以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態におけるインピーダンス測定装置により測定される測定対象である積層電池の一例を示す図である。図1Aには、積層電池の一例として複数の電池セルが積層された燃料電池スタック1の外観斜視図が示されている。
図1Aに示されるように、燃料電池スタック1は、複数の発電セル10と、集電プレート20と、絶縁プレート30と、エンドプレート40と、4本のテンションロッド50とを備える。
発電セル10は、いわゆる電池セルのことであり、燃料電池スタック1に積層された複数の燃料電池のうちのひとつを指す。発電セル10は、例えば1V(ボルト)程度の起電圧を生じる。発電セル10の詳細な構成については図1Bを参照して後述する。
集電プレート20は、積層された発電セル10の外側にそれぞれ配置される。集電プレート20は、ガス不透過性の導電性部材、例えば緻密質カーボンで形成される。集電プレート20は、正極端子211及び負極端子212を備える。なお、負極端子212から、発電セル10で生じた電子e-が外部に取り出される。
また、正極端子211と負極端子212との中間には中途点端子213が設けられる。中途点端子213は、正極端子211から負極端子212へ積層された複数枚の発電セル10のうち中間に位置する発電セル10に接続されている。なお、中途点端子213は、正極端子211と負極端子212との中点から外れた位置であってもよい。
絶縁プレート30は、集電プレート20の外側にそれぞれ配置される。絶縁プレート30は、絶縁性の部材、例えばゴムなどで形成される。
エンドプレート40は、絶縁プレート30の外側にそれぞれ配置される。エンドプレート40は、剛性のある金属材料、例えば鋼などで形成される。
一方のエンドプレート40(図1Aでは、左手前のエンドプレート40)には、アノード供給口41aと、アノード排出口41bと、カソード供給口42aと、カソード排出口42bと、冷却水供給口43aと、冷却水排出口43bとが設けられている。本実施形態では、アノード排出口41b、冷却水排出口43b及びカソード供給口42aは図中右側に設けられている。またカソード排出口42b、冷却水供給口43a及びアノード供給口41aは図中左側に設けられている。
テンションロッド50は、エンドプレート40の四隅付近にそれぞれ配置される。燃料電池スタック1は内部に貫通した孔(不図示)が形成されている。この貫通孔にテンションロッド50が挿通される。テンションロッド50は、剛性のある金属材料、例えば鋼などで形成される。テンションロッド50は、発電セル10同士の電気短絡を防止するため、表面には絶縁処理されている。このテンションロッド50にナット(奥にあるため図示されない)が螺合する。テンションロッド50とナットとが燃料電池スタック1を積層方向に締め付ける。
アノード供給口41aにアノードガスとしての水素を供給する方法としては、例えば水素ガスを水素貯蔵装置から直接供給する方法、又は水素を含有する燃料を改質して供給する方法などがある。なお、水素を含有する燃料としては、天然ガス、メタノール、ガソリンなどがある。また、カソード供給口42aに供給するカソードガスとしては、一般的に空気が利用される。
図1Bは、燃料電池スタック1に積層された発電セル10の構造を示す分解図である。
図1Bに示されるように、発電セル10は、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;MEA)11の両面に、アノードセパレーター(アノードバイポーラープレート)12a及びカソードセパレーター(カソードバイポーラープレート)12bが配置される構造である。
MEA11は、イオン交換膜からなる電解質膜111の両面に電極触媒層112が形成される。この電極触媒層112の上にガス拡散層(Gas Diffusion Layer;GDL)113が形成される。
電極触媒層112は、例えば白金が担持されたカーボンブラック粒子で形成される。
GDL113は、十分なガス拡散性及び導電性を有する部材、例えばカーボン繊維で形成される。
アノード供給口41aから供給されたアノードガスは、このGDL113aを流れてアノード電極触媒層112(112a)と反応し、アノード排出口41bから排出される。
カソード供給口42aから供給されたカソードガスは、このGDL113bを流れてカソード電極触媒層112(112b)と反応し、カソード排出口42bから排出される。
アノードセパレーター12aは、GDL113a及びシール14aを介してMEA11の片面(図1Bの裏面)に重ねられる。カソードセパレーター12bは、GDL113b及びシール14bを介してMEA11の片面(図1Bの表面)に重ねられる。アノードセパレーター12a及びカソードセパレーター12bは、例えばステンレスなどの金属製のセパレーター基体がプレス成型されて、一方の面に反応ガス流路が形成され、その反対面に反応ガス流路と交互に並ぶように冷却水流路が形成される。図1Bに示すようにアノードセパレーター12a及びカソードセパレーター12bが重ねられて、冷却水流路が形成される。
MEA11、アノードセパレーター12a及びカソードセパレーター12bには、それぞれ孔41a,41b,42a,42b,43a,43bが形成されており、これらが重ねられて、アノード供給口41a、アノード排出口41b、カソード供給口42a、カソード排出口42b、冷却水供給口43a及び冷却水排出口43bが形成される。
図2は、本発明の実施形態におけるインピーダンス測定装置5の基本的な構成を示す図である。
燃料電池スタック1は、負荷3と接続されて負荷3に電力を供給する積層電池であり、例えば車両に搭載される。燃料電池スタック1は、内部にインピーダンスを有する。負荷3は、例えば、電動モータや燃料電池スタック1の発電のために用いられる補機などである。燃料電池スタック1と接続される補機は、例えば、燃料電池スタック1にカソードガスを供給するコンプレッサや、燃料電池スタック1を暖機するときに燃料電池スタック1を流れる冷却水を加熱するヒータなどである。
コントロールユニット(C/U)6は、燃料電池スタック1の発電状態や湿潤状態、内部の圧力状態、温度状態などの運転状態、及び負荷3の作動状態を制御する。
例えばコントロールユニット6は、負荷3から要求される発電電力に応じて、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスやアノードガスのガス流量を制御する。また、燃料電池スタック1では電解質膜111が乾いた状態になると発電性能が低下する。この対策としてコントロールユニット6は、電解質膜111の湿潤度と相関関係のある燃料電池スタック1の内部抵抗値を用いて、電解質膜111が乾いた状態や過剰に湿った状態にならないようにガス流量を調整する。
なお、コントロールユニット6には、燃料電池システムの起動スイッチが設けられた操作スイッチ部61や、燃料電池スタック1の周囲温度を検出する温度センサ62などが設けられている。
インピーダンス測定装置5は、燃料電池スタック1の内部インピーダンスを測定する。本実施形態では、インピーダンス測定装置5は、燃料電池スタック1の内部抵抗Rを測定し、その内部抵抗Rの測定値をコントロールユニット6に送信する。コントロールユニット6は、インピーダンス測定装置5から燃料電池スタック1の内部抵抗Rの測定値を受信すると、その内部抵抗Rの測定値に基づいて燃料電池スタック1の湿潤状態を制御する。
インピーダンス測定装置5は、正極側直流遮断部511と、負極側直流遮断部512と、中途点直流遮断部513と、正極側検出部521と、負極側検出部522と、正極側電源部531と、負極側電源部532と、交流調整部540と、演算部550とを含む。なお、正極側検出部521及び負極側検出部522によって検出手段が構成される。正極側電源部531及び負極側電源部532によって電源手段が構成される。
正極側直流遮断部511、負極側直流遮断部512、中途点直流遮断部513、正極側検出部521、及び負極側検出部522の詳細については、図3を参照して説明する。
正極側直流遮断部511は、燃料電池スタック1の正極端子211に接続される。負極側直流遮断部512は、燃料電池スタック1の負極端子212に接続される。中途点直流遮断部513は、燃料電池スタック1の中途点端子213に接続される。直流遮断部511〜513は、直流信号を遮断するが交流信号を流す。直流遮断部511〜513は、例えばコンデンサやトランスにより実現される。なお、破線により示された中途点直流遮断部513は、省略することができる。
正極側検出部521は、正極端子211に生じる交流電位Vaと、中途点端子213に生じる交流電位Vcとの間の電位差(以下、「交流電位差V1」という。)を検出する。正極側検出部521は、交流電位差V1の振動に応じて値が変化する検出信号を演算部550に出力する。例えば交流電位差V1が上昇するほど検出信号の値は大きくなり、交流電位差V1が低下するほど検出信号の値は小さくなる。正極側検出部521では、第1入力端子(正極側第1端子)が正極側直流遮断部511を介して正極端子211と接続され、第2入力端子(正極側第2端子)が中途点直流遮断部513を介して中途点端子213と接続される。
負極側検出部522は、負極端子212に生じる交流電位Vbと、中途点端子213に生じる交流電位Vcとの間の電位差(以下「交流電位差V2」という。)を検出する。負極側検出部522は、交流電位差V2の振動に応じて値が変化する検出信号を演算部550に出力する。負極側検出部522では、第1入力端子(負極側第1端子)が負極側直流遮断部512を介して負極端子212と接続され、第2入力端子(負極側第2端子)が中途点直流遮断部513を介して中途点端子213と接続される。正極側検出部521及び負極側検出部522は、例えば差動アンプ(計装アンプ)により実現される。
正極側電源部531及び負極側電源部532の詳細については、図4を参照して説明する。
正極側電源部531は、内部インピーダンスを測定するために基準周波数fbの交流電流を出力する第1電源部である。正極側電源部531は、例えばオペアンプ(OPアンプ)などの電圧電流変換回路により実現される。この電圧電流変換回路によって、入力電圧Viに比例した電流Ioが出力される。なおIo=Vi/Rsであり、Rsは電流センシング抵抗である。この電圧電流変換回路は、入力電圧Viに応じて出力電流Ioを調整可能な可変交流電流源である。
正極側電源部531として電圧電流変換回路を使用することにより、出力電流Ioを実測しなくても、入力電圧Vi÷比例定数Rsで出力電流Ioが得られるので、入力電圧Viを検出すれば出力電流Ioを求めることができる。負極側電源部532についても同様の構成である。すなわち負極側電源部532は、基準周波数fbの交流電流を出力する第2電源部である。
交流調整部540の詳細については、図5を参照して説明する。
交流調整部540は、正極側の交流電位Vaと負極側の交流電位Vbとが互いに一致するように、正極側電源部531及び負極側電源部532のうち少なくとも一方から出力される交流電流の振幅を調整する。
本実施形態では交流調整部540は、正極側の交流電位差V1と負極側の交流電位差V2の振幅レベルが等しくなるように、正極側電源部531から出力される交流電流の振幅と、負極側電源部532から出力される交流電流の振幅との両方を増減させる。交流調整部540は、例えばPI(Proportional Integral)制御回路により実現される。
また交流調整部540は、正極側電源部531及び負極側電源部532に対する指令信号を、正極側電源部531及び負極側電源部532から出力される交流電流I1及びI2として演算部550に出力する。
交流調整部540は、正極側検波回路5411と、正極側減算器5421と、正極側積分回路5431と、正極側乗算器5441と、負極側検波回路5412と、負極側減算器5422と、負極側積分回路5432と、負極側乗算器5442と、を含む。
さらに交流調整部540は、基準電源545及び交流信号源546を備える。
基準電源545は、正極側の交流電位差V1と負極側の交流電位差V2とを一致させるために、0V(ボルト)を基準に設定された電位(以下、「基準電圧Vs」という。)を出力する。基準電圧Vsは、実験等で定められた値である。
交流信号源546は、基準周波数fbの交流信号を発振させる発振源である。基準周波数fbは、燃料電池スタック1の内部インピーダンスを測定するのに適した所定の周波数に設定される。基準周波数fbは、例えば1kHz(キロヘルツ)に設定される。
正極側検波回路5411は、正極側検出部521から出力される交流電位差V1を示す検出信号を受けると、検出信号に含まれる不要信号を除去すると共に、検出信号を交流電位差V1の振幅に比例した直流信号に変換する。正極側検波回路5411は、交流電位差V1の振幅に比例した直流信号として例えば、検出信号により示される交流電位差V1の平均値又は実効値を出力する。
本実施形態では正極側検波回路5411は、同期検波回路により実現される。正極側検波回路5411は、交流信号源546からの交流信号を交流電位差V1の検出信号に乗算して平滑化することにより、交流電位差V1の振幅に応じた直流信号を出力する。すなわち、正極側検波回路5411は、交流電流VIと同相の交流信号に基づいて検出信号から交流電位差V1の実軸成分を抽出し、その交流電位差V1の実軸成分を示す直流信号を正極側減算器5421に出力する。
なお、正極側検波回路5411は、検出信号により示される交流電位差V1のベクトル値を求めて正極側減算器5421に出力してもよい。交流電位差V1と交流電位差V2との間の位相差が大きくなると交流電位差V1及びV2の振幅が同一であっても、交流電位差V1又はV2の実軸成分が低くなるため、等電位制御によって交流電流I1又はI2の振幅が過剰に増減されてしまう。
これに対してベクトル値を利用することにより、交流電位差V1又はV2の振幅レベルが正確に求められるので、等電位制御を適切に実行することができる。
具体的には、交流電位差V1の実軸成分の二乗値と交流電位差V1の虚軸成分の二乗値との和の平方根を演算して交流電位差V1のベクトル値が求められる。なお、交流電位差V1の虚軸成分は、交流信号源546からの交流信号の位相を90度シフトさせた信号、すなわち交流電流I1と位相が直交する直交信号を交流電位差V1の検出信号に乗算して平滑化することにより得られる。
正極側減算器5421は、正極側検波回路5411で検出される交流電位差V1の実軸成分から基準電圧Vsを減算することにより、基準電圧Vsから実軸成分のズレ幅を示す差分信号を算出する。例えば、基準電圧Vsからのズレ幅が大きくなるほど、差分信号の信号レベルは大きくなる。
正極側積分回路5431は、正極側減算器5421から出力される差分信号を積分することにより、差分信号を平均化又は感度調節する。そして正極側積分回路5431は、積分された差分信号を正極側乗算器5441に出力する。
正極側乗算器5441は、交流信号源546から出力される基準周波数fbの交流信号に対して差分信号を乗算することにより、交流電位差V1の振幅を基準電圧Vsに収束させる交流電圧信号を生成する。差分信号の信号レベルが大きくなるほど、正極側乗算器5441によって交流電圧信号の振幅は大きくなる。
正極側乗算器5441は、生成された交流電圧信号を指令信号として、図4に示された正極側電源部531に出力する。正極側電源部531に入力される交流電圧信号Viは、正極側電源部531によって交流電流信号Ioに変換されて燃料電池スタック1の正極端子211へ出力される。
なお、負極側検波回路5412、負極側減算器5422、負極側積分回路5432及び負極側乗算器5442は、それぞれ、正極側検波回路5411、正極側減算器5421、正極側積分回路5431及び正極側乗算器5441と基本的に同じ構成である。
このように、交流調整部540は、交流電位差V1の振幅が基準電圧Vsとなるように、正極側電源部531から出力される交流電流I1の振幅を調整する。同様に交流調整部540は、交流電位差V2の振幅が基準電圧Vsとなるように、負極側電源部532から出力される交流電流I2の振幅を調整する。
このため、交流電位Va及び交流電位Vbが互いに同じレベルに制御されるので、正極端子211に重畳される交流電位と、負極端子212に重畳される交流電位とが一致する。これにより、インピーダンス測定装置5から燃料電池スタック1へ出力された交流電流I1及びI2が負荷3の方に漏れ出るのを防ぐことができる。なお、以下では、交流電位Vaと交流電位Vbとが互いに等しくなるように正極側電源部531及び負極側電源部532を制御することを「等電位制御」という。
次に演算部550の詳細については図6を参照して説明する。
演算部550には、正極側検出部521及び負極側検出部522から交流電位差V1及びV2を示す検出信号が入力され、正極側電源部531及び負極側電源部532に対する指令信号が交流電流I1及びI2として入力される。そして演算部550は、交流電流I1及びI2の振幅と、交流電位差V1及びV2の振幅とを演算する。
演算部550は、その交流電位差V1及びV2と交流電流I1及びI2とに基づいて、燃料電池スタック1の内部インピーダンスを演算する。例えば、演算部550は、正極側検出部521からの検出信号に基づいて交流電位差V1の実軸成分を交流電位差V1の振幅として演算すると共に、負極側検出部522からの検出信号に基づいて交流電位差V2の実軸成分を交流電位差V2の振幅として演算する。
そして、演算部550は、交流電位差V1の実軸成分を交流電流I1の実軸成分で除算することによって内部抵抗R1を算出し、交流電位差V2の実軸成分を交流電流I2の実軸成分で除算することによって内部抵抗R2を算出する。なお、演算部550は、燃料電池スタック1の内部抵抗に加えて、交流電位差V1及びV2の虚軸成分を求めて燃料電池スタック1が有する静電容量を算出するものであってもよい。
また、演算部550は、交流電位差V1及びV2の実軸成分の代わりに、交流電位差V1の平均値又は実効値を求めて、内部抵抗R1及びR2を算出するものであってもよい。
例えば、演算部550は、正極側検出部521及び負極側検出部522からの検出信号に基づいて交流電位差V1及びV2の実効値を求め、交流調整部540からの指令信号に基づいて交流電流I1及びI2の実効値を求める。そして演算部550は、交流電位差V1の実効値を交流電流I1の実効値で除算して内部抵抗R1を算出し、交流電位差V2の実効値を交流電流I2の実効値で除算して内部抵抗R2を算出する。
演算部550は、AD(Analog Digital)変換器551及びマイコンチップ552を備える。
AD変換器551は、アナログ信号である交流電流の指令信号(I1,I2)及び交流電位差の検出信号(V1,V2)をデジタル数値信号に変換し、マイコンチップ552に転送する。
マイコンチップ552には、内部抵抗Rn及び燃料電池スタック1全体の内部抵抗Rを算出するプログラムが予め記憶されている。マイコンチップ552は、所定の微小時間間隔で順次内部抵抗Rを演算し、又は、コントロールユニット6の要求に応じて演算結果を出力する。なお、内部抵抗Rn及び燃料電池スタック1全体の内部抵抗Rは、次式で演算される。
演算部550は、例えば、アナログ演算ICを用いたアナログ演算回路により実現される。アナログ演算回路を用いることにより、時間的に連続した抵抗値の変化をコントロールユニット6に出力することができる。
コントロールユニット6は、インピーダンス測定装置5の測定結果として演算部550から出力される内部抵抗Rを受信する。コントロールユニット6は、内部抵抗Rの測定結果に応じて、燃料電池スタック1の運転状態を制御する。
例えば、コントロールユニット6は、内部抵抗Rが高い場合には、燃料電池スタック1の電解質膜111が乾いた状態であると判断し、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量を減らす。これにより、燃料電池スタック1から持ち出される水分量を減少させることができる。
図7は、交流調整部540によって行われる等電位制御をコントローラーによって実現したときの制御方法の一例を示すフローチャートである。
ステップS1においてコントローラーは、正極交流電位Vaが所定値よりも大きいか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が否であればステップS2へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS3へ処理を移行する。
ステップS2においてコントローラーは、正極交流電位Vaが所定値よりも小さいか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が否であればステップS4へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS5へ処理を移行する。
ステップS3においてコントローラーは、正極側電源部531の出力を下げる。すなわち、コントローラーは、交流電流I1の振幅を小さくする。これによって正極交流電位Vaが下がる。
ステップS4においてコントローラーは、正極側電源部531の出力を維持する。これによって正極交流電位Vaが維持される。
ステップS5においてコントローラーは、正極側電源部531の出力を上げる。これによって正極交流電位Vaが上がる。
ステップS6においてコントローラーは、負極の交流電位Vbが所定値よりも大きいか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が否であればステップS7へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS8へ処理を移行する。
ステップS7においてコントローラーは、負極の交流電位Vbが所定値よりも小さいか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が否であればステップS9へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS10へ処理を移行する。
ステップS8においてコントローラーは、負極側電源部532の出力を下げる。これによって負極交流電位Vbが下がる。
ステップS9においてコントローラーは、負極側電源部532の出力を維持する。これによって負極交流電位Vbが維持される。
ステップS10においてコントローラーは、負極側電源部532の出力を上げる。これによって負極交流電位Vbが上がる。
ステップS11においてコントローラーは、交流電位Va及び交流電位Vbが所定値であるか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が肯であればステップS12へ処理を移行し、判定結果が否であれば処理を抜ける。
ステップS12においてコントローラーは、上述の式(1−1)及び式(1−2)に基づいて内部抵抗を演算する。
図8は、交流調整部540によって行われる等電位制御をコントローラーが実行したときのタイムチャートである。なおフローチャートとの対応が判りやすくなるようにステップ番号を併記する。
図8の初期は、正極側の内部抵抗値R1が、負極側の内部抵抗値R2よりも高い状態である(図8(A))。このような状態でコントローラーが制御を開始する。
時刻t0では、正極交流電位Vaも負極交流電位Vbも制御レベルに達していない(図8(C))。この状態では、コントローラーは、ステップS1→S2→S5→S6→S7→S10→S11を繰り返す。これによって正極側の交流電流I1及び負極側の交流電流I2が増大する(図8(B))。
時刻t1で正極の交流電位Vaが制御レベルに達したら(図8(C))、コントローラーは、ステップS1→S2→S4→S6→S7→S10→S11を繰り返す。これによって正極側の交流電流I1が維持されるとともに、負極側の交流電流I2は増大する(図8(B))。
時刻t2で負極交流電位Vbも制御レベルに達して正極の交流電位Vaと同レベルになったら(図8(C))、コントローラーは、ステップS1→S2→S4→S6→S7→S9→S11→S12を処理する。これによって正極側の交流電流I1及び負極側の交流電流I2が維持される。そして式(1−1)に基づいて、正極側の内部抵抗値R1及び負極側の内部抵抗値R2が演算される。そして正極側の内部抵抗値R1と負極側の内部抵抗値R2とが足し合わされて全体の内部抵抗Rが求められる。
時刻t3以降は燃料電池スタックの湿潤状態が変化するなどして負極側の内部抵抗値R2が上昇している(図8(A))。この場合には、コントローラーは、ステップS1→S2→S4→S6→S8→S11→S12を繰り返す。このように処理することで負極側の内部抵抗値R2が上昇に合わせて負極側の交流電流I2が下がるので、負極側の交流電位Vbは正極側の交流電位Vaと同レベルに維持される。したがってこの状態でも内部抵抗Rが演算される。
時刻t4以降は負極側の内部抵抗値R2が正極側の内部抵抗値R1に一致するようになる(図8(A))。この場合には、コントローラーは、ステップS1→S2→S4→S6→S7→S9→S11→S12を繰り返す。このように処理することで正極側の交流電位Vaと負極側の交流電位Vbとが同レベルに維持され(図8(C))、内部抵抗Rが演算される。
次にインピーダンス測定装置5の等電位制御による作用効果を説明する。
図9は、燃料電池スタック1の正極端子211に生じる正極電位及び負極端子212に生じる負極電位の状態を例示する図である。
燃料電池スタック1の出力中は、正極端子211及び負極端子212の間に、負荷3に出力される直流電圧Vdcが生じる。インピーダンス測定装置5が起動(ON)される前は、正極電位及び負極電位は一定であり、負荷3に直流電圧Vdcが供給される。その後インピーダンス測定装置5が起動され、正極側電源部531及び負極側電源部532から交流電流I1及びI2が出力されると、正極電位に交流電位Vaが重畳され、負極電位に交流電位Vbが重畳される。
そして交流調整部540による指令信号に従って正極側電源部531及び負極側電源部532は、交流電位差V1及びV2が一致するように互いに振幅が調整された交流電流I1及びI2を出力する。
正極側電源部531から出力された交流電流I1は、正極側直流遮断部511を介して、燃料電池スタック1の正極端子211に供給され、中途点端子213及び中途点直流遮断部513を介して正極側検出部521に出力される。このとき、正極端子211と中途点端子213との間には、交流電流I1が内部抵抗R1に供給されることで内部抵抗R1での電圧降下により交流電位差V1(=Va−Vc)が生じる。この交流電位差V1は、正極側検出部521によって検出される。
一方、負極側電源部532から出力された交流電流I2は、負極側直流遮断部512を介して燃料電池スタック1の負極端子212に供給され、中途点端子213及び中途点直流遮断部513を介して負極側検出部522に出力される。このとき、負極端子212と中途点端子213との間には、交流電流I2が内部抵抗R2に供給されることで内部抵抗R2での電圧降下により交流電位差V2(=Vb−Vc)が生じる。この交流電位差V2は、負極側検出部522によって検出される。
交流調整部540は、燃料電池スタック1の正極側の交流電位差V1と、負極側の交流電位差V2との間の差(V1−V2)、すなわち交流電位Vaと交流電位Vbとの差(Va−Vb)が常に小さくなるように、正極側電源部531及び負極側電源部532を調節する。これにより、正極電位の交流成分Vaの振幅と負極電位の交流成分Vbの振幅とが等しくなるように調整されるので、直流電圧Vdcは変動せずに一定となる。
そして演算部550は、正極側検出部521及び負極側検出部522から出力される交流電位差V1及びV2と、正極側電源部531及び負極側電源部532から出力される交流電流I1及びI2とを用いてオームの法則を適用する。これにより、燃料電池スタック1の正極側の内部抵抗R1及び負極側の内部抵抗R2が算出される。
ここでは、正極端子211及び負極端子212の交流電位が同じ値になるので、仮に正極端子211及び負極端子212に対して走行用モータなどの負荷3が接続されていても、交流電流I1又はI2が負荷3に漏洩するのを抑制することができる。このため、正極側電源部531及び負極側電源部532から出力される交流電流値によって燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2を正確に測定することができる。
さらに負荷3の状態によらず、稼働中の燃料電池スタック1の内部抵抗R1及び内部抵抗R2の測定値に基づいて燃料電池スタック1全体の内部抵抗Rを正確に測定することができる。また、正極側電源部531及び負極側電源部532が使用されるので、燃料電池スタック1が停止中であっても内部抵抗Rを測定することができる。
しかしながら、インピーダンス測定装置5に備えられた正極側電源部531及び負極側電源部532や、正極側検出部521及び負極側検出部522、交流調整部540などは、オペアンプなどの電子部品、すなわちアナログ回路により構成されている。このような電子部品には、製造バラツキや、時間経過に伴って性能が劣化する経時劣化、温度上昇に伴い出力値が変動する温度ドリフトなどが生じるので、これらが原因で、内部インピーダンスを測定する精度が低下してしまう。
この対策として、製造バラツキや経時劣化、温度ドリフトが極めて小さい高精度な電子部品を使用することも考えられる。しかしながら、高精度な電子部品を用いる場合には、コストが増加することになるため、インピーダンス測定装置5の製造コストを低減することに対しての障害となる。
そこで本実施形態では、インピーダンス測定装置5は、自己の電子部品の製造バラツキや経時劣化などに起因する測定精度の低下を診断する。
図10は、本実施形態におけるインピーダンス測定装置5の詳細構成を示す図である。ここでは、図2に示された構成と同じものについては、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図10では、信号ライン501は、正極側電源部531から燃料電池スタック1の正極端子211へ交流電流I1が入力される入力ライン501Aと、正極端子211から正極側検出部521へ交流電位Vaが出力される出力ライン501Bとに分離されている。
同様に信号ライン502は、負極側電源部532から燃料電池スタック1の負極端子212へ交流電流I2が入力される入力ライン502Aと、負極端子212から負極側検出部522へ交流電位Vbが出力される出力ライン502Bとに分離されている。このように、信号ライン501及び502の各々を2つのラインに分離することにより、正極端子211及び負極端子212から出力される交流電位信号のみを正極側検出部521及び負極側検出部522で検出することが可能となる。このため、インピーダンス測定装置5の測定精度を向上させることができる。
また入力ライン501Aには、図2に示された直流遮断部511としてコンデンサ511Aが接続され、出力ライン501Bにも、直流遮断部511としてコンデンサ511Bが接続される。同様に入力ライン502Aには、直流遮断部512としてコンデンサ512Aが接続され、出力ライン502Bにも、直流遮断部512としてコンデンサ512Bが接続される。
インピーダンス測定装置5は、図2に示された基本的な構成に加えて、診断素子部560と、切替部570と、切替制御部580とを備える。さらにインピーダンス測定装置5は、帯域通過フィルタ5211及び5221を備える。
診断素子部560は、インピーダンス測定装置5の測定精度の低下を診断するために設けられ、予め定められた値のインピーダンスを有する診断素子を有する。
診断素子としては、インピーダンス測定装置5が測定する抵抗や静電容量などに合わせて、例えば、抵抗素子や、コンデンサ素子、インダクタ素子などのインピーダンス素子が用いられる。インダクタ素子としては、例えばコイルが用いられる。また、診断素子としては、抵抗素子とコンデンサ素子とが並列に接続されたインピーダンス素子が用いられてもよい。これにより、インピーダンス測定装置5の抵抗や静電容量などの測定誤差を計測できるようになる。
本実施形態では、診断素子部560は、正極側の診断素子561と負極側の診断素子562とを備える。
診断素子561は、予め定められた基準値Ref1の抵抗を有する。診断素子562は、予め定められた基準値Ref2の抵抗を有する。
診断素子561は、正極側検出部521に対して並列接続できる位置に配置される。診断素子562は、負極側検出部522に対して並列接続できる位置に配置される。基準値Ref1及びRef2は、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2が変動する範囲内の値に設定される。
例えば、基準値Ref1及びRef2は、内部抵抗R1及びR2の変動範囲内において、特に高い測定精度を要求される領域の抵抗値に設定される。積層電池の内部抵抗が特定の値、例えば測定範囲の中間値となるように制御されるようなシステムでは、基準値Ref1及びRef2は、その特定の値に設定される。
あるいは、基準値Ref1及びRef2は、信号雑音比(Signal-Noise ratio)が十分に確保されるように、内部抵抗R1及びR2の変動範囲の下限値に設定されてもよい。この場合には、診断素子561及び562の抵抗は変動範囲内の最小値となるため、等電位制御によって診断素子561及び562に生じる交流電位差V1及びV2の振幅が基準電圧Vsまで上昇するように交流電流I1及びI2の振幅が変動範囲の最大値に調整される。このため、信号雑音比が最も大きい状態で、診断素子561及び562の抵抗が測定されることになるので、診断素子561及び562の抵抗の測定精度が高くなる。
診断素子561及び562としては、例えば、50mΩ(ミリオーム)を有する抵抗器が用いられる。
切替部570は、インピーダンス測定装置5内の交流信号が通過する信号経路の接続状態を、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2を測定するための電池接続状態、又は、診断素子561及び562の抵抗を測定するための素子接続状態に切り替える。
電池接続状態では、切替部570は、正極側電源部531を正極端子211に接続すると共に、正極側検出部521を燃料電池スタック1における正極端子211と中途点端子213との間の正極側部分の内部抵抗R1に並列接続する。そして切替部570は、負極側電源部532を負極端子212に接続すると共に、負極側検出部522を燃料電池スタック1における負極端子212と中途点端子213との間の負極側部分の内部抵抗R2に並列接続する。
一方、素子接続状態では、切替部570は、正極側電源部531を燃料電池スタック1の正極端子211から切断して診断素子561に接続すると共に、診断素子561を正極側検出部521に対して並列接続する。そして切替部570は、負極側電源部532を負極端子212から切断して診断素子562に接続すると共に、診断素子562を負極側検出部522に対して並列接続する。
切替部570は、電流経路切替器571及び572と検出対象切替器573及び574と、を備える。電流経路切替器571及び572と検出対象切替器573及び574とは、例えば、アナログスイッチやリレーなどにより実現される。
電流経路切替器571は、正極側電源部531とコンデンサ511Aとの間に接続される。そして電流経路切替器571は、正極側電源部531から出力される交流電流I1の供給先を、燃料電池スタック1の正極端子211又は診断素子561に切り替える。
電流経路切替器571では、入力端子が正極側電源部531と接続され、第1出力端子がコンデンサ511Aに接続され、第2出力端子が診断素子561と接続される。
電流経路切替器572は、負極側電源部532とコンデンサ512Aとの間に接続される。そして電流経路切替器572は、負極側電源部532から出力される交流電流I2の供給先を、燃料電池スタック1の負極端子212又は診断素子562に切り替える。
電流経路切替器572では、入力端子が負極側電源部532と接続され、第1出力端子がコンデンサ512Aに接続され、第2出力端子が診断素子562と接続される。
検出対象切替器573は、帯域通過フィルタ5211と正極側検出部521との間に接続される。そして検出対象切替器573は、正極側検出部521に対して並列接続される検出対象を、燃料電池スタック1の正極端子211から中途点端子213までの正極側部分、又は、診断素子561に切り替える。
検出対象切替器573では、第1入力端子が帯域通過フィルタ5211と接続され、第2入力端子が診断素子561に接続され、出力端子が正極側検出部521と接続される。
検出対象切替器574は、帯域通過フィルタ5221と負極側検出部522との間に接続される。そして検出対象切替器574は、負極側検出部522に対して並列接続される検出対象を、燃料電池スタック1の負極端子212から中途点端子213までの負極側部分、又は、診断素子562に切り替える。
検出対象切替器574では、第1入力端子が帯域通過フィルタ5221と接続され、第2入力端子が診断素子562に接続され、出力端子が負極側検出部522と接続される。
図10では、切替部570は、燃料電池スタック1の正極端子211に正極側電源部531及び正極側検出部521を接続すると共に負極端子212に負極側電源部532及び負極側検出部522を接続する電池接続状態に設定されている。
具体的には、電流経路切替器571では、正極側電源部531と接続された入力端子が、コンデンサ511Aと接続された第1出力端子に接続される。これにより、正極側電源部531から出力される交流電流I1が燃料電池スタック1の正極端子211に供給される。
同様に電流経路切替器572では、負極側電源部532と接続された入力端子が、コンデンサ511Bと接続された第1出力端子に接続される。これにより、負極側電源部532から出力される交流電流I2が燃料電池スタック1の負極端子212に供給される。
検出対象切替器573では、正極側検出部521と接続された出力端子が、帯域通過フィルタ5211と接続された第1入力端子に接続される。これにより、燃料電池スタック1の正極端子211と中途点端子213との間の内部抵抗R1が正極側検出部521に並列に接続されるので、正極端子211から正極側検出部521に交流電位Vaが出力される。
検出対象切替器574では、負極側検出部522と接続された出力端子が、帯域通過フィルタ5221と接続された第1入力端子に接続される。これにより、燃料電池スタック1の負極端子212と中途点端子213との間の内部抵抗R2が負極側検出部522に並列に接続されるので、負極端子212から負極側検出部522に交流電位Vbが出力される。
上述の電流経路切替器571及び572と検出対象切替器573及び574とは、共に切替制御部580によって制御される。
切替制御部580は、燃料電池スタック1の正極端子211に正極側電源部531及び正極側検出部521を接続する電池接続状態、又は診断素子561に正極側電源部531及び正極側検出部521を接続する素子接続状態に切り替える。
また、切替制御部580は、燃料電池スタック1の負極端子212に負極側電源部532及び負極側検出部522を接続する電池接続状態、又は診断素子562に負極側電源部532及び負極側検出部522を接続する素子接続状態に切り替える。
切替制御部580は、予め定められた診断時期になると、切替部570の接続状態を、燃料電池スタック1の内部抵抗を測定する電池接続状態から、診断素子561及び562の抵抗を測定する素子接続状態に切り替える。これにより、インピーダンス測定装置5の測定状態を診断する処理が行われる。
図11は、インピーダンス測定装置5の測定状態を診断するときの切替部570の接続状態を示す図である。
電流経路切替器571では、正極側電源部531と接続された入力端子が、コンデンサ511Aと接続された第1出力端子から、診断素子561と接続された第2出力端子へ切り替えられる。これにより、正極側電源部531から出力される交流電流I1が、診断素子561に供給される。
同様に電流経路切替器572では、負極側電源部532と接続された入力端子が、コンデンサ511Bと接続された第1出力端子から、診断素子562と接続された第2出力端子へ切り替えられる。これにより、負極側電源部532から出力される交流電流I2が診断素子562に供給される。
検出対象切替器573では、正極側検出部521と接続された出力端子が、帯域通過フィルタ5211と接続された第1入力端子から、診断素子561と接続された第2入力端子へ切り替えられる。これにより、正極側検出部521に対して診断素子561が並列に接続されるので、診断素子561によって生じる交流電位差V1が正極側検出部521で検出され、その交流電位差V1が交流調整部540に出力される。
検出対象切替器574では、負極側検出部522と接続された出力端子が、帯域通過フィルタ5221と接続された第1入力端子から、診断素子562と接続された第2入力端子へ切り替えられる。これにより、負極側検出部522に対して診断素子562が並列に接続されるので、診断素子562によって生じる交流電位差V2が負極側検出部522で検出され、その交流電位差V2が交流調整部540に出力される。
交流調整部540は、診断素子561に生じる交流電位差V1と診断素子562に生じる交流電位差V2とが互いに等しくなるように、正極側電源部531及び負極側電源部532から出力される交流電流I1及びI2の振幅を調整する。
演算部550は、交流調整部540から交流電流I1に相当する指令信号と交流電流I2に相当する指令信号とを受信すると共に、正極側検出部521からの交流電位差V1と負極側検出部522からの交流電位差V2とを受信する。演算部550は、式(1−1)のとおり、交流電流I1と交流電位差V1とに基づいて診断素子561の抵抗R1を演算し、その抵抗R1を測定値として保持する。また演算部550は、式(1−1)のとおり、交流電流I2と交流電位差V2とに基づいて診断素子562の抵抗R2を演算し、その抵抗R2を測定値として保持する。
演算部550は、診断素子561の抵抗の測定値と基準値Ref1との差を、診断素子561の測定誤差として算出すると共に、診断素子562の抵抗の測定値と基準値Ref2との差を、診断素子562の測定誤差として算出する。
演算部550は、診断素子561及び562の測定誤差に基づいて、インピーダンス測定装置5の測定状態が良好か不良かを診断し、その診断結果をコントロールユニット6に送信する。
例えば、演算部550は、診断素子561の測定誤差及び診断素子562の測定誤差が、予め定められた許容誤差範囲を超えたか否かを判断する。そして演算部550は、診断素子561及び562の測定誤差が共に許容誤差範囲内にある場合には、インピーダンス測定装置5の測定状態が良好であると判定する。すなわち、インピーダンス測定装置5に備えられた電子部品の製造バラツキや経時劣化などが原因でインピーダンスの測定精度が低下していないと判定される。
インピーダンス測定装置5の測定状態が良好であると判定された場合には、演算部550は、診断が終了した旨を示す診断終了信号を切替制御部580に供給する。切替制御部580は、その診断終了信号を受信すると、切替部570の接続状態を、診断素子561及び562の抵抗を測定する素子接続状態から、図10に示された電池接続状態に切り替える。
そして演算部550は、等電位制御によって交流電位差V1と交流電位差V2とが互いに等しく制御された状態で燃料電池スタック1の内部抵抗Rを演算し、その内部抵抗Rを測定結果としてコントロールユニット6へ送信する。
一方、診断素子561又は562の測定誤差が許容誤差範囲を超えた場合には、演算部550は、インピーダンス測定装置5の測定状態が不良であると判定する。すなわち、インピーダンス測定装置5に備えられた電子部品の製造バラツキや、経時劣化などが原因でインピーダンスの測定精度が低下していると判定される。
インピーダンス測定装置5の測定状態が不良であると判定された場合には、演算部550は、例えば、切替制御部580への診断終了信号の供給を停止して、切替部570の接続状態を、電池接続状態に切り替えることを禁止する。
あるいは、演算部550は、診断終了信号を切替制御部580に供給して切替部570を電池接続状態に切り替え、診断時に算出した診断素子561及び562の測定誤差に基づいて、燃料電池スタック1の内部抵抗Rの測定値を補正するようにしてもよい。
この場合において診断素子561及び562の測定値が基準値よりも小さいときには、演算部550は、例えば、内部抵抗R1の測定値に診断素子561の測定誤差を加算すると共に内部抵抗R2の測定値に診断素子562の測定誤算を加算して内部抵抗Rを算出する。または、演算部550は、診断素子561の測定誤差と診断素子562の測定誤差との平均値を内部抵抗Rの測定値に加算することで測定値を補正してもよい。演算部550は、その補正後の測定値をコントロールユニット6へ送信する。
その他の例として、演算部550は、測定状態が不良と判定された場合には、切替部570を電池接続状態に切り替え、診断素子561及び562の測定誤差を内部抵抗Rの測定結果に付加してコントロールユニット6に送信してもよい。コントロールユニット6には、燃料電池スタック1のカソードガス供給流量や、アノードガス供給流量、冷却水温度などを制御するための制御ブロックが複数存在するので、制御ブロックごとに要求される内部抵抗Rの測定精度が異なる場合には、測定結果に付された測定誤差などに応じて測定結果の取り扱いを変えることが可能となる。
なお、本実施形態では診断素子561及び562として、固定値の抵抗を有する抵抗器を用いる例について説明したが、抵抗器に代えてコンデンサ素子やインダクタンス素子が用いられてもよい。
例えば、燃料電池スタック1の内部には、抵抗成分だけでなく静電容量成分が含まれている。このため、燃料電池スタック1が有する静電容量を測定する場合には、インピーダンス測定装置5に所定値のコンデンサ素子を備える。そしてインピーダンス測定装置5は、診断時において切替部570を素子接続状態に切り替えてコンデンサ素子の静電容量の測定誤差を求め、その測定誤差に基づいて燃料電池スタック1の静電容量の測定状態が良好か否かを診断する。
また、診断素子561及び562として、抵抗素子とコンデンサ素子とを並列に接続したインピーダンス素子が用いられてもよい。この場合には、診断時において演算部550は、交流電位差V1及びV2の実軸成分及び虚軸成分を演算し、これらの実軸成分に基づいて抵抗素子の測定誤差を求め、虚軸成分に基づいてコンデンサ素子の測定誤差を求める。
これにより、抵抗素子とコンデンサ素子とを切り替える切替器を設けることなく、インピーダンス測定装置5の内部抵抗及び静電容量の両者の測定精度を診断することが可能となる。すなわち、インピーダンス測定装置5の回路構成を複雑にすることなく、インピーダンス測定装置5の測定精度に対する信頼性を確保することができる。
また、燃料電池スタック1では発電セル10が多数積層されているため、燃料電池スタック1から負荷3に供給される電圧は数百ボルトと高い直流電圧となる。そのため、燃料電池スタック1からインピーダンス測定装置5へも供給される直流電圧を遮断するために、コンデンサ511A、511B、512A及び512Bが、インピーダンス測定装置5内に設けられている。
具体的には、燃料電池スタック1の正極端子211と正極側電源部531との間の入力ライン501Aに直流遮断部511としてコンデンサ511Aが接続され、正極端子211と正極側検出部521との間の出力ライン501Bにコンデンサ511Bが接続される。また燃料電池スタック1の負極端子212と負極側電源部532との間の入力ライン502Aに直流遮断部512としてコンデンサ512Aが接続され、負極端子212と負極側検出部522との間の出力ライン502Bにコンデンサ512Bが接続される。
そして、正極側の測定経路では、電流経路切替器571は、コンデンサ511Aと正極側電源部531との間に接続され、電池接続状態において正極側電源部531が接続される接続先を、コンデンサ511Aから診断素子561の一端に切り替える。また検出対象切替器573は、コンデンサ511Bと正極側検出部521の第1入力端子との間に接続され、電池接続状態において正極側検出部521の第1入力端子が接続される接続先を、コンデンサ511Bから診断素子561の一端に切り替える。
負極側の測定経路では、電流経路切替器572は、コンデンサ512Aと負極側電源部532との間に接続され、電池接続状態において負極側電源部532が接続される接続先を、コンデンサ512Aから診断素子562の一端に切り替える。また検出対象切替器574は、コンデンサ512Bと負極側検出部522の第1入力端子との間に接続され、電池接続状態において、負極側検出部522の第1入力端子が接続される接続先を、コンデンサ512Bから診断素子562の一端に切り替える。
また、燃料電池スタック1の正極端子211と負極端子212との中間に位置する発電セル10に設けられた中途点端子213は、診断素子561の他端と診断素子562の他端と正極側検出部521の第2入力端子と負極側検出部522の第2入力端子とに接続される。これと共に中途点端子213は接地される。
このように、電流経路切替器571及び572は、それぞれコンデンサ511A及び511Bよりも電源部531及び532側に配置され、検出対象切替器573及び574は、コンデンサ512A及び512Bよりも検出部521及び522側に配置される。
このため、電流経路切替器571及び572と検出対象切替器573及び574とは、コンデンサ511A、511B、512A及び512Bによって、燃料電池スタック1からの数百ボルトの高い直流電圧が遮断されるので、耐圧性の高い切替器を用意せずに済む。したがって、安価な切替器を用いることが可能となり、製造コストを低減することができる。
一方、診断中の回路構成には、コンデンサ511A、511B、512A及び512Bが含まれないので、これらの製造バラツキや劣化などの影響が診断には反映されない。しかしながら、交流電流I1及びI2の周波数、すなわち交流信号源546の基準周波数fbは、燃料電池スタック1の内部抵抗Rを測定する際にコンデンサ511A、511B、512A及び512Bが有するインピーダンスの影響を無視できる範囲の値に設定すればよい。例えば、基準周波数fbは、1kHz(キロヘルツ)以上の値に設定される。
これにより、診断素子561及び562の抵抗を測定するときの回路特性が、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2を測定するときの回路特性に近づくことになる。このため、診断素子561及び562の抵抗誤差を測定する精度、すなわちインピーダンス測定装置5の診断精度を向上させることができる。
また、交流調整部540では交流電位差V1及びV2の振幅が同一の基準値Vsとなるように交流電流I1及びI2の振幅を制御することから、燃料電池スタック1の内部抵抗Rの中間に中途点端子213を設けることが望ましい。燃料電池スタック1は、積層電池であるため、正極端子211から負極端子212まで積層された発電セルのうち中間に位置する発電セル10に対して中途点端子213を設ければよいので、正確かつ容易に、内部抵抗Rの中間に中途点端子213を設けることが可能となる。
さらに、燃料電池スタック1は、積層電池であり、正極側と負極側とは対照であることから、正極側の測定経路と負極側の測定経路との2系統を互いに同じ構成にすることで、系統間のバラツキを低減することができる。また信号ライン501及び502の各々を2つのラインに分離することにより、正極電源部531から正極側検出部521に、及び負極電源部532から負極側検出部522に混入するノイズを抑制できる。
また、本実施形態では帯域通過フィルタ5211及び5221が、コンデンサ511B及び512Bと検出対象切替器573及び574との間に配置される例について説明したが、本発明の実施形態はこれに限られるものではない。
例えば、帯域通過フィルタ5211及び5221は、検出対象切替器573及び574と正極側検出部521及び負極側検出部522との間に接続してもよい。この場合には、診断時において交流電流I1が流れる正極側電源部531から正極側検出部521までの経路中に帯域通過フィルタ5211が含まれ、交流電流I2が流れる負極側電源部532から負極側検出部522までの経路中にも帯域通過フィルタ5221が含まれることになる。すなわち、診断素子561及び562の抵抗を測定するときの回路特性が、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2を測定するときの回路特性に近づくことになる。
帯域通過フィルタ5211及び5221においては、入力信号に対する出力信号の振幅及び位相の特性が変化すると、インピーダンスの測定精度にも影響を及ぼす。仮に経時劣化が原因で帯域通過フィルタ5211及び5221の出力信号が低下した場合には、交流電位差V1及びV2の振幅が低下することになるため、実際には内部抵抗R1及びR2が一定であっても、演算部550で演算される抵抗値は低下してしまう。このように帯域通過フィルタ5211及び5221の個体差や経時劣化などが原因でインピーダンス測定装置5の測定精度が低下してしまう。
この対策として、帯域通過フィルタ5211及び5221よりも前段に検出対象切替器573及び574を配置するようにしてもよい。これにより、帯域通過フィルタ5211及び5221の製品バラツキや経時劣化などに起因する出力値のズレ幅が、診断素子561及び562の測定誤差に含まれることになる。したがって、インピーダンス測定装置5内の帯域通過フィルタ5211及び5221などの電子部品によって生じる測定誤差をより正確に求めることが可能となる。
次にインピーダンス測定装置5の動作について図12を参照して説明する。
図12は、本実施形態におけるインピーダンス測定方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS101において演算部550は、インピーダンス測定装置5が自己の測定状態を診断する診断時期になったか否かを判断する。演算部550は、診断時期になったと判断した場合には、診断実行信号を切替制御部580に供給する。一方、診断時期になっていないと判断した場合には、演算部550は、切替制御部580への診断実行信号の供給を停止する。
ステップS102において切替制御部580は、演算部550から診断実行信号を受信した場合には、電流経路切替器571及び572を制御して、正極側電源部531及び負極側電源部532を、それぞれ診断素子561及び562に接続する。これと共に切替制御部580は、検出対象切替器573及び574を制御して、正極側検出部521及び負極側検出部522に対し、それぞれ診断素子561及び562を並列に接続する。
このように、インピーダンス測定装置5が診断時期になると、切替制御部580は、交流電流I1及びI2を診断素子561及び562にそれぞれ供給し、診断素子561及び562に生じる交流電位差V1及びV2を出力する素子接続状態に切り替える。そして、交流調整部540によって交流電位差V1及びV2が互いに等しくなるように交流電流I1及びI2の振幅が調整された状態で正極側検出部521及び負極側検出部522から交流電位差V1及びV2が演算部550へ出力される。
ステップS103において演算部550は、式(1−1)のとおり、交流調整部540で調整された後の交流電流I1及びI2と交流電位差V1及びV2とを用いて、診断素子561の抵抗R1及び診断素子562の抵抗R2を演算する。すなわち、演算部550は、診断素子561及び562のインピーダンスをそれぞれ測定する。
ステップS104において演算部550は、診断素子561の抵抗の測定値と基準値Ref1との測定誤差と、診断素子562の抵抗の測定値と基準値Ref2との測定誤差とが共に許容誤差範囲内にあるか否かを判断する。
そして演算部550は、診断素子561及び562の測定誤差が共に許容誤差範囲内にある場合には、インピーダンス測定装置5の測定状態が良好であると判断し、ステップS101に戻る。
一方、ステップS105において演算部550は、診断素子561又は562の測定誤差が許容誤差範囲外にある場合には、測定状態が不良であると判断し、その旨を示す診断結果を送信先のコントロールユニット6へ出力する。
なお、演算部550は、診断結果として、診断素子561及び562の測定誤差や、測定誤差から求めた測定精度、インピーダンス測定装置5での測定を中止する指令などを送信してもよい。そして演算部550は、診断結果を送信した後にステップS101に戻る。
このように演算部550は、診断素子561及び562の測定誤差に基づいて、インピーダンス測定装置5の製造バラツキや経時劣化などが原因で測定状態が不良であるか否かを診断する。
ステップS101においてインピーダンス測定装置5が診断時期でないと判断された場合には、演算部550は、切替制御部580への診断実行信号の供給を停止する。
ステップS106において切替制御部580は、電流経路切替器571及び572を制御して、正極側電源部531及び負極側電源部532を、それぞれ燃料電池スタック1の正極端子211及び負極端子212に接続する。これと共に切替制御部580は、検出対象切替器573及び574を制御して、正極端子211と中途点端子213との間の内部抵抗R1を正極側検出部521に接続すると共に、負極端子212と中途点端子213との間の内部抵抗R2を負極側検出部522に接続する。
このように、切替制御部580は、交流電流I1及びI2を燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2にそれぞれ供給して、内部抵抗R1及びR2に生じる交流電位差V1及びV2を出力する電池接続状態に切り替える。そして交流調整部540は、交流電位差V1及びV2が互いに等しくなるように、正極側電源部531及び負極側電源部532を制御して交流電流I1及びI2の振幅を調整する。この状態で、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2に生じる交流電位差V1及びV2が、正極側検出部521及び負極側検出部522により検出されて演算部550へ出力される。また、交流調整部540から正極側電源部531及び負極側電源部532へ出力される指令信号が、交流電流I1及びI2として演算部550へ出力される。
ステップS107において演算部550は、式(1−1)のとおり、調整後の交流電流I1及びI2と交流電位差V1及びV2とを用いて、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2を演算する。すなわち、演算部550は、燃料電池スタック1の内部インピーダンスを測定する。
ステップS108において演算部550は、式(1−2)のとおり、測定された内部抵抗R1及びR2を合成することにより、燃料電池スタック1全体の内部抵抗Rを演算し、その内部抵抗Rを測定結果としてコントロールユニット6へ送信する。この場合において、ステップS104で診断素子561及び562の測定誤差が許容誤差範囲を超えていると判断した後に内部抵抗Rを測定するときには、演算部550は、測定誤差の診断結果を内部抵抗Rの測定結果に付加した測定データを生成して送信してもよい。
ステップS109において演算部550は、インピーダンス測定装置5が停止(OFF)されるまでは、ステップS101からS108までの一連の処理を繰り返し、インピーダンス測定装置5が停止された場合には、インピーダンス測定方法を終了する。
本発明の第1実施形態によれば、インピーダンス測定装置5は、燃料電池スタック1の正極端子211及び負極端子212の各々に対して、交流電流I1を出力する正極側電源部531と交流電流I2を出力する負極側電源部532とを備える。
また、インピーダンス測定装置5は、燃料電池スタック1における正極端子211と中途点端子213との間の内部抵抗R1に生じる交流電位差V1を検出する正極側検出部521を備える。そして負極端子212と中途点端子213との間の内部抵抗R2に生じる交流電位差V2を検出する負極側検出部522を備える。
さらに、インピーダンス測定装置5は、正極側検出部521により検出される交流電位差V1、及び正極側電源部531から出力される交流電流I1に基づいて燃料電池スタック1の内部抵抗R1を演算する演算部550を備える。演算部550は、負極側検出部522により検出される交流電位差V2、及び負極側電源部532から出力される交流電流I2に基づいて内部抵抗R2を演算する。
これらに加えてインピーダンス測定装置5は、診断素子561及び562と切替部570とを備える。診断素子561は、予め定められた基準値Ref1の抵抗を有し、診断素子562は、予め定められた基準値Ref2の抵抗を有する。切替部570は、切替制御部580の制御に従って、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2を測定するための電池接続状態と、診断素子561及び562の抵抗を測定するための素子接続状態とを交互に切り替える。
切替部570の電池接続状態は、正極側電源部531を正極端子211に接続すると共に正極側検出部521を燃料電池スタック1の正極端子211に接続し、負極側電源部532を負極端子212に接続すると共に負極側検出部522を負極端子212に接続する接続状態である。
切替部570の素子接続状態は、正極端子211から切断して診断素子561に正極側電源部531を接続すると共に診断素子561に正極側検出部521を接続し、負極端子212から遮断して診断素子562に負極側電源部532を接続すると共に診断素子562に負極側検出部522を接続する接続状態である。
切替部570が素子接続状態に切り替えられた場合には、演算部550は、交流電位差V1及びV2と交流電流I1及びI2とに基づいて診断素子561及び562の抵抗を求める。そして演算部550は、診断素子561及び562の抵抗の演算値と基準値Ref1及びRef2との差分を測定誤差として算出し、診断素子561及び562の測定誤差に基づいてインピーダンス測定装置5の測定状態が不良か否かを診断する。
例えば、演算部550は、診断素子561及び562の測定誤差が、予め定められた誤差許容範囲内にあるときは、測定状態が良好であると判定し、測定誤差が許容誤差範囲を超えたときには、測定状態が不良であると判定する。
このようにインピーダンス測定装置5の測定状態が不良であると診断された場合には、その診断結果を内部抵抗Rの測定値と共に出力することや、測定値の出力を停止すること、測定状態が不良と判断される直前の測定値を測定結果として固定するがこと可能となる。これにより、要求された測定精度を満足した測定結果が出力されるので、測定結果の信頼性を確保することができる。
あるいは、演算部550は、切替部570が電池接続状態に切り替えられ場合に、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2を演算し、その内部抵抗R1及びR2の演算値を診断素子561及び562の測定誤差に基づいて補正する。
例えば、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2の測定値から、診断素子561又は562の測定誤差を減算することによって測定値が補正されるので、測定状態が不良でも、要求された測定精度を満足する測定結果を出力することができる。
このように本実施形態によれば、正極側電源部531や正極側検出部521などの電子部品の製造バラツキや経時劣化などが原因で、インピーダンス測定装置5の測定精度が低下したときに測定結果に対する信頼性の維持向上を図ることができる。
なお、本実施形態では、正極側の測定経路、及び負極側の測定経路の2つの系統のそれぞれに診断素子561及び562を実装する例について説明したが、1つの診断素子を兼用して両方の測定経路における電子部品に起因する測定誤差を診断するようにしてもよい。この場合には素子接続状態において、正極側電源部531及び正極側検出部521と、負極側電源部532及び負極側検出部522とが1つの診断素子に対して順番に接続される。
例えば、切替制御部580は、素子接続状態において、正極端子211との接続を切断して1つの診断素子に対して正極側電源部531及び正極側検出部521を接続する。その後、負極端子212との接続を切断して負極側電源部532及び負極側検出部522を同じ診断素子に接続する。
これにより、正極側及び負極側の系統間のバラツキ、具体的には診断素子や切替器のバラツキによって生じる誤差が排除されるので、各系統での測定誤差を計測する精度を高めることができる。
また、本実施形態では演算部550は、インピーダンス測定装置5の製造時や出荷検査時、定期検査時において、インピーダンス測定装置5の測定精度を診断するために診断実行信号を切替制御部580に出力する。これにより、切替制御部580によって切替部570が素子接続状態に切り替えられ、演算部550によって診断素子561及び562のインピーダンスの測定誤差が算出される。
通常、インピーダンス測定装置5の製造バラツキを許容範囲内に調整するために、作業員が調整設備を使用してインピーダンス測定装置5の出荷検査や校正を行う。これに対して、インピーダンス測定装置5の製造時や出荷検査時、定期検査時において、演算部550が切替制御部580へ診断実行信号を出力するようにプログラムすることで、自動的に出荷検査及び定期検査の合否判定や、測定機能の校正を行うことができる。
例えば、診断実行信号は、図2に示された操作スイッチ部61から出力される。操作スイッチ部61は、外部からの操作が可能なスイッチ又はボタンである。操作スイッチ部61には、インピーダンス測定装置5の診断及び校正(補正)を実行するための検査スイッチが設けられており、作業員によって検査スイッチがONに設定されると、操作スイッチ部61から診断実行信号がコントロールユニット6に出力される。コントロールユニット6は、図10に示されるように演算部550を介して診断実行信号を切替制御部580に出力する。
このようにすることで、インピーダンス測定装置5の測定精度を維持しつつ、製造時の調整作業や定期検査の作業を軽減することができる。なお、操作スイッチ部61に対してジャンパー線を取り付けたり取り外したりすることで、操作スイッチ部61から診断実行信号を出力させてもよい。
また、演算部550は、診断時期として、インピーダンス測定装置5の起動時や停止時、又は、燃料電池システムの起動時や停止時において、診断実行信号を切替制御部580に出力するようにしてもよい。燃料電池システムとは、燃料電池スタック1にアノードガス及びカソードガスを供給して燃料電池スタック1を発電させるシステムのことである。
この場合には、インピーダンス測定装置5を起動する起動スイッチや、燃料電池システムを起動する起動スイッチを操作スイッチ部61に設け、コントロールユニット6は、操作スイッチ部61のいずれかの起動スイッチがONに設定された場合に診断実行信号を演算部550に出力する。あるいは、コントロールユニット6は、起動スイッチがONからOFFに切り替えられた場合にも、診断実行信号を演算部550に出力するようにしてもよい。
このようにすることで、インピーダンス測定装置5の経時劣化に起因する測定精度の低下を早期に検知でき、電子部品の経時劣化に合わせて測定値を補正できる。
あるいは、演算部550は、予め定められた稼動時間ごとに診断実行信号を切替制御部580に出力してもよい。この場合には演算部550にインピーダンス測定装置5が稼働した時間を計測する計測カウンタが設けられ、その計測カウンタのカウント値が所定値に達すると、演算部550は診断実行信号を出力してカウント値をリセットし、計測カウントがカウントを開始する。
このようにすることで、定期的にインピーダンス測定装置5の診断や校正が実行されるので、測定精度の低下の検知と経時劣化に合わせた校正とをより確実に行うことができる。このため、インピーダンス測定装置5の信頼性が向上する。なお、演算部550に実装される計測カウンタは、コントロールユニット6に実装されてもよい。
(第2実施形態)
図13は、本発明の第2実施形態におけるインピーダンス測定装置の構成を示す図である。
本実施形態のインピーダンス測定装置は、図10に示されたインピーダンス測定装置5の診断素子部560及び切替部570の代わりに、診断素子部660及び切替部670を備えている。その他の構成は、インピーダンス測定装置5と同じものであるため、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
診断素子部660は、正極側電源部531から正極側検出部521までの測定経路と、負極側電源部532から負極側検出部522までの測定経路との2系統で兼用できる位置に配置される。
診断素子部660は、第1の診断素子661と第2の診断素子662とを備える。診断素子661と診断素子662とは、互いに異なる抵抗値を有するインピーダンス素子である。診断素子661は、予め定められた基準値Ref11の抵抗を有する。診断素子662は、予め定められた基準値Ref12の抵抗を有する。
本実施形態では、基準値Ref11は、燃料電池スタック1が有する内部抵抗R1及びR2の変動範囲内の下限値に設定される。基準値Ref12は、燃料電池スタック1が有する内部抵抗R1及びR2の変動範囲内の上限値に設定される。
切替部670は、切替制御部580の制御に従って、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2を測定する電池接続状態と、診断素子661及び662の抵抗を測定する素子接続状態とを交互に切り替える。
電池接続状態においては、切替部670は、正極側電源部531を正極端子211に接続すると共に、燃料電池スタック1の内部抵抗R1に正極側検出部521を並列に接続する。そして切替部670は、負極側電源部532を負極端子212に接続すると共に、燃料電池スタック1の内部抵抗R2に負極側検出部522を並列に接続する。
一方、素子接続状態では、切替部670は、正極側電源部531から正極側検出部521までの測定経路の誤差を測定する正極側測定状態に設定した後、負極側電源部532から負極側検出部までの測定経路の誤差を測定する負極側測定状態に切り替える。
正極側測定状態及び負極側測定状態では、切替部670は、第1の診断素子661の抵抗を測定する測定経路に接続した後、第2の診断素子662の抵抗を測定する測定経路に切り替える。
本実施形態では、切替部670は、電流経路切替器671及び672と、検出対象切替器673及び674と、診断素子切替器675及び676とを備える。これらは、例えば、アナログスイッチやリレーにより実現される。
電流経路切替器671は、正極側電源部531とコンデンサ511Aとの間に接続される。そして電流経路切替器671は、正極側電源部531から出力される交流電流I1の供給先を、燃料電池スタック1の正極端子211、又は、診断素子切替器675に切り替える。
電流経路切替器671では、入力端子が正極側電源部531と接続され、第1出力端子がコンデンサ511Aと接続され、第2出力端子が診断素子切替器675の入力端子と接続される。
電流経路切替器672は、負極側電源部532とコンデンサ512Aとの間に接続される。そして電流経路切替器672は、負極側電源部532から出力される交流電流I2の供給先を、燃料電池スタック1の負極端子212、又は、診断素子切替器675に切り替える。
電流経路切替器672では、入力端子が負極側電源部532と接続され、第1出力端子がコンデンサ512Aと接続され、第2出力端子が診断素子切替器675の入力端子と接続される。
検出対象切替器673は、コンデンサ511Bと帯域通過フィルタ5211との間に接続される。そして検出対象切替器673は、正極側検出部521に対して並列に接続される検出対象を、燃料電池スタック1の正極側部分、又は、診断素子切替器676に切り替える。
検出対象切替器673では、第1入力端子がコンデンサ511Bと接続され、第2入力端子が診断素子切替器676の入力端子と接続され、出力端子が帯域通過フィルタ5211と接続される。
検出対象切替器674は、コンデンサ512Bと帯域通過フィルタ5221との間に接続される。そして検出対象切替器674は、正極側検出部521に対して並列に接続される検出対象を、燃料電池スタック1の負極側部分、又は、診断素子切替器676に切り替える。
検出対象切替器674では、第1入力端子がコンデンサ512Bと接続され、第2入力端子が診断素子切替器676の入力端子と接続され、出力端子が帯域通過フィルタ5221と接続される。
診断素子切替器675は、電流経路切替器671と電流経路切替器672との間を接続する電流信号線と診断素子部660との間に接続される。そして診断素子切替器675は、電流経路切替器671又は672から出力される交流電流I1又はI2の供給先を、診断素子661、又は、診断素子662に切り替える。
診断素子切替器675では、入力端子が、電流経路切替器671の第2出力端子と電流経路切替器672の第2出力端子とに接続され、第1出力端子が診断素子661と接続され、第2出力端子が診断素子662と接続される。
診断素子切替器676は、検出対象切替器673と検出対象切替器674との間を接続する検出信号線と診断素子部660との間に接続される。そして診断素子切替器676は、正極側検出部521又は負極側検出部522により交流電位差が検出される検出対象を、第1の診断素子661又は第2の診断素子662に切り替える。
診断素子切替器676では、第1入力端子が診断素子661と接続され、第2入力端子が診断素子662と接続され、出力端子が検出対象切替器673の第2入力端子と検出対象切替器674の第2入力端子とに接続される。
上述の電流経路切替器671及び672と検出対象切替器673及び674と診断素子切替器675及び676とは、それぞれ切替制御部580によって制御される。
切替制御部580は、予め定められた診断時期になると、切替部670の測定経路の接続状態を、電池接続状態又は素子接続状態に切り替える。
電池接続状態では、切替制御部580は、電流経路切替器671を制御して正極側電源部531をコンデンサ511Aに接続し、電流経路切替器672を制御して負極側電源部532をコンデンサ512Aに接続する。これと共に切替制御部580は、検出対象切替器673を制御して正極側検出部521の帯域通過フィルタ5211をコンデンサ511Bに接続し、検出対象切替器674を制御して負極側検出部522の帯域通過フィルタ5221をコンデンサ512Bに接続する。
素子接続状態において、切替制御部580は、図13に示されるように、正極側電源部531から正極側検出部521までの測定経路に生じる測定誤差を測定する正極側測定状態に切替部670を設定する。
具体的には、切替制御部580は、電流経路切替器671を制御して正極側電源部531を診断素子切替器675の入力端子に切り替え、電流経路切替器672を制御して負極側電源部532をコンデンサ512Aに接続した状態に維持する。これと共に切替制御部580は、検出対象切替器673を制御して帯域通過フィルタ5211を診断素子切替器676の出力端子に切り替え、検出対象切替器674を制御して帯域通過フィルタ5221をコンデンサ512Bに接続した状態に維持する。
そして切替制御部580は、切替部670の接続状態を、第1の診断素子661の抵抗を測定するための接続状態に設定する。具体的には、切替制御部580は、診断素子切替器675を制御して正極側電源部531を診断素子661に接続し、診断素子切替器676を制御して正極側検出部521を診断素子661に接続する。この状態で交流調整部540により交流電位差V1が基準電圧Vsに調整され、演算部550により交流電流I1と交流電位差V1とに基づいて診断素子661の抵抗R1が測定される。
その後、切替制御部580は、切替部670の接続状態を、第2の診断素子662の抵抗を測定するための接続状態に切り替える。
図14は、素子接続状態において第2の診断素子662の抵抗を測定するときのインピーダンス測定装置5内の接続状態を示す図である。
図14に示されるように、切替制御部580は、診断素子切替器675を制御して正極側電源部531を診断素子662に接続し、診断素子切替器676を制御して正極側検出部521を診断素子662に接続する。この状態で交流調整部540により交流電位差V1が基準電圧に調整され、演算部550により交流電流I1と交流電位差V1とに基づいて診断素子662の抵抗R1が測定される。
次に切替制御部580は、負極側電源部532から負極側検出部522までの測定経路に生じる測定誤差を測定する負極側測定状態に切替部670の接続状態を切り替える。
図15は、素子接続状態において負極側の測定経路に生じる測定誤差を測定するための接続状態を示す図である。ここでは、第1の診断素子661の抵抗を測定するための接続状態が示されている。負極側の診断についても、図13及び図14に示されたように診断素子661と診断素子662とが順番に接続されるので、演算部550によって診断素子661の抵抗が測定された後、診断素子662の抵抗が測定される。
そして、演算部550は、抵抗値が互いに異なる診断素子661及び662の測定値と基準値Ref11及びRef12とを用いて、例えば、正極側及び負極側の測定経路の誤差特性を求める。演算部550は、その誤差特性を用いて燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2の測定値を補正する。
図16は、演算部550で演算される内部抵抗R1及びR2を補正する補正手法の一例を示す図である。
図16には、診断素子661及び662が有する抵抗の真値を表わす基準特性と、診断素子661及び662の抵抗の測定値により定まる測定特性とが示されている。図16では、縦軸(Y)が、診断素子661及び662の基準値Ref11及びRef12を示し、横軸(X)が、診断素子661及び662が有する抵抗の測定値Rm1及びRm2を示す。
演算部550は、基準特性と測定特性とに基づいて、インピーダンス測定装置5の誤差特性を補正するための補正特性を求める。誤差特性とは、測定される抵抗の大きさに応じて変化する測定誤差を示す特性のことであり、補正特性とは、測定される抵抗の大きさに応じて変化する測定誤差の補正量を示す特性のことである。本実施形態では誤差特性や補正特性は、一次回帰線により近似される。
具体的には、演算部550は、次式のとおり、診断素子661及び662の基準値Ref11及びRef12と、診断素子661及び662の測定値Rm1及びRm2とを用いて、補正特性を近似した近似直線の傾きKa及び切片Kbを算出する。
そして演算部550は、算出された傾きKa及び切片Kbを補正係数としてメモリ559に記録する。このように、補正特性を近似した直線の傾きKa及び切片Kbを演算することにより、測定値の大きさに応じて補正量が変化する補正特性を取得することができる。
インピーダンス測定装置5の診断後に切替部670が電池接続状態に切り替えられた場合には、演算部550は、式(1−1)に従って燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2を演算する。そして演算部550は、演算された内部抵抗R1及びR2の測定値Rmを、次式に示されるとおり、補正特性の傾きKa及び切片Kbを用いて補正することにより、補正後における内部抵抗R1及びR2の測定値Rcを算出する。
このように演算部550は、診断素子661及び662の抵抗を測定し、2つの測定誤差に基づいて測定誤差を内部抵抗R1及びR2の測定値に応じて補正する補正特性を求める。診断後において、インピーダンス測定装置5は、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2を測定し、内部抵抗R1及びR2の測定値Rmと診断時に求めた補正特性とに基づいて、内部抵抗R1及びR2の変動に応じて変化する測定誤差を補正する。これにより、内部抵抗R1及びR2の測定値Rcが算出される。
また、本実施形態では診断素子661及び662の抵抗は、それぞれ、燃料電池スタック1が有する内部抵抗R1及びR2の変動範囲の上限値及び下限値に設定されている。これにより、内部抵抗R1及びR2の変動範囲内において、誤差特性又は補正特性がより正確に近似されることになるので、内部抵抗R1及びR2の測定値Rcの誤差を低減することができる。
また、本実施形態では補正特性を近似するために、2つの診断素子の測定誤差を用いて一次回帰線を求める例について説明したが、インピーダンス測定装置5に3つ以上の診断素子を設けてこれらの診断素子の測定誤差を用いて一次回帰線を求めてもよい。この場合には、誤差特性や補正特性がより正確に求められるので、演算部550から出力される測定値の誤差をより小さくすることができる。
また、本実施形態では2つの診断素子の測定誤差に基づいて一次回帰線を求める例について説明したが、誤差特性や補正特性が一次回帰線よりも近似曲線で表わした方が正確である場合には、近似曲線を求めるようにしてもよい。例えば、実験データなどで定められた曲線の近似式を予め求めておき、その近似式の係数を2つ以上の診断素子の測定誤差に基づいて求める。これにより、抵抗値に応じて変化する誤差特性や補正特性をより正確に近似することができる。
また、本実施形態のインピーダンス測定装置5は、正極側の測定経路、及び、負極側の測定経路の2つの系統の測定誤差を検出するのに、診断素子661及び662を兼用する回路構成となっている。
これにより、2つの系統の測定誤差を検出する場合や、測定誤差を補正する補正係数を求める場合において、系統間における診断素子や切替器のバラツキが排除されるので、測定誤差の測定精度を高めることができる。また、診断素子661及び662を兼用する回路構成にすることにより切替器の数を削減できるので、安価で小型のインピーダンス測定装置5を実現できる。したがって、燃料電池スタック1の内部抵抗の測定精度を向上させつつ、インピーダンス測定装置5の回路構成を安価で小型にすることが可能となる。
なお、本実施形態では診断素子661及び662の代わりに、燃料電池スタック1の正極端子211及び負極端子212の各々から出力される出力信号を擬似した電圧信号を発生させる電圧信号発生回路をインピーダンス測定装置5に設けてもよい。このような構成でも、本実施形態と同様の効果が得られる。ただし、電圧信号発生回路から発生させる電圧信号は、正極側検波回路5411及び5412で用いられる交流信号と位相を同期させる必要がある。
図17は、本実施形態におけるインピーダンス測定方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS201において演算部550は、インピーダンス測定装置5が自己の測定状態を診断する診断時期になったか否かを判断する。演算部550は、診断時期になったと判断した場合には、診断実行信号を切替制御部580に供給し、診断時期になっていないと判断した場合には、切替制御部580への診断実行信号の供給を停止する。
ステップS202において切替制御部580は、演算部550から診断実行信号を受信した場合には、正極側電源部531を診断素子部660に接続すると共に、正極側検出部521を診断素子部660に接続する。すなわち切替制御部580は、正極側電源部531から正極側検出部521までの測定経路中に診断素子部660を接続する。
ステップS203において切替制御部580は、正極側電源部531から正極側検出部521までの測定経路中に診断素子部660内の診断素子661及び662を順番に接続すると共に演算部550は、診断素子661及び662の抵抗をそれぞれ測定する。
具体的には、切替制御部580は、正極側電源部531から出力される交流電流I1を診断素子661に供給すると共に診断素子661に生じる交流電位差V1を正極側検出部521に出力する。そして演算部550は、交流調整部540によって調整された交流電流I1及び交流電位差V1を用いて、診断素子661の抵抗の測定値Rm1を算出する。
その後、切替制御部580は、正極側電源部531から出力される交流電流I1を診断素子662に供給すると共に診断素子662に生じる交流電位差V1を正極側検出部521に出力する。そして演算部550は、交流調整部540によって調整された交流電流I1及び交流電位差V1を用いて、診断素子662の抵抗の測定値Rm2を算出する。
同様に、切替制御部580は、負極側電源部532から負極側検出部522までの測定経路中に診断素子661及び662を順番に接続し、演算部550は、診断素子661及び662の抵抗をそれぞれ測定する。
そして演算部550は、正極側及び負極側の測定経路の各々について、診断素子661の測定値Rm1と基準値Ref11との測定誤差と、診断素子662の測定値Rm2と基準値Ref12との測定誤差とを算出する。
ステップS204において演算部550は、正極側の測定経路における診断素子661及び662の各々の測定誤差と、負極側の測定経路における診断素子661及び662の各々の測定誤差とが、許容誤差範囲内にあるか否かを判断する。
そして演算部550は、4つの測定誤差の全てが許容誤差範囲内にある場合には、ステップS201に戻る。一方、4つの測定誤差のうちのいずれかが許容誤差範囲外にある場合には、演算部550は、ステップS205に進む。
ステップS205において演算部550は、正極側の測定経路における診断素子661の測定値Rm1の測定誤差及び診断素子662の測定値Rm2の測定誤差に基づいて、正極側の補正係数を演算する。さらに演算部550は、負極側の測定経路における診断素子661の測定値Rm1の測定誤差及び診断素子662の測定値Rm2の測定誤差に基づいて、負極側の補正係数を演算する。
具体的には演算部550は、式(2−1)及び式(2−2)のとおり、補正特性を近似した直線の傾きKa及び切片Kbを補正係数として算出する。
ステップS206において演算部550は、正極側の補正特性を近似した直線の傾きKa及び切片Kbと、負極側の補正特性を近似した直線の傾きKa及びKbとをメモリ559に記録する。
ステップS201でインピーダンス測定装置5が診断時期でないと判断された場合には、演算部550は、切替制御部580への診断実行信号の供給を停止する。
ステップS207において切替制御部580は、交流電流I1及びI2を燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2に供給して内部抵抗R1及びR2に生じる交流電位差V1及びV2を検出できる電池接続状態に切り替える。そして交流調整部540によって交流電流I1及びI2の振幅が調整された状態で、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2に生じる交流電位差V1及びV2が、正極側検出部521及び負極側検出部522から演算部550へ出力される。
ステップS208において演算部550は、式(1−1)のとおり、調整後の交流電流I1及びI2と交流電位差V1及びV2とを用いて、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2を演算する。すなわち、演算部550は、燃料電池スタック1が有する内部インピーダンスを測定する。
ステップS209において演算部550は、メモリ559に記憶された補正係数を用いて、燃料電池スタック1が有する内部抵抗R1及びR2の測定値Rmをそれぞれ補正する。具体的には、演算部550は、式(3)のとおり、傾きKa及び切片Kbを用いて内部抵抗R1及びR2の測定値Rmを補正することにより、補正後の測定値Rcを演算する。
ステップS210において演算部550は、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2の測定値Rcを合成することにより、燃料電池スタック1全体の内部抵抗Rを演算し、その内部抵抗Rを測定結果として送信先のコントロールユニット6へ送信する。
ステップS211において演算部550は、インピーダンス測定装置5が停止(OFF)されるまでは、ステップS201からS210までの一連の処理を繰り返し、インピーダンス測定装置5が停止された場合に診断処理方法を終了する。
本発明の第2実施形態によれば、インピーダンス測定装置5は、第1実施形態とは異なり、切替部670を用いて正極側の測定経路と負極側の測定経路の2つの系統で診断素子部660を兼用する。診断素子部660は、互いに異なる基準値Ref11及びRef12の抵抗を有する診断素子661及び662を備える。
切替部670は、素子接続状態に切り替えられた場合には、インピーダンス測定装置5と燃料電池スタック1との接続を切断して、正極側電源部531と正極側検出部521との間に診断素子661と診断素子662とを順番に接続する。そして、演算部550によって、診断素子661の基準値Ref11と正極側経路の測定値Rm1との測定誤差、及び、診断素子662の基準値Ref12と正極側経路の測定値Rm2との測定誤差が算出される。
演算部550は、その正極側経路における診断素子661及び662の各々の測定誤差に基づいて、各測定誤差を補正する近似式の傾きKa及び切片Kbを求め、これらを補正係数としてメモリ559に記録する。
同様に切替部670は、素子接続状態に切り替えられた場合には、負極側電源部532と負極側検出部522との間に診断素子661と診断素子662とを順番に接続する。そして、演算部550で診断素子661の基準値Ref11と負極側経路の測定値Rm1との測定誤差、及び、診断素子662の基準値Ref12と負極側経路の測定値Rm2との測定誤差が算出される。
また、演算部550は、負極側経路における診断素子661及び662の各測定誤差に基づいて、負極側の近似式の傾きKa及び切片Kbを求め、これらを補正係数としてメモリ559に記録する。例えば、演算部550は、式(2−1)及び式(2−2)に従い、近似式として一次回帰線を演算する。
その後、インピーダンス測定装置5を燃料電池スタック1に接続する電池接続状態に切替部670が切り替えられ場合に演算部550は、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2の測定値を、メモリ559内の正極側及び負極側の補正係数に基づいて補正する。
例えば、演算部550は、式(3)に従い、内部抵抗R1の測定値Rmと正極側の傾きKa及び切片Kbを用いて補正後の内部抵抗R1の測定値Rcを算出し、内部抵抗R2の測定値Rmと負極側の傾きKa及び切片Kbを用いて補正後の内部抵抗R1の測定値Rcを算出する。そして演算部550は、補正後の内部抵抗R1及びR2の測定値Rcを合成することにより、燃料電池スタック1全体の内部抵抗Rを求める。
このように第2実施形態によれば、抵抗値の異なる2つ以上の診断素子の測定誤差に基づいて補正特性が求められるので、測定対象が有するインピーダンスの変動に応じて測定誤差が変わる回路特性でも、その変動にかかわらず測定精度を向上させることができる。すなわち、インピーダンス測定装置5の測定結果に対する信頼性を第1実施形態よりも向上させることができる。
また、本実施形態では演算部550は、コントロールユニット6から送信された診断実行信号を受信した場合には、診断実行信号を切替制御部580に出力してインピーダンス測定装置5の測定精度を診断するようにしてもよい。
例えば、固体高分子型燃料電池を積層した燃料電池スタック1では、通常よりも高い負荷で運転し続けていると、高分子膜の含水率(導電率)が低くなりすぎ、燃料電池が乾いた状態になるため、燃料電池スタック1の発電性能が劣化する。このため、高負荷で連続して運転している状態では、燃料電池スタック1の発電性能の劣化を防止するために、高分子膜の湿潤度を精密に推定する必要があることから、インピーダンス測定装置5には通常よりも高い測定精度が要求される。
そこでコントロールユニット6は、燃料電池スタック1を高負荷で運転している場合、例えば、燃料電池スタック1の出力電流や発電電力が発電閾値を超えた場合には、内部抵抗Rを補正する指令信号として診断実行信号を演算部550に送信する。なお発電閾値は、高負荷運転か否かを判定するために定められた閾値である。
演算部550は、診断実行信号を受信すると、その診断実行信号を切替制御部580に出力することにより、切替制御部580は、切替部670を診断素子661及び662の抵抗を測定する素子接続状態に切り替える。そして演算部550は、診断素子661及び662の測定誤差を算出し、これらの測定誤差に基づいてメモリ559内の補正係数を更新する。
その後、切替制御部580によって切替部670が燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2を測定する電池接続状態に戻され、演算部550は、診断時に更新された補正係数に基づいて内部抵抗R1及びR2の測定値を補正する。
これにより、インピーダンス測定装置5は、燃料電池スタック1の運転状態に応じてコントロールユニット6から要求される測定精度が高くなる場合であっても、その要求に応じた測定精度で、燃料電池スタック1の内部抵抗Rを測定することが可能となる。
また燃料電池スタック1においては、内部に燃料電池の発電に関わる電荷移動抵抗、電気二重層容量や内部損失抵抗などの電気的特性を有している。本実施形態では燃料電池スタック1の内部インピーダンスに含まれる内部損失抵抗成分が電解質膜111の湿潤状態と相関関係が高いことから、インピーダンス測定装置5によって燃料電池スタック1の内部抵抗Rが測定される。
一方、燃料電池スタック1の内部インピーダンスに含まれる電荷移動抵抗や電気二重層容量の静電容量成分を測定するには、燃料電池スタック1に供給される交流電流I1及びI2の周波数を変更することにより計測することができる。
内部インピーダンスの静電容量成分は、燃料電池スタック1内のアノードガスに含まれる水素濃度に応じて変化する。燃料電池スタック1内の水素濃度が不足すると電解質膜111が劣化することから、燃料電池スタック1が有する静電容量の測定値を利用することにより、燃料電池スタック1内の水素不足を診断することが可能となる。
内部インピーダンスの静電容量成分を計測するには、内部抵抗Rの測定用の基準周波数fbよりも低い周波数に交流電流I1及びI2の周波数を設定する必要があり、1kHzよりも低い周波数に設定することが好ましい。
このように、燃料電池スタック1の内部抵抗と内部静電容量とを測定するには、インピーダンス測定装置5から燃料電池スタック1に出力される交流電流I1及びI2の周波数を変更することができる回路構成にする必要がある。
例えば、交流信号源546が周波数変更可能な交流信号源に置き換えられ、帯域通過フィルタ5211及び5222の各々には、内部抵抗測定用の帯域通過フィルタとは別に静電容量測定用の帯域通過フィルタと両者を切り替えるフィルタ切替器とが設けられる。
このような回路構成においてコントロールユニット6は、燃料電池スタック1の運転状態に応じて、交流電流I1及びI2の周波数を変更する周波数変更指令信号をインピーダンス測定装置5の演算部550に出力する。
例えば、コントロールユニット6は、燃料電池スタック1の発電電力が大きく変化する場合や燃料電池スタック1の停止処理を実行する場合、すなわち燃料電池スタック1内で水素欠乏が発生する可能性がある場合に周波数変更指令信号を演算部550に出力する。
そして演算部550は、周波数変更指令信号を切替制御部580に供給する。これにより、切替制御部580は、電流調整部540内に設けられた周波数変更可能な交流信号源の周波数を、周波数変更指令信号に示された指定周波数に変更する。これと共に切替制御部580は、図10や図13などに示されているように帯域通過フィルタ5211及び5221を制御して、周波数変更指令信号に示された指定周波数に対応する帯域通過フィルタにフィルタ切替器を切り替える。このとき、正極側検出部521及び負極側検出部522が有する周波数特性が原因で正極側検出部521及び負極側検出部522の信号伝達感度や位相シフト量が変わる。
この対策として演算部550は、コントロールユニット6から周波数変更信号を受信した場合には、周波数変更指令信号に応じて交流電流I1及びI2の周波数を設定した後、診断実行信号を切替制御部580に出力するようにしてもよい。
これにより、交流電流I1及びI2の周波数変更に伴う正極側検出部521及び負極側検出部522の周波数特性の変化に起因する測定精度の低下を抑制することができる。したがって、交流電流I1及びI2の測定周波数全域において一定の測定精度を確保できる。この例ではインピーダンス測定装置5は、燃料電池スタック1が有する抵抗成分と静電容量成分とを測定する。そのため、抵抗素子とコンデンサ素子とが並列に接続されたインピーダンス素子を診断素子として用いることで、抵抗素子及びコンデンサ素子を別々に設けて切替器で切り替える回路構成に比べて、簡易な回路構成で抵抗成分と静電容量成分とを診断できる。
また、本実施形態では演算部550は、インピーダンス測定装置5で測定状態の診断を実行している間は、診断中である旨を示すステータス信号と共に、診断直前に測定された内部抵抗Rの測定値を測定結果としてコントロールユニット6に送信してもよい。これにより、コントロールユニット6は、燃料電池スタック1の湿潤状態の制御を継続することができる。
また、コントロールユニット6は、診断中である旨を示すステータス信号を受信している期間に、運転者によってアクセルが踏まれて負荷3から発電電力の増加が要求された場合には、予め定められた範囲内に燃料電池スタック1の発電電力を制限してもよい。これにより、例えば燃料電池スタック1が乾燥しやすい状態で発電性能が低下するのを回避することができる。
また、本実施形態では演算部550は、燃料電池スタック1の温度又は周囲温度に応じて、診断実行信号を切替制御部580に出力することにより、インピーダンス測定装置5の測定状態を診断するようにしてもよい。
燃料電池スタック1の内部抵抗Rは、燃料電池スタック1の温度又は周囲温度に応じて変化する。例えば、氷点温度よりも低い零下環境では、燃料電池スタック1内の生成水が氷になり、その氷によって発電セル10同士の間隔が広がり、内部抵抗Rが例えば100mΩ程度まで大きくなる。
一方、車両の走行中においては、積層電池の放電に伴う発熱や、燃料電池スタック1内に生成される水によって電導率が上昇するため、零下環境のときに比べて燃料電池スタック1の内部抵抗Rは、10分の1まで低下する場合がある。
このように、燃料電池スタック1の温度変化が大きくなるほど、内部抵抗Rも大きく変わるため、等電位制御によって交流電流I1及びI2が大きく変化し、正極側電源部531や正極側検出部521などの電子部品の特性も変化する。このように、燃料電池スタック1の温度変化が大きくなるほど、インピーダンス測定装置5の測定誤差が拡大するため、燃料電池スタック1の温度又は周囲温度が大きく急変するような状況では、インピーダンス測定装置5の測定精度が大きく低下する。
この対策として演算部550は、燃料電池スタック1の温度又は周囲温度が、段階的に設定された温度閾値を超えるたびに、診断実行信号を切替制御部580に出力するようにしてもよい。
具体的には、所定の温度範囲ごとに設定された複数の温度閾値がメモリ559に記録される。温度範囲は、電子回路の温度係数などによって決定される。例えば、温度範囲が25℃に設定された場合には、第1温度閾値が−25℃に設定され、第2温度閾値が0℃に設定され、第3温度閾値が25℃に設定され、第4温度閾値が50℃に設定される。
また、診断素子661及び662の温度変化が大きくなるほど、診断素子661及び662が有する抵抗も変化することから、診断素子661及び662の温度に応じた抵抗値の特性を示す温度特性情報が、メモリ559に記録される。
演算部550は、図2に示されるように、コントロールユニット6を介して温度センサ62から燃料電池スタック1の周囲温度を取得する。演算部550は、その燃料電池スタック1の周囲温度が、第1温度閾値から第4温度閾値までのいずれかの温度閾値に達すると、診断実行信号を切替制御部580に出力する。
これと共に演算部550は、メモリ559に記憶された温度特性情報を参照して、周囲温度に対応付けられた診断素子661及び662の抵抗値を基準値Ref11及びRef12として算出する。これにより、診断素子661及び662の基準値Ref11及びRef12が補正される。
そして、演算部550は、切替制御部580によって切替部670が素子接続状態に切り替えられたときに、例えば正極側の交流電流I1及び交流電位差V1に基づいて診断素子661及び662の抵抗を求める。演算部550は、その診断素子661及び662の抵抗の測定値と、燃料電池スタック1の周囲温度によって補正された基準値Ref11及びRef12とを用いて、正極側の測定誤差を補正する補正係数を演算する。
診断処理が終了した後、切替制御部580によって切替部670が電池接続状態に切り替えられたときに、演算部550は、燃料電池スタック1の内部抵抗R1を演算する。そして演算部550は、内部抵抗R1の測定値Rmと、診断時に演算された補正係数とを用いて、式(3)のとおり、内部抵抗R1の測定値Rmを測定値Rcに補正する。
なお、温度センサ62で検出される周囲温度に代えて、燃料電池スタック1の冷却水温度センサ(不図示)から出力される検出信号を燃料電池スタック1の温度として用いてもよい。冷却水温度センサは、燃料電池スタック1を流れる冷却水の温度を検出するものである。
このように、診断素子661及び662の周囲温度に応じて診断素子661及び662の基準値Ref11及びRef12を補正することにより、周囲温度が大きく変化しても、診断素子661及び662の測定誤差を正確に測定することができる。
このような状態で、燃料電池スタック1の温度や周囲温度の変動幅が所定の温度範囲を超えるたびに、演算部550が診断処理を実行して補正係数を更新することにより、温度変化に伴う燃料電池スタック1の内部抵抗の測定誤差の拡大を抑制することができる。このため、インピーダンス測定装置5は、温度変化が大きい環境であっても、測定誤差が小さい高価な回路を用いることなく、高い測定精度を維持することができる。
上述のように燃料電池スタック1の発電電力を制限するような場合においては、コントロールユニット6は、運転者が見える位置に設けられた表示部に燃料電池スタック1の発電電力を制限している旨の表示を点灯させてもよい。これにより、アクセルの踏み込み量に対する車両の応答不足によって運転者が感じる違和感を軽減することができる。なお、表示部は、コントロールユニット6に設けられても良い。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では、インピーダンス測定装置5により燃料電池スタック1の内部インピーダンスを測定する例について説明したが、測定対象は、複数の電池セルが積層された積層電池であればよく、例えば積層型のリチウムイオンバッテリーであってもよい。
また、正極側及び負極側の内部抵抗が殆ど変動しないリチウムイオンバッテリーであれば、インピーダンス測定装置5の回路構成を簡略化してもよい。例えば、交流調整部540を省略して電源部531及び532からは、振幅と位相が一致した交流電流I1及びI2を固定的に出力する。また検出部521及び522の一方を省略して他方の検出部(例えば正極側検出部521)のみで検出される交流電位差(例えば交流電位差V1)と、その交流電位差を生じさせる交流電流(例えば交流電流I1)とを用いて内部抵抗を演算する。このような回路構成であっても、上記実施形態と同じような効果を得ることができる。
また、本実施形態では、中途点端子213が燃料電池スタック1の内部抵抗Rの中間に設けられ、交流調整部540によって交流電位差V1及びV2の振幅が同一の基準値Vsとなるように交流電流I1及びI2の振幅を制御する例について説明した。しかしながら、中途点端子213は、燃料電池スタック1の中間に位置する発電セル10から外れた発電セル10に設けられてもよい。この場合には、正極端子211に生じる交流電位と、負極端子に生じる交流電位とが一致すればよいので、中途点端子213が設けられた発電セル10の位置によって内部抵抗R1と内部抵抗R2との抵抗比を求め、その抵抗比に合わせて交流電位差V1及びV2の振幅の基準値を設定すればよい。
なお、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。