JP6402439B2 - 加飾シート及び加飾樹脂成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、金属調の意匠を有する加飾シートに関する。さらに、本発明は、当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品に関する。
従来、車両内外装部品、建材内装材、家電筐体等に金属調の意匠を付与するために、樹脂の表面に金属めっき、金属塗装などを施した部材が用いられている。しかしながら、金属めっき、金属塗装などを行う場合、金属を含む廃水の処理、溶媒蒸気に対する対策などを行う必要がある。また、一般に、これらの部材の歩留まりは良くない。
そこで、近年、これらの部材として、金属調を有する加飾シートを樹脂成形品の表面に積層させた加飾樹脂成形品が使用されている。加飾樹脂成形品の製造には、予め意匠が付与された加飾シートを、射出成形によって樹脂と一体化させる成形法などが用いられている。
加飾樹脂成形品には、三次元曲面等の複雑な表面形状を有するものがある。このため、加飾シートには、複雑な表面形状を有する加飾樹脂成形品の形状に十分に追従し得る三次元成形性が求められる。特に、金属調を有する加飾シートにおいては、樹脂により形成された樹脂層(例えば基材層、接着層など)と金属により形成された金属薄膜層との密着性の低さが問題となりやすい。樹脂層と金属薄膜層との密着性が低いことにより、加飾シートの成形時などにおいて、樹脂層と金属薄膜層との間に剥がれ、浮きなどが生じる場合がある。
例えば、特許文献1には、金属蒸着転写材の金属蒸着層と接着印刷層との密着性を高めるために、樹脂により形成された後アンカー層を設けることが開示されている。しかしながら、近年、特に複雑な加飾樹脂成形品の形状に追従できる加飾シートが求められており、このような加飾シートは、例えば樹脂成形品の曲部に対応する部分において、最大延伸倍率が150%以上にまで延伸される場合がある。これは、金属薄膜層を有する加飾シートの一部が2.5倍以上に引き延ばされることを意味し、非常に厳しい成形条件である。このため、金属薄膜層を有する従来の加飾シートでは、このような複雑な加飾樹脂成形品の形状に追従することができず、加飾シートの成形時などにおいて、樹脂層と金属薄膜層との間などに剥がれ、浮きなどが生じるという問題がある。
このような状況下、複雑な表面形状を有する加飾樹脂成形品の形状に十分に追従し得る三次元成形性を備えた加飾シートが求められている。
特許3127398号公報
本発明は、複雑な表面形状を有する加飾樹脂成形品の形状に十分に追従し得る、高い三次元成形性を備えた加飾シートを提供することを主な目的とする。
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、基材層と、プライマー層と、金属薄膜層とがこの順に積層された積層体からなる加飾シートにおいて、プライマー層が、ガラス転移点が−30℃〜80℃の樹脂の硬化物を含むことにより、加飾シートに対して、複雑な表面形状を有する加飾樹脂成形品の形状に十分に追従し得る高い三次元成形性を付与できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、基材層と、プライマー層と、金属薄膜層とがこの順に積層された積層体からなり、
前記プライマー層は、ガラス転移点が−30℃〜80℃の樹脂の硬化物を含む、加飾シート。
項2. 曲部を有する樹脂成形品の加飾用途に用いられ、
前記曲部が、前記加飾シートに対して最大延伸倍率150%以上の延伸を必要とする形状である、項1に記載の加飾シート。
項3. 前記ガラス転移点が−30℃〜80℃の樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択された少なくとも1種である、項1または2に記載の加飾シート。
項4. 前記ガラス転移点が−30℃〜80℃の樹脂が、ポリオール樹脂であり、
前記プライマー層が、前記ポリオール樹脂とイソシアネート化合物との硬化物により形成されている、項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
項5. 前記ポリオール樹脂が、ポリエステルポリオールである、項4に記載の加飾シート。
項6. 前記イソシアネート化合物が、脂肪族イソシアネート化合物である、項4または5に記載の加飾シート。
項7. 前記基材層と前記プライマー層との間に接着層を有する、項1〜6のいずれかに記載の加飾シート。
項8. 前記接着層が、塩素系樹脂を含む、項7に記載の加飾シート。
項9. 前記金属薄膜層が、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金からなる群から選択された少なくとも1種の金属により形成されている、項1〜8のいずれかに記載の加飾シート。
項10. 前記金属薄膜層の上に表面保護層がさらに積層されている、項1〜9のいずれかに記載の加飾シート。
項11. 前記金属薄膜層の上に透明フィルム層がさらに積層されている、項1〜10のいずれかに記載の加飾シート。
項12. 前記プライマー層が、着色剤をさらに含む、項1〜11のいずれかに記載の加飾シート。
項13. 少なくとも、成形樹脂層と、基材層と、プライマー層と、金属薄膜層とがこの順に積層された積層体からなり、
前記プライマー層は、ガラス転移点が−30℃〜80℃の樹脂の硬化物を含む、加飾樹脂成形品。
項14. 項1〜12のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
前記真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
前記成形シートを射出成形型に挿入し、前記射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を前記射出成形型内に射出して前記樹脂と前記成形シートとを一体化する一体化工程、
を備える、加飾樹脂成形品の製造方法。
項15. 前記加飾樹脂成形品が曲部を有し、
前記真空成形工程及び前記一体化工程の少なくとも一方の工程において、前記曲部に位置する加飾シートを最大延伸倍率150%以上に延伸する、項14に記載の加飾樹脂成形品の製造方法。
本発明の加飾シートによれば、複雑な表面形状を有する加飾樹脂成形品の形状に十分に追従し得る、高い三次元成形性を備えた加飾シート、及び当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品を提供することができる。
本発明に係る加飾シートの一例の略図的断面図である。 本発明に係る加飾シートの一例の略図的断面図である。 本発明に係る加飾シートの一例の略図的断面図である。 本発明に係る加飾シートの一例の略図的断面図である。 実施例1で得られた加飾シートを用いて製造した加飾樹脂成形品の耐熱試験後の表面写真である。 比較例1で得られた加飾シートを用いて製造した加飾樹脂成形品の耐熱試験後の表面写真である。
1.加飾シート
本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層と、プライマー層と、金属薄膜層とがこの順に積層された積層体からなり、当該プライマー層が、ガラス転移点が−30℃〜80℃の樹脂の硬化物を含むことを特徴とする。本発明の加飾シートにおいては、基材層と金属薄膜層との間に設けられた当該プライマー層が、上記のような特定のガラス転移点を有する樹脂の硬化物を含むことにより、複雑な表面形状を有する加飾樹脂成形品の形状に十分に追従し得る、高い三次元成形性が付与されている。以下、本発明の加飾シートについて詳述する。
加飾シートの積層構造
本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層1と、プライマー層3と、金属薄膜層4とをこの順に有する積層構造を有する。本発明の加飾シートにおいて、基材層1とプライマー層3との間には、これらの層間の密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、接着層2を設けてもよい。また、金属薄膜層4の上には、加飾シートの耐傷付き性、耐候性を高めることなどを目的として、必要に応じて、表面保護層5を設けてもよい。また、表面保護層5の下には、表面保護層5とその下に形成される層との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、第2のプライマー層6を設けてもよい。金属薄膜層4の上には、金属薄膜層4の金属調にさらに光沢性を付与すること等を目的として、必要に応じて、カラークリア層7を設けてもよい。カラークリア層7を設ける場合には、必要に応じて、金属薄膜層5とカラークリア層7との間に第3のプライマー層8を設けてもよい。また、金属薄膜層4の上には、加飾シートの成形性を高めることなどを目的として、必要に応じて、透明フィルム層9などを設けてもよい。さらに、基材層1の下に、第2の接着層10などを設けてもよい。
本発明の加飾シートの積層構造として、基材層/プライマー層/金属薄膜層がこの順に積層された積層構造;接着層/基材層/プライマー層/金属薄膜層がこの順に積層された積層構造;基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層がこの順に積層された積層構造;基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層/表面保護層がこの順に積層された積層構造;基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層/第2のプライマー層/表面保護層がこの順に積層された積層構造;基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層/カラークリア層/第2のプライマー層/表面保護層がこの順に積層された積層構造;基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層/第3のプライマー層/カラークリア層/第2のプライマー層/表面保護層がこの順に積層された積層構造;基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層/透明フィルム層/第3のプライマー層/カラークリア層/第2のプライマー層/表面保護層がこの順に積層された積層構造;基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層/透明フィルム層/第2のプライマー層/表面保護層がこの順に積層された積層構造;基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層/透明フィルム層/表面保護層がこの順に積層された積層構造;基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層/透明フィルム層がこの順に積層された積層構造などが挙げられる。
図1に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層/表面保護層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。図2に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層/第2のプライマー層/表面保護層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。図3に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層/第3のプライマー層/カラークリア層/第2のプライマー層/表面保護層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。図4に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層/透明フィルム層/第3のプライマー層/カラークリア層/第2のプライマー層/表面保護層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。
加飾シートを形成する各層の組成
[基材層1]
基材層1は、本発明の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たす樹脂シート(樹脂フィルム)により形成されている。基材層1に使用される樹脂成分については、特に制限されず、三次元成形性や成形樹脂層との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある);アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)等が挙げられる。これらの中でも、ABS樹脂が三次元成形性の観点から好ましい。基材層1を形成する樹脂成分としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、基材層1は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。なお、基材層1を複層シートとすることで、加飾シートの三次元成形性を高める手法も考えられるが、本発明の加飾シートにおいては、後述する特定のプライマー層3を有するため、基材層1が単層シートであっても、高い三次元成形性を有する。
基材層1は、後述のプライマー層3または接着層2との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。基材層1の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、基材層1の表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材層1を構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
また、基材層1には、着色剤などを配合した着色、色彩を整えるための塗装、デザイン性を付与するための模様の形成などがなされていてもよい。
基材層1の厚さは、特に制限されず、加飾シートの用途等に応じて適宜設定されるが、通常50〜800μm程度、好ましくは100〜600μm程度、さらに好ましくは200〜500μm程度が挙げられる。基材層1の厚さが上記範囲内であると、加飾シートに対してより一層優れた三次元成形性、意匠性などを備えさせることができる。
[接着層2]
接着層2は、基材層1と後述のプライマー層3との密着性を向上させるため、必要に応じて、基材層1と金属薄膜層4との間に設けられる層である。
接着層2を形成する樹脂は、基材層1とプライマー層3との密着性を向上させ得るものであれば特に制限はないが、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル樹脂;ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ABS樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化プロピレン、塩素化ポリプロピレンなどの塩素系樹脂などが挙げられる。接着層2を形成する樹脂としては、基材層1とプライマー層3との密着性を高める観点から、好ましくは、アクリル樹脂、塩素系樹脂が用いられる。塩素系樹脂としては、基材層1とプライマー層3との密着性を高める観点などからは、好ましくは塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が挙げられ、より好ましくは塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。接着層2を形成する樹脂としては、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び「メタクリル」の総称であり、(メタ)の付く他の類似するものも同様の意である。
接着層2を形成する樹脂として、例えば、アクリル樹脂と塩素系樹脂との混合樹脂を用いる場合、基材層1とプライマー層3との密着性を高める観点からは、接着層2を形成する樹脂におけるアクリル樹脂と塩素系樹脂との質量比は、20/80〜80/20程度であることが好ましく、30/70〜70/30程度であることがより好ましい。
塩素系樹脂は高い密着性が得られる点において、接着層2を形成する樹脂として好適であるが、金属薄膜層を構成する金属を酸化して金属薄膜層を退色させてしまうという問題を有する。しかしながら、本発明においては、接着層2と金属薄膜層4との間に後述のプライマー層3が配置されているため、接着層2を形成する樹脂として塩素系樹脂を用いた場合においても、金属薄膜層4の退色が抑制されている。
接着層2が塩素系樹脂を含む場合、塩素系樹脂の酸価は特に限定されないが、基材層1とプライマー層3との密着性をより高める観点からは、1mgKOH/g以上であることが好ましく、4mgKOH/g以上であることがより好ましく、6mgKOH/gを超えることがさらに好ましい。本発明においては、酸化の高い塩素系樹脂、例えば酸化が6mgKOHを超える塩素系樹脂により接着層2を形成した場合にも、上述の通りプライマー層3により金属薄膜層4が保護されているため、金属薄膜層4の退色を抑制しつつ、基材層1と金属薄膜層4とを密着性高く接着させ、加飾シートの三次元成形性も高めることができる。ただし、塩素系樹脂の酸価が大きすぎると、金属薄膜層4の退色が促進される場合があるため、通常は12mgKOH/g以下とすることが好ましい。
接着層2を設ける場合、接着層2の厚みは、特に制限されないが、基材層1と後述のプライマー層3との密着性を高める観点からは、0.6〜3.5μm程度、好ましくは1〜2μm程度とすることができる。
接着層2の形成方法は、特に制限されない。接着層2は、例えば、基材層1または後述のプライマー層3のいずれか一方の表面上に上記の樹脂を塗布し、ヒートシールやドライラミネート法などにより形成することができる。
[プライマー層3]
プライマー層3は、本発明の加飾シートに高い三次元成形性を付与し、複雑な表面形状を有する加飾樹脂成形品の形状に十分に追従し得る加飾シートとするために設けられている層である。具体的には、プライマー層3は、本発明の加飾シートが曲部を有する樹脂成形品の加飾用途に用いられる場合に、当該曲部が、本発明の加飾シートに対して、例えば最大延伸倍率150%以上、さらには約200%の延伸を必要とする形状であったとしても、このような形状に追従することを可能とするために設けられる。本発明においては、当該プライマー層3は、ガラス転移点(Tg)が−30℃〜80℃の樹脂の硬化物を含むことを特徴としており、このような特徴により、加飾シートに対して上記のような高い三次元成形性が付与されている。なお、上記の最大延伸倍率の上限値は、好ましくは250%程度である。
プライマー層3は、基材層1と金属薄膜層4とを密着させる機能を有する。基材層1とプライマー層3との間に上記の接着層2が設けられている場合は、接着層2が基材層1とプライマー層3とを密着させており、プライマー層3が接着層2と金属薄膜層4とを密着させている。なお、上述の通り、本発明においては、接着層2と金属薄膜層4とが直に接しないようにしてプライマー層3が配置されているため、接着層2と金属薄膜層4とが直に接触することによって生じる金属薄膜層4の退色を効果的に防ぐことができる。
加飾シートの三次元成形性をより高める観点から、プライマー層3は、好ましくはガラス転移点が−20〜70℃の樹脂の硬化物を含み、より好ましくはガラス転移点が−10〜40℃の樹脂の硬化物を含み、さらに好ましくはガラス転移点が0〜20℃の樹脂の硬化物を含む。プライマー層3に含まれる樹脂のガラス転移点が低すぎると、金属薄膜層4との密着性が低下し、加飾シートの成形時の加熱などにより各層間で剥がれ、浮きなどが生じる場合があり、さらに、接着層2に塩素系樹脂が含まれる場合は金属薄膜層4が退色しやすくなる。一方、プライマー層3に含まれる樹脂のガラス転移点が高すぎると、加飾シートの成形時の加熱などによりプライマー層3が熱収縮し、加飾シートの各層間において剥がれ、浮きなどが生じる場合がある。なお、本発明において、ガラス転移点(Tg)は、JIS K7121−1987に基づき、示差走査熱量測定(DSC)によって得られた値である。
硬化してプライマー層3を形成する樹脂のうち、ガラス転移点(Tg)が−30℃〜80℃の樹脂の含有量としては、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90%以上が挙げられる。硬化してプライマー層3を形成する樹脂は、実質的にガラス転移点(Tg)が−30℃〜80℃の樹脂のみであることが特に好ましい。
硬化してプライマー層3を形成する樹脂は、ガラス転移点(Tg)が−30℃〜80℃の範囲にあり、乾燥や化学反応等により硬化して塗膜を形成することができる樹脂であれば、特に制限されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられ、好ましくはポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。プライマー層3に含まれる樹脂としては、加飾シートの三次元成形性をより高めつつ、接着層2に塩素系樹脂が含まれる場合における金属薄膜層4の退色を抑制する観点からは、より好ましくはポリエステル系樹脂が挙げられる。ガラス転移点(Tg)が−30℃〜80℃の樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
上記のポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂としては、特に制限されないが、加飾シートの三次元成形性を高め、さらに接着層2に塩素系樹脂が含まれる場合における金属薄膜層4の退色を抑制する観点からは、例えば、ポリエステル系樹脂であるポリエステルポリオール;ポリウレタン系樹脂である、ポリエステルウレタンポリオール、アクリルウレタンポリオールなどのウレタンポリオール;ポリアクリル系樹脂であるアクリルポリオール;ポリオレフィン系樹脂である、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどのポリオレフィンポリオールが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、低分子ジオールとジカルボン酸とを反応させて得られる縮合ポリエステルジオール、ラクトンの開環重合により得られるポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸類、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸類などが挙げられる。また、ラクトンとしては、例えばε−カプロラクトン等が使用される。ポリエステルポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリブチレンヘキサブチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート、ポリエチレンアゼート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンアゼート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられる。
本発明のプライマー層3は、ガラス転移点(Tg)が−30℃〜80℃の上記の樹脂と硬化剤との硬化物により形成されていることが好ましい。また、本発明のプライマー層3は、ガラス転移点(Tg)が−30℃〜80℃のポリオール樹脂と、イソシアネート化合物などからなる硬化剤とによって得られる、反応硬化型のウレタン樹脂により形成されていることがより好ましい。ガラス転移点(Tg)が−30℃〜80℃のポリオール樹脂としては、特に制限されず、例えば、上記で例示したポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、またはポリオレフィン系樹脂である上記のポリオールなどが挙げられる。
イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート;1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)などの脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。加飾シートの成形時の加熱による層間の剥がれなどを抑制する観点からは、これらの中でも、脂肪族イソシアネートが好ましい。硬化剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
プライマー層3に上記の硬化剤を使用する場合、硬化剤の含有量としては、特に制限されないが、基材層1と金属薄膜層4との密着性を高めつつ、金属薄膜層4の退色を効果的に抑制する観点からは、プライマー層3を形成する上記の樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜15質量部程度、より好ましくは3〜10質量部程度が挙げられる。
プライマー層3を形成するこのような反応硬化型のウレタン樹脂は、1液硬化型及び2液硬化型のいずれでもよく、好ましくは2液硬化型である。
なお、金属薄膜層4の退色をより効果的に抑制する観点からは、プライマー層3は、塩素系樹脂を実質的に含まないことが好ましい。なお、本発明において、プライマー層3が、塩素系樹脂を実質的に含まないとは、例えば、プライマー層3中に含まれる塩素系樹脂の割合が1質量%以下であることをいう。また、プライマー層3を形成する樹脂の酸価は、6mgKOH/g以下であることが好ましい。
加飾シートの色彩を整えたり、意匠性を向上することなどを目的として、プライマー層3は、上記の樹脂に加えて、着色剤をさらに含んでいてもよい。特に、プライマー層3が、例えば金属薄膜層4と同系色の着色剤を含む場合、金属薄膜層4が退色した場合にも、加飾シートが有する金属調の意匠性の低下を効果的に抑制し得る。このような着色剤としては、プライマー層3に配合されることにより、金属薄膜層4と共に金属調を呈することができるものを適宜選択すればよく、例えば、顔料、染料などを使用することができる。着色剤の具体例としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白(酸化チタン)、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが挙げられる。プライマー層3を金属調に着色するには、例えば、酸化チタン等の白色系の着色剤をベースに、カーボンブラック等の墨系の着色剤を併用すればよい。また、金属薄膜層4を形成する金属の種類に応じてさらにその他の系統の着色剤を添加し、より金属薄膜層4に近い色を呈するようにするのも好ましい。例えば、スズやクロムは黄色味を帯びたメタリック調を有するため、これらの金属を用いる場合にはさらに黄色系の着色剤を添加してもよく、インジウムやアルミニウムは青白いメタリック調を有するため、これらの金属を用いる場合にはさらに青色系の着色剤を添加してもよい。プライマー層3と金属薄膜層4との密着性と、金属薄膜層4の耐退色性とを両立させる観点からは、プライマー層3を形成する樹脂と着色剤との質量比(樹脂:着色剤)としては、好ましくは90:10〜60:40程度、より好ましくは80:20〜70:30程度が挙げられる。
プライマー層3の厚みは、特に制限されないが、加飾シートの三次元成形性を高める観点からは、好ましくは0.5〜3μm程度、より好ましくは1〜2μm程度が挙げられる。
プライマー層3は、上記の樹脂を含むプライマー組成物を用いて形成される。具体的には、プライマー層3は、プライマー組成物を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法とは、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層3の塗膜を形成し、その後に加飾シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
[金属薄膜層4]
金属薄膜層4は、プライマー層3の上に設けられ、加飾シートに金属表面と同様な金属調の意匠を付与する層である。
金属薄膜層4を形成する金属としては、加飾シートに金属調の意匠を付与できる金属であれば特に限定されないが、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。これらの中でも、伸展性に富むとの観点から、好ましくはスズ、インジウム、及びクロムが挙げられる。なお、伸展性に富む金属により金属薄膜層4が形成されていることにより、加飾シートを三次元成形した際にクラックが発生しにくいという利点を有する。金属薄膜層4は、1種類の金属により形成されていてもよく、2種類以上の金属により形成されていてもよい。
金属薄膜層4の形成方法は、特に制限されないが、質感が高く高級感のある金属調の意匠を加飾シートに付与する観点から、例えば、上記の金属を用いた、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの蒸着法などが好ましい。特に、真空蒸着法は、低コスト、被蒸着体へのダメージが少ないという点で好ましい。蒸着の条件は、用いる金属の溶融温度又は蒸発温度に応じて適宜設定すればよい。また、上記の蒸着法以外に、上記の金属を含むペーストを塗工する方法、上記の金属を用いためっき法などを用いることもできる。
金属薄膜層4の厚さは、特に限定されないが、加飾シートの意匠性や成形性を高める観点などからは、光学濃度(OD)値が好ましくは0.6〜1.8程度、より好ましくは0.8〜1.4程度が挙げられる。
[表面保護層5]
表面保護層5は、加飾シートの耐傷付き性、耐候性などを高めることを目的として、必要に応じて、加飾シートの最表面に設けられる層である。表面保護層5を形成する素材は、特に限定されないが、通常は樹脂が用いられ、好ましくは電離放射線硬化性樹脂が用いられる。以下、表面保護層5が電離放射線硬化性樹脂により形成される場合について詳述する。
(電離放射線硬化性樹脂)
表面保護層5の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面保護層5の形成において好適に使用される。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能性(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの硬化性樹脂は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(他の添加成分)
表面保護層5を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、表面保護層5に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
(表面保護層5の厚さ)
表面保護層5の硬化後の厚さについては、特に制限されないが、例えば、1〜1000μm、好ましくは1〜50μm、更に好ましくは1〜30μmが挙げられる。このような範囲の厚さを満たすと、耐傷付き性、耐候性等の表面保護層としての十分な物性が得られると共に、電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。更に、表面保護層5の硬化後の厚さが前記範囲を充足することによって、加飾シートの三次元成形性が一層向上するため自動車内装用途等の複雑な三次元形状に対して高い追従性を得ることができる。このように、本発明の加飾シートは表面保護層5の厚さを従来のものより厚くしても、十分に高い三次元成形性が得られることから、特に表面保護層5に高い膜厚を要求される部材、例えば車両外装部品等の加飾シートとしても有用である。
(表面保護層5の形成)
表面保護層5の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、第2のプライマー層6、金属薄膜層4などの表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
本発明においては、調製された塗布液を、前記厚さとなるように、金属薄膜層4、必要に応じて設けられる後述の第2のプライマー層6などの上に、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層5を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、表面保護層5の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと表面保護層5の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、表面保護層5の下に位置する層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による各層の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、表面保護層5の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が挙げられる。
かくして形成された表面保護層5には、各種の添加剤を添加することにより、ハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能等の機能を付与する処理を行ってもよい。
[第2のプライマー層6]
第2のプライマー層6は、表面保護層5とその下に位置する層との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、表面保護層5の下に設けられる層である。第2のプライマー層6は、例えば、表面保護層5と金属薄膜層4との間、表面保護層5と後述のカラークリア層7との間、表面保護層5と後述の透明フィルム層9との間などに設けられる。第2のプライマー層6を形成する素材は、これらの層間の密着性を向上させ得るものであれば、特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル−ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂が挙げられる。
第2のプライマー層6の厚さは、特に限定されないが、通常0.5〜2.5μm程度、好ましくは1〜2μm程度である。第2のプライマー層6には、着色剤を混合して、色彩を整えたり、意匠性を向上させることができ、さらには、デザイン的な観点での模様を形成することもできる。第2のプライマー層6の形成方法は、特に制限されないが、例えば、金属薄膜層4、カラークリア層7、透明フィルム層9などのうち、第2のプライマー層6の直下に位置する層の表面上に上記の樹脂を塗布する方法などが挙げられる。また、別途用意した離型用シートの上に上記の樹脂を塗布し、当該樹脂の上から、加飾シートにおいて第2のプライマー層6の下に位置することになる金属薄膜層4などの層をさらに形成した後、離型用シートを剥離することにより形成する方法なども挙げられる。
[カラークリア層7]
カラークリア層7は、金属薄膜層4の金属調にさらに光沢などを持たせること等を目的として、必要に応じて、金属薄膜層4の上に設けられる層である。カラークリア層7を形成する素材としては、特に限定されないが、例えば、着色剤などにより着色された透明樹脂が挙げられる。着色剤としては、特に制限はないが、例えば、着色顔料、染料などが挙げられる。また、透明樹脂としては、特に制限はないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル−ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。カラークリア層7の厚さは、特に限定されないが、通常0.5〜4μm程度、好ましくは1〜3μm程度である。カラークリア層7の形成方法は、特に制限されないが、例えば、後述の第3のプライマー層8、後述の透明フィルム層9、金属薄膜層4などのうち、カラークリア層7の直下に位置する層の表面上や、第2のプライマー層6など、第2のカラークリア層7の直上に位置する層の表面上に上記の樹脂を塗布する方法などが挙げられる。
[第3のプライマー層8]
第3のプライマー層8は、カラークリア層7とその下に位置する層との密着性を高めること等を目的として、必要に応じて、カラークリア層7の下に設けられる層である。第3のプライマー層8は、例えば、カラークリア層7と金属薄膜層4との間や、カラークリア層7と後述の透明フィルム層9との間に設けられる。第3のプライマー層8を形成する素材は、これらの層間の密着性を向上させ得るものであれば、特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル−ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂が挙げられる。
第3のプライマー層8の厚さは、特に限定されないが、通常0.5〜2.5μm程度、好ましくは1〜2μm程度である。第3のプライマー層8には、着色剤を混合して、色彩を整えたり、意匠性を向上させることができ、さらには、デザイン的な観点での模様を形成することもできる。第3のプライマー層8の形成方法は、特に制限されないが、例えば、カラークリア層7の表面上や、後述の透明フィルム層9、金属薄膜層4などのうち、第3のプライマー層8の直下に位置する層の表面上に上記の樹脂を塗布する方法などが挙げられる。
[透明フィルム層9]
透明フィルム層9は、本発明の加飾シートの耐傷付き性や耐候性を高めると共に、成形性を高める支持体としての役割を果たし、必要に応じて、金属薄膜層4の上に設けられる樹脂フィルムである。透明フィルム層9を備えることで成形性が高まり、加飾シートを三次元成形した際に金属薄膜層4にクラックが発生しにくくなるので、伸展性に富むスズ、インジウム、クロム以外の金属(例えばアルミニウムなど)を用いて金属薄膜層4を形成する場合には、透明フィルム層9を備えることが好ましい。透明フィルム層9を形成する樹脂フィルムとしては、加飾シートの成形性を高め、金属薄膜層4による金属調の意匠を隠蔽するものでなければ、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、またはアクリル樹脂などのフィルムが挙げられる。透明フィルム層9の厚さは、特に限定されないが、通常15〜200μm程度、好ましくは30〜150μm程度である。透明フィルム層9を形成する方法は、特に制限されないが、例えば、表面保護層5、第2のプライマー層6、カラークリア層7、第3のプライマー層8などのうち、透明フィルム層9の直上に位置する層の表面上や、金属薄膜層4などの第3のプライマー層8の直下に位置する層の表面上に上記の樹脂フィルムを積層する方法などが挙げられる。
[第2の接着層10]
第2の接着層10は、加飾シートと成形樹脂との接着性や密着性を向上させることなどを目的として、基材層1の裏面に必要に応じて設けられる層である。第2の接着層10を形成する樹脂としては、加飾シートと成形樹脂との接着性や密着性を向上させることができるものであれば、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
第2の接着層10は必ずしも必要な層ではないが、本発明の加飾シートを、後述する真空圧着法など、予め用意された樹脂成形体上へ貼着による加飾方法に適用することを想定した場合は、設けられていることが好ましい。真空圧着法に用いる場合、上記した各種の樹脂のうち、加圧又は加熱により接着性を発現する樹脂として慣用のものを使用して接着層8を形成することが好ましい。
第2の接着層10の厚みは、特に制限されないが、例えば、0.1〜30μm程度、好ましくは0.5〜20μm程度、さらに好ましくは1〜8μm程度が挙げられる。
2.加飾樹脂成形品
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに成形樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも、成形樹脂層と、基材層1と、プライマー層3と、金属薄膜層4とがこの順に積層された積層体からなり、当該プライマー層3が、ガラス転移点が−30℃〜80℃の上記の樹脂の硬化物を含むことを特徴とする。本発明の加飾樹脂成形品では、必要に応じて、加飾シートに上述の表面保護層5、第2のプライマー層6、カラークリア層7、第3のプライマー層8、透明フィルム層9、第2の接着層10などの少なくとも1層がさらに設けられていてもよい。
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートを用いて、例えば、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により作製される。これらの射出成形法の中でも、好ましくはインサート成形法及び射出成形同時加飾法が挙げられる。また、本発明の加飾樹脂成形品は、真空圧着法等の、予め用意された立体的な樹脂成形体(成形樹脂層)上に、本発明の加飾シートを貼着する加飾方法によっても作製することができる。
インサート成形法では、まず、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する一体化工程。
上記の通り、本発明の加飾シートは、高い三次元成形性を有する。このため、例えば、加飾樹脂成形品が曲部を有する場合に、上記の真空成形工程及び一体化工程の少なくとも一方の工程において、当該曲部に位置する加飾シートを最大延伸倍率150%以上、さらには約200%延伸してもよい。なお、上記の最大延伸倍率の上限値は、好ましくは250%程度である。
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚さなどによって適宜選択すればよいが、例えば基材層としてABS樹脂フィルムを用いる場合であれば、通常100〜250℃程度、好ましくは130〜200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度、好ましくは220〜280℃程度とすることができる。
また、射出成形同時加飾法では、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本発明の加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、加飾シートの基材層の表面が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する予備成形工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂を射出、充填して固化させることにより樹脂成形体を形成し、樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる一体化工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す取出工程。
上記のインサート成形法と同様、射出成形同時加飾法においても、本発明の加飾樹脂成形品が曲部を有する場合に、上記の予備成形工程及び一体化工程の少なくとも一方の工程において、当該曲部に位置する加飾シートを最大延伸倍率150%以上、さらには約200%延伸してもよい。なお、上記の最大延伸倍率の上限値は、好ましくは250%程度である。
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シートの加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚さなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常70〜130℃程度とすることができる。また、射出成形工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度、好ましくは220〜280℃程度とすることができる。
真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本発明の加飾シート及び樹脂成形体を、加飾シートが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ加飾シートの基材層1側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1の真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を加飾シートに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、加飾シートを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、必要に応じて加飾シートの余分な部分をトリミングすることにより、本発明の加飾樹脂成形品を得ることができる。
真空圧着法においては、上記の成形体を加飾シートに押し当てる工程の前に、加飾シートを軟化させて成形性を高めるため、加飾シートを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常60〜200℃程度とすることができる。
上記のインサート成形法や射出成形同時加飾法と同様、真空圧着法においても、本発明の加飾樹脂成形品が曲部を有する場合に、当該曲部に位置する加飾シートを最大延伸倍率150%以上、さらには約200%延伸してもよい。なお、上記の最大延伸倍率の上限値は、好ましくは250%程度である。
本発明の加飾樹脂成形品において、成形樹脂層は、用途に応じた樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の加飾樹脂成形品は、各層の密着性が高く、複雑な形状にも成形可能で、質感が高く高級感のある金属調も備えているので、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
<実施例1〜10及び比較例1〜3>
(加飾シートの作製)
剥離シートとしての2軸延伸ポリエチレンテレフタレートシート(東洋紡績社製のE5001、厚さ25μm)の上に、アクリル−ウレタンブロック共重合樹脂を塗工して、厚さ2μmの透明な第2のプライマー層を形成した。次に、第2のプライマー層上に、着色剤を含むアクリル−ウレタンブロック共重合樹脂を塗工して、カラークリア層(厚さ2μm)及び第3のプライマー層(厚さ2μm)を順に形成した。次に、第3のプライマー層の表面上にスズを蒸着して光学濃度値(OD)が1.2の金属薄膜層を形成した。次に、金属薄膜層の上に、それぞれ、表1に記載の組成及びガラス転移点(Tg)を有するプライマー層(厚さ2μm)を形成した。なお、実施例9及び10においては、プライマー層の樹脂70質量部に対して、金属薄膜層と同系色を有する着色剤(酸化チタン、カーボンブラックを含む)を30質量部配合した。次に、プライマー層の上に、表1に記載の樹脂を厚さ2μmとなるように塗工して接着層を形成した。次に、接着層の上に厚さ400μmのABS樹脂からなるシートを接触させて基材層を形成し、剥離層/第2のプライマー層/カラークリア層/第3のプライマー層/金属薄膜層/プライマー層/接着層/基材層がこの順に積層された積層体を得た。次に、この積層体の基材層側に、算術平均粗さRaが4.0μm、十点平均粗さRzJISが16μmの梨地柄の入ったステンレス製の金属板を配置し、剥離層側に算術平均粗さRaが0.05μmのステンレス製の鏡面板を配置し、この金属板と鏡面板で積層体を熱プレス成形した。熱プレス成形の条件は、温度150℃、圧力0.5MPa、加熱・加圧時間を10分間とした。次に、積層体から剥離層を剥離し、プライマー層の表面上に電離放射線硬化性樹脂を、硬化後の厚さが10μmとなるようにしてグラビアリバースにて塗布して未硬化の樹脂層を形成した。この未硬化の樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、未硬化の樹脂層を硬化させて表面保護層を形成した。以上のようにして、表1に示されるような構成を有する、基材層/接着層/プライマー層/金属薄膜層/第3のプライマー層/カラークリア層/第2のプライマー層/表面保護層がこの順に積層された加飾シートを得た。なお、電離放射線硬化性樹脂としては、2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量10000)80質量部と、6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量6000)20質量部との混合物を用いた。また、比較例3では、プライマー層を設けなかった。
(成形性評価試験)
実施例1〜10及び比較例1〜3の加飾シートを、それぞれ赤外線ヒーターで160℃に加熱し、軟化させた。次に、真空成形用型を用い、最大延伸倍率が150%になる条件で真空成形し、真空成形用型の内部形状となるように加飾シートを成形した。次に、加飾シートを冷却後、真空成形用型から離型した。離型した加飾シートの表面保護層に割れや白化が全く見られず、真空成形用型の内部形状に良好に追従していたものを、成形性が良好(○)と評価した。離型した加飾シートの表面保護層に割れや白化が見られ、真空成形用型の内部形状に追従できていなかったものを、成形性が悪い(×)と評価した。結果を表1に示す。
(密着性評価試験)
実施例1〜10及び比較例1〜3の加飾シートを、上記の成形性評価試験と同様の方法で真空成形した。次に、離型した加飾シートの表面保護層の表面に、それぞれカッターナイフを用いて2mm間隔で縦10本、横10本の碁盤状の切れ込みを入れた。次に、切れ込みを入れた部分にニチバン製セロテープ(登録商標)を圧着し、90°方向に急激剥離した。密着性評価試験の結果、加飾シートに剥離が全くなかったものを、密着性が良好(○)と評価した。加飾シートに切れ込みに沿って極軽微な切れ込みが見られたが実用上問題ないものを、密着性がやや良好(△)と評価した。加飾シートに明らかな剥離がみられたものを、密着性が悪い(×)と評価した。結果を表1に示す。
(耐退色性評価試験)
実施例1〜10及び比較例1〜3の加飾シートを、上記の成形性評価試験と同様の方法で真空成形した後、それぞれ60℃、湿度90%の環境下で72時間静置した。次に、分光測色計(コニカミノルタ社製のCM−3700d)を用いて、色差ΔE*ab(JIS Z8729−1994に規定された国際照明委員会(CIE)のL*a*b表色系に準拠している)を測定した。色差ΔE*abは下記式で表される。
ΔE*ab=√(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2
なお、色差の基準としては、それぞれ、耐退色性評価試験に供する前の実施例1〜10及び比較例1〜3の加飾シートを用いた。耐退色性評価試験の結果、色差ΔE*abが3未満の場合に、退色が小さい(○)と評価し、色差ΔE*abが3以上5未満の場合に退色がやや大きい(△)、色差ΔE*abが5以上の場合に、退色が大きい(×)と評価した。結果を表1に示す。
(加飾樹脂成形品の耐熱性試験)
実施例1〜10及び比較例1〜3の加飾シートを、上記の成形性評価試験と同様の方法で真空成形し、射出成形に用いた。射出樹脂としてABS樹脂[日本エイアンドエル(株)製、商品名「クララスチックMTH−2」]を用い、これを230℃にて溶融状態にしてから、キャビティ内に射出した。金型温度が30℃になった時点で、金型から加飾樹脂成形品を取り出し、それぞれ実施例1〜10及び比較例1〜3の加飾シートが射出樹脂と一体化した加飾樹脂成形品を得た。次に、得られた加飾樹脂成形品を、それぞれ、100℃、湿度65%の環境下で168時間静置した後、加飾樹脂成形品の表面を目視で観察し、加飾シートの剥がれの有無を観察した。加飾シートの剥がれが全くないものを○、加飾シートにごく軽微な剥がれはあるが、実用上全く問題ないものを○△、加飾シートに軽微な剥がれはあるが、実用上問題ないものを△、加飾シートの剥がれがあり、実用上問題があるものを×と評価した。結果を表1に示す。また、実施例1及び比較例1の加飾シートを用いて得られた加飾樹脂成形品の耐熱性試験後の表面写真をそれぞれ図5及び図6に示す。
表1において、「HDI」は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートであり、「XDI」は、キシレン−1,3−ジイソシアネートである。
表1に示されるように、ガラス転移点(Tg)が−30℃〜80℃の樹脂の硬化物を含むプライマー層を接着層と金属薄膜層との間に設けた実施例1〜10の加飾シートにおいては、いずれも成形性、密着性に優れ、金属薄膜層の退色も抑制されていることが明らかとなった。実施例9及び10の加飾シートは、それぞれ、実施例3及び9の加飾シートのプライマー層に、金属薄膜層と同系色の着色剤を配合したものであるが、実施例9及び10の加飾シートでは、より優れた耐退色性を有していた。さらに、実施例1〜10の加飾シートは、加飾樹脂成形品とした後に、加熱した場合にも、剥がれが全く見られないか、実用上問題ない程度の剥がれであった。例えば、図5の写真に示すように、実施例1の加飾シートから得られた加飾樹脂成形品では、耐熱性試験を行った後においても、剥がれは全く見られなかった。これに対して、プライマー層を設けたが、ガラス転移点(Tg)が80℃よりも大きい樹脂を用いた比較例1では、成形性が悪く、加飾樹脂成形品を加熱した際の剥がれも実用上問題があった。例えば、図6の写真に示すように、比較例1の加飾シートから得られた加飾樹脂成形品では、耐熱性試験を行った後においては、剥がれ(加飾シートの表面が山状にめくれ上がった部分)があり、加飾シートの基材層が加飾樹脂成形品の表面に露出してしまっており、実用上問題があった。また、プライマー層を設けたが、ガラス転移点(Tg)が−30℃よりも小さい樹脂を用いた比較例2では、密着性及び耐退色性の点で劣っていた。さらに、プライマー層を設けなかった比較例3では、金属薄膜層の退色が大きく、加飾樹脂成形品を加熱した際の剥がれも実用上問題があった。
1…基材層
2…接着層
3…プライマー層
4…金属薄膜層
5…表面保護層
6…第2のプライマー層
7…カラークリア層
8…第3のプライマー層
9…透明フィルム層

Claims (15)

  1. 少なくとも、基材層(ただし、ポリエステル系樹脂よりなる基材フィルムであるものを除く)と、プライマー層と、金属薄膜層とがこの順に積層された積層体からなり、
    前記プライマー層は、ガラス転移点が−30℃〜50℃の樹脂の硬化物を含む、加飾シート。
  2. 曲部を有する樹脂成形品の加飾用途に用いられ、
    前記曲部が、前記加飾シートに対して最大延伸倍率150%以上の延伸を必要とする形状である、請求項1に記載の加飾シート。
  3. 前記ガラス転移点が−30℃〜50℃の樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1または2に記載の加飾シート。
  4. 前記ガラス転移点が−30℃〜50℃の樹脂が、ポリオール樹脂であり、
    前記プライマー層が、前記ポリオール樹脂とイソシアネート化合物との硬化物により形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
  5. 前記ポリオール樹脂が、ポリエステルポリオールである、請求項4に記載の加飾シート。
  6. 前記イソシアネート化合物が、脂肪族イソシアネート化合物である、請求項4または5に記載の加飾シート。
  7. 前記基材層と前記プライマー層との間に接着層を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の加飾シート。
  8. 前記接着層が、塩素系樹脂を含む、請求項7に記載の加飾シート。
  9. 前記金属薄膜層が、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金からなる群から選択された少なくとも1種の金属により形成されている、請求項1〜8のいずれかに記載の加飾シート。
  10. 前記金属薄膜層の上に表面保護層がさらに積層されている、請求項1〜9のいずれかに記載の加飾シート。
  11. 前記金属薄膜層の上に透明フィルム層がさらに積層されている、請求項1〜10のいずれかに記載の加飾シート。
  12. 前記プライマー層が、着色剤をさらに含む、請求項1〜11のいずれかに記載の加飾シート。
  13. 少なくとも、成形樹脂層と、基材層(ただし、ポリエステル系樹脂よりなる基材フィルムであるものを除く)と、プライマー層と、金属薄膜層とがこの順に積層された積層体からなり、
    前記プライマー層は、ガラス転移点が−30℃〜50℃の樹脂の硬化物を含む、加飾樹脂成形品。
  14. 請求項1〜12のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
    前記真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
    前記成形シートを射出成形型に挿入し、前記射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を前記射出成形型内に射出して前記樹脂と前記成形シートとを一体化する一体化工程、
    を備える、加飾樹脂成形品の製造方法。
  15. 前記加飾樹脂成形品が曲部を有し、
    前記真空成形工程及び前記一体化工程の少なくとも一方の工程において、前記曲部に位置する加飾シートを最大延伸倍率150%以上に延伸する、請求項14に記載の加飾樹脂成形品の製造方法。
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