JP6992651B2 - 重金属等不溶化材及びその製造方法、重金属等不溶化材の品質管理方法並びに重金属等不溶化方法 - Google Patents
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また近年、日本のみならず海外においても黄鉄鉱(FeS2)を含有する岩石や土壌から、ヒ素やセレン等が溶出する課題が発生しており、かかる課題に対する適切な処理方法が所望されており、重金属等不溶化処理は、その有効な処理方法の一つとして期待されている。
これは、セレンは、環境中において主に4価の亜セレン酸イオンと、6価のセレン酸イオンの2つの化学形態として存在しているが、4価の亜セレン酸イオンは、平面的な構造であり、種々の化合物と反応が進行し易い構造となっている一方、6価のセレン酸イオンは安定な正四面体構造となっており、反応性が低いことによるものと考えられる。
このようにセレン、特に6価のセレンは安定な構造を有していることから、土壌やずりなど岩石から溶出するセレン、特に6価セレンの処理が困難となっている現状がある。
かかるフッ素の処理方法としては、一般的に、消石灰等カルシウム塩を用いて難溶性のフッ化カルシウムを生成させ、溶出量を低減させる方法や硫酸アルミニウム等アルミニウム塩を用いて水酸化アルミニウムを生成させ、共沈させる手法が一般的であることが非特許文献3(真島敏行,高月絋:CaF2晶析法による洗煙水中のフッ素処理.水処理技術.28.433-443(1987))に記載されている。
また、本発明の他の目的は、特定量の炭酸カルシウム量と酸化カルシウム量を含む焼成ドロマイトと、還元剤とを特定の比率で含ませることで、セレンやフッ素等の重金属等不溶化性能に優れる簡易な重金属等不溶化材の製造方法を提供することである。
また更に本発明の他の目的は、上記重金属等不溶化材を用いて、汚染土壌の重金属等を不溶化する方法を提供することである。
本発明の重金属等不溶化材は、トンネル掘削ずりや石炭灰から溶出する重金属等を効果的に不溶化することが可能となる。
また、本発明の重金属等不溶化材を汚染土壌に適用することで、土壌から有効に重金属等を除去することが可能となる。
本発明の重金属等不溶化材は、4価のセレン(IV)及び6価のセレン(VI)を不溶化する重金属等不溶化材であって、CaCO3の含有量が0≦x≦75.5(質量%)でCaOの含有量が2.3≦x≦75.5(質量%)でMgO含有量が22.2≦x≦27.3(質量%)である焼成ドロマイトと、還元剤とを、質量比9:1~1:9の割合で含有する、重金属等不溶化材である。
特に、本発明の不溶化材中の焼成ドロマイト中のCaCO3及びCaOの含有量と、土壌や岩石ずりから溶出する重金属等不溶化性能とが相関関係を有することを見出したことにより、焼成ドロマイト中に含まれるCaCO3及びCaOを定量して、上記範囲内の含有量とすることで、原料となるドロマイト鉱石の産地による組成の相違や、焼成温度等の焼成条件の設定などに関係なく、重金属等不溶化性能に優れる重金属等不溶化材を得ることが可能となる。
ドロマイトは、石灰石CaCO3とマグネサイトMgCO3のモル比が1:1となる複塩構造をとっており、CO3 2-基を挟んでCa2+イオンとMg2+イオンが交互に層を成しており、一般に、炭酸マグネシウムの割合が10~45質量%のものをいう。
ドロマイトは、国内に多量に存在していることから、ドロマイトを使用した重金属等不溶化材は、コストや環境負荷の点からも有利である。
CaMg(CO3)2→CaCO3+MgO+CO2・・・(1)
CaCO3+MgO+CO2→CaO+MgO+2CO2・・・(2)
で表される分解反応を示す。
CaCO3の含有量が75.5質量%より多い場合では、焼成が不十分であり、重金属等の不溶化が十分ではなくなる。
CaOの含有量が、2.3質量%より小さい場合では重金属等不溶化性能が低下してしまう。
このように、CaCO3の含有量とCaOの含有量が上記範囲内であると、焼成ドロマイトが優れた重金属等不溶化性能を有することができる。
特に、粉末X線回析によるリートベルト法は、TG-DSC法と異なり、迅速かつ正確に焼成ドロマイト中に含まれるCaCO3、MgO、CaOの量を解析することができるため、重金属等不溶化材として用いる焼成ドロマイト中のCaCO3及びCaOの含有量を測定する際に好適に用いることができ、更に品質管理に好適である。
かかる還元剤としては、例えば、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩;亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム等のチオ硫酸塩;硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化カルシウム等の硫化物;水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化カルシウム等の水硫化物;多硫化ナトリウム、多硫化カリウム、多硫化カルシウム等の多硫化物;チオ酸塩、二酸化硫黄、硫黄等の硫黄化合物;硫酸第一鉄、硝酸第一鉄、塩化第一鉄等の第一鉄塩や3価チタン塩等の金属塩;アルデヒド類、糖類、ギ酸、シュウ酸、アスコルビン酸等の有機化合物;高炉スラグ粉末、泥炭、亜炭、ヨウ素、鉄粉等を例示することができる。特に、経済性、安全性の観点から、好ましくは鉄化合物であり、更に好ましくは第一鉄化合物が望ましい。第一鉄化合物としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、硝酸第一鉄等が該当し、これらを単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
かかる還元剤を更に含有することにより重金属等不溶化性能をより向上させることができる。
かかる範囲で配合することにより、重金属等の不溶化を有効に発現することができることとなる。
その接触方法としては、任意の公知の方法を適用することができ、例えば、本発明の重金属等不溶化材と土壌及び岩石ずりとの混合や、排水中への投入攪拌方法を例示することができる。
また、その配合割合は、土壌等に含まれる重金属等の量に依存して設計配合することが可能である。
特に、本発明の重金属等不溶化材と重金属等が溶出する土壌や岩石ずりを接触させる際の温度としては、特に限定するものではなく、冬季においてもまた夏季においても有効に適用することができ、例えば、0~50℃の範囲での適用が可能である。
(1)焼成ドロマイト調製
ドロマイト(産地:栃木(葛生地方)、粒径(mm):3~7mm)を用いて、焼成温度800℃又は1000℃で、焼成時間30分、60分、240分焼成して、各焼成ドロマイトを得た。
得られた塊状の各焼成ドロマイトを、遊星ミルを用いて、平均粒径50±10μmまで粉砕(300rpm,10分)して、粉末X線回折測定及びリートベルト解析を用いて、CaMg(CO3)2、CaCO3、MgO、CaO、SiO2含有量をそれぞれ測定した。
その結果を下記表1に示す。
1)使用装置:PANalytical X’Pert Pro MPD
2)リートベルト解析ソフト:PANalytical High Score Plus
3)測定条件:管球 Cu-Kα,管電圧45kV,電流40mA
4)発散スリット 可変(12mm),アンチスキャッタースリット(入射側)無し,ソーラースリット(入射側)0.04rad.
5)受光スリット 無し,アンチスキャッタースリット(受光側)可変(12mm),ソーラースリット(受光側) 0.04rad
6)走査範囲 2θ=20~70°,走査ステップ 0.008°,計数時間 最強線のカウント数が10000±1000cpsになるように調整
Goodness of fit≦6となった際に解析が成功したとみなした。
不溶化処理試験を実施するために、以下の掘削ずりを使用し、蛍光X線分析(ED-XRF)により、該掘削ずり中に含まれる各元素含有量を測定した。
その結果を以下の表2に示す。
2)蛍光X線分析(XRF)の条件
装置:PANalytical Epsilon 3(ED-XRF)
測定モード:Omnian
その結果を下記表3示す。
上記(3)で調製して得られたろ液中のセレンの価数分析を、LC-ICP-MSを用いて実施した。
価数に応じたセレンの溶出量の結果を、以下の表4に示す。
1)測定装置:液体クロマトグラフ:LC -10A システム(島津製作所)
ICP-MS 分析装置 7700x(アジレント・テクノロジー)
2)LC条件:
分離カラム:Hamilton PRP-X100(4.1mm×250mm)
移動相組成:10mM クエン酸アンモニウム緩衝液
流速:1.2mL/min
オーブン温度:40℃
注入量:250μL
3)ICP-MS条件:
RF出力:1550W
プラズマガス:15.0L/min
補助ガス:0.90L/min
キャリアガス:1.0L/min
測定元素:セレン(Se)
測定質量数:78
測定モード:CRI(H2ガス)
上記掘削ずり100質量部に対し、各種不溶化材を3、5、10質量部添加し、さらにイオン交換水を30質量部添加して混合した。
その後、7日間養生し、上記環告18号及び46号試験によりセレン溶出量を確認した。
その結果を下記表5及び表6に示す。
なお、表中、「ブランク」は、上記(3)で測定した掘削ずりの溶出液である。
従って、焼成ドロマイト中のCaCO3の含有量が0≦x≦75.5(質量%)で、CaOの含有量が、2.3≦x≦75.5(質量%)である焼成ドロマイトに、硫酸第一鉄一水和物を添加して得られる不溶化材は、十分なセレン不溶化性能が得ることができるとともに、焼成ドロマイトの焼成度合とセレン不溶化性能に一定の比例関係があることが確認することができた。
還元剤としての第一鉄化合物の最適配合量決定する試験を実施した。
具体的には、上記掘削ずり100質量部に対し、各種不溶化材を3、5、10質量部添加し、さらにイオン交換水を30質量部添加して混合した。
その後、7日間養生し、上記環告18号及び46号試験によりセレン溶出量を確認した。
なお、不溶化材としては、下記表7に示すように、焼成ドロマイトDと第一鉄化合物の一例としての硫酸第一鉄一水和物の配合割合を、下記表7に示すように変化させた不溶化材を調製して、上記(5)と同様の不溶化試験を実施した。
その結果を以下の表7に示す。
なお、「ブランク」は、上記(3)で測定した掘削ずりの溶出液である。
また、第一鉄化合物単体では、セレン溶出量を環境基準値未満にまで低減することができない。
セレン(VI)はセレン(IV)と比較し、安定な構造で存在するため、不溶化するのが難しいとされている。
下記表7に示す各不溶化材について、セレン(VI)の不溶化性能について試験した。
なお、上記(3)の掘削ずり土壌(ブランク)及び各種不溶化材配合土壌溶出液中のセレンの価数分析を、上記(4)に示すLC-ICP-MSを用いて行った。
その結果を下記の表8及び図1に示す。
なお、土壌溶出液中のセレン(VI)割合は、以下のようにして求めた。
土壌溶出液中のセレン(VI)割合(質量%)=(土壌溶出液中のセレン(VI)濃度/土壌溶出液中の全セレン濃度)×100)
また、焼成度合の高いドロマイトである焼成ドロマイトEを用いた本発明の不溶化材では、溶出液中のセレン(VI)の割合が、ブランクとほぼ同等になっていることがわかる。
この結果はセレン(IV)だけでなくセレン(VI)に対しても不溶化性能を有することを示すものである。
その結果、本発明の、焼成度合の高い焼成ドロマイトを用いた不溶化材は、掘削ずりから溶出するセレン等の重金属等に対する不溶化性能が優れるものであることが明確になった。
図2に示すXRDチャートを示す酸化鉄を主成分とする鉄系不溶化材と、実施例4に示す不溶化材について、フッ素溶液を用いて、掘削ずり中に含まれるフッ素吸着試験をそれぞれ行い、各フッ素吸着性能を評価し、その結果を下記表9及び10に示す。
フッ素溶液の初期濃度が5mg/Lの溶液を用いた場合の結果を図9に、フッ素溶液の初期濃度が100mg/Lの溶液を用いた場合の結果を図10に示す。
なお、上記図2に示すXRDチャートを示す酸化鉄を主成分とする鉄系不溶化材を用いた場合を比較例21とする。
吸着除去率(%)=(Ci‐Cf)/Ci×100
(但し、上記式中、Ci=フッ素初期濃度(mg/L),Cf=ろ液中のフッ素濃度(mg/L)を示す)
(XRD測定条件)
使用装置:PANalytical X’Pert Pro MPD
測定条件:管球 Cu-Kα,管電圧45kV,電流40mA
発散スリット 可変(12mm),アンチスキャッタースリット(入射側)無し,ソーラースリット(入射側)0.04rad.
受光スリット 無し,アンチスキャッタースリット(受光側)可変(12mm),ソーラースリット(受光側) 0.04rad
走査範囲 2θ=20~70°,走査ステップ 0.008°,計数時間 0.10°/sec
その結果を下記表11に示す。
Claims (5)
- 4価のセレン(IV)及び6価のセレン(VI)を不溶化する重金属等不溶化材であって、CaCO3の含有量が0≦x≦75.5(質量%)でCaOの含有量が2.3≦x≦75.5(質量%)でMgO含有量が22.2≦x≦27.3(質量%)である焼成ドロマイトと、還元剤とを、質量比9:1~1:9の割合で含有することを特徴とする、重金属等不溶化材。
- 請求項1記載の重金属等不溶化材において、還元剤は、鉄化合物であることを特徴とする、重金属等不溶化材。
- 原料ドロマイトを焼成することで、CaCO3の含有量が0≦x≦75.5(質量%)でCaOの含有量が2.3≦x≦75.5(質量%)でMgO含有量が22.2≦x≦27.3(質量%)となる焼成ドロマイトを調製し、得られた焼成ドロマイトと還元剤とを質量比9:1~1:9の割合で配合して、4価のセレン(IV)及び6価のセレン(VI)を不溶化する重金属等不溶化材を製造することを特徴とする、重金属等不溶化材の製造方法。
- CaCO3の含有量が0≦x≦75.5(質量%)及びCaOの含有量が2.3≦x≦75.5(質量%)及びMgO含有量が22.2≦x≦27.3(質量%)となる焼成ドロマイトと、還元剤とを質量比9:1~1:9の割合で含有するように配合を調整して、4価のセレン(IV)及び6価のセレン(VI)を不溶化する重金属等不溶化材の品質管理をすることを特徴とする、重金属等不溶化材の品質管理方法。
- 請求項1又は2記載の重金属等不溶化材を、重金属等を含む土壌と混合して用いることを特徴とする、重金属等不溶化方法。
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