JP7170570B2 - 不溶化材及び不溶化処理方法 - Google Patents
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Description
土壌がセレンで汚染されると、その汚染が地下水にまで広がり、人体や穀物等にまで影響を及ぼすという安全衛生上の問題がある。また、土壌の汚染濃度が環境基準値を超える場合には、その土地をそのまま利用することができない等の問題もある。
セレンで汚染された土壌におけるセレンの溶出を抑制することができる不溶化材として、特許文献1には、還元性物質およびマグネシウム含有物質を含むことを特徴とする土壌用セレン不溶化材が記載されている。また、上記還元性物質として塩化第一鉄および硫酸第一鉄の少なくともいずれか一方を使用できること、マグネシウム含有物質として、軽焼マグネシアまたはその部分水和物を使用できることが記載されている。
本発明の目的は、セレンで汚染された土壌等の処理対象物からのセレンの溶出量を、安定的に小さくすることができる不溶化材を提供することである。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]を提供するものである。
[1] 酸化マグネシウム含有物質と、安息角が30~50°である塩化鉄を含むことを特徴とする不溶化材。
[2] 上記不溶化材中、上記酸化マグネシウム含有物質の含有率が無水物換算で10~90質量%であり、上記塩化鉄の含有率が10~90質量%である前記[1]に記載の不溶化材。
[3] 上記不溶化材の安息角が40~55°である前記[1]又は[2]に記載の不溶化材。
[4] 上記酸化マグネシウム含有物質のブレーン比表面積が2,000~10,000cm2/gであり、上記酸化マグネシウム含有物質中、MgOの含有率が80質量%以上、CaOの含有率が3質量%以下である前記[1]~[3]のいずれかに記載の不溶化材。
[6] 上記混合工程で得られた上記不溶化材について、その安息角を測定する不溶化材測定工程と、上記不溶化材測定工程で得られた上記安息角の値が40~55°の範囲内であるという条件を満たすか否かを調べて、上記条件を満たす場合にのみ、上記不溶化材を、不溶化処理に適するものと評価する不溶化材適否確認工程、を含む前記[5]に記載の不溶化材の製造方法。
[7] 前記[1]~[4]のいずれかに記載の不溶化材を、不溶化処理対象物1m3に対して、20~200kg添加し、混合する不溶化処理方法。
[8] 環境庁告示第46号に準拠して測定された、上記不溶化処理対象物からのセレンの溶出量が0.010mg/リットルを超え、2.00mg/リットル以下である前記[7]に記載の不溶化処理方法。
酸化マグネシウム含有物質の例としては、軽焼マグネシア、軽焼マグネシアの部分水和物、軽焼ドロマイト、及び軽焼ドロマイトの部分水和物等が挙げられる。中でも、セレンの溶出をより抑制することができ、不純物の含有量が少なく、かつ、入手の容易さの観点から、軽焼マグネシアが好ましい。
軽焼マグネシアの例としては、炭酸マグネシウムと水酸化マグネシウムのいずれか一方または両方を含む原料を、好ましくは600~1,300℃の温度で焼成することによって得られるものが挙げられる。
原料としては、例えば、マグネサイト、ドロマイト、ブルーサイト、及び、海水中のマグネシウム成分を消石灰等のアルカリで沈澱させて得た水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは、塊状物でもよいし、粉粒状物でもよい。また、水酸化マグネシウムの沈殿物を含むスラリーやその脱水物でもよい。
また、原料として、マグネサイト、ブルーサイトまたは水酸化マグネシウムを使用する場合の焼成温度(加熱温度)は、好ましくは600~1,300℃、より好ましくは750~1,100℃、特に好ましくは800~1,000℃である。該温度が600℃以上であると、軽焼マグネシアの生成の効率がより向上する。該温度が1,300℃以下であると、セレンの溶出量をより小さくすることができる。
原料として、ドロマイトを使用する場合の焼成温度(加熱温度)は、好ましくは600℃以上、750℃未満である。該温度が600℃以上であると、軽焼マグネシアの生成の効率がより向上する。該温度が750℃未満であると、酸化カルシウムが生成しにくいため、酸化カルシウムの生成に起因する、本発明の効果(セレンの溶出量を小さくする効果)の低下が起こりにくくなる。
焼成時間(加熱時間)は、原料の仕込み量や粒度等によって異なるが、通常、30分間~5時間である。
軽焼マグネシアまたは軽焼ドロマイトの部分水和物は、軽焼マグネシアまたは軽焼ドロマイトを粉砕した後、当該粉砕物に水を添加して撹拌し混合するか、または、当該粉砕物を相対湿度80%以上の雰囲気下に1週間以上保持して、軽焼マグネシアまたは軽焼ドロマイトを部分的に水和させることによって得ることができる。
酸化マグネシウム含有物質中の酸化カルシウム(CaO)の含有率は、セレンの溶出量をより小さくする観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下である。
塩化鉄の例としては、塩化第一鉄および塩化第二鉄が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、セレンの溶出量をより小さくする観点からは塩化第一鉄が好ましい。
不溶化材中の塩化鉄の含有率は、セレンの溶出量をより小さくする観点から、好ましくは10~90質量%、より好ましくは15~85質量%、特に好ましくは18~82質量%である。
本発明の不溶化材は、必要に応じて補助材を含んでいてもよい。
補助材の例としては、半水石膏粉末、無水石膏粉末、炭酸カルシウム含有粉末(例えば、石灰石粉末)、珪石粉末、頁岩粉末、及び、高炉スラグ微粉末等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
不溶化材中の補助材の含有率は、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~25質量%である。
塩化鉄は、その製造条件や保管状況等によって、その品質(塩化物中の水和物(4水和物や2水和物)の量等)にばらつきが発生するが、安息角を測定して、特定の条件(安息角の値が30~50°の範囲内)を満たす塩化鉄のみを不溶化材の材料として採用することによって、セレンの溶出量を、安定的により小さくすることができる。
なお、安息角は、粉体特性評価装置(例えば、ホソカワミクロン社製の商品名「パウダテスタPT-X」)を使用し、「JIS R 9301-2-2:1999(アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-2:安息角)に記載された方法に準拠して測定することができる。
安息角の値が40~55°の範囲内であるという条件を満たす不溶化材のみを、不溶化処理に適するものと評価して、不溶化処理において使用する不溶化材として採用することによって、セレンの溶出量を、安定的により小さくすることができる。
不溶化処理対象物の例としては、セレンを含む、土壌や、石炭灰、都市ゴミ焼却灰、ペーパースラッジ焼却灰、炉清掃排出物、コークス灰、及び、重油燃焼灰等の焼却灰等が挙げられる。
環境庁告示第46号に準拠して測定された、不溶化処理対象物からのセレンの溶出量は、好ましくは0.010mg/リットルを超え、2.00mg/リットル以下、より好ましくは0.020~1.50mg/リットル、特に好ましくは0.030~1.00mg/リットルである。該溶出量が0.010mg/リットル以下である不溶化処理対象物は、環境庁告示46号におけるセレンの環境基準値(0.01mg以下であること)を満たしているため、本発明の不溶化材を使用する必要性がない。該溶出量が2.00mg/リットルを超える場合、不溶化処理を行った後の不溶化処理対象物からのセレンの溶出量が、環境基準値を満たさない場合がある。
不溶化材等の添加および混合方法としては、対象となる不溶化処理対象物に不溶化材を粉体のまま添加し、混合するドライ添加や、不溶化材に水を加えてスラリーとし、該スラリーを添加し、混合するスラリー添加が挙げられる。スラリー添加の場合の水/不溶化材の質量比は、好ましくは0.6~1.5、より好ましくは0.8~1.2である。
[使用材料]
(1)軽焼マグネシア(表1~4中、「MgO」と示す。);太平洋セメント社製、ブレーン比表面積:6,050cm2/g、MgOの含有率:89.2質量%、CaOの含有率:2.4質量%
(2)セレン含有焼却灰;湿潤密度:1.50g/cm3、含水比:13.3%、環境庁告示第46号に準拠して、検液を調製し、該検液から測定されたセレンの溶出量:0.052mg/リットル、上記検液のpH:11.8
(3)セレン含有石炭灰;湿潤密度:1.42g/cm3、含水比:22.3%、環境庁告示第46号に準拠して、検液を調製し、該検液から測定されたセレンの溶出量:0.130mg/リットル、上記検液のpH:11.4
(4)セレン含有土壌;湿潤密度:1.83g/cm3、含水比:24.1%、環境庁告示第46号に準拠して、検液を調製し、該検液から測定されたセレンの溶出量:0.300mg/リットル、上記検液のpH:5.7
(5)模擬セレン含有ずり(ずりと試薬のセレン酸ナトリウムを混合してなるもの);湿潤密度:1.91g/cm3、含水比:9.3%、環境庁告示第46号に準拠して、検液を調製し、該検液から測定されたセレンの溶出量:0.900mg/リットル、上記検液のpH:8.6
(6)塩化鉄;塩化第一鉄1~5
塩化第一鉄1~5について、粉体特性評価装置(ホソカワミクロン社製、商品名「パウダーテスタPT-X」)を使用し、「JIS R 9301-2-2:1999(アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-2:安息角)に記載された方法に準拠して、安息角を測定した。それぞれの安息角を表1~4に示す。
軽焼マグネシアと、表1に示す種類及び安息角の塩化鉄を、不溶化材中、軽焼マグネシアの無水物換算の含有率と、塩化鉄の含有率が、各々、表1に示す含有率となる量で混合して不溶化材を得た。
得られた不溶化材の安息角を、粉体特性評価装置(ホソカワミクロン社製、商品名「パウダーテスタPT-X」)を使用し、「「JIS R 9301-2-2:1999(アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-2:安息角)に記載された方法に準拠して測定した。
上記不溶化材を、セレン含有焼却灰1m3に対して、80kgとなる量で添加し、混合することで不溶化処理を行った。混合はホバート社製のミキサを使用し、3分間行った。次いで、得られた混合物を20℃の条件下で、7日間封緘養生を行った。養生後、不溶化処理後のセレン含有焼却灰からのセレンの溶出量を、環境庁告示第46号に準拠して、検液を作成して測定した。また、該検液のpHを測定した。
結果を表1に示す。
軽焼マグネシアと、表2に示す種類及び安息角の塩化鉄を、不溶化材中、軽焼マグネシアの無水物換算の含有率と、塩化鉄の含有率が、各々、表2に示す含有率となる量で混合して不溶化材を得た。
得られた不溶化材の安息角を、実施例1と同様にして測定した。
また、上記不溶化材を、セレン含有石炭灰1m3に対して、150kgとなる量で添加し、混合する以外は実施例1と同様にして不溶化処理を行い、不溶化処理後のセレン含有石炭灰からのセレンの溶出量、及び、検液のpHを実施例1と同様にして測定した。
結果を表2に示す。
軽焼マグネシアと、表3に示す種類及び安息角の塩化鉄を、不溶化材中、軽焼マグネシアの無水物換算の含有率と、塩化鉄の含有率が、各々、表3に示す含有率となる量で混合して不溶化材を得た。
得られた不溶化材の安息角を、実施例1と同様にして測定した。
また、上記不溶化材を、セレン含有土壌1m3に対して、100kgとなる量で添加し、混合する以外は実施例1と同様にして不溶化処理を行い、不溶化処理後の土壌からのセレンの溶出量、及び、検液のpHを実施例1と同様にして測定した。
結果を表3に示す。
軽焼マグネシアと、表4に示す種類及び安息角の塩化鉄を、不溶化材中、軽焼マグネシアの無水物換算の含有率と、塩化鉄の含有率が、各々、表4に示す含有率となる量で混合して不溶化材を得た。
得られた不溶化材の安息角を、実施例1と同様にして測定した。
また、上記不溶化材を、模擬セレン含有ずり1m3に対して、100kgとなる量で添加し、混合する以外は実施例1と同様にして不溶化処理を行い、不溶化処理後の模擬セレン含有ずりからのセレンの溶出量、及び、検液のpHを実施例1と同様にして測定した。
結果を表4に示す。
一方、比較例1~8(塩化鉄の安息角が22°または54°である不溶化材を用いたもの)のセレン溶出量(0.011~0.018mg/リットル)は、環境基準値(0.01mg以下)を満たしていないことがわかる。
Claims (7)
- 酸化マグネシウム含有物質と、安息角が30~50°である塩化鉄を含み、
上記酸化マグネシウム含有物質のブレーン比表面積が2,000~10,000cm 2 /gであり、上記酸化マグネシウム含有物質中、MgOの含有率が80質量%以上、CaOの含有率が3質量%以下であることを特徴とする不溶化材。 - 上記不溶化材中、上記酸化マグネシウム含有物質の含有率が無水物換算で10~90質量%であり、上記塩化鉄の含有率が10~90質量%である請求項1に記載の不溶化材。
- 上記不溶化材の安息角が40~55°である請求項1又は2に記載の不溶化材。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の不溶化材を製造するための方法であって、
上記不溶化材の材料としての適否を判断すべき塩化鉄について、その安息角を測定する塩化鉄測定工程と、
上記塩化鉄測定工程で得られた上記安息角の値が30~50°の範囲内であるという条件を満たすか否かを調べて、上記条件を満たす場合にのみ、上記塩化鉄を上記不溶化材の材料として採用する塩化鉄適否確認工程と、
上記塩化鉄適否確認工程で上記条件を満たすことが確認された上記塩化鉄と、上記酸化マグネシウム含有物質を混合して、上記不溶化材を得る混合工程、
を含む不溶化材の製造方法。 - 上記混合工程で得られた上記不溶化材について、その安息角を測定する不溶化材測定工程と、
上記不溶化材測定工程で得られた上記安息角の値が40~55°の範囲内であるという条件を満たすか否かを調べて、上記条件を満たす場合にのみ、上記不溶化材を、不溶化処理に適するものと評価する不溶化材適否確認工程、
を含む請求項4に記載の不溶化材の製造方法。 - 請求項1~3のいずれか1項に記載の不溶化材を、不溶化処理対象物1m3に対して、20~200kg添加し、混合する不溶化処理方法。
- 環境庁告示第46号に準拠して測定された、上記不溶化処理対象物からのセレンの溶出量が0.010mg/リットルを超え、2.00mg/リットル以下である請求項6に記載の不溶化処理方法。
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