JP6414670B2 - 耐火集成材 - Google Patents

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Description

本発明は、荷重を支持するための集成材からなる芯材と、この芯材の外側に設けられる燃え止まり層とを備える耐火集成材に関するものである。
木材は一般に、多くの長所を持っている。主なものとして、調湿性、衝撃安全性、断熱性、心身不調の低減、香りによるリラックス効果、わくわく感の向上、子供たちの情緒安定性の向上等があげられる。また、鉄骨といった既存の部材と比較し、トータルとしてのCOの削減にも効果があり、有効利用が急務となっている。特に、間伐材などから製造した単板を利用した集成材は、構造的な性能も一様になり易く、比較的安定した供給も可能であり、活用が一段と増すものと考えられる。
一方、こうした集成材をはじめとする木材の最大の弱点が燃えてしまうことである。このため、壁・床・柱・梁等の木造部材は、燃え代分を見込んで燃え代設計が従来行われてきた。また、火災に面していない裏面の温度上昇を抑えるためにも、部材の厚みを増す方法は有効となる。しかし、その分、大きくなる部材は、コスト高、重量増、室の有効面積の低減を誘発する方向にあった。
さらに、1時間やそれ以上の耐火の性能として、燃え止まることが要求されるようになり、基準が一段と厳しいものとなった。このため、木造部材の厚みを増すだけでは対応が難しい。そこで、例えば図12に示すように、燃え代層3の部分を厚くした上で芯材である荷重支持層1との間に、モルタル層からなる燃え止まり層2を入れた方式(例えば、特許文献1を参照)や、図13に示すように、燃え代層3と芯材である荷重支持層1との間に、同じ石膏ボード4を幾重にも重ねて入れた方式(例えば、特許文献2を参照)などが提案されるようになり、燃え止まりが確保できるようになってきている。
特許第4857034号公報 特許第4359275号公報
しかしながら、図12、図13のような方式によっても、部材が大きくなることは避けられず、コスト高、重量増、室の有効面積の低減等の問題を解決することはできない。このため、部材のスリム化を図ることができて、コスト高、重量増、室の有効面積の低減等の問題を解決することのできる耐火集成材の開発が求められていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、部材のスリム化を図ることのできる耐火集成材を提供することを目的とする。
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る耐火集成材は、荷重を支持する集成材からなる芯材と、芯材の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状の第1燃え止まり層と、第1燃え止まり層の外側に設けられる仕上げ材とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る他の耐火集成材は、荷重を支持する集成材からなる芯材と、芯材の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、断熱性を有し、不燃木材からなる第1燃え止まり層とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る他の耐火集成材は、上述した発明において、第1燃え止まり層の外側に設けられる仕上げ材を備え、仕上げ材は、金属からなる膜状の下地材と、下地材の外側に設けられ、不燃性または準不燃性の表面材とを含んで構成されることを特徴とする。
本発明に係る耐火集成材によれば、荷重を支持する集成材からなる芯材と、芯材の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状の第1燃え止まり層と、第1燃え止まり層の外側に設けられる仕上げ材とを備える。ここで、第1燃え止まり層および第2燃え止まり層は、耐火性を有する被覆層ということができ、外側の被覆層(第1燃え止まり層に相当)は内側の被覆層への燃焼の進行を遅らせる機能を有する。また、内側の被覆層(第2燃え止まり層に相当)は、外側の被覆層が火災により上記機能を失った後に、芯材への熱の伝達を防止し、芯材を炭化や燃焼させない機能を有する。このように、燃え止まり層が、第1燃え止まり層と第2燃え止まり層とによる機能・材料の異なる2層からなり、これらの層厚を薄くしても、火災時の断熱性を確保することができ、例えば、少なくとも1時間耐火の性能を確保可能である。また、燃え止まり層全体の厚さを薄くできるので、同じ断面積の芯材を有する耐火仕様の部材において、部材全体の断面積を小さくできる。したがって、本発明によれば、所定の耐火性能を有しつつ、部材のスリム化が図られた耐火集成材を提供することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の耐火集成材によれば、荷重を支持する集成材からなる芯材と、芯材の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、断熱性を有し、不燃木材からなる第1燃え止まり層とを備える。ここで、第1燃え止まり層および第2燃え止まり層は、耐火性を有する被覆層ということができ、外側の被覆層(第1燃え止まり層に相当)は内側の被覆層への燃焼の進行を遅らせる機能を有する。また、内側の被覆層(第2燃え止まり層に相当)は、外側の被覆層が火災により上記機能を失った後に、芯材への熱の伝達を防止し、芯材を炭化や燃焼させない機能を有する。このように、燃え止まり層が、第1燃え止まり層と第2燃え止まり層とによる機能・材料の異なる2層からなり、これらの層厚を薄くしても、火災時の断熱性を確保することができ、例えば、少なくとも1時間耐火の性能を確保可能である。また、燃え止まり層全体の厚さを薄くできるので、同じ断面積の芯材を有する耐火仕様の部材において、部材全体の断面積を小さくできる。したがって、本発明によれば、所定の耐火性能を有しつつ、部材のスリム化が図られた耐火集成材を提供することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の耐火集成材によれば、上述した発明において、第1燃え止まり層の外側に設けられる仕上げ材を備え、仕上げ材は、金属からなる膜状の下地材と、下地材の外側に設けられ、不燃性または準不燃性の表面材とを含んで構成される。ここで、仕上げ材のうち表面材が火災により消失しても、金属からなる膜状の下地材が第1燃え止まり層の表面を覆う状態で残り、周囲からの輻射熱を反射するので、火災時の断熱性を向上することができる。また、燃え止まり層が、第2燃え止まり層と第1燃え止まり層とによる機能・材料の異なる2層からなり、これらの層厚を薄くしても、火災時の断熱性を確保することができ、例えば、少なくとも1時間耐火の性能を確保可能である。また、仕上げ材を含めた燃え止まり層全体の厚さを薄くできるので、同じ断面積の芯材を有する耐火仕様の部材において、部材全体の断面積をより一層小さくできる。したがって、本発明によれば、所定の耐火性能を有しつつ、部材のスリム化がより一層図られた耐火集成材を提供することができるという効果を奏する。
図1は、本発明に係る耐火集成材の実施の形態1を示す概略断面図である。 図2は、本発明に係る耐火集成材の実施の形態1を示す概略斜視断面図である。 図3は、本発明に係る耐火集成材の実施の形態2を示す概略断面図である。 図4は、本発明に係る耐火集成材の実施の形態2を示す概略斜視断面図である。 図5は、本発明に係る耐火集成材の実施の形態3を示す概略断面図である。 図6は、本発明に係る耐火集成材の実施の形態3を示す概略斜視断面図である。 図7は、本発明に係る耐火集成材の実施の形態3の作用効果を説明する側断面図であり、(a)は仕上げ材がない場合の図、(b)は仕上げ材がある場合の図である。 図8は、本発明に係る耐火集成材の実施の形態1の変形例を示す概略断面図である。 図9は、本発明に係る耐火集成材の実施の形態2の変形例を示す概略断面図である。 図10は、本発明に係る耐火集成材の実施の形態3の変形例を示す概略断面図である。 図11は、耐火集成材の加熱試験結果の一例であり、芯材の表面温度の時間変化を示す図である。 図12は、従来の特許文献1に記載されている部材の一例を示す断面図である。 図13は、従来の特許文献2に記載されている部材の一例を示す断面図である。
以下に、本発明に係る耐火集成材の実施の形態(実施の形態1〜3)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
[実施の形態1]
まず、本発明の実施の形態1について図1および図2を参照しながら説明する。
図1および図2に示すように、本実施の形態1に係る耐火集成材10は、芯材12と、第2燃え止まり層14と、第1燃え止まり層16と、仕上げ材18とを備えるものである。
芯材12は、荷重を支持する集成材(木材)からなり、例えば、スギやカラマツなどの一般的な集成材で構成することができる。
第2燃え止まり層14は、耐火性を有する被覆層であり、芯材12の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなるものである。この第2燃え止まり層14は、火災時においては、外側の第1燃え止まり層16が火災によりその機能を失った後であっても、隣接する内側の芯材12への熱の伝達を防止し、芯材12を炭化や燃焼させない機能を持っており、芯材12への熱伝導を抑制する作用を発揮する。第2燃え止まり層14をなす無機質材料としては、強化石膏ボード、石膏ボード、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)等のボード状の材料を用いることができる。また、その厚さは、用途に応じて適宜調整可能である。厚くすると、熱伝導を抑制する効果は向上する。これらのボードは、重ねて所定の厚さにしてもよい。ここで、強化石膏ボード、石膏ボード、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)等の材料は、極めて安価に入手できるとともに、高い断熱性と吸熱性とを有することから、第2燃え止まり層14として好適である。
第1燃え止まり層16は、耐火性を有する被覆層であり、第2燃え止まり層14の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状のものである。この第1燃え止まり層16は、火災時においては、その断熱性により隣接する内側の第2燃え止まり層14への燃焼の進行を遅らせる機能を持ち、第2燃え止まり層14への熱伝導を抑制する作用を発揮する。この第1燃え止まり層16としては、熱を受けると発泡して著しく厚みを増し、断熱性を発現する耐火シートや耐火フィルムなどの材料を用いることができる。また、その厚さは、第2燃え止まり層14の厚さに応じて適宜調整可能であるが、例えば、1mm〜12mm程度とするのが好ましく、1.5mm〜6mm程度とするのがより好ましい。
このように、上記の燃え止まり層14、16は、耐火性を有する被覆層ということができ、外側の被覆層(第1燃え止まり層16に相当)は内側の被覆層への燃焼の進行を遅らせる機能を持っている。また、内側の被覆層(第2燃え止まり層14に相当)は、外側の被覆層が火災により上記機能を失った後に、芯材12への熱の伝達を防止し、芯材12を炭化や燃焼させない機能を持つものである。
仕上げ材18は、木材からなり、第1燃え止まり層16の外側に木質感を付与するために設けられる。したがって、耐火集成材10の外表面18aは、この仕上げ材18によって木質感や木目調の外観を呈している。仕上げ材18は、木材や集成材等の木質材料であることが望ましいが、クロス材等の建築用仕上げ材を用いてもよい。仕上げ材18の厚さは、例えば3mm〜30mm程度とすることが好ましいが、もちろん、これよりも薄くして、燃え代としてほとんど機能しないように構成しても構わない。
このように、本実施の形態1の耐火集成材10によれば、燃え止まり層が、第2燃え止まり層14と第1燃え止まり層16とによる機能・材料の異なる2層からなり、これらの層厚を薄くしても、火災時の断熱性を確保することができ、例えば、少なくとも1時間耐火の性能を確保可能である。また、燃え止まり層全体の厚さを薄くできるので、同じ断面積の芯材を有する耐火仕様の部材において、部材全体の断面積を小さくできる。したがって、本実施の形態1によれば、所定の耐火性能を有しつつ、部材のスリム化が図られた耐火集成材を提供することができる。
さらに、本実施の形態1によれば、耐火集成材の断面積に占める芯材による木材部分の面積を大きくすることができるので、同じ断面積の耐火仕様の部材において、特に構造上重要な芯材部分に木材を多く使用できる。しかも、本実施の形態1の耐火集成材は、現場で加工が可能であるとともに、施工性が良く、木質感が損なわれない。この耐火集成材を用いれば、木造架構の自由度を高めることができる。また、第2燃え止まり層14として、低コストで調達可能な強化石膏ボード、石膏ボード、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)等を使用できるため、製作コストを安価に抑えることができる。したがって、本実施の形態1によれば、部材のスリム化を図ることができて、コスト高、重量増、構造材の断面積、室の有効面積の低減といった問題を解決することが可能である。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について図3および図4を参照しながら説明する。
図3および図4に示すように、本実施の形態2に係る耐火集成材20は、芯材22と、第2燃え止まり層24と、第1燃え止まり層26とを備えるものである。
芯材22は、荷重を支持する集成材(木材)からなり、例えば、スギやカラマツなどの一般的な集成材で構成することができる。
第2燃え止まり層24は、耐火性を有する被覆層であり、芯材22の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなるものである。この第2燃え止まり層24は、火災時においては、外側の第1燃え止まり層26が火災によりその機能を失った後であっても、隣接する内側の芯材22への熱の伝達を防止し、芯材22を燃焼させない機能を持っており、芯材22への熱伝導を抑制する作用を発揮する。第2燃え止まり層24をなす無機質材料としては、強化石膏ボード、石膏ボード、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)等のボード状の材料を用いることができる。また、その厚さは、用途に応じて適宜調整可能である。厚くすると、熱伝導を抑制する効果は向上する。これらのボードは、重ねて所定の厚さにしてもよい。ここで、強化石膏ボード、石膏ボード、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)等の材料は、極めて安価に入手できるとともに、高い断熱性と吸熱性とを有することから、第2燃え止まり層24として好適である。
第1燃え止まり層26は、耐火性を有する被覆層であり、第2燃え止まり層24の外側に設けられ、断熱性を有し、仕上げ材を兼ねるものである。この第1燃え止まり層26は、火災時においては、その断熱性により隣接する内側の第2燃え止まり層24への燃焼の進行を遅らせる機能を持ち、第2燃え止まり層24への熱伝導を抑制する作用を発揮する。この第1燃え止まり層26としては、外面側が木目調の外観や木質感を呈するような燃えにくい不燃性の材料、例えば木材にホウ酸等の薬剤を含浸させて不燃処理した不燃木材を用いることができる。また、第1燃え止まり層26の厚さは用途に応じて適宜調整可能であるが、例えば15mm〜45mm程度とするのが好ましく、30mm程度とするのがより好ましい。
また、第1燃え止まり層26は、耐火集成材20に木目調の外観や木質感を付与する仕上げ材としての機能も兼ねている。したがって、耐火集成材20の外表面26aはこの第1燃え止まり層26によって木目調の外観を呈している。必要に応じて、この外側に仕上げ材を設けてもよい。
このように、上記の燃え止まり層24、26は、耐火性を有する被覆層ということができ、外側の被覆層(第1燃え止まり層26に相当)は内側の被覆層への燃焼の進行を遅らせる機能を持っている。また、内側の被覆層(第2燃え止まり層24に相当)は、外側の被覆層が火災により上記機能を失った後に、芯材22への熱の伝達を防止し、芯材22を炭化や燃焼させない機能を持つものである。
このように、本実施の形態2の耐火集成材20によれば、燃え止まり層が、第2燃え止まり層24と第1燃え止まり層26とによる機能・材料の異なる2層からなり、これらの層厚を薄くしても、火災時の断熱性を確保することができ、例えば、少なくとも1時間耐火の性能を確保可能である。また、燃え止まり層全体の厚さを薄くできるので、同じ断面積の芯材を有する耐火仕様の部材において、部材全体の断面積を小さくできる。したがって、本実施の形態2によれば、所定の耐火性能を有しつつ、部材のスリム化が図られた耐火集成材を提供することができる。
さらに、本実施の形態2によれば、耐火集成材の断面積に占める芯材による木材部分の面積を大きくすることができるので、同じ断面積の耐火仕様の部材において、特に構造上重要な芯材部分に木材を多く使用できる。しかも、本実施の形態2の耐火集成材は、現場で加工が可能であるとともに、施工性が良く、木質感が損なわれない。この耐火集成材を用いれば、木造架構の自由度を高めることができる。また、第2燃え止まり層24として、低コストで調達可能な強化石膏ボード、石膏ボード等を使用できるため、製作コストを安価に抑えることができる。したがって、本実施の形態2によれば、部材のスリム化を図ることができて、コスト高、重量増、構造材の断面積、室の有効面積の低減といった問題を解決することが可能である。
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について図5〜図7を参照しながら説明する。
図5および図6に示すように、本実施の形態3に係る耐火集成材30は、芯材32と、第2燃え止まり層34と、第1燃え止まり層36と、仕上げ材42とを備えるものである。
芯材32は、荷重を支持する集成材(木材)からなり、例えば、スギやカラマツなどの一般的な集成材で構成することができる。
第2燃え止まり層34は、耐火性を有する被覆層であり、芯材32の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなるものである。この第2燃え止まり層34は、火災時においては、外側の第1燃え止まり層36が火災によりその機能を失った後であっても、隣接する内側の芯材32への熱の伝達を防止し、芯材32を燃焼させない機能を持っており、芯材32への熱伝導を抑制する作用を発揮する。第2燃え止まり層34をなす無機質材料としては、強化石膏ボード、石膏ボード、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)等のボード状の材料を用いることができる。また、その厚さは、用途に応じて適宜調整可能である。厚くすると、熱伝導を抑制する効果は向上する。これらのボードは、重ねて所定の厚さにしてもよい。ここで、強化石膏ボード、石膏ボード、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)等の材料は、極めて安価に入手できるとともに、高い断熱性と吸熱性とを有することから、第2燃え止まり層34として好適である。
第1燃え止まり層36は、耐火性を有する被覆層であり、第2燃え止まり層34の外側に設けられ、断熱性を有するものである。この第1燃え止まり層36は、火災時においては、その断熱性により隣接する内側の第2燃え止まり層34への燃焼の進行を遅らせる機能を持ち、第2燃え止まり層34への熱伝導を抑制する作用を発揮する。この第1燃え止まり層36としては、燃えにくい不燃性の材料、例えば木材にホウ酸等の薬剤を含浸させて不燃処理した不燃木材を用いることができる。また、第1燃え止まり層36の厚さは用途に応じて適宜調整可能であるが、例えば15mm〜45mm程度とするのが好ましく、30mm程度とするのがより好ましい。
このように、上記の燃え止まり層34、36は、耐火性を有する被覆層ということができ、外側の被覆層(第1燃え止まり層36に相当)は内側の被覆層への燃焼の進行を遅らせる機能を持っている。また、内側の被覆層(第2燃え止まり層34に相当)は、外側の被覆層が火災により上記機能を失った後に、芯材32への熱の伝達を防止し、芯材32を炭化や燃焼させない機能を持つものである。
仕上げ材42は、第1燃え止まり層36の外側であって耐火集成材30の最外部に設けられる不燃材あるいは準不燃材である。この仕上げ材42は、金属からなる膜状の下地材38と、この下地材38の外側に塗布等によって設けられる不燃性または準不燃性の表面材40とからなる。この仕上げ材42の全体の厚さは用途に応じて適宜調整可能であるが、例えば1mm未満とするのが好ましい。
下地材38は、金属箔や金属膜によって構成することができる。下地材38に使用する金属は、高温になると多少溶けるものでもよいが、例えば950℃を超えても溶融しないものが好ましく、例えば銅などの金属を用いるのが好適である。さらに、熱反射率の高い金属であることが望ましい。
表面材40は、耐火集成材30の外表面40aに木質感や木目調の外観を付与するために設けられる。表面材40は、木材や集成材等の木質材料であることが望ましいが、クロス材等の建築用仕上げ材を用いてもよい。表面材40は、燃え代としてほとんど機能しないように薄く構成しても構わない。
火災時においては、仕上げ材42がない場合には、図7(a)に示すように、第1燃え止まり層36の表面で火災時の輻射熱を反射できないので、芯材32に輻射熱が伝達するおそれがある。これに対し、本実施の形態のように仕上げ材42がある場合には、仕上げ材42のうち表面材40は高温により消失するが、金属の下地材38は表面材40が消失した後で表出する。図7(b)に示すように、さらに時間が経過しても、金属の下地材38は高温環境下でも溶けずにそのまま第1燃え止まり層36の表面を覆った状態に維持される。下地材38は、黒色になりやすい第1燃え止まり層36とは異なり、自身を構成している膜状の金属によって、周囲からの輻射熱を反射し、芯材32への熱の伝達を低減し、芯材32を炭化や燃焼から守るように作用する。
このように、本実施の形態3の耐火集成材30によれば、仕上げ材42のうち表面材40が火災により消失しても、金属の膜状の下地材38が第1燃え止まり層36の表面を覆う状態で残り、周囲からの輻射熱を反射するので、火災時の断熱性を向上することができる。また、燃え止まり層が、第2燃え止まり層34と第1燃え止まり層36とによる機能・材料の異なる2層からなり、これらの層厚を薄くしても、火災時の断熱性を確保することができ、例えば、少なくとも1時間耐火の性能を確保可能である。また、仕上げ材42を含めた燃え止まり層全体の厚さを薄くできるので、同じ断面積の芯材を有する耐火仕様の部材において、部材全体の断面積をより一層小さくできる。したがって、本実施の形態3によれば、所定の耐火性能を有しつつ、部材のスリム化がより一層図られた耐火集成材を提供することができる。
さらに、本実施の形態3によれば、耐火集成材の断面積に占める芯材による木材部分の面積を大きくすることができるので、同じ断面積の耐火仕様の部材において、特に構造上重要な芯材部分に木材を多く使用できる。しかも、本実施の形態3の耐火集成材は、現場で加工が可能であるとともに、施工性が良く、木質感が損なわれない。この耐火集成材を用いれば、木造架構の自由度を高めることができる。また、第2燃え止まり層34として、低コストで調達可能な強化石膏ボード、石膏ボード等を使用できるため、製作コストを安価に抑えることができる。さらに仕上げ材42によって、より一層の部材のスリム化と断熱性の向上が可能となる。したがって、本実施の形態3によれば、部材のスリム化をより一層図ることができて、コスト高、重量増、構造材の断面積、室の有効面積の低減といった問題を解決することが可能である。
なお、上記の実施の形態3において、第1燃え止まり層として、第1燃え止まり層36を用いた場合を例にとり説明したが、第1燃え止まり層36の代わりに、上記の実施の形態1で説明した第1燃え止まり層16を用いて構成してもかまわない。このようにしても、上記したものと同様な作用効果を奏することができる。
なお、上記の実施の形態1〜3では、独立柱を想定した場合の耐火集成材の構成について説明した。本耐火集成材を、耐火性能を有する他の平面部材、例えば鉄筋コンクリート製スラブや防火壁等に接する形態で使用する場合、すなわち梁や壁付き柱として使用する場合には、例えば図8〜図10に示すように、床スラブまたは壁である平面部材28に接する部分の燃え止まり層は省略することもできる。
[本発明の効果の検証]
次に、本発明の効果について図11を参照しながら説明する。
図11は、耐火集成材の加熱試験結果の一例であり、耐火集成材を炉内に入れて加熱し、加熱開始後60分において加熱停止した場合の芯材の表面温度の時間変化を示したものである。図11中、「燃え止まり層(単層)」は、270mm角の芯材の外側に、厚さ60mmの不燃木材を設けて構成した耐火集成材(燃え止まり層が単層)を示している(以下、単層タイプという。)。また、「燃え止まり層(2層)」は、270mm角の芯材の外側に、火の内部への進展を止める第2燃え止まり層として厚さ21mmの強化石膏ボードを設け、さらにこのボードの外側に火の内部への進展を遅らせる第1燃え止まり層として厚さ30mmの不燃木材を設けて構成した耐火集成材(機能・材料が異なる燃え止まり層が2層)を示している(以下、複層タイプという。)。複層タイプが燃え止まり層全体の厚さを薄くできる本発明の耐火集成材に相当する。
図11からわかるように、加熱停止後に温度が上昇することが多く、特に、構造耐火集成材は長時間にわたって温度観察を行う必要がある。この加熱試験の例では、加熱停止後(約90分以降)において、燃え止まり層の厚さが厚くなる単層タイプの芯材表面温度が複層タイプの芯材表面温度を上回っていることがわかる。また、複層タイプは、概ね100℃付近を維持し、単層タイプよりも総合的な吸熱性や断熱性が効いていることがわかる。
以上説明したように、本発明に係る耐火集成材によれば、荷重を支持する集成材からなる芯材と、芯材の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状の第1燃え止まり層と、第1燃え止まり層の外側に設けられる仕上げ材とを備える。ここで、第1燃え止まり層および第2燃え止まり層は、耐火性を有する被覆層ということができ、外側の被覆層(第1燃え止まり層に相当)は内側の被覆層への燃焼の進行を遅らせる機能を有する。また、内側の被覆層(第2燃え止まり層に相当)は、外側の被覆層が火災により上記機能を失った後に、芯材への熱の伝達を防止し、芯材を炭化や燃焼させない機能を有する。このように、燃え止まり層が、第1燃え止まり層と第2燃え止まり層とによる機能・材料の異なる2層からなり、これらの層厚を薄くしても、火災時の断熱性を確保することができ、例えば、少なくとも1時間耐火の性能を確保可能である。また、燃え止まり層全体の厚さを薄くできるので、同じ断面積の芯材を有する耐火仕様の部材において、部材全体の断面積を小さくできる。したがって、本発明によれば、所定の耐火性能を有しつつ、部材のスリム化が図られた耐火集成材を提供することができる。
また、本発明に係る他の耐火集成材によれば、荷重を支持する集成材からなる芯材と、芯材の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、断熱性を有し、不燃木材からなる第1燃え止まり層とを備える。ここで、第1燃え止まり層および第2燃え止まり層は、耐火性を有する被覆層ということができ、外側の被覆層(第1燃え止まり層に相当)は内側の被覆層への燃焼の進行を遅らせる機能を有する。また、内側の被覆層(第2燃え止まり層に相当)は、外側の被覆層が火災により上記機能を失った後に、芯材への熱の伝達を防止し、芯材を炭化や燃焼させない機能を有する。このように、燃え止まり層が、第1燃え止まり層と第2燃え止まり層とによる機能・材料の異なる2層からなり、これらの層厚を薄くしても、火災時の断熱性を確保することができ、例えば、少なくとも1時間耐火の性能を確保可能である。また、燃え止まり層全体の厚さを薄くできるので、同じ断面積の芯材を有する耐火仕様の部材において、部材全体の断面積を小さくできる。したがって、本発明によれば、所定の耐火性能を有しつつ、部材のスリム化が図られた耐火集成材を提供することができる。
また、本発明に係る他の耐火集成材によれば、上述した発明において、第1燃え止まり層の外側に設けられる仕上げ材を備え、仕上げ材は、金属からなる膜状の下地材と、下地材の外側に設けられ、不燃性または準不燃性の表面材とを含んで構成される。ここで、仕上げ材のうち表面材が火災により消失しても、金属からなる膜状の下地材が第1燃え止まり層の表面を覆う状態で残り、周囲からの輻射熱を反射するので、火災時の断熱性を向上することができる。また、燃え止まり層が、第2燃え止まり層と第1燃え止まり層とによる機能・材料の異なる2層からなり、これらの層厚を薄くしても、火災時の断熱性を確保することができ、例えば、少なくとも1時間耐火の性能を確保可能である。また、仕上げ材を含めた燃え止まり層全体の厚さを薄くできるので、同じ断面積の芯材を有する耐火仕様の部材において、部材全体の断面積をより一層小さくできる。したがって、本発明によれば、所定の耐火性能を有しつつ、部材のスリム化がより一層図られた耐火集成材を提供することができる。
以上のように、本発明に係る耐火集成材は、荷重を支持するための集成材からなる芯材と、この芯材の外側に設けられる燃え止まり層とを備える耐火集成材に有用であり、特に、部材のスリム化を図るのに適している。
10,20,30 耐火集成材
12,22,32 芯材
14,24,34 第2燃え止まり層
16,26,36 第1燃え止まり層
18,42 仕上げ材
18a,26a,40a 外表面
28 平面部材(床スラブまたは壁)
38 下地材
40 表面材

Claims (2)

  1. 荷重を支持する集成材からなる芯材と、
    芯材の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、
    第2燃え止まり層の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状の第1燃え止まり層と、
    第1燃え止まり層の外側に設けられる仕上げ材とを備えることを特徴とする耐火集成材。
  2. 上げ材は、金属からなる膜状の下地材と、下地材の外側に設けられ、不燃性または準不燃性の表面材とを含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の耐火集成材。
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