JP2021053534A - 廃棄物の不溶化処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】廃棄物に含まれている重金属類を不溶化することができる方法を提供する。【解決手段】重金属類を含む廃棄物と、塩化第一鉄を主成分として含む重金属類不溶化材を混合して、上記廃棄物に含まれている重金属類を不溶化する方法であって。上記廃棄物の水硬率が0.20〜10.0である廃棄物の不溶化処理方法。廃棄物は、好ましくは、該廃棄物の生成前の材料を600〜1,300℃で加熱したことによって生成されたものである。廃棄物が生成される元となる材料を800〜1,000℃で加熱する際に生成されるものである。廃棄物に含まれる重金属類は、好ましくは、セレンまたはセレン化合物である。【選択図】なし

Description

本発明は、廃棄物の不溶化処理方法に関する。
廃棄物から、有害物質の溶出を抑制する処理方法として、不溶化材を混合する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、Se含有灰に第一塩鉄を添加、混練することにより、該Se含有灰からのSeの溶出を防止するSe含有灰の処理方法において、該Se含有灰にアルカリを添加して該Se含有灰をpH11以上とした後、pH11以上を維持した状態で第一鉄塩の添加、混練を行うことを特徴とするSe含有灰の処理方法が記載されている。
また、特許文献2には、重金属類を含む焼却灰、酸化マグネシウム含有物質、鉄化合物、及び水を含むことを特徴とする固化不溶化体が記載されている。該固化不溶化体は、重金属類を含む焼却灰を含むにもかかわらず、重金属類の溶出量が低く、土工資材として使用しても、土壌が重金属類によって汚染されるおそれがないものである。
特許第3831832号公報 特開2018−158306号公報
廃棄物には、様々な種類があり、廃棄物の種類やその成分組成によっては、不溶化処理の効果に違いが生じる場合がある。
本発明の目的は、廃棄物に含まれている重金属類を不溶化することができる方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、重金属類を含む廃棄物と、塩化第一鉄を主成分として含む重金属類不溶化材を混合して、廃棄物に含まれている重金属類を不溶化する方法であって、廃棄物の水硬率が0.20〜10.0である方法によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1] 重金属類を含む廃棄物と、塩化第一鉄を主成分として含む重金属類不溶化材を混合して、上記廃棄物に含まれている重金属類を不溶化する方法であって、上記廃棄物の水硬率が0.20〜10.0であることを特徴とする廃棄物の不溶化処理方法。
[2] 上記廃棄物が、該廃棄物の生成前の材料を600〜1,300℃で加熱したことによって生成されたものである前記[1]に記載の廃棄物の不溶化処理方法。
[3] 上記廃棄物に含まれる重金属類が、セレンまたはセレン化合物である前記[1]または[2]に記載の廃棄物の不溶化処理方法。
[4] 上記重金属類不溶化材が、20℃の条件下で、上記重金属類不溶化材と蒸留水を、質量比(塩化第一鉄/蒸留水)が1/10となる量で混合し攪拌した後、3時間経過した際のpHが2.0〜3.0であるものである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の廃棄物の不溶化処理方法。
[5] 上記廃棄物の元素組成を測定して、上記廃棄物の水硬率を算出する水硬率算出工程と、上記廃棄物が、上記水硬率が0.20〜10.0の範囲内であるという条件を満たしているかを調べて、上記廃棄物が上記条件を満たしている場合に、上記廃棄物を、上記重金属類不溶化材との混合による不溶化処理の対象物とし、上記廃棄物が上記条件を満たしていない場合に、上記廃棄物を、上記廃棄物単独では、上記重金属類不溶化材との混合による不溶化処理の対象物とはしないと判定する判定工程を含む、廃棄物の処理の適否の評価方法。
本発明の方法によれば、廃棄物に含まれている重金属類を不溶化することができる。
本発明の廃棄物の不溶化処理方法は、重金属類を含む廃棄物と、塩化第一鉄を主成分として含む重金属類不溶化材を混合して、上記廃棄物に含まれている重金属類を不溶化する方法であって、上記廃棄物の水硬率(H.M.)が0.20〜10.0である方法である。
不溶化処理の対象となる重金属類としては、例えば、土壌汚染対策法(平成15年)に規定されている第二種特定有害物質が挙げられ、具体的には、カドミウム及びその化合物、シアン化合物、六価クロム化合物、水銀及びその化合物、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、ひ素及びその化合物、ふっ素及びその化合物、および、ほう素及びその化合物が挙げられる。
重金属類の中でも、不溶化処理が難しく、比較的に問題となりやすい金属元素であるにもかかわらず、不溶化することができる観点から、セレンが好適である。
これらは、廃棄物中に、1種含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
本明細書中、廃棄物とは、産業廃棄物または一般廃棄物をいう。
産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物をいう。
産業廃棄物の例としては、生コンスラッジ、各種汚泥(例えば、下水汚泥、浄水汚泥、製鉄汚泥等)、建築廃材、コンクリート廃材、各種焼却灰(例えば、石炭灰、鶏糞灰、家畜糞灰、バイオマス灰、汚泥焼却灰)、鋳物砂、ロックウール、廃ガラス、高炉2次灰、各種副産物、未利用資源(使用されずに残存した材料等)等が挙げられる。
一般廃棄物とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう。
一般廃棄物の例としては、下水汚泥乾粉、都市ごみ焼却灰、貝殻等が挙げられる。
中でも、重金属類をより不溶化することができる観点から、廃棄物の生成前の材料(例えば、廃棄物が石炭灰であれば、石炭)を600〜1,300℃(好ましくは620〜1250℃、より好ましくは650〜1,100℃、特に好ましくは650〜1,000℃)で加熱したことによって生成された廃棄物が好適である。
廃棄物の水硬率(H.M.)は、0.20〜10.0、好ましくは0.22〜5.0、より好ましくは0.24〜3.0、特に好ましくは0.26〜2.0である。廃棄物の水硬率が0.20未満であると、廃棄物からの重金属類の溶出量が大きくなる。廃棄物の水硬率が10.0を超える場合、生石灰の残存量が過多となり、発熱や反応性の問題から、不溶化処理後の廃棄物を、土工資材等としての再利用する際に、その用途に制限が生じる場合がある。
塩化第一鉄を主成分として含む重金属類不溶化材(以下、「重金属類不溶化材」ともいう。)とは、塩化第一鉄を、無水物換算で、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上含むものである。
重金属類不溶化材は、20℃の条件下で、重金属類不溶化材と蒸留水を、質量比(重金属類不溶化材/蒸留水)が1/10となる量で混合し攪拌した後、3時間経過した際のpHが2.0〜3.0(好ましくは2.1〜2.9、より好ましくは2.2〜2.8)であるものが好ましい。上記pHが2.0未満の重金属類不溶化材は入手が困難である。また、不溶化処理にあたり、使用する設備に制約や制限が生じる場合がある。上記pHが3.0以下であれば、廃棄物からの重金属類の溶出量がより小さくなる。
また、重金属類不溶化材に含まれる塩化第一鉄は、無水物であっても水和物(例えば、塩化第一鉄2水和物、塩化第一鉄4水和物)であってもよい。
また、塩化第一鉄を主成分として含む重金属類不溶化材は、廃棄物からの重金属類の溶出量がより小さくなる観点から粉粒状物であることが好ましい。
ここで、本明細書中、「粉粒状」とは、粉状の材料(0.1mm未満の粒度を有するもの;粉体)の集合体、粒状の材料(0.1mm以上の粒度を有するもの;粒体)の集合体、または、粉状の材料および粒状の材料を含む集合体の形態を有することを意味する。また、「粉粒状物」とは、粉体の集合体、粒体の集合体、または、粉体および粒体を含む集合体を意味する。さらに、「粒度」とは、粉体または粒体における最大寸法(例えば、断面がだ円である粒体においては、長軸の寸法をいう。)
重金属類を含む廃棄物100質量部に対する、重金属類不溶化材の量(無水物換算)は、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15質量部、さらに好ましくは、1〜12質量部、特に好ましくは2〜10質量部である。該量が0.1質量部以上であれば、重金属類の溶出をより抑制することができる。該量が20質量部以下であれば、重金属類不溶化材にかかるコストの過度の上昇を防ぐことができる。
上述した廃棄物と塩化第一鉄を主成分として含む重金属類不溶化材を混合することによって、該廃棄物からの重金属類の溶出を抑制することができる。
本発明において、上述した廃棄物と重金属類不溶化材を混合する際に、重金属類の溶出をより抑制する観点から、軽焼マグネシア、軽焼マグネシアの部分水和物、軽焼ドロマイト、又は、軽焼ドロマイトの部分水和物を含む酸化マグネシウム含有物質、並びに、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の鉄化合物等の他の不溶化材(重金属類を不溶化しうるもの)を、さらに混合してもよい。
また、材料にかかるコストを低減する観点から、上述した他の不溶化材を使用せずに、重金属類不溶化材を単独で使用してもよい。
また、不溶化処理後の廃棄物のpHを中性領域(例えば、5.8〜8.6)とし、該廃棄物を、土工資材等としての再利用する際に、その用途に制限が生じないようにしたり、不溶化処理後の廃棄物を造粒する(粒度を大きくする)観点から、アルカリ性材料をさらに混合してもよい。
アルカリ性材料の例としては、各種セメント、消石灰、生石灰、石灰石粉末、高炉スラグ微粉末 等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述した廃棄物の不溶化処理方法を行う前に、後述する水硬率算出工程と判定工程を含む廃棄物の処理の適否の評価方法を行ってもよい。該評価方法を予め行うことで、重金属類を含む廃棄物の効率的な不溶化処理を行うことができる。
[水硬率算出工程]
本工程は、重金属類を含む廃棄物の元素組成を測定して、該廃棄物の水硬率を算出する工程である。
[判定工程]
本工程は、上記廃棄物が、水硬率算出工程で得られた上記水硬率が0.20〜10.0の範囲内であるという条件を満たしているかを調べて、上記廃棄物が上記条件を満たしている場合に、上記廃棄物を、重金属類不溶化材との混合による不溶化処理の対象物とし、上記廃棄物が上記条件を満たしていない場合に、上記廃棄物を、上記廃棄物単独では、重金属類不溶化材との混合による不溶化処理の対象物とはしないと判定する工程である。
本工程において、上記廃棄物を、上記廃棄物単独では、重金属類不溶化材との混合による不溶化処理の対象物とはしないとした場合、上記廃棄物に、他の種類の廃棄物等を添加し混合することで、混合後の廃棄物の水硬率が0.20〜10.0の範囲内となるように調整したり、塩化第一鉄を主成分として含む重金属類不溶化材と、他の不溶化材(例えば、酸化マグネシウム含有物質)を組み合わせたうえで、不溶化処理を行ってもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)廃棄物1〜5:廃棄物生成前の材料を800〜1,000℃で加熱してなるセレンを含む廃棄物、各廃棄物の水硬率、及び、環境省告示第18号に準拠して測定した不溶化処理前の廃棄物からのセレンの溶出量を表1に示す。
(2)不溶化材1〜2:塩化第一鉄を98質量%以上含むもの、また、20℃の条件下で、塩化第一鉄と蒸留水を、質量比(塩化第一鉄/蒸留水)が1/10となる質量で混合し攪拌して検液を得た後、3時間経過した際の検液のpHを、「JIS K 0102:2013(工場排水試験方法)」12.1ガラス電極法に準拠して測定した結果を表1に示す。
[実施例1〜3、比較例1〜2]
表1に示す種類の廃棄物及び不溶化材を、廃棄物100質量部に対して、不溶化材が5質量部となる量で、同時にホバート社製の縦型ミキサに投入した後、3分間混合して、不溶化処理を行った。
不溶化処理後の廃棄物からのセレンの溶出量を、環境省告示第18号に準拠して測定した。結果を表1に示す。
Figure 2021053534
表1から、実施例1〜3(廃棄物のH.M.が0.27〜1.09であるもの)では、不溶化処理後の廃棄物からのセレンの溶出量は、環境省告示第18号で規定されたセレンの溶出基準値(0.01mg/リットル以下)を満たしていることがわかる。
一方、比較例1〜2(廃棄物のH.M.が0.02〜0.08であるもの)では、不溶化処理後の廃棄物からのセレンの溶出量は、環境省告示第18号で規定されたセレンの溶出基準値(0.01mg/リットル以下)を満たしていないことがわかる。

Claims (5)

  1. 重金属類を含む廃棄物と、塩化第一鉄を主成分として含む重金属類不溶化材を混合して、上記廃棄物に含まれている重金属類を不溶化する方法であって、
    上記廃棄物の水硬率が0.20〜10.0であることを特徴とする廃棄物の不溶化処理方法。
  2. 上記廃棄物が、該廃棄物の生成前の材料を600〜1,300℃で加熱したことによって生成されたものである請求項1に記載の廃棄物の不溶化処理方法。
  3. 上記廃棄物に含まれる重金属類が、セレンまたはセレン化合物である請求項1または2に記載の廃棄物の不溶化処理方法。
  4. 上記重金属類不溶化材が、20℃の条件下で、上記重金属類不溶化材と蒸留水を、質量比(塩化第一鉄/蒸留水)が1/10となる量で混合し攪拌した後、3時間経過した際のpHが2.0〜3.0であるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の廃棄物の不溶化処理方法。
  5. 上記廃棄物の元素組成を測定して、上記廃棄物の水硬率を算出する水硬率算出工程と、
    上記廃棄物が、上記水硬率が0.20〜10.0の範囲内であるという条件を満たしているかを調べて、上記廃棄物が上記条件を満たしている場合に、上記廃棄物を、上記重金属類不溶化材との混合による不溶化処理の対象物とし、上記廃棄物が上記条件を満たしていない場合に、上記廃棄物を、上記廃棄物単独では、上記重金属類不溶化材との混合による不溶化処理の対象物とはしないと判定する判定工程を含む、廃棄物の処理の適否の評価方法。
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