JP5675438B2 - 車両用動力伝達装置 - Google Patents
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Description
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、発進クラッチと変速クラッチとを備えた構成で、オイルによる回転フリクションの低減と各クラッチの伝達容量の確保に有利な車両用動力伝達装置を提供することを目的としている。
この構成によれば、発進クラッチ(13)は、ベルト式変速機(10)と共にオイルが溜まらない乾式の第1変速室(10R)に配置され、機械式変速機(11)は、第1変速室(10R)と分離して設けられた湿式の第2変速室(11R)に配置され、変速クラッチ(14)は、第2変速室(11R)を挟んで第1変速室(10R)と反対側に設けられた第3室(14R)に配置されるので、発進クラッチと変速クラッチとを、湿式の第2変速室内のオイル量やオイル温度の影響を直接受けないように配置できると共に、発進クラッチを、オイルの攪拌抵抗を受けない乾式として小型化しつつ伝達容量を確保できる。
また、両室を同じオイルによる潤滑構造としながら、各々のオイルレベルを独立した高さに設定でき、潤滑構造を簡素化しつつオイルによるフリクションの増加を防止することができる
また、上記構成において、前記クラッチアウター(14A)が前記ワンウェイクラッチ(84)で規制される方向に回転する場合に、前記ワンウェイクラッチ(84)の回り止め部材(86)が係合する規制部材(85)を有し、前記規制部材(85)は、前記第2変速室(11R)と前記第3室(14R)とを区画する側壁(28B1)に取り付けられるようにしてもよい。この構成によれば、第3室に隣接する第2変速室内に、規制部材の取り付け部が張り出さず、遊星歯車機構から確実に離間させることができる。
また、ベルト式変速機の従動プーリーを支持する支持軸の一端に、前記発進クラッチを設け、前記支持軸の他端に前記変速クラッチを設けるようにすれば、従動プーリーが幅方向外側に大きく張り出して大型化するのを回避することができると共に、乾式の発進クラッチの配置に要する大型スペースを、変速クラッチを収容する室の影響を与えずに確保できる。
また、第2変速室と第3室とを区画すると共に、第2変速室内のオイルを第3室に供給する潤滑用通路を設けるようにすれば、両室を同じオイルによる潤滑構造としながら、各々のオイルレベルを独立した高さに設定でき、潤滑構造を簡素化しつつオイルによるフリクションの増加を防止することができる。
また、変速クラッチのクラッチアウターを一方向に回転させるワンウェイクラッチを有し、上記クラッチアウターを、ワンウェイクラッチの回り止め部材を支持する支持部材にすれば、部品点数を低減して小型化を図ることができる。
また、変速クラッチのクラッチアウター(14A)を一方向に回転させるワンウェイクラッチを有し、ワンウェイクラッチは、変速クラッチのクラッチアウターを軸支するニードルベアリング一体型のワンウェイクラッチにするようにすれば、部品点数を減らすことができると共に、ワンウェイクラッチの配置に要する径方向のスペースが小さくてすみ、径方向に小型化することができる。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用動力伝達装置が適用されるパワーユニットPの内部を右方から見た図であり、図2は図1のII−II断面を示す図である。
このパワーユニットPは、自動二輪車に搭載されるパワーユニットであり、エンジン(内燃機関)Eと、変速機Mとを一体に備えている。なお、各図において、符号FRは、このパワーユニットPを自動二輪車に搭載した場合の前方向を示し、符号UPは上方向を示し、符号Rは右方向を示しており、以下の説明中、前後左右及び上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。
シリンダ部3には、ピストン7が摺動自在に配置され、クランクケース2には、ピストン7にコンロッド8を介して連結されたクランク軸9が回転自在に支持されている。ピストン7が往復動すると、それに伴ってクランク軸9が回転する。ピストン7の上端面に向き合うシリンダヘッド5の底面には燃焼室35が形成され、シリンダヘッド5の側部から点火プラグ36(図2参照)が装着され、その先端が上記燃焼室35に臨んでいる。シリンダヘッド5とシリンダヘッドカバー6の間にクランク軸9と平行にカム軸40が支承され、カム軸40に設けられたカムによって、吸気弁41、排気弁42が開閉駆動される。
図2に示すように、カム軸40は、クランク軸9に設けられた駆動スプロケット43と、カム軸40の左端に設けられた従動スプロケット44と、これらの間に巻き掛けられたカムチェーン45とを介して、クランク軸9によって回転駆動される。
図2に示すように、クランク軸9の動力は、変速機Mを介して後輪(駆動輪)WRに伝達される。つまり、変速機Mは、エンジンEの動力を後輪WRに伝達する車両用動力伝達装置を構成している。
詳述すると、この変速機Mは、Vベルト式変速機(Vベルト式自動変速機)10と、機械式変速機11と、Vベルト式変速機10と機械式変速機11とを直列に接続する発進クラッチ13と、機械式変速機11の変速段を切り換える変速クラッチ14(84)とを備えている。
なお、各図において、動力伝達に関わる回転軸として、Vベルト式変速機10の駆動軸となるクランク軸9、Vベルト式変速機10の従動軸15、中間軸16及び出力軸17を示している。
クランク軸9の右端は、右側クランクケース26を貫通し、このクランク軸9の右端部9Aには、交流発電機30が設けられる。右側クランクケース26と交流発電機カバー27との間には、この交流発電機30を収容する発電機室30Rが形成される。
また、クランク軸9の左端は、左側クランクケース24Aを貫通し、クランク軸9の左端部9Bには、Vベルト式変速機10が設けられる。左側クランクケース24A(第1変速機ケース24Bを含む)と、第1変速機カバー25とによって、Vベルト式変速機10を収容する第1変速室10Rが形成される。
機械式変速機11と変速クラッチ14との間は、第2変速機カバー28で区画され、この第2変速機カバー28と第1変速機ケース24Bとによって、機械式変速機11を収容する第2変速室11Rが形成され、この第2変速機カバー28とクラッチカバー29とによって、変速クラッチ14を収容するクラッチ室14Rが形成される。
Vベルト式変速機10は、エンジンEの駆動軸であるクランク軸9の左端部9Bに設けられる駆動プーリー47と、クランク軸9の後方に平行に軸支される従動軸15の左半部15Lに設けられる従動プーリー53と、両プーリー47,53間に掛け渡されるVベルト57とを備えている。
駆動プーリー47は、クランク軸9に固定された駆動プーリー固定半体48と、クランク軸9の軸方向に移動自在に支持された駆動プーリー可動半体49とを有し、クランク軸9の回転による遠心力で遠心方向に移動する遠心ウェイト58の作用により駆動プーリー可動半体49を軸方向に移動させて駆動プーリー固定半体48に接近あるいは離反し、両プーリー半体48,49間に挟まれたVベルト57の巻き掛け径を変える。
従動プーリー53は、従動軸15に固定された従動プーリー固定半体54と、従動軸15に軸方向に移動自在に支持された従動プーリー可動半体55とを備え、従動プーリー固定半体54と従動プーリー可動半体55とは互いに対向して配置され、その間にVベルト57が挟持される。従動プーリー可動半体55は、付勢部材59によって従動プーリー固定半体54側に付勢され、Vベルト57を押下する。
駆動プーリー可動半体49を押す遠心ウェイト58の作用と、従動プーリー可動半体55を押す付勢部材59の作用によって、駆動プーリー47と従動プーリー53の溝幅が調節され、Vベルト式変速機10の変速比が自動的に調整される。
図3は、機械式変速機11を周辺構成と共に示す図である。
図3に示すように、従動プーリー固定半体54は、軸受60,61を介して従動軸15に相対回転自在に支持される固定半体ハブ部54Aを有し、この固定半体ハブ部54Aの外周に、従動プーリー可動半体55の可動半体ハブ部55Aが相対回転自在、かつ、軸方向に摺動自在に配置される。
固定半体ハブ部54Aは、従動プーリー可動半体55を貫通し、その端部に、径方向に拡径するプレート部材13Aが固定され、このプレート部材13Aと従動プーリー可動半体55との間に上記付勢部材59が介挿される。
本構成では、クランク軸9が回転すると、このクランク軸9の回転がVベルト式変速機10の従動プーリー53に伝達され、この従動プーリー53とプレート部材13Aが一体に回転するので、その回転による遠心力で、クラッチ用付勢部材13Eの付勢力に抗してクラッチシュー13Cがクラッチアウター13Bの内周面に接して、従動プーリー53とクラッチアウター13Bとが一体に回転し、従動軸15が回転駆動される。
図3に示すように、Vベルト式変速機10の従動軸15は、第2変速室11R内へ延長し、この延長した部分である右半部15Rが、機械式変速機11が動力を入力する入力軸として機能する。以下、説明を判りやすくするため、この右半部15Rを入力軸15Rと表記する。
機械式変速機11は、この入力軸15Rから入力されるエンジン動力を変速して中間軸16に固定された減速ギヤ81に伝達する遊星歯車機構70を有している。
図3及び図4に示すように、遊星歯車機構70は、入力軸15Rの外周に軸受(ニードルベアリング)68を介して相対回転自在な第1筒体71Aと一体のサンギヤ71と、このサンギヤ71の外周に噛み合う複数(本実施形態では3個)の遊星ギヤ72と、遊星ギヤ72を枢軸72Aを介して自転自在に支持する遊星キャリア73と、遊星ギヤ72に噛み合うリングギヤ74とを有している。
遊星キャリア73は、第1筒体71Aの外周に軸受(ニードルベアリング)69を介して相対回転自在な第2筒体73Aと一体に構成され、サンギヤ71と相対回転自在である。また、リングギヤ74は、入力軸15Rに固定された円板部材75(図3参照)に連結され、入力軸15Rと一体に回転する。
変速クラッチ14のクラッチインナー14Bは、入力軸15Rに固定され、このクラッチインナー14Bとクラッチアウター14Aとの間に、不図示の付勢部材によってクラッチアウター14Aから離れる方向(内方)に付勢されるクラッチシュー14Cが配置される。
このため、クラッチシュー14Cがクラッチアウター14Aから離れている場合には、サンギヤ71と入力軸15Rとが相対回転可能であり、入力軸15Rの回転数による遠心力でクラッチシュー14Cが遠心方向(外方)に作動した場合には、変速クラッチ14を介して入力軸15Rとサンギヤ71とが接続され、一体に回転する。
つまり、変速クラッチ14は、入力軸15Rとサンギヤ71とを断接(切断/接続)する遠心式のクラッチに構成されている。
変速クラッチ14を収容するクラッチ室14Rには、クラッチアウター14Aを一方向に回転させるワンウェイクラッチ84が配置されている。
ワンウェイクラッチ84は、第1変速機ケース24Bに固定されるラチェットギヤ85と、ラチェットギヤ85の内側に形成された凹部85Aに係合可能な複数の爪部材(回り止め部材)86を有し、クラッチアウター14Aが、爪部材86を枢軸86Aを介して回動可能に支持する爪部材支持プレート87を兼用している。
ラチェットギヤ85の内周側には、爪部材86が係合する凹部85Aが周方向に間隔を空けて12個設けられている(図5(A)参照)。
爪部材支持プレート87には、4個の枢軸86Aが立設され、この枢軸86Aに爪部材86が回動自在に支持される(図5(B)参照)。爪部材86には、一端が爪部材支持プレート87の孔87Aに係止され、他端が爪部材86の孔86Bに係止されている爪部材付勢部材88が設けられ、無負荷時においては、図5(B)の矢印Aで示す爪部材86のような姿勢で、根元部にくびれのある先端86Cが爪部材支持プレート87の径方向外方へ向き、先端86Cの反対側の、くびれの無い後端86Dが第1筒体71Aの外周に当接するよう付勢されている。
したがって、爪部材支持プレート87の軸対称位置にある一対の爪部材86(矢印Aで示す)がラチェットギヤ85の一対の凹部85Aに係合している時には、他の一対の爪部材86(矢印Bで示す)はラチェットギヤ85の凹部85Aに係合することができない。そして、ラチェットギヤ85に対して、爪部材支持プレート87の位相が15度ずれると、係合していた一対の爪部材86(矢印Aで示す)の代わりに、係合していなかった一対の爪部材86(矢印Bで示す)が係合可能となる。
ここで、図6(A)は、図5(B)のX−X断面図であり、図6(B)は、変速クラッチ14接続時の爪部材支持プレート87を周辺構成と共に示す断面図である。
変速クラッチ14が接続された状態で、図5(B)の場合とは逆方向の力が加わり、爪部材支持プレート87が矢印H方向の回転を始めた場合、図6(B)に示すように、上記の回転方向では爪部材86はラチェットギヤ85の凹部85Aの係合から外れる。
爪部材86においては、くびれの無い後端86Dの重量がくびれの有る先端86Cの重量よりも大きいので、爪部材支持プレート87が回転すると、爪部材86は遠心力によって枢軸86Aの周りを回動して、爪部材86の先端86Cが爪部材支持プレート87に立設されたピン87Pに当接して静止し、ラチェットギヤ85に係合しない姿勢で安定する(図6(B)参照)。
一方、爪部材支持プレート87を矢印H方向に回転させる力が作用した場合には、ラチェットギヤ85と爪部材86との係合が外れるので、爪部材支持プレート87の回転、つまり、変速クラッチ14のクラッチアウター14Aが矢印H方向に回転可能になる。
これによって、変速クラッチ14のクラッチアウター14Aを一方向に回転させるワンウェイクラッチ84が構成される。また、本構成では、変速クラッチ14のクラッチアウター14Aを、ワンウェイクラッチ84の回り止め部材である爪部材86を保持する保持部材(爪部材支持プレート87)としたので、部品点数を低減して小型化を図ることができる。
図7及び図8に示すように、エンジンEが停止時又はアイドリング時は、発進クラッチ13が切断状態にあり、機械式変速機11には動力が伝達されず、出力軸17に動力が伝達されない。
エンジンEがアイドリング回転数を超えて発進回転数に達すると、発進クラッチ13がつながり、機械式変速機11の入力軸15Rが回転する(図8の符号f1参照)。入力軸15Rが回転を始めると、入力軸15Rに連結されているクラッチインナー14Bとリングギヤ74が回転を始める(図7参照)。
このため、遊星ギヤ72は、入力軸15Rと共に回転するリングギヤ74と、固定されたサンギヤ71との間で転動し、遊星ギヤ72に連結された遊星キャリア73は入力軸15Rの1/2の回転速度で入力軸15Rと同じ方向に回転する。つまり、機械式変速機11の変速段はLowに設定される。
このとき、本構成では、Vベルト式変速機10と機械式変速機11の両方がLowレシオであり、変速機Mの最も低い変速段(1速領域)となっている(図8の符号f3参照)。
変速クラッチ14が接続すると、入力軸15Rと変速クラッチ14のクラッチアウター14Aとが一体に回転方向Wに回転するため、遊星ギヤ72はリングギヤ74に対して転動することができなくなり、噛み合ったままサンギヤ71の周りで入力軸15Rと同じ方向へ公転しようとするので、サンギヤ71に入力軸15Rと同速かつ同方向の回転駆動力が加わる。
すなわち、本構成では、Vベルト式変速機10がLowレシオのときに機械式変速機11がHiに切り替わって2速領域へ移行し、この移行後に、Vベルト式変速機10がLowレシオから徐々にHi側(例えば、3速領域〜6速領域)へと変速比を切り換える。
遊星歯車機構70の回転数を低く抑えることができれば、高い回転数で変速する場合に比して遊星歯車機構70のフリクションを下げてメカロスを低くすることができ、伝達効率を向上し、燃料を節約することができる。
図9は、左側クランクケース24A(第1変速機ケース24Bを含む)を右方から見た図であり、図10(A)は、第2変速機カバー28のクラッチカバー29を外した状態を右方から見た図であり、図10(B)は、第2変速機カバー28のクラッチカバー29を装着して状態を右方から見た図である。
Vベルト式変速機10は、エンジンオイル(以下、適宜オイル(潤滑油)と言う)による潤滑が行われない乾式の変速機構であり、Vベルト式変速機10を収容する第1変速室10Rは、オイルが溜まらない乾式の変速室に構成されている。
ここで、図9、図10(A)(B)中、符号LAは、第2変速室11R内に貯留されるオイルの油面を示し、符号LCは、クランク軸9、従動軸15及び出力軸17の中心を通る直線の軸線を示している。
本構成では、発進クラッチ13が乾式のクラッチに構成され、乾式の第1変速室10R内に配置される。また、変速クラッチ14は、オイルにより各部の潤滑が行われる湿式のクラッチに構成され、湿式の第2変速室11Rに隣接するクラッチ室14Rに収容され、湿式の第2変速室11R内のオイルを用いて潤滑される。
また、第1変速機ケース24Bには、大径ギヤ81の上方に、このギヤ81によって掻き上げられたオイルを受ける第1受け溝91(図9参照)が設けられ、この第1受け溝91は、第1変速機ケース24Bに取り付けられる第2変速機カバー28に設けられた第2受け溝92(図10(A)参照)に連結する。
この孔部15Aは、従動軸15の径方向に延びる油路15Bを介して、遊星歯車機構70の第1筒体71Aの内周部、つまり、機械式変速機11の最内周部につながる。これにより、第1受け溝91、第2受け溝92及びオイル通路93によって、第2変速室11R内のオイルをクラッチ室14R(第3室)に供給する潤滑用通路95が形成される。
このため、本構成では、第2変速室11R内にて、大径ギヤ81によって掻き上げられたオイルの一部が、潤滑用通路95を通り、遊星歯車機構70の支持軸である入力軸15Rの孔部15Aと入力軸15Rの軸受52とに供給される。入力軸15Rの孔部15Aに入ったオイルは、入力軸15Rの回転による遠心力で、機械式変速機11に向けて供給され、機械式変速機11を潤滑する。一方、入力軸15Rの軸受52に入ったオイルは、軸受52を潤滑した後に、クラッチ室14Rに入り、変速クラッチ14を潤滑し、クラッチ室14Rの下方に溜まる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、発進クラッチ13が、Vベルト式変速機10と共にオイルが溜まらない乾式の第1変速室10Rに配置され、機械式変速機11が、第1変速室10Rと分離して設けられた湿式の第2変速室11Rに配置され、変速クラッチ14が、第2変速室11Rを挟んで第1変速室10Rと反対側に設けられたクラッチ室14R(第3室)に配置されるので、発進クラッチ13と変速クラッチ14とを、湿式の第2変速室11R内のオイル量やオイル温度の影響を直接受けないように配置できると共に、発進クラッチ13を、オイルの攪拌抵抗を受けない乾式として小型化しつつ伝達容量を確保できる。
従って、オイルによる回転フリクションの低減と各クラッチの伝達容量の確保とに有利な動力伝達装置を提供することが可能である。
また、発進クラッチ13をVベルト式変速機10と共に乾式の第1変速室10Rに配置しているので、第1変速室10R内のVベルト式変速機10周辺のデッドスペースをクラッチスペースに有効利用でき、デッドスペースの有効利用による小型化が可能である。また、発進クラッチ13,変速クラッチ14及び機械式変速機11を各々別室に配置するので、各部材の干渉を回避できる。
また、本構成では、機械式変速機11の遊星歯車機構70は、減速ギヤ81〜83と共に第2変速室11Rに配置され、第2変速室11R内のオイルで潤滑されるので、機械式変速機11の潤滑構造が簡易で済む。
また、本構成では、第2変速室11Rとクラッチ室14Rとを区画すると共に、第2変速室11R内のオイルをクラッチ室14Rに供給する潤滑用通路95を設けたので、両室を同じオイルによる潤滑構造としながら、各々のオイルレベルを独立した高さに設定でき、潤滑構造を簡素化しつつオイルによるフリクションの増加を防止することができる。
また、本実施の形態によれば、発進クラッチ13が接続された後、Vベルト式変速機10がLowレシオのときに遊星歯車機構70の変速を行う構成にしたので、各部材を同一軸上に配置してコンパクト化できる等の遊星歯車機構のメリットを備えつつ、高い車速で遊星歯車機構を変速させる場合に比して、遊星歯車機構70の回転数を低く抑えることができ、フリクションロスを抑えて伝達効率を向上することができる。また、変速クラッチ14の負担を軽減でき、クラッチ伝達容量の確保が容易である。
また、遊星歯車機構70は、発進クラッチ13と一体に回転するリングギヤ74と、発進クラッチ13に変速クラッチ14を介して連結されるサンギヤ71と、リングギヤ74とサンギヤ71との間に配置され、減速ギヤ81に連結される遊星ギヤ72とを有するので、変速クラッチ14によりサンギヤ71の回転速度を変化させる構造となり、変速クラッチ14の滑り領域に対応した変速比の中間領域を広く確保することができる。従って、変速前後でのエンジン回転差が少なくなり、スムーズな変速ができ、乗り心地が向上する。
また、クラッチアウター14Aがワンウェイクラッチ84で規制される方向に回転する場合に、ワンウェイクラッチ84の爪部材(回り止め部材)86が係合するラチェットギヤ(規制部材)85を有し、ラチェットギヤ85は、変速クラッチ14を収容するクラッチ室14Rの側壁28B1に取り付けられるので、クラッチ室14Rに隣接する第2変速室11R内に、ラチェットギヤ85の取り付け部が張り出さず、遊星歯車機構70から確実に離間させることができる。
また、本構成では、自動二輪車をサイドスタンドを用いて左側に傾斜させて駐車した場合に左側に溜まるオイルを、ユーザーがサイドスタンドを戻した際に上記潤滑用通路95を介して右側のクラッチ室14Rに導くことができる。
図11は第2実施形態を示す。
第2実施形態では、変速クラッチ14のクラッチアウター14Aを一方向に回転させるワンウェイクラッチ84を、図11に示すように、ニードルベアリング一体型のワンウェイクラッチにしている。
この場合、ワンウェイクラッチ84は、変速クラッチ14のクラッチアウター14Aが連結される第1筒体71Aの外周に設けられ、この第1筒体71Aを、第2変速機カバー28の側壁28B1に対して一方向に回転させる。
本実施形態では、ワンウェイクラッチ84が一部品で構成されるので、第1実施形態に比して部品点数を減らすことができ、かつ、その着脱作業も容易にできる。しかも、このワンウェイクラッチ84は、第1筒体71Aを第2変速機カバー28の側壁28B1に対して回転自在に支持する軸受を兼ねるので、これによっても部品点数を減らすことができる。
また、図11に示すように、このワンウェイクラッチ84は径方向に小さい部品であり、このワンウェイクラッチ84の配置に要する径方向のスペースが小さくてすみ、変速機Mを径方向に小型化することができる。
例えば、上記実施形態では、発進クラッチ13や変速クラッチ14に遠心式のクラッチ機構を用いる場合を説明したが、これに限らず、メカ式、電気式等の公知の他のクラッチ機構を適用してもよい。
また、上記実施形態では、Vベルト式変速機10を用いる場合を説明したが、Vベルト式に限らず、公知のベルト式変速機を広く適用可能である。
また、自動二輪車用の動力伝達装置に本発明を適用する場合を説明したが、これに限らず、鞍乗り型車両等の車両の動力伝達装置に本発明を広く適用することができる。なお、鞍乗り型車両とは、車体に跨って乗車する車両全般を含み、自動二輪車(原動機付き自転車も含む)のみならず、ATV(不整地走行車両)に分類される三輪車両や四輪車両を含む車両である。
10 Vベルト式変速機
10R 第1変速室
11 機械式変速機
11R 第2変速室(湿式の変速室)
13 発進クラッチ
14 変速クラッチ
14A クラッチアウター
14R クラッチ室(第3室)
15 従動軸
15R 入力軸(支持軸)
70 遊星歯車機構
71 サンギヤ
72 遊星ギヤ
74 リングギヤ
81〜83 減速ギヤ
84 ワンウェイクラッチ
85 ラチェットギヤ(規制部材)
86 爪部材(回り止め部材)
91 第1受け溝
92 第2受け溝
93 オイル通路
95 潤滑用通路
P パワーユニット
E エンジン(内燃機関)
M 変速機
Claims (7)
- ベルト式変速機(10)と、機械式変速機(11)と、エンジン回転数が上昇すると、前記ベルト式変速機(10)と前記機械式変速機(11)とを直列に接続する発進クラッチ(13)と、エンジン回転数が上昇すると、前記機械式変速機(11)の変速段を切り換える変速クラッチ(14)とを備える車両用動力伝達装置において、
前記発進クラッチ(13)は、前記ベルト式変速機(10)と共にオイルが溜まらない乾式の第1変速室(10R)に配置され、前記機械式変速機(11)は、前記第1変速室(10R)と分離して設けられた湿式の第2変速室(11R)に配置され、前記変速クラッチ(14)は、前記第2変速室(11R)を挟んで前記第1変速室(10R)と反対側に設けられた第3室(14R)に配置され、
前記第2変速室(11R)と前記第3室(14R)とを区画すると共に、前記第2変速室(11R)内のオイルを前記第3室(14R)に供給する潤滑用通路(95)を設けたことを特徴とする車両用動力伝達装置。 - 前記ベルト式変速機(10)の従動プーリー(53)を支持する支持軸(15)の一端に、前記発進クラッチ(13)を設け、前記支持軸(15)の他端に前記変速クラッチ(14)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
- 前記機械式変速機(11)は、前記発進クラッチ(13)を介して伝達されるエンジン動力を減速して減速ギヤ(81)に伝達する遊星歯車機構(70)を有し、
前記遊星歯車機構(70)は、前記発進クラッチ(13)と一体に回転するリングギヤ(74)と、前記発進クラッチ(13)に前記変速クラッチ(14)を介して連結されるサンギヤ(71)と、前記リングギヤ(74)と前記サンギヤ(71)との間に配置され、前記減速ギヤ(81)に連結される遊星ギヤ(72)とを有することを特徴とする請求項2に記載の車両用動力伝達装置。 - 前記減速ギヤ(81)は、前記第2変速室(11R)に溜まるオイルを掻き上げ、
前記潤滑用通路(95)は、前記減速ギヤ(81)によって掻き上げられたオイルを受ける受け溝(91,92)と、この受け溝(91,92)と前記第3室(14R)とをつなぐオイル通路(93)とを有し、
前記オイル通路(93)は、前記遊星歯車機構(70)の支持軸(15R)内の孔部(15A)に連通し、この孔部(15A)を介して前記遊星歯車機構(70)にオイルを供給することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用動力伝達装置。 - 前記変速クラッチ(14)のクラッチアウター(14A)を一方向に回転させるワンウェイクラッチ(84)を有し、前記クラッチアウター(14A)を、前記ワンウェイクラッチ(84)の回り止め部材(86)を支持する支持部材としたことを特徴とする請求項4に記載の車両用動力伝達装置。
- 前記クラッチアウター(14A)が前記ワンウェイクラッチ(84)で規制される方向に回転する場合に、前記ワンウェイクラッチ(84)の回り止め部材(86)が係合する規制部材(85)を有し、
前記規制部材(85)は、前記第2変速室(11R)と前記第3室(14R)とを区画する側壁(28B1)に取り付けられることを特徴とする請求項5に記載の車両用動力伝達装置。 - 前記変速クラッチ(14)のクラッチアウター(14A)を一方向に回転させるワンウェイクラッチ(84)を有し、前記ワンウェイクラッチ(84)は、前記変速クラッチ(14)のクラッチアウター(14A)を軸支するニードルベアリング一体型のワンウェイクラッチであることを特徴とする請求項4に記載の車両用動力伝達装置。
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