以下、本発明の一実施形態に係る積層シート巻回体について、図1〜図3を参照しつつ説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
図1(a)は、一部の積層シート1が引き出された積層シート巻回体を示している。この積層シート巻回体は、円筒状の芯体3の周りに、長尺状の積層シート1が長さ方向(X軸方向)に複数回巻回されて構成されている。なお、図1(a)は1回巻回しているが、実際は複数回巻回されて構成されている。また、芯体3は円柱状であっても良い。
図1(b)は、図1(a)の波線部分Bの積層シート巻回体を芯体3の軸に対して直角な方向(Z軸方向)に切断した拡大断面図であり、図1(c)は、図1(b)の波線部分Cの積層シート1を上下方向(積層シートの厚み方向(Z軸方向))に切断した拡大断面図である。図1(c)に示すように、積層シート1は、支持シート5と、支持シート5上の無機絶縁層9と、この無機絶縁層9上に配置された第1樹脂層11、第1樹脂層11上に配置された樹脂シート12とを有している。この樹脂シート12は、積層シート1の取扱上の観点から、保護用として配されるものであり、例えば、市販の樹脂製のフィルムを用いることができる。また、支持シート5と無機絶縁層9との間には、第2樹脂層13が配置されている。これらの第1樹脂層11、第2樹脂層13は、未硬化または半硬化状態の樹脂からなる層である。なお、図1(b)では、理解を容易にするため、第1、第2樹脂層11、13の記載を省略し、図1(c)では、積層シート1を平坦状に記載した。
そして、図2に示すように、無機絶縁層9における支持シート5の幅方向(Y軸方向)の両側の側面(以下、単に側面という)9aが、第1樹脂層11で被覆されている。さらに、図2(b)に示すように、支持シート5のY軸方向の側面5aと、第1樹脂層11のY軸方向の側面11aとが同一面を形成している。
言い換えれば、第2樹脂層13のY軸方向の側面13aは、支持シート5のY軸方向の側面5aよりも内側に位置し、無機絶縁層9のY軸方向の側面9aは、第2樹脂層13のY軸方向の側面13aよりも内側に位置し、第2樹脂層13および無機絶縁層9のY軸方向の側面13a、9aは、第1樹脂層11で被覆されている。支持シート5および第1樹脂層11の側面5a、11aは、それぞれZ軸方向に延びており、同一面を形成している。なお、図2では、樹脂シート12は記載を省略した。
このような積層シートによれば、無機絶縁層9のY軸方向の側面9aが、第1樹脂層11で被覆されているため、無機絶縁層9が露出しておらず、無機絶縁層9を構成する無機絶縁粒子が脱落することを抑制できる。
このような積層シートは、先ず、図3に示すように、第2樹脂層13のY軸方向の側面13aは、支持シート5のY軸方向の側面5aよりも内側に位置し、無機絶縁層9のY軸方向の側面9aは、第2樹脂層13のY軸方向の側面13aよりも内側に位置するように積層し、第2樹脂層13および無機絶縁層9のY軸方向の側面13a、9aを被覆するように、第1樹脂層11で被覆する。
この状態では、支持シート5上に、第2樹脂層13、無機絶縁層9および第1樹脂層11のY軸方向の側面13a、9a、11aは、ペースト塗布によりダレて傾斜しているが、例えば、支持シート5上の第1樹脂層11の厚みが、Y軸方向中央部における支持シート5からの第1樹脂層11表面までの距離とほぼ同じとなる位置(一点鎖線で示す部分)で積層シート1をカットし、耳部10を除去して、支持シート5のY軸方向の側面5aと、第1樹脂層11のY軸方向の側面11aとの同一面を形成し、図2に示す積層シート1を作製することができる。
そして、芯体3の軸を中心に回転させ、積層シート1を巻き取り、積層シート1を巻回して積層シート巻回体が得られる。
なお、上記形態では、積層シート1の耳部10をカットして除去したが、除去しなくても良い。すなわち、図3(b)の積層シート1を巻回した積層シート巻回体でも良い。
そして、この実施形態では、図1(b)(c)に示すように、積層シート1において、支持シート5の外側の面と無機絶縁層9の支持シート5側の面との距離a、樹脂シート12の外側の面と無機絶縁層9の樹脂シート12側の面との距離bとの関係が、a<bのとき、支持シート5を内側にして積層シート1を巻回してなり、a>bのとき、樹脂シート12を内側にして積層シート1を巻回して、積層シート巻回体が構成されている。
例えば、図1(c)に示すように、支持シート5の外側の面(下面)と無機絶縁層9の支持シート5側の面(下面)との距離aが、樹脂シート12の外側の面(上面)と無機絶縁層9の樹脂シート12側の面(上面)との距離bよりも小さい場合(a<bのとき)、図1(b)に示すように、積層シート1の支持シート5を内側(芯体3側)にして巻回されている。このような図1(b)に示すような構成によれば、無機絶縁層9表面からの距離が小さい支持シート5を内側にして積層シート1が巻回されるため、積層シート1の無機絶縁層9に生じる応力が圧縮応力となり、無機絶縁層9を構成する無機絶縁粒子同士の接続解除を抑制でき、欠陥発生を低減できる。
なお、樹脂シート12の外側の面とは、樹脂シート12の無機絶縁層9側の面とは反対側に位置する樹脂シート12の面であり、支持シート5の外側の面とは、支持シート5の無機絶縁層9側の面とは反対側に位置する支持シート5の面である。
以下、積層シート1を構成する各部材について説明する。
支持シート5は、積層シート1を取り扱う際に、無機絶縁層9を支持するものであり、配線基板の製造時には無機絶縁層9から剥離されたり、配線に加工されたりする。支持シート5は、例えば平板状の銅箔からなる。支持シート5が銅箔からなるため、支持シート5の耐熱性を向上させることができる。
支持シート5は、図1(c)に示すように、無機絶縁層9との接着力を向上させるために、支持シート5の主面に第2樹脂層(プライマー層)13が形成され、この第2樹脂層13上に無機絶縁層9が形成されている。なお、第2樹脂層(プライマー層)13は必ずしも形成する必要はないが、第2樹脂層13を形成することにより、支持シート5への無機絶縁層9の形成が容易となる。
支持シート5の厚みは、例えば3μm以上100μm以下に設定されている。支持シート5のヤング率は、例えば70GPa以上150GPa以下に設定されている。支持シート5の熱膨張率は、例えば13ppm/℃以上20ppm/℃以下に設定されている。な
お、支持シート5のヤング率は、MTSシステムズ社製Nano Indentor XP/DCMを用いて測定される。また、支持シート5の熱膨張率は、市販のTMA装置を用いて、JISK7197−1991に準じた測定方法によって測定される。なお、支持シート5として、市販の樹脂製のフィルムも用いることができる。
無機絶縁層9は、作製された配線基板の配線間の絶縁を確保するものである。無機絶縁層9の厚みは、例えば1μm以上15μm以下に設定されている。
無機絶縁層9は、図4に示すように、複数の無機絶縁粒子15a、15b(以下、単に15ということがある)および第1樹脂部16によって形成されている。複数の無機絶縁粒子15が粒子形状を保持したまま互いの一部で接続(接触も含む概念)することによって、三次元網目構造体を構成している。複数の無機絶縁粒子15が粒子形状を保持したまま互いの一部で接続しているため、複数の無機絶縁粒子15同士の間には間隙が存在し、この間隙の少なくとも一部には樹脂が配置されて、第1樹脂部16を形成している。
また、無機絶縁層9は、複数の無機絶縁粒子15同士が接続しているため、単に樹脂中に複数の無機絶縁粒子が分散されている場合と比較して、無機絶縁層9の剛性を向上させることができる。その結果、無機絶縁層9の変形を低減することができる。
無機絶縁粒子15は、第1無機絶縁粒子15aおよび第2無機絶縁粒子15bを含んでおり、第1無機絶縁粒子15aの粒子径は、5nm以上80nm以下に設定され、第2無機絶縁粒子15bの粒子径は、0.1μm以上5μm以下に設定されている。第1無機絶縁粒子15aおよび第2無機絶縁粒子15bの粒子径は、例えば、まず無機絶縁層9の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、20粒子数以上50粒子数以下の粒子を含むように拡大した断面を撮影し、拡大した断面にて各粒子の最大径を測定することによって算出される。
第1無機絶縁粒子15aは、例えば、複数の無機絶縁粒子15中に10体積%以上40体積%以下含まれており、第2無機絶縁粒子15bは、例えば複数の無機絶縁粒子15中に60体積%以上90体積%以下含まれてもよい。上記の通り、複数の無機絶縁粒子15の粒度分布を設定すれば、無機絶縁層9の間隙が小さくなりすぎることを抑制して、後述する第1樹脂層11の樹脂を入り込ませやすくすることができる。また、さらに望ましくは、第1無機絶縁粒子15aの粒子径が8nm以上70nm以下に設定され、複数の無機絶縁粒子15中に15体積%以上30体積%以下含まれており、第2無機絶縁粒子15bの粒子径が0.15μm以上2μm以下に設定され、複数の無機絶縁粒子15中に70体積%以上85体積%以下含まれているとよい。無機絶縁層9には、第1無機絶縁粒子15a、第2無機絶縁粒子15b以外の無機絶縁粒子を含有しても良い。
無機絶縁粒子15は、無機絶縁層9の主要部を形成している。無機絶縁粒子15の形状は、例えば球状である。無機絶縁粒子15は、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化マグネシウムまたは酸化ジルコニウム等の無機絶縁材料からなる。また
、無機絶縁粒子15は単一の材料からなってもよいし、複数種類の材料からなってもよい。なお、無機絶縁粒子15は、熱膨張率が例えば0.6ppm/℃以上12ppm/℃以下である材料からなる。また、無機絶縁粒子15は、ヤング率が例えば10GPa以上300GPa以下である材料からなる。また、複数の無機絶縁粒子15の無機絶縁層9に対する含有率は、例えば70体積%以上に設定され、望ましくは75体積%以上に設定されている。なお、上記形態では、無機絶縁層9中の無機絶縁粒子15が接続している場合について説明したが、複数の無機絶縁粒子15の無機絶縁層9に対する含有率が70体積%以上と多い場合には、無機絶縁粒子15が接続することなく、分散しているものであっても良い。この場合、無機絶縁粒子15間における樹脂量が少ないため、上記積層シート巻回体の構成を採用することにより、無機絶縁粒子15と樹脂との接合を強化できる。
第1樹脂部16は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等からなり、また、第1樹脂部16は、熱膨張率が例えば30ppm/℃以上60ppm/℃以下である材料からなる。また、第1樹脂部16は、ヤング率が例えば2GPa以上10GPa以下である材料からなる。第1樹脂部16は、積層シート1において未硬化あるいは半硬化状態である。
第1樹脂層11は、配線基板の製造時に、無機絶縁層9と配線、または無機絶縁層9とこの無機絶縁層9に積層される他の無機絶縁層9とを接着するものである。第1樹脂層11は、図4(a)に示すように、第2樹脂部18および第2樹脂部18の樹脂内に配されている無機充填材20を有している。
第1樹脂層11の厚みは、無機絶縁層9の厚みよりも小さくてもよい。これにより、第1樹脂層11の熱膨張の影響が小さくなり、無機絶縁層9は、第1樹脂層11の熱膨張量を効果的に低減させることができる。なお、第1樹脂層11の厚みは、例えば1μm以上40μm以下に設定されている。
第1樹脂層11の第2樹脂部18は、無機絶縁層9の第1樹脂部16と接触していてもよい。その結果、無機絶縁層9と第1樹脂層11との接着強度を向上させることができ、例えば無機絶縁層9と第1樹脂層11の熱膨張率の違いによる剥離を低減することができる。
また、第1樹脂層11の第2樹脂部18は、無機絶縁層9の第1樹脂部16と一体的に形成されてもよい。すなわち、第1樹脂層11を形成する樹脂が、無機絶縁層9の間隙に入り込んで、第1樹脂部16を形成してもよい。その結果、第1樹脂層11と無機絶縁層9との剥離を効果的に低減することができる。
第2樹脂部18は、主に第1樹脂層11を構成するものである。第2樹脂部18は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等からなる。また、第2樹脂部18は、熱膨張率が例えば30ppm/℃以上60ppm/℃以下である材料からなる。また、第2樹脂部18は、ヤング率が例えば2GPa以上10GPa以下である材料からなる。第2樹脂部18は、積層シート1において未硬化状態あるいは半硬化状態である。
無機充填材20は、第1樹脂層11の剛性を向上させたり熱膨張係数を低下させたりするものである。無機充填材20の形状は、例えば球状である。無機充填材20の粒子径は、第2無機絶縁粒子15bの粒子径以上であってもよい。無機充填材20の粒子径は、例えば0.1μm以上5μm以下に設定される。また、第1樹脂層11に対する無機充填材
20の含有率は、無機絶縁層9に対する無機絶縁粒子15の含有率よりも小さくてもよい。無機充填材20の第1樹脂層11に対する含有率は、例えば60体積%以下に設定されている。
第2樹脂層13については、第1樹脂層11と同様の材料で構成されていてもよいし、異なった材料で構成されていても良い。
次に、上述した積層シート1を用いて製造された、図7に示す配線基板24を説明する。図5(a)は、配線基板24を上下方向に切断した断面を模式的に示している。
配線基板24は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置またはその周辺機器等の電子機器に使用されるものである。配線基板24は、例えばビルドアップ多層配線基板であって、図5(a)に示すように、コア基板25とコア基板25の上下に形成された一対の配線層26とを備えている。
コア基板25は、配線基板26の剛性を高めつつ一対の配線層26間の導通を図るものである。コア基板25は、樹脂基体27と、樹脂基体27を上下方向に貫通して形成されている筒状のスルーホール導体28と、スルーホール導体28に取り囲まれた領域に配された柱状の絶縁体29とを含んでいる。
樹脂基体27は、コア基板25の剛性を高めるものである。この樹脂基体27は、例えば樹脂と、この樹脂に被覆された基材および無機絶縁フィラーとを含んでいる。
樹脂基体27に含まれた樹脂は、樹脂基体27の主要部を形成するものである。この樹脂は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂またはポリエーテルケトン樹脂等の樹脂材料からなる。
樹脂基体27に含まれた基材は、樹脂基体27を高剛性化および低熱膨張化するものである。この基材は、繊維によって構成された織布もしくは不織布または繊維を一方向に配列したものからなる。また、この繊維は、例えばガラス繊維または樹脂繊維等からなる。
樹脂基体27に含まれた無機絶縁フィラーは、樹脂基体27を高剛性化および低熱膨張化するものである。この無機絶縁フィラーは、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは炭酸カルシウム等の無機絶縁材料からなる複数の粒子により構成されている。
スルーホール導体28は、コア基板25の上下の配線層26を電気的に接続するものである。このスルーホール導体28は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料からなる。
絶縁体29は、後述するビア導体30の支持面を形成するものである。この絶縁体29は、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料からなる。
一方、コア基板25の上下には、上述した如く、一対の配線層26が形成されている。配線層26は、厚み方向に沿ったビア孔が形成された無機絶縁層9と、樹脂基体27上または無機絶縁層9上に部分的に形成された配線31と、ビア孔内に形成されたビア導体3
0とを含んでいる。
配線層26は、コア基板25側に位置している第1樹脂層11と、第1樹脂層11上に積層されている無機絶縁層9と、無機絶縁層9上に積層されている第2樹脂層13とを含んでいる。なお、無機絶縁層9、第1樹脂層11および第2樹脂層13は、上述した積層シート1が備えていたものである。また、積層シート巻回体では、無機絶縁層9の第1樹脂部16および第1、第2樹脂層11、13の第2樹脂部18は未硬化または半硬化であったが、配線基板24では、第1樹脂部16および第2樹脂部18は硬化している。
第1樹脂層11は、配線31の側面および上面に接着しつつ、樹脂基体27と無機絶縁層9とを接着、または積層された無機絶縁層9同士を接着するものである。無機絶縁層9は、無機絶縁層9の主要部をなし、厚み方向に沿って離れて配された配線31同士の絶縁部材として機能するものである。無機絶縁層9は、樹脂材料と比較して低熱膨張率および高剛性であるから、無機絶縁層9の平面方向への熱膨張率を低減することができる。したがって、配線基板24と配線基板24上に実装される電子部品(図示せず)との平面方向への熱膨張率の差を低減し、ひいては配線基板24の反りを低減することができる。
配線31は、平面方向または厚み方向に沿って互いに離れて配されており、接地用配線、電力供給用配線または信号用配線として機能するものである。この配線31は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料からなる。配線31の厚みは、例えば3μm以上20μm以下に設定されている。配線31の熱膨張率は、例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。配線31のL/S(ライン/スペース)は、例えば3/3μm以上40/40μm以下に設定されている。
ビア導体28は、厚み方向に互いに離れて配された配線31同士を電気的に接続するものであり、コア基板25に向って幅狭となる柱状に形成されている。ビア導体28は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロムの導電材料からなる。また、ビア導体28は、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
本発明の実施形態に係る積層シート巻回体を用いた配線基板24の製造方法について、図5(b)〜図6を参照しつつ説明する。なお、図5(b)〜図6は、本発明の一実施形態に係る積層シート巻回体を使用して製造する配線基板の製造方法の一工程を示した断面図である。
(1)まず、積層シート巻回体から所定長さの積層シート1を引き出し、所定長さにカットし、所定長さの基板用シートを準備する。積層シート巻回体は、以下の工程(2)〜(4)を経て準備される。
(2)先ず第2樹脂層13を支持シート5に積層する。具体的には、まず、溶剤、無機充填材および未硬化の樹脂の混合物を支持シート5の主面に塗布する。この際、第2樹脂層13の塗布膜は、第2樹脂層13のY軸方向の側面13aが、支持シート5のY軸方向の側面5aよりも内側に位置するように塗布する。この塗布された混合物を乾燥させて混合物から溶剤を蒸発させることによって、第2樹脂層13を形成する。混合物の塗布は、既存の成形方法、例えばドクターブレード法、ディスペンサー法、バーコーター法、ダイコーター法またはグラビア印刷法等を用いて行なうことができる。
(3)次に、複数の無機絶縁粒子15、および水あるいは有機溶剤、適切な分散剤を準備し、秤量、混合し、無機絶縁粒子15を含有したスラリーを作製する。複数の無機絶縁粒子15である第1、第2無機絶縁粒子15a、15bはカップリング処理され、その表
面に同じ官能基を有している。前記スラリーは、例えば無機絶縁粒子15を10体積%以上60体積%以下含み、水あるいは有機溶剤および分散剤をその合量で40%体積以上90体積%以下含む。前記有機溶剤には、例えばメタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミドまたはこれらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶剤を使用することができる。
分散剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系等の公知の分散剤が例として挙げられる。
(4)次に、支持シート5上の第2樹脂層13の表面に前記スラリーをシート状に成形(塗布)する。このスラリーは、無機絶縁層9のY軸方向の側面9aが、第2樹脂層13のY軸方向の側面13aよりも内側に位置するように塗布する。成形方法としては、既存の成形方法、例えばドクターブレード法、ディスペンサー法、バーコーター法、ダイコーター法またはグラビア印刷法等を用いて行い、水あるいは溶剤を乾燥除去することにより行い、無機絶縁粒子15同士を接続する。
(5)第1樹脂層11を、無機絶縁層9上に形成する。具体的には、まず、溶剤、無機充填材および未硬化の樹脂の混合物を無機絶縁層9の主面に塗布する。この混合物は、第2樹脂層13および無機絶縁層9のY軸方向の側面13a、9aを被覆するように塗布される。次いで、混合物を乾燥させて混合物から溶剤を蒸発させることによって、第1樹脂層11を形成する。混合物の塗布は、既存の成形方法、例えばドクターブレード法、ディスペンサー法、バーコーター法、ダイコーター法またはグラビア印刷法等を用いて行なうことができる。
続いて、第1樹脂層11の一部(第2樹脂部18の一部)を無機絶縁層9の間隙に入り込ませて第1樹脂部16を形成する。具体的には、支持シート5、無機絶縁層9および第1樹脂層11を上下方向に加熱加圧することによって、無機絶縁層9の間隙の少なくとも一部に第1樹脂層11(第2樹脂部18)の一部を入り込ませる。なお、この際に、第2樹脂層13の樹脂の一部も無機絶縁層9の間隙に入り込んでも構わない。
このとき、加熱加圧装置としてロールラミネーターを使用し、連続的に行うことが望ましい。支持シート5等の加熱温度は、例えば60℃以上160℃以下に設定される。支持シート5等の加圧圧力は、例えば0.1MPa以上2MPa以下に設定される。支持シート5等の加熱加圧時間は、例えば0.5分以上10分以下に設定され、ロールラミネーターを使用する際には、送り速度を1m/秒以上50m/秒以下に設定することが望ましい。第1樹脂層11の樹脂材料の上記加熱時間における溶融粘度は、例えば10000Pa・s以下に設定される。そして、第1樹脂層11上に樹脂シート12を積層させて積層シート1を作製する。
あるいは、キャリアフィルム上に、前述の溶剤、無機充填材および未硬化の樹脂の、第1樹脂層11を構成する混合物を、前述と同様の既存の成形方法によりシート状に成形したものを準備し、無機絶縁層9上に載置し、前述と同様の方法で加熱加圧することによっても、無機絶縁層9の間隙に第1樹脂層11(第2樹脂部18)の一部を入り込ませることが可能である。なお、キャリアフィルムは、保護フィルムとして機能する。
以上のようにして、支持シート5、第2樹脂層13、無機絶縁層9、第1樹脂層11および樹脂シートを備える積層シート1を作製し、これを、支持シート5の外側の面と無機絶縁層9の支持シート5側の面との距離a、樹脂シート12の外側の面と無機絶縁層9の
樹脂シート12側の面との距離bとの関係が、a<bのとき、支持シート5を内側にして積層シート1を芯体3に巻き付け、a>bのとき、樹脂シート12を内側にして積層シート1を芯体3に巻き付け、積層シート巻回体を作製する。
(6)コア基板25(基板)を作製する。コア基板25の作製には、まず、例えば金属箔上に複数の樹脂層が積層された樹脂基体27を形成する。次いで、例えばドリル加工やレーザー加工等によって樹脂基体27にスルーホールを形成した後、例えば無電解めっき法、電気めっき法、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等により、スルーホールの内壁に筒状のスルーホール導体28を形成する。次いで、スルーホール導体28に取り囲まれた領域に樹脂材料を充填することによって絶縁体29を形成し、導電材料を絶縁体29の露出部に被着させた後、従来周知のフォトリソグラフィー技術またはエッチング等により、金属箔をパターニングして配線31を形成する。以上のようにして、コア基板25を準備する。
(7)積層シート巻回体から積層シート1を所定長さにカットし、基板用シート35を作製し、この基板用シート35から樹脂シート12を剥離して、図5(b)に示すように、コア基板25上に積層する。具体的には基板用シート35の積層は、基板用シート35の第1樹脂層11がコア基板25に接触するように行なう。
その後、基板用シート35とコア基板25を一体化させるため、上下方向に加熱加圧し無機絶縁層9の間隙に第1樹脂層11(第2樹脂部18)の一部を入り込ませる。なお、この際に、第2樹脂層13の樹脂の一部も無機絶縁層9の間隙に入り込んでも構わない。このとき、無機絶縁層9の間隙のほぼ全てに樹脂が入り込むように加熱加圧条件を調整することが、絶縁信頼性を確保する上で望ましい。
前述の加熱温度は、例えば60℃以上160℃以下に設定され、加圧圧力は、例えば0.1MPa以上4MPa以下に設定される。支持シート5等の加熱加圧時間は、例えば0.5分以上180分以下に設定される。
(8)第1樹脂部16および第2樹脂部18を熱硬化させる。具体的には、基板用シート35およびコア基板25を、第1樹脂部16および第2樹脂部18の熱硬化開始温度以上加熱することによって、基板用シート35中の未硬化状態の第1樹脂部16および第2樹脂部18を熱硬化させる。基板用シート35等の加熱温度は、例えば80℃以上180℃以下に設定される。
なお、樹脂部の熱硬化は、前述の工程(7)の加熱加圧時に同時に行っても差し支えない。
(9)図6(b)に示すように、支持シート5の表面から無機絶縁層9および第1樹脂層11を厚み方向に貫通する貫通穴を形成する。貫通穴の形成は、例えばYAGレーザー装置または炭酸ガスレーザー装置を用いて支持シート5の上面にレーザー光を照射することによって行なう。
(10)次に、前述の貫通穴の底部にレーザー加工により生じる樹脂残渣(スミア)を除去するため、強アルカリ処理を施す。強アルカリ性の水溶液としては、例えば過マンガン酸カリウムまたは過マンガン酸ナトリウム等の水溶液が好適である。
(11)貫通穴にビア導体30を形成する。ビア導体30は、例えば無電解めっき、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法を用いて、貫通穴内に導電材料を埋めることによって形成される。
(12)銅箔からなる支持シート5を、例えばフォトリソグラフィー技術等を用いてパターニングすることにより配線層を形成する。
なお、支持シートに銅箔を用いない場合には、前述の(11)の工程までに支持シートを剥離しておき、(11)の工程にてビア導体を形成する際に絶縁層表面全面に導電材料を被着形成した後、前述のパターニングを行うことにより配線層を形成する。
以上のようにして、図5(a)に示したような、配線基板24を製造する。
このようにして形成された配線基板24の上面に電子部品を配置し、配線31にバンプや半田等の接合部材を介して電子部品を実装することによって、実装構造体を作製する。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組合せ等が可能である。
上述した配線基板24の実施形態では、無機絶縁層9を1層積層した構成を例に説明したが、無機絶縁層9は何層積層しても構わない。
また、上述した本発明の実施形態は、第1樹脂部16と第2樹脂部18を一体的に形成する例を説明したが、第1樹脂部16と第2樹脂部18は別々に形成しても構わない。この場合、第1樹脂部16を間隙に配した後に、第1樹脂層11(第2樹脂部)を形成することになる。