JP6356459B2 - 鞍乗り型車両 - Google Patents

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本発明は、鞍乗り型車両に関する。
従来、前傾シリンダのエンジン(パワーユニット)を、車幅中心線上を前後に延びるモノバックボーン型のメインフレームで締結支持する自動二輪車のエンジン支持構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、パワーユニットケースには、クランク軸の前方とパワーユニットケース後上部とに、それぞれ第1のボス部と第2のボス部とが上方に突出して設けられ、メインフレームには第1のエンジンブラケットと第2のエンジンブラケットとが設けられ、第1のボス部は第1のエンジンブラケットにて、第2のボス部は第2のエンジンブラケットにてボルトで締結される。第1のエンジンブラケットはクランク軸よりも前方に設けられるため、前後方向に長いパワーユニットを極力前側で締結することができる。また、第1のエンジンブラケットと第2のエンジンブラケットとの締結位置の距離が離れるため、パワーユニットを車体フレームに締結した際、エンジンを車体の剛性メンバとして最大限活用できる。
また、パワーユニットケース内のブリーザ構造を、パワーユニットケースの上部でスタータモータの後方に配置する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2006−123791号公報 特開2007−285381号公報
ところで、特許文献1では、パワーユニットケース内のブリーザ構造については詳細な開示がないものの、通常ブリーザ構造はパワーユニットケース内の上側に配されるものであるため、特許文献2に開示されるように、特許文献1の構成においても、スタータモータの後方に設けられると考えられる。このような構成では、エンジンを車体の剛性メンバとして活用できるとともに、スタータモータによってエンジンの始動を容易にできるが、スタータモータの存在によってブリーザ室の容量を拡張し難いという課題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、前傾シリンダのエンジンを、クランク軸の前方とパワーユニットケースの後方側とによって車体フレームに締結することで、エンジンを車体の剛性メンバとして活用し、スタータモータによってエンジンの始動性を確保しながら、パワーユニット内のブリーザ室を拡張できるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、シリンダ(27)が前傾して設けられるエンジン(12a)のクランク軸(36)の前方と、前記エンジン(12a)を有するパワーユニットケース(25)の後部とに、それぞれ前側ボス部(30)と後側ボス部(31)とが突出して設けられ、前記パワーユニットケース(25)を支持する車体のメインフレーム(21)に前側エンジンブラケット(21a)と後側エンジンブラケット(21b)とが設けられ、前記前側ボス部(30)と前記後側ボス部(31)とが、それぞれ前記前側エンジンブラケット(21a)と前記後側エンジンブラケット(21b)とにボルト(32,33)で締結される鞍乗り型車両において、前記エンジン(12a)のスタータモータ(52)が前記パワーユニットケース(25)の上壁(174,178)よりも下方に配されるとともに、上方に突出する前記前側ボス部(30)の内部には、前記クランク軸(36)の前後に跨ぐように形成され、前記ブリーザ室(200)の出口(221)は、前記パワーユニットケース(25)に固定されるクラッチカバー(39)の上壁(183a)よりも上方に突出する前記前側ボス部(30)の内部に設けた前記ブリーザ室(200)の前記上壁(183a)よりも上方の側壁に設けられるブリーザ室(200)が設けられることを特徴とする。
本発明によれば、スタータモータをパワーユニットケースの上壁よりも下方に配することで、始動性を確保しながら、クランク軸の上方にクランク軸の前後に延びるスペースを確保できる。このスペースに、前側ボス部を設けるとともに前側ボス部の内部にブリーザ室を設けることで、パワーユニットケースを車体の剛性メンバとして活用し、スタータモータによってエンジンの始動性を確保しながら、パワーユニット内のブリーザ室を拡張できる。また、ブリーザ室の出口を極力高い位置に配することで効率良く気液分離をすることができる。また、ブリーザ室の上部の側壁の出口には容易にアクセスできるため、ブリーザーチューブ等を取り付け易い。
また、本発明は、前記スタータモータは、前記クランク軸(36)上にACGスタータ(52)として設けられることを特徴とする。
本発明によれば、パワーユニットケースの大きさをほとんど増加させることなく、スタータモータをパワーユニットケースの上壁よりも下方に配することができる。
また、本発明は、前記ブリーザ室(200)の底壁(201,211)には、前記クランク軸(36)の前後に跨る円弧状部(203,213)が形成されるとともに、前記底壁(201,211)の前下部(204,214)にオイル抜き孔(208,218)が設けられることを特徴とする。
本発明によれば、ブリーザ室の大きさを大きく確保できるとともに、ブリーザ室に溜まるオイルを、円弧状部の底壁の前下部で低くなった場所のオイル抜き孔から効率良く抜くことができる。
た、本発明は、前記パワーユニットケース(25)内には、前記クランク軸(36)の後方に変速機構(70)が設けられ、前記ブリーザ室(200)の底壁(201)には、前後に延びる油溝(209)が設けられ、前記油溝(209)は、前記変速機構(70)の上方に位置する後端からオイルを吐出することを特徴とする。
また、本発明は、前記ブリーザ室(200)の後部の最下部にブリーザ室入口(220)を有していることを特徴とする。
本発明に係る鞍乗り型車両では、パワーユニットケースを車体の剛性メンバとして活用し、スタータモータによってエンジンの始動性を確保しながら、パワーユニット内のブリーザ室を拡張できる。
また、パワーユニットケースの大きさをほとんど増加させることなく、スタータモータを配することができる。
また、ブリーザ室の大きさを大きく確保できるとともに、ブリーザ室に溜まるオイルをオイル抜き孔から効率良く抜くことができる。
さらに、効率良く気液分離できるとともに、ブリーザーチューブ等を取り付け易い。
本発明の実施の形態に係る自動二輪車の左側面図である。 エンジンの周辺部の左側面図である。 エンジンの周辺部の右側面図である。 図2のIV−IV断面図である。 エンジンの内部構造を示す断面図である。 蓄力機構の周辺部及び他側ケースを示す側面図である。 一側ケースをクランク室側から見た側面図である。 パワーユニットの右側面図である。 図3のIX−IX断面図である。 他側ケースをクランク室側から見た側面図である。 クランクケースの油路を示す断面図である。 パワーユニットの周辺部の左側面図である。 パワーユニットの周辺部の左側面図である。 ACGスタータの上部の周辺部の断面の斜視図である。 パワーユニットを下方から見た図である。 ACGカバーを一側ケース側から見た図である。 停車時におけるACGカバーを通る空気の流れを示す図である。 シリンダヘッドの固定構造を示す断面図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LEは車体左方を示している。
図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車10の左側面図である。
自動二輪車10は、車体フレーム11にパワーユニット12が支持され、前輪2を支持する左右一対のフロントフォーク13が車体フレーム11の前端に操舵可能に支持され、後輪3を支持するスイングアーム14(図2)が車体フレーム11の後部側に設けられた車両である。自動二輪車10は、運転者(乗員)が跨るようにして着座するシート15が車体フレーム11の後部の上部に支持された鞍乗り型の車両である。
また、自動二輪車10は、車体フレーム11等を覆う樹脂製の車体カバー16を有する。自動二輪車10は、パワーユニット12の制御を行う制御ユニット17(制御部)と、バッテリ18とを有する。制御ユニット17及びバッテリ18はシート15の下部で、車体カバー16の内側に配置されている。
車体フレーム11は、フロントフォーク13を操舵可能に軸支するヘッドパイプ20と、ヘッドパイプ20から下勾配で後方に延びる1本のモノバックボーンフレーム21(メインフレーム)21と、モノバックボーンフレーム21の後方で下方に延出するピボットフレーム22(図3)と、モノバックボーンフレーム21及びピボットフレーム22の後方に設けられる後部フレーム(不図示)とを一体に備える。モノバックボーンフレーム21は、車幅方向の中心上を後ろ下がりに延びるフレームである。
車体カバー16は、モノバックボーンフレーム21の上面に沿って後下がりでシート15よりも下方へ延びる内側カバー部16aを備える。モノバックボーンフレーム21及び内側カバー部16aとシート15との間には、側面視で下方に凹む跨ぎ空間Sが形成されている。運転者は、自動二輪車10に乗り降りする際に、跨ぎ空間Sに脚を通して自動二輪車10に跨ることができる。
パワーユニット12は、前輪2と後輪3との間の略中間で、シート15の下方やや前方に設けられ、車体フレーム11から吊り下げられるようにして支持される。パワーユニット12の出力は、巻掛けチェーン19を介して後輪3に伝達される。
図2は、パワーユニット12の周辺部の左側面図である。図3は、パワーユニット12の周辺部の右側面図である。図4は、図2のIV−IV断面図である。
パワーユニット12は、前部に設けられるエンジン12aと、後部側に設けられる自動変速機68(図5)とを一体に備える。
パワーユニット12は、車幅方向に略水平に延びるクランク軸36及び自動変速機68を収容するクランクケース25(パワーユニットケース、パワーユニットのケース)を備える。クランクケース25は、エンジン12aを備える。
エンジン12aは、4サイクル単気筒エンジンである。エンジン12aは、クランク軸36と、クランクケース25の前部と、クランクケース25の前部から前傾した姿勢で前方に延びるシリンダ部26とを備えて構成される。シリンダ部26は、クランクケース25の前面に結合されるシリンダ27と、シリンダ27の前面に連結されるシリンダヘッド28とを備える。エンジン12aは、シリンダ部26のシリンダ軸線26aがやや前上がりの姿勢で前方へ略水平に延びる略水平配置のエンジンである。
クランクケース25は、図3に示すように、上方に突出する前側ボス部30を前部の上面に備え、後上方に延びる後側ボス部31を後部の上面に備え、後方に突出する後下側ボス部170を後面の下部に備える。
モノバックボーンフレーム21の後部には、下方に突出する前側エンジンブラケット21aが設けられ、モノバックボーンフレーム21の後端には、後側エンジンブラケット21bが設けられる。また、ピボットフレーム22の前部には、前方へ延びる後下側エンジンブラケット22aが設けられている。
パワーユニット12は、前側エンジンブラケット21a及び前側ボス部30に挿通される固定ボルト32と、後側エンジンブラケット21b及び後側ボス部31に挿通される固定ボルト33とによってモノバックボーンフレーム21に固定される。また、パワーユニット12は、後下側エンジンブラケット22a及び後下側ボス部170に挿通される固定ボルト171によってピボットフレーム22に固定される。
エンジン12aの吸気装置(不図示)は、シリンダ部26の上方に配置され、モノバックボーンフレーム21に支持される。この吸気装置は、シリンダヘッド28の上面の吸気ポート28aに接続される。エンジン12aの排気管34は、シリンダヘッド28の下面の排気口28bから下方に引き出される。
スイングアーム14の前端は、ピボット軸14aを介してピボットフレーム22に軸支される。運転者用の左右一対のステップ23は、クランクケース25の後部の下面から車幅方向外側へ延びるステップステー35の両端にそれぞれ支持されている。
図4に示すように、クランクケース25は、クランク軸36に直交する面で車幅方向に2分割される左右割りで構成されており、左側の一側ケース37Lと、右側の他側ケース37Rとを備える。また、パワーユニット12は、一側ケース37Lを左側方から覆うACGカバー38と、他側ケース37Rを右側方から覆うクラッチカバー39とを備える。
一側ケース37Lと他側ケース37Rとは、合わせ面37Fで合わせられ、車幅方向に延びる複数のケース連結ボルト40によって結合される。ACGカバー38及びクラッチカバー39は、車幅方向に延びる複数のACGカバー固定ボルト41及びクラッチカバー固定ボルト42によってそれぞれクランクケース25に固定される。
図5は、パワーユニット12の内部構造を示す断面図である。
図5に示すように、クランクケース25内の前部には、クランク軸36を収容するクランク室45が設けられ、クランクケース25内おいてクランク室45の後方には、変速機室46が設けられる。変速機室46側には、クランク軸36の駆動力を変速して出力する自動変速機68が設けられる。
クランク室45及び変速機室46の右側方には、クラッチ室47が設けられ、クランク室45の左側方には、ACGスタータ収容部48が設けられる。クラッチ室47は、他側ケース37Rの壁部49の外側面とクラッチカバー39の内面とによって区画される。ACGスタータ収容部48は、一側ケース37Lの外側壁50aの外側面とACGカバー38の内面とによって区画される。一側ケース37Lは、外側壁50aよりも内側に内側壁50bを有する。
クランク軸36は、クランクウェブ36aと、クランクウェブ36aから車幅方向の両側へ延びる軸部36bとを有する。クランク軸36は、クランクウェブ36aがクランク室45内に配置され、軸部36bは、壁部49及び内側壁50bにそれぞれ設けられた軸受け部49a,50cに軸支される。クランクウェブ36aには、クランクピン36dを介してコンロッド36cが連結され、コンロッド36cの先端に連結されるピストン29は、シリンダ27のシリンダボア27a内を往復運動する。
クランク軸36の軸部36bの一端51は、ACGスタータ収容部48に延び、一端51にはACGスタータ52のロータ52aが固定される。ACGスタータ52のステーター52bは、一側ケース37L側に固定される。
ACGスタータ52は、スタータモータとACジェネレータ(ACG)とを組み合わせて構成されている。制御ユニット17は、車速センサ等に基づいて自動二輪車10の停止を検出すると、エンジン12aを停止させるアイドルストップを行う。
ACGスタータ52は、制御ユニット17の制御によって、エンジン12aを始動する際には、スタータモータとして機能し、バッテリ(不図示)から供給される電流で駆動されてクランク軸36を回転させ、エンジン12aを始動させる。また、ACGスタータ52は、エンジン12aの始動後には、発電した電流でバッテリを充電するとともに、電装部品に電流を供給する。
軸部36bにおいてロータ52aと外側壁50aとの間には、動弁駆動スプロケット53が固定されている。一側ケース37L内において動弁駆動スプロケット53の上方には、シリンダヘッド28の動弁機構(不図示)を駆動するカムチェーン54が通るカムチェーン室55が設けられている。
クランク軸36の軸部36bの他端56は、クラッチ室47に延び、他端56の先端部には、遠心式の発進クラッチ57が設けられる。
発進クラッチ57は、発進時及び停止時にクランク軸36と自動変速機68との間を接続及び切断する。発進クラッチ57は、クランク軸36の外周に対して相対回転可能なスリーブ58の一端に固定されたカップ状のアウタケース59と、スリーブ58の外周に設けられたプライマリギア60と、クランク軸36の右端部に固定されたアウタプレート61と、アウタプレート61の外周部にウェイト62を介して半径方向外側を向くように取り付けられたシュー63と、シュー63を半径方向内側に付勢するためのスプリング64とを有する。発進クラッチ57では、エンジン回転数が所定値以下の場合にアウタケース59とシュー63とが離間しており、クランク軸36と自動変速機68との間が遮断状態(動力が伝達されない切り離し状態)となっている。エンジン回転数が上昇し所定値を超えると、遠心力によってウェイト62がスプリング64に抗して半径方向外側に移動することで、シュー63がアウタケース59の内周面に当接する。これにより、アウタケース59とともにスリーブ58がクランク軸36上に固定され、クランク軸36の回転がプライマリギア60を介して自動変速機68に伝達されるようになる。
自動変速機68は、前進4段の変速機構70(変速機)と、クランク軸36側と変速機構70との間の接続を切り替える変速用クラッチ機構71と、変速用クラッチ機構71を操作するクラッチ操作機構72と、変速機構70を変速するギアチェンジ機構73と、クラッチ操作機構72及びギアチェンジ機構73を駆動するアクチュエータ機構74とを備える。アクチュエータ機構74は、制御ユニット17(図1)によって制御される。
自動変速機68では、変速用クラッチ機構71の接続・切断操作、及び、変速段(シフト)の切替えが制御ユニット17の制御のもとに自動で行われる。
自動変速機68は、自動変速(AT)モードと手動変速(MT)モードとの切り替えを行うモードスイッチ(不図示)と、シフトアップまたはシフトダウンを運転者が操作するシフトセレクトスイッチ(不図示)とに接続されている。自動変速機68は、制御ユニット17の制御により、各センサやモードスイッチ及びシフトセレクトスイッチの出力信号に応じてアクチュエータ機構74を制御し、変速機構70の変速段を自動的または半自動的に切り換えることができるように構成されている。
すなわち、自動変速モードでは、車速等に基づいてアクチュエータ機構74の制御が行われ、変速機構70が自動で変速される。手動変速モードでは、シフトセレクトスイッチが運転者によって操作されることで変速が行われる。
変速機構70は、変速用クラッチ機構71から供給される回転を、制御ユニット17の指示に基づいて変速して後輪3に伝達する。変速機構70は、入力軸としてのメイン軸75と、メイン軸75に対して平行に配置されるカウンタ軸76と、メイン軸75に設けられた駆動変速ギア列77と、カウンタ軸76に設けられた被動変速ギア列78とを備える。詳細には、駆動変速ギア列77は、駆動変速ギア77a,77b,77c及び77dを備え、被動変速ギア列78は、被動変速ギア78a,78b,78c及び78dを備える。
また、変速機構70は、駆動変速ギア77bに係合するシフトフォーク79aと、被動変速ギア78cに係合するシフトフォーク79bと、シフトフォーク79a,79bを軸方向にスライド自在に保持するフォーク支持軸181(図7)と、シフトフォーク79a,79bの端部を溝一対の溝にそれぞれ沿わせながらスライドさせるシフトドラム125(図7)とを有する。メイン軸75は、クランク軸36に対し平行に配置される。
駆動変速ギア77a,77b,77c及び77dは、この順に被動変速ギア78a,78b,78c及び78dと噛合している。駆動変速ギア77bは左右にスライドしたとき、隣接する駆動変速ギア77a又は77cに側面のドグが係合し、被動変速ギア78cは左右にスライドしたとき、隣接する被動変速ギア78b又は78dに側面のドグが係合する。
駆動変速ギア77a及び77cはメイン軸75に対して回転自在に保持され、被動変速ギア78b,78dはカウンタ軸76に対して回転自在に保持されている。駆動変速ギア77b及び被動変速ギア78cはメイン軸75及びカウンタ軸76に対してスプライン結合され軸方向にスライド可能である。駆動変速ギア77d及び被動変速ギア78aはメイン軸75及びカウンタ軸76に固定されている。
シフトドラム125がアクチュエータ機構74により駆動されて回転すると、シフトフォーク79a,79bはシフトドラム125の外周面に設けられた一対の溝に沿ってそれぞれ軸方向に移動し、駆動変速ギア77b及び被動変速ギア78cは変速段に応じてスライドする。
変速機構70では、駆動変速ギア77b及び被動変速ギア78cのスライドに応じて、メイン軸75及びカウンタ軸76間で、ニュートラル状態、または、1速〜4速の何れかの変速歯車対を選択的に用いた動力伝達が可能となる。
メイン軸75は、一側ケース37L及び他側ケース37Rにそれぞれ設けられたベアリング80,81に軸支される。メイン軸75の他側の端部は、他側ケース37Rを貫通してクラッチ室47内に延びており、この端部には、プライマリギア60に噛み合うプライマリドリブンギア82と、変速用クラッチ機構71とが設けられている。プライマリドリブンギア82は、メイン軸75に対して相対回転可能に設けられている。
カウンタ軸76は、一側ケース37L及び他側ケース37Rにそれぞれ設けられたベアリング83,84に軸支される。カウンタ軸76の一側の端部は、一側ケース37Lを貫通してクランクケース25の外側に突出しており、この端部には、巻掛けチェーン19に噛み合うドライブスプロケット85が固定されている。
変速用クラッチ機構71は、プライマリドリブンギア82に固定されるカップ状のクラッチアウタ86と、クラッチアウタ86の径方向内側に設けられ、メイン軸75に一体に固定されるクラッチセンタ87と、クラッチアウタ86の内側でメイン軸75の軸方向に移動可能なプレッシャプレート88と、プレッシャプレート88とクラッチセンタ87との間に設けられるクラッチ板89と、クラッチを接続する方向にプレッシャプレート88を付勢するクラッチスプリング90と、プレッシャプレート88をクラッチスプリング90に抗してリフトさせるリフター部91とを備える。
変速用クラッチ機構71は、通常時はクラッチ接続状態にある。クラッチ接続状態では、クラッチセンタ87側とクラッチアウタ86とがクラッチ板89を介して接続され、クラッチセンタ87及びプライマリドリブンギア82がメイン軸75に固定される。これにより、クランク軸36の回転がメイン軸75に伝達されるようになる。
変速用クラッチ機構71は、クラッチ操作機構72によってリフター部91が軸方向にリフトされてプレッシャプレート88がプライマリドリブンギア82側に移動すると、プレッシャプレート88とクラッチセンタ87とによるクラッチ板89の狭持が解除され、クラッチ切断状態となる。
アクチュエータ機構74は、モーター93と、クランクケース25内を車幅方向に延びるシフトスピンドル94と、モーター93の回転を減速してシフトスピンドル94を駆動する歯車列95とを備える。
シフトスピンドル94は、一側ケース37Lに設けられたベアリング96と、クラッチカバー39に設けられたベアリング97とによって両端部を軸支され、メイン軸75に対し平行に配置される。また、シフトスピンドル94は、他側ケース37Rに設けられた支持孔部98によっても中間部を支持される。
クラッチカバー39には、シフトスピンドル94の回転位置を検出する角度センサ99が設けられている。
歯車列95は、一側ケース37Lの外面と一側ケース37Lの外面に取り付けられるカバー100とによって両端を軸支される。また、シフトスピンドル94の一端側の先端も、カバー100の内面に設けられたベアリング101によって軸支されている。
クラッチ操作機構72は、シフトスピンドル94におけるクラッチカバー39側の端に固定されるクラッチレバー103と、メイン軸75と略同軸の位置関係でクラッチカバー39の内面に固定される支持軸104と、支持軸104に固定される板状のベース部材105とを備える。また、クラッチ操作機構72は、クラッチレバー103に連結されるとともに、ベース部材105に対向して設けられるリフターカムプレート106と、リフターカムプレート106とベース部材105との間に狭持される複数のボール107と、リフターカムプレート106とクラッチレバー103とを連結するピン108とを備える。
クラッチレバー103は、シフトスピンドル94上にセレーション嵌合して固定される筒部109と、筒部109から径方向外側に延出するレバー部110とを有する。
リフターカムプレート106は、クラッチレバー103のレバー部110の先端に設けられたピン108に連結される連結部111と、ベース部材105に対向する押圧操作部112とを有する。押圧操作部112及びベース部材105の互いに対向する面には、斜面状のカム部112a,105aがそれぞれ形成されており、ボール107は、カム部112a,105aの間に狭持されている。
リフターカムプレート106は、中央に設けられたガイド穴106aに、ベース部材105のガイド軸105bが嵌合することで、軸方向の移動をガイドされる。また、押圧操作部112の先端部には、ボールベアリング113が設けられており、リフターカムプレート106は、ボールベアリング113を介して変速用クラッチ機構71に接続される。
クラッチレバー103が回動されると、リフターカムプレート106は、ピン108を介してガイド軸105bを中心に回動され、カム部112aがボール107に対して滑ることで、軸方向に移動する。変速用クラッチ機構71は、リフター部91がリフターカムプレート106によってボールベアリング113を介して軸方向にリフトされると、クラッチが切断される。
ギアチェンジ機構73は、シフトスピンドル94に支持されるマスターアーム115と、シフトスピンドル94の回転をねじりコイルバネで構成される蓄力バネ135,137に蓄力し、蓄力を開放してマスターアーム115を回動させる蓄力機構116とを備える。
マスターアーム115は、シフトドラム125に連結されており、アクチュエータ機構74によってマスターアーム115が回動させられることで、シフトドラム125が回転し、変速が行われる。
制御ユニット17の変速の指示に伴ってアクチュエータ機構74のモーター93が駆動されると、シフトスピンドル94の回動が開始される。シフトスピンドル94の回動に連動して、シフトスピンドル94上の蓄力機構116及びクラッチレバー103が回動され、所定の大きさの蓄力が完了したところで変速用クラッチ機構71が切断される。変速用クラッチ機構71が切断された瞬間に蓄力が開放され、蓄力によってマスターアーム115が回動されることで、変速が行われる。
図6は、蓄力機構116の周辺部及び他側ケース37Rをクラッチカバー39側から見た側面図である。ここで、図6では、蓄力機構116の部分は図5のVI−VI断面が示されている。
他側ケース37Rは、板状の上記壁部49と、壁部49の外面の周縁部の全周からクラッチカバー39側へ立設される外側周壁部117と、壁部49の内面の周縁部の全周から一側ケース37L側へ立設される内側周壁部173とを備える。
内側周壁部173の上面は、クランク室45及び変速機室46の上壁の一部であるクランク室側上壁174を構成する。クランク室側上壁174の前部には、前側ボス部30の左右の一方を構成する前側ボス30Rが設けられ、クランク室側上壁174の後部には、後側ボス部31の左右の一方を構成する後側ボス31Rが設けられている。また、後側ボス31Rの下方には、後下側ボス部170の左右の一方を構成する後下側ボス170Rが設けられている。
クランク室側上壁174は、前側ボス30Rから後側ボス31Rへ後下がりに傾斜している。
外側周壁部117の上面は、クラッチ室47の上壁の一部であるクラッチ室側上壁175を構成する。クラッチ室側上壁175の後部は、クランク室側上壁174の後部よりも上方に膨出したクラッチ室側上方膨出部175aを有する。クラッチ室側上方膨出部175aは、クラッチ室側上壁175をクランク室側上壁174よりも高くする段部である。
クラッチ室側上壁175は、クラッチ室側上方膨出部175a側から前側ボス30R側へ前下がりに傾斜している。
また、クランク室側上壁174の前部は、クラッチ室側上壁175の前部よりも上方に膨出するクランク室側上方膨出部174aを有する。
外側周壁部117には、クラッチカバー固定ボルト42が締結されるボス部176が複数設けられている。
壁部49は、軸受け部49a(図5)を介してクランク軸36を支持するクランク支持孔部118と、ベアリング81を介してメイン軸75を支持するメイン軸支持孔部119と、ベアリング84を介してカウンタ軸76を支持するカウンタ軸支持孔部120と、シフトドラム125を支持するシフトドラム支持孔部126とを有する。
クランク支持孔部118は他側ケース37Rの前部に設けられ、メイン軸支持孔部119は他側ケース37Rの後部に設けられ、カウンタ軸支持孔部120は、メイン軸支持孔部119に隣接してメイン軸支持孔部119の後方に位置する。
また、クランク支持孔部118は、壁部49の上下の中間部に位置し、メイン軸支持孔部119はクランク支持孔部118よりも上方に位置し、カウンタ軸支持孔部120は、メイン軸支持孔部119の下方に位置する。
シフトスピンドル94は、壁部49の後部の下部でカウンタ軸支持孔部120の後下方に配置されている。シフトドラム支持孔部126は、シフトスピンドル94の前方且つ上方に配置されている。また、シフトドラム支持孔部126は、メイン軸支持孔部119及びカウンタ軸支持孔部120の下方でメイン軸支持孔部119よりもわずかに前方に配置されている。
蓄力機構116は、シフトスピンドル94上に配置されている。マスターアーム115は、蓄力機構116に組み込まれてシフトスピンドル94上に配置されている。
変速用クラッチ機構71は、メイン軸75(図7)に支持されており、その上部はクラッチ室側上方膨出部175a内に位置する。すなわち、変速用クラッチ機構71の上部は、側面視においてクランク室側上壁174の後部よりも上方に配置されている。
図7は、一側ケース37Lをクランク室45側から見た側面図である。
一側ケース37Lは、板状の前記内側壁50bと、内側壁50bの内面の周縁部の全周からクランク室45側へ立設される内側周壁部177とを備える。
内側周壁部177の上面は、クランク室45及び変速機室46の上壁の一部であるクランク室側上壁178を構成する。クランク室側上壁178の前部には、クランク室45の上方で上方に膨出するクランク室側上方膨出部178aが設けられる。クランク室側上方膨出部178aの上面には、前側ボス部30の左右の他方を構成する前側ボス30Lが設けられる。クランク室側上壁178の後部には、後側ボス部31の左右の他方を構成する後側ボス31Lが設けられる。また、後側ボス31Lの下方には、後下側ボス部170の左右の他方を構成する後下側ボス170Lが設けられている。
クランク室側上壁178は、前側ボス30Lから後側ボス31Lへ後下がりに傾斜している。
内側周壁部177には、ケース連結ボルト40が挿通されるボス部179が複数設けられている。内側周壁部177の端面と他側ケース37Rの内側周壁部173の端面とが合わさることで合わせ面37F(図4)が形成される。
一側ケース37Lの内側壁50bは、他側ケース37Rの、クランク支持孔部118、メイン軸支持孔部119、カウンタ軸支持孔部120、及び、シフトドラム支持孔部126に対応する位置に、不図示のクランク支持孔部、メイン軸支持孔部、カウンタ軸支持孔部、及び、シフトドラム支持孔部を備える。また、内側壁50bは、ベアリング96(図5)を介してシフトスピンドル94を支持するスピンドル支持孔部188を有する。
図7に示すように、クランク軸36は、軸部36bがクランクケース25内の前部且つ上下の中間部に配置される。クランク軸36の下方には、クランクウェブ36aの回動軌跡に沿うクランク室底壁180が設けられている。
メイン軸75は、クランクケース25内の後部の上部で、クランク軸36の後方且つ上方に配置される。カウンタ軸76は、クランクケース25内の後部の上部で、メイン軸75の後方且つ下方に配置される。シフトスピンドル94は、クランクケース25内の後部の下部で、カウンタ軸76の後方且つ下方に配置される。シフトドラム125は、クランクケース25内の後部の下部で、シフトスピンドル94の前方且つ上方に配置される。また、シフトドラム125は、メイン軸75の前下方、且つ、クランク室底壁180の後方に位置する。フォーク支持軸181は、前後方向及び上下方向において、シフトドラム125とメイン軸75との間に配置される。
シフトフォーク79aは、フォーク支持軸181から上方に延びて駆動変速ギア列77に接続される。シフトフォーク79bは、フォーク支持軸181から後上方に延びて被動変速ギア列78に接続される。
メイン軸75の軸中心75aは、前後方向においてクランク軸36の軸部36bの軸中心36eとカウンタ軸76の軸中心76aとの間に位置し、上下方向において軸中心36e及び軸中心76aの上方に位置する。すなわち、クランク軸36、メイン軸75及びカウンタ軸76は、軸中心36e,75a,76aを結ぶ直線が上方に凸の三角形を形成するように配置されており、いわゆる三角配置で配置されている。
詳細には、メイン軸75の軸中心75aは、クランク軸36の軸部36bの上端36f、及び、カウンタ軸76の上端76bよりも上方に配置されている。また、メイン軸75は、駆動変速ギア列77の上端がクランクウェブ36aの回動軌跡の上端36gよりも下方に位置するように配置されている。
このように三角配置とすることで、クランク軸36、メイン軸75及びカウンタ軸76を前後にコンパクトに配置できるため、クランクケース25の前後長を短くできる。
また、シフトドラム125及びシフトスピンドル94を、メイン軸75の上方ではなくメイン軸75及びカウンタ軸76の下方に配置したため、三角配置とした構成であっても、クランク室側上壁174,178を低くすることができる。このため、クランクケース25の最低地上高を下げることなく、クランク室側上壁174,178を低くできる。
また、クラッチ室側上方膨出部175aを設けたため、三角配置とした構成であっても、変速用クラッチ機構71をクラッチ室47に収容できる。
図8は、パワーユニット12の右側面図である。図9は、図3のIX−IX断面図である。ここで、図8では、クラッチカバー39の後部の内側が図示されている。また、図9では、クランクケース25及びクラッチカバー39の内側の構造は不図示である。
クラッチカバー39は、他側ケース37Rの壁部49に面するクラッチカバー側壁部182と、クラッチカバー側壁部182の周縁部の全周から他側ケース37R側に延びるクラッチカバー周壁部183とを備える。クラッチカバー周壁部183には、クラッチカバー固定ボルト42が挿通されるカバー固定ボス部184が複数設けられている。
クラッチカバー39は、クラッチカバー周壁部183が、他側ケース37Rの外側周壁部117に合わせられ、クラッチカバー固定ボルト42によって固定される。
クラッチカバー39は、他側ケース37Rのクラッチ室側上方膨出部175aを覆うカバー側膨出部185を後部の上部に備える。
図8及び図9を参照し、モノバックボーンフレーム21は、断面略円形のパイプ状に形成されており、その下部がクランクケース25のクランク室側上壁174,178に沿うように後下がりに配置されている。クランクケース25の合わせ面37Fは、モノバックボーンフレーム21の直下方に位置する。
他側ケース37Rのクラッチ室側上方膨出部175aは、モノバックボーンフレーム21の後部の外側方に位置し、その上部は、モノバックボーンフレーム21の下面を超えて上方に延びている。
モノバックボーンフレーム21は、側面視では、クラッチ室側上方膨出部175a及びカバー側膨出部185にその下部が重なるように配置されている。
このように、モノバックボーンフレーム21をクラッチ室側上方膨出部175aに重なる位置まで下げて配置することで、乗車時に脚を通す際にモノバックボーンフレーム21が邪魔になり難く、跨ぎ空間S(図1)の下端を低くでき、跨ぎ易さを向上できる。
図8を参照し、クラッチ操作機構72のリフターカムプレート106は、メイン軸75と同軸のガイド穴106aを中心に回動する。リフターカムプレート106の連結部111は、ガイド穴106a側から後下方のシフトスピンドル94側へ延びる。連結部111には、ピン108が挿通される長孔状のガイド孔部186が設けられている。
クラッチレバー103は、シフトスピンドル94から上方へ延び、ピン108を介して連結部111に連結される。
シフトスピンドル94の回転に伴ってクラッチレバー103が回動し、ピン108がガイド孔部186内を移動することで、リフターカムプレート106は回動する。リフターカムプレート106の回動量や回動タイミングは、ガイド孔部186の形状によって設定される。図8のように、ピン108がガイド孔部186の先端側に位置する状態は、シフトダウン操作が行われたシフトダウン状態である。また、自動変速機68は、ピン108がガイド孔部186の基端側に位置するとシフトアップ操作が行われた状態となり、ピン108がガイド孔部186の中間部に位置すると、変速操作が行われていない中立状態となる。
クラッチカバー周壁部183の後壁側のカバー固定ボス部184は、クラッチカバー固定ボルト42の頭部を避けるために、クラッチ室47内へ膨出する内方膨出部184aをクラッチカバー周壁部183に有する。詳細には、内方膨出部184aは、クラッチカバー周壁部183の一部が、クラッチカバー固定ボルト42の頭部の外径よりも一回り大きい円弧形状で膨出した部分であり、クラッチカバー周壁部183の高さの略全体に亘り形成される。
リフターカムプレート106の連結部111は、シフトダウン状態における後部に、前方側へ円弧状に窪んだ避け部187を有する。避け部187は、シフトダウン状態において、カバー固定ボス部184の内方膨出部184aに近接した状態で内方膨出部184aを避ける。このため、クラッチカバー周壁部183の後壁を前方側に寄せることができ、且つ、リフターカムプレート106の回動範囲を確保することができる。
次に、パワーユニット12のブリーザ構造について説明する。
パワーユニット12は、エンジン12aの運転により上昇するクランクケース25内の圧力を外部に逃がすブリーザ室200を、クランクケース25内においてクランク室45の上方に備える。
図7に示すように、一側ケース37Lは、クランク軸36の上方で前後に延びる一側ブリーザ室底壁201を備える。一側ブリーザ室底壁201は、クランク軸36の前後に跨るように前後に延び、前端が一側ケース37Lの内側周壁部177の前壁190に繋がり、後端が内側周壁部177のクランク室側上壁178に繋がる。
一側ブリーザ室底壁201は、クランクウェブ36aの回動軌跡に沿って上方に凸の円弧状に形成される円弧状部203と、前部側ほど低くなる円弧状部203の前端から前方に延びて前壁190に繋がる底壁前部204と、後部側ほど低くなる円弧状部203の後端から後上方に延びてクランク室側上壁178に繋がる底壁後部205とを備える。底壁後部205は、駆動変速ギア列77に近接して、駆動変速ギア列77の前上方に設けられる。底壁後部205の後面には、駆動変速ギア列77の上方まで後方に延びる延出部205aが設けられる。
一側ブリーザ室底壁201は、一側ケース37Lの内側壁50bから内側周壁部177と同じ高さまで立設されている。このように、一側ブリーザ室底壁201が設けられることで、クランク室45の上方に、一側ブリーザ空間部202が区画される。
一側ブリーザ空間部202内には、円弧状部203からクランク室側上壁178の近傍まで上方に突出する下側リブ206が設けられる。また、一側ブリーザ空間部202内には、下側リブ206の前後の位置で、クランク室側上壁178から一側ブリーザ室底壁201の近傍まで下方に突出する上側リブ207が複数設けられる。下側リブ206及び上側リブ207が設けられることで、一側ブリーザ空間部202内にはラビリンス構造が形成される。
一側ブリーザ室底壁201は、クランク室45側に連通するオイル抜き孔208を、円弧状部203よりも低い位置にある底壁前部204に有する。オイル抜き孔208の下方には、前壁190からクランクウェブ36aの回動軌跡の近傍まで延びるオイルガイド壁190aが設けられる。
一側ブリーザ室底壁201は、他側ケース37Rとの合わせ面に、前後に延びる油溝209を有する。
図10は、他側ケース37Rをクランク室45側から見た側面図である。
他側ケース37Rは、クランク軸36(図7)の上方で前後に延びる他側ブリーザ室底壁211を備える。他側ブリーザ室底壁211は、クランク軸36の前後に跨るように前後に延び、前端が他側ケース37Rの内側周壁部173の前壁191に繋がり、後端が内側周壁部173のクランク室側上壁174に繋がる。
内側周壁部177には、ケース連結ボルト40が締結されるボス部193が複数設けられている。クランク軸36の下方には、クランク室底壁180が設けられる。
他側ブリーザ室底壁211は、クランクウェブ36aの回動軌跡に沿って上方に凸の円弧状に形成される円弧状部213と、前部側ほど低くなる円弧状部213の前端から前方に延びて前壁191に繋がる底壁前部214と、後部側ほど低くなる円弧状部213の後端から後上方に延びてクランク室側上壁174に繋がる底壁後部215とを備える。底壁後部215は、駆動変速ギア列77に近接して、駆動変速ギア列77の前上方に設けられる。底壁後部215の後面には、駆動変速ギア列77の上方まで後方に延びる延出部215aが設けられる。
他側ブリーザ室底壁211は、他側ケース37Rの壁部49から内側周壁部173と同じ高さまで立設されている。このように、他側ブリーザ室底壁211が設けられることで、クランク室45の上方に、他側ブリーザ空間部212が区画される。
他側ブリーザ空間部212内には、円弧状部213からクランク室側上壁174の近傍まで上方に突出する下側リブ216が設けられる。また、他側ブリーザ空間部212内には、下側リブ216の前後の位置で、クランク室側上壁174から他側ブリーザ室底壁211の近傍まで下方に突出する上側リブ217が複数設けられる。下側リブ216及び上側リブ217が設けられることで、他側ブリーザ空間部212内にはラビリンス構造が形成される。
他側ブリーザ室底壁211は、クランク室45側に連通するオイル抜き孔218を、円弧状部213よりも低い位置にある底壁前部214に有する。オイル抜き孔218の下方には、前壁191からクランクウェブ36aの回動軌跡の近傍まで延びるオイルガイド壁191aが設けられる。
他側ブリーザ室底壁211は、オイルポンプ232(図11)からオイルが供給される油路219を底壁前部214に有する。
他側ブリーザ空間部212内の後部の下部には、他側ブリーザ空間部212をクラッチ室47内に連通させるブリーザ室入口220が設けられる。ブリーザ室入口220は、他側ブリーザ空間部212内の壁部49を貫通する開口であり、側面視では、他側ブリーザ室底壁211の後端と底壁後部215の前端とに跨って設けられる。ブリーザ室入口220は、他側ブリーザ空間部212内で最も低い位置に設けられている。
他側ブリーザ空間部212内の前部の上部には、他側ブリーザ空間部212を外部に連通させるブリーザ室出口221が設けられている。ブリーザ室出口221は、他側ブリーザ空間部212内の壁部49を貫通する開口であり、側面視では、円弧状部213の前端の上方の他側ブリーザ空間部212の上端部に設けられる。
一側ブリーザ空間部202と他側ブリーザ空間部212とは、ブリーザ室入口220、ブリーザ室出口221、油路219及び油溝209の構成を除き略左右対称に形成されており、一側ケース37Lと他側ケース37Rとが合わさることで一側ブリーザ空間部202と他側ブリーザ空間部212とが一体となって密閉され、ブリーザ室200が形成される。また、オイル抜き孔208,218は合わさって一つのオイル抜き孔となる。
油路219から供給されるオイルは、油溝209の後端から吐出され、下方の変速機構70等に供給される。
ブリーザ室200の剛性は、下側リブ206,216及び複数の上側リブ207,217によって大きく確保される。
他側ケース37Rの壁部49には、クランク室45をクラッチ室47側に連通させる連通孔223が設けられている。連通孔223は、クランク支持孔部118の前上方でオイル抜き孔208,218の下方に位置する。クランク室45の空気は、連通孔223を通ってクラッチ室47側に流れる。また、図6に示すように、他側ケース37Rの壁部49の下部には、壁部49を貫通するオイル通し孔241,241が設けられており、オイル通し孔241,241は、クラッチ室47のオイルをクランク室45に通す。
前側ボス30L及び前側ボス30Rは、一側ブリーザ空間部202及び他側ブリーザ空間部212の上端の上面からそれぞれ上方に延出して形成されている。すなわち、クランクケース25の前側ボス部30は、ブリーザ室200を有してブリーザ室200と一体に設けられており、ブリーザ室200の上面から上方に延出している。ブリーザ室200は、クランクケース25の上部の前端から前後の中間部まで設けられている。
本実施の形態では、クランク軸36に一体に設けたACGスタータ52によりエンジン12aを始動させるため、クランク軸36の上方に専用のスタータモータを設ける必要がなく、クランク軸36の上方にスペースを確保できる。このため、クランクケース25の前部の上部を全体的に膨出させてクランク室側上方膨出部174a,178aを設けることができ、クランク室側上方膨出部174a,178aの内側に大型のブリーザ室200を設けることができる。
また、前側ボス部30は、クランクケース25が一体的に膨出したクランク室側上方膨出部174a,178aを有し、クランク室側上方膨出部174a,178aの上部に一体的に設けられるため剛性が高いとともに、クランクケース25の上面の前端でクランク軸36よりも前方に位置する前側ボス部30と、後端の後側ボス部31との間の距離が長いため、クランクケース25を車体フレーム11の剛性メンバとして効果的に利用できる。
ブリーザ室入口220からブリーザ室200に侵入するオイルミストやブローバイガスは、ブリーザ室200のラビリンス構造内を前上方に移動するに連れて気体とオイルとに気液分離される。分離されたオイルは、円弧状部203,213上を下ってオイル抜き孔208,218からクランク室45に戻る。分離された気体は、ブリーザ室出口221から外側に排出される。
ブリーザ室出口221は、図3に示すように、クランク室側上方膨出部174aの外側面、すなわちブリーザ室200の側壁に設けられ、クラッチカバー周壁部183の上壁183aよりも上方に位置する。ブリーザ室出口221にはブリーザーチューブ224が接続されており、ブリーザ室200の気体はブリーザーチューブ224を通って前記吸気装置内に流れる。
前側ボス部30は、固定ボルト32が挿通されるボルト孔30aを、ブリーザ室200の外側の上端部に有する。
図11は、クランクケース25の油路を示す断面図である。
図3及び図11に示すように、クラッチカバー39の前部の下部には、右側方に開口するオイルフィルター収納部229が設けられる。オイルフィルター収納部229には、オイルフィルター230が設けられ、オイルフィルター収納部229の開口は、オイルフィルターカバー231によって塞がれる。
クラッチカバー39の内側でオイルフィルター収納部229と他側ケース37Rの壁部49との間には、クランク軸36の動力によって駆動されるオイルポンプ232が設けられている。オイルポンプ232の吐出口は、クランク軸36に対し平行に延びる油路233によってオイルフィルター収納部229に接続される。
オイルフィルター収納部229の出口は、油路233と平行に延びる油路234によって、クランクケース25のメイン油路235に接続される。メイン油路235と油路234とは、略同軸の位置関係で設けられ、クランク軸36と平行に一直線に車幅方向へ延びる。
図6及び図11を参照し、メイン油路235は、クランクケース25の前部の下部に設けられる。オイルポンプ232の吸込み口であるストレーナー236は、クランク室45の下方でクランクケース25の底部に設けられる。
壁部49及び内側壁50bには、メイン油路235と軸受け部49a,50cとを接続する油路237,238が設けられる。
また、メイン油路235は、クラッチカバー39の壁部内を通る油路239に接続されており、油路239を通るオイルは、クランク軸36の軸部36bの軸端が配置されるオイル溜まり部240に供給される。
次に、ACGスタータ52の冷却構造について説明する。
図5に示すように、ACGスタータ52のロータ52aは、クランク軸36の軸部36bの一端51から径方向に延びる円板部250と、円板部250の周縁部から一側ケース37L側へ延びる円筒部251とを有し、クランク軸36と一体に回転する。円筒部251の内周面にはマグネット252が設けられる。
ステーター52bは、円筒部251の内側でマグネット252に対向するように配置され、一側ケース37Lに固定される。
図12は、パワーユニット12の周辺部の左側面図である。図12では、ACGカバー38及びACGスタータ52等は不図示である。
図5及び図12に示すように、一側ケース37Lの外側壁50aは、ACGスタータ52に対向する位置に円形の開口部253を有し、この開口部253は、円板状の壁板254が嵌め込まれることで塞がれる。壁板254の外周には、ガスケット255が全周に設けられており、ガスケット255が開口部253の内周面に密着することで、開口部253は密閉される。壁板254の直径は、ステーター52bの外径よりも大きく、ロータ52aの外径よりも小さい。壁板254は、外周近傍に設けられる一対のボルト259によって外側壁50aに締結される。
ステーター52bは、壁板254にステーター固定ボルト256で固定される。
壁板254は、クランク軸36の一端51が貫通する孔257を中央に有する。孔257と一端51との間は、一端51に嵌合するオイルシール258によってシールされる。
壁板254を含む外側壁50aの外側面とACGカバー38とで区画される前記ACGスタータ収容部48は、油室であるクランクケース25の内部のオイルが供給されないドライ室である。
ACGスタータ52の近傍には、ロータ52aの回動位置を検出するロータ角度センサ260が設けられる。ロータ角度センサ260は、ACGスタータ収容部48において外側壁50aに固定され、その先端部260aはロータ52aとステーター52bとの間の隙間に位置する。ロータ角度センサ260は、基板と、磁気センサとして例えばホール素子とを備える。
図13は、パワーユニット12の周辺部の左側面図である。図14は、ACGスタータ52の上部の周辺部の断面の斜視図である。ここで、図13及び図14では、ステップステー35等は不図示である。
図12〜図14に示すように、一側ケース37Lは、ロータ52aの外周部を周囲から囲うように立設された環状壁部261を、外側壁50aに有する。環状壁部261は、その全周に亘り、ロータ52aの外周部に対して所定の距離だけ間隔をあけて設けられる。
環状壁部261は、前面側に設けられる前側切り欠き部262,263を備える。前側切り欠き部262,263は、クランク軸36の一端51よりも上方に配置される。
また、環状壁部261は、上面側に設けられる上側切り欠き部264,265を備える。さらに、環状壁部261は、後下方に開放する下側切り欠き部266,267を備える。下側切り欠き部266,267は、クランク軸36の一端51よりも後方且つ下方に設けられる。一側ケース37Lは、アルミ合金等の金属を鋳造して製造され、切り欠き部を含む環状壁部261も、鋳造の際に一体に形成される。
環状壁部261には、ACGカバー固定ボルト41が締結されるカバー固定ボス部268が複数設けられる。環状壁部261は、車幅方向の端面261aが面一に形成される。
一側ケース37Lの外側壁50aは、カウンタ軸76が設けられる外側壁後部50dを環状壁部261の後方に有する。ドライブスプロケット85は、外側壁後部50dから外側に突出したカウンタ軸76の端に固定される。巻掛けチェーン19は、ドライブスプロケット85に巻き掛けられ、スイングアーム14の上方及び下方を通って後方へ延びる。
外側壁後部50dは、ドライブスプロケット85の前半部を外側から囲うように設けられる支持壁269を有する。支持壁269は、環状壁部261の後部と一体に設けられ、支持壁269の端面は環状壁部261の端面261aと面一である。
環状壁部261の後部と巻掛けチェーン19の前端との間には、金属製の板状のスプロケットガイド270が設けられる。スプロケットガイド270は、巻掛けチェーン19とACGカバー38との接触を防止する。
スプロケットガイド270は、ドライブスプロケット85の外周部の形状に沿う略半円の円弧状に形成される。スプロケットガイド270は、支持壁269の端面上に配置され、ドライブスプロケット85の上方及び下方に設けられる一対のACGカバー固定ボルト41によって支持壁269に固定される。すなわち、スプロケットガイド270は、その板厚の分だけ、環状壁部261の端面261aよりも車幅方向の外側に突出する。
図15は、パワーユニット12を下方から見た図である。図16は、ACGカバー38を一側ケース37L側から見た図である。
図13〜図16に示すように、ACGカバー38は、上下方向よりも前後方向に長いカバーであり、ACGスタータ52を外側方から覆うACGカバー部275と、ACGカバー部275からドライブスプロケット85の外側方まで延びてドライブスプロケット85及び巻掛けチェーン19の前端部を外側方から覆うスプロケットカバー部276とを一体に備える。ACGカバー38は樹脂成型品である。
ACGカバー部275は、ロータ52aを側方から覆う円板状側壁部277と、円板状側壁部277の周縁部から一側ケース37L側へ延びてロータ52aを周方向から覆う円筒状周壁部278とを備える。円筒状周壁部278は、ACGカバー固定ボルト41が挿通されるボス部279a,279b,279cを、上部の前部、上部の後部、及び、下部とに備える。
円筒状周壁部278は、環状壁部261の端面261aに当接して取り付けられる当接壁部278aを、上部の全体と、前半部とに備える。また、円筒状周壁部278は、当接壁部278aよりも壁の高さが低い下壁部278bを下部に備え、円筒状周壁部278が切り欠かれた下部開放部278cを、下壁部278bに連続して後下部に備える。
さらに、円筒状周壁部278は、当接壁部278aよりも壁の高さが一段低く形成された後部仕切り壁部278dを、円筒状周壁部278の後部で下部開放部278cの上方に備える。詳細には、後部仕切り壁部278dは、スプロケットガイド270の板厚の分だけ当接壁部278aよりも低く形成される。後部仕切り壁部278dは、下部開放部278cの上端からACGカバー部275の上部の後部のボス部279b近傍まで延びる。
スプロケットカバー部276は、ドライブスプロケット85を側方から覆うスプロケット側側壁部280と、スプロケット側側壁部280の上縁の全長に亘って立設されて一側ケース37L側へ延びるスプロケット側上壁部281と、スプロケット側側壁部280の下縁の前後の中間部から一側ケース37L側へ立設されるスプロケット側下壁部282とを備える。また、スプロケットカバー部276は、ドライブスプロケット85の前方でドライブスプロケット85の外形に沿うように形成される円弧状壁部283を備える。また、スプロケットカバー部276は、カウンタ軸76の中心に対応する位置に環状のリブ284を備える。スプロケットカバー部276の後面は、後方に開放している。
スプロケット側上壁部281は、ACGカバー部275の当接壁部278aに連続して後方へ延びており、スプロケット側上壁部281の端面は、当接壁部278aの端面と面一である。
円弧状壁部283は、後部仕切り壁部278dの後部に連側して一体に形成されており、円弧状壁部283の端面は、後部仕切り壁部278dの端面と面一である。円弧状壁部283は、スプロケットガイド270に沿って円弧状に形成されており、ACGカバー38が取り付けられるとスプロケットガイド270の外面に当接する。
円弧状壁部283の上端部及び下端部には、ACGカバー固定ボルト41が挿通される円筒状のボス部285が設けられる。また、各ボス部285は、スプロケットガイド270の上端及び下端に設けられた位置決め孔270aに嵌まる位置決め突起285aを備える。
ACGカバー38がACGカバー固定ボルト41を介して一側ケース37Lに固定されると、ACGカバー38の前部にはACGスタータ収容部48が形成され、ACGカバー38の後部には、スプロケットカバー部276と外側壁後部50dとで区画されるスプロケット収容部286が形成される。
ACGカバー38が固定されると、ACGカバー38の当接壁部278aは環状壁部261に隙間なく当接し、当接壁部278aと前側切り欠き部262,263との間には前方に開口する走行風導入口287,288が形成され、上側切り欠き部264,265と当接壁部278aとの間にはハーネス通し孔289,290が形成される。ハーネス通し孔289,290は、電装品のハーネス(不図示)が通されることで塞がれる。
また、ACGカバー38が固定されると、下壁部278b及び下部開放部278cと環状壁部261との間には、ACGスタータ収容部48内を下方に連通させる下部外気連通口291が形成される。
また、後部仕切り壁部278dが当接壁部278aよりも一段低く形成されているとともに、スプロケットガイド270は、後部仕切り壁部278dの段差の分だけ外側に出っ張るように設けられる。このため、ACGカバー38が固定されると、円弧状壁部283はスプロケットガイド270に隙間なく当接するが、後部仕切り壁部278dの上部292は環状壁部261に当接せず、上部292と環状壁部261との間には隙間が形成される。この隙間は、ACGスタータ収容部48からスプロケット収容部286へ空気を流す排気通路293となる。排気通路293は、ACGスタータ52とドライブスプロケット85との間で、カウンタ軸76よりも上方に位置する。図16には、後部仕切り壁部278dにおける排気通路293に相当する部分がハッチングで示されている。
また、一側ケース37Lの外側壁後部50dは、スプロケットカバー部276よりも車幅方向内側に位置しており、外側壁後部50dとスプロケット側上壁部281及びスプロケット側下壁部282との間には隙間が形成される。
ここで、ACGカバー38を通る空気の流れについて説明する。
図13に示すように、自動二輪車10の走行時には、前方から流れる走行風Wは、走行風導入口287,288からACGスタータ収容部48内に流入し、ロータ角度センサ260(図5)を含むACGスタータ52を冷却する。ACGスタータ52を冷却した走行風Wは、一部が排気通路293からスプロケット収容部286を経て後方の外部に排出されるとともに、他の一部は下部外気連通口291から下方の外部に排出される。このため、簡単な構造で走行風Wを利用してACGスタータ52を効率良く冷却できる。
図17は、停車時におけるACGカバー38を通る空気の流れを示す図である。
停車時は、アイドルストップ機能により、エンジン12aは停止され、ロータ52aの回転も停止されている。
図14に示すように、停車時は、ACGスタータ収容部48内よりも温度が低い外部の空気W1が、下部外気連通口291からACGスタータ収容部48内に流入しACGスタータ52を冷却する。
ACGスタータ収容部48内でACGスタータ52により加熱された空気W1は、上昇して上部の走行風導入口287,288及び排気通路293から外部に排出される。排気通路293を通る空気は、スプロケット収容部286を経て後方の外部に排出される。このように、停車時には、ACGスタータ収容部48内を下方から上方に流れる気流が形成されるため、停車時においてもACGスタータ52を効率良く冷却できる。
図18は、シリンダヘッド28の固定構造を示す断面図である。
シリンダヘッド28は、シリンダヘッド28内からシリンダ27を貫通するヘッド固定ボルト295によって、一側ケース37Lの上部のねじ孔部296に締結される。
シリンダヘッド28内には、ヘッド固定ボルト295の頭部を受ける座部297と、シリンダヘッド28の下端まで座部297を貫通するボルト孔297aが設けられる。
シリンダ27は、ヘッド固定ボルト295が貫通するボルト孔298を備える。
ねじ孔部296は、一側ケース37Lの上部を貫通し、ACGスタータ収容部48に連通する孔である。
本実施の形態では、ヘッド固定ボルト295の頭部と座部297との間に、シールワッシャ299が設けられている。これにより、ボルト孔297aがシールワッシャ299によって密閉されるため、シリンダヘッド28内のオイル等がACGスタータ収容部48に影響することを防止できる。
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、自動二輪車10は、車体フレーム11の前部から車幅中心上を後下方に延びるモノバックボーンフレーム21と、モノバックボーンフレーム21の直下方に配されるとともに、前傾シリンダのエンジン12aを有するパワーユニット12と、パワーユニット12の後上方に配されるシート15と、を備え、モノバックボーンフレーム21とシート15との間に側面視で下に凹む跨ぎ空間Sが設けられ、パワーユニット12は、エンジン12aのクランク軸36と、クランク軸36の回転が伝えられる変速用クラッチ機構71と、変速用クラッチ機構71と同軸に接続されるとともに複数の駆動変速ギア列77を有するメイン軸75と、駆動変速ギア列77と噛み合う複数の被動変速ギア列78を有するカウンタ軸76と、駆動変速ギア列77及び被動変速ギア列78を軸方向に移動することで変速させるシフトドラム125とを有し、シフトドラム125は、メイン軸75及びカウンタ軸76よりも下方に配され、クランクケース25の上壁の、クランク軸36が収容されるクランク室45と変速用クラッチ機構71が収容されるクラッチ室47との間には、クラッチ室47の上壁の方を高くするクラッチ室側上方膨出部175aが形成され、モノバックボーンフレーム21は、パワーユニット12のクランク室側上壁174,178に沿うように配されるとともに、側面視で、クラッチ室47と一部重なる。これにより、シフトドラム125をメイン軸75及びカウンタ軸76よりも下方に配すことで、クランク室側上壁174,178を低くでき、モノバックボーンフレーム21を、側面視でクラッチ室47と一部重なる位置まで下げることができる。従って、パワーユニット12の最低地上高を維持しながら、モノバックボーンフレーム21の高さを下げ、跨ぎ易さを向上することができる。
また、パワーユニット12のメイン軸75の軸中心75aはクランク軸36の軸部36bの上端36f及びカウンタ軸76の上端76bよりも上方に配される。シフトドラム125がメイン軸75の上方に存在しないため、クランク室側上壁174,178の高さに影響しない程度にメイン軸75の位置を上方に配置でき、メイン軸75が上方に移動して空いたスペースを利用してカウンタ軸76をクランク軸36側に寄せて配置できる。このため、跨ぎ空間Sを確保したまま、クランクケース25の前後長を短くでき、クランクケース25の後方に空間を確保し易い。
また、パワーユニット12内では、シフトドラム125よりも後方に、シフトスピンドル94が配され、シフトスピンドル94には、シフトドラム125を次の変速段に回動するマスターアーム115と、変速用クラッチ機構71の断接操作を行うクラッチレバー103とが設けられ、クラッチレバー103は変速用クラッチ機構71をリフトするリフターカムプレート106を介して変速用クラッチ機構71と連結され、リフターカムプレート106の後部に、クランクケース25に固定されるクラッチカバー39のカバー固定ボス部184の内方膨出部184aを避ける避け部187が設けられる。このため、内方膨出部184aを避け部187によって避けることができ、リフターカムプレート106の回動範囲を確保し易い。
また、本発明を適用した実施の形態によれば、自動二輪車10は、シリンダ27が前傾して設けられるエンジン12aのクランク軸36の前方と、エンジン12aを有するクランクケース25の後部とに、それぞれ前側ボス部30と後側ボス部31とが突出して設けられ、パワーユニット12を支持する車体のモノバックボーンフレーム21に前側エンジンブラケット21aと後側エンジンブラケット21bとが設けられ、前側ボス部30と後側ボス部31とが、それぞれ前側エンジンブラケット21aと後側エンジンブラケット21bとに固定ボルト32,33で締結され、エンジン12aのACGスタータ52がクランクケース25のクランク室側上壁174,178よりも下方に配されるとともに、上方に突出する前側ボス部30の内部には、クランク軸36の前後に延びるように形成されるブリーザ室200が設けられる。これにより、ACGスタータ52をクランク室側上壁174,178よりも下方に配することで、始動性を確保しながら、クランク軸36の上方にクランク軸36の前後に延びるスペースを確保でき、このスペースに、前側ボス部30を設けるとともに前側ボス部30の内部にブリーザ室200を設けることで、クランクケース25を車体の剛性メンバとして活用し、ACGスタータ52によってエンジン12aの始動性を確保しながら、パワーユニット12内のブリーザ室200を拡張できる。
また、スタータモータは、クランク軸36上にACGスタータ52として設けられるため、クランクケース25の大きさをほとんど増加させることなく、スタータモータをクランク室側上壁174,178よりも下方に配することができる。
また、ブリーザ室200の一側ブリーザ室底壁201及び他側ブリーザ室底壁211には、クランク軸36の前後に跨る円弧状部203,213が形成されるとともに、底壁前部204,214にオイル抜き孔208,218が設けられる。このため、ブリーザ室200の大きさを大きく確保できるとともに、ブリーザ室200に溜まるオイルを、円弧状部203,213の前方で低くなった場所のオイル抜き孔208,218から効率良く抜くことができる。
さらに、ブリーザ室出口221は、クランクケース25に固定されるクラッチカバー39の上壁183aよりも上方で、ブリーザ室200の上部の側壁に設けられるため、気液分離の経路を長くでき、効率良く気液分離をすることができる。また、ブリーザ室200の上部の側壁のブリーザ室出口221は、クラッチカバー39等が邪魔にならず容易にアクセスできるため、ブリーザーチューブ224を取り付け易い。
さらに、本発明を適用した実施の形態によれば、パワーユニット12は、エンジン12aのクランク軸36上に設けられるACGスタータ52と、クランク軸36の後方に配されるとともに、クランク軸36の回転入力を変速機構70を介して出力するカウンタ軸76と、カウンタ軸76に設けられ、後輪3側と巻掛けチェーン19を介して連結されるドライブスプロケット85と、ACGスタータ52の外側方を覆うACGカバー38と、を備え、ACGスタータ52はエンジン12aの始動を可能なACGスタータ52として設けられ、ACGスタータ52と、そのロータ52aの回動位置を検出するロータ角度センサ260とがパワーユニット12のクランクケース25の油室外方に配され、ACGカバー38は、その後部がドライブスプロケット85の外側方まで延びて、スプロケットカバー部276をなし、パワーユニット12の外側壁50aとACGスタータ52の外側方に位置するACGカバー部275とによってACGスタータ収容部48が区画され、外側壁50aとスプロケットカバー部276とによってスプロケット収容部286が区画され、ACGスタータ収容部48からスプロケット収容部286への排気通路293が、ACGカバー38と外側壁50aとの間の隙間として設けられる。これにより、ACGスタータ52と、ロータ角度センサ260とをクランクケース25の油室外方に配してアイドルストップを可能とし、発電時のACGスタータ52の熱は、排気通路293から排出できる。このため、アイドルストップを可能とし、且つ、ACGスタータ52のロータ角度センサ260を耐熱温度以下に維持可能な構造を合理的に設定できる。
また、ACGスタータ収容部48の前部に走行風導入口287,288が設けられるため、走行風導入口287,288からACGスタータ収容部48に導入される走行風Wで効率良くロータ角度センサ260を冷却できるとともに、走行風Wの流れによって排気通路293から効率良く熱を排出できる。
また、ACGカバー38は樹脂製であり、走行風導入口287,288は、クランクケース25のACGスタータ収容部48の前面の前側切り欠き部262,263として設けられるため、ACGカバー38の強度を確保し易いとともに、走行風導入口287,288も容易に形成できる。
さらに、排気通路293はカウンタ軸76より上方に配され、ACGカバー38のACGスタータ収容部48の下部に下部外気連通口291が設けられる。このため、走行時は、走行風導入口287,288から導入された走行風Wを排気通路293及び下部外気連通口291から排出でき、停車時には、下部外気連通口291から導入されたW1を、上方の排気通路293から排出でき、走行時及び停車時に効率良くロータ角度センサ260を冷却できる。
10 自動二輪車(鞍乗り型車両)
12a エンジン
21 モノバックボーンフレーム(メインフレーム)
21a 前側エンジンブラケット
21b 後側エンジンブラケット
25 クランクケース(パワーユニットケース)
27 シリンダ
30 前側ボス部
31 後側ボス部
32 固定ボルト(ボルト)
33 固定ボルト(ボルト)
36 クランク軸
39 クラッチカバー
52 ACGスタータ(スタータモータ)
174,178 クランク室側上壁(パワーユニットケースの上壁)
183a 上壁(クラッチカバーの上壁)
200 ブリーザ室
201 一側ブリーザ室底壁(底壁)
211 他側ブリーザ室底壁(底壁)
203,213 円弧状部
204,214 底壁前部(底壁の前下部)
208,218 オイル抜き孔
221 ブリーザ室出口(出口)

Claims (5)

  1. シリンダ(27)が前傾して設けられるエンジン(12a)のクランク軸(36)の前方と、前記エンジン(12a)を有するパワーユニットケース(25)の後部とに、それぞれ前側ボス部(30)と後側ボス部(31)とが突出して設けられ、前記パワーユニットケース(25)を支持する車体のメインフレーム(21)に前側エンジンブラケット(21a)と後側エンジンブラケット(21b)とが設けられ、前記前側ボス部(30)と前記後側ボス部(31)とが、それぞれ前記前側エンジンブラケット(21a)と前記後側エンジンブラケット(21b)とにボルト(32,33)で締結される鞍乗り型車両において、
    前記エンジン(12a)のスタータモータ(52)が前記パワーユニットケース(25)の上壁(174,178)よりも下方に配されるとともに、上方に突出する前記前側ボス部(30)の内部には、前記クランク軸(36)の前後に跨ぐように形成され
    前記ブリーザ室(200)の出口(221)は、前記パワーユニットケース(25)に固定されるクラッチカバー(39)の上壁(183a)よりも上方に突出する前記前側ボス部(30)の内部に設けた前記ブリーザ室(200)の前記上壁(183a)よりも上方の側壁に設けられるブリーザ室(200)が設けられることを特徴とする鞍乗り型車両。
  2. 前記スタータモータは、前記クランク軸(36)上にACGスタータ(52)として設けられることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両。
  3. 前記ブリーザ室(200)の底壁(201,211)には、前記クランク軸(36)の前後に跨る円弧状部(203,213)が形成されるとともに、前記底壁(201,211)の前下部(204,214)にオイル抜き孔(208,218)が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の鞍乗り型車両。
  4. 前記パワーユニットケース(25)内には、前記クランク軸(36)の後方に変速機構(70)が設けられ、前記ブリーザ室(200)の底壁(201)には、前後に延びる油溝(209)が設けられ、前記油溝(209)は、前記変速機構(70)の上方に位置する後端からオイルを吐出することを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両。
  5. 前記ブリーザ室(200)の後部の最下部にブリーザ室入口(220)を有していることを特徴とする請求項3記載の鞍乗り型車両。
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