図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る木質構造部材の接合構造について説明する。
図1の側面断面図には、木質構造部材の接合構造としての接合構造10、12により下柱部材16に上柱部材18が接合されて構成された柱部材20と、木質構造部材の接合構造としての接合構造14により柱部材20に梁部材22が接合されて構成された柱梁部材24とが示されている。
図1に示すように、接合構造10は、仕口部材26、荷重支持部としての柱心材28、及び防火被覆部30を有して構成され、下柱部材16に仕口部材26を接合している。
図1のA−A断面図である図2に示すように、木質構造部材としての下柱部材16は、荷重を支持する荷重支持部としての木製の柱心材28と、柱心材28の周囲に設けられた防火被覆部30とを有して構成されている。また、防火被覆部30は、柱心材28の周囲に設けられた燃え止まり層32と、燃え止まり層32の周囲に設けられた木製の燃え代層34とを有して構成されている。柱心材28の上端面には、平面視にて十字状の溝36が形成されている。
燃え止まり層32は、一般木材によって形成された板部材38と、モルタルによって形成された板部材40とを交互に配置することにより形成され、熱吸収性を有する。
図1に示すように、防火被覆部30を構成する燃え止まり層32と燃え代層34との上端面は面一となっており、防火被覆部30の上端部は、下柱部材16の軸方向に対して柱心材28の上端面よりも上方へ縁出している。これにより、燃え止まり層32の上端部の内周面により取り囲まれた凹状の収容部42が形成されている。
図1に示すように、仕口部材26は、鉄筋コンクリートによって形成された熱吸収性を有する部材であり、仕口本体44と、仕口本体44から下方へ突出する突出部46と、仕口本体44から上方へ突出する突出部48と、仕口本体44から横方へ突出する突出部50とを有して構成されている。すなわち、仕口部材26は、熱吸収性を有する突出部46、48、50を備えている。説明の都合上、仕口部材26内に設けられている鉄筋は省略されている。
仕口本体44の外周面は、燃え止まり層32の外周面と面一となっている。すなわち、仕口本体44の表層部分が燃え止まり層として機能する。
仕口本体44の周囲には木製の燃え代層52が設けられている。例えば、仕口部材26は、燃え代層52を側型枠にして、この側型枠内にコンクリートを打設することによって形成することができる。なお、燃え代層52は設けられていなくてもよい。また、仕口本体44の外周面が、燃え止まり層32の内周面と面一となるようにしてもよい。すなわち、図1に示す仕口本体44の外周面の位置よりも接合部材54側に仕口本体44の外周面が配置されるようにしてもよい。この場合、仕口本体44の外周面と燃え代層52の内周面との間に形成される隙間には、下地材を設けたり、コンクリートを打設したりする。
仕口部材26には、鋼製の接合部材54が埋設され、この接合部材54により柱心材28と突出部46とが接合されている。図3の斜視図に示すように、接合部材54は、埋設部56、下挿入部58、上挿入部60、及び水平プレート62、64を有して構成されている。
埋設部56は、平面視にて略十字状に配置された鋼鈑66、68、70、72を一体にして形成されている。鋼鈑66、68、72は、長方形の平板からなる部材であり、鋼鈑70は、長方形の平板とこの平板の上下方向中央部から横方向へ張り出した長方形の平板とからなる部材である。鋼鈑70の端部には、貫通孔74が複数形成されている。
下挿入部58は、平面視にて略十字状に配置された鋼鈑76、78、80、82を一体にして形成されている。鋼鈑76、78、80、82は、長方形の平板からなる部材である。鋼鈑76、78、80、82には、貫通孔74がそれぞれ1つ形成されている。
上挿入部60は、平面視にて略十字状に配置された鋼鈑84、86、88、90を一体にして形成されている。鋼鈑84、86、88、90は、長方形の平板からなる部材である。鋼鈑84、86、88、90には、貫通孔74がそれぞれ1つ形成されている。
埋設部56の下端面には、水平プレート62の上面が接合され、水平プレート62の下面には、下挿入部58の上端面が接合されている。また、埋設部56の上端面には、水平プレート64の下面が接合され、水平プレート64の上面には、上挿入部60の下端面が接合されている。また、鋼鈑66、68、70、72と、鋼鈑76、78、80、82と、鋼鈑84、86、88、90との平面配置は同じになっている。
図1に示すように、接合部材54は、仕口部材26に埋設された状態で、突出部46から水平プレート62を介して下方へ下挿入部58が突出し、突出部48から水平プレート64を介して上方へ上挿入部60が突出し、突出部50から横方へ鋼鈑70の端部が突出している。
柱心材28と突出部46とは、収容部42へ突出部46を挿入して収容するとともに、柱心材28の上端面に形成された溝36に下挿入部58を挿入した後に、下柱部材16に形成された貫通孔92と、下挿入部58の鋼鈑76、78、80、82に形成された貫通孔74とにドリフトピン94を貫通させて下挿入部58を柱心材28に固定することにより接合されている。なお、下挿入部58は、ドリフトピン94以外の部材によって柱心材28に固定してもよい。例えば、ラグスクリューにより、下挿入部58を柱心材28に固定してもよい。また、下挿入部58を柱心材28に固定するドリフトピン94等の部材の数は、適宜決めればよい。
防火被覆部30の上端部は、柱心材28と突出部46との接合部を覆っている。すなわち、下柱部材16の軸方向に対して、柱心材28の上端面と、防火被覆部30の目地(防火被覆部30の上端面)との位置をずらしている。
下柱部材16の軸方向に対して柱心材28の上端面よりも上方へ縁出させる防火被覆部30の上端部の長さL1は、火災時に防火被覆部30の目地(防火被覆部30の上端面)へ進入する火炎や熱により上昇する、この目地の近くに位置する柱心材28の部分96の温度が、必要とする下柱部材16の耐火性能を満足する温度以下となる長さになっている。例えば、長さL1を100mm程度以上にして、柱心材28の部分96の温度上昇を柱心材28の炭化温度以下に抑える。
図1に示すように、接合構造12は、仕口部材26、荷重支持部としての柱心材98、及び防火被覆部100を有して構成され、仕口部材26に上柱部材18を接合している。
木質構造部材としての上柱部材18は、下柱部材16と同じ構成となっており、荷重を支持する荷重支持部としての木製の柱心材98と、柱心材98の周囲に設けられた防火被覆部100とを有して構成されている。また、防火被覆部100は、柱心材98の周囲に設けられた燃え止まり層102と、燃え止まり層102の周囲に設けられた木製の燃え代層104とを有して構成されている。柱心材98の下端面には、平面視にて十字状の溝106が形成されている。
燃え止まり層102は、一般木材によって形成された板部材と、モルタルによって形成された板部材とを交互に配置することにより形成され、熱吸収性を有する。
図1に示すように、防火被覆部100を構成する燃え止まり層102と燃え代層104との下端面は面一となっており、防火被覆部100の下端部は、上柱部材18の軸方向に対して柱心材98の下端面よりも下方へ縁出している。これにより、燃え止まり層102の下端部の内周面により取り囲まれた凹状の収容部108が形成されている。燃え止まり層102の外周面は、仕口本体44の外周面と面一となっている。
柱心材98と突出部48とは、収容部108へ突出部48を挿入して収容するとともに、柱心材98の下端面に形成された溝106に上挿入部60を挿入した後に、上柱部材18に形成された貫通孔110と、上挿入部60の鋼鈑84、86、88、90に形成された貫通孔74とにドリフトピン94を貫通させて上挿入部60を柱心材98に固定することにより接合されている。なお、上挿入部60は、ドリフトピン94以外の部材によって柱心材98に固定してもよい。例えば、ラグスクリューにより、上挿入部60を柱心材98に固定してもよい。また、上挿入部60を柱心材98に固定するドリフトピン94等の部材の数は、適宜決めればよい。
防火被覆部100の下端部は、柱心材98と突出部48との接合部を覆っている。すなわち、上柱部材18の軸方向に対して、柱心材98の下端面と、防火被覆部100の目地(防火被覆部100の下端面)との位置をずらしている。
上柱部材18の軸方向に対して柱心材98の下端面よりも下方へ縁出させる防火被覆部100の下端部の長さL2は、火災時に防火被覆部100の目地(防火被覆部100の下端面)へ進入する火炎や熱により上昇する、この目地の近くに位置する柱心材98の部分112の温度が、必要とする上柱部材18の耐火性能を満足する温度以下となる長さになっている。例えば、長さL2を100mm程度以上にして、柱心材98の部分112の温度上昇を柱心材98の炭化温度以下に抑える。
図1に示すように、接合構造14は、仕口部材26、荷重支持部としての梁心材114、及び防火被覆部116を有して構成され、仕口部材26に梁心材114を接合している。
図1のB−B断面図である図4に示すように、木質構造部材としての梁部材22は、荷重を支持する荷重支持部としての木製の梁心材114と、梁心材114の周囲(下方と側方)に設けられた防火被覆部116とを有して構成されている。また、防火被覆部116は、梁心材114の周囲(下方と側方)に設けられた燃え止まり層118と、燃え止まり層118の周囲(下方と側方)に設けられた木製の燃え代層120とを有して構成されている。梁心材114の上端面には、平面視にて直線状の溝122が形成されている。溝122は、梁心材114の側端面から梁心材114の中央部(不図示)へ向かって梁部材22の軸方向へ形成されている。
燃え止まり層118は、一般木材によって形成された板部材124と、モルタルによって形成された板部材126とを交互に配置することにより形成され、熱吸収性を有する。
図1に示すように、防火被覆部116を構成する燃え止まり層118と燃え代層120との側端面は面一となっており、防火被覆部116の側端部は、梁部材22の軸方向に対して梁心材114の側端面よりも横方へ縁出している。これにより、燃え止まり層118の側端部の内周面により取り囲まれた凹状の収容部128が形成されている。
図1のC−C断面図である図5に示すように、梁心材114と突出部50とは、収容部128へ突出部50を挿入して収容するとともに、梁心材114の上端面に形成された溝122に鋼鈑70の側端部を挿入した後に、梁部材22に形成された貫通孔130と、鋼鈑70に形成された貫通孔74とにドリフトピン94を貫通させて鋼鈑70を梁心材114に固定することにより接合されている。なお、鋼板70は、ドリフトピン94以外の部材によって梁心材114に固定してもよい。例えば、ラグスクリューにより、鋼板70を梁心材114に固定してもよい。また、鋼板70を梁心材114に固定するドリフトピン94等の部材の数は、適宜決めればよい。
図1に示すように、防火被覆部116の側端部は、梁心材114と突出部50との接合部を覆っている。すなわち、梁部材22の軸方向に対して、梁心材114の側端面と、防火被覆部116の目地(防火被覆部116の側端面)との位置をずらしている。
梁部材22の軸方向に対して梁心材114の側端面よりも横方へ縁出させる防火被覆部116の側端部の長さL3は、火災時に防火被覆部116の目地(防火被覆部116の側端面)へ進入する火炎や熱により上昇する、この目地の近くに位置する梁心材114の部分132の温度が、必要とする梁部材22の耐火性能を満足する温度以下となる長さになっている。例えば、長さL3を100mm程度以上にして、梁心材114の部分132の温度上昇を梁心材114の炭化温度以下に抑える。
梁部材22の上面には、鉄筋コンクリート製の床スラブ134が設けられている。床スラブ134は、仕口部材26及び梁心材114の上端部に設けられた頭付きスタッド136を床スラブ134のコンクリート中に埋設することによって、仕口部材26及び梁心材114と一体化されている。
次に、本発明の実施形態に係る木質構造部材の接合構造の作用と効果について説明する。
本実施形態の接合構造10では、図1及び図2に示すように、下柱部材16において、火災が発生したときに火炎が燃え代層34に着火し、燃え代層34が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層34は炭化する。よって、燃え代層34の外側から柱心材28への熱伝達が、炭化した燃え代層34によって抑えられる。また、燃え代層34の外側から柱心材28への火炎や熱の進入が、燃え止まり層32によって抑えられる。
これらにより、火災時及び火災終了後における柱心材28の温度上昇を抑えることができ、柱心材28を燃焼させずに燃え止まらせることができる。
また、図1に示すように、柱心材28と突出部46との接合部をこの接合部の外側から防火被覆部30で覆うことによって、火災時に柱心材28と突出部46との接合部から柱心材28へ火炎や熱が進入することを抑制することができる。また、防火被覆部30の上端部に設けられた目地(防火被覆部30の上端面)をこの目地の内側から突出部46で覆うことによって、火災時にこの目地から柱心材28へ火炎や熱が進入することを抑制することができる。
これらにより、火災時及び火災終了後における柱心材28の温度上昇を抑えることができ、柱心材28を燃焼させずに燃え止まらせることができる。すなわち、木質構造部材としての下柱部材16の目地に耐火処理を別途施さなくても、下柱部材16の柱心材28の燃焼を抑制することができる。
さらに、図1に示すように、鋼製の接合部材54によって、柱心材28と突出部46とを確実に接合することができる。
また、本実施形態の接合構造12では、図1に示すように、上柱部材18において、火災が発生したときに火炎が燃え代層104に着火し、燃え代層104が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層104は炭化する。よって、燃え代層104の外側から柱心材98への熱伝達が、炭化した燃え代層104によって抑えられる。また、燃え代層104の外側から柱心材98への火炎や熱の進入が、燃え止まり層102によって抑えられる。
これらにより、火災時及び火災終了後における柱心材98の温度上昇を抑えることができ、柱心材98を燃焼させずに燃え止まらせることができる。
また、図1に示すように、柱心材98と突出部48との接合部をこの接合部の外側から防火被覆部100で覆うことによって、火災時に柱心材98と突出部48との接合部から柱心材98へ火炎や熱が進入することを抑制することができる。また、防火被覆部100の下端部に設けられた目地(防火被覆部100の下端面)をこの目地の内側から突出部48で覆うことによって、火災時にこの目地から柱心材98へ火炎や熱が進入することを抑制することができる。
これらにより、火災時及び火災終了後における柱心材98の温度上昇を抑えることができ、柱心材98を燃焼させずに燃え止まらせることができる。すなわち、木質構造部材としての上柱部材18の目地に耐火処理を別途施さなくても、上柱部材18の柱心材98の燃焼を抑制することができる。
さらに、図1に示すように、鋼製の接合部材54によって、柱心材98と突出部48とを確実に接合することができる。
さらに、本実施形態の接合構造14では、図1及び図4に示すように、梁部材22において、火災が発生したときに火炎が燃え代層120に着火し、燃え代層120が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層120は炭化する。よって、燃え代層120の外側から梁心材114への熱伝達が、炭化した燃え代層120によって抑えられる。また、燃え代層120の外側から梁心材114への火炎や熱の進入が、燃え止まり層118によって抑えられる。
これらにより、火災時及び火災終了後における梁心材114の温度上昇を抑えることができ、梁心材114を燃焼させずに燃え止まらせることができる。
また、図1に示すように、梁心材114と突出部50との接合部をこの接合部の外側から防火被覆部116で覆うことによって、火災時に梁心材114と突出部50との接合部から梁心材114へ火炎や熱が進入することを抑制することができる。また、防火被覆部116の側端部に設けられた目地(防火被覆部116の側端面)をこの目地の内側から突出部50で覆うことによって、火災時にこの目地から梁心材114へ火炎や熱が進入することを抑制することができる。
これらにより、火災時及び火災終了後における梁心材114の温度上昇を抑えることができ、梁心材114を燃焼させずに燃え止まらせることができる。すなわち、木質構造部材としての梁部材22の目地に耐火処理を別途施さなくても、梁部材22の梁心材114の燃焼を抑制することができる。
さらに、図1に示すように、鋼製の接合部材54によって、梁心材114と突出部50とを確実に接合することができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、本実施形態では、図1、2、4に示すように、柱心材28、98、梁心材114、及び燃え代層34、104、120、52を木製とした例を示したが、柱心材28、98、梁心材114、及び燃え代層34、104、120、52は、木材によって形成されていればよい。例えば、柱心材28、98、梁心材114、及び燃え代層34、104、120、52は、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築に用いられる木材(以下、「一般木材」とする)によって形成してもよいし、これらの一般木材を板状や角柱状の単材に加工し、この単材を複数集成して一体化することによって形成してもよい。
また、本実施形態では、燃え止まり層32、102、118を、熱吸収性を有する層とした例を示したが、燃え止まり層32、102、118は、火炎及び熱の進入を抑えて燃え止まり効果を発揮できる層であればよい。例えば、燃え止まり層32、102、118は、難燃性を有する層や熱の吸収が可能な層であればよい。
難燃性を有する層としては、木材に難燃薬剤を注入して不燃化処理した難燃薬剤注入層が挙げられる。難燃薬剤注入層に、熱吸収性を持たせることもできる。熱の吸収が可能な層は、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料によって形成してもよいし、これらの材料と一般木材とを組み合わせて形成してもよい。また、難燃性を有する層と、熱の吸収が可能な層とを組み合わせて(例えば、難燃性を有する層と、熱の吸収が可能な層とを交互に配置して)燃え止まり層32、102、118を形成してもよい。
一般木材よりも熱容量が大きな材料としては、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント、石膏等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。一般木材よりも断熱性が高い材料としては、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
また、本実施形態では、図1、2、4に示すように、木質構造部材としての下柱部材16、上柱部材18、及び梁部材22を、荷重支持部、燃え止まり層、及び燃え代層を有して構成された3層構造の部材とした例を示したが、これらの木質構造部材は、荷重支持部と、この荷重支持部の周囲に設けられた防火被覆部とを有していればよく、2層や4層以上の構造部材であってもよい。また、防火被覆部は、火災時に荷重支持部を燃焼させずに燃え止まらせることができるものであればよい。
例えば、木質構造部材は、荷重支持部と、この荷重支持部の周囲に設けられた燃え止まり層のみを有して構成される2層構造の構造部材であってもよい。また、木質構造部材は、荷重支持部と、この荷重支持部の周囲に設けられた燃え代層のみを有して構成される2層構造の構造部材であってもよい。この場合、燃え止まり効果を発揮できる燃え代層の厚さ(例えば、40mm程度)を確保できれば、荷重支持部と燃え代層とは、異なる材料によって形成してもよいし、同じ材料によって形成してもよい。すなわち、木質構造部材を1本の木材によって構成し、この木質構造部材の表層を燃え代層としてもよい。また、例えば、木質構造部材は、荷重支持部と、この荷重支持部の周囲に設けられた石膏ボードとを有して構成される構造部材であってもよいし、荷重支持部と、この荷重支持部の周囲に設けられた石膏ボードと、この石膏ボードの周囲に設けられた熱発泡性材を有して構成される構造部材であってもよい。熱発泡性材は、熱が加えられることにより体積が大きくなって燃え止まり効果を発揮する材料である。さらに、例えば、これらの木質構造部材の周囲に、化粧合板や化粧ボード等の仕上げ材を設けるようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、図1に示すように、仕口部材26を鉄筋コンクリートによって形成した例を示したが、仕口部材26は、不燃性を有し、熱容量の高い部材であればよい。例えば、仕口部材26は、セメント系固化材や石膏で形成してもよい。
また、本実施形態では、図1に示すように、接合部材54によって、下柱部材16と仕口部材26、仕口部材26と上柱部材18、及び仕口部材26と梁部材22を接合した例を示したが、下柱部材16と仕口部材26、仕口部材26と上柱部材18、及び仕口部材26と梁部材22を確実に接合できれば、接合部材は、どのような部材であってもよいし、下柱部材16と仕口部材26、仕口部材26と上柱部材18、及び仕口部材26と梁部材22を他の方法で接合してもよい。例えば、図3に示す鋼板76と鋼板80のみで下挿入部58を構成したり、鋼板84と鋼板88のみで上挿入部60を構成したりしてもよい。すなわち、1つの平板で、下挿入部58や上挿入部60を構成してもよい。このようにすれば、下挿入部58や上挿入部60の固定に用いるドリフトピン94等の部材の数を減らす(例えば、2つにする)ことができる。また、例えば、図3に示す鋼板70を、仕口部材26に埋設される側の板部と、梁心材114に埋設される側の板部とに分割し、これらの板部同士をスプライスプレートを用いて高力ボルト接合するようにしてもよい。
さらに、本実施形態の接合構造10、12、14は、防火被覆部30、100、116の端部に設けられた目地に耐火処理を別途施さなくても、木質構造部材(下柱部材16、上柱部材18、梁部材22)の荷重支持部(柱心材28、98、梁心材114)の燃焼を抑制することができるものであるが、防火被覆部30、100、116の端部に設けられた目地を目地材や木材等で埋めて、目地に仕上げ処理を施してもよい。
また、本実施形態では、仕口部材26と木質構造部材としての下柱部材16とを接合する接合構造10、仕口部材26と木質構造部材としての上柱部材18とを接合する接合構造12、及び仕口部材26と木質構造部材としての梁部材22とを接合する接合構造14の例を示したが、本実施形態の木質構造部材の接合構造は、柱、梁、床スラブ、壁等のさまざまな木質構造部材と仕口部材とを接合する接合構造に適用することができる。例えば、図6、7、8に示す木質構造部材の接合構造138、140、142、144のようにしてもよい。
図6の側面断面図には、鉄筋コンクリート製の床スラブ146に木質構造部材としての木質の壁部材148を接合する木質構造部材の接合構造138が示されている。木質構造部材の接合構造138は、仕口部154、壁心材150、及び防火被覆部152を有して構成されている。
壁部材148は、荷重支持部としての板状のCLT(Cross Laminated Timber)又はLVL(Laminated Veneer Lumber)からなる木製の壁心材150と、壁心材150の外壁面(周囲)に設けられた石膏ボードからなる防火被覆部152とを有して構成されている。
床スラブ146は、壁部材148が接合される中央部分が仕口部材としての仕口部154となっている。また、仕口部154には、仕口本体156から上下に突出する突出部158が備えられている。すなわち、仕口部154は、熱吸収性を有する突出部158を備えている。
壁部材148は、鋼製の接合部材160によって床スラブ146に接合されている。この状態で、壁心材150と突出部158との接合部(壁心材150の端面)は、防火被覆部152によって覆われている。
図7の側面断面図には、木質構造部材としての木質の床スラブ162に、木質構造部材としての木質の壁部材148を接合する木質構造部材の接合構造140、142が示されている。木質構造部材の接合構造140は、仕口部材172、壁心材150、及び防火被覆部152を有して構成され、木質構造部材の接合構造142は、仕口部材172、床心材164、及び防火被覆部166を有して構成されている。
床スラブ162は、荷重支持部としての板状に形成された木製の床心材164、床心材164の上下面(周囲)に設けられた防火被覆部166を有して構成されている。また、防火被覆部166は、床心材164の上下面(周囲)に設けられた燃え止まり層168と、燃え止まり層168の上面(周囲)と下面(周囲)とに設けられた木製の燃え代層170とを有して構成されている。
仕口部材172は、鉄筋コンクリートによって形成されている。また、仕口部材172には、仕口本体174から上下に突出する突出部176と、仕口本体174から左右に突出する突出部178が備えられている。すなわち、仕口部材172は、熱吸収性を有する突出部176、178を備えている。
壁部材148は、鋼製の接合部材180によって仕口部材172に接合されている。この状態で、壁心材150と突出部176との接合部(壁心材150の端面)は、防火被覆部152によって覆われている。
また、床スラブ162は、鋼製の接合部材180によって仕口部材172に接合されている。この状態で、床心材164と突出部178との接合部(床心材164の端面)は、防火被覆部166によって覆われている。
図8の平面断面図には、4つの木質構造部材としての木質の壁部材148を接合する木質構造部材の接合構造144が示されている。木質構造部材の接合構造144は、仕口部材182、壁心材150、及び防火被覆部152を有して構成されている。
仕口部材182は、鉄筋コンクリートによって形成されている。また、仕口部材182には、仕口本体184から四方へ突出する突出部186が備えられている。すなわち、仕口部材182は、熱吸収性を有する突出部186を備えている。
壁部材148は、鋼製の接合部材188によって仕口部材182に接合されている。この状態で、壁心材150と突出部186との接合部(壁心材150の端面)は、防火被覆部152によって覆われている。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。