(第1実施形態)
以下に、本発明の第1実施形態に係る金属箔付き積層板および配線基板を、図面に基づいて詳細に説明する。
(金属箔付き積層板および配線基板の概略構成)
図1Aに示した金属箔付き積層板1は、配線基板の資材として利用されるものである。金属箔付き積層板1は、積層板1xと、積層板1xの両面に配された金属箔14xとを有している。
積層板1xは、複数の第1無機絶縁層11aおよび隣接する第1無機絶縁層11a同士の間に配されて隣接する第1無機絶縁層11aそれぞれに当接した樹脂層(第1樹脂層10aまたは第2樹脂層10b)を有している。第1無機絶縁層11aと、樹脂層(第1樹脂層10aまたは第2樹脂層10b)とは交互に複数積層されている。また、積層板1xは、これら複数の第1無機絶縁層11aおよびその間の複数の樹脂層(第1樹脂層10aまたは第2樹脂層10b)からなる積層体の外側に重ねられた第3樹脂層10cを有している。
第1樹脂層10aは、第1層領域12aからなる。第2樹脂層10bは、第1層領域12aおよび第2層領域12bからなる。第3樹脂層10cは、第2層領域12bからなる。各第1無機絶縁層11aにおいては、一主面に第1層領域12aが当接し、他主面に第2層領域12bが当接している。また、第2樹脂層10bの第2層領域12bは、第1無機絶縁層11aと、第2樹脂層10bの第1層領域12aとの間に介されている。
また、別の観点では、積層板1xは、第1積層部4aと、その両面に重ねられた第2積層部4bとを有している。第1積層部4aは、第1層領域12aと、その両面に重ねられた第1無機絶縁層11aと、さらにその両面に重ねられた第2層領域12bとを有する。第2積層部4bは、金属箔14xに重ねられた第2層領域12bと、その上に重ねられた第1無機絶縁層11aと、さらにその上に重ねられた第1層領域12aとを有し、当該第1層領域12aを第1積層部4aに当接させている。
図1Bに示す配線基板2は、両面式の配線基板として構成されており、積層板1xにスルーホールが形成されて構成された積層板1yと、積層板1yの両面に重ねられた導電層14と、スルーホール内に設けられ、両面の導電層14同士を電気的に接続する筒状のスルーホール導体8と、該スルーホール導体8に取り囲まれた絶縁体9とを有している。
なお、積層板1yを構成する各層(第1無機絶縁層11a等)については、スルーホール等の有無に関わらず(平面形状の相違に関わらず)、同一の符号を用いるものとする。
図1Cに示す配線基板3は、ビルドアップ式の配線基板として構成されており、コア基板としての積層板1yと、積層板1yの両面に重ねられた配線層6と、スルーホール内に設けられ、両面の配線層6同士を電気的に接続する筒状のスルーホール導体8と、該スルーホール導体8に取り囲まれた絶縁体9とを有している。
各配線層6は、積層板1yの第3樹脂層10c上に形成された導電層14を有し、その上に、順に積層された第4樹脂層10d、第2無機絶縁層11b、第3樹脂層10c及び導電層14の組み合わせを1以上有している。また、各配線層6は、第4樹脂層10d、第2無機絶縁層11b及び第3樹脂層10cを貫通する複数のビア孔と、該ビア孔内に形成された複数のビア導体15と、を含んでいる。また、導電層14及びビア導体15は、互いに電気的に接続されており、接地用配線、電力供給用配線及び/又は信号用配線を構成している。
(金属箔付き積層板の各部の構成および材料)
第1樹脂層10aおよび第2樹脂層10bは、導電層14を支持するとともに、互いに離間した導体同士(スルーホール導体8同士、両面の導電層14同士等)の短絡を防止するためのものである。また、第1樹脂層10aおよび第2樹脂層10bは、第1無機絶縁層11a同士の接着部材や第1無機絶縁層11aにクラックが発生した場合に、クラックの進展を防止する保護層としても機能する。
第1層領域12aは、第1樹脂層10aの全部および第2樹脂層10bの主要部を担うものであり、上述した機能を果たす。また、第1層領域12aは、第2層領域12bよりも熱膨張率が低く、積層板1x全体の熱膨張率を低減することに寄与する。その結果、積層板1x全体の熱膨張率を、平面方向においては電子部品に近づけ、厚み方向においてはスルーホール導体に近づけることができる。
また、後述するように、第1層領域12aの樹脂は、第2層領域12bの樹脂よりも第1無機絶縁層11aにしみ込んでいる。その結果、第1層領域12aは、接着強度の高い接着部材として機能する。
積層板1xの中央側の第1層領域12a(第1樹脂層10aの第1層領域12a)の厚みは、積層板1xの両主面側の第1層領域12a(第2樹脂層10bの第1層領域12a)の厚みよりも小さいことが好ましい。積層板1xに曲げ応力が印加された場合に応力が集中しやすい積層板1xの両主面近傍においては、第1層領域12aの厚みを大きくして第1無機絶縁層11aのクラックを低減できる。一方、積層板1xの中心部においては、第1層領域12aの厚みが薄くなり、その比率が下がるので、熱膨張率が下がり、弾性率を高くすることができる。
第1層領域12aは、例えば、樹脂部と、多数のフィラー粒子からなるフィラーとを含んで構成されている。フィラーは、第1層領域12aの熱膨張率の低減および剛性向上に寄与する。なお、第1層領域12aは、基材を含んでいない。ただし、第1層領域12aは、基材を含んでいてもよい。第1層領域12aの厚みは、例えば10μm以上50μm以下に設定されている。
第1層領域12aの樹脂部は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂又はポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂により形成することができる。該樹脂部は、ヤング率が例えば0.1GPa以上5GPa以下に設定され、厚み方向及び平面方向への熱膨張率が例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定され、誘電正接が例えば0.01以上0.02以下に設定されている。
ここで、第1層領域12aの樹脂部のヤング率は、ISO14577−1:2002に準じた次の方法で測定される。まず、第1層領域12aの樹脂部を厚み方向に沿って切断し、切断面をアルゴンイオンで研摩する。次に、ナノインデンターを用いて、該ナノインデンターのダイヤモンドからなるバーコビッチ圧子に荷重を印加して、該圧子を研磨面に対して押し込む。次に、押し込む際の荷重と押し込み深さの関係から荷重‐変位曲線を求め、該荷重‐変位曲線からヤング率を算出する。この測定は、例えば、MTS社製ナノインデンターXPを用いることができる。第1層領域12aの樹脂部の熱膨張率は、市販のTMA(Thermo-Mechanical Analysis)装置を用いて、JISK7197‐1991に準じた測定方法により測定される。また、第1層領域12aの樹脂部の誘電正接は、JISR1627‐1996に準じた共振器法により測定される。以下、各部材のヤング率、熱膨張率及び誘電正接は、上記と同様に測定される。
フィラー粒子は、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム又は炭酸カルシウム等の無機絶縁材料により形成することができる。フィラー粒子は、粒径が例えば0.5μm以上5.0μm以下に設定され、熱膨張率が例えば0ppm/℃以上15ppm/℃以下に設定される。また、第1層領域12aの樹脂部とフィラーの体積の合計に対するフィラーの体積の割合(フィラーの含有量)が例えば3体積%以上60体積%以下に設定されている。
ここで、フィラー粒子の粒径は、次のように測定される。まず、第1層領域12aの研摩面若しくは破断面を電界放出型電子顕微鏡で観察し、20粒子数以上50粒子数以下の粒子を含むように拡大した断面を撮影する。次に、該拡大した断面にて各粒子の最大径を測定し、該測定された最大粒径をフィラー粒子の粒径とする。また、フィラーの含有量(体積%)は、第1層領域12aの研摩面を電界放出型電子顕微鏡で撮影し、画像解析装置等を用いて、第1層領域12aの樹脂部に占めるフィラーの面積比率(面積%)を10箇所の断面にて測定し、その測定値の平均値を算出して含有量(体積%)とみなすことにより、測定される。
第2層領域12bは、第1無機絶縁層11aと導電層14との間の熱応力を緩和する機能、および/または第1無機絶縁層11aのクラックの進展を抑制する機能を有するものであり、樹脂部と該樹脂部に混入されたフィラーとを含む。
また、第2層領域12bは、厚みが例えば0.1μm以上5μm以下に設定され、ヤング率が例えば0.01GPa以上1GPa以下に設定され、硬度が例えば0.01GPa以上0.3GPaに設定され、厚み方向及び平面方向への熱膨張率が例えば20ppm/℃以上100ppm/℃以下に設定され、誘電正接が例えば0.005以上0.02以下に設定されている。
第2層領域12bは、第1層領域12a及び第1無機絶縁層11aと比較して、厚みが小さく設定され、且つヤング率が低く設定されていることが望ましい。この場合、例えば、薄く弾性変形しやすい第2層領域12bによって、第1無機絶縁層11aと導電層14との熱膨張量の違いに起因した熱応力が緩和される。したがって、第1無機絶縁層11aより導電層14が剥離することが抑制され、導電層14の断線を低減することができ、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板3を得ることが可能となる。
また、第2層領域12bは、ヤング率が低く接着強度自体は第1樹脂層10aよりも高いため、第1無機絶縁層11aへしみ込まなくとも接着できる。
金属箔14上に第2層領域12b(プライマー層が)あった方が、第1無機絶縁層11aが金属箔14から剥がれにくくなり、製造工程での取扱いが容易になる。また、エッチング等の薬品から第1無機絶縁層11aを保護する効果も奏される。
第2層領域12bに含まれる樹脂部は、第2層領域12bの主要部をなすものであり、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂又はポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂からなる。
第2層領域12bに含まれるフィラーは、第2層領域12bの難燃性を高める機能や後述する取り扱い時に積層シート同士が接着してしまうことを抑制する機能を有し、例えば酸化ケイ素等の無機絶縁材料により形成された多数のフィラー粒子から成る。このフィラー粒子は、粒径が例えば0.05μm以上0.7μm以下に設定されており、第2層領域12bにおける含有量が例えば0体積%以上10体積%以下に設定されている。
第2層領域12bに含まれるフィラーは、第1層領域12aに含まれるフィラーよりも体積%が低く設定されている。従って、第2層領域12bは、第1層領域12aおよび第1無機絶縁層11aに厚み方向へのクラックが生じた場合、該クラックの進展を抑制する。このような第2層領域12bが第1層領域12aと第1無機絶縁層11aとの間に介在することにより、クラックの進展が効果的に抑制される。
第1無機絶縁層11aは、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭化ケイ素又は酸化カルシウム等の無機絶縁材料により構成されており、樹脂材料と比較して剛性が高いことから、積層板1yの剛性を高める機能を有する。
第1無機絶縁層11aの平面方向の熱膨張率は、一般的な樹脂材料の平面方向の熱膨張率と比較して低いため、配線基板2または3の平面方向への熱膨張率をこれら配線基板に実装される電子部品(例えばICチップ)の平面方向への熱膨張率に近づけることができる。その結果、例えば、熱応力に起因したバンプ付近の信頼性低下が抑制される。
第1無機絶縁層11aの厚み方向の熱膨張率は、平面方向の熱膨張率が低い樹脂フィルムの厚み方向の熱膨張率よりも小さいため、樹脂フィルムを用いた場合に比較して、積層板1yの厚み方向の熱膨張率を低減することができ、積層板1yとスルーホール導体8との熱膨張率の違いに起因した熱応力を小さくし、スルーホール導体8の断線を低減できる。
一般的に、無機絶縁材料は樹脂材料よりも誘電正接が低く、しかも、第1無機絶縁層11aは、第1層領域12aよりも導電層14(配線層6)に対して近接して配置されていることから、第1無機絶縁層11aによって、積層板1yの上下面に配置された導電層14の信号伝送特性が高められる。
第1無機絶縁層11aの厚みは、例えば3μm以上100μm以下、及び/又は第1層領域12aの厚みの0.5倍〜10倍以下に設定され、好ましくは図1Aに図示するように第1層領域12aの厚みの1倍程度である。第1無機絶縁層11aの厚みを第1層領域12aの厚みと同等とすることによって、第1無機絶縁層11aの低熱膨張率および高剛性の特徴を十分に生かしつつ、第1層領域12aの靭性によって割れを抑制することができる。また、配線層6と同様に積層体1xの内部に導電層14を配置し、当該導電層14を第1層領域12aに埋め込むことも好適になされる。
なお、要求される仕様によっては、図7に示すように第1無機絶縁層11aの厚みを第1層領域12aの厚みよりも大きくし、低熱膨張率および高剛性の効果をさらに得ることが好ましい。積層体1x内に導電層を配置しない場合においては、第1層領域12aを厚くする必要はないから、積層体1xの厚さを低減しつつ、このような態様とすることができる。積層体1x内に導電層を配置しない場合の第1層領域12aの厚さは、例えば第1無機絶縁層11aの厚さの0.3倍以上0.7倍以下とすることができる。
また、第1無機絶縁層11aのヤング率は、例えば10GPa以上100GPa以下、及び/又は、第1層領域12aの樹脂部の10倍以上100倍以下に設定される。また、第1無機絶縁層11aは、厚み方向及び平面方向への熱膨張率が例えば0ppm/℃以上10ppm/℃以下に設定され、誘電正接が例えば0.0001以上0.001以下に設定されている。
この第1無機絶縁層11aは、上述した無機絶縁材料により形成することができるが、なかでも、低誘電正接及び低熱膨張率の観点から、酸化ケイ素を用いることが望ましい。
また、第1無機絶縁層11aは、アモルファス(非晶質)状態の無機絶縁材料により形成されている。アモルファス状態の無機絶縁材料は、結晶状態の無機絶縁材料と比較して、結晶構造に起因した熱膨張率の異方性を低減することができるため、積層板の加熱後積層板が冷却される際に、第1無機絶縁層11aの収縮を厚み方向及び平面方向にてより均一にすることができ、第1無機絶縁層11aにおけるクラックの発生を低減できる。
このアモルファス状態の無機絶縁材料としては、例えば酸化ケイ素を90質量%以上含む無機絶縁材料を用いることができ、なかでも、酸化ケイ素を99質量%以上100質量%未満含む無機絶縁材料を用いることが望ましい。酸化ケイ素を90質量%以上100質量%未満含む無機絶縁材料を用いる場合は、該無機絶縁材料は酸化ケイ素の他に、例えば酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化マグネシウム又は酸化ジルコニウム等の無機絶縁材料を含んでも構わない。なお、アモルファス状態である無機絶縁材料は、結晶相の領域が例えば10体積%未満に設定されており、なかでも5体積%未満に設定されていることが望ましい。
ここで、酸化ケイ素の結晶相領域の体積比は、以下のように測定される。まず、100%結晶化した試料粉末と非晶質粉末とを異なる比率で含む複数の比較試料を作製し、該比較試料をX線回折法で測定することにより、該測定値と結晶相領域の体積比との相対的関係を示す検量線を作成する。次に、測定対象である調査試料をX線回折法で測定し、該測定値と検量線とを比較して、該測定値から結晶相領域の体積比を算出することにより、調査試料の結晶相領域の体積比が測定される。
上述した第1無機絶縁層11aは、図2Aおよび図2Bに示すように、複数の第1無機絶縁粒子13aと該第1無機絶縁粒子13aよりも粒径が大きい複数の第2無機絶縁粒子13bとを含む。この第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bは、例えば、上述した酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム又は酸化カルシウム等の無機絶縁材料により形成することができる。
また、第1無機絶縁層11aは、第1無機絶縁粒子13aと第2無機絶縁粒子13bの合計体積に対して第1無機絶縁粒子13aを20体積%以上40体積%以下含み、前記合計体積に対して第2無機絶縁粒子13bを60体積%以上80体積%以下含んでいる。このように、第2無機絶縁粒子13bがある程度多くされることにより、複数の第2無機絶縁粒子13bの間の領域に後述する空隙Vを容易に形成することができる。
第1無機絶縁粒子13aは、粒径が3nm以上110nm以下に設定されており、図2Bに示すように、第1ネック構造17aを介して互いに結合している。これにより、第1無機絶縁層11aは、フィラーが混入された樹脂に比較して無機絶縁粒子が緻密に配置されている。また、第1無機絶縁粒子13a同士が互いに結合して骨格構造をなしており、個々の第1無機絶縁粒子13aが互いに拘束して流動しにくいため、フィラーを分散させた樹脂と比較して、低熱膨張かつ高剛性の無機絶縁層を得ることができる。なお、第1無機絶縁粒子13aのヤング率は、例えば10GPa以上30GPa以下に設定され、第1無機絶縁粒子13aの硬度は、例えば0.5GPa以上2GPa以下に設定されている。
また、第2無機絶縁粒子13bは、粒径が0.5μm以上5μm以下に設定されており、第1無機絶縁粒子13aと第2ネック構造17bにおいて結合することによって、第1無機絶縁粒子13aを介して互いに接着している。なお、第2無機絶縁粒子13bの粒径は、第1無機絶縁粒子13aの粒径の例えば10倍以上200倍以下に設定されている。また、第2無機絶縁粒子13bのヤング率は、例えば40GPa以上75GPa以下に設定され、及び/又は第1無機絶縁粒子13aのヤング率の例えば2倍以上7倍以下に設定されている。また、第2無機絶縁粒子13bの硬度は、例えば5GPa以上10GPa以下に設定され、及び/又は第1無機絶縁粒子13aの硬度の例えば3倍以上20倍以下に設定されている。
ここで、第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bは、第1無機絶縁層11aの研摩面若しくは破断面を電界放出型電子顕微鏡で観察することにより確認される。また、第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bの体積%および粒径は、上述したフィラー粒子の体積%および粒径と同様に算出される。
第1無機絶縁層11aは、微小な粒子(第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13b)が結合してなるため、表面に微細な凹凸が生じやすく、樹脂層(第1層領域12a等)が剥離しにくい。また、後述するように、粒子の隙間に樹脂層の一部が充填されるため、樹脂層が剥離しにくい。
ガラスクロスの各繊維は、平面方向に沿って配されており、厚み方向へ拘束されていない。このため、ガラスクロスに含浸された樹脂は、厚み方向への熱膨張率が大きくなりやすい。一方、第1無機絶縁粒子13aおよび第2無機絶縁粒子13bは、3次元網目状構造を構成しており、厚み方向についても拘束されていることから、第1無機絶縁層11aは、厚み方向への熱膨張率が低減されやすい。
金属箔14xは好適には銅により形成され、第2層領域12bに当接している。金属箔14xは、第2層領域12bがプライマーとして機能することにより、好適に積層板1xに密着している。
(配線基板の各部の構成および材料)
スルーホールは、積層板1yを厚み方向に貫通し、例えば直径が0.1mm以上1mm以下の円柱状である。スルーホールの内部には、積層板1yの上下の導電層14を電気的に接続するスルーホール導体8がスルーホールの内壁に沿って筒状に形成されている。このスルーホール導体8としては、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロム等の導電材料により形成することができ、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
筒状に形成されたスルーホール導体8の中空部には、絶縁体9が柱状に形成されている。絶縁体9は、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂又はビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料により形成することができる。
配線基板3の配線層6に含まれる第4樹脂層10d、第2無機絶縁層11bおよび第3樹脂層10cの構成は、積層板1yに含まれる第1樹脂層10a(第1層領域12a)、第1無機絶縁層11aおよび第3樹脂層10c(第2層領域12b)の構成と同様であり、これらと同様の作用を奏する。ただし、第4樹脂層10dは、積層板1yに含まれる第1層領域12aとは異なり、配線層6に含まれる導電層14が埋め込まれる。
ただし、これらの各層の具体的な材料および厚みは、コア基板(積層板1y)と配線層6との役割の相違に基づいて互いに異なっていてもよい。
例えば、コア基板においては、第1無機絶縁層11aによる低熱膨張率かつ高剛性の効果がより奏されるように、配線層6よりも、第1層領域12aの厚みに対する第1無機絶縁層11aの厚みが比較的大きく設定されてもよい。
また、例えば、コア基板では、第1無機絶縁層11aを第1層領域12aよりも厚くして強度を高め、配線層6では、第1無機絶縁層11aを第1層領域12aよりも薄くして、グランドと信号線との距離を小さくしてインピーダンスを調節してもよい。
また、例えば、コア基板においては、第1無機絶縁層11aを厚くする、もしくはコストを低減する等の目的のため、第2無機絶縁粒子13bの粒径を配線層6よりも大きくしたり、第1無機絶縁粒子13aおよび第2無機絶縁粒子13bの全体に対する第2無機絶縁粒子13bの体積%を大きくしたりしてもよい。
ビア導体15は、厚み方向に互いに離間した導電層14同士を相互に接続するものであり、コア基板(積層板1y)に向って幅狭となる柱状に形成されている。ビア導体15は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロム等の導電材料により形成することができ、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
導電層14は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロム等の導電材料により形成することができる。また、導電層14は、その厚みが3μm以上20μm以下に設定され、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
(第1及び第2無機絶縁粒子)
熱応力や機械的応力等の応力が積層板1yに印加された場合、第1無機絶縁粒子13a同士が剥離することにより、第1無機絶縁層11aのクラックが生じることがある。しかし、第1無機絶縁層11aは、第1無機絶縁粒子13aよりも粒径の大きい第2無機絶縁粒子13bを含む。従って、第1無機絶縁層11aにクラックが生じても、クラックが第2無機絶縁粒子13bに達した際に、粒径の大きい第2無機絶縁粒子13bによってクラックの伸長を阻止したり、あるいは、第2無機絶縁粒子の表面に沿ってクラックを迂回させたりすることができる。クラックの伸長を阻止したり、クラックを迂回させたりするには、第2無機絶縁粒子の粒径が0.5μm以上である場合が特に好ましい。
また、第2無機絶縁粒子13bは粒径が大きいため、第1無機絶縁層11aを第2無機絶縁粒子のみで構成すると、1つの第2無機絶縁粒子の周囲に多くの他の第2無機絶縁粒子を配置することが困難となり、結果的に、第2無機絶縁粒子13b同士の接触面積が小さくなり、第2無機絶縁粒子13b同士の接着強度は小さくなりやすい。これに対して、配線基板3においては、第1無機絶縁層11aは、粒径の大きな第2無機絶縁粒子13bのみならず粒径の小さい第1無機絶縁粒子13aを含み、第2無機絶縁粒子同士は、該第2無機絶縁粒子の周囲に配置された複数の第1無機絶縁粒子13aを介して接合している。それ故、第2無機絶縁粒子と第1無機絶縁粒子との接触面積を大きくすることができ、第2無機絶縁粒子13b同士の剥離を低減することができる。かかる効果は、第1無機絶縁粒子の粒径が110nm以下に設定されている場合に特に顕著となる。
一方、第1無機絶縁粒子13aは、粒径が3nm以上110nm以下と微小に設定されている。このように、第1無機絶縁粒子13aの粒径が非常に小さいため、第1無機絶縁粒子13a同士が結晶化開始温度未満にて互いに強固に結合する。その結果、第1及び第2無機絶縁粒子自体がアモルファス状態のままで該粒子同士が結合し、第1無機絶縁層11aがアモルファス状態となる。それ故、上述した如く、第1無機絶縁層11aの熱膨張率の異方性が小さくなる。なお、第1無機絶縁粒子13aの粒径が3nm以上110nm以下と微小に設定されていると、第1無機絶縁粒子13aの原子、特に表面の原子が活発に運動するため、結晶化開始温度未満といった低温下でも第1無機絶縁粒子13a同士が強固に結合すると推測される。なお、結晶化開始温度は、非晶質の無機絶縁材料が結晶化を開始する温度、すなわち、結晶相領域の体積が増加する温度である。
また、第2無機絶縁粒子13b同士が互いに離間するように、個々の第2無機絶縁粒子13bは複数の第1無機絶縁粒子13aによって被覆されている。その結果、接着強度が低く且つ剥離しやすい第2無機絶縁粒子13b同士の接触が防止され、第2無機絶縁粒子13bの剥離を抑制でき、ひいては、第2無機絶縁粒子に起因したクラックの発生及び伸長を低減することができる。
第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bは、同一材料からなることが望ましい。その結果、第1無機絶縁層11aにおいて、第1無機絶縁粒子13aと第2無機絶縁粒子13bとの材料特性の違いに起因したクラックを低減することができる。また、第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bは、第1層領域12aおよび/または第2層領域12bに含まれるフィラーと同一材料からなることが望ましい。その結果、第1樹脂層10a及び第2樹脂層10bの熱膨張率を第1無機絶縁層11aの熱膨張率により近づけることができる。
第1無機絶縁粒子13aは、球状であることが望ましい。その結果、第2無機絶縁粒子13b間の空隙に多くの第1無機絶縁粒子13aを充填しやすくなる上、第1無機絶縁粒子13a間の空隙の体積が低減され、第1無機絶縁層11aの内部構造を緻密にでき、第1無機絶縁層11aの剛性を向上させることができる。
また、第2無機絶縁粒子13bは、曲面状であることが望ましく、さらには球状であることがより望ましい。その結果、第2無機絶縁粒子13bの表面が滑らかになり、該表面における応力が分散され、第2無機絶縁粒子13bの表面を起点とした第1無機絶縁層11aのクラックの発生を低減することができる。
第2無機絶縁粒子13bは、第1無機絶縁粒子13aよりも硬度が高いことが望ましい。この場合、クラックが第2無機絶縁粒子13bに達した際に、該クラックが第2無機絶縁粒子13bの内部へ伸長することを低減し、ひいては第1無機絶縁層11aにおけるクラックの伸長を低減することができる。また、後述するように、第2無機絶縁粒子13bは第1無機絶縁粒子13aよりも硬度を容易に高めることができるため、第1無機絶縁層11aの剛性を容易に高めることができる。なお、硬度は、ナノインデンター装置を用いることにより、測定することができる。
第1ネック構造17aの幅W1は、第2ネック構造17bの幅W2よりも大きいことが好ましい。第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bは、コンクリートに配合されたセメント及び砂利のように作用する。すなわち、第1無機絶縁粒子13aは、セメントと同様に無機絶縁層全体を固める役割を担い、第2無機絶縁粒子13bは、砂利と同様に無機絶縁層全体を強くする役割を担う。従って、第1ネック構造17aの幅が大きくされることにより、第1無機絶縁粒子13aの無機絶縁層全体を固める作用が大きくなり、全体として好適な無機絶縁層が実現される。
(第1無機絶縁粒子及び第2無機絶縁粒子に取り囲まれた空隙)
第1無機絶縁層11aは、図2Aに示すように、厚み方向又は平面方向に沿った切断した断面において、第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bに取り囲まれた複数の空隙Vを有し、該空隙Vには、第1層領域12aの一部が充填されている(第1充填部19a)。その結果、配線基板3に応力が印加され、第1無機絶縁層11aにクラックが生じたとしても、該クラックの伸長を第1充填部19aによって阻止したり、迂回させたりすることができる。なお、各空隙Vは、複数の第1無機絶縁粒子13aおよび複数の第2無機絶縁粒子に取り囲まれている。すなわち、各空隙Vは、その内周面が複数の第1無機絶縁粒子13aおよび複数の第2無機絶縁粒子13bにより構成されている。
また、第1充填部19aは、無機絶縁材料と比較してヤング率の低い樹脂材料を第1無機絶縁層11aよりも多く含むことから、配線基板3に応力が印加された場合、第1無機絶縁層11a内の空隙に配された第1充填部19aにより第1無機絶縁層11aに印加される応力を緩和することができ、該応力に起因した第1無機絶縁層11aにおけるクラックの発生を低減することができる。この空隙Vは、前記断面における第1無機絶縁層11aの厚み方向の高さが0.3μm以上5μm以下に設定されていることが望ましく、前記断面における第1無機絶縁層11aの平面方向の幅が0.3μm以上5μm以下に設定されていることが望ましい。
空隙Vは、厚み方向又は平面方向に沿った切断した断面においては、第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bに取り囲まれているが、3次元形状においては、一部が第1無機絶縁層11aの平面方向に沿って伸長するとともに、他の一部が第1無機絶縁層11aの厚み方向に沿って伸長することによって、第1無機絶縁層11aの第1層領域12aに接する一主面に形成された開口に接続されて開気孔となっている。それ故、第1層領域12aの一部は、開口を介して空隙Vに充填されている。この開口は、平面方向に沿った幅が1μm以上20μm以下に設定されていることが望ましい。
なお、開口に第1層領域12aの一部を充填するようにしたが、第1層領域12aに代えて第2層領域12bの一部を充填するようにしても構わないし、第1層領域12aおよび第2層領域12bの双方の一部を充填するようにしても構わない。後者の場合、第2層領域12bよりも第1層領域12aの方が多く開口に充填されるのが好ましい。
また、第1充填部19aは、空隙Vに完全に充填されている必要はなく、空隙Vに樹脂層の一部が配置されていれば良い。
第1無機絶縁層11aは、第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bが互いに接着することにより、3次元網目状構造を有することが望ましい。その結果、第1充填部19aによる第1無機絶縁層11aのクラック低減効果を高めることができる。
(第1無機絶縁粒子間の間隙)
上述のように、第1無機絶縁層11aにおいて、複数の第1無機絶縁粒子13aは、第1ネック構造17aにおいて互いに結合されている。ただし、第1無機絶縁層11aは、焼結された無機絶縁層のように粒子同士が一体化しておらず、第1ネック構造17aが維持されており、複数の第1無機絶縁粒子13aは、その間に第1間隙G1が形成された骨格構造を構成している。そして、第1間隙G1には、第1層領域12aの樹脂が充填されている(第2充填部19b)。
従って、第1無機絶縁層11aは、無機絶縁材料の骨格構造により低熱膨張率が実現されるとともに、樹脂からなる第2充填部19bによって骨格構造が補強されることにより高強度が実現される。
また、第2無機絶縁粒子13bと、その周囲の複数の第1無機絶縁粒子13aとの間においても第2間隙G2が形成されており、第2間隙G2にも第1層領域12aの樹脂が充填されている(第3充填部19c)。第3充填部19cも第2充填部19bと同様に、第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bによる骨格構造の補強に寄与している。
第1間隙G1及び第2間隙G2は、第1無機絶縁粒子13aが緻密化されないことによって形成されており、その大きさは、概略(オーダー的に)、第1無機絶縁粒子13aの大きさ程度である。従って、第1無機絶縁粒子13aの粒径が3nm以上110nm以下であることが好ましいことに対応して、第1間隙G1及び第2間隙G2の、第1無機絶縁層11aの所定断面における径は、3nnm以上110nm以下であることが好ましい。また、第1無機絶縁層11aの所定断面において、第1間隙G1もしくは第2間隙G2の面積は、例えば第1無機絶縁粒子13aの面積の2倍以下である。第1間隙G1及び第2間隙G2がこのような径および/または面積とされることにより、複数の第1無機絶縁粒子13aの緻密性を維持しつつ、樹脂を第1間隙G1および第2間隙G2に充填することができる。
なお、後述するように、空隙Vは、第2無機絶縁粒子13bの体積%の影響を受ける。そして、空隙Vは、概略(オーダー的に)、第2無機絶縁粒子13b間の間隔程度の大きさとなる。従って、第1間隙G1及び第2間隙G2の径は、空隙Vの径に比較して、第2無機絶縁粒子13bの大きさと第1無機絶縁粒子13aの大きさとの差程度の差で小さい。例えば、第1無機絶縁粒子13aの粒径が3nm以上110nm以下、第2無機絶縁粒子13bの粒径が0.5μm以上5μm以下であるとすれば、第1間隙G1及び第2間隙G2の径は、空隙Vの径に対して0.0006〜0.22倍(3nm/5μm〜110nm/0.5μm)であり、より好ましくは、空隙Vの径に対して0.005〜0.1倍である。なお、第1無機絶縁層11aの所定断面において、空隙Vの面積は、例えば第2無機絶縁粒子13bの面積の0.5倍以上である。
また、第1無機絶縁層11aの所定断面において、空隙V及び第2間隙G2が第2無機絶縁粒子13bに接する部分があるのに対し、第1間隙G1は、第1無機絶縁粒子13aに取り囲まれ、第1無機絶縁粒子13aのみに接している。この特徴も、第1間隙G1と空隙Vとを区別するのに役立つ。
第1間隙G1は、空隙Vと同様に、所定断面においては、第1無機絶縁粒子13aに取り囲まれているが、3次元形状においては、一部が第1無機絶縁層11aの平面方向に沿って伸長するとともに、他の一部が第1無機絶縁層11aの厚み方向に沿って伸長することによって、第1無機絶縁層11aの第1層領域12aに接する一主面に形成された不図示の開口に接続されて開気孔となっている。それ故、第1層領域12aの一部は、該開口を介して第1間隙G1に充填されている。なお、第2間隙G2も、直接又は第1間隙G1を介して、第1無機絶縁層11aの第1層領域12aに接する一主面に形成された不図示の開口に接続されている。
また、第1間隙G1および第2間隙G2は、第1無機絶縁層11aの主面に形成された開口に接続されているのと同様に、空隙V(第1充填部19a)に通じている。従って、第1間隙G1および第2間隙G2には、空隙Vを介して第1層領域12aの樹脂が供給される。すなわち、複数の空隙Vが分布していることにより、第1間隙G1および第2間隙G2への樹脂の充填が促進される。
なお、第1間隙G1及び第2間隙G2に第1層領域12aの一部を充填するようにしたが、第1層領域12aに代えて第2層領域12bの一部を充填するようにしても構わないし、第1層領域12aおよび第2層領域12bの双方の一部を充填するようにしても構わない。後者の場合、第2層領域12bよりも第1層領域12aの方が多く第1間隙G1及び第2間隙G2に充填されるのが好ましい。
また、第2充填部19bは、第1間隙G1に完全に充填されている必要はなく、第1間隙G1に樹脂層の一部が配置されていれば良い。第3充填部19cについても同様である。
第1間隙G1及び第2間隙G2は、比較的小さいことから、第2充填部19b及び第3充填部19cは、第1層領域12aに含まれる第1フィラー粒子を全く若しくは殆ど含まない。例えば、第1フィラー粒子の粒径が0.5μm以上5.0μm以下であれば、第2充填部19b及び第3充填部19cは、第1フィラー粒子を含まない。当該特徴も、第1間隙G1及び第2間隙G2と空隙Vとを区別することに役立つ。
(スルーホールの形状)
図3Aに示すように、スルーホールの断面形状は、第1無機絶縁層11aにおいては導電層14側が狭くなるテーパ状とされるとともに、第3樹脂層10c(第2層領域12b)においては該層の中央側が膨らむ形状とされている。なお、第1無機絶縁層11aにおけるテーパは、導電層14側が広くなるものであってもよい。
また、図3Bに示すように、スルーホールは、積層板1yの内部側の第1無機絶縁層11aにおいてもテーパ状に形成されている。テーパは、第1無機絶縁層11aにおいて、第1層領域12a側が広くなるものであってもよいし、第2層領域12b側が広くなるものであってもよい。第2樹脂層10bも、第3樹脂層10cと同様に、該層の中央側が膨らむ形状となっている。なお、当該形状は、第1層領域12aおよび第2層領域12bの区別なく膨らんでいる。
特に図示しないが、第1樹脂層10aにおいても、第2樹脂層10bおよび第3樹脂層10cと同様に、中央側が膨らむ形状となる。
スルーホールがこのような形状とされることにより、当該スルーホールの内周面に形成されたスルーホール導体8(場合によってはさらに絶縁体9)も、テーパ状もしくは中央側が膨らむ形状とされる。従って、スルーホール導体8が積層板1yから抜けることが抑制される。
<金属箔付き積層板および配線基板の製造方法>
次に、上述した金属箔付き積層板1および配線基板2および3の製造方法を、図4及び図5に基づいて説明する。
(1)第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bを含む固形分と、溶剤とを有する無機絶縁ゾル11axを準備する。
無機絶縁ゾル11axは、例えば、固形分を10%体積以上50体積%以下含み、溶剤を50%体積以上90体積%以下含む。これにより、無機絶縁ゾル11axの粘度を低く保持しつつ、無機絶縁ゾル11axより形成される無機絶縁層の生産性を高く維持できる。
無機絶縁ゾル11axの固形分は、例えば、第1無機絶縁粒子13aを20体積%以上40体積%以下含み、第2無機絶縁粒子13bを60体積%以上80体積%以下含む。これにより、後述する(3)の工程にて第1無機絶縁層11aにおけるクラックの発生を効果的に低減できる。
なお、第1無機絶縁粒子13aは、酸化ケイ素から成る場合、例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)等のケイ酸化合物を精製し、化学的に酸化ケイ素を析出させることにより、作製することができる。この場合、低温条件下で第1無機絶縁粒子13aを作製することができるため、アモルファス状態である第1無機絶縁粒子13aを作製することができる。また、第1無機絶縁粒子13aの粒径は、酸化ケイ素の析出時間を調整することによって調整され、具体的には、析出時間を長くするほど第1無機絶縁粒子13aの粒径は大きくなる。
一方、第2無機絶縁粒子13bは、酸化ケイ素から成る場合、例えばケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)等のケイ酸化合物を精製し、化学的に酸化ケイ素を析出させた溶液を火炎中に噴霧し、凝集物の形成を低減しつつ800℃以上1500℃以下に加熱することにより、作製することができる。それ故、第2無機絶縁粒子13bは、第1無機絶縁粒子13aと比較して粒径が大きいことから、高温加熱時における凝集体の形成を低減しやすく、高温加熱で容易に作製することができ、ひいては硬度を容易に高めることができる。
また、第2無機絶縁粒子13bを作製する際の加熱時間は、1秒以上180秒以下に設定されていることが望ましい。その結果、該加熱時間を短縮することにより、800℃以上1500℃以下に加熱した場合においても、第2無機絶縁粒子13bの結晶化を抑制し、アモルファス状態を維持することができる。
一方、無機絶縁ゾル11axに含まれる溶剤は、例えばメタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、及び/またはこれらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶剤を使用することができる。なかでも、メタノール、イソプロパノール又はプロピレングリコールモノメチルエーテルを含んだ有機溶剤が望ましい。その結果、無機絶縁ゾル11axを均一に塗布することができる上、後述する(3)の工程にて、溶剤を効率良く蒸発させることができる。
(2)次に、図4A及び図4Bに示すように、第2層領域12bと金属箔14xとを有する樹脂付き金属箔を準備し、第2層領域12bの一主面に無機絶縁ゾル11axを塗布して無機絶縁ゾル11axを層状に形成する。
樹脂付き金属箔は、金属箔14xにバーコーター、ダイコーター、カーテンコーターなどを用いて樹脂ワニスを塗布し、乾燥することにより、形成することができる。本工程にて形成された第2層領域12bは、例えばBステージ又はCステージである。
無機絶縁ゾル11axの塗布は、例えば、ディスペンサー、バーコーター、ダイコーター又はスクリーン印刷を用いて行うことができる。このとき、上述した如く、無機絶縁ゾル11axの固形分が50体積%以下に設定されていることから、無機絶縁ゾル11axの粘度が低く設定され、塗布された無機絶縁ゾル11axの平坦性を高くすることができる。
また、第1無機絶縁粒子13aの粒径は、上述したように、3nm以上に設定されているため、これによっても無機絶縁ゾル11axの粘度が良好に低減され、塗布された無機絶縁ゾル11axの平坦性を向上させることができる。
(3)続いて、無機絶縁ゾル11axを乾燥させて溶剤を蒸発させる。
無機絶縁ゾル11axの乾燥は、例えば加熱及び風乾により行われる。乾燥温度が、例えば、20℃以上溶剤の沸点(二種類以上の溶剤を混合している場合には、最も沸点の低い溶剤の沸点)未満に設定され、乾燥時間が、例えば20秒以上30分以下に設定される。その結果、溶剤の沸騰が低減され、沸騰の際に生じる気泡の圧力によって第1及び第2無機絶縁粒子13a、13bが押し出されることが抑制され、該粒子の分布をより均一にすることが可能となる。
乾燥中、第1及び第2無機絶縁粒子13a、13bの接触部(第1ネック構造17a、第2ネック構造17b)が太くなる。ただし、高温に加熱しないため、ネック構造を維持することができ、第1無機絶縁粒子13aによる骨格構造が形成される(第1間隙G1および第2間隙G2が形成される。)。また、第1無機絶縁粒子13aは、第2無機絶縁粒子13bに比較して原子の運動が活発なので、第1無機絶縁粒子13a同士の第1ネック構造17aの方が第1無機絶縁粒子13aと第2無機絶縁粒子13bとの第2ネック構造17bよりも太くなる。
溶剤の蒸発に伴って無機絶縁ゾル11axが収縮するが、かかる溶剤は第1及び第2無機絶縁粒子13a、13bの間隙に含まれており、第1及び第2無機絶縁粒子13a、13b自体には含まれていない。このため、無機絶縁ゾル11axが粒径の大きい第2無機絶縁粒子13bを含んでいると、その分、溶剤が充填される領域が少なくなり、無機絶縁ゾル11axの溶剤の蒸発時、無機絶縁ゾル11axの収縮量が小さくなる。すなわち、第2無機絶縁粒子13bによって無機絶縁ゾル11axの収縮が規制されることとなる。その結果、無機絶縁ゾル11axの収縮に起因するクラックの発生を低減することができる。また、仮にクラックが生じても、粒径の大きい第2無機絶縁粒子13bによって該クラックの伸長を妨げることができる。
粒径が0.5μm以上の第2無機絶縁粒子13bを無機絶縁ゾル11axの固形分に60体積%以上含ませると、第2無機絶縁粒子13b同士が互いに接近し、この第2無機絶縁粒子13bに取り囲まれた領域が数多く形成される。この状態で第2無機絶縁粒子13b間の間隙に充填された溶剤を蒸発させると、該間隙内で第1無機絶縁粒子13aの収縮が起きて、空隙Vが形成される。その結果、第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bに取り囲まれた空隙Vを形成することができる。
また、粒径が0.5μm以上の第2無機絶縁粒子13bを60体積%以上含ませると、第2無機絶縁粒子13b同士が近接しやすい。一方、溶剤は第2無機絶縁粒子13b同士の対向領域に残留しやすく、該残留した溶剤中には多くの第1無機絶縁粒子13aが含まれている。そして、残留した溶剤を蒸発させると、溶剤の蒸発に伴って溶剤中に含まれていた第1無機絶縁粒子13aが第2無機絶縁粒子の対向領域で凝集する。その結果、第2無機絶縁粒子13b同士の間に第1無機絶縁粒子13aを介在させることができる。第1無機絶縁粒子13aを良好に第2無機絶縁粒子13b同士の間に介在させるには、無機絶縁ゾル11axの固形分は、第1無機絶縁粒子13aを20体積%以上含むことが望ましい。
なお、第1無機絶縁粒子13a若しくは第2無機絶縁粒子13bの粒径若しくは含有量、無機絶縁ゾル11axの溶剤の種類若しくは量、乾燥時間、乾燥温度、乾燥時の風量若しくは風速、又は、乾燥後の加熱温度若しくは加熱時間を適宜調整することにより、空隙Vを所望の形状に形成することができる。
(4)残存した無機絶縁ゾル11axの固形分を加熱し、無機絶縁ゾル11axから第1無機絶縁層11aを形成する。その結果、図4Cに示すような金属箔14x、第3樹脂層10c及び第1無機絶縁層11aを有する第1積層シート16aが得られる。
ここで、本実施形態の無機絶縁ゾル11axは、粒径が110nm以下に設定された第1無機絶縁粒子13aを有している。その結果、無機絶縁ゾル11axの加熱温度が比較的低温、例えば、第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bの結晶化開始温度未満と低温であっても、第1無機絶縁粒子13a同士を強固に結合させることができる。なお、第1無機絶縁粒子13aとして酸化ケイ素により形成されたものを用いる場合、第1無機絶縁粒子13a同士を強固に結合させることができる温度は、例えば、第1無機絶縁粒子13aの粒径を110nm以下に設定した場合は250℃程度であり、前記粒径を15nm以下に設定した場合は150℃程度である。また、第1及び第2無機絶縁粒子13a、13bが酸化ケイ素から成る場合、その結晶化開始温度は1300℃程度である。
また、本実施形態においては、無機絶縁ゾル11axの加熱温度を、第2層領域12bの熱分解開始温度未満に設定している。その結果、第2層領域12bの特性低下を抑制することができる。なお、第2層領域12bがエポキシ樹脂から成る場合、その熱分解開始温度は280℃程度である。また、熱分解開始温度は、ISO11358:1997に準ずる熱重量測定において、樹脂の質量が5%減少する温度である。
無機絶縁ゾル11axの加熱温度は、残存した溶剤を蒸発させるため、溶剤の沸点以上で行うことが望ましい。また、前記加熱温度は、第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bの結晶化開始温度未満に設定されていることが望ましい。この場合、第1無機絶縁粒子13a及び第2無機絶縁粒子13bの結晶化を低減し、アモルファス状態の割合を高めることができる。その結果、結晶化した第1無機絶縁層11aが相転移によって収縮することを低減し、第1無機絶縁層11aにおけるクラックの発生を低減できる。
なお、無機絶縁ゾル11axの加熱は、温度が例えば100℃以上220℃未満に設定され、時間が例えば0.5時間以上24時間以下に設定されており、例えば大気雰囲気中で行われる。なお、加熱温度を150℃以上にする場合、金属箔14xの酸化を抑制するため、無機絶縁ゾル11axの加熱は、真空、アルゴン等の不活性雰囲気又は窒素雰囲気にて行われることが望ましい。
(5)図4Dに示すように、未硬化の熱硬化性樹脂からなる第1樹脂前駆体シート12axを準備し、第1積層部4aの第1樹脂前駆体シート12axの上下面に第1積層シート16aを積層する。第1積層シート16aは、金属箔14xと第1樹脂前駆体シート12axとの間に第1無機絶縁層11aが介在されるように積層される。
(6)次に、前記積層体を上下方向に加熱加圧することにより、図4Eに示すように、第1樹脂前駆体シート12axを硬化させて第1層領域12aを形成する。
前記積層体の加熱温度は、第1樹脂前駆体シート12axの硬化開始温度以上熱分解温度未満に設定されている。具体的には、第1樹脂前駆体シート12axがエポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂又はポリフェニレンエーテル樹脂からなる場合、前記加熱温度が例えば170℃以上230℃以下に設定される。また、前記積層体の圧力は、例えば2MPa以上3MPa以下に設定され、加熱時間及び加圧時間は、例えば0.5時間以上2時間以下に設定されている。なお、硬化開始温度は、樹脂が、ISO472:1999に準ずるC‐ステージの状態となる温度である。
硬化のための加熱により第1樹脂前駆体シート12axは一時液状化し、第1無機絶縁層11aに浸透する。これにより、空隙Vに樹脂が充填されて第1充填部19aが形成される。また、第1間隙G1及び第2間隙G2に樹脂が充填されて第2充填部19b及び第3充填部19cが形成される。
なお、浸透は毛細管力によって起きると考えられる。毛細管力は隙間径に反比例して大きくなる。従って、第1無機絶縁粒子13aの粒径が小さいことにより、第1間隙G1および第2間隙G2の隙間径は狭いが、その一方で毛細管力が大きくなることから、樹脂は第1無機絶縁層11aに十分に浸透する。
(7)図5Aに示すように、例えば硫酸および過酸化水素水の混合液、塩化第二鉄溶液または塩化第二銅溶液等の薬液を用いたエッチング法により、金属箔14xを除去する。これにより、第1積層部4aが作製される。
(8)図5Bに示すように、第1樹脂前駆体シート12axと、第1積層シート16aとを新たに2組準備した後、第1積層部4aの両面に第1樹脂前駆体シート12axを介して第1積層シート16aを積層する。
そして、積層体を上下方向に加熱加圧することにより、図1Aに示した金属箔付き積層板1が作製される。なお、加熱温度等の条件は、第1積層部4aの作製時と同様である。
(9)金属箔付き積層板1から配線基板2または3を作製するときは、図5Cに示すように、金属箔付き積層板1を厚み方向に貫通するスルーホールを形成する。なお、スルーホールは、積層板1yを貫通していればよいから、一対の金属箔14xのうち一方を貫通していなくてもよい。
スルーホールの形成は、例えば、硬度の高い第1無機絶縁層11aの加工を容易に行うために、レーザにより行われる。なお、第1無機絶縁層11aの孔開け加工はレーザにより行い、第1層領域12aの孔開け加工はドリルで行うようにしてもよい。第1無機絶縁層11aにおける孔開け加工をレーザによって行うと、光の照射時間の相違や深部における光の散乱等によって、スルーホールは深部側が狭くなるテーパ状に形成される。また、スルーホールは、樹脂層(10a、10bまたは10c)においても同様に深部側が細くなるように形成されるが、第1無機絶縁層11a側においては樹脂層よりも加工が進みにくい第1無機絶縁層11aが樹脂層の加工を抑制するマスクとして機能することによって、樹脂層全体においては、中央側が広がる形状となる。
その後、配線基板2の作製については、一般的な配線基板の作製と同様に行われる。すなわち、サブトラクティブ法、フルアディティブ法もしくはセミアディティブ法等によってスルーホール導体8および導電層14が形成され、また、絶縁体9となる樹脂が充填される。
配線基板3の作製においては、配線基板2に対して、第1積層シート16aと同様の第2積層シートを、第1樹脂前駆体シート12axと同様の第2樹脂前駆体シートを介して積層し、(6)の工程等と同様の加熱加圧工程を行い、(7)の工程と同様に金属箔14xを除去する。その後は、一般的な配線基板の作製と同様に、サブトラクティブ法、フルアディティブ法もしくはセミアディティブ法等によってビア導体15や導電層14が形成される。
なお、配線基板2または3の導電層14の形成においては、金属箔14xを剥離せずに、金属箔14xをパターニングすることによって導電層14を形成してもよい。
(第2の実施形態)
図6Aに示す金属箔付き積層板101の積層板101xは、複数(本実施形態では3つ)の第1積層部4aを、その間に第1層領域12aを介在させて積層した構成となっている。
なお、互いに重ねられた第2層領域12b、第1層領域12aおよび第2層領域12bを第5樹脂層10eとして捉えると、積層板101xは、複数の第1無機絶縁層11aと、隣接した複数の第1無機絶縁層11a同士の間に配されて隣接する第1無機絶縁層11aに当接した樹脂層(10a、10bおよび10e)とを有するとともに、第1無機絶縁層11aおよび樹脂層(10a、10bもしくは10e)が交互に積層されている。
第1実施形態と同様に、各第1無機絶縁層11aにおいて、一方の主面には第1層領域12aが当接し、他方の主面には第2層領域12bが当接している。また、第2樹脂層10b又は第5樹脂層10eの第2層領域12bは、第1無機絶縁層11aと第1層領域12aとの間に介されている。
なお、特に図示しないが、金属箔付き積層板101も、第1実施形態の金属箔付き積層板1と同様に、スルーホールが形成され、スルーホール導体8、絶縁体9および導電層14(配線層6)が設けられることにより、両面式の配線基板もしくはビルドアップ式の配線基板等の配線基板に資される。
金属箔付き積層板101の製造方法においては、まず、第1の実施形態の(1)〜(6)の工程と同様の工程によって、第1積層部4aの両面に金属箔14xが重ねられた積層体(図4E)を複数(3つ)作製する。
次に、図6Bに示すように、該複数の積層体のうち、一部(1つ)の積層体については両面の金属箔14xを除去し、他(2つ)の積層体については片面の金属箔14xのみを除去する。そして、(8)の工程と同様に、第1樹脂前駆体シート12axを介してこれらを積層し、加熱加圧することによって、金属箔付き積層板101が作製される。
このように金属箔付き積層板101は、複数の第1積層部4aを一度に積層できることから、プレス回数を減らしつつ厚い積層板を作製することができる。また、各層の材料が同じ回数の熱履歴を受けることから、積層板の反りや変形が少なくなる。
本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、改良、組合せ等が可能である。
第1実施形態においては、第1積層部(4a)が一つのみであったが、2つ以上積層されてもよい。第2実施形態においては、第1積層部(4a)が3であったが、2つでもよいし、4つ以上でもよい。金属箔付き積層板の一方の金属箔側は第1実施形態の構成とされ、他方の金属箔側は第2実施形態の構成とされてもよい。
また、上述した本発明の実施形態においては、無機絶縁層に第1無機絶縁粒子及び第2無機絶縁粒子を含んでいたが、無機絶縁層には適宜な粒径の無機絶縁粒子が含まれていればよく、第1無機絶縁粒子及び第2無機絶縁粒子の一方のみが無機絶縁層に含まれていても構わないし、第1無機絶縁粒子及び第2無機絶縁粒子に代えて、もしくは加えて、これらとは粒径の異なる他の粒径の無機絶縁粒子が無機絶縁層に含まれていても構わない。
また、上述した本発明の実施形態においては、積層板や配線基板が第1層領域および第2層領域を備えていたが、1種の層のみを備えていても構わないし、3種以上の層を備えていても構わない。例えば、積層板は、第2層領域を有さず、第1層領域のみを有していてもよい。この場合、第1無機絶縁層(第2無機絶縁層)上に導電層が形成される。また、工程(2)にて金属箔上に無機絶縁ゾルが塗布される。
また、上述した本発明の実施形態においては、無機絶縁層は、第1無機絶縁粒子及び第2無機絶縁粒子に取り囲まれた空隙及び当該空隙に充填された樹脂を有したが、これらは設けられなくてもよい。この場合、無機絶縁層に含まれる第1無機絶縁粒子の体積%の上限値は実施形態よりも小さくてよく、無機絶縁層に含まれる第2無機絶縁粒子の体積%の下限値は実施形態よりも大きくてよい。例えば、無機絶縁層は、第1無機絶縁粒子を20体積%以上90体積%以下含み、第2無機絶縁粒子を10体積%以上80体積%以下含んでよい。同様に、第1無機絶縁粒子間の間隙には、樹脂が充填されていなくても構わない。
また、上述した本発明の実施形態においては、工程(3)における溶剤の蒸発と工程(4)における溶剤の加熱を別々に行っていたが、工程(3)と工程(4)を同時に行っても構わない。
また、上述した本発明の実施形態においては、(5)の工程にて未硬化の第1樹脂前駆体シートを用いたが、未硬化で液状の第1樹脂層前駆体を第1無機絶縁層に塗布しても構わない。
実施形態では、金属箔に対して無機絶縁ゾルを塗布して積層シートを作製したが、金属箔に代えてPETフィルムに無機絶縁ゾルを塗布して積層シートを作製してもよい。
また、実施形態では、第1積層部の作製に利用された金属箔を除去したが、除去する代わりにパターニングして配線を形成してもよい。