JP6354871B2 - 金属化ポリイミドフィルム基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属化ポリイミドフィルム基板における、金属薄膜とポリイミドフィルム間の密着強度判定方法、及び、当該判定方法によってスクリーニングされたポリイミドフィルムを用いた金属化ポリイミドフィルム基板に関する。
金属化ポリイミドフィルム基板は、銅箔とポリイミドフィルムの間に接着剤を用いて両者を張り合わせたものが主流である。この金属化ポリイミドフィルム基板は、フレキシブルプリント配線板として使用され、電子機器内の配線材料として広く採用されている。
近年電子部品の軽薄短小化に伴い、配線を狭ピッチ化する要求が高まっており、金属化ポリイミドフィルム基板に対する要求も微細配線が描ける基材を要求され、接着剤層の無い金属化ポリイミドフィルム基板が開発された。これは、接着剤層が無いことで接着剤層の特性に影響を受けず、狭ピッチ化した配線加工が可能なためである。
接着剤層の無い金属化ポリイミドフィルム基板を得る方法としては、ポリイミドフィルム表面にスパッタ法および蒸着法で直接金属層を積層させた後に電気めっき法、無電解めっき法を用いて金属層を厚付けする方法がある。一般的には特許文献1や2のように、ポリイミドフィルムをプラズマ処理して金属層とポリイミドフィルムの密着性を向上させている。しかし、この方法はシワが入りやすいなどの不具合が多く、プラズマ処理なしで同程度の密着性をもつ基板が得られれば、工程安定性やコストの面からも有利である。
しかし、接着剤を使用せず、プラズマ処理も行わない場合、金属層とポリイミドフィルムの接着性はポリイミドフィルムの表面物性に大きく左右される。また、ポリイミドフィルムの表面物性は製造工程の気流の影響で容易に変動する。この要因のために金属化ポリイミドフィルム基板の密着性にばらつきが生じる。
一方、非特許文献1、2には、金属とポリイミドの接着に寄与する因子が報告されている。
特開2002−252257号公報 特開2003−334890号公報
前田重義、J.Jpn.Soc.Colour Mater.,80(1),26−31(2007) 前田重義、J.Jpn.Soc.Colour Mater.,80(1),68−74(2007)
上記のように、接着剤層の無い金属化ポリイミドフィルム基板が製造されているが、接着材層のある3層材FCCLよりも接着強度が低く、ポリイミドフィルム原料により密着力にばらつきがある。その接着強度の測定方法は、JIS C 6471 8.1(銅はくの引きはがし強さ)常態 方法A、に定められている。そこで、原料であるポリイミドフィルムの表面物性を管理し、密着力が安定した金属化ポリイミドフィルム基板が要求されている。
よって、本発明の目的は、密着性と相関のあるポリイミドフィルムの表面物性を管理し、その物性の高いポリイミドフィルムを使用することで、例えば密着力600N/m以上を示す基板を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ポリイミドフィルムの極表面のEELSスペクトル(電子エネルギー損失分光:Electron Energy Loss Spectroscopyの略)の所定のピークの有無が密着性に与えることを発見し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) ポリイミドフィルム表面に金属薄膜が積層されている金属薄膜/ポリイミド積層体において、前記金属薄膜/ポリイミド積層体を積層する前の前記ポリイミドフィルムの積層面側の表面から100nm以内の極表面をエネルギー損失分光法により測定し、536eVにピークを有する場合に、前記金属薄膜と前記ポリイミドフィルムとの密着強度を良と判定する工程と、前記密着強度が良と判定された金属薄膜/ポリイミド積層体の前記金属薄膜上に、電気めっき法、無電解めっき法もしくは両者を組み合わせた方法で銅を積層する工程と、を有する金属化ポリイミドフィルム基板の製造方法。
(2) 前記金属がニッケル、銅、クロムより選択される1種以上である(1)に記載の金属化ポリイミドフィルム基板の製造方法。
(3) 前記ポリイミドフィルム表面に前記金属薄膜が蒸着法またはスパッタ法により積層される(1)または(2)に記載の金属化ポリイミドフィルム基板の製造方法。
本発明によれば、金属薄膜との密着強度を向上するポリイミドフィルムをスクリーニングでき、これによって、金属薄膜とポリイミドフィルムとの密着強度が600N/m以上である金属化ポリイミドフィルムを得ることができる。
実施例及び比較例におけるEELSスペクトルを示す図である。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
接着剤層を必要としない金属化ポリイミドフィルム基板は、蒸着法やスパッタ法を用いた乾式法でニッケル、クロム、銅、またはこれらの合金などの第1次金属層を形成した後、電気めっき法もしくは無電解めっき法、および両者を組み合わせた方法を用いて第2次金属層である銅層を厚付けする。通常、第1次金属層は数オングストロームから数千オングストロームまでの厚みであり、第2次金属層の厚みは数μmから数百μmまでの厚みを形成する。各工程はフィルムを数m〜数十m/分で搬送させながら、セル内を移動させ金属層を積層するものである。
このとき、金属化ポリイミドフィルム基板の密着力にはポリイミドフィルム極表面の物性が大きく関与する。そこで、本発明においては、積層前のポリイミドフィルム極表面のEELSスペクトルを測定し、536eVにピーク有無によって、密着強度の良否判断(スクリーニング)を行うものである。言い換えれば、本発明が、ポリイミドフィルムのスクリーニング方法であるとも言えるものである。EELSスペクトル自体は、従来公知の分析手法であるが、ポリイミドの536eVにおけるピーク有無によって金属薄膜への密着性が異なることは本発明者らがはじめて得た知見である。
ここで、ポリイミドフィルム極表面とは、表面から100nm以内、すなわち数十nmの深さのことであり、この領域のEELSスペクトルを得るためには、評価したいポリイミドフィルムをフィルムの厚み方向に薄片化し、透過電子顕微鏡(TEM)観察を用いて極表面の領域に電子線を入射すればよい。EELSスペクトルは、例えば、Gatan製のEELSスペクトル分光装置であるENFINAシリーズやGIFシリーズをTEMに組み込んで測定できる。
上記スクリーニングで得られたポリイミドフィルムは、密着強度として600N/m以上、好ましくは700N/m以上という高い密着力の金属化ポリイミドフィルム基板が得られる。ここで、密着強度とは、上記のJIS C 6471 8.1(銅はくの引きはがし強さ)常態 方法A、で得られる測定値である。
なお、ポリイミドフィルム極表面のEELSスペクトルにおける536eVのピークの帰属は明らかでないが、極性の高い官能基が多いとき、もしくは、分子鎖が秩序的な構造を示すときにこのピークが現れていると推定される。ポリイミドフィルムにおける極性の高い官能基とはイミド基もしくはイミド基が開環したときに現れるカルボキシ基であり、イミド基と金属の結合やカルボキシ基と金属の結合については数多くの報告がある。したがって、極性の高い官能基が多いときに密着強度が高くなるというのは妥当である。一方、分子鎖が秩序的な構造を示している場合、非秩序的な構造を示す時にくらべて硬くなっていると考えられる。ポリイミドフィルム極表面が硬いということは、ピール試験時にフィルム表面の凝集破壊が起こりにくくなるということであり、AFMによる表面弾性率が高いときに密着強度が高くなるという結果を支持する(特開2012−052885号公報参照)。
本発明に用いられるポリイミドフィルムは、金属薄膜の積層面が未処理であることが好ましいが、プラズマ処理やコロナ処理が行われていてもよい。ここで未処理とはプラズマ処理やコロナ処理やプライマー処理などが行われていないことを意味する。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
[金属化ポリイミドフィルム基板の作成]
<実施例1>
ポリイミドフィルムとして、Kapton(登録商標) 150EN(東レ・デュポン製)の38μmを用い、真空度0.01〜0.1Paに保持されたチャンバー内で150℃、1分間の加熱処理を行った。なお、このポリイミドフィルムは積層表面未処理である。
引き続き、クロムを20質量%含有するニッケル-クロム合金ターゲット、および銅ターゲットを用い、ポリイミドフィルム表面に厚さ20nmのニッケル-クロム合金層、および厚さ100nmの銅層を形成した。
その後、硫酸を180g/L、硫酸銅を80g/L、塩素イオンを50mg/L、および銅めっき被膜の平滑性等を確保する目的で有機添加剤を所定量添加しためっき液を使用し、種々のめっき条件で厚さ8μmまで電気めっき法によって銅被膜を形成した。
以上により、本発明の実施例に係る金属化ポリイミドフィルム基板として、ポリイミドフィルム38μm上に、ニッケル、クロム、銅から構成されるスパッタ金属薄膜20nm、銅薄膜のスパッタ100nm、銅めっき被膜8μmの構成の積層体を得た。
<実施例2、比較例1、2>
実施例1のポリイミドフィルムとは、製法やロットの異なる各種のポリイミドフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2、比較例1、2の金属化ポリイミドフィルム基板を得た。
[ポリイミドフィルムの極表面のEELSスペクトルの測定]
図1に各実施例のサンプルのEELSスペクトルを、表1にポリイミドフィルム極表面の536eVのEELSピークの有無と、金属被覆ポリイミド基板の接合部の密着強度との関係をまとめて示す。なお、試験片やEELSの測定装置、条件は以下の通りである。
試験片作成:FIB−マイクロサンプリング法を用いて観察箇所を摘出した後、サンプルの厚さが約100nmになるまでFIB加工を施した。この加工は集束イオンビーム加工装置FB−2010F(日立製作所製)を用いた。その後、イオンミリング装置PIPS Model−691(Gatan製)を使用し、Arイオンミリング法を用いてFIB加工によりTEM観察面上に形成されたダメージ層を除去することにより、TEM観察用薄膜試料を作製した。
測定装置:電界放射型透過型電子顕微鏡JEM−2010F(日本電子製)で観察し、EELS Spectrometer(Model 776 Enfina 1000、Gatan製)でEELSプロファイルを得た。
測定条件:加速電圧200kV、ビーム径約1nmで測定し、酸素のK損失端を評価した。
密着強度測定条件:JIS C 6471 8.1(銅はくの引きはがし強さ)常態 方法A、により評価した。
Figure 0006354871
表1から、ポリイミドフィルム極表面の536eVのEELSピークが存在しない場合、密着力が低下することがわかる。
本発明の金属化ポリイミドフィルム基板は、例えばフレキシブルプリント配線板に好適に利用できる。

Claims (3)

  1. ポリイミドフィルム表面に金属薄膜が積層されている金属薄膜/ポリイミド積層体において、前記金属薄膜/ポリイミド積層体を積層する前の前記ポリイミドフィルムの積層面側の表面から100nm以内の極表面をエネルギー損失分光法により測定し、536eVにピークを有する場合に、前記金属薄膜と前記ポリイミドフィルムとの密着強度を良と判定する工程と、
    前記密着強度が良と判定された金属薄膜/ポリイミド積層体の前記金属薄膜上に、電気めっき法、無電解めっき法もしくは両者を組み合わせた方法で銅を積層する工程と、を有する
    金属化ポリイミドフィルム基板の製造方法。
  2. 前記金属薄膜を構成する金属がニッケル、銅、クロムより選択される1種以上である
    請求項1に記載の金属化ポリイミドフィルム基板の製造方法。
  3. 前記ポリイミドフィルム表面に前記金属薄膜が蒸着法またはスパッタ法により積層される
    請求項1または2に記載の金属化ポリイミドフィルム基板の製造方法。
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