JP7213716B2 - 固化不溶化方法 - Google Patents
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Description
しかし、石炭灰等の焼却灰には、カドミウム、六価クロム、シアン、水銀、セレン、鉛、ひ素、フッ素、又は、ホウ素(以下、「重金属等」ともいう。)等が含まれている場合がある。このため、焼却灰から重金属等が溶出し、土壌が重金属等で汚染されるという問題がある。
石炭灰中の重金属等の溶出を抑制する方法として、特許文献1には、石炭灰に対し、硫酸第一鉄及び高炉セメントB種を添加し、さらにスラリー化する量の水を添加して混練することを特徴とする、石炭灰中の重金属不溶化方法が記載されている。
また、焼却灰中のフッ素、又は、ホウ素の溶出を防止する方法として、特許文献2には、フッ素あるいはホウ素が溶出する土壌又はフッ素あるいはホウ素が溶出する焼却灰に水硬性結合材を添加、混合することを特徴とする土壌又は焼却灰中のフッ素又はホウ素の固化不溶化方法が記載されている。
また、焼却灰中の重金属類の溶出が抑制された固化不溶化体として、特許文献3には、重金属類を含む焼却灰、酸化マグネシウム含有物質、鉄化合物、及び水を含むことを特徴とする固化不溶化体が記載されている。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[3]を提供するものである。
[1] 鉄化合物と水を混合して鉄化合物水溶液を得る第一の混合工程と、上記鉄化合物水溶液と、重金属類を含む焼却灰と、酸化マグネシウム含有物質を同時に混合して、固化不溶化体を得る第二の混合工程、を含む固化不溶化方法であって、上記焼成灰100質量部に対して、上記鉄化合物と上記酸化マグネシウム含有物質の合計量が35~100質量部、上記水の量が15~100質量部であり、上記鉄化合物及び上記酸化マグネシウム含有物質の少なくともいずれか一方の量が、上記焼却灰100質量部に対して、20質量部を超えるものであることを特徴とする固化不溶化方法。
[2] 上記第一の混合工程における、上記鉄化合物と上記水の質量比(鉄化合物/水)が、4.0以下である前記[1]に記載の固化不溶化方法。
[3] 上記鉄化合物が、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、及びポリ硫酸第二鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記[1]又は[2]に記載の固化不溶化方法。
以下、本発明を工程ごとに詳細に説明する。
本工程は、鉄化合物と水を混合して鉄化合物水溶液を得る工程である。
本発明において用いられる鉄化合物の例としては、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、及びポリ硫酸第二鉄等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、重金属類の溶出をより抑制する観点からは、塩化第一鉄が好ましい。また、鉄化合物にかかるコスト低減の観点からは、塩化第二鉄が好ましい。
本発明において、重金属類を含む焼却灰100質量部に対する、鉄化合物の量は、好ましくは10~50質量部、より好ましくは15~45質量部、さらに好ましくは20質量部を超え、40質量部以下、さらに好ましくは21~35質量部、特に好ましくは22~35質量部である。該量が10質量部以上であれば、重金属類の溶出をより抑制することができる。また、大量の焼却灰の固化不溶化処理を行う場合であっても、第一の混合工程及び第二の混合工程の混合において、鉄化合物が、鉄化合物水溶液及び固化不溶化体中に十分に分散されるため、鉄化合物がばらつく(偏在する)ことによる重金属類の溶出抑制効果の低下がより起こりにくくなる。該量が50質量部以下であれば、鉄化合物にかかるコストの過度の上昇や固化不溶化処理後に発生する固化不溶化体の量が過度に増大することを防ぐことができる。
本工程において、鉄化合物と混合される水は、次工程で得られる固化不溶化体に含まれることとなる水の全部であっても一部であってもよい。本工程において、鉄化合物と、固化不溶化体に含まれることとなる水の一部を混合した場合、残りの水は、次工程である第二の混合工程において、他の材料(重金属類等を含む焼却灰等)と共に混合される。
本工程で用いられる水の量は、本工程と次工程との合計の水の量(100質量%中)に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
本工程における、鉄化合物と水の質量比(鉄化合物/水)は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは0.8以下である。該比が4.0以下であれば、鉄化合物を十分に水に溶解させることができ、重金属類の溶出をより抑制することができる。該比の下限値は、固化不溶化体の保管や運搬がより容易となる等の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.4以上である。
本工程は、前工程で得られた鉄化合物水溶液と、重金属類を含む焼却灰と、酸化マグネシウム含有物質を同時に混合して、固化不溶化体を得る工程である。
重金属類としては、カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン、水銀及びその化合物、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、ひ素及びその化合物、フッ素及びその化合物、及び、ホウ素及びその化合物(土壌汚染対策法(平成15年)において第二種特定有害物質として挙げられているもの)が挙げられる。中でも、従来は不溶化が難しかった重金属類の不溶化を図ることができるという観点から、セレン及びひ素が好ましく、セレンがより好ましい。
本発明の固化不溶化方法の対象物である、重金属類を含む焼却灰の例としては、石炭灰、都市ごみ焼却灰、ペーパースラッジ焼却灰、炉清掃排出物、コークス灰、及び、重油燃焼灰等が挙げられる。
酸化マグネシウム含有物質の例としては、軽焼マグネシア、軽焼マグネシアの部分水和物、軽焼ドロマイト、又は、軽焼ドロマイトの部分水和物を含むもの等が挙げられる。中でも、重金属類(特に、セレン)の溶出をより抑制することができ、不純物の含有量が少なく、かつ、入手の容易性の観点から、軽焼マグネシアが好ましい。
軽焼マグネシアの例としては、炭酸マグネシウムと水酸化マグネシウムのいずれか一方または両方を含む原料を、好ましくは600~1,300℃の温度で焼成することによって得られるものが挙げられる。
軽焼ドロマイトとしては、例えば、ドロマイトを、好ましくは650~1,100℃の温度で焼成することによって得られるものが挙げられる。
また、本発明において、重金属類を含む焼却灰100質量部に対する、鉄化合物と酸化マグネシウム含有物質の合計量は、好ましくは40質量部を超え、100質量部以下、より好ましくは42~90質量部、特に好ましくは44~80質量部である。上記合計量が40質量部を超えるものであれば、重金属類の溶出をより抑制することができる。上記合計量が100質量部以下であれば、鉄化合物及び酸化マグネシウム含有物質にかかるコストの過度の上昇や固化不溶化処理後に発生する固化不溶化体の量の過度の増大を防ぐことができる。
また、酸化マグネシウム含有物質の量と、酸化マグネシウム含有物質及び鉄化合物の合計量の質量比(酸化マグネシウム含有物質/(酸化マグネシウム含有物質+鉄化合物)は、重金属類の溶出をより抑制する観点から、好ましくは0.2~0.8、より好ましくは0.25~0.75、特に好ましくは0.3~0.7である。
第二の混合工程における混合時間は、各材料の合計量やミキサ等の混合手段によっても異なるが、重金属類の溶出量をより小さくする観点から、好ましくは1分間以上、より好ましくは4分間以上、特に好ましくは8分間以上である。
[使用材料]
(1)鉄化合物a:塩化第二鉄(和光純薬工業社製、濃度40%、試薬1級)
(2)鉄化合物b:塩化第一鉄(タイキ薬品工業社製、濃度32%)
(3)鉄化合物c:ポリ硫酸第二鉄(南海化学社製、Fe3+:11%以上)
(4)鉄化合物d:硫酸第一鉄1水塩(富士チタン工業社製、商品名:FD)
(5)酸化マグネシウム含有物質a:軽焼マグネシア(太平洋セメント社製、酸化マグネシウムの含有率:92質量%以上、マグネサイトを1,000℃で3時間焼成したもの)
(6)酸化マグネシウム含有物質b:ドロマイトを、電気炉を用いて700℃で30分間焼成した軽焼ドロマイト(酸化マグネシウムの含有率;23質量%以上)
(7)酸化マグネシウム含有物質c:海水中のマグネシウム成分から得られた水酸化マグネシウムを焼成してなる軽焼マグネシア(タテホ化学工業社製、商品名「TATEHOMAG」、酸化マグネシウムの含有率;99質量%以上)
(8)重金属類を含む焼却灰:石炭灰1~3
なお、表1中、酸化マグネシウム含有物質を「MgO含有物質」、重金属類を含む焼却灰を「焼却灰」と示す。
結果を表2に示す。
第一の混合工程(表1中、「第一工程」と示す。)として、表1に示す種類及び配合量の鉄化合物及び水をソイルミキサーに投入した後、表1に示す時間混合して、鉄化合物水溶液を得た。
次いで、第二の混合工程(表2中、第二工程)と示す。)として、上記鉄化合物水溶液に、表1に示す種類及び配合量の、重金属類を含む焼却灰および酸化マグネシウム含有物質を投入した後、表1に示す時間混合して、固化不溶化体を得た。 得られた固化不溶化体を、20℃の恒温室で3日間密封養生した。養生後の固化不溶化体について、表2に示す種類の重金属類の溶出量、及び、重金属類の溶出量の測定に用いられた検液のpHを、上記石炭灰と同様にして測定した。結果を表2に示す。
表1に示す種類及び量の、重金属類を含む焼却灰、酸化マグネシウム含有物質、鉄化合物、及び水をソイルミキサーに投入した後、5分間混合し、固化不溶化体を得た。
得られた固化不溶化体について、実施例1と同様にして、重金属類の溶出量、及び、検液のpHを測定した。
結果を表2に示す。
また、実施例6~7と比較例2(すべての材料を同時に混合したもの)を比較すると、実施例6~7における固化不溶化体からのひ素の溶出量(0.001mg/リットルよりも小さい)は、比較例1における固化不溶化体からのひ素の溶出量(0.021mg/リットル)よりも小さいことがわかる。
さらに、実施例1~15における固化不溶化体からの重金属類の溶出量は、重金属類を含む焼却灰からの重金属類の溶出量よりも小さく、さらに、土壌汚染対策法における指定基準を満たしていることがわかる。
なお、土壌汚染対策法における指定基準(溶出試験)は、以下のとおりである。
セレン:0.01mg/リットル、ひ素:0.01mg/リットル、ホウ素:1mg/リットル、フッ素:0.8mg/リットル、六価クロム:0.05mg/リットル
また、実施例1~3の比較、実施例8~9の比較、実施例10~11の比較、実施例12~13の比較、実施例14~15の比較から、水の配合量が大きくなると、固化不溶化体からの重金属類の溶出量が小さくなることがわかる。
Claims (2)
- 鉄化合物と水を混合して、上記鉄化合物と上記水の質量比(鉄化合物/水)が、0.1~0.8である鉄化合物水溶液を得る第一の混合工程と、
上記鉄化合物水溶液と、重金属類を含む焼却灰と、酸化マグネシウム含有物質を同時に混合して、固化不溶化体を得る第二の混合工程、を含む固化不溶化方法であって、
上記焼成灰100質量部に対して、上記鉄化合物と上記酸化マグネシウム含有物質の合計量が35~100質量部、上記水の量が50~100質量部であり、
上記鉄化合物及び上記酸化マグネシウム含有物質の少なくともいずれか一方の量が、上記焼却灰100質量部に対して、20質量部を超えるものであり、
上記鉄化合物及び上記酸化マグネシウム含有物質の各量が、上記焼却灰100質量部に対して、10質量部以上であり、
上記酸化マグネシウム含有物質が、軽焼マグネシア、軽焼マグネシアの部分水和物、軽焼ドロマイト、又は、軽焼ドロマイトの部分水和物であることを特徴とする固化不溶化方法。 - 上記鉄化合物が、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、及びポリ硫酸第二鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の固化不溶化方法。
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