx変異体において2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、A173位およびA332位のそれぞれが、GOx−WTおよびGOx−T30V;I94Vと比較した場合に、GOx活性における増大を一般的に導くことを明らかにしている。前記置換のために適切なアミノ酸は、残りの全ての19個のタンパク質を構成するアミノ酸である、特には、適切なアミノ酸は、A173位に関して、Ile、Thr、およびVa、ならびに、A332位に関して、SerおよびAsnである。
したがって、本発明は、当業者が、顕著に低下された酸素消費速度を有するGOx変異体を取得することを可能にする。
加えて、本発明は、当業者が、特異的なアミノ酸置換(または複数の置換)を介して、顕著に低下された酸素消費速度および/または酸素以外の特定の電子メディエーターに対する顕著に増大されたメディエーター活性を、個々に、または両方の特徴を組み合わせて有するGOx変異体を、取得することを可能にする。
発明の詳細な説明
糖尿病患者は、毎日の生活のなかで正確な血糖測定を必要とする。科学的背景の項に概説されているように、既存の酵素的測定システムは、酸素依存性GOxsおよびグルコースに非特異的なGDHsに基づいている。
アスペルギルス ニガー由来のGOx−WTにおいて、オキシダーゼ活性は、そのデヒドロゲナーゼ活性と比較して約3〜4倍高い。したがって、溶解された酸素が血糖アッセイシステム中に存在している場合、基質グルコースの酸化のあいだに産生される電子は酸素へも移動されるであろう。したがって、電子メディエーターの存在下で測定された酵素活性は、溶存酸素濃度によって影響を受けるかもしれない。しかしながら、アスペルギルス ニガー由来のGOx−WTは、グルコースに特異的であり、および、十分な温度安定性を示す。
これとは対照的に、GDH(s)は、血液サンプル中に溶解されている酸素に抵抗性であるが、グルコースに対して十分に特異的ではなく、したがって、血液サンプル中に存在する他の糖タイプ、例えばマルトース、ガラクトース、キシロース、およびマルトトリオースによっても影響を受ける可能性がある。
GOxsに基づく血糖測定のあいだの溶存酸素の影響を、その有利な特性を維持したままおよびさらには増大させながら、排除することが本発明の目的であった。
したがって、本発明の発明者らは、そのオキシダーゼ活性がGOx−WTおよび配列番号1記載のGOx−T30V;I94Vと比較して顕著に低下されており、一方同時に、酵素のデヒドロゲナーゼ活性はGOx−WTおよびGOx−T30V;I94Vと比較して顕著に増大されているGOx変異体を提供することを可能としている。
本明細書において使用される「オキシダーゼ活性(oxidase activity)」とは、電子受容体として酸素を利用してグルコノラクトンを産生するためにグルコースの酸化を触媒する本明細書において提供されるGOx変異体の酵素的活性である。「オキシダーゼ活性」は、当該技術分野において公知の任意の方法によって、産生されるH22の量を測定することによってアッセイされ得る。例えば、「オキシダーゼ活性」は、例えば4AA/TODB/POD(4−アミノアンチピリン(N,N−ビス(4−スルホブチル)−3−メチルアラニン二ナトリウム塩/ホースラディッシュペルオキシダーゼ)などのH22検出のための試薬によって、またはPt電極によってアッセイされ得る。
本明細書において使用される相対的または定量的活性という意味において、オキシダーゼ活性は、25℃で、10mM PPB pH7.0、1.5mM TODB、2U/mLホースラディッシュペルオキシダーゼ(POD)、および1.5mM 4−アミノアンチピリン(4AA)中で産生されるH22の量によって測定される、単位時間当たりに酸化される基質(グルコース)のモル量であると特異的に規定される。キノンイミン色素の形成が546nmで分光光度的に測定されてもよい。
本明細書において使用される、「デヒドロゲナーゼ活性(dehydrogenase activity)」とは、電子受容体として酸素以外の電子メディエーターを利用することによってグルコノラクトンを産生するためにグルコースの酸化を触媒する本明細書において提供されるGOx変異体の酵素的活性である。「デヒドロゲナーゼ活性」は、使用された、酸素以外のメディエーターに移動された電子の量を測定することによってアッセイされ得る。
本明細書において使用されるように、相対的または定量的活性という意味において、「デヒドロゲナーゼ活性」は、25℃で、10mM PPB(pH7.0)、0.6mM メトキシPMS (mPMS)中で酸素以外のメディエーターに移動された電子の量によって測定される、単位時間当たりに酸化される基質(グルコース)のモル量であると具体的に規定される。
本開示の意味において、「電子メディエーター(electoron mediator(s))」および「酸素以外のメディエーター(mediators(s) other than oxygen)」との表現は、酸化型および還元型両方で存在することのできる有機または無機の小分子の化学物質であって、電子を迅速に供与または受容して反応する化学物質を意味する。とりわけ、「電子メディエーター」および「酸素以外のメディエーター」との表現は、グルコースのための電子受容体であり、したがって酸化型から還元型へと変換される小分子の有機または無機化学物質を意味する。これに次いで、前記メディエーターは、還元型において、電気化学的グルコース測定のための作用電極へ、または血糖アッセイシステムにおける比色測定のためのインジケーター分子へと電子を送る。いくつかの電子受容体は、それ自身によりインジケーター分子として作用し、かつ、グルコースの比色測定のために直接的に使用され得る(例えば欧州特許第831327号明細書を参照のこと)。
本発明の特定の態様において、電子メディエーターまたは酸素以外のメディエーターは、ニトロソアニリンおよびその誘導体、アゾ化合物、フェナジンおよびその誘導体、フェノチアジンおよびその誘導体、フェノキサジンおよびその誘導体、フェロセンおよびその誘導体、フェリシアン化カリウム、Ru−およびOS−錯体、キノンおよびその誘導体、インドールフェノール、ビオロゲン、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、ならびに、フタロシアニンを含む群より選択される。
より特定の別の態様において、電子メディエーターまたは酸素以外のメディエーターは、例えばフェナントリジノン、1,4−ジアミノアントラキノンおよびフェナントリジノンの金属錯体などのキノン、ならびに、例えばN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソアニリンまたはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−メトキシ−4−ニトロソアニリンなどのニトロソアニリンを含む群より選択される。最後の2つのニトロソアニリンのどちらもが、以下、「ニトロソアニリンメディエーター(nitrosoaniline mediator)」と称されるであろう。
前述されるようなこのような電気メディエーターは、例えば、米国特許第5,393,615、米国特許第5,393,615、米国特許第5,498,542、米国特許第5,520,786、国際公開第2009/129108号、米国特許出願公開第2009/0095642号明細書、国際公開第93/25898号、特開昭57−128678号公報、欧州特許第0441222号明細書、およびPrevoteau, A. et al., Electrochemistry Communications (2010), 12(2), 213-215、Berchmans, S. et al., Materials Chemistry and Physics (2003), 77(2), 390-396などに充分に記載されている。
本開示の主題に関して特に適切なものは、FADH2によって迅速に還元されるが、アスコルビン酸によっては還元されないかまたはゆっくりとしか還元されない電子メディエーターである。このようなメディエーターは例えば、2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−ジアゼンカルボアミドの誘導体などである。
本明細書において記載されている、「テーラーメイド(tailor made)」の酸素非依存性GOx変異体を作製するための方法の別の使用は、個々のGOx変異体を固定化されたメディエーターに適合させることである。
この意味において、用語「テーラーメイド(tailor made)」とは、本発明のそれぞれのGOx変異体のポリペプチド配列が、GOxが特定の固定化されたメディエーターと相互作用し、そしてそれからの電子を受容することを可能にさせることを意味している。
「特定の固定化されたメディエーター(certain immobilized mediator)」との表現は、ニトロソアニリンおよびその誘導体、アゾ化合物、フェナジンおよびその誘導体、フェノチアジンおよびその誘導体、フェノキサジンおよびその誘導体、フェロセンおよびその誘導体、フェリシアン化カリウム、Ru−およびOS−錯体、キノンおよびその誘導体、インドールフェノール、ビオロゲン、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、ならびに、フタロシアニンを含む群より選択される、電子メディエーターまたは酸素以外のメディエーターを示す。
本開示の別の非常に特定の態様において、ニトロソアニリンの群からの、特にはp−ニトロソアニリンまたはその誘導体の群からの、および特にはニトロソアニリンメディエーターまたはその誘導体のメディエーターが本発明による電子メディエーターとして好ましい。一般的に、ニトロソアニリンの群からのメディエーターは、in situで、例えばテストストリップ上で、グルコースおよびGOxと、電子メディエーターとして作用する種を形成するように反応する。グルコース測定およびメディエーター活性という文脈におけるニトロソアニリンは、Hoenes, J., Mueller, P., and Surridge, N. (2008). The Technology Behind Glucose Meters: Test Strips. Diabetes Technology & Therapeutics 10, 10-26、および欧州特許第0354441号明細書に詳細に記載されている。
上記のリストは、本発明の酸素以外のメディエーターを限定するものではなく、また当業者に公知の市販されている他の電子メディエーターもまた本開示に完全に包含される。
本開示の別の非常に特定の態様において、配列番号2から配列番号9までの配列のGOx変異体は、材料および方法の段落のff)の項において記載されるメディエーターアッセイによって測定される場合、配列番号1に記載のGOx−T30V;I94Vのそれぞれのメディエーター活性と比較して、メディエーターN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソアニリンに対して150%のメディエーター活性を示す。
本開示の別の非常に特定の態様において、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、以下
A173V;A332S;F414Y;およびV560A、または
A173V;A332S;およびF414Y
の追加のアミノ酸置換を有するGOx変異体は、材料および方法の段落のff)の項において記載されるメディエーターアッセイによって測定される場合、配列番号1に記載のGOx−T30V;I94Vのそれぞれのメディエーター活性と比較して、メディエーターN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−メトキシ−4−ニトロソアニリンに対して150%のメディエーター活性を示す。
配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えた、上記の置換
A173V;A332S;F414Y;およびV560A、または
A173V;A332S;およびF414Y
は、本明細書において提供されるGOx変異体の別の特徴、すなわち、電子移動のための酸素以外の特定の電子メディエーター、この場合ではN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−メトキシ−4−ニトロソアニリンメディエーターを受容する能力を反映する。
この意味において、「酸素以外の特定の電子メディエーター(certain electron mediator(s) other than oxygen)」との表現は、ニトロソアニリンおよびその誘導体、アゾ化合物、フェナジンおよびその誘導体、フェノチアジンおよびその誘導体、フェノキサジンおよびその誘導体、フェロセンおよびその誘導体、フェリシアン化カリウム、Ru−およびOS−錯体、キノンおよびその誘導体、インドールフェノール、ビオロゲン、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、ならびに、フタロシアニンを含む群より選択される、電子メディエーターまたは酸素以外の電子メディエーターを示す。
第1の態様において、本発明は、
a)配列番号1に記載のグルコース酸化酵素であって、2つのアミノ酸置換T30VおよびI94Vに加えて、前記配列番号1におけるS53;A137;A173;A332;F414;V560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に少なくとも1つの追加のアミノ酸置換を有するグルコース酸化酵素、または
b)b)のグルコース酸化酵素が2つのアミノ酸置換T30VおよびI94Vに加えて、前記配列番号1におけるS53;A137;A173;A332;F414;V560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に少なくとも1つの追加のアミノ酸置換を有するという条件で、a)のグルコース酸化酵素に少なくとも70%、特には少なくとも80%、または90%より高いアミノ酸配列同一性を示すグルコース酸化酵素、ただし、
b)のグルコース酸化酵素は、a)のグルコース酸化酵素の酵素活性の少なくとも70%、特には少なくとも80%、または90%より高い酵素活性を示し、および、a)のグルコース酸化酵素のグルコースに対する酵素特異性の少なくとも70%、特には少なくとも80%、または90%より高い酵素特異性を示し、かつ
b)のグルコース酸化酵素は、配列番号1のグルコース酸化酵素の、電子受容体としての酸素に対する活性より5倍低下された活性を示す、または配列番号1のグルコース酸化酵素の、酸素以外の電子受容体に対する活性より1.5倍増大された活性を示すか、またはその両方であり、
c)a)またはb)に記載のグルコース酸化酵素の活性フラグメントであって、ただし、c)の活性フラグメントにおいて、a)またはb)において記載されるようなアミノ酸置換が、a)またはb)に記載のグルコース酸化酵素と比較して保持されており、かつ
c)のグルコース酸化酵素は、a)のグルコース酸化酵素の酵素活性の少なくとも70%、特には少なくとも80%、または90%より高い酵素活性を示し、および、a)のグルコース酸化酵素のグルコースに対する酵素特異性の少なくとも70%、特には少なくとも80%、または90%より高い酵素特異性を示し、かつ
c)のグルコース酸化酵素は、配列番号1に記載のグルコース酸化酵素の、電子受容体としての酸素に対する活性より5倍低下された活性を示すか、または配列番号1に記載のグルコース酸化酵素の、酸素以外の電子受容体に対する活性より少なくとも1.5倍増大された活性を示すか、またはその両方である、
からなる群より選択される、配列番号1に記載のグルコース酸化酵素という主題に関する。
本発明の明細書の意味において、「アミノ酸配列における追加の修飾(additional modification(s) in the amino acid sequence)」および「追加のアミノ酸置換(additional amino acid substitution(s))」との表現は、配列番号1のS53;A137;A173;A332;F414;およびV560位の任意の位置におけるタンパク質を構成する残りの19個のアミノ酸の任意のアミノ酸による少なくとも1つのアミノ酸の置換を示す。さらに、上記の表現はまた、少なくとも2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つの位置が配列番号1のS53;A137;A173;A332;F414;およびV560位の群より選択される任意の位置において置換されている限り、任意の、残りの19個のタンパク質を構成するアミノ酸またはそれらの化学的等価物による協同的なアミノ酸置換を包含する。
本発明のGOx変異体に関連した用語「酵素活性(enzyme activity)」とは、β−D−グルコースのD−グルコノ−1,5−ラクトンへの酸化(D−グルコース+O2→グルコノラクトン+H22)(これはその後グルコン酸へと加水分解され得る)を触媒するタンパク質を特定する。
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様を特定している以下の実施態様の主題に関する。
ある態様において、本発明の主題は、第1の態様によるGOx変異体であって、
電子受容体としての酸素に対する前記活性が、以下の工程
a)75μLのサンプル酵素溶液が100μLのリン酸バッファー(pH7)を含む平底96ウェルマイクロプレートへと移される工程
b)20μLの反応混合物が、以下の濃度、0.91U/mL HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ);2.3mM ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))、をもたらすようにそれぞれのウェルへと添加される工程
c)25μLのグルコース基質溶液を添加することおよびその後の30秒間の1000rpmでのプレートの振とうによって反応が開始される工程
d)ABTSの酸化がマイクロプレートリーダーを用いて414nmで速度論的に測定される工程
を含むABTSアッセイによって測定されており、
酸素以外の電子メディエーターの前記活性が、以下の工程
a)75μLの酵素溶液が平底96ウェルマイクロプレートへと移される工程
b)100μLのメディエーター溶液(19.05mMのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソアニリン);5%(w/w)ポリビニルピロリドン、pH7および20μLの25mM りんモリブデン酸が添加される工程
c)25μLのグルコース基質溶液を添加することおよびその後の1分間の1000rpmでのプレートの振とうによって反応が開始される工程
d)りんモリブデン酸還元の反応速度がマイクロプレートリーダーを用いて700nmでモニターされる工程
を含むメディエーターアッセイによって測定される。
上記の態様に関連する別の態様において、酸素以外の電子メディエーターは、ニトロソアニリンおよびその誘導体、アゾ化合物、フェナジンおよびその誘導体、フェノチアジンおよびその誘導体、フェノキサジンおよびその誘導体、フェロセンおよびその誘導体、フェリシアン化カリウム、Ru−およびOS−錯体、キノンおよびその誘導体、インドールフェノール、ビオロゲン、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、ならびに、フタロシアニンを含む群より選択される。
上記の態様に関連する別の態様において、本発明の主題は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、配列番号1に記載のS53;A137;A173;A332;F414;およびV560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に、追加で、2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つのアミノ酸置換を有するGOx変異体である。
上記の態様に関連する別の態様において、本発明は、GOx変異体を提供し、ここで、前記追加の置換(複数の置換)のためのアミノ酸は、置換アミノ酸が配列番号1の対応する位置に存在するものとは別のものである限り、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、lys、Met、Phe、Pro、Ser、Tyr、Trp、Tyr、およびValの群より選択される。
任意の上記の態様に関連する別の態様において、本発明は、GOx変異体を提供し、ここで、追加の置換(複数の置換)のためのアミノ酸は、置換アミノ酸が配列番号1の対応する位置に存在するものとは別のものである限り、Ala、Ile、Thr、Tyr、Val、Ser、Asn、Arg、Asp、Cys、Gly、His、Met、Leu、Phe、Met、およびProの群より選択される。
任意の上記の態様に関連する別の態様において、本発明は、GOx変異体を提供し、ここで、追加の置換(複数の置換)のためのアミノ酸は、
S53位におけるPhe;および/または
A137位におけるSer、Leu;および/または
A173位におけるIle、Thr、Val;および/または
A332位におけるSer、Asn、Val;および/または
F414位におけるArg、Asn、Asp、Cys、Gly、His、Ile、Met、Ser、Thr、Tyr、Val;および/または
V560位におけるAla、Ile、Leu、Met、Pro、Thr、Tyr、およびVal
の群より選択される。
任意の上記の態様に関連する別の態様において、本発明は、GOx変異体を提供し、ここで、配列番号1に記載のT30VおよびI94Vの置換に加えて、F414および/またはV560の位置における少なくとも1つの追加のアミノ酸置換が、A137および/またはA173および/またはA332の位置における少なくとも1つのアミノ酸置換と組み合わせられている。
任意の上記の態様に関連する別の態様において、本発明は、配列番号1に記載のT30VおよびI94Vの置換に加えて、A173I;A332S;およびF414Lの追加のアミノ酸置換を有する配列番号4のGOx変異体を提供する。
任意の上記の態様に関連する別の態様において、本発明は、配列番号1に記載のT30VおよびI94Vの置換に加えて、A173V;A332S;F414I;およびV560Tの追加のアミノ酸置換を有する配列番号3のGOx変異体を提供する。
任意の上記の態様に関連する別の態様において、本発明は、配列番号1に記載のT30VおよびI94Vの置換に加えて、A173V;A332N;F414V;およびV560Lの追加のアミノ酸置換を有する配列番号6のGOx変異体を提供する。
任意の上記の態様に関連する別の態様において、本発明は、以下の工程
a)75μLのサンプル酵素溶液が100μLのリン酸バッファー(pH7)を含む平底96ウェルマイクロプレートへと移される工程
b)20μLの反応混合物が、以下の濃度、0.91U/mL HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ);2.3mM ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))、をもたらすようにそれぞれのウェルへと添加される工程
c)25μLのグルコース基質溶液を添加することおよびその後の30秒間の1000rpmでのプレートの振とうによって反応が開始される工程
d)ABTSの酸化がマイクロプレートリーダーを用いて414nmで速度論的に測定される工程
を含むABTSアッセイによる電子受容体としての酸素に対する活性が、アスペルギルス ニガー由来の野生型GOxと比較しておよび/または配列番号1のGOxと比較して、少なくとも5倍低下したGOx変異体を提供する。
任意の上記の態様に関連する別の態様において、本発明は、GOx変異体を提供し、前記GOx変異体は、以下の工程
a)75μLの酵素溶液が平底96ウェルマイクロプレートへと移される工程
b)100μLのメディエーター溶液(19.05mMのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソアニリン);5%(w/w)ポリビニルピロリドン、pH7および20μLの25mM りんモリブデン酸が添加される工程
c)25μLのグルコース基質溶液を添加することおよびその後の1分間の1000rpmでのプレートの振とうによって反応が開始される工程
d)りんモリブデン酸還元の反応速度がマイクロプレートリーダーを用いて700nmでモニターされる工程
を含むメディエーターアッセイによって測定される場合に、配列番号1のGOxと比較して、酸素以外の電子メディエーターに対して少なくとも1.5倍増大した活性を示す。
任意の上記の態様に関連する別の態様において、本発明は、以下の工程
a)75μLの酵素溶液が平底96ウェルマイクロプレートへと移される工程
b)100μLのメディエーター溶液(19.05mMのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソアニリン);5%(w/w)ポリビニルピロリドン、pH7および20μLの25mM りんモリブデン酸が添加される工程
c)25μLのそれぞれの糖である基質溶液を添加することおよびその後の1分間の1000rpmでのプレートの振とうによって反応が開始される工程
d)りんモリブデン酸還元の反応速度がマイクロプレートリーダーを用いて700nmでモニターされる工程
を含むメディエーターアッセイによって測定される場合に、少なくとも99.9%のグルコース特異性および/または4%未満のガラクトース特異性および/または0.3%未満のマルトース特異性および/または6%未満のキシロース特異性および/または0.1%未満のマルトトリオース特異性を示すGOx変異体を提供する。
本開示の意味において、「グルコースに特異的または基質グルコースに特異的(specific for glucose or specific for the substrate glucose)」という表現は、本明細書で提供されるGOxの基質グルコースに対する活性が、以下の材料および方法の段落に概説されるメディエーターアッセイによって測定される場合に100%であることを示す。黙示されるように、本明細書で提供されるGOxsのグルコース以外の糖、例えばガラクトース、マルトース、キシロース、およびマルトトリオースなどに対する残余の活性は、材料および方法の段落のff)の項において記載されるメディエーターアッセイによって測定される場合6%未満である。
任意の上記の態様に関連する別の態様において、本発明は、以下の工程
a)75μLの酵素溶液が平底96ウェルマイクロプレートへと移される工程
b)100μLのメディエーター溶液(19.05mMのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソアニリン);5%(w/w)ポリビニルピロリドン、pH7および20μLの25mM りんモリブデン酸が添加される工程
c)25μLのグルコース基質溶液を添加することおよびその後の1分間の1000rpmでのプレートの振とうによって反応が開始される工程
d)りんモリブデン酸還元の反応速度がマイクロプレートリーダーを用いて700nmでモニターされる工程
を含むメディエーターアッセイによって測定される場合に、配列番号1のGOxのニトロソアニリンメディエーター活性と比較して、400%より大きい、または500%より大きい、または600%より大きい電子移動のためのニトロソアニリンメディエーターに対する活性を示し、
かつ、以下の工程
a)75μLのサンプル酵素溶液が100μLのリン酸緩衝液(pH7)を含む平底96ウェルマイクロプレートへと移される工程
b)20μLの反応混合物が、以下の濃度、0.91U/mL HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ);2.3mM ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))、をもたらすようにそれぞれのウェルへと添加される工程
c)25μLのグルコース基質溶液を添加することおよびその後の30秒間の1000rpmでのプレートの振とうによって反応が開始される工程
d)ABTSの酸化がマイクロプレートリーダーを用いて414nmで速度論的に測定される工程
を含むABTSアッセイにより、配列番号1のGOxの酸素活性と比較して、30%以下、または25%未満、または20%未満、特には15%未満、または10%以下の酸素活性を示す
GOx変異体を提供する。
別の態様において、本発明の主題は、任意の上記の態様のGOx変異体またはその活性フラグメントをエンコードする単離ポリヌクレオチドに関する。
別の態様において、本発明は、本発明によるGOx変異体の活性な(機能的)等価物/フラグメントを提供する。
用語「その活性な等価物(複数の等価物)/フラグメント(複数のフラグメント)(active equivalent(s)/fragment(s) thereof)」またはその同意語「その機能的等価物(複数の等価物)/フラグメント(複数のフラグメント)(functional equivalent(s)/fragment(s) thereof)」とは、本発明による任意の修飾されたおよびそれによって最適化されたGOx変異体を意味しており、ここで、そのような等価物(複数の等価物)/フラグメント(複数のフラグメント)が、配列番号1に記載のT30VおよびI94Vの置換を少なくとも有し、およびさらに、配列番号1のS53;A137;A173;A332;F414;およびV560からなる群より選択される任意の位置において少なくとも1つの追加のアミノ酸置換を有することにより、酵素活性、酵素特異性および顕著に低下された酸素消費速度および/または酸素以外の特異的メディエーターに対する顕著に増大された活性に関する不可欠な特性を示している限り、少なくとも1つのアミノ酸が、欠損しているか、または配列番号1の対応する配列において別のアミノ酸によって置換されている。
本発明の特定の態様において、本発明のGOx変異体の機能的等価物(複数の等価物)/フラグメント(複数のフラグメント)は、配列番号2から配列番号9に記載の配列と少なくとも70%相同である、特には少なくとも80%相同である、または90%より高く相同であるアミノ酸配列を包含する。
別の態様において、本発明の主題は、本発明のGOx変異体またはその活性フラグメントによってエクスビボサンプルにおいてグルコースを検出する、決定する、または測定するための方法に関し、前記検出、決定または測定は、エクスビボサンプルを前記GOx変異体またはその活性フラグメントに接触させることを含む。
上記態様に関連する別の態様において、グルコースの前記検出、決定または測定は、センサーまたはテストストリップ装置を使用して行われる。
本発明はまた、本発明のGOx変異体を産生するための方法に、前記酵素をエンコードしている核酸に、ベクター、宿主細胞に関し、および、サンプル中のグルコースを前記酵素を使用して検出、決定または測定するための方法に、および前記酵素を含む装置にも関する。
特定の態様において、本発明は、サンプル中のグルコースをアッセイするための、本発明の少なくとも1つのGOx変異体および酸素以外の電子メディエーターを含む装置を提供する。
本発明の別の特定の態様において、電子メディエーターまたは酸素以外のメディエーターは、ニトロソアニリンおよびその誘導体、アゾ化合物、フェナジンおよびその誘導体、フェノチアジンおよびその誘導体、フェノキサジンおよびその誘導体、フェロセンおよびその誘導体、フェリシアン化カリウム、Ru−およびOS−錯体、キノンおよびその誘導体を含む群より選択される。
任意の上記の態様の主題と関連する本発明の別の態様は、配列番号1に記載のT30VおよびI94Vの2つの置換に加えて、配列番号1のA173;A332;F414;およびV560の群より選択される4つの位置のうちの任意の位置における少なくとも1つの追加のアミノ酸置換を有するGOx変異体である。
本発明によって意図される本明細書で提供されるGOx変異体の主な応用の1つは、糖尿病患者のエクスビボサンプルにおける血糖レベルをモニターするためのテストストリップ中でのそれらの使用である。当たり前のことであるが、多くの種類のサンプルが検査され得る。とりわけ、血液、血清および血漿などの体液がそのようなサンプルのサンプル源である。
したがって、別の態様において、本発明は、少なくとも1つの本発明のGOx変異体を担持している酵素電極を提供し、ここで前記少なくとも1つの本発明のGOx変異体は前記電極上に固定されている。
別の態様において、本発明は、作用電極として本発明の酵素電極、およびしたがって、少なくとも1つの本発明のGOx変異体を担持している酵素電極を含む、グルコースをアッセイするための酵素センサーを提供する。
また別の態様において、本発明は、本発明に基づく少なくとも1つのGOx変異体および酸素以外の電子メディエーターを含む、サンプル中のグルコースをアッセイするためのキットを提供する。
グルコースの測定のためのキットは、少なくとも1つの本発明のGOx変異体を使用して構成され得る。本発明のGOx変異体に加えて、キットは、測定に必要なバッファー、酸素以外の適切な電子メディエーター、特にはニトロソアニリンメディエーター、および、必要な場合、ペルオキシダーゼなどの酵素、ならびに較正曲線を作製するためのグルコース標準溶液および使用説明書を含む。
サンプル中のグルコースの濃度は、酵素反応によって生成される電子の量を測定することによって決定され得る。様々なセンサーシステムが公知であり、例えば、炭素電極、金属電極、および白金電極などが挙げられる。本発明のGOx変異体は、電極上に固定される。固定化のための手段の例としては、架橋、高分子マトリックス中へのカプセル化、透析膜へのコーティング、光学的架橋ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマー、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
アッセイ装置は、血糖レベルを測定するための、任意の従来の、市販されている電流測定バイオセンサーテストストリップと類似する構造を有し得る。このような装置の1つの例は、絶縁性基板上に配置されている2つ電極(作用電極および参照または対電極)、試薬ポートおよびサンプル受容部を有する。試薬ポートは、本発明のGOx変異体および酸素以外の電子メディエーターを含む。血液サンプルなどのサンプルがサンプル受容部に添加されると、サンプル中に含まれるグルコースがGOx変異体と反応し、これにより、電子移動はサンプル中のグルコースの量を示す。酵素基質の測定のために適した電気化学的センサーの典型的な例は、例えば国際公開第2004/113900号および米国特許第5,997,817号明細書などから公知である。代替的な電気化学的センサーとして、光学的検出技術が使用されてもよい。典型的には、このような光学装置は、酵素、電子メディエーターおよびインジケーターを含む試薬システム中で起こる色の変化に基づく。色の変化は、蛍光、吸収または緩和測定を用いて定量化され得る。酵素基質の測定のために適した光学装置の典型的な例は、例えば米国特許第7,008,799号明細書、米国特許第6,036,919号明細書および米国特許第5,334,508号明細書などから公知である。
別の態様において、本発明は、本発明のGOx変異体またはその活性フラグメントをエンコードする単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
別の態様において、本発明は、本発明のGOx変異体またはその活性フラグメントをエンコードする単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む宿主細胞(本明細書において形質転換体とも称される)を提供する。
別の態様において、本発明は、本発明のGOx変異体またはその活性フラグメントを産生するための方法を提供し、前記方法は、上記の形質転換体を培養する工程を含む。
別の態様において、本発明は、上記の方法によって得られ得る本発明のGOx変異体またはその活性フラグメントを提供する。
別の特定の態様において、本発明によって提供される発現ベクターは、好ましくは、本発明のGOx変異体をエンコードしているDNA配列の1つの全てまたは一部分を含む。
本発明によって提供されるGOx変異体の所望のコード配列および制御配列を含む適切な発現ベクターは、当該技術分野において公知の標準的な組換えDNA技術を用いて構成され得、それらの多くについては、Sambrook et al., in “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”(1989), Cold Spring Habor, NY Cold Spring Habor Laboratory Pressに記載されている。
適切な宿主細胞の例としては、例えば、Promega社より入手可能なE.coli HB101(ATCC33694)、Stratagene社より入手可能なXL1−Blue MRF’などが挙げられる。適切なピキア(Pichia)宿主細胞としては例えば、Invitrogen社(5791 Van Allan Way、Carlsbad、CA 92008、USA)より入手可能なp.パストリス X33またはp.パストリス km71Hなどが挙げられる。
本発明のGOx変異体の組換え産生は、公知の宿主中で行われ得る。適切な宿主は、糸状菌(filamentous fungi)株、例えば、アスペルギルス ニガー、アスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae)、およびアスペルギルス オリゼ(Aspergillus oryzae)などから選択され得る。適切な宿主は、イースト菌株、例えば、ピキア パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、およびハンゼヌラ ポリモルファ(Hansenula polymorpha)などから選択されてもよい。
別の特定の態様において、本発明のGOx変異体およびその機能的等価物は、イースト菌中、とりわけサッカロミセス セレビシエ中での前記GOx変異体をエンコードするポリヌクレオチドの発現によって得られ得る。
発現ベクターは、当該技術分野において公知の様々な方法によって宿主細胞中へと導入され得る。例えば、発現ベクターを用いた宿主細胞の形質転換は、ポリエチレングリコール媒介のプロトプロスト形質転換方法(Sambrookら、1989, supra)によって行われ得る。しかしながら、宿主細胞内へと発現ベクターを導入するための他の方法、例えば、エレクトロポレーション、バリスティックDNAインジェクション、またはプロトプラスト融合もまた行われ得る。
本発明によるGOx変異体を含む発現ベクターが適切な宿主細胞内へと導入されると、宿主細胞が、本発明による所望のGOx変異体の発現を可能にする条件下で培養され得る。所望の発現ベクター(およびしたがって、本発明によるGOx変異体をエンコードするDNA配列を担持している)を含む宿主細胞は、例えば抗生物質選択または栄養要求性変異体の補完および最小培地からの選択などによって容易に同定され得る(J. Sambrook, D. W. Russell:“Molecular Cloning: a laboratory manual”, 3rd edition, Cold Spring Harbor, New York (2001))。本発明によって提供されるGOx変異体の発現は、GOxのmRNA転写物の産生量の測定、遺伝子産物の免疫学的検出または遺伝子産物の酵素活性の検出などの当業者にとって公知の種々の方法によって特定され得る。特には、材料および方法の段落のff)の項でのメディエーターアッセイで概説されるように、酵素的アッセイが適用される。追加で、本発明によって提供されるGOx変異体は、本発明にしたがって、材料および方法の段落のgg)の項において概説されるようにABTSアッセイによって測定される場合に、顕著に低減された酸素消費速度によって同定され得る。
本発明の別の態様において、本明細書に記載される本発明のGOx変異体のためのポリペプチドは、本発明のGOx変異体の1つをエンコードしているDNA配列を発現している宿主細胞中での産生によって得られ得る。本発明のポリペプチドは、本発明のGOx変異体の1つをエンコードしているDNA配列によってエンコードされているmRNAのインビトロ翻訳によって得られてもよい。例えば、DNA配列が適切な発現ベクター内にインサートされてもよく、これが続いてインビトロ転写/翻訳システムにおいて使用され得る。
無細胞ペプチド合成システム中でその発現を促進することのできるプロモーター配列と作動可能に連結されている、上記で規定されるおよび説明されるような単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、本発明の別の具体的な実施形態を表している。
例えば上述の工程によってなどにより産生されるポリペプチドは、その後、単離され、そして様々な通例のタンパク質精製技術を用いて精製され得る。例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーおよびアフィニティクロマトグラフィーなどのクロマトグラフ工程が行われ得る。
別の態様において、本発明は、本発明の少なくとも1つのGOx変異体またはその活性フラグメントを含む医薬組成物を提供する。
別の態様において、本発明のGOx変異体は、基質グルコースに特異的なその本質的特性を維持しながら、しかし、配列番号1に記載の置換T30VおよびI94Vに加えた特定の位置におけるアミノ酸配列中への少なくとも1つの追加のアミノ酸置換に起因して、材料および方法の段落のgg)の項において概説されるようなABTSアッセイによって測定される場合に、最大の残余の酸素活性が30%以下に低下されている。同時に、本発明で提供されるGoxsは、材料および方法の段落のff)の項において概説されるようなメディエーターアッセイによって測定される場合に、酸素以外の電子メディエーターに対して400%より高い、または500%より高い、または600%より高い酵素活性を示す。
上記の点から、本発明は、本発明で提供されるGOx変異体中に、
i)GOxsのグルコース特異性特性
ii)オキシダーゼ活性からデヒドロゲナーゼ活性へのシフトを介するGDHsの酸素非依存性の酵素活性特性を有し
iii)および任意には酸素以外の特定の電子メディエーターに対する増大された活性
を、正確なグルコース測定、とりわけ正確な血糖測定を達成するために、備える。
本発明によるGOx変異体の意味において、「オキシダーゼ活性からデヒドロゲナーゼ活性へのシフト(shift from oxidase activity towards dehydrogenase activity)」とは、
材料および方法の段落のgg)の項において概説されるようなABTSアッセイによって測定される場合に、参照としてGOx−T30V;I94Vの1.0から始まり、0.3以下、または0.25より小さい、または0.2より小さい、特には0.15より小さい、または0.1以下の本発明によるGOx変異体の残余の酸素活性へとむかう、酸素活性における低下、および
材料および方法の段落のff)の項において概説されるようなメディエーターアッセイによって測定される場合に、参照としてGOx−T30V;I94Vのメディエーター活性1.0から始まり、本発明によるGOx変異体の少なくとも1.5のメディエーター活性へとむかう、デヒドロゲナーゼ活性における同時的な増大
を示す。
上記の値は、酸素活性およびメディエーター活性という観点においては、本発明のGOx変異体の酵素活性と、参照としてのGOx−T30V;I94Vの対応する酵素活性のあいだの比(商)を表している。比(商)は、材料および方法の段落のee)の項において概説されるようなELISAによって測定される場合の、両方のGOx活性(酸素活性およびメディエーター活性(U/mg)に基づいている。
本発明の配列番号11から配列番号17までの配列に基づくそれぞれの核酸分子は、配列番号1のポリペプチドをエンコードしている配列番号10(GOx−T30V;I94V)由来の修飾ポリペプチドまたはそのフラグメントをエンコードする。
本明細書において使用される用語「GOx−T30V;I94V」は、配列番号2記載のアスペルギルス ニガーの野生型(WT)配列に基づくGOxであって、T30VおよびI94Vの2つの置換をそのポリペプチド配列中にさらに有する、すなわち配列番号1のGOxを示す。
本明細書において使用される用語「GOx二重変異体(GOx double-mutant)」とは、同じく、配列番号2記載のアスペルギルス ニガーのWT配列に基づくGOxであって、T30VおよびI94Vの2つの置換をそのポリペプチド配列中に有する、すなわち配列番号1のGOxを示す。そのようなGOx二重変異体は、Zhuらによりもたらされている(2006;2007)。
本発明にしたがって、配列番号1に対応する核酸分子(すなわち配列番号10)は、本発明にしたがって、オキシダーゼ活性からデヒドロゲナーゼ活性へのシフトによって特徴づけられるGOx酵素の速度論的特性をさらに改良するために用いられた。これは、本発明者らによって、配列番号1により2つの置換T30VおよびI94Vは既に存在しつつ、S53;A137;A173;A332;F414;およびV560のうちの少なくとも1つの位置にアミノ酸置換をもたらす特定のヌクレオチド配列修飾を介して達成された。
別の態様において、本発明は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、配列番号1のS53;A137;A173;A332;F414;およびV560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に少なくとも2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つの追加のアミノ酸置換を有し、これによってGOx酵素活性における協同的な効果を示すGOx変異体を提供する。
本発明の意味において、「GOx酵素活性における協同的な効果(cooperative effects on GOx enzyme activity)」との表現は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、S53;A137;A173;A332;F414;およびV560の任意の位置における少なくとも2つの追加のアミノ酸置換であって、GOxの酸素消費速度を低下させるという観点においてGOx酵素活性に影響を及ぼしていることを意味している。
本発明の意味において、「GOx酵素活性における協同的な効果(cooperative effects on GOx enzyme activity)」との表現は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、S53;A137;A173;A332;F414;およびV560の任意の位置における少なくとも2つの追加のアミノ酸置換であって、GOxの酸素消費速度を低下させるおよび/または酸素以外の電子メディエーターに対するGOxのメディエーター活性を増大させるという観点においてGOx酵素活性に影響を及ぼしていることを意味している。
追加で、本発明の意味において、「GOx酵素活性における協同的な効果(cooperative effects on GOx enzyme activity)」との表現は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、S53;A137;A173;A332;F414;およびV560の任意の位置における少なくとも2つの追加のアミノ酸置換であって、電子移動のための特定の酸素以外の電子メディエーターを受容するという観点においてGOx酵素活性に影響を及ぼしていることを意味している。特定の態様において、本発明は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、A137;A173;A332の位置におけるタンパク質を構成する残りの19個のアミノ酸のうちの任意のアミノ酸によるアミノ酸の置換と組み合わせられる、F414およびV560の位置におけるタンパク質を構成する残りの19個のアミノ酸のうちの任意のアミノ酸による追加のアミノ酸の置換を有するGOx変異体を提供する。
特定の態様において、本発明は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、F414およびV560の位置におけるタンパク質を構成する残りの19個のアミノ酸のうちの任意のアミノ酸による追加の組み合わされたアミノ酸の置換を有するGOx変異体を提供する。
本発明のさらなる特定の態様は、上記の態様と関連し、そして、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、F414MまたはF414VおよびV560PまたはV560Lの追加の組み合わされたアミノ酸の置換を有するGOx変異体を提供する。
さらなる特定の態様において、本発明は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、V560PまたはV560Lおよび/またはA137Lおよび/またはA173IまたはA173Vおよび/またはA332SまたはA332VまたはA332Tのアミノ酸置換(または複数の置換)と組み合わされたF414MまたはF414Vの追加のアミノ酸置換を有するGOx変異体を提供する。
さらなる特定の態様において、本発明は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、V560PまたはV560Lおよび/またはA137Lおよび/またはA173IまたはA173Vおよび/またはA332SまたはA332VまたはA332Tのアミノ酸置換(または複数の置換)と組み合わされたF414MまたはF414Vの追加のアミノ酸置換を有するGOx変異体を供給する。
本発明のさらなる態様は、上記の態様と関連し、そして、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、上記の置換のうちの任意の置換から選択される少なくとも2つの組み合わされたアミノ酸の置換を有するGOx変異体を提供する。
酸素以外の電子メディエーターに対するGOx特異性は、材料および方法の段落のff)の項において概説されるメディエーターアッセイによって測定され得る。
別の特定の態様において、本発明は、材料および方法の段落のff)の項において記載されるメディエーターアッセイによって測定される場合に、電子メディエーターN,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−4−ニトロソアニリンに対して400%より大きい、または450%より大きい、または500%より大きい、または550%より大きい、または600%より大きいメディエーター活性を有するGOx変異体を提供する。
別の特定の態様において、本発明は、材料および方法の段落のgg)の項において概説されるABTSアッセイを用いて、GOx−WTと比較した場合、または配列番号1に記載のGOx−T30V;I94Vと比較した場合、電子受容体としての酸素に対して少なくとも5倍低下された活性、または電子受容体としての酸素に対して少なくとも6倍低下された活性、または電子受容体としての酸素に対して少なくとも7倍低下された活性を有するGOx変異体を提供する。
別の特定の態様において、本発明は、材料および方法の段落のgg)の項において概説されるABTSアッセイによって測定される場合に、GOx WTのオキシダーゼ活性のまたは配列番号1に記載のGOx−T30V;I94Vのオキシダーゼ活性の30%以下の残存オキシダーゼ活性を有する、または特には、GOx−WTのオキシダーゼ活性のまたは配列番号1に記載のGOx−T30V;I94Vのオキシダーゼ活性の20%より小さいまたは15%より小さい残存オキシダーゼ活性を有する、またはより特には、GOx−WTのオキシダーゼ活性のまたは配列番号1に記載のGOx−T30V;I94Vのオキシダーゼ活性の10%より小さい残存オキシダーゼ活性を有するGOx変異体を提供する。
本発明のさらに特定の態様において、配列番号11から配列番号17で示されるヌクレオチド分子の機能的等価物/フラグメントは、前記DNA配列または配列番号11から配列番号17の配列と実質的に相補的な配列によってエンコードされている、対応するRNA分子である。
本発明の意味において、「RNA分子(RNA molecule)」との用語は、一重鎖であり、および、本明細書において示される配列番号3から配列番号9に記載のGOx変異体のタンパク質合成のためのテンプレートとして機能する、リボヌクレオチド分子の直鎖のポリマーを意味する。
本発明のさらなる特定の態様において、ホモロジーの程度または割合は、配列番号3から配列番号9に対して少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも99%または100%であり、ただしそれらは、本明細書を通じて概説されるように同じ置換を示し、およびさらに、本発明によるGOx変異体として実質的に同じ特性を示し、これら不可欠な特性とは、酵素活性、グルコースに対する酵素特異性、および顕著に低下された酸素消費速度および/または顕著に増大された酸素以外の特定の電子メディエーターに対する活性である。
配列相同性は、BLASTアルゴリズム、the Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul, S.F. et al. 1990. J. Mol. Biol. 215:403; Altschul, S.F. et al. 1997. Nucleic Acid Res. 25:3389-3402)によって決定され得る。本明細書において記載されるアミノ酸配列相同性の割合とは、前記BLASTアルゴリズムによる配列相同性の決定を意味し、ここで、相同性が決定される領域は、本発明のGOx変異体の全体の配列である。配列相同性は、配列のアライメントおよび比較を目的とする、当業者に公知の任意の他の方法によって決定されてもよい。
当業者であれば、本明細書において記載されるGOx変異体は、前記GOx変異体の不可欠な特性、すなわち、本発明の意味におけるグルコースに対する特異性、顕著に低下された酸素消費速度および/または顕著に増大された酸素以外の特定の電子メディエーターに対する活性を変化させることなく、前述の置換とは異なるさらなる修飾を有していてもまたは有していなくてもよい。
本発明の別の特定の態様は、本発明のGOx変異体またはその活性等価物/フラグメントをエンコードする単離ポリヌクレオチドである。単離されたポリヌクレオチドは、配列表の項に明示的にリストされている以下の配列、すなわち配列番号11から配列番号17をエンコードしているDNAもしくはRNA分子またはそれらの対応する遺伝子であってもよい。
別の特定の態様において、本発明によって提供されるGOx変異体は、材料および方法の段落のff)の項において概説されるようなメディエーターアッセイによって測定される場合に、30℃〜47℃の範囲において少なくとも70%、特には少なくとも80%の残余の酵素活性を有することによる温度安定性を示す。
別の特定の態様において、本発明によって提供されるGOx変異体は、材料および方法の段落のff)の項において概説されるようなメディエーターアッセイによって測定される場合に、48℃〜60℃の範囲において少なくとも10%の残余の酵素活性を有することによる温度安定性を示す。
本発明のGOx変異体は、例えば凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中での溶液としてなど、様々な形状で提供され得る。
本発明によって提供されるGOx変異体はより正確な糖尿病のための血糖試験装置における応用を主に意図している。とりわけ、本発明の酸素非依存製GOx変異体は、顕著に低下された酸素消費速度によってのみしか電子移動のために酸素を利用せず、これは、酸素に対する残余のGOx活性が、材料および方法の段落のgg)の項において概説されるようなABTSアッセイによって測定される場合に、30%以下、または25%より小さい、または20%より小さい、特には15%より小さい、または10%以下であることを意味している。したがって、顕著な量のグルコースがより適切な血糖測定のためにメディエーターに関連する反応において反応され、一方、血液サンプル中の溶存酸素との反応は顕著に低減される。これは、糖尿病患者にとって、動脈血、静脈血、毛細管血が測定の原料である場合、または、海抜の異なる地点で血糖濃度を測定する場合に有益である。
別の態様において、本発明は、顕著に低下された酸素消費速度および/または顕著に増大された酸素以外の特定の電子メディエーターに対する活性を示すGOx変異体を提供し、これは、より正確な血糖測定を同様にもたらし、これにより糖尿病患者は利益を享受する。
定義
本明細書の意味において、「酸素依存性(oxygen-dependent)」および「酸素依存度(oxygen dependency)」との表現は、材料および方法の段落のgg)の項において概説されるようなABTSアッセイによって測定される場合に、残余の酸素活性が、30%より大きいことによって特徴づけられるGOx活性を意味している。
対照的に、「酸素非依存性(oxygen-independent)」および「酸素非依存度(oxygen-independency)」との表現は、材料および方法の段落のgg)の項において概説されるようなABTSアッセイによって測定される場合に、残余の酸素活性が、30%以下、または25%より小さい、または20%より小さい、特には15%より小さい、または10%より小さいことによって特徴づけられるGOx活性を意味している。
本明細書の意味において、「グルコースに非特異性(unspecific for glucose)」との表現は、本発明によって提供されるGOx変異体は、材料および方法の段落のff)の項において概説されるようなメディエーターアッセイによって測定される場合に、基質グルコースに対するGOx活性が100%未満、または99.9%未満、または99.5%未満であることを意味する。これは暗に、「グルコースに非特異性」であるGOxが、材料および方法の段落のff)の項において概説されるメディエーターアッセイによって決定される場合に、グルコース以外の糖、例えばガラクトース、マルトース、キシロース、およびマルトトリオースなどに対して、6%より大きいGOx活性を示すことを意味している。
本発明のGOx変異体に関連した「修飾された(modified)」または「修飾(modification)」との用語は、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、配列番号1に記載のポリペプチド配列中に少なくとも1つの追加のアミノ酸置換をS53;A137;A173;A332;F414;およびV560の任意の位置に含むGOxタンパク質を意味する。本用語はまた、そのような「修飾された」GOx変異体をエンコードするそれぞれのポリヌクレオチドまたは配列保存的なそれらの変異体を意味する。
ポリヌクレオチド配列の「配列保存的な変異(sequence-conservative variations)」とは、任意のコドン位置における一またはそれ以上のヌクレオチドの変化がその位置でエンコードされるアミノ酸においてなんらの変化ももたらさないようなものである。
用語「GOx変異体(GOx variant(s))」とは、配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94V、ならびに、配列番号1に記載のポリペプチド配列中に少なくとも1つの追加のアミノ酸置換をS53;A137;A173;A332;F414;およびV560の任意の位置(または複数の位置)に有する本発明によるグルコース酸化酵素であって、基質グルコースに酵素特異性示し、および、顕著に低下された酸素消費速度および/または顕著に増大された酸素以外の特定の電子メディエーターに対する活性を示すことによって特徴づけられる。
本明細書を通して、アミノ酸配列の番号付けは、配列番号1に記載の成熟GOx−T30V;I94Vタンパク質における最初のS(Ser、セリン)を1として始めていることが理解されるべきである。
本発明における用語「酵素(enzyme)」とは、多かれ少なかれ特異的に、一または二以上の化学反応または生化学反応を触媒するまたは促進する、全体的または大部分がタンパク質またはポリペプチドからなる任意の物質を意味する。用語「酵素」はまた、触媒的なポリヌクレオチド(例えばRNAまたはDNA)も意味し得る。
用語「酸化反応(oxidation reaction)」とは、一般的な用語として、酸素の基質への付加を含む、酸素化されたまたは酸化された基質または生成物を形成する化学的反応または生化学的反応を意味する。酸化反応は、典型的には還元反応を伴う(したがって、用語「酸化還元(redox)」反応は、両反応、酸化および還元を包含する)。化合物は、酸素を受容した場合または電子を失った場合、「酸化される(oxidized)」。化合物は、酸素を失った場合または電子を得た場合、「還元される(reduced)」。GOxは典型的には、第一級アルコール基のアルデヒドへの酸化を触媒する。
本明細書を通じて使用される用語「グルコース酸化酵素(glucose oxidase(s))」とは、β−D−グルコースのD−グルコノ−1,5−ラクトンへの酸化(D−グルコース+O2→グルコノラクトン+H22)(これはその後グルコン酸へと加水分解され得る)を触媒するタンパク質を特定する。したがって、グルコース酸化酵素は酵素である。さらに、用語「グルコース酸化酵素の活性を有するポリペプチド(a polypeptide having the activity of a glucose oxidase)」は、上記の活性を有するポリペプチドを意味する。グルコース酸化酵素は、「GOx(s)」または「E.C.1.1.3.4.」と略され得る。本明細書を通じて使用される「GOx−WTまたはWT」は、真菌アスペルギルス ニガー由来の野生型GOxを意味する。用語「GOx−T30V;I94V、またはT30VI94V、または二重変異体(double-mutant)、または親変異体(parent-mutant)」とは、Zhuら(2006;2007)により記載されている配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vを有するGOx変異体を意味する。
本発明によるGOx変異体はすべて、共通して配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94V、ならびにS53;A137;A173;A332;F414;およびV560位の任意の位置における、本発明による置換に適切である、タンパク質を構成する残りの19個のアミノ酸の1つによる少なくとも1つの追加のアミノ酸置換を有する。それぞれの「EZ」番号は、本明細書の文章を通して本発明によるGOx変異体を短縮するものであってもよい。「EZ」は酵素を表している。
酵素「グルコース酸化酵素」は、したがって、供給源またはドナーから基質へと酸素を付加する、挿入する、付与するまたは移動させることによって酸化反応を触媒する酸化酵素の種類のメンバーである。このような酵素はまた、酸化還元酵素(oxidoreductases)または酸化還元酵素(redox enzymes)とも称され、そして、オキシゲナーゼ、ヒドロゲナーゼまたはレダクターゼ、オキシダーゼ、およびペルオキシダーゼを包含する。
この意味において、用語「酸素ドナー(oxygen donor)」、「酸化剤(oxidizing agent)」および「酸化体(oxidant)」は、酸化反応において酸素を基質へと供与する物質、分子または化合物を意味する。典型的には、酸素ドナーは、還元される(電子を受容する)。酸素ドナーとしての例としては例えば、酸素分子または二原子酸素(O2)、および過酸化物としては例えば、t−ブチルパーオキサイドなどのアルキルパーオキサイド、および最も好ましくは過酸化水素(H22)が挙げられる。「過酸化物(peroxide(s))」とは、互いに結合している2つの酸素原子を有する任意の化合物である。
上述されるように、グルコース酸化酵素の、または本明細書で使用されるGOx変異体の「活性(activity)」または「酵素活性(enzyme activity)」は、酸化反応D−グルコース+O2→グルコノラクトン+H22を触媒するその能力を測定することに向けられており、反応の生成物が生成されるその速度として表されるかもしれない。例えば、グルコース酸化酵素活性は、単位時間当たり、またはグルコース酸化酵素の単位ユニット(例えば濃度または重量)当たりに生成される生成物(グルコノラクトンおよび/またはH22)の量として表され得る。
一般的に、本発明のポリペプチドはまた、本明細書において「突然変異体(mutant)」、「ムテイン(mutein)」、または「変異体(variant)」であることを意味していてもよく、また、「修飾されたGOx(a modified GOx)」または「修飾(modification)」とは、アスペルギルス ニガー由来のGOx−WT自身から、または配列番号1記載のGOx−T30V;I94Vから作製された、変化された、派生された、またはなんらか異なっている、または改変されていることを意味している。
アスペルギルス ニガーのGOx−WTタンパク質は、配列番号2に記載の天然のアミノ酸配列を含む。したがって、「親の変異体」または「二重変異体」は、本明細書において記載される任意の方法、ツールまたは技術を用いて、本明細書で提供される他の任意のポリペプチドがそれから派生されるまたは作製されるGOxポリペプチドである。本発明によれば、「親突然変異体」または「二重変異体」は、配列番号1のポリペプチドである。
したがって、「親ポリヌクレオチド(parent polynucleotide)」は、親ポリペプチド、すなわち配列番号10に記載のポリヌクレオチドをエンコードするものである。
用語「突然変異(mutation)」または「変異(variation)」または「改変(modification)」は、例えばDNAまたはRNAなどの遺伝物質における任意の検出可能な変化、またはそのような変化の任意のプロセス、機序、または結果を意味する。これは、そこで遺伝子の構造(例えばRNAまたはRNA配列)が変化される遺伝子突然変異、任意の突然変異プロセスより生じる任意の遺伝子またはDNAまたはRNA、および改変された遺伝子またはDNA配列によって発現される任意の発現産物(例えばタンパク質またはポリヌクレオチド)を包含する。このような変化はまた、プロモーター、リボソーム結合部位などにおける変化を含む。
本発明の開示の意味において、「酸素以外の特定のメディエーター(certain mediators other than oxygen)」、「酸素以外の特定の電子メディエーター(certain electron mediators other than oxygen)」、「特定の固定化されたメディエーター(certain immobilized mediator)」および「酸素以外の特定の電子受容体(certain electron acceptors other than oxygen)」との表現は、ニトロソアニリンおよびその誘導体、アゾ化合物、フェナジンおよびその誘導体、フェノチアジンおよびその誘導体、フェノキサジンおよびその誘導体、フェロセンおよびその誘導体、フェリシアン化カリウム、Ru−およびOS−錯体、キノンおよびその誘導体、インドールフェノール、ビオロゲン、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、ならびに、フタロシアニンを含む群より選択されるメディエーター/電子メディエーターを意味する。
したがって、本発明による「酸素以外の特定のメディエーター」、「酸素以外の特定の電子メディエーター」、「特定の固定化されたメディエーター」および「酸素以外の特定の電子受容体」はまた、FADH2によって迅速に還元されるが、例えば2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−ジアゼンカルボキシアミドの誘導体などのアスコルビン酸によっては還元されない電子メディエーターを意味する。
略語
AA アミノアンチピリン
HRP ホースラディッシュペルオキシダーゼ
GOx グルコース酸化酵素
GOx−WTまたはWT 真菌アスペルギルス ニガー由来の野生型GOx
GDH グルコース脱水素酵素
ABTS 2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸
PMO りんモリブデン酸
以下の実施例の項において、全ての試薬、制限酵素、および他の材料は、他の市販供給元が特定されていない限り、Roche Diagnostics Germanyから得られ、そして、供給業者によって提供された取扱説明書にしたがって使用された。DNAの精製、特性評価およびクローニングのために適用される操作および方法は、当該技術分野において広く公知であり(Ausubel, F., et al., in“Current protocols in molecular biology”(1994), Wiley)、そして、当業者によって必要に応じて適応され得る。
本発明は以下の実施例によってさらに詳細に説明されるであろう。しかしながら、本発明はこれらの具体的な実施例に限定されるべきではない。
本発明の核心は、血糖測定の分野における公知のGOxsに対して改良された特性、すなわち基質グルコースに対するその特異性およびオキシダーゼ活性からデヒドロゲナーゼ活性へのシフトを介した顕著に低下した酸素消費速度を維持していることおよび/または酸素以外の電子メディエーターに特異的な増大した酵素活性を有していること、を示す特定のGOx変異体の予期し得ないおよび驚くべき発見である。
本発明のよるGOx変異体のGOx特性を証明するために、本発明者らは酸素分子の過酸化水素への還元を示す最も利用しやすい活性アッセイに頼ることができなかった。具体的には、媒介される電子移動に関してZhuら(2006;2007)は、生成物ベースのGOx検出アッセイ(以下、GODAと称する)を確立した(Zhu, Z., Momeu, C., Zakhartsev, M., and Schwaneberg, U. (2006). Making glucose oxidase fit for biofuel cell applications by directed protein evolution. Biosensors and Bioelectronics 21, 2046-2051; Zhu, Z., Wang, M., Gautam, A., Nazor, J., Momeu, C., R, P., and U, S. (2007). Directed evolution of glucose oxidase from Aspergillus niger for ferrocenemethanol-mediated electron transfer. Biotechnology Journal 2, 241-248)。このアッセイは、実際グルコノラクトンの酸素非依存性の検出を可能にするが、しかしながら依然として、酸素の存在下では、酸素以外のメディエーターによって媒介される電子移動を特異的に検出することは不可能であり、これは、リアルタイム血糖分析装置の場合に、大いに関連性がある。
以下の実施例において、本発明者らは、したがって、本発明の特定のGOx変異体を、本発明の核心を証明するために、それが媒介する電子移動、酸素による電子移動、およびそのグルコース特異性を別々に試験した。さらに、温度安定性に関する特性もまた試験された。
結果として、本発明者らは、酸素に対するGOx変異体の活性を検出するために、広く公知のABTSアッセイ(Sun, L., Bulter, T., Alcalde, M., Petrounia, I.P., and Arnold, F.H. (2002). Modification of galactose oxidase to introduce glucose 6-oxidase activity. Chembiochem 3, 781-783)を使用した。図1は、酸素に対する活性測定の原則を示している。
GOx変異体の試験
グルコース特異性、低下した酸素消費速度および/または酸素以外の電子メディエーターに対する増大した活性の観点から、GOx特性におけるその改良のための適切なアミノ酸置換を試験するために、本発明の特定のGOx変異体が
(i)その酸素消費速度に関して、すなわち、呈色ABTSアッセイにおける電子受容体としての酸素を使用する酵素活性に関して、
(ii)メディエーターの例としてのニトロソアニリンメディエーターによって媒介される電子移動に関して、
(iii)基質として種々の糖、すなわちグルコース、ガラクトース、マルトース、キシロース、マルトトリオースの存在下、メディエーターの例としてのニトロソアニリンメディエーターによって媒介される電子移動に関して
試験された。
前記媒介される電子移動のために、p−ニトロソアニリン化合物が使用された(Becker, O. (2005). Die Glucose-Dye-Oxidoreduktase in der klinischen Diagnostik. DISSERTATION thesis, Technische Universitat Kaiserslautern, Kaiserslautern)。図2は、メディエーターアッセイ、すなわちPMO(りんモリブデン酸)−アッセイの原則が示されており、ここでは、ニトロソアニリンメディエーター、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソアニリンが適用されている。
上述のアッセイにおいて、メディエーター反応から生じる2つの電子が、PMOに移動される。PMOが続いて還元される。酸化PMOの淡黄色から、還元PMOの濃青色への色の変化が700nmでの吸収によってモニターされた。
本発明による特定のGOx変異体を試験するために、上述のメディエーターアッセイは、リン酸カリウム緩衝液(0.2M、pH7.0)中、0.65U/Lから22U/Lまでの幅広い線形検出範囲を示す酵母細胞上澄み液中での低いGOx活性に適合された。前記条件下、96ウェルプレート上において10.2%の標準偏差が得られた。標準偏差の計算のため、バックグラウンドは、ネガティブコントロールの値を差し引くことによって考慮された(真の標準偏差)。
グルコース酸化酵素変異体
本発明によって、Zhuら(2006;2007)に記載されている二重変異体が本明細書で提供される特定のアミノ酸置換のための出発物質として選択された。この二重変異体は、本質的に存在している2つの置換T30VおよびI94Vを有する(配列番号1)。GOx−T30V;I94Vは、改善された熱安定性、改善されたpH安定性および増加されたKcat値(69.5/sから137.7/s)を示す(Zhu, Z., Wang, M., Gautam, A., Nazor, J., Momeu, C., R, P., and U, S. (2007). Directed evolution of glucose oxidase from Aspergillus niger for ferrocenemethanol-mediated electron transfer. Biotechnology Jounal 2, 241-248)。
低グリコシル化サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株が発現の宿主として選択された(Lehle, L., Eiden, A., Lehnert, K., Haselbeck, A., and Kopetzki, E. (1995). Glycoprotein biosynthesis in Saccharomyces cerevisiae: ngd29, an N-glycosylation mutant allelic to och1 having a defect in the initiation of outer chain formation. FEBS Lett 370, 41-45)。
本発明による特定のアミノ酸置換を担持する細胞クローンの培養後、メディエーターアッセイおよびABTSアッセイが並行して行われた。増大したメディエーター活性、低下した酸素活性、またはその両方を示すクローンがさらなる試験のために選択された。したがって、選択されたクローンおよびコントロールが培養され、そして12回スクリーニングされた。続いて、本発明による改良された変異体のGOx遺伝子が単離され、そしてシークエンシングされた。後に、選択された変異体の前記遺伝子はさらなる特異的なアミノ酸置換のためのテンプレートとして機能した。
アミノ酸位置の特性分析
本発明者らはさらに、本明細書で提供されるGOx変異体の特定のアミノ酸位置、すなわちS53;A137;A173;A332;F414;およびV560を明らかにした。これらの位置は、図3に示されている。
予備特性分析
特定のGOx変異体をさらに試験するために、本発明者らは、以下の特性
1)酸素消費、
2)基質としてのグルコース特異性、
3)ミカエリス−メンテン速度論(メディエーター活性/グルコース親和性)、および
4)温度安定性
を考慮して予備特性分析を行った。
対応する細胞クローンの培養が従来の振とうフラスコ中で行われた。上済み液が濃縮され、そしてpH7の0.2M リン酸カリウム中で緩衝された。
1)酸素消費速度
酸素消費は、材料および方法の段落のgg)の項において概説されるように発色性基質ABTSの酸化によって間接的に測定された。このデータを試験するために、酸素消費が光学的酸素プローブを用いて直接的に測定された。GOx変異体は、反応導入において2U/Lに標準化された。
2)特異性
上記に既に概説されているように、基質グルコースに対するGOx特異性は、グルコース周辺には例えばガラクトース、マルトース、キシロース、およびマルトトリオースの4つの糖などの臨床的に関連する糖が存在しているため、酵素的グルコース測定において主要な役割を果たしている。したがって、本明細書で提供されるGOx変異体の特性を証明するために、前記糖が選択され、そして、グルコースと比較された。これらの試験のためにはメディエーターアッセイが使用され、181.8mMのそれぞれの糖が適用された。
3)メディエーター活性/グルコース親和性
メディエーター活性におけるより詳細な試験のため、およびグルコース親和性のため、本発明者らは本明細書において開示される変異体のミカエリス−メンテン速度論に関する試験を行った。
4)温度安定性
本発明の選択されたGOx変異体の温度安定性は、材料および方法の段落のff)の項において概説されるようなメディエーターアッセイを適用して分析された。追加のコントロールとして、アスペルギルス ニガーにおいて発現された、過度にグリコシル化されたGOxおよび脱グリコシル化されたGOx−WTもまた分析された。
GOx変異体GOx−EZ07の最終的な特性分析
最終的な特性分析のために、GOx−EZ07を発現しているS.セレビシエの各株が10Lの発酵槽中で培養され、得られたGOx−EZ07が続いて精製された。最終的な酵素調製物の純度は、pH7の50mM リン酸カリウム緩衝液中、90%より高かった。予備特性分析段階と同様に、酸素消費、特異性、活性、およびグルコース親和性が試験された。GOx濃度の具体的な決定には、ELISAが適用された(材料および方法の段落のee)の項参照)。
変異体GOx−EZ07はまた、以下の観点
1a)酸素消費、
2a)基質としてのグルコース特異性、
3a)ミカエリス−メンテン速度論(メディエーター活性/グルコース親和性)、および
4a)温度安定性
においても特性分析された。
1a)GOx−EZ07の酸素消費
測定は1)に記載されるように行われた。全ての試験された酵素(GOx−WT、GOx−T30V;I94V、およびGOx−EZ07)は、材料および方法の段落のdd)の項において概説されるような標準的なプロトコールで精製され、そして、5μg/mLのタンパク質濃度に調製された。
以下の酸素消費速度が検出された[%/分]:GOx−WT:17.44;GOx−T30V;I94V:24.22;および本発明のGOx−EZ07:3.86.GOx−EZ07の残余の酸素活性は、GOx−T30V;I94Vと比較して15.9%、および、GOx−WTと比較して22.13%である。
2a)GOx−EZ07の特異性
測定は2)に記載されるように行われた。
3a)GOx−EZ07のミカエリス−メンテン速度論
測定は3)に記載されるように行われた。
4a)温度安定性
測定は4)に記載されるように行われた。
結果
本発明者らは、低下した酸素消費速度および/または増大した酸素以外の電子メディエーターに対するメディエーター活性の原因となる、6つの別個のアミノ酸位置S53;A137;A173;A332;F414;およびV560を発見した。さらに、本発明者らは、当業者らが、グルコース特異性、顕著に低下した酸素消費速度、および/または酸素以外の電子メディエーターに対する増大した活性の観点からGOx変異体をデザインすることを可能にさせる6つのアミノ酸位置のあいだの協同的効果を発見した。
とりわけ、本発明者らはV560およびF411の位置が、単独であるいは組み合わせで、顕著に低下した酸素消費速度の原因であること、および/または、顕著に増大したメディエーター活性の原因であることを発見した。加えて、位置A173およびA332が、組み合わせで両方、すなわち本明細書で提供されるメディエーター活性の顕著な向上および同時にGOx変異体の酸素消費速度における顕著な低下の原因であることを発見した。位置S53およびA137が酸素以外の特定のメディエーターに対するメディエーター活性を顕著に増加させることの原因であることが判明した。さらに、本発明者らは、本発明によって提供されるGOx変異体に適した特定のアミノ酸を発見した。
本発明の試験されたGOx変異体の特定の活性が表2にそれぞれのEZ番号付けによって示されている。表は、本発明の試験されたGOx変異体の、メディエーターアッセイを介したメディエーター活性およびABTSアッセイを介した酸素消費特性に関する比較である。
結果は、本発明のGOx変異体と親変異体、すなわち出発物質としてのGOx−T30V;I94Vとのあいだの比(商)の形で示されている。種々のマイクロリットルプレートの結果が比較できた。比は、材料および方法の段落のee)の項において概説されるような従来のELISA法によって決定される、特定の活性(U/mg)に基づいている。表はまた、本発明による試験されたアミノ酸位置の正確な置換を示している。
結果は、本発明による不可欠な特性、すなわち顕著に減少された酸素消費速度をもたらす低下された酸素親和性および/または親変異体であるGOx−T30V;I94Vと比較して増大されたメディエーター活性を有する種々の特定の変異体(EZ03、EZ05、EZ12、EZ06、EZ07、EZ08、EZ10、EZ11、EZ15)を示している。変異体EZ03、EZ05、EZ07、EZ08、およびEZ10についてさらなる検討が行われた。
例えば、本発明者らは、親変異体と比較して、GOx−EZ07およびEZ10が増大されたメディエーター活性に関する顕著な向上と酸素アッセイにおける顕著な減少との両方を示すことを発見した。
とりわけ、本発明者らは、前記変異体の対応する特異的アミノ酸置換に全く限定されることなく、変異体EZ07が本発明による顕著に改善されたGOx変異体であることを発見した。EZ07は、親変異体と比較して4.4倍増大したメディエーター活性を示し、かつ、ABTSアッセイにおいて親変異体の酸素活性の0.1倍の酸素活性しか示さなかった。対照的に、GOx変異体EX12およびEX15は、親変異体と比較して、メディエーター活性および酸素活性の両方において同時の増大を示している。EZ12は親変異体と比較してS53位に追加の置換を担持している(表2参照のこと)。さらに、EZ15は、A137Lのアミノ酸置換に起因してメディエーター活性において6倍の増大を有していることが発見された。
アミノ酸位置の特性分析
A173およびA332の位置は、活性部位からかなり離れている。A173は、表面に位置しており、A332は基質入口チャネルに近接して位置している。酸素活性に影響を及ぼすF414およびV560の2つの位置は、活性部位に近接して位置している。F414はグルコース結合部位の上方に位置しており、そして、V560はグルコースおよびFADに接して位置している。2つの活性位置A137およびS53の両方はFADに近接する表面位置である。
予備特性分析
選択された予備特性分析された変異体の結果は以下のとおりである。
1)酸素消費速度
図4は時間の関数としての反応混合物中の酸素含有量の進行(a)および1分あたりの酸素消費速度(b)を示している。対照として、GOx−T30V;I94V、GOx−WTおよびネガティブコントロール株の上澄み液が同様に分析された。
GOx−WTおよびGOx−T30V;I94Vは類似の挙動を示す。したがって、ここで試験されたGOx変異体(EZ03、EZ05、EZ07、EZ08、EZ10)の全てが、顕著に低下された酸素消費速度を有する。さらに、本発明の驚くべきおよび予期し得ぬ発見として、試験された変異体は、ネガティブコントロールから明確に識別されることができず、これは、それぞれの酸素活性が選択された条件下でのアッセイの検出範囲以下ですらあることを示している。
2)特異性
表3はグルコースに関する残余のGOx酵素活性を示している。
GOx−WTおよび配列番号1に記載の親変異体GOx−T30V;I94Vと比較して、本発明のGOx変異体のいずれも、マルトースまたはマルトトリオースとの顕著な干渉を示さなかった。EZ07およびEZ10は、全ての試験された糖に関して最も良好な結果を与えている。
3)メディエーター活性/グルコース親和性
ミカエリス−メンテン速度論が図5に示されている。表4は、VmaxおよびKMの計算値を示している。
表4は、親変異体GOx−T30V;I94Vとの比較においておよそ7.5倍高いVmax値をもつ一方、他方ではほぼ2倍高いKM値を有していることを示している。しかしながら、高いKM値は、高いVmax値の結果である。図5において、低い基質濃度におけるGOx−EZ07の能力がWTおよび親変異体GOx−T30V;I94Vに匹敵することが明確に把握され得る。GOx−EZ10は類似の結果に到達したが、しかしながら、より低いVmax値であった。
4)温度安定性
図6に、8つの異なる温度における残余の活性が図示されている。
本発明によって試験されたGOx変異体、GOx−WTおよびGOx−T30V;I94V親変異体は、類似の結果を示している。温度安定性における顕著な降下が脱グリコシル化されたGOx−WTにおいて観察され得るが、過度にグリコシル化されたGOx分子はより高い温度安定性を示している。
結論
全ての予備特性分析試験における特定の試験1)〜4)の決論において、GOx−EZ07およびGOx−EZ10変異体が最も重要な結果を示した。酸素活性における顕著な降下およびメディエーター活性における顕著な増大が、予備特性分析結果にしたがって達成された。GOx−EZ07およびGOx−EZ10の特異性はほぼ変化せず、キシロースに対するわずかな活性変化のみが検出された。EZ07の活性はEZ10の活性よりおよそ1.7倍高いため、GOx−EZ07が最終的な特性分析に選択された。
上記の結果は未精製の本発明のGOx変異体を用いて作製されたことが強調されるべきであろう。したがって当業者であれば、同様の精製されたGOx変異体を使用した後には結果が変わるかもしれないことに気付くであろう。またELISAを適用する細胞上澄み液中の特定のタンパク質測定もまた不純物によって影響されるかもしれない。
変異体GOx−EZ07の最終的な特性分析
最終的な特性分析のために、精製されたGOx−EZ07変異体が選択された。
1a)GOx−EZ07の酸素消費
GOx−WT、GOx−T30V;I94VおよびGOx−EZ07のそれぞれの酸素消費速度が図7に示されている。
選択された条件下、GOx−EZ07の酸素消費速度は、GOx−WTと比較して10倍以上低下しており、これは予備特性分析試験のデータを確証している。
2a)GOx EZ07の特異性
図8は、グルコース(100%)に関するGOx−WT、GOx−T30V;I94VおよびGOx−EZ07の残余の活性を示している。図8は、GOx−T30V;I94VおよびGOx−WTと比較してGOx−EZ07の特異性において顕著な変化はないことを示している。
3a)GOx変異体GOx−EZ07のミカエリス−メンテン速度論
図9は、メディエーターアッセイにおけるGOx−WT、GOx−T30V;I94VおよびGOx−EZ07の速度論を比較している。
図9によれば、GOx変異体GOx−EZ07は、GOx−WTと比較して、メディエーターアッセイにおいて641.5%の残余の活性、および、ABTSアッセイにおいて17.5%の残余の活性を示し、これは37倍の低下されたオキシダーゼ活性をもたらしている。
4a)GOx−EZ07の温度安定性
図10は、GOx−WTおよびGOx−T30V;I94Vと比較して、GOx−EZ07の温度安定性がそれぞれの置換によって維持されていたことを示している。
GOx変異体に関する結論
本明細書において提供されるGOx変異体のグルコース特異性、媒介される電子移動に関する酵素活性および酸素活性に影響を示す6つのアミノ酸位置が、親変異体GOx−T30V;I94Vにおいて特定された。全ての位置が個々に飽和されている。協同的効果を調べるために活性部位(S53;A137;A173;A332;F414;V560)の周囲にクラスター化されている位置が同時に飽和された。親変異体の特性と比較して改良されたメディエーター活性および/または低下された酸素消費速度のための最も重要な変異体が予備特性分析のために選択された。変異体GOx−EZ07(A173V;A332S;F414I;およびV560Tの追加の置換を有する)が、本発明の意味におけるグルコース特異性、メディエーター活性および酸素消費速度の試験された特性において最も顕著な結果を示している。
したがって、GOx−EZ07がそのメディエーター活性、オキシダーゼ活性、グルコース特異性、およびその温度安定性特性について集中的に調べられた。変異体は、媒介された電子移動に対する特異的活性において6.4倍の増加(GOx−WT:7.4;GOx−EZ07:47.5 U/mg)およびABTSアッセイにおいて5.7倍低下された活性(GOx−WT:451.1 U/mg;GOx−EZ07:78.86 U/mg)を示し、これは36.5倍の低下されたオキシダーゼ活性をもたらしている。GOx−EZ07は、温度安定性または特異性において何らの顕著な変化も示さない。
材料および方法
全ての化学薬品は、分析用グレードであり、Sigma−Aldrich(Taufkirchen、Germany)、Applichem(Darmstadt、Germany)またはCarl Roth(Karlsruhe、Germany)から購入された。全ての酵素は、New England Biolabs(UK)およびSigma−Aldrich(Taufkirchen、Germany)から購入された。pHES2シャトルベクターおよび大腸菌株DH5aは、Invitrogen(Karlsruhe、Germany)から購入された。サッカロミセス セレビシエ株7087(ngd29mnnn1)は、Roche diagnosticsより提供された(Lehle, L., Eiden, A., Lehnert, K., Haselbeck, A., and Kopetzki, E. (1995). Glycoprotein biosynthesis in Saccharomyces cerevisiae: ngd29, an N-glycosylation mutant allelic to och1 having a defect in the initiation of outer chain formation. FEBS Lett 370, 41-45)。DNAはNanoDrop光度計(NanoDrop Technologies、Wilmington、DE、USA)を用いて定量化された。シークエンシングおよびオリゴヌクレオチド合成は、Eurofins MWG Operon(Ebersberg、Germany)によって行われた。使用されたプライマーは、表5に示されている(補足情報)。
aa)多重サイトおよび単一サイト飽和的変異
多重サイトの飽和的変異のため、Omnichangeプロトコールが適用された(Dennig, A., Shivange, A.V., Marienhagen, J., and Schwaneberg, U. (2011). OmniChange: The Sequence Independent Method for Simultaneous Site-Saturation of Five Codons. PLoS ONE 6, e26222)。400μLのPCR反応混合物は、1ng/μLのプラスミドテンプレート、1×Phusion緩衝液(New England Biolabs、Frankfurt、Germany)、1U Phusionポリメラーゼおよび200μM dNTP’Sを含んでいた。反応混合物は、4つの等しい容積に分注され、そして、特定のサイトを標的とする250nMのフォーワードプライマーおよびリバースプライマーがフラグメント増幅のために添加された。ベクター骨格増幅のための混合物において、追加のdNTP’Sが最終的な濃度300μMに到達するように添加された。A173を標的とするフラグメント1のために、プライマーP7およびP8がマスターミックスに添加された。一方、A332飽和のためにはP9およびP10が使用された。F414サイトはP11およびP12を使用することにより標的化された。V560サイトはベクターの骨格に含まれ、P13およびP14によって増幅された。フラグメント増幅のためのPCRプログラムは、98℃で45秒間(1サイクル);98℃で15秒間;65℃で30秒間;72℃で30秒間(20サイクル);72℃で5分間(1サイクル)であった。ベクターの骨格の増幅のためには、伸長時間4分が適用された。全てのフラグメントはカラム精製され、そして、濃度がNanoDrop光度計(NanoDrop Technologies、Wilmington、DE、USA)上で測定された。PCR産物は続いて、DPnIによる終夜消化(それぞれ5U)に付された。
フラグメントの消化およびライゲーション:インサートフラグメントの濃度は、0.06pmol/μLに調製された。一方、ベクターの骨格の濃度は、0.02pmol/μLに調製された(DpnI消化にともなう希釈因子もまた考慮された)。1μLの切断溶液(50%の(500mM Tris、pH9.0)、30%の(100mM エタノール中のヨウ素)および20%のdH2O)がそれぞれのフラグメント 4μLに添加された。反応はその後70℃で5分間インキュベートされた。切断されたフラグメントは一緒に混合され、そして、ライブラリー増幅のためのケミカルコンピテント大腸菌DH5aの形質転換前に、室温(RT)にて5分間、インキュベートされた。酵母形質転換のために、遺伝子ライブラリーがプラスミド単離キット、「NucleoSpin(登録商標)Plasmid」(MACHERY−NAGEL、Dueren、Germany)を用いて大腸菌DH5aから単離された。
個々の部位飽和変異導入(SSM(site saturation mutagenesis))のために、2段階のPCRプロトコールが行われた(Sambrook, J., and Russel, D. (2001). Molecular cloning: a laboratory manual, Volume 2 (Cold Spring Harbor Laboratory Press))。50μLのPCR反応混合物は、1ng/μLのプラスミドテンプレート、1×Phusion緩衝液(New England Biolabs、Frankfurt、Germany)、1U Phusionポリメラーゼおよび300μM dNTP’Sを含んでいた。反応混合物は、2つの等しい容積に分注され、そして、標的とされたサイトの400nMのフォーワードプライマーおよびリバースプライマーが個々の反応混合物に添加された。PCRプログラムは、98℃で45秒間(1サイクル);98℃で15秒間;65℃で30秒間;72℃で4分間(5サイクル);72℃で5分間(1サイクル)であった。第1段階の後、両方の反応物がプールされ、そして、同じプログラムが、さらに15回の伸長サイクルの繰り返しを伴って行われた。以下のプライマー、173位に対してP15/P16、332位に対してP17/P18、414位に対してP19/P20、および560位に対してP21/P22、が使用された。PCR産物はカラム精製され、そしてその後、DPnI消化に付された。
bb)遺伝子クローニングおよび酵母菌形質転換
突然変異されたGOx遺伝子のpYES2ベクターの骨格へのクローニングは、リガーゼフリーの方法を介する組換えによって行われた(Oldenburg, K.R., Vo, K.T., Michaelis, S., and Paddon, C. (1997). Recombination-mediated PCR-directed plasmid construction in vivo in yeast. Nucleic Acids Research 25, 451-452)。始めに、2μgのpYES2−GOx T30V、I94V二重変異体がSalI/BamHI消化(10U/μg DNA、6時間、37℃)によって直鎖化され、続いて、NucleoSpin(登録商標) Extract II−kit(MACHERY−NAGEL、Dueren、Germany)を用いるゲル抽出により精製された。ライブラリーの増幅に使用されるプライマーは、プライマー配列の全体が直鎖化されたベクターの骨格に相補的であるようにデザインされた。
次に、直鎖化されたpYES2ベクターおよび増幅された遺伝子ライブラリーが1:3の比率(250ng/750ng)で混合された。このDNAミックスが、酢酸リチウム法(Gietz, R.D., and Schiestl, R.H. (2007). High-efficiency yeast transformation using the LiAc/SS carrier DNA/PEG method. Nature Protocols 2, 31-34)を用いてサッカロミセス セレビシエ7087の形質転換に使用された。形質転換体は、2%グルコースを含むSC−U選択プレート上で培養された。環状プラスミドの形質転換には、300ngのDNAが使用された。
cc)96ウェル中における培養および発現
2%グルコースを含むSC−U選択寒天プレート上で培養されたシングルコロニーが、1ウェル当たり100μLのSC−U培養液(1%グルコース)を含む96ウェルマイクロリッタープレート(PS−F底、greiner bio−one)中に楊枝を用いて移された。前培養のための培養は、以下の条件、900rpm、30℃、70%湿度、24時間、の下、プレートシェーカー(Infors GmbH、Eisenach、Germany)中で行われた。一定の量の前培養物がそれぞれのウェルからディープウェルプレート(riplate−rectangular、ritter)中の500μL SC−U自己誘導培養液(0.5%グルコース/2%ガラクトース)へと移された。本培養は、前培養と同じ条件下で、ただし72時間培養された。プレートは20分間、室温(RT)で、4000rpmで遠心分離された。結果として得られた上澄み液が活性測定に使用された。
dd)組換えGOxの産生および精製
前培養:500mLのSynY培養液(2%グルコース)がSc7087/pYES2−GOxの終夜培養物を用いて、OD 600=0.2まで播種され、培養が30℃で12時間および250rpmで5Lの振とうフラスコ中で行われた。本培養:10LのSynY培養液(1%グルコース)が500mLの前培養物で播種された。培養のためには、10Lの発酵槽が、以下の条件、温度:30℃、攪拌:400rpm、通気:1vvm、時間:48時間、を適用して使用された。
細胞分離およびバッファー交換:GOxを含有する上澄み液がマイクロろ過によって回収された。この目的のため、クロスフローろ過ユニットSartoJet(Sartorius Stedim Biotech GmbH、Goettingen、Germany)が単一フィルターカセット(Sartocon(登録商標)スライス、Hydrosart(登録商標) 0.45μm、Sartorius Stedim Biotech GmbH、Goettingen、Germany)と共に使用された。フィード圧は、2.0barに、および出口圧は1.0barに調節された。同じろ過システムが、限外ろ過用カセット(Sartocon(登録商標)スライス, Hydrosart(登録商標) 10kDa、Sartorius Stedim Biotech GmbH、Goettingen、Germany)を適用して、以下の条件、バッファー:50mM NaH2PO4、pH6;バッファー交換容積:7;フィード圧:2.0bar;出口圧:1.0bar;最終体積:0.5Lのもと、緩衝液交換およびサンプル濃縮のために使用された。
酵素精製のため、アニオン交換クロマトグラフィーが、AKTAパイロットシステムおよびFineLINE パイロット 35 カラム(GE Healthcare、Munich、Germany)を用いて行われた。カラムは220mLのレジン(フラクトゲル(登録商標) TSK DEAE−650s Merck)で充填され、62.5cm/時間の流速が選択された。平衡:440mLの50mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH6;ロードされたサンプル:0.5L濃縮物;洗浄:440mLの50mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH6;溶出:95% 50mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH6/5% 1M NaCl(ステップ勾配)。GOx含有留分がプールされ、その後50mM リン酸カリウム緩衝液 pH7に対する最終的なバッファー交換が行われた(Amicon(登録商標) Ultracel−30k Millipore、Cork、Ireland)。
ee)タンパク質濃度の標準化
酵素免疫測定法(ELISA)がGOx濃度の特異的測定のために使用された。ストレプトアビジンでコートされたマイクロリッタープレート(Roche−Material No.11643673001)のそれぞれのウェルが100μLの一次抗体溶液(2μg/mL;ウサギ PAK GOD−ビオチン Acris R1083B)で満たされ、プレートは1時間、室温にてインキュベートされた。その後の洗浄工程(4回の、350μLの9g/L NaCl_0.1% Tween(登録商標) 20)の後、100mLの酵素サンプルがピペットにてウェルに加えられ、第二のインキュベーション工程に続けられた。洗浄工程が繰り返され、そして、プレートが100μLの二次抗体溶液(10μg/mL;ウサギ PAK GOD−HRP Acris R1083HRP)によって満たされた。第3のインキュベーションおよび洗浄工程の後、プレートは100μLのABTS/H22溶液(11684302001、Roche Diagnostics GmbH、Mannheim、Germany)によって満たされた。プレートは、405nmでの吸収が測定される前に、室温にて30分インキュベートされた。アスペルギルス ニガー由来のグルコース酸化酵素(G7141−50KU SIGMA−ALDRICH)が内部標準として使用された。
ff)メディエーターアッセイ
液体取扱いのために、Brand社製のマルチチャネルピペット(Transferpette(登録商標) S−8)およびEppendorf社製のマルチチャネルピペット(Research(登録商標) pro)が使用された。75μLのサンプル(調製された上澄み液/酵素溶液)が96ウェル平底マイクロプレート(greiner bio−one)に移された。100μLのメディエーター溶液(19.05mM N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソアニリン(Becker, O. (2005). Die Glucose-Dye-Oxidoreduktase in der klinischen Diagnostik. DISSERTATION thesis, Technische Universitat Kaiserslautern, Kaiserslautern)、Roche−Material No.100088314;5%(w/w)ポリビニルピロリドン、Roche−10003476964;pH7)および10μLの25mM りんモリブデン酸(Roche、Genisys−nr.:11889893001)が添加された。反応は25μLの基質溶液を添加すること、およびその後、1分間1000rpmでプレートを振とうすることによって開始された。りんモリブデン酸還元の速度が、マイクロプレートリーダー、Tecan Sunrise(登録商標)(Tecan Trading AG、Switzerland)を用いて700nmでモニターされた。速度分析のため、VmaxおよびKM値が、基質濃度の関数としてプロットされた(線形相関係数は0.99より大きかった)初期速度データから決定された。
gg)ABTSアッセイ
液体取扱いのために、Brand社製のマルチチャネルピペット(Transferpette(登録商標) S−8)およびEppendorf社製のマルチチャネルピペット(Research(登録商標) pro)が使用された。75μLのサンプル(調製された上澄み液/酵素溶液)が、100μLのリン酸バッファー(pH7)を含む96ウェル平底マイクロプレート(greiner bio−one)に移された。20μLの反応混合物がそれぞれのウェルに添加され、以下の濃度が達成された:0.91U/mL HRP;2.3mM ABTS。反応は25μLの基質溶液を添加すること、およびその後、30秒間1000rpmでプレートを振とうすることによって開始された。ABTSの酸化が、マイクロプレートリーダー、FLUOstar(登録商標) Omega(BMG LABTECH)を用いて414nmで速度論的に測定された。速度分析のため、VmaxおよびKM値が、基質濃度の関数としてプロットされた(線形相関係数は0.99より大きかった)初期速度データから決定された。
hh)酸素消費アッセイ
酸素消費の直接的な測定のために、光学的な酸素プローブ「Fibox3−ミニセンサー 酸素濃度計」(Precision Sensing GmbH、Regensburg、Germany)が使用された。1540μLの反応混合物は、840μLのリン酸バッファー(0.2M/pH7)、175μLの基質溶液および525μLのGOx溶液から構成された。酸素消費(%/分)が速度論的に決定された。
ii)温度安定性
100μLの酵素溶液が15分間、対応する温度でインキュベートされ、そしてその後、5分間氷上で冷却された。活性測定のために75μLが使用された。以下の温度:30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、および65℃が試験された。

Claims (27)

  1. a)配列番号1に記載のグルコース酸化酵素であって、2つのアミノ酸置換T30VおよびI94Vに加えて、前記配列番号1におけるS53;A137;A173;A332;F414;V560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に少なくとも1つの追加のアミノ酸置換を有するグルコース酸化酵素、または
    b)b)のグルコース酸化酵素が2つのアミノ酸置換T30VおよびI94Vに加えて、前記配列番号1におけるS53;A137;A173;A332;F414;V560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に少なくとも1つの追加のアミノ酸置換を有するという条件で、a)のグルコース酸化酵素に少なくとも90%より高いアミノ酸配列同一性を示すグルコース酸化酵素、ただし、
    b)のグルコース酸化酵素は、a)のグルコース酸化酵素の酵素活性の少なくとも70%より高い酵素活性を示し、および、a)のグルコース酸化酵素のグルコースに対する酵素特異性の少なくとも70%より高い酵素特異性を示し、かつ
    b)のグルコース酸化酵素は、配列番号1のグルコース酸化酵素の、電子受容体としての酸素に対する活性より5倍低下された活性を示す、または配列番号1のグルコース酸化酵素の、酸素以外の電子受容体に対する活性より1.5倍増大された活性を示すか、またはその両方である
    からなる群より選択されるグルコース酸化酵素であって、
    前記追加の置換のためのアミノ酸が、
    S53位におけるPhe;および/または
    A137位におけるLeu;および/または
    A173位におけるIle、Thr、Val;および/または
    A332位におけるSer、Val、Thr;および/または
    F414位におけるIle、Leu、Met、Val;および/または
    V560位におけるLeu、Pro、Thr
    の群より選択される、グルコース酸化酵素。
  2. 前記b)のグルコース酸化酵素が、前記a)のグルコース酸化酵素の酵素活性の少なくとも80%より高い酵素活性を示すグルコース酸化酵素である請求項1記載のグルコース酸化酵素。
  3. 前記b)のグルコース酸化酵素が、前記a)のグルコース酸化酵素の酵素活性の少なくとも90%より高い酵素活性を示すグルコース酸化酵素である請求項1または2記載のグルコース酸化酵素。
  4. 前記b)のグルコース酸化酵素が、前記a)のグルコース酸化酵素のグルコースに対する酵素特異性の少なくとも80%より高い酵素特異性を示すグルコース酸化酵素である請求項1〜3のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  5. 前記b)のグルコース酸化酵素が、前記a)のグルコース酸化酵素のグルコースに対する酵素特異性の少なくとも90%より高い酵素特異性を示すグルコース酸化酵素である請求項1〜4のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  6. 電子受容体としての酸素に対する前記活性が、以下の工程
    a)75μLのサンプル酵素溶液が100μLのリン酸バッファー(pH7)を含む平底96ウェルマイクロプレートへと移される工程
    b)20μLの反応混合物が、以下の濃度、0.91U/mL HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ);2.3mM ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))、をもたらすようにそれぞれのウェルへと添加される工程
    c)25μLのグルコース基質溶液を添加することおよびその後の30秒間の1000rpmでのプレートの振とうによって反応が開始される工程
    d)ABTSの酸化がマイクロプレートリーダーを用いて414nmで速度論的に測定される工程
    を含むABTSアッセイによって測定されており、
    酸素以外の電子メディエーターの前記活性が、以下の工程
    a)75μLの酵素溶液が平底96ウェルマイクロプレートへと移される工程
    b)100μLのメディエーター溶液(19.05mMのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソアニリン);5%(w/w)ポリビニルピロリドン、pH7および20μLの25mM りんモリブデン酸が添加される工程
    c)25μLのグルコース基質溶液を添加することおよびその後の1分間の1000rpmでのプレートの振とうによって反応が開始される工程
    d)りんモリブデン酸還元の反応速度がマイクロプレートリーダーを用いて700nmでモニターされる工程
    を含むメディエーターアッセイによって測定される請求項1〜5のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  7. 前記酸素以外の電子メディエーターが、ニトロソアニリンおよびその誘導体、アゾ化合物、フェナジンおよびその誘導体、フェノチアジンおよびその誘導体、フェノキサジンおよびその誘導体、フェロセンおよびその誘導体、フェリシアン化カリウム、Ru−およびOS−錯体、キノンおよびその誘導体、インドールフェノール、ビオロゲン、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、ならびに、フタロシアニンを含む群より選択される請求項1〜6のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  8. 配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、配列番号1に記載のS53;A137;A173;A332;F414;およびV560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に、追加の、2つのアミノ酸置換を有する請求項1〜のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  9. 配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、配列番号1に記載のS53;A137;A173;A332;F414;およびV560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に、追加の、3つのアミノ酸置換を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  10. 配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、配列番号1に記載のS53;A137;A173;A332;F414;およびV560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に、追加の、4つのアミノ酸置換を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  11. 配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、配列番号1に記載のS53;A137;A173;A332;F414;およびV560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に、追加の、5つのアミノ酸置換を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  12. 配列番号1に記載の2つの置換T30VおよびI94Vに加えて、配列番号1に記載のS53;A137;A173;A332;F414;およびV560の群より選択される6つの位置のうちの任意の位置に、追加の、6つのアミノ酸置換を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  13. 配列番号1に記載の前記T30VおよびI94Vの置換に加えて、F414および/またはV560の位置における少なくとも1つの追加のアミノ酸置換が、A137および/またはA173および/またはA332の位置における少なくとも1つのアミノ酸置換と組み合わせられている請求項1〜12のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  14. 前記T30VおよびI94Vの置換に加えて、配列番号4に記載のA173I;A332S;およびF414Lの前記追加のアミノ酸置換を有する請求項1〜13のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  15. 前記T30VおよびI94Vの置換に加えて、配列番号3に記載のA173V;A332S;F414I;およびV560Tの前記追加のアミノ酸置換を有する請求項1〜14のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  16. 前記T30VおよびI94Vの置換に加えて、配列番号6に記載のA173V;A332N;F414V;およびV560Lの前記追加のアミノ酸置換を有する請求項1〜15のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  17. 以下の工程
    a)75μLの酵素溶液が平底96ウェルマイクロプレートへと移される工程
    b)100μLのメディエーター溶液(19.05mMのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソアニリン);5%(w/w)ポリビニルピロリドン、pH7および20μLの25mM りんモリブデン酸が添加される工程
    c)25μLのそれぞれの糖である基質溶液を添加することおよびその後の1分間の1000rpmでのプレートの振とうによって反応が開始される工程
    d)りんモリブデン酸還元の反応速度がマイクロプレートリーダーを用いて700nmでモニターされる工程
    を含むメディエーターアッセイによって測定される場合に、少なくとも99.9%のグルコース特異性および/または4%未満のガラクトース特異性および/または0.3%未満のマルトース特異性および/または6%未満のキシロース特異性および/または0.1%未満のマルトトリオース特異性を示す請求項1〜16のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  18. 以下の工程
    a)75μLの酵素溶液が平底96ウェルマイクロプレートへと移される工程
    b)100μLのメディエーター溶液(19.05mMのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソアニリン);5%(w/w)ポリビニルピロリドン、pH7および20μLの25mM りんモリブデン酸が添加される工程
    c)25μLのグルコース基質溶液を添加することおよびその後の1分間の1000rpmでのプレートの振とうによって反応が開始される工程
    d)りんモリブデン酸還元の反応速度がマイクロプレートリーダーを用いて700nmでモニターされる工程
    を含むメディエーターアッセイによる配列番号1のGOxのニトロソアニリンメディエーター活性と比較して、400%より大きい電子移動のためのニトロソアニリンメディエーターに対する活性を示し、かつ
    以下の工程
    a)75μLのサンプル酵素溶液が100μLのリン酸緩衝液(pH7)を含む平底96ウェルマイクロプレートへと移される工程
    b)20μLの反応混合物が、以下の濃度、0.91U/mL HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ);2.3mM ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))、をもたらすようにそれぞれのウェルへと添加される工程
    c)25μLのグルコース基質溶液を添加することおよびその後の30秒間の1000rpmでのプレートの振とうによって反応が開始される工程
    d)ABTSの酸化がマイクロプレートリーダーを用いて414nmで速度論的に測定される工程
    を含むABTSアッセイによる配列番号1のGOxの酸素活性と比較して、30%以下の酸素活性を示す請求項1〜17のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  19. 前記メディエーターアッセイによる配列番号1のGOxのニトロソアニリンメディエーター活性と比較して、500%より大きい電子移動のためのニトロソアニリンメディエーターに対する活性を示す請求項1〜18のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  20. 前記メディエーターアッセイによる配列番号1のGOxのニトロソアニリンメディエーター活性と比較して、600%より大きい電子移動のためのニトロソアニリンメディエーターに対する活性を示す請求項1〜19のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  21. 前記ABTSアッセイによる配列番号1のGOxの酸素活性と比較して、25%未満の酸素活性を示す請求項1〜20のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  22. 前記ABTSアッセイによる配列番号1のGOxの酸素活性と比較して、20%未満の酸素活性を示す請求項1〜21のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  23. 前記ABTSアッセイによる配列番号1のGOxの酸素活性と比較して、15%未満の酸素活性を示す請求項1〜22のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  24. 前記ABTSアッセイによる配列番号1のGOxの酸素活性と比較して、10%以下の酸素活性を示す請求項1〜23のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素。
  25. 請求項1〜24のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素をエンコードする単離ポリヌクレオチド。
  26. 請求項1〜24のいずれか1項に記載のグルコース酸化酵素によってエクスビボサンプルにおいてグルコースを検出する、決定する、または測定するための方法であって、前記検出、決定または測定が、エクスビボサンプルを前記グルコース酸化酵素に接触させることを含む方法。
  27. グルコースの前記検出、決定または測定が、センサーまたはテストストリップ装置を使用して行われる請求項26記載の方法。
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