(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図1乃至図4Bを参照にして説明する。図1は、本実施形態のクレーン(走行式クレーン)1を示す図である。図1に示すように、クレーン1は、車体(走行車体)2を備える。車体2上には、車体2に対して旋回可能な旋回体3と、クレーン1の運転操作等が行われる運転室5と、が設けられている。
旋回体3には、ブーム7の基端部が連結されている。ブーム7には、ブーム起伏シリンダー8の一端が連結されている。ブーム起伏シリンダー8の他端は、旋回体3に連結されている。ブーム起伏シリンダー8が伸縮することにより、ブーム7が旋回体3に対して起伏(起状又は伏状)する。ブーム7は、長手方向について伸縮可能な伸縮ブームである。ブーム伸縮シリンダー(図示しない)を伸縮することにより、長手方向についてブーム7が伸縮する。
ブーム7を旋回体3に対して起状した状態では、ブーム7の先端部からフック(メインフック)11が吊下げられる。フック11には、ロープ(主巻ロープ)13の一端が接続されている。すなわち、ロープ13によって、ブーム7の先端部からフック11が吊下げられている。ロープ13は、ブーム7の先端部から基端部に向かって延設され、車体2上に設けられるウインチ(ドラム)15に他端が接続されている。ロープ13は、ウインチ15に巻回されている。ウインチ(メインウインチ)15を作動することにより、フック11を吊下げるロープ13の巻上げ及び巻下げが行われる。
また、ブーム7の先端部には、ジブ81が取付けられている。ジブ81は、ブーム7に対して起伏可能である。ジブ81をブーム7に対して起状した状チアでは、ジブ81の先端部からフック(サブフック)82が吊下げられる。フック82には、ロープ(補巻ロープ)83の一端が接続されている。すなわち、ロープ83によって、ジブ81の先端部からフック82が吊下げられている。ロープ83は、ジブ81の先端部から基端部に向かって延設され、ブーム7の先端部から基端部に向かって延設される。そして、車体2上に設けられるウインチ(ドラム)85に他端が接続されている。
図2は、ウインチ(ドラム)15の作動状態を制御するウインチ作動装置20の構成を示す図である。図2に示すように、ウインチ作動装置20は、ロープ13を巻上げる巻上げ操作が入力される巻上げ操作レバー(巻上げ操作入力部)21と、ロープ13を巻下げる操作が入力される巻下げ操作レバー(巻下げ操作入力部)22と、を備える。巻上げ操作レバー21及び巻下げ操作レバー22は、運転室5に設けられ、操作弁23に連結されている。操作弁(パイロット弁)23は、油圧経路25を介してポンプ26に流体的に接続され、油圧経路27を介して油タンク28に流体的に接続されている。
また、ウインチ作動装置20は、作動弁(コントロール弁)31を備える。操作弁23は、油圧経路32A,32Bを介して作動弁31に流体的に接続されている。巻上げ操作レバー21での巻上げ操作の入力の有無、及び、巻上げ操作の入力値(すなわち、巻上げ操作レバー21の傾動量)に対応して、操作弁23の開閉状態が変化する。このため、巻上げ操作レバー21での巻上げ操作の入力の有無、及び、巻上げ操作の入力値(すなわち、巻上げ操作レバー21の傾動量)に対応して、油圧経路32A,32Bでの油圧が変化する。同様に、巻下げ操作の入力の有無、及び、巻下げ操作の入力値(すなわち、巻下げ操作レバー22の傾動量)に対応して、操作弁23の開閉状態が変化し、油圧経路32A,32Bでの油圧が変化する。
油圧経路32Aの油圧は、圧力センサ33Aによって検出され、油圧経路32Bの油圧は圧力センサ33Bによって検出される。したがって、圧力センサ(操作入力検出部)33Aによって、巻上げ操作の入力の有無が検出される。同様に、圧力センサ(操作入力検出部)33Bによって、巻下げ操作の入力の有無が検出される。
ウインチ作動装置20は、制御ユニット35を備える。制御ユニット35は、CPU(Central Processing Unit)又はASIC(application specific integrated circuit)、及び、メモリを備える。圧力センサ33A,33Bは、制御ユニット35に電気的に接続されている。したがって、巻上げ操作の入力の有無等を示す検出信号が、制御ユニット35に伝達される。
また、油圧経路32A,32Bの油圧の変化に対応して、作動弁31の作動状態が変化し、作動弁31の開閉状態が変化する。作動弁31は、油圧経路36を介してポンプ37に流体的に接続され、油圧経路38を介して油タンク28に流体的に接続されている。また、作動弁31は、油圧経路41A,41Bを介して、モータ43に流体的に接続されている。作動弁31の開閉状態が変化することにより、油圧経路41A,41Bへの作動弁31からの油の供給状態が変化する。これにより、油圧経路41A,41Bを通してのモータ43への油の供給状態(供給の有無、供給量及び供給方向)が変化する。
モータ43に油が供給されることにより、モータ43が駆動される。モータ43が駆動されることにより、ウインチ(ドラム)15が作動される。例えば、油圧経路41Aからモータ43に油が供給されることにより、モータ43が駆動方向(回転方向)の一方に駆動され、ウインチ15によってロープ13の巻下げが行われる。一方、油圧経路41Bからモータ43に油が供給されることにより、モータ43が駆動方向(回転方向)の他方に駆動され、ウインチ15によってロープ13の巻上げが行われる。モータ43への油の供給量に対応してモータ43の駆動速度が変化し、ロープ13の巻上げ速度及び巻下げ速度が変化する。
前述のようにして、巻上げ操作レバー21での巻上げ操作の入力に基づいてモータ43が駆動され、ロープ13の巻上げが行われる。同様に、巻下げ操作レバー22での巻下げ操作の入力に基づいてモータ43が駆動され、ロープ13の巻下げが行われる。
また、ウインチ作動装置20は、ブーム7の長手方向についての長さを経時的に検出するブーム長検出部46と、ブーム7の起伏角度であるブーム角度を経時的に検出するブーム角度検出部47と、ブーム起伏シリンダー8の油圧であるデリック圧を検出するデリック圧検出部48と、を備える。ブーム長検出部46、ブーム角度検出部47及びデリック圧検出部48は、センサ及び演算回路等から形成されている。ブーム長検出部46、ブーム角度検出部47及びデリック圧検出部48は、制御ユニット35に電気的に接続されている。
また、ウインチ作動装置20は、ウインチ(ドラム)20の作動状態を検出する回転センサ51A,51Bを備える。回転センサ51A,51Bは、制御ユニット35に電気的に接続されている。回転センサ51Aは、ロープ13を巻上げる方向へのウインチ15の作動速度(回転速度)を検出し、回転センサ51Bは、ロープ13を巻下げる方向へのウインチ15の作動速度(回転速度)を検出する。
図3は、制御ユニット35の構成を機能ブロックで示す図である。図3に示すように、制御ユニット35は、実荷重算出部52を備える。実荷重算出部52は、検出されたブーム長、ブーム角度、デリック圧に基づいて、フック11が吊下げられた状態でのブーム7の先端部に掛かる実荷重WAを経時的に算出する。そして、制御ユニット35には、算出された実荷重WAが閾値より小さいか否かを比較する荷重比較部53が、設けられている。
また、制御ユニット35は、モータ43の駆動状態を制御する駆動制御部55を備える。駆動制御部55は、圧力センサ(操作入力検出部)33A,33Bでの検出結果(例えば、巻上げ操作の入力状態)及び回転センサ51A, 51Bでの検出結果(ウインチ15の作動状態)に基づいて、モータ43の駆動状態を制御している。また、駆動制御部55は、荷重比較部53での実荷重WAと閾値との比較結果に基づいて、モータ43の駆動状態を制御している。
図2及び図3に示すように、ウインチ作動装置20は、電磁弁56を備える。電磁弁56は、電気配線部57(及びグランド線)を介して、制御ユニット35に接続されている。電気配線部57には、スイッチ58が設けられている。実荷重WAが閾値より小さい場合は、制御ユニット35の駆動制御部55から電気配線部57を通して電力が出力される。スイッチ58が閉じられた状態では、駆動制御部55から出力された電力は、電磁弁56に供給される。電力が供給されることにより、電磁弁56が作動され、電磁弁56の開閉状態が変化する。なお、実荷重WAが閾値以上の場合は、制御ユニット35の駆動制御部55から電力は出力されない。
電磁弁56は、油圧経路61を介してポンプ62に流体的に接続されている。また、電磁弁56は、油圧経路63を介して油タンク65に流体的に接続されている。ウインチ作動装置20は、モータ43の傾角(容量)を変化させる傾角変更部66を備える。すなわち、モータ43は、1回転させるために必要な油の容量が変化する容量可変モータである。傾角変更部(レギュレータ)66は、油圧経路67を介して電磁弁56に流体的に接続されている。電磁弁56に電力が供給されることにより、電磁弁56から油圧経路67に油が流入し、傾角変更部66に油が供給される。これにより、傾角変更部66が作動され、モータ43の傾角が小さくなり、モータ43を1回転させるための油の容量が小さくなる。モータ43の容量が小さくなることにより、油圧経路41A,41Bを通してのモータ43への油の供給量が変化させることなく、モータ43の駆動速度が大きくなる。なお、電磁弁56に電力が供給されていない状態では、電磁弁56から油圧経路67に油が流入せず、傾角変更部66に油が供給されない。
前述のような構成にすることにより、実荷重WAが閾値以上の場合には、電磁弁56に電力が供給されず、傾角変更部66に油は供給されない。このため、モータ43の傾角(1回転させるための油の容量)が大きくなり、モータ43は、低速の低速度駆動モードで駆動される。一方、実荷重WAが閾値より小さい場合には、電磁弁56に電力が供給され、傾角変更部66に油が供給される。このため、モータ43の傾角(1回転させるための油の容量)が小さくなり、モータ43は、低速度駆動モードより駆動速度が大きい(高速の)高速度駆動モードで駆動される。なお、スイッチ58は、クレーン1の操作者(作業者)によって開閉状態を調整可能である。したがって、スイッチ58が開いている場合には、電磁弁56に電力が供給されず、傾角変更部66に油は供給されない。このため、スイッチ58が開いている状態では、実荷重WAの大きさに関係なく低速度駆動モードでモータ43が駆動される。
また、制御ユニット35は、閾値設定部71と、メモリ等の記憶部72と、を備える。荷重比較部53で実荷重WAと比較される閾値は、常時一定ではなく、閾値設定部71によって設定される。閾値設定部71は、圧力センサ(操作入力検出部)33A,33Bでの検出結果(例えば、巻上げ操作の入力状態)に基づいて、閾値を設定している。閾値を設定する方法については、後述する。また、記憶部72には、実荷重WAと比較する閾値、操作の入力状態等が記憶されている。
また、制御ユニット35は、告知部73に電気的に接続されている。告知部73は、電磁弁56に電力が供給されていることが制御ユニット35で検出されている状態において、作動される。したがって、告知部73が作動されることにより、モータ43が高速駆動モードで駆動されていることが、作業者に告知される。告知部73は、作動されることにより点灯するランプであってもよく、作動されることにより音を発信するブザーであってもよい。また、告知部73は、作動されることにより、モータ43が高速駆動モードで駆動されていることを表示するディスプレイであってもよい。
次に、クレーン1及びウインチ作動装置20の作用及び効果について説明する。クレーン1での作業が完了すると、ブーム7を収縮するとともに、フック11を吊下げるロープ13を巻上げる必要がある。図4A及び図4Bは、ロープ13を巻上げる作業において、ウインチ作動装置20で行われる処理を示すフローチャートである。図4Bでは、図4AのAからBまでに行われる処理を示している。
図4Aに示すように、巻上げ操作が入力される前において、圧力センサ(操作入力検出部)33Aは、巻上げ操作の入力の有無の検出を開始する(ステップS101)。圧力センサ33A,33Bは、油圧経路32A,32Bの油圧に基づいて検出される。巻上げ操作の入力の有無の検出結果は、制御ユニット35に伝達され、記憶部72に記憶される。そして、巻上げ操作レバー21によって巻上げ操作が入力されると、圧力センサ(操作入力検出部)33Aは、巻上げ操作が入力されている状態を検出する(ステップS103−Yes)。
そして、巻上げ操作の入力が検出された場合は、制御ユニット35は、前回の検出において巻上げ操作が入力されていない状態が検出されたか否かを判断する(ステップS105)。前回の検出で巻上げ操作が入力されていない状態(入力OFF状態)が検出され、今回の検出で巻上げ操作が入力されている状態(入力ON状態)が検出された場合は、前回の検出と今回の検出との間に、巻上げ操作の入力が開始されたと判断する。すなわち、圧力センサ33Aで巻上げ操作が入力されていない状態から巻上げ操作の入力されている状態への切替わりが検出されることにより、巻上げ操作の入力開始が検出される。
巻上げ操作の入力開始直後では、前回の検出において巻上げ操作が入力されていない状態が検出される(ステップS105−Yes)。したがって、巻上げ操作の入力開始が検出され、モータ43が駆動開始される。この際、駆動制御部55から電力が出力されず、電磁弁56に電力が供給されない。したがって、駆動制御部55は、モータ43の駆動を低速駆動モードで開始する(ステップS106)。
モータ43の駆動が開始されると、実荷重算出部52は、ブーム7の先端部に掛かる実荷重WAを算出する(ステップS107)。この際、巻上げ操作の入力開始直後の実荷重WAが算出される。また、巻上げ操作の入力開始直後では、算出された実荷重WAと比較される閾値が第1の閾値WS1に設定される。したがって、巻上げ操作の入力開始直後(入力開始の際)では、荷重比較部53は、実荷重WAと第1の閾値WS1とを比較する(ステップS108)。
ここで、ロープ(主巻ロープ)13の巻上げは、フック(メインフック)11が地面に接地した状態から開始される。したがって、フック11が接地した状態で、巻上げ操作の入力が開始される。このため、巻上げ操作の入力開始(入力開始直後)において算出される実荷重WAは、フック11が地面から離れる前(地切り作業)においてブーム7の先端部に作用する実荷重WAである。ロープ13の巻上げにおいては、フック11が地面から離れるまでにブーム7の先端部に掛かる実荷重WAが、フック11が地面から離れた後に鉛直上方向に向かって移動する際にブーム7の先端部に掛かる実荷重WAに比べて、小さくなる。このため、本実施形態では、巻上げ操作の入力開始(入力開始直後)の実荷重WAと閾値の比較において、小さい実荷重WAに対応させて実荷重WAと比較する第1の閾値WS1も小さい値(例えば、0.5t)に設定される。
実荷重WAが第1の閾値WS1以上の場合は(ステップS108−No)、駆動制御部55は、モータ43の駆動状態を低速駆動モードで維持する(ステップS112)。そして、巻上げ作業を続行する限り(ステップS113−No)、モータ43は経時的に連続して低速駆動モードで駆動される。したがって、巻上げ操作の入力開始の際(入力開始直後)での実荷重WAと第1の閾値WS1との比較において実荷重WAが第1の閾値WS1以上の場合は、モータ43は、高速駆動モードに切替わることはない。そして、巻上げ作業を終了する場合は(ステップS113−Yes)、巻上げ操作レバー21を中立位置に戻し、巻上げ操作が入力されていない状態にする。これにより、モータ43が駆動停止する(ステップS114)。
一方、実荷重WAが第1の閾値WS1より小さい場合は(ステップS108−Yes)、駆動制御部55から電磁弁56に電力が供給され、モータ43の傾角(1回転させるための油の容量)が小さくなる。すなわち、駆動制御部55は、モータ43を低速駆動モードから高速駆動モードに切替える(ステップS109)。高速駆動モードにモータ43が切替えられた後、巻上げ作業を終了する場合は(ステップS110−Yes)、巻上げ操作レバー21を中立位置に戻し、巻上げ操作が入力されていない状態にする。これにより、モータ43が駆動停止する(ステップS111)。
高速駆動モードにモータ43が切替えられた後、巻上げ作業を続行する場合は(ステップS110−No)、圧力センサ(操作入力検出部)33Aは、巻上げ操作の入力の有無を経時的に連続して検出する。そして、巻上げ操作の入力開始以後に経時的に連続して巻上げ操作が入力されている場合には(ステップS103−Yes)、前回の検出において巻上げ操作が入力されていない状態が検出されたか否かを判断する(ステップS105)。そして、今回の検出と同様に前回の検出においても巻上げ操作が入力されている状態が検出されている場合は(ステップS105−No)、巻上げ操作の入力開始以後に経時的に連続して巻上げ操作が入力されていると、制御ユニット35は、判断する。例えば、所定の時間間隔で巻上げ操作の入力の有無を検出する場合は、巻上げ操作の入力開始以後の1回目及び2回目の検出時に圧力センサ33A,33Bによって巻上げ操作が入力されている状態が検出されることにより、制御ユニット35は、巻上げ操作の入力開始以後において経時的に連続して巻上げ操作が入力されていると判断する。
図4A及び図4Bに示すように、巻き上げ操作の入力開始以後に経時的に連続して巻上げ操作が入力されていると判断された場合でも(ステップS105−No)、巻上げ操作の入力開始直後の場合(ステップS105−Yes)と同様に、実荷重算出部52は、ブーム7の先端部に掛かる実荷重WAを算出する(ステップS115)。この際、巻上げ操作の入力開始からある程度の時間が経過した際の実荷重WAが算出される。また、スッテプS115では、モータ43は、高速駆動モードで駆動されている。したがって、ステップS115では、ロープ13が高速で巻き上げられている状態での、ブーム7の先端部に掛かる実荷重WAが算出される。
また、巻上げ操作の入力開始以後に経時的に連続して巻上げ操作が入力されている状態では、算出された実荷重WAと比較される閾値が第2の閾値WS2に設定される。したがって、巻上げ操作の入力開始以後に経時的に連続して巻上げ操作が入力されている状態では、荷重比較部53は、実荷重WAと第2の閾値WS2とを比較する(ステップS116)。実荷重WAと第2の閾値WS2との比較の際には、モータ43は、高速駆動モードで駆動され、高速でロープ13の巻上げが行われている。また、第2の閾値WS2は、巻上げ操作入力開始時(入力開始直後)の第1の閾値WS1より、大きい。
巻上げ操作の入力開始以後に経時的に連続して巻上げ操作が入力されることにより、フック(メインフック)11が地面から離れる。このため、巻上げ操作の入力開始以後に経時的に連続して巻上げ操作が入力される状態において算出される実荷重WAは、フック11が地面から離れた後においてブーム7の先端部に作用する実荷重WAである。前述のように、ロープ13の巻上げにおいては、フック11が地面から離れるまでに(地切作業において)ブーム7の先端部に掛かる実荷重WAが、フック11が地面から離れた後に鉛直上方向に向かって移動する際にブーム7の先端部に掛かる実荷重WAに比べて、小さくなる。このため、本実施形態では、巻上げ操作の入力開始以後に経時的に連続して巻上げ操作が入力される状態での実荷重WAと閾値の比較において、大きい実荷重WAに対応させて実荷重WAと比較する第2の閾値WS2も大きい値(例えば、0.7t)に設定される。
実荷重WAが第2の閾値WS2以上の場合は(ステップS116−No)、駆動制御部55は、モータ43の駆動状態を高速駆動モードから低速駆動モードに切替える(ステップS120)。そして、巻上げ作業を続行する限り(ステップS121−No)、モータ43は経時的に連続して低速駆動モードで駆動される。したがって、巻上げ操作の入力開始以後に経時的に連続して巻上げ操作が入力される状態での実荷重WAと第2の閾値WS2との比較においてモータ43が高速駆動モードから低速駆動モードに切替えられた後は、モータ43が再び高速駆動モードに切替わることはない。すなわち、ステップS120でモータ43が低速駆動モードに切替えられた後は、算出される実荷重WAの大きさの経時的な変化に関係なく、低速駆動モードでモータ43の駆動が維持される。そして、巻上げ作業を終了する場合は(ステップS121−Yes)、巻上げ操作レバー21を中立位置に戻し、巻上げ操作が入力されていない状態にする。これにより、モータ43が駆動停止する(ステップS122)。
一方、実荷重WAが第2の閾値WS2より小さい場合は(ステップS116−Yes)、駆動制御部55から電磁弁56に電力の供給が維持され、駆動制御部55は、モータ43を高速駆動モードで維持する(ステップS117)。そして、巻上げ作業を続行する限り(ステップS118−No)、実荷重WAの算出(ステップS115)、及び、算出された実荷重WAと第2の閾値WS2との比較(ステップS116)が経時的に連続しておこなわれる。したがって、ステップS116での実荷重WAと第2の閾値WS2との比較は、モータ43が経時的に連続して高速駆動モードで駆動されている場合のみ、行われる。すなわち、巻上げ操作の入力開始以後に経時的に連続して巻上げ操作が入力されている状態での実荷重WAと第2の閾値WSとの比較は、モータ43が経時的に連続して高速駆動モードで駆動されている場合のみ、行われる。
高速駆動モードでモータ43が維持された状態で巻上げ作業を終了する場合は(ステップS118−Yes)、巻上げ操作レバー21を中立位置に戻し、巻上げ操作が入力されていない状態にする。これにより、モータ43が駆動停止する(ステップS119)。
また、巻上げ操作が入力されていない場合は、ステップS103において巻き上げ操作の入力が検出されない(ステップS103−No)。この際、モータ43が駆動している場合は、モータ43を駆動停止し、モータ43が駆動停止されている場合は、モータ43の駆動停止を維持する(ステップS123)。そして、作業を続行する場合は(スッテプS124)、スッテプS103において巻上げ操作の入力が検出されるまで待機する。
前述のような処理がウインチ作動装置20で行われることにより、ロープ13の巻上げにおいては、経時的に連続してブーム7の先端部に掛かる実荷重WAが算出される。そして、実荷重WAと閾値とを経時的に連続して比較し、比較結果に基づいて、モータ43の駆動速度を制御している。前述のように、巻上げ操作の入力開始直後では、フック11が接地しているため、実荷重WAが小さい。一方、巻上げ操作の入力開始からある程度時間が経過すると、フック11が地面から離れ、実荷重WAが大きくなる。このため、実荷重WAと閾値とを経時的に連続して比較して、比較結果に基づいてモータ43を駆動制御することにより、ブーム7の先端部に掛かる実荷重WAの経時的な変化に対応させて、モータ43の駆動速度が適切に制御される。これにより、ブーム7の先端部に掛かる実荷重WAの経時的な変化に対応させて、ロープ13の巻上げ速度を適切に制御することができる。
また、巻上げ操作の入力開始時(入力開始直後)では、前述のように実荷重WAが小さくなるため、実荷重WAは、小さい値に設定される第1の閾値WS1と比較される。一方、巻上げ操作の入力開始以後において経時的に連続して巻上げ操作が入力されている状態では、前述のように実荷重WAが大きくなるため、実荷重WAは、大きい値に設定される第2の閾値WS2と比較される。第2の閾値WS2が、ウインチ動作による実荷重演算の変動を考慮して、第1の閾値WS1に比べて大きく設定されることにより、フック11が地面から離れた際の実荷重WAの増加に起因するモータ43の高速駆動モードから低速駆動モードへの切替わりが、有効に防止される。このため、フック11が地面から離れた後にロープ13が巻上げられる状態において、モータ43の駆動速度が高速駆動モードと低速駆動モードとの間で頻繁に切替わることが防止される。
モータ43の駆動速度が頻繁に切り替わらないため、ブーム7のハンチング(上下動)が有効に防止されるとともに、ロープ13のウインチ15への乱巻きが有効に防止される。これにより、巻上げ作業における作業効率が向上するとともに、作業時の安全性が確保される。
また、巻上げ操作の入力開始以後に経時的に連続して巻上げ操作が入力される状態での実荷重WAと第2の閾値WS2との比較においてモータ43が高速駆動モードから低速駆動モードに切替えられた後は、実荷重WAと第2の閾値WS2との比較は中止され、これ以後は実荷重WAが変動しても比較処理されないため、モータ43が再び高速駆動モードに切替わることはない。このため、モータ43の駆動速度が高速駆動モードと低速駆動モードとの間で頻繁な切替わりが、さらに有効に防止される。
また、モータ43が高速駆動モードで駆動されていることは、告知部73によって作業者に告知される。したがって、作業者は、告知部73の告知に基づいて巻上げ操作レバー21で適切な操作を行うことにより、ブーム7でのハンチングの発生及びロープ13の乱巻が有効に防止される。
(変形例)
なお、モータ43を高速駆動モードと低速駆動モードとの間で切替える構成は、第1の実施形態の構成に限るものではない。例えば、駆動制御部55から電力がモータ43に供給されることにより、モータ43の傾角(1回転させるための油の容量)が小さくなってもよい。
また、第1の実施形態の構成及び処理は、ジブ81の先端部からフック(サブフック)82を吊下げるロープ(補巻ロープ)83の巻上げにも適用可能である。この場合、ブーム7の先端部に掛かる実荷重WAの代わりに、ジブ81の先端部に掛かる実荷重が経時的に算出される。そして、算出された実荷重と閾値が経時的に比較される。
前述の実施形態等では、ウインチ作動装置(20)は、作動されることにより、ブーム(7)又はジブ(81)の先端部からフック(11;82)を吊下げるロープ(13;83)の巻上げを行うウインチ(15;85)と、ウインチ(15;85)によってロープ(13;83)を巻上げる巻上げ操作が入力される巻上げ操作入力部(21)と、を備える。巻上げ操作入力部(21)での巻上げ操作の入力の有無は、操作入力検出部(33A)で経時的に検出され、操作入力部(21)での巻上げ操作の入力値に基づいて、モータ(43)が駆動される。モータ(43)が駆動されることにより、ウインチ(15;85)が作動され、ロープ(13;83)が巻上げられる。モータ(43)は、低速駆動モード及び低速駆動モードより駆動速度が大きい高速駆動モードで駆動可能である。ウインチ作動装置(20)では、フック(11)が吊下げられた状態でのブーム(7)又はジブ(81)の先端部に掛かる実荷重(WA)が実荷重算出部(52)によって経時的に算出される。そして、駆動制御部(55)は、実荷重算出部(52)で算出された実荷重(WA)が閾値以上の場合は低速駆動モードでモータ(43)を駆動し、かつ、実荷重(WA)が閾値より小さい場合は高速駆動モードでモータ(43)が駆動される状態に、モータ(43)の駆動状態を制御する。また、荷重比較部(53)は、操作入力検出部(33A,33B)での検出結果に基づいて実荷重(WA)と閾値とを経時的に比較する。巻上げ操作の入力開始の際には、閾値を第1の閾値(WS1)に設定して比較を行い、巻上げ操作の入力開始以後に経時的に連続して巻上げ操作が入力されている状態では、閾値を第1の閾値(WS1)より大きい第2の閾値(WS2)に設定して比較を行う。
(参照例)
以下、ロープ13の巻下げ作業におけるウインチ作動装置20での処理の一例を、参照例として図5を参照にして示す。なお、本参照例のウインチ作動装置20の構成は、第1の実施形態と同様である。
ロープ13の巻下げ作業においては、図5に示すように、まず、巻下げ操作レバー22で巻下げ操作の入力が開始される(ステップ131)。これにより、第1の実施形態で前述したように、モータ43が駆動され、ウインチ(ドラム)15が作動される(回転する)。巻下げ操作の入力が開始されてからウインチ15の作動が開始されるまでは、油が伝達される時間等のある程度の時間を要する。本参照例では、回転センサ51Bによって、ウインチ15の作動開始が検出される(ステップS132)。すなわち、回転センサ51Bによって、ウインチ15がロープ13を巻下げる方向に回転し始めたことが検出される。
ウインチ15の作動開始が検出されると(ステップS132−Yes)、実荷重算出部52は、ウインチ15の作動開始直後(作動開始時)のブーム7の先端部に掛かる実荷重WAを算出する(ステップS133)。本参照例では、実荷重WAの算出は、ウインチ15の作動開始直後に1回のみ行われる。そして、算出された実荷重WAと閾値WSとの比較が、荷重比較部53によって行われる(ステップS134)。本参照例では、実荷重WAと閾値WSとの比較は、ウインチ15の作動開始直後に1回のみ行われる。
実荷重WAが閾値より小さい場合は(ステップS134−Yes)、駆動制御部55は、モータ43の駆動状態を高速駆動モードにする(ステップS135)。そして、巻下げ操作が入力されている限り(ステップS136−No)、経時的に連続してモータ43が高速駆動モードで維持される。そして、巻下げ操作レバー22を中立位置に戻し、巻下げ操作の入力が停止されることにより(ステップS136−Yes)、モータ43が駆動停止する(ステップS137)。すなわち、ステップS135で高速駆動モードになった後は、巻下げ操作の入力が停止されるまで経時的に連続して、モータ43は高速駆動モードで駆動される。
一方、実荷重WAが閾値以上となる場合は(ステップS134−No)、駆動制御部55は、モータ43の駆動状態を低速駆動モードにする(ステップS138)。そして、巻下げ操作が入力されている限り(ステップS139−No)、経時的に連続してモータ43が低速駆動モードで維持される。そして、巻下げ操作レバー22を中立位置に戻し、巻下げ操作の入力が停止されることにより(ステップS139−Yes)、モータ43が駆動停止する(ステップS140)。すなわち、ステップS138で低速駆動モードになった後は、巻下げ操作の入力が停止されるまで経時的に連続して、モータ43は低速駆動モードで駆動される。
ロープ13の巻下げ時においては、巻上げ作業とは異なり、ブーム7の先端部に掛かる実荷重WAは経時的に大きく変化しない。したがって、ウインチ15の作動開始直後の実荷重WAのみに基づいてモータ43の駆動速度を制御しても、ウインチ15の作動速度が適切に制御される。また、実荷重WAの算出及び実荷重WAと閾値WSとの比較は、ウインチ15の作動開始直後に1回のみ、行われる。このため、巻下げ作業におけるウインチ作動装置20での処理プログラムが、単純化する。
また、ウインチ15の作動開始直後の実荷重WAに基づいてモータ43が駆動制御されるため、ロープ13の巻下げが行われている状態での実荷重WAに基づいてモータ43の駆動速度が制御される。巻下げ操作の入力が開始されてからウインチ15の作動が開始されるまでは、ある程度の時間を要する。このため、巻下げ操作の入力開始直後に実荷重WAを算出する場合は、ウインチ15が作動される直前の巻下げが行われていない状態での実荷重WAを算出する可能性がある。本参照例では、ロープ13の巻下げが行われている状態での実荷重WAに基づいてモータ43の駆動速度が制御されるため、モータ43の駆動制御の精度が向上する。
なお、前述の参照例の構成及び処理は、ジブ81の先端部からフック(サブフック)82を吊下げるロープ(補巻ロープ)83の巻下げにも適用可能である。この場合、ブーム7の先端部に掛かる実荷重WAの代わりに、ジブ81の先端部に掛かる実荷重が算出される。そして、算出された実荷重と閾値が比較される。
以上、本発明の実施形態等について説明したが、本発明は前述の実施形態等に限るものではなく、発明の趣旨を逸脱することなく種々の変形ができることは、もちろんである。