<絶縁シート>
以下、本発明の一実施形態に係る絶縁シートについて、図1〜4を参照しつつ説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁シートの概略を示した断面図であり、絶縁シートを上下方向に切断した断面を模式的に示している。図2は、本発明の一実施形態に係る絶縁シートの一部を拡大して示した断面図であり、絶縁シートの構造を示している。図3および図4は、本発明の一実施形態に係る絶縁シートの一部を拡大して示した断面図であり、絶縁シートの一部の構造を図2よりもさらに拡大して示している。
絶縁シート1は、例えば、後述するように配線基板の製造に使用されるものである。この絶縁シート1は、図1に示すように、支持シート2と、支持シート2上に積層されている無機物層3と、無機物層3上に積層されている絶縁層4とを有している。
支持シート2は、絶縁シート1を取り扱う際に、無機物層3および絶縁層4を支持するものであり、配線基板の製造時には無機物層3から剥がされるものである。支持シート2は、例えば平板状である。支持シート2は、例えば銅等の金属材料、あるいはポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂またはポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂等の樹脂材料からなる。支持シート2が樹脂材料からなる場合は、支持シート2上のしわ等の発生を低減することができる。一方で、支持シート2が金属材料からなる場合は、支持シート2の耐熱性を向上させることができる。
支持シート2の厚みは、例えば8μm以上100μm以下に設定されている。支持シー
ト2のヤング率は、例えば7GPa以上12GPa以下に設定されている。支持シート2の熱膨張率は、例えば20ppm/℃以上70ppm/℃以下に設定されている。
なお、支持シート2のヤング率は、MTSシステムズ社製Nano Indentor XP/DCMを用いて測定される。また、支持シート2の熱膨張率は、市販のTMA装置を用いて、JISK7197−1991に準じた測定方法によって測定される。
無機物層3は、配線基板の製造時に除去されて、絶縁層4の表面を粗化する役割を担う。無機物層3は、例えば平板状である。無機物層3の厚みは、例えば1μm以上3μm以下に設定されている。
無機物層3は、図3に示すように、複数の無機粒子5によって形成されている。具体的には、複数の無機粒子5が互いの一部で接続されて、無機物層3が形成されている。そして、複数の無機粒子5が互いの一部で接続されているため、複数の無機粒子5同士間には間隙6(以下、第1間隙6という)が存在している。すなわち、無機物層3は、互いの一部で接続している複数の無機粒子5と、複数の無機粒子5間に形成されている第1間隙6とを有している。なお、無機物層3の厚みは、支持シート2の厚みよりも小さくてもよい。
無機粒子5は、無機物層3の主要部を形成している。上述の通り、無機粒子5は、互いの一部が接続していることによって複数の無機粒子5同士間に第1間隙6を形成している。言い換えれば、第1間隙6は、無機粒子5が壁となって形成されている。無機粒子5の形状は、例えば球状である。無機粒子5は、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化マグネシウムまたは酸化ジルコニウム等の無機絶縁材料または、銅等の金属材料からなる。無機粒子5が無機絶縁材料からなる場合は、仮に配線基板の製造時に配線基板中に除去されずに残ったとしても、配線間の絶縁を維持することができる。一方、無機粒子5が金属材料からなる場合は、一般的に金属材料は無機絶縁材料よりも溶かしやすいため、配線基板の製造時において除去しやすくなる。なお、無機粒子5は、熱膨張率が例えば0.6ppm/℃以上10ppm/℃以下である材料からなる。また、無機粒子5は、ヤング率が例えば10GPa以上150GPa以下である材料からなる。
無機粒子5の平均粒子径は、例えば10nm以上150nm以下に設定されている。無機粒子5の平均粒子径は、例えば、まず無機物層3の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、20粒子数以上50粒子数以下の粒子を含むように拡大した断面を撮影し、拡大した断面にて各粒子の最大径を測定して、それらの最大径の平均値を計算することによって算出される。
絶縁層4は、配線基板の製造時に配線基板の絶縁層となる。絶縁層4は、無機物層3上に積層されている第1樹脂層7を有している。言い換えれば、第1樹脂層7と支持シート2との間に無機物層3が介在している。ここで、例えば支持シート2と第1樹脂層7との接着力が強すぎる場合には、支持シート2を第1樹脂層7から剥がす際に、支持シート2に引っ張られて第1樹脂層7が歪むおそれがある。これに対して、本発明によれば、第1樹脂層7と支持シート2との間に、一般的に樹脂よりも剛性が大きい無機材料からなる無機物層3が介在している。その結果、無機物層3は変形しにくいため、支持シート2を剥がす際の第1樹脂層7の歪みの発生を抑制することができる。
絶縁層4は、図2に示すように、無機物層3上に積層されている第1樹脂層7と、第1樹脂層7上に積層されている無機絶縁層8と、無機絶縁層8上に積層されている第2樹脂層9とを有していてもよい。このように、第1樹脂層7が無機物層3および無機絶縁層8に挟まれていることによって、例えば配線基板の製造時に、第1樹脂層7を熱硬化させる
際の熱膨張を第1樹脂層7の両側から抑制することができる。
なお、絶縁層4の厚みは、例えば10μm以上40μm以下に設定されている。
第1樹脂層7は、配線基板の製造時に、配線を支持するものである。つまり、第1樹脂層7の表面には配線が形成される。具体的には、無機物層3に積層されている第1樹脂層7の無機物層3との接触部10に配線が形成される。第1樹脂層7は、樹脂部11および樹脂部11内に配されている無機充填材(図示せず)を有している。なお、第1樹脂層7の厚みは、例えば1μm以上3μm以下に設定されている。
第1樹脂層7の厚みは、無機物層3の厚みよりも小さくてもよい。これにより、第1樹脂層7の熱膨張の影響が小さくなり、無機物層3は、第1樹脂層7の熱膨張量を効果的に低減させることができる。また、本発明によれば、無機物層3を利用して第1樹脂層7の表面を粗化することから、第1樹脂層7を溶かして粗化する場合と比較して、第1樹脂層7を溶かす分の厚みを確保する必要がなく、第1樹脂層7を薄くすることができる。したがって、配線基板の製造時における第1樹脂層7の熱膨張量を効果的に低減させることができる。
樹脂部11は、主に第1樹脂層7を構成するものである。樹脂部11は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等からなる。また、樹脂部11は、熱膨張率が例えば30ppm/℃以上60ppm/℃以下である材料からなる。また、樹脂部11は、ヤング率が例えば2GPa以上10GPa以下である材料からなる。樹脂部11は、絶縁シート1において未硬化状態である。すなわち、第1樹脂層7は、配線基板の製造時までは未硬化状態である。
樹脂部11の一部は、図3に示すように、無機物層3の少なくとも一部の第1間隙6に入り込んでいる。言い換えれば、第1樹脂層7に含まれる樹脂の一部が、接触部10の近傍において無機物層3の第1間隙6に入り込んでいる。これにより、無機物層3の第1間隙6に入り込んだ第1樹脂層7の一部は、無機物層3を除去することによって第1樹脂層7の表面で凸部を形成する。したがって、本発明に係る絶縁シート1は、第1樹脂層7自体を溶かすことなく第1樹脂層7の表面に凹凸を形成して第1樹脂層7の表面に粗化面を形成することができるため、第1樹脂層7の劣化を抑制することができる。よって、本発明に係る絶縁シート1は、配線基板の電気的信頼性を向上させることができる。
また、本発明によれば、無機物層3中の無機粒子5の平均粒子径および無機粒子5の粒子径のばらつきを調整することによって、複数の無機粒子5同士間の第1間隙6の大きさを調整することができる。その結果、無機物層3を除去した場合における第1樹脂層7の表面の凹凸の程度を調整することができる。したがって、液体を用いて第1樹脂層7の表面を粗化する場合と比較して、凹凸の程度を調整しやすくすることができる。
無機粒子5は、例えば、平均粒子径が30nm以下である粒子を0%以上40%以下含んでおり、平均粒子径が30nm以上300nm以下である粒子を40%以上90%以下含んでおり、平均粒子径が300nm以上である粒子を0%以上10%以下含んでいる。この通り無機粒子5の粒度分布を設定すれば、無機物層3の第1間隙6が小さくなりすぎることを抑制して樹脂部11を入り込ませやすくすることができると同時に、微細な粗化面を形成することができる。なお、このときの第1樹脂層7の粗化面の凹凸は、例えば0.03μm以上0.5μm以下の間隔で形成することができる。また、無機粒子5の粒度分布は、望ましくは平均粒子径が30nm以下である粒子を10%以上25%以下含んでおり、平均粒子径が30nm以上300nm以下である粒子を30%以上75%以下含んでおり、平均粒子径が300nm以上である粒子を0%以上5%以下含んでいるとよい。
無機充填材は、第1樹脂層7の剛性を向上させるものである。無機充填材の形状は、例えば球状である。無機充填材は、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化マグネシウムまたは酸化ジルコニウム等の無機絶縁材料等からなる。
無機絶縁層8は、絶縁層4の剛性を向上させるものである。無機絶縁層8は、図4に示すように、互いの一部で接続している複数の無機絶縁粒子12および複数の無機絶縁粒子12間に形成されている間隙13(以下、第2間隙13という)を有している。無機絶縁層8の厚みは、例えば3μm以上15μm以下に設定されている。
無機絶縁層8の厚みは、無機物層3の厚みよりも大きくてもよい。無機絶縁層8の厚みが無機物層3の厚みよりも大きい場合は、絶縁シート1の剛性を無機絶縁層8で担保できると同時に無機物層3を除去しやすくすることができる。
無機絶縁層8の厚みは、第1樹脂層7の厚みよりも大きくてもよい。これにより、無機絶縁層8は、第1樹脂層7の熱膨張量を効果的に低減することができる。
複数の無機絶縁粒子12は、無機絶縁層8の主要部を形成している。無機絶縁粒子12の形状は、例えば球状である。無機絶縁粒子12は、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化マグネシウムまたは酸化ジルコニウム等の無機絶縁材料からなる。複数の無機絶縁粒子12は、例えば熱膨張率が0.2ppm/℃以上10ppm/℃以下である材料からなる。複数の無機絶縁粒子12は、例えばヤング率が50GPa以上500GPa以下である材料からなる。
無機絶縁粒子12は、無機粒子5と同じ材料からなっていてもよいし、異なる材料からなっていてもよい。無機絶縁粒子12が無機粒子5と同じ材料からなる場合は、絶縁シート1の両主面側における平面方向の熱膨張率を近づけることができるため、熱膨張に起因した絶縁シート1の変形を低減することができる。
複数の無機絶縁粒子12の平均粒子径は、複数の無機粒子5の平均粒子径よりも大きくてもよい。これにより、絶縁シート1の剛性を無機絶縁層8で担保できると同時に無機物層3を除去しやすくすることができる。
複数の無機絶縁粒子12の粒子径のばらつきは、複数の無機粒子5の粒子径のばらつきよりも大きくてもよい。これにより、無機絶縁層8の無機絶縁粒子12は、無機物層3の無機粒子5と比較して密に配置されやすくなり、無機絶縁層8の剛性を向上させることができる。
第2樹脂層9は、配線基板の製造時に絶縁層4を接着させるものである。第2樹脂層9は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等からなる。また、第2樹脂層9には、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化マグネシウムまたは酸化ジルコニウム等の無機絶縁材料からなる粒子が充填されている。なお、熱硬化性樹脂は絶縁シート1においては未硬化状態であり、第2樹脂層9は、配線基板の製造時までは未硬化状態を保っている。
第2樹脂層9の厚みは、例えば5μm以上30μm以下に設定されている。熱硬化性樹脂は、例えば、熱膨張率が20ppm/℃以上80ppm/℃以下であり、ヤング率は2GPa以上10GPa以下である材料からなる。
第2樹脂層9の厚みは、無機絶縁層8の厚みよりも薄くてもよい。この場合には、無機絶縁層8は効果的に第2樹脂層9の熱膨張量を低減することができる。なお、第2樹脂層9の厚みは、支持シート2の厚みよりも小さくてもよい。また、第2樹脂層9の厚みは、第1樹脂層7の厚みよりも大きくてもよい。この場合には、第2樹脂層9の材料は、第1樹脂層7の材料よりも熱膨張率が小さい材料からなるとよい。これにより、絶縁シート1の熱膨張量を低減することができる。
<配線基板>
次に、上述した絶縁シート1を用いて製造された配線基板14を、図5を参照しつつ詳細に説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る絶縁シートを使用して製造した配線基板の概略を示した断面図であり、配線基板を上下方向に切断した断面を模式的に示している。
配線基板14は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置またはその周辺機器等の電子機器に使用されるものである。配線基板14は、例えばビルドアップ多層配線基板であって、図5に示すように、コア基板15とコア基板15の上下に形成された一対の配線層16とを備えている。
コア基板15は、配線基板14の剛性を高めつつ一対の配線層16間の導通を図るものである。コア基板15は、樹脂基体17と、樹脂基体17を上下方向に貫通して形成されている筒状のスルーホール導体18と、スルーホール導体18に取り囲まれた領域に配された柱状の絶縁体19とを含んでいる。
樹脂基体17は、コア基板15の剛性を高めるものである。この樹脂基体17は、例えば樹脂と、この樹脂に被覆された基材および無機絶縁フィラーとを含んでいる。
樹脂基体17に含まれた樹脂は、樹脂基体17の主要部を形成するものである。この樹脂は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂またはポリエーテルケトン樹脂等の樹脂材料からなる。
樹脂基体17に含まれた基材は、樹脂基体17を高剛性化および低熱膨張化するものである。この基材は、繊維によって構成された織布もしくは不織布または繊維を一方向に配列したものからなる。また、この繊維は、例えばガラス繊維または樹脂繊維等からなる。
樹脂基体17に含まれた無機絶縁フィラーは、樹脂基体17を高剛性化および低熱膨張化するものである。この無機絶縁フィラーは、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは炭酸カルシウム等の無機絶縁材料からなる複数の粒子により構成されている。
スルーホール導体18は、コア基板15の上下の配線層16を電気的に接続するものである。このスルーホール導体18は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料からなる。
絶縁体19は、後述するビア導体20の支持面を形成するものである。この絶縁体19は、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料からなる。
一方、コア基板15の上下には、上述した如く、一対の配線層16が形成されている。配線層16は、厚み方向に沿ったビア孔が形成された絶縁層4と、樹脂基体17上または絶縁層4上に部分的に形成された配線21と、ビア孔内に形成されたビア導体20とを含んでいる。
絶縁層4は、コア基板15側に位置している第2樹脂層9と、第2樹脂層9上に積層されている無機絶縁層8と、無機絶縁層8上に積層されている第1樹脂層7とを含んでいる。なお、第1樹脂層7、無機絶縁層8および第2樹脂層9は、上述した絶縁シート1が備えていたものである。また、絶縁シート1上では第1樹脂層7および第2樹脂層9は未硬化であったが、配線基板14では、第1樹脂層7および第2樹脂層9は硬化している。
第2樹脂層9は、配線21の側面および上面に接着しつつ、樹脂基体17と絶縁層4とを接着、または積層された絶縁層4同士を接着するものである。無機絶縁層8は、絶縁層4の主要部をなし、厚み方向に沿って離れて配された配線21同士の絶縁部材として機能するものである。無機絶縁層8は、樹脂材料と比較して低熱膨張率および高剛性であるから、絶縁層4の平面方向への熱膨張率を低減することができる。したがって、配線基板14と配線基板14上に実装される電子部品(図示せず)との平面方向への熱膨張率の差を低減し、ひいては配線基板14の反りを低減することができる。
第1樹脂層7は、無機絶縁層8と配線21との間に介在して接着部材として機能するものである。第1樹脂層7には、配線21との境界部に凹凸が形成されている。この凹凸はアンカー効果を利用して第1樹脂層7への配線21の接着を向上させるものである。第1樹脂層7の凸部の高さは、例えば0.06μm以上2μm以下に設定されている。また、第1樹脂層7の凸部同士の間隔は、例えば0.03μm以上0.5μm以下に設定されている。
第1樹脂層7は、第2樹脂層9、無機絶縁層8および配線21よりも、厚みが小さく、且つヤング率が低く設定されてもよい。この場合には、薄く弾性変形しやすい第1樹脂層7が変形することにより、無機絶縁層8と配線21との熱膨張率の違いに起因した応力を緩和することができる。その結果、無機絶縁層8と配線21との剥離を低減し、配線21の断線を低減することができる。
また、ヤング率の低い第1樹脂層7の厚みを薄くすることによって、配線基板14の剛性の低下を抑制できる。また、熱膨張率の高い第1樹脂層7の厚みを薄くすることによって、配線基板14の熱膨張率の上昇を抑制できる。また、第1樹脂層7のヤング率を低くすることによって、無機絶縁層8と配線21との接着強度を高めることができる。
配線21は、平面方向または厚み方向に沿って互いに離れて配されており、接地用配線、電力供給用配線または信号用配線として機能するものである。この配線21は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料からなる。配線21の厚みは、例えば3μm以上20μm以下に設定されている。配線21の熱膨張率は、例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。配線21のL/S(ライン/スペース)は、例えば3/3μm以上20/20μm以下に設定されている。
ビア導体20は、厚み方向に互いに離れて配された配線21同士を電気的に接続するものであり、コア基板15に向って幅狭となる柱状に形成されている。ビア導体20は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロムの導電材料からなる。また、ビア導体20は、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
<配線基板の製造方法>
実施形態に係る絶縁シート1を用いた配線基板の製造方法について、図6〜10を参照しつつ説明する。配線基板の製造方法は、主に準備工程、積層工程、支持シート除去工程、無機物層除去工程および配線形成工程を有している。なお、本発明は、以下の実施形態
に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。なお、図6〜10は、本発明の一実施形態に係る絶縁シートを使用して製造する配線基板の製造方法の一工程を示した断面図である。
(準備工程)
(1)まず、絶縁シート1を準備する。絶縁シート1は、以下の工程(2)〜(7)を経て準備される。
(2)複数の無機粒子5および複数の無機粒子5が分散した溶剤を有する無機物ゾルを準備する。無機物ゾルは、例えば無機粒子5を10体積%以上50体積%以下含み、溶剤を50%体積以上90体積%以下含む。
無機粒子5は、酸化珪素からなる場合であれば、例えば珪酸ナトリウム水溶液等の珪酸化合物を精製し、化学的に酸化珪素を析出させることによって形成することができる。溶剤には、例えばメタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミドまたはこれらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶剤を使用することができる。
(3)支持シート2を、例えば樹脂を押出成形によってシート状に成形することによって形成する。次いで、支持シート2上に無機物ゾルを層状に塗布する。無機物ゾルの塗布は、例えばディスペンサー、バーコーター、ダイコーターまたはスクリーン印刷機を用いて行なうことができる。
(4)無機物層3を、無機物ゾルを加熱することによって形成する。具体的には、まず無機物ゾルから溶剤を蒸発させて無機物ゾルを乾燥させる。無機物ゾルの乾燥は、例えば加熱および風乾によって行なわれる。無機物ゾルの乾燥温度は、例えば20℃以上溶剤の沸点未満に設定される。無機絶縁ゾルの乾燥時間は、例えば20秒以上30分以下に設定される。
無機絶縁ゾルを乾燥させた後、支持シート2上に残存している複数の無機粒子5を加熱することによって、複数の無機粒子5同士を互いの一部で接続させ、無機物層3を形成する。無機粒子5の加熱温度は、例えば100℃以上300℃未満に設定される。無機粒子5の加熱時間は、例えば0.5時間以上24時間以下に設定される。
無機粒子5は、粒子径が例えば3nm以上110nm以下に設定されている微小な粒子を含んでいるため、加熱温度が比較的低温であっても複数の無機粒子5同士を強固に接続させることができる。また、このように低温で加熱することによって、無機粒子5が形状を保持しつつ、無機粒子5同士で近接領域のみで接続させることができる。すなわち、無機物層3は、例えばセラミックスを焼成したときにセラミックスの粒子が粒子同士間の間隙を埋めるように粒成長した緻密な構造体になるのではなく、複数の無機粒子5が一部で接続して無機粒子5同士間に第1間隙6を残した構造体を形成する。その結果、後述する工程において、複数の無機粒子5間の第1間隙6に第1樹脂層7の一部を第1間隙6に入り込ませることができる。
(5)第1樹脂層7を、無機物層3の主面に形成する。具体的には、まず、溶剤、無機充填材および未硬化の樹脂の混合物を無機物層3の主面に塗布する。次いで、無機物層3の主面に塗布された混合物を乾燥させて混合物から溶剤を蒸発させることによって、第1樹脂層7を形成する。混合物の塗布は、例えばバーコーター、ダイコーターまたはカーテンコーター等によって行なう。
第1樹脂層7の一部(樹脂部11の一部)を無機物層3の第1間隙6に入り込ませる。具体的には、支持シート2、無機物層3および第1樹脂層7を上下方向に加熱加圧することによって、無機物層3の第1間隙6の一部に樹脂部11の一部を入り込ませる。支持シート2等の加熱加圧は、樹脂部11の熱硬化開始温度未満で行なう。支持シート2等の加熱温度は、例えば60℃以上160℃以下に設定される。支持シート2等の加圧圧力は、例えば0.1MPa以上2MPa以下に設定される。支持シート2等の加熱加圧時間が例えば0.5時間以上2時間以下に設定される。
支持シート2、無機物層3および第1樹脂層7をさらに加熱することによって、第1樹脂層7の硬化を進める。その結果、後述する工程において、第1樹脂層7上に無機絶縁ゾルを塗布したときに、無機絶縁ゾルの溶剤に第1樹脂層7の樹脂部11が溶け出すことを低減することができる。一方で、第1樹脂層7は、完全に硬化させなくてもよい。言い換えれば、第1樹脂層7の樹脂部11は未硬化のままでよい。これにより、第1樹脂層7上に積層される無機絶縁層8との接着力を向上させることができる。第1樹脂層7の加熱温度は、例えば60℃以上220℃以下に設定される。第1樹脂層7の加熱時間は、例えば1分以上10分以下に設定される。なお、本工程において、第1樹脂層7の硬化度は、例えば60%以上90%以下に設定される。
(6)複数の無機絶縁粒子12および複数の無機絶縁粒子12が分散した溶剤を有する無機絶縁ゾルを準備して、第1樹脂層7上に塗布する。無機絶縁ゾルの塗布は、例えばディスペンサー、バーコーター、ダイコーターまたはスクリーン印刷機を用いて行なうことができる。
無機絶縁ゾルは、例えば無機絶縁粒子12を10体積%以上50体積%以下含み、溶剤を50%体積以上90体積%以下含む。無機絶縁粒子12は、酸化珪素からなる場合であれば、例えば珪酸ナトリウム水溶液等の珪酸化合物を精製し、化学的に酸化珪素を析出させることによって形成することができる。なお、溶剤は、無機物ゾルと同様の材料の中から任意に選択される。
無機絶縁層8を複数の無機絶縁粒子12を加熱して複数の無機絶縁粒子12同士を互いの一部で接続させることによって形成する。無機絶縁粒子12の加熱は、温度が例えば100℃以上300℃未満に設定され、時間が例えば0.5時間以上24時間以下に設定される。なお、無機絶縁粒子12は、粒子径が例えば3nm以上110nm以下に設定されている微小な粒子を含んでいるため、無機絶縁粒子12の加熱温度が比較的低温であっても、複数の無機絶縁粒子12同士を強固に接続させることができる。また、複数の無機絶縁粒子12同士が一部で接続しているため、複数の無機絶縁粒子12同士間には第2間隙13が形成されている。
(7)第2樹脂層9を無機絶縁層8の主面に形成する。具体的には、未硬化の樹脂に無機充填材を分散させた未硬化の樹脂を層状に成形した後、その成形体を無機絶縁層8の主面に積層することによって、第2樹脂層9を形成する。
第2樹脂層9の一部を無機絶縁層8の第2間隙13に入り込ませる。具体的には、まず
、支持シート2、無機物層3、第1樹脂層7、無機絶縁層8および第2樹脂層9を上下方向に加熱加圧することによって、無機絶縁層8の第2間隙13の一部に第2樹脂層9の一部を入り込ませる。支持シート2等の加熱加圧は、第2樹脂層9の熱硬化開始温度未満で行なう。具体的には、支持シート2等の加熱温度は、例えば60℃以上160℃以下に設定される。支持シート2等の加圧圧力は、例えば0.1MPa以上2MPa以下に設定される。支持シート2等の加熱加圧時間は、例えば0.5時間以上2時間以下に設定される。
以上のようにして、支持シート2、無機物層3、第1樹脂層7、無機絶縁層8および第2樹脂層9を備える絶縁シート1を作製する。
(8)次いで、コア基板15(基板)を作製する。コア基板15の作製には、まず、例えば金属箔上に複数の樹脂層が積層された樹脂基体17を形成する。次いで、例えばドリル加工やレーザー加工等によって樹脂基体17にスルーホールを形成した後、例えば無電解めっき法、電気めっき法、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等により、スルーホールの内壁に筒状のスルーホール導体18を形成する。次いで、スルーホール導体18に取り囲まれた領域に樹脂材料を充填することによって絶縁体19を形成し、導電材料を絶縁体19の露出部に被着させた後、従来周知のフォトリソグラフィー技術またはエッチング等により、金属箔をパターニングして配線21を形成する。
以上のようにして、コア基板15を準備する。
(積層工程)
(9)図6に示すように、絶縁シート1をコア基板15上に積層する。具体的には絶縁シート1の積層は、絶縁シート1の第2樹脂層9がコア基板15に接触するように行なう。
(10)第1樹脂層7および第2樹脂層9を熱硬化させる。具体的には、絶縁シート1およびコア基板15を第1樹脂層7および第2樹脂層9の熱硬化開始温度以上加熱することによって、絶縁シート1中の未硬化状態の第1樹脂層7および第2樹脂層9を熱硬化させる。絶縁シート1等の加熱温度は、例えば80℃以上180℃以下に設定される。
(支持シート除去工程)
(11)支持シート2をコア基板15に積層した絶縁シート1から除去する。支持シート2の除去は、例えば機械的に引き剥がすことによって行なう。支持シート2を剥がすことによって、図7に示すように、支持シート2に積層されていた無機物層3が表面に露出する。
(12)図8に示すように、無機物層3の表面から無機物層3、第1樹脂層7、無機絶縁層8および第2樹脂層9を厚み方向に貫通する貫通穴を形成する。貫通穴の形成は、例えばYAGレーザー装置または炭酸ガスレーザー装置を用いて無機物層3の上面にレーザー光を照射することによって行なう。
(無機物層除去工程)
(13)無機物層3を除去する。無機物層3を除去することによって、図9に示すように、第1樹脂層7が表面に露出する。無機物層3の除去は、例えば無機粒子5が酸化珪素からなる場合であれば、無機粒子5を溶かす強アルカリ性の水溶液によって行なう、強アルカリ性の水溶液としては、例えば過マンガン酸カリウムまたは過マンガン酸ナトリウム等の水溶液である。その結果、無機物層3が除去された第1樹脂層7の表面が粗化されて、第1樹脂層7の表面に粗化面が形成される。なお、無機物層3が除去される一方で、第1樹脂層7は残存させることから、第1樹脂層7は上記水溶液には溶けにくい材料で形成する。
(配線形成工程)
(14)貫通穴にビア導体20を形成する。ビア導体20は、例えば無電解めっき、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法を用いて、貫通穴内に導電材料を埋めることによって形成される。
(15)表面が粗化された第1樹脂層7の粗化面に配線21を形成する。具体的には、まず、例えば無電解めっき法等を用いて第1樹脂層7上に導電材料を被着させる。次いで、例えばフォトリソグラフィー技術またはエッチング技術等を用いて第1樹脂層7上に被着した導電材料をパターニングすることにより、図10に示すように、第1樹脂層7上に配線21を形成することができる。
以上のようにして、配線基板14を製造する。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組合せ等が可能である。
また、上述した本発明の実施形態は、絶縁シート1の絶縁層4が第1樹脂層7と無機絶縁層8と第2樹脂層9とを備えた構成を例に説明したが、絶縁層4が第1樹脂層7のみを備えていなくても構わない。
また、上述した本発明の実施形態は、配線層16にて絶縁層4を1層のみ積層した構成を例に説明したが、絶縁層4は何層積層しても構わない。
また、上述した本発明の実施形態は、無機物層3の形成時に無機物ゾルの溶剤を蒸発させた後、複数の無機粒子5を加熱する構成を例に説明したが、溶剤の蒸発および無機粒子5の加熱は同時に行なっても構わない。
また、上述した本発明の実施形態は、絶縁シート1を用いてビルドアップ多層配線基板を製造した構成を例に説明したが、絶縁シート1を用いて製造する配線基板は他のものでも構わない。他の配線基板としては、例えばインターポーザー基板、コアレス基板または単層基板が挙げられる。ここで、インターポーザー基板とは、1層の絶縁層4と、絶縁層4を貫通する貫通導体と、絶縁層4上に配され、貫通導体に電気的に接続する配線21とを備えている配線基板である。また、コアレス基板とは、絶縁層4と、絶縁層4を貫通するビア導体20と、絶縁層4上に配され、ビア導体20に電気的に接続する配線21とを備え、絶縁層4と配線21とが交互に複数積層されてなるものであって、コア基板15を有していない配線基板である。