JP7099911B2 - 土壌の処理方法 - Google Patents
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Description
重金属等の溶出を抑制することができる土壌改質材や不溶化材として、例えば、特許文献1には、金属硫酸塩および酸化マグネシウム含有物質を含む土壌改質材であって、上記酸化マグネシウム含有物質中、フォルステライトの含有率が8質量%以下であることを特徴とする土壌改質材が記載されている。
また、特許文献2には、軽焼マグネシアを主成分とする不溶化材であって、上記不溶化材の全量100質量%中、フォルステライトの含有率が6.0質量%以下であり、かつ、ふっ素(F)の含有率が0.045質量%以下であることを特徴とする不溶化材が記載されている。
なお、本明細書中、「重金属類」とは、カドミウム、六価クロム、シアン、水銀、セレン、鉛、ひ素、ふっ素、及びほう素から選ばれる少なくとも1種をいう。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[4]を提供するものである。
[1] 軽焼マグネシアおよび硫酸第一鉄含有物質を含む不溶化材であって、上記硫酸第一鉄含有物質中のチタンの含有率が、TiO2換算で0.08質量%以上であることを特徴とする不溶化材。
[2] 前記[1]に記載の不溶化材を、重金属類で汚染された土壌に添加して混合し、上記重金属類の溶出を抑制することを特徴とする土壌の処理方法。
[3] 上記土壌が、以下の(i)~(iii)のうち、少なくとも一つを満たすものである前記[2]に記載の土壌の処理方法。
(i) 平成15年3月6日環境省告示第18号「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に準拠して測定された「ふっ素及びその化合物の溶出量」が0.80mg/リットルを超える土壌
(ii) 平成15年3月6日環境省告示第18号「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に準拠して測定された「鉛及びその化合物の溶出量」が0.01mg/リットルを超える土壌
(iii) 平成15年3月6日環境省告示第18号「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に準拠して測定された「セレン及びその化合物の溶出量」が0.01mg/リットルを超える土壌
[4] 前記[1]に記載の不溶化材を製造するための方法であって、イルメナイトを濃硫酸に溶解した後、生成した硫酸第一鉄含有物質を回収する回収工程と、回収した硫酸第一鉄含有物質と、軽焼マグネシアを混合して、不溶化材を得る混合工程、を含むことを特徴とする不溶化材の製造方法。
軽焼マグネシアとしては、例えば、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムのいずれか一方または両方を含む固形原料を、好ましくは600~1,300℃の温度で焼成することによって得られるものが挙げられる。
上記固形原料としては、例えば、マグネサイト、ドロマイト、ブルーサイト、及び、海水中のマグネシウム成分を消石灰等のアルカリで沈殿させて得た水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは、塊状物でもよいし、粉粒状物でも良い。
軽焼マグネシア中の酸化マグネシウムの含有率は、重金属類の溶出を抑制する効果がより向上する観点から、好ましくは65質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上である。
硫酸第一鉄含有物質中の硫酸第一鉄の含有率は、重金属類の溶出をより抑制する観点から、硫酸第一鉄1水塩換算で、好ましくは85質量%以上、より好ましくは88質量%以上、特に好ましくは91質量%以上である。
硫酸第一鉄含有物質中のチタンの含有率は、重金属類の溶出を抑制する効果をより大きくする観点からは、TiO2換算で、0.08質量%以上、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.30質量%以上、さらに好ましくは0.40質量%以上、さらに好ましくは0.50質量%以上、さらに好ましくは0.60質量%以上、特に好ましくは0.70質量%以上である。また、上記含有率は、硫酸第一鉄含有物質の入手の容易性の観点からは、TiO2換算で、好ましくは0.90質量%以下、より好ましくは0.88質量%以下、特に好ましくは0.86質量%以下である。
また、酸化チタンを製造する際に発生した副産物(硫酸第一鉄含有物質)や、市販の硫酸第一鉄に、酸化チタンの試薬を添加し、混合することで、本発明で用いられる硫酸第一鉄含有物質を製造してもよい。
他の成分の例としては、石膏、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ゼオライト、ポリ塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、珪石粉末、水酸化マグネシウム、及び、ベントナイト等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他の成分の添加量は、本発明の効果を阻害しない範囲内であればよく、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して、通常、100質量部以下、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。
なお、本発明の不溶化材は、粉体またはスラリーの形態を有することができる。
本明細書中、濃硫酸とは、90質量%以上の濃度で硫酸を含むものをいう。本発明において、回収工程で用いられる濃硫酸は、通常、96~98質量%の濃度で硫酸を含む。
なお、上記回収工程は、イルメナイトを原料として酸化チタンを製造する方法の一種である硫酸法の一部分(前半の工程)に相当するものである。上記硫酸法の後半の工程において、硫酸第一鉄含有物質を回収した後に残存する液状物にはTiOSO4が含まれているので、該液状物を加水分解した後、焼成することによって、高純度の酸化チタンを得ることができる。
回収した硫酸第一鉄含有物質について、X線回折等を用いて、硫酸第一鉄含有物質中のチタンの含有率(TiO2換算)を測定し、該含有率が0.08質量%以上であるか否かを確認して、該含有率が0.08質量%以上である場合に、回収した硫酸第一鉄含有物質を、混合工程において用いられる硫酸第一鉄含有物質として用いることができる。また、該含有率が0.08質量%未満である場合には、回収した硫酸第一鉄含有物質に、酸化チタンの試薬等の酸化チタン含有物質を添加して混合することによって、該含有率を0.08質量%以上に調整し、こうして得られた混合物を、混合工程において用いられる硫酸第一鉄含有物質として用いてもよい。
不溶化処理の対象となる土壌は、土壌中の重金属類を不溶化して、重金属類の溶出を大きく抑制するという本発明の効果から、土壌汚染対策法に基づく、重金属類の土壌溶出量基準値を超える量で第二種特定有害物質を含むものが好ましい。
ここで、第二種特定有害物質とは、カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン化合物、水銀及びその化合物、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、ひ素及びその化合物、ふっ素及びその化合物、ほう素及びその化合物であり、その土壌溶出量基準値は、各々、0.01mg/リットル以下、0.05mg/リットル以下、検出されないこと、0.0005mg/リットル以下、0.01mg/リットル以下、0.01mg/リットル以下、0.01mg/リットル以下、0.8mg/リットル以下、1mg/リットル以下である。
(i) 平成15年3月6日環境省告示第18号「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に準拠して測定された「ふっ素及びその化合物の溶出量」が0.80mg/リットルを超える(好ましくは0.85~5.0mg/リットル、より好ましくは0.90~3.0mg/リットル)土壌
(ii) 平成15年3月6日環境省告示第18号「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に準拠して測定された「鉛及びその化合物の溶出量」が0.01mg/リットルを超える(好ましくは0.015~0.60mg/リットル、より好ましくは0.02~0.55mg/リットル)土壌
(iii) 平成15年3月6日環境省告示第18号「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に準拠して測定された「セレン及びその化合物の溶出量」が0.01mg/リットルを超える(好ましくは0.015~0.60mg/リットル、より好ましくは0.02~0.55mg/リットル)土壌
[使用材料]
(1)硫酸第一鉄含有物質A~C;イルメナイトを原料として酸化チタンを製造する際に発生した副産物(イルメナイトを、硫酸濃度98質量%の濃硫酸に溶解させた後、静置し、生成した硫酸第一鉄含有物質を回収したもの)、硫酸第一鉄1水塩の含有率:93質量%以上、詳細を表1に示す。なお、表1中、TiO2の含有率は、粉末X線回折装置を用いて測定したものである。
(2)硫酸第一鉄含有物質D;試薬、硫酸第一鉄1水塩の含有率:99質量%以上、詳細を表1に示す。
(3) 軽焼マグネシア;酸化マグネシウムの含有率:92質量%、ブレーン比表面積:5,500cm2/g
(4)土壌A~C;粘性土、詳細は表2に示す。なお、表2中、「ふっ素溶出量」、「鉛溶出量」、「セレン溶出量」の語は、各々、「ふっ素及びその化合物の溶出量」、「鉛及びその化合物の溶出量」、「セレン及びその化合物の溶出量」であり、平成15年3月6日環境省告示第18号「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に準拠して測定された数値である。また、表2中「pH」は、ふっ素等の溶出量測定用の検液のpHを、pHメーター(堀場製作所社製、商品名「F-52」)およびpH電極(堀場製作所社製、商品名「9615-10D」)を用いて測定した数値である。
上記材料を、表3に示す配合割合で混合して、不溶化材を得た。次いで、土壌Aに不溶化材を、土壌1m3に対して、不溶化材が30kgとなる量で添加し、ホバートミキサを用いて3分間混合した。得られた混合物に対して、20℃の条件下で7日間の封緘養生を行った。養生後の混合物に対して、環境庁告示第18号「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に記載されている方法に準拠して、「ふっ素及びその化合物の溶出量」(表3中、「ふっ素溶出量」と示す。)を測定した。
結果を表3に示す。
不溶化材として、上記材料を表4に示す配合割合で混合したものを使用し、土壌Aに代えて土壌Bに、得られた不溶化材を添加し、混合する以外は、実施例1と同様にして、養生後の混合物を得た。養生後の混合物に対して、環境庁告示第18号「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に記載されている方法に準拠して、「鉛及びその化合物の溶出量」(表4中、「鉛溶出量」と示す。)を測定した。
結果を表4に示す。
不溶化材として、上記材料を表5に示す配合割合で混合したものを使用し、土壌Aに代えて土壌Cに、得られた不溶化材を添加し、混合する以外は、実施例1と同様にして、養生後の混合物を得た。養生後の混合物に対して、環境庁告示第18号「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に記載されている方法に準拠して、「セレン及びその化合物の溶出量」(表5中、「セレン溶出量」と示す。)を測定した。
結果を表5に示す。
また、表4から、チタンの含有率(TiO2換算)が0.20~0.60質量%である硫酸第一鉄含有物質を含む不溶化材を用いた場合(実施例4~5)の土壌の「鉛及びその化合物の溶出量」(0.007~0.009mg/リットル)は、チタンの含有率(TiO2換算)が0.04質量%である硫酸第一鉄含有物質を含む不溶化材を用いた場合(比較例2)の土壌の「鉛及びその化合物の溶出量」(0.011mg/リットル)よりも小さいことがわかる。
さらに、表5から、チタンの含有率(TiO2換算)が0.20~0.60質量%である硫酸第一鉄含有物質を含む不溶化材を用いた場合(実施例6~7)の土壌の「セレン及びその化合物の溶出量」(0.008mg/リットル)は、チタンの含有率(TiO2換算)が0.04質量%である硫酸第一鉄含有物質を含む不溶化材を用いた場合(比較例4)の土壌の「セレン及びその化合物の溶出量」(0.014mg/リットル)よりも小さいことがわかる。
Claims (2)
- イルメナイトを濃硫酸に溶解した後、生成した硫酸第一鉄含有物質を回収する回収工程と、
回収した上記硫酸第一鉄含有物質と、軽焼マグネシアを混合して、上記軽焼マグネシアおよび上記硫酸第一鉄含有物質を含み、かつ、上記軽焼マグネシアおよび上記硫酸第一鉄含有物質の合計量中、上記硫酸第一鉄含有物質の割合が30~80質量%である不溶化材を得る不溶化材調製工程と、
上記不溶化材を、重金属類で汚染された土壌1m 3 あたり、10~150kgとなる量で添加して混合し、上記重金属類の溶出を抑制する不溶化処理工程を含み、
上記硫酸第一鉄含有物質中、チタンの含有率が、TiO 2 換算で0.15~0.90質量%で、かつ、硫酸第一鉄の含有率が、硫酸第一鉄1水塩換算で85質量%以上であることを特徴とする土壌の処理方法。 - 上記土壌が、以下の(i)~(iii)のうち、少なくとも一つを満たすものである請求項1に記載の土壌の処理方法。
(i) 平成15年3月6日環境省告示第18号「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に準拠して測定された「ふっ素及びその化合物の溶出量」が0.80mg/リットルを超える土壌
(ii) 平成15年3月6日環境省告示第18号「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に準拠して測定された「鉛及びその化合物の溶出量」が0.01mg/リットルを超える土壌
(iii) 平成15年3月6日環境省告示第18号「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に準拠して測定された「セレン及びその化合物の溶出量」が0.01mg/リットルを超える土壌
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