JP6355946B2 - 土壌用セレン不溶化材、及び、土壌中のセレンの不溶化方法 - Google Patents
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重金属類の中でも、不溶化処理が難しく、比較的に問題となりやすい金属元素としてセレンが挙げられる。
土壌中のセレンを不溶化する方法として、例えば、特許文献1には、セレンを含有する汚染土壌に鉄酸化物等の処理物質を添加するとともに、該汚染土壌のpHを6以下に調整することを特徴とするセレン汚染土壌の不溶化処理方法が記載されている。
また、特許文献2には、水溶性セレンにより汚染された物質から水溶性セレンを除去するための水溶性セレン除去剤において、非晶質水酸化鉄(III)を含有することを特徴とする水溶性セレン除去剤が記載されている。該除去剤によれば水溶性セレンを吸着させて不溶化することができる。
本発明の目的は、セレンを含有する土壌におけるセレンの溶出を抑制し、かつ、セレンを含有する土壌を固化改良することができる土壌用セレン不溶化材を提供することにある。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1] 還元性物質およびマグネシウム含有物質を含むことを特徴とする土壌用セレン不溶化材。
[2] 上記還元性物質が、塩化第一鉄および硫酸第一鉄の少なくともいずれか一方である、前記[1]に記載の土壌用セレン不溶化材。
[3] さらに、補助材を含む前記[1]または[2]に記載の土壌用セレン不溶化材。
[4] 上記補助材が、無水石膏粉末、半水石膏粉末、炭酸カルシウム含有粉末、珪石粉末、頁岩粉末、および高炉スラグ微粉末の少なくともいずれか1種である、前記[3]に記載の土壌用セレン不溶化材。
[5] 土壌用セレン不溶化材中の上記還元性物質の含有率が20〜80質量%である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の土壌用セレン不溶化材。
[6] 環境庁告示第18号に準拠するセレンの溶出試験方法によって溶出させたセレンの溶出量のうち、6価セレンの溶出量が0.01mg/L以上である土壌と、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の土壌用セレン不溶化材を混合することを特徴とする土壌中のセレンの不溶化方法。
還元性物質とは、土壌中の6価セレンを還元するための物質である。還元性物質としては、例えば、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩;亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム等のチオ硫酸塩;硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化カルシウム等の硫化物;水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化カルシウム等の水硫化物;多硫化ナトリウム、多硫化カリウム、多硫化カルシウム等の多硫化物;チオ酸塩、二酸化硫黄、硫黄等の硫黄化合物;硫酸第一鉄、硝酸第一鉄、塩化第一鉄等の第一鉄塩や3価チタン塩等の金属塩;アルデヒド類、糖類、ギ酸、シュウ酸、アスコルビン酸等の有機化合物;高炉スラグ粉末、泥炭、亜炭、ヨウ素、鉄粉等が挙げられる。中でも、経済性、安全性の観点から、好ましくは第一鉄塩である。第一鉄塩の中でも、より好ましくは塩化第一鉄、硫酸第一鉄であり、還元性の観点から、特に好ましくは塩化第一鉄である。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、還元性物質は粉末状のものが好適である。
また、本発明の土壌用セレン不溶化材を蒸留水に重量比(土壌用セレン不溶化材:蒸留水)が1:25になるように投入し、ガラス棒で3分間攪拌した後、大気中で30分静置した場合の検液の酸化還元電位(mV)は、好ましくは−200〜−800mVである。測定は、例えば、東亜ディーケーケー社製、商品名「IM−32P」、ORP複合電極「PST−2729C」を用いて行われる。
該酸化還元電位が−200mV以下であれば、土壌中の6価のセレンの還元を、より十分に行うことができる。該酸化還元電位が−800mV以上であれば、還元性物質の量がマグネシウム含有物質に対して過大とならず、土壌用セレン不溶化材の不溶化性能がより向上する。
また、上記検液のpHは、好ましくは6.0〜10.2、より好ましくは7.0〜9.5である。pHが上記数値範囲内であれば、土壌不溶化材のセレンの不溶化性能が十分に発揮される。
軽焼マグネシアは、炭酸マグネシウムと水酸化マグネシウムのいずれか一方または両方を含む固形原料を、好ましくは600〜1,300℃の温度で焼成することによって得ることができる。
ここで、固形原料としては、例えば、マグネサイト、ドロマイト、ブルーサイト、または、海水中のマグネシウム成分を消石灰等のアルカリで沈澱させて得た水酸化マグネシウム等の、塊状物または粉粒状物が挙げられる。
また、焼成温度(加熱温度)は、好ましくは600〜1,300℃、より好ましくは750〜1,100℃、特に好ましくは800〜1,000℃である。該温度が600℃以上であると、軽焼マグネシアの生成の効率が向上する点で、好ましい。該温度が1,300℃以下であると、重金属の不溶化の効果が向上する点で、好ましい。
焼成時間(加熱時間)は、固形原料の仕込み量や粒度等によって異なるが、通常、30分間〜5時間である。
軽焼マグネシアまたはその部分水和物中の酸化マグネシウム(MgO)の含有率は、本発明の効果(セレンの溶出の抑制等)を高める観点から、好ましくは65質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上である。
軽焼マグネシアの部分水和物中の水酸化マグネシウムの酸化物換算の含有率は、本発明の効果(セレンの溶出の抑制等)を高める観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
軽焼マグネシアまたはその部分水和物のブレーン比表面積は、本発明の効果(セレンの溶出の抑制等)を高める観点から、好ましくは4,000〜20,000cm2/g、より好ましくは4,500〜10,000cm2/g、特に好ましくは5,000〜7,000cm2/gである。
補助材を含むことで、土壌用改質材のセレンの溶出の抑制効果を高めることができる。
補助材としては、例えば、半水石膏粉末、無水石膏粉末、炭酸カルシウム含有粉末(例えば、石灰石粉末)、珪石粉末、頁岩粉末、及び、高炉スラグ微粉末が挙げられる。
補助材として用いられる半水石膏粉末としては、排脱二水石膏を加熱、脱水処理して得られる半水石膏や、廃石こうボードなどの廃石膏を加熱、脱水処理して得られる再生半水石膏等が挙げられる。
補助材として用いられる無水石膏粉末としては、天然無水石膏のほか、廃石こうボードなどの廃石膏を加熱、脱水処理して得られる再生無水石膏等が挙げられる。
炭酸カルシウム含有粉末としては、例えば、工業用炭酸カルシウム粉末、試薬の炭酸カルシウム粉末、石灰石粉末、炭酸カルシウムを主成分とする貝殻の粉砕物、または、サンゴの粉砕物等が挙げられる。
炭酸カルシウム含有粉末中の炭酸カルシウムの含有率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
土壌用セレン不溶化材中の補助材の含有率は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。該含有率の上限は特に限定されるものではないが、通常、30質量%以下である。
該含有率が3質量%以上であれば、セレンの溶出の抑制効果及び固化改良性を高めることができる。
セレンを含有する土壌の単位体積(1m3)当たりの土壌用セレン不溶化材の配合量(kg)は、土壌中のセレンの含有率によっても異なるが、好ましくは30kg/m3以上、より好ましくは80kg/m3以上、特に好ましくは120kg/m3以上である。
本発明の土壌用セレン不溶化材は、土壌中のセレンの溶出量が0.01mg/L以上、より好ましくは0.02mg/L以上である土壌に対して好適である。
ここで、土壌中においてセレンは4価または6価の状態で存在している。一般的なマグネシウム系の土壌不溶化材を使用した場合、4価のセレンを不溶化することは可能であるが、6価のセレンを不溶化することは困難である。本発明の土壌用セレン不溶化材は、土壌中のセレンが6価の状態で存在していても、セレンの溶出量を抑制することができることから、6価セレンの溶出量が0.01mg/L以上、より好ましくは0.02mg/L以上である土壌に対して好適である。
なお、土壌中のセレンの溶出量は、セレン溶出試験によって測定される。セレンの溶出試験は環境省告示第18号に準拠して実施するものである。また、4価セレンおよび6価セレンの分別定量法は、例えば、実施例に示すHPLCとICP−MSを組合せた方法等がある。
また、本発明の土壌用セレン不溶化材とセレンを含有する土壌を混合してなる混合物は、一軸圧縮強さに優れている。
使用材料は、以下に示すとおりである。
(1)セレン含有土壌A;詳細は表1に記載する。
(2)セレン含有土壌B;詳細は表1に記載する。
(3)還元性物質A;塩化第一鉄四水塩(FeCl2・4H2O:関東化学社製、特級試薬)
(4)還元性物質B;硫酸第一鉄一水塩(FeSO4・H2O:国産化学社製、食品添加用)
(5)マグネシウム含有物質A;軽焼マグネシア粉末(マグネサイトを850℃で焼成した後、粉砕したもの、酸化マグネシウムの含有率:95質量%、ブレーン比表面積:5,500cm2/g)
(6)マグネシウム含有物質B;軽焼マグネシアの部分水和物粉末(マグネシウム含有物質Aの一部を水和したもの、酸化マグネシウムの含有率:50〜96.5質量%、水酸化マグネシウムの含有率:3.5〜50質量%)
(7)補助材A;炭酸カルシウム含有粉末(石灰石粉末、ブレーン比表面積:4,000cm2/g、炭酸カルシウムの含有率:98.4質量%、太平洋セメント社製)
(8)補助材B;珪石粉末(ブレーン比表面積:4,500cm2/g、関西太平洋鉱産社製)
(9)補助材C;頁岩粉末(ブレーン比表面積:5,000cm2/g、関西太平洋鉱産社製)
表2の配合割合となるように、還元性物質、マグネシウム含有物質、補助材を混合して、土壌不溶化材(土壌用セレン不溶化材)a〜lを調製した。
表3に示すように、セレン含有土壌Aと土壌不溶化材cを、ホバートミキサを用いて3分間混合した。セレン含有土壌Aに対する土壌不溶化材cの配合量は50kg/m3であった。得られた混合物を20℃の条件下で、7日間封緘養生を行った。養生後、環境省告示第18号に準拠してセレンの溶出試験を行い、セレンの溶出量を測定した。
また、セメント協会標準試験方法における、「JCAS L−01:2006(セメント系固化材による改良体の強さ試験方法)」に準拠して一軸圧縮強度測定用の供試体を作製した。該供試体を用いて、材齢7日における一軸圧縮強度を「JIS A 1216(土の一軸圧縮試験)」に準拠して測定した。結果を表3に示す。
表3に示すように、セレン含有土壌及び土壌不溶化材の種類を定めた以外は、参考例1と同様にして、セレンの溶出量および一軸圧縮強度を測定した。結果を表3に示す。
表4に示すように、セレン含有土壌並びに土壌不溶化材の種類及び配合量を定めた以外は、参考例1と同様にして、セレンの溶出量および一軸圧縮強度を測定した。結果を表4に示す。
表5に示すように、セレン含有土壌並びに土壌不溶化材の種類及び配合量を定めた以外は、参考例1と同様にして、セレンの溶出量および一軸圧縮強度を測定した。結果を表5に示す。
さらに、還元性物質の量が増加するほど、一軸圧縮強度は低下するが、土壌不溶化材中の還元性物質の含有率が75質量%である場合(参考例4、9、15、20、26、31)であっても、10kN/m2以上の一軸圧縮強度を有している。中でも、土壌不溶化材の配合量が100kg/m3以上である場合(参考例15、20、26、31)では、人が歩行可能な程度の一軸圧縮強度(15kN/m2以上)を有していることがわかる。
Claims (5)
- 還元性物質、マグネシウム含有物質、および補助材を含む土壌用セレン不溶化材であって、
上記還元性物質が、塩化第一鉄であり、
土壌用セレン不溶化材中の上記還元性物質の含有率が30〜60質量%であり、
上記補助材が、炭酸カルシウム含有粉末、珪石粉末、および頁岩粉末の少なくともいずれか1種であり、
上記補助材のブレーン比表面積が、3,000〜8,000cm 2 /gであり、
土壌用セレン不溶化材中の上記補助材の含有率が3〜30質量%であることを特徴とする土壌用セレン不溶化材。 - 上記マグネシウム含有物質が軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシアの部分水和物を含むものである請求項1に記載の土壌用セレン不溶化材。
- 上記マグネシウム含有物質が軽焼マグネシアを含むものである請求項2に記載の土壌用セレン不溶化材。
- 上記マグネシウム含有物質のブレーン比表面積が、4,000〜7,000cm 2 /gである請求項1〜3のいずれか1項に記載の土壌用セレン不溶化材。
- 環境庁告示第18号に準拠するセレンの溶出試験方法によって溶出させたセレンの溶出量のうち、6価セレンの溶出量が0.01mg/L以上である土壌と、請求項1〜4のいずれか1項に記載の土壌用セレン不溶化材を混合することを特徴とする土壌中のセレンの不溶化方法。
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