以下、図面等を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による燃料電池スタック10の分解斜視図である。
図1に示すように、燃料電池スタック10は、積層電池11と、一対の集電プレート12と、一対の絶縁プレート13と、一対のエンドプレート14と、匡体15と、を備える。
積層電池11は、複数枚の燃料電池セル1(単位電池)を積層して直列に接続したものである。
燃料電池セル1は、膜電極接合体(MEA)2aが中央部分に配置されたMEAプレート2と、MEAプレート2の一方の面側に配置される導電性のカソードセパレータ3と、MEAプレート2の他方の面側に配置される導電性のアノードセパレータ4と、から構成されている。
MEAプレート2は、薄い長方形の板状部材である。MEAプレート2は、プレート中央部分に配置されたMEA2aと、MEA2aを取り囲むように形成された絶縁体としてのフレーム2bと、を一体化させた部材である。
MEAプレート2を構成するMEA2aは、電解質膜の一面側にカソード電極層を重ね合わせ、他面側にアノード電極層を重ね合わせた部材である。MEA2aのカソード電極層に酸素を含有するカソードガスを供給し、アノード電極層に水素を含有するアノードガスを供給することで、カソード電極層とアノード電極層との間に1ボルト程度の電位差が生じる。
カソードセパレータ3は、薄い長方形状の導電性金属板である。カソードセパレータ3は、その中央部分がMEA2aと接するように構成されている。以下では、必要に応じてMEA2aと接するカソードセパレータ3の中央部分を「MEA接触領域3a」といい、その周囲の部分を「MEA非接触領域3b」という。
カソードセパレータ3のMEAプレート2側の面にはカソードセパレータ3の長手方向に伸びる複数の溝が形成されており、これら溝はMEA2aにカソードガスを供給するカソードガス流路として機能する。
アノードセパレータ4も、薄い長方形状の導電性金属板であって、カソードセパレータ3と同様の形状を有している。
アノードセパレータ4のMEAプレート2側の面にはアノードセパレータ4の長手方向に伸びる複数の溝が形成されており、これら溝がMEA2aにアノードガスを供給するアノードガス流路として機能する。
積層電池11を構成した場合には、隣接する燃料電池セル1において、一方の燃料電池セル1のカソードセパレータ3と他方の燃料電池セル1のアノードセパレータ4とが重ね合わせられる。カソードセパレータ3及びアノードセパレータ4のそれぞれの対向面には長手方向に伸びる複数の溝が形成されており、セパレータ3,4が重ね合わされた状態ではこれら溝はカソードセパレータ3及びアノードセパレータ4との間に冷却水を流す冷却水流路として機能する。
一対の集電プレート12は、積層電池11の外側にそれぞれ配置される。集電プレート12は、薄い長方形状の板状部材であり、例えば緻密質カーボン等のガス不透過性の導電性部材で形成される。集電プレート12は、積層電池11の発電電力を取り出すための出力端子121を備えている。一方の集電プレート12が積層電池11の正極を構成し、他方の積層電池11の集電プレート12が負極を構成する。
絶縁プレート13は、集電プレート12の外側に配置される。絶縁プレート13は、薄い長方形状の板状部材であり、例えばゴム等の絶縁性部材で形成される。絶縁プレート13は、集電プレート12の出力端子121を外側に突出させるための貫通孔13aを有している。
エンドプレート14は、絶縁プレート13の外側に配置される。エンドプレート14は、薄い長方形状の板状部材であり、例えば鋼などの剛性のある金属により形成される。エンドプレート14は、集電プレート12の出力端子121を外側に突出させるための貫通孔14aを有している。
匡体15は、上面板151と、下面板152と、一対の側面板153とから構成される枠体である。匡体15は、箱状に形成されることにより、積層電池11、集電プレート12、絶縁プレート13及びエンドプレート14を積層した状態で保持する。
上記のように燃料電池スタック10を構成するMEAプレート2、カソードセパレータ3、アノードセパレータ4、正極側の集電プレート12、正極側の絶縁プレート13、及び正極側のエンドプレート14は、それらの長手方向一端側(図中左側)に、それぞれカソードガス供給マニホールド21a、冷却水供給マニホールド22a、及びアノードガス排出マニホールド23bを備えている。また、MEAプレート2、カソードセパレータ3、アノードセパレータ4、正極側の集電プレート12、正極側の絶縁プレート13、及び正極側のエンドプレート14は、それらの長手方向他端側(図中右側)に、それぞれアノードガス供給マニホールド23a、冷却水排出マニホールド22b、及びカソードガス排出マニホールド21bを備えている。
なお、図1では、正極側のエンドプレート14のみに各マニホールドに対応する符号を記載しており、それら以外の部材には各マニホールドに対応する符号の記載を省略している。
これら部材に形成された各マニホールド21a,21b,22a,22b,23a,23bは、燃料電池スタック10が組み立てられた時にそれぞれ一本の通路を構成する。そして、燃料電池スタック10の外部からカソードガス供給マニホールド21aに導入されたカソードガスは、各カソードセパレータ3のカソードガス流路に分配される。発電に利用されなかったカソードガスは、カソードガス流路からカソードガス排出マニホールド21bに導かれ、当該カソードガス排出マニホールド21bを通じて燃料電池スタック10の外部に排出される。
また、燃料電池スタック10の外部からアノードガス供給マニホールド23aに導入されたアノードガスは、各アノードセパレータ4のアノードガス流路に分配される。発電に利用されなかったアノードガスは、アノードガス流路からアノードガス排出マニホールド23bに導かれ、当該アノードガス排出マニホールド23bを通じて燃料電池スタック10の外部に排出される。
さらに、燃料電池スタック10の外部から冷却水供給マニホールド22aに導入された冷却水は、セパレータ3,4間の冷却水流路に分配される。冷却水流路を通過した冷却水は、冷却水排出マニホールド22bを通じて燃料電池スタック10の外部に排出される。
図2を参照して、燃料電池スタック10を搭載した車両の燃料電池システム100について説明する。
図2に示すように、車両用の燃料電池システム100は、燃料電池スタック10と、電流センサ91と、電圧センサ92と、駆動モータ20と、インバータ30と、バッテリ40と、補機類50と、DC/DCコンバータ60と、インピーダンス測定装置70と、コントローラ90と、を備える。なお、図2では、燃料電池スタック10に対してカソードガス、アノードガス、及び冷却水の給排を行う給排装置については図示を省略した。
電流センサ91は、燃料電池スタック10から取り出される電流(出力電流)を検出するセンサである。電圧センサ92は、集電プレート12の出力端子121間の電圧(出力電圧)を検出するセンサである。これらセンサ91,92の検出信号はコントローラ90に対して出力される。
駆動モータ20は、ロータ及びステータから構成される三相交流同期モータである。駆動モータ20は、燃料電池スタック10及びバッテリ40から電力の供給を受けて回転駆動する電動機としての機能と、車両の減速時等にロータが外力によって回転させられることで発電する発電機としての機能と、を有する。
インバータ30は、例えばIGBT等の複数の半導体スイッチから構成される。インバータ30の半導体スイッチは、コントローラ90によってオンオフ制御され、これにより直流電力が交流電力に、又は交流電力が直流電力に変換される。インバータ30は、駆動モータ20を電動機として機能させる時は、燃料電池スタック10の発電電力とバッテリ40の出力電力との合成直流電力を三相交流電力に変換して駆動モータ20に供給する。一方で、駆動モータ20を発電機として機能させる時は、駆動モータ20の回生電力(三相交流電力)を直流電力に変換してバッテリ40に供給する。
バッテリ40は、充放電可能な二次電池である。バッテリ40は、燃料電池スタック10の出力電力の余剰分及び駆動モータ20の回生電力を充電する。バッテリ40に充電された電力は、必要に応じて補機類50や駆動モータ20に供給される。補機類50は、燃料電池スタック10にカソードガスを圧送するコンプレッサや、冷却水を加熱するPTCヒータ等である。
DC/DCコンバータ60は、燃料電池スタック10の出力電圧を昇降圧させる双方向性の電圧変換機である。DC/DCコンバータ60によって燃料電池スタック10の出力電圧を制御することで、燃料電池スタック10の出力電流が制御される。
インピーダンス測定装置70は、燃料電池スタック10の積層電池11にインピーダンス測定用の交流電流を流して積層電池11のインピーダンス(内部抵抗)Rmを測定する装置である。このように、インピーダンス測定装置70は、積層電池11から出力される交流信号に基づいてインピーダンス測定を実行するように構成されている。なお、インピーダンスRmは、各燃料電池セル1の電解質膜抵抗の合計値として測定される。
燃料電池スタック10を高効率で発電させるためには、燃料電池セル1の電解質膜の湿潤状態(含水率)を適切な状態に管理する必要がある。燃料電池セル1の電解質膜の湿潤状態は、積層電池11のインピーダンスRmと相関関係にあることが知られている。そのため、積層電池11のインピーダンスRmを求めることで、電解質膜の湿潤状態を把握することができる。
コントローラ90は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ90には、電流センサ91及び電圧センサ92の検出信号や、インピーダンス測定装置70の出力信号のほか、燃料電池システム100を制御するために必要な各種センサの出力信号が入力する。
コントローラ90は、これら信号に基づいて、燃料電池スタック10に供給するカソードガス及びアノードガスの流量や圧力、冷却水の流量や温度等を制御する。例えば、コントローラ90は、燃料電池セル1の電解質膜の湿潤状態が発電に適した状態となるように、インピーダンス測定装置70で測定されたインピーダンスに基づいて、燃料電池スタック10に供給するカソードガスの流量や圧力、冷却水の温度を制御する。
上記したインピーダンス測定装置70は、電気配線を介して燃料電池スタック10の積層電池11に接続されている。
積層電池11の正極となる集電プレート12には正極側ソース端子7a及び正極側センス端子7bが形成されており、積層電池11の負極となる集電プレート12には負極側ソース端子8a及び負極側センス端子8bが形成されている。また、積層電池11の積層方向の中途部位に位置する燃料電池セル1のカソードセパレータ3には、第1中間ソース端子9a及び第2中間ソース端子9bと、中間センス端子9cとが形成されている。インピーダンス測定装置70からの電気配線は、これら端子7a,7b,8a,8b,9a,9b,9cに接続されている。
ソース端子7a,8a,9a,9bはインピーダンス測定用の交流電流を入出力するための端子であり、センス端子7b,8b,9cはインピーダンス測定用の交流電位を検出するための端子である。
上述の通り、中途部位に位置する燃料電池セル1のカソードセパレータ3は、図3に示すように、第1中間ソース端子9a、第2中間ソース端子9b、及び中間センス端子9cを備えている。
中途部位に位置する燃料電池セル1のカソードセパレータ3は、MEA2aと接触するMEA接触領域3aと、当該MEA接触領域3aの周囲に位置するMEA非接触領域3bとを有している。カソードセパレータ3の一端側(左端側)のMEA非接触領域3bには、カソードガス供給マニホールド21a、冷却水供給マニホールド22a、及びアノードガス排出マニホールド23bが上下方向に沿って並設されている。カソードセパレータ3の他端側(右端側)のMEA非接触領域3bには、アノードガス供給マニホールド23a、冷却水排出マニホールド22b、及びカソードガス排出マニホールド21bが上下方向に沿って並設されている。
第1中間ソース端子9a及び中間センス端子9cは、カソードセパレータ3の一端部(左端)から外側に突出するように形成されており、アノードガス排出マニホールド23bの側方に配置されている。第1中間ソース端子9a及び中間センス端子9cは、上下方向に並んで設けられている。これに対して、第2中間ソース端子9bは、カソードセパレータ3の他端部(右端)から外側に突出するように形成されており、アノードガス供給マニホールド23aの側方に配置されている。
このように本実施形態では、第1中間ソース端子9a及び中間センス端子9cは、カソードガス排出マニホールド21bよりもカソードガス供給マニホールド21a寄りの位置に配置されている。第2中間ソース端子9bは、カソードガス供給マニホールド21aよりもカソードガス排出マニホールド21b寄りの位置に配置されている。
次に、図4を参照して、積層電池11のインピーダンス測定装置70の詳細について説明する。
インピーダンス測定装置70は、第1交流電源部71と、第2交流電源部72と、第1電位差検出部73と、第2電位差検出部74と、交流調整部75と、演算部76と、を備え、ソースライン及びセンスラインを介して積層電池11に接続されている。
ソースラインは、積層電池11に対し、インピーダンス測定装置70で発生させた交流電流I1、I2の入出力を行うための配線である。ソースラインは、正極ソースライン77a、負極ソースライン77b、第1中間ソースライン77c、及び第2中間ソースライン77dの4本で構成される。
センスラインは、積層電池11に対して交流電流I1、I2の入出力を行った時に、正極側センス端子7b、負極側センス端子8b、及び中間センス端子9cにおける交流電位を、インピーダンス測定装置70に入力するための配線である。センスラインは、正極センスライン78a、負極センスライン78b、及び中間センスライン78cの3本で構成される。
正極ソースライン77aの一端は積層電池11の正極側ソース端子7aに接続され、正極ソースライン77aの他端は電気線79aを介して第1交流電源部71に接続される。負極ソースライン77bの一端は積層電池11の負極側ソース端子8aに接続され、負極ソースライン77bの他端は電気線79bを介して第2交流電源部72に接続される。
第1中間ソースライン77cの一端は積層電池11の第1中間ソース端子9aに接続され、第2中間ソースライン77dの一端は積層電池11の第2中間ソース端子9bに接続される。そして、第1中間ソースライン77c及び第2中間ソースライン77dの他端は、インピーダンス測定装置70に設けられた切換スイッチ80(切換部)に接続される。第1中間ソースライン77c及び第2中間ソースライン77dの一方は、切換スイッチ80により電気線79cに接続され、当該電気線79cを介して基準電位点となる接地端子に接続される。
このように切換スイッチ80は、中間ソース端子接続状態を、インピーダンス測定装置70と第1中間ソース端子9aが接続される第1接続状態と、インピーダンス測定装置70と第2中間ソース端子9bとが接続される第2接続状態とに切り換えられるように構成されている。
正極センスライン78aの一端は積層電池11の正極側センス端子7bに接続され、正極センスライン78aの他端は電気線79dを介して第1電位差検出部73に接続される。負極センスライン78bの一端は積層電池11の負極側センス端子8bに接続され、負極センスライン78bの他端は電気線79eを介して第2電位差検出部74に接続される。中間センスライン78cの一端は積層電池11の中途部位に設けられた中間センス端子9cに接続され、中間センスライン78cの他端は電気線79fを介して第1電位差検出部73及び第2電位差検出部74のそれぞれに接続される。
電気線79a〜79fは、それぞれインピーダンス測定装置70の内部配線である。各電気線79a〜79fには、直流電流を遮断して交流電流のみを流す直流遮断器93が設けられる。本実施形態では直流遮断器93としてコンデンサを使用しているが、トランス等を使用してもよい。
第1交流電源部71は、交流調整部75から出力された第1指令電圧Vi1に応じて交流電流を生成する電源である。第1交流電源部71は、第1指令電圧Vi1に基づいて、積層電池11の正極側ソース端子7aと第1中間ソース端子9a又は第2中間ソース端子9bとの間に流し込む交流電流I1を生成する。交流電流I1の周波数は、インピーダンス測定用の基準周波数fbに設定されている。
第2交流電源部72は、交流調整部75から出力された第2指令電圧Vi2に応じて交流電流を生成する電源である。第2交流電源部72は、第2指令電圧Vi2に基づいて、積層電池11の負極側ソース端子8aと第1中間ソース端子9a又は第2中間ソース端子9bとの間に流し込む交流電流I2を生成する。交流電流I2の周波数は、インピーダンス測定用の基準周波数fbに設定されている。
第1電位差検出部73は、差動アンプである。第1電位差検出部73には、正極側センス端子7bにおける交流電位Vcが入力され、中間センス端子9cにおける交流電位Vmが入力される。第1電位差検出部73は、正極側センス端子7bの電位Vcと中間センス端子9cの電位Vmの電位差を検出して、この電位差を正極側交流電圧V1として出力する。
第2電位差検出部74は、差動アンプである。第2電位差検出部74には、負極側センス端子8bにおける交流電位Vaが入力され、中間センス端子9cにおける交流電位Vmが入力される。第2電位差検出部74は、負極側センス端子8bの電位Vaと中間センス端子9cの電位Vmの電位差を検出して、この電位差を負極側交流電圧V2として出力する。
交流調整部75には、第1電位差検出部73から出力された正極側交流電圧V1、及び第2電位差検出部74から出力された負極側交流電圧V2が入力される。交流調整部75は、これら2つの入力電圧に基づいて、第1交流電源部71に対する第1指令電圧Vi1及び第2交流電源部72に対する第2指令電圧Vi2を出力する。つまり、交流調整部75は、これら2つの入力電圧の値が一致するように第1指令電圧Vi1及び第2指令電圧Vi2を調整する。第1指令電圧Vi1及び第2指令電圧Vi2を調整することで、第1交流電源部71及び第2交流電源部72から出力される交流電流I1、I2の振幅が制御される。
正極側交流電圧V1と負極側交流電圧V2とを一致させるということは、正極側センス端子7bにおける電位Vcと負極側センス端子8bにおける電位Vaとの差をゼロにするということである。すなわち、正極側交流電圧V1と負極側交流電圧V2とを一致させれば、インピーダンス測定装置70によって積層電池11に交流電流の入出力を行っても、インピーダンス測定用の交流電流が駆動モータ20や補機類50等に漏れ出ることがなく、駆動モータ20等の動作に悪影響を及ぼすことを防止できる。
図5に示すように、交流調整部75は、基準電圧源750と、交流信号源751と、第1検波回路752と、第1減算器753と、第1積分回路754と、第1乗算器755と、第2検波回路756と、第2減算器757と、第2積分回路758と、第2乗算器759と、を備える。
基準電圧源750は、0ボルトを基準に定められた所定の電位差(基準電圧)Vsを発生させる定電圧源である。基準電圧Vsは、正極側交流電圧V1及び負極側交流電圧V2の目標値である。交流調整部75は、正極側交流電圧V1及び負極側交流電圧V2を基準電圧Vsに収束させるPI制御回路として構成されている。
交流信号源751は、第1乗算器755及び第2乗算器759に入力する基準周波数fbの小振幅の交流信号を発生させる電源である。基準周波数fbは、積層電池11のインピーダンス測定に適した周波数に設定される。
第1検波回路752には、第1電位差検出部73の出力信号である正極側交流電圧V1が入力される。第1検波回路752は、正極側交流電圧V1を直流電圧V1dに変換して出力する。第1検波回路752は、例えば正極側交流電圧V1の実効値又は平均値を直流電圧V1dとして出力する。
第1減算器753には、第1検波回路752から出力された直流電圧V1dと、基準電圧Vsと、が入力される。第1減算器753は、直流電圧V1d及び基準電圧Vsの電圧差を出力する。
第1積分回路754には、第1減算器753から出力された電圧差が入力される。第1積分回路754は、入力された電圧差の積分値を出力する。
第1乗算器755には、第1積分回路754から出力された積分値と、交流信号源751から出力された交流信号と、が入力される。第1乗算器755は、入力された積分値に交流信号を掛け合わせた値を、第1交流電源部71に入力する第1指令電圧Vi1として出力する。第1指令電圧Vi1は、正極側交流電圧V1を基準電圧Vsに収束させる交流電流を、第1交流電源部71から出力させるための指令値である。
第2検波回路756には、第2電位差検出部74の出力信号である負極側交流電圧V2が入力される。第2検波回路756は、負極側交流電圧V2を直流電圧V2dに変換して出力する。第2検波回路756は、例えば負極側交流電圧V2の実効値又は平均値を直流電圧V2dとして出力する。
第2減算器757には、第2検波回路756から出力された直流電圧V2dと、基準電圧Vsと、が入力される。第2減算器757は、直流電圧V2d及び基準電圧Vsの電圧差を出力する。
第2積分回路758には、第2減算器757から出力された電圧差が入力される。第2積分回路758は、入力された電圧差の積分値を出力する。
第2乗算器759には、第2積分回路758から出力された積分値と、交流信号源751から出力された交流信号と、が入力される。第2乗算器759は、入力された積分値に交流信号を掛け合わせた値を、第2交流電源部72に入力する第2指令電圧Vi2として出力する。第2指令電圧Vi2は、負極側交流電圧V2を基準電圧Vsに収束させる交流電流を、第2交流電源部72から出力させるための指令値である。
図4に戻り、インピーダンス測定装置70の演算部76について説明する。
演算部76は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。
演算部76には、第1交流電源部71の出力信号である交流電流I1と、第2交流電源部72の出力信号である交流電流I2と、第1電位差検出部73の出力信号である正極側交流電圧V1と、第2電位差検出部74の出力信号である負極側交流電圧V2と、が入力される。演算部76は、これら4つの入力値を用い、以下の(1)式に基づいて積層電池11のインピーダンスを演算する。演算部76は、演算したインピーダンスRに基づいてインピーダンス測定値を設定し、設定されたインピーダンス測定値をコントローラ90に出力する。コントローラ90は、インピーダンス測定値に基づいて積層電池11の電解質膜の湿潤状態を推定する。
このようにインピーダンス測定装置70は、いわゆる交流ブリッジ法によって積層電池11のインピーダンスを測定する装置である。つまり、インピーダンス測定装置70は、積層電池11に対して交流電流を流し、正極側交流電圧V1と負極側交流電圧V2とが一致するように交流電流を調整して、各交流電源部71,72から出力された交流電流及び各電位差検出部73,74で検出された交流電圧に基づき積層電池11のインピーダンスを演算する。
上記したインピーダンス測定装置70は、交流電流を入出力するためのソース端子7a,8a,9a,9b及び交流電位の検出に使用されるセンス端子7b,8b,9cを介して、積層電池11に接続されている。特に、積層電池11の中途部位に位置する燃料電池セル1のカソードセパレータ3には、図3に示したように、2つのソース端子(第1及び第2中間ソース端子9a,9b)と1つのセンス端子(中間センス端子9c)が設けられている。そして、本実施形態では、切換スイッチ80を用いて、中間ソース端子接続状態がインピーダンス測定装置70と第1中間ソース端子9aが接続される第1接続状態と、インピーダンス測定装置70と第2中間ソース端子9bとが接続される第2接続状態とに切り換えられる。なお、第1及び第2中間ソース端子9a,9b以外の端子7a,7b,8a,8b,9cとインピーダンス測定装置70とは、常時接続されている。
次に、図6A及び図6Bを参照して、第1接続状態及び第2接続状態でのインピーダンス測定用の交流電流の経路について説明する。
図6Aに示すように、インピーダンス測定装置70による測定時に中間ソース端子接続状態が第1接続状態となっている場合、正極である集電プレート12と中途部位における燃料電池セル1のカソードセパレータ3との間、及び負極である集電プレート12と中途部位における燃料電池セル1のカソードセパレータ3との間に、複数の交流電流の経路が形成される。第1中間ソース端子9aは比較的電気抵抗の大きいセパレータに形成されているため、インピーダンス測定用の交流電流は第1中間ソース端子9a寄りの位置を通過することとなり、図6Aの矢印で示すように、交流電流の経路は第1中間ソース端子9a側に偏って密となる。
したがって、図6Aに示すような交流電流の経路となる第1接続状態では、インピーダンス測定装置70により測定される積層電池11のインピーダンスに、第1中間ソース端子9aに近い位置における電解質膜の湿潤状態の影響が反映されることとなる。換言すれば、第1接続状態で測定されたインピーダンスには、破線領域R1における各燃料電池セル1の電解質膜の湿潤状態情報はほとんど含まれない。
一方、図6Bに示すように、インピーダンス測定装置70による測定時に中間ソース端子接続状態が第2接続状態となっている場合、正極である集電プレート12と中途部位における燃料電池セル1のカソードセパレータ3との間、及び負極である集電プレート12と中途部位における燃料電池セル1のカソードセパレータ3との間に、複数の交流電流の経路が形成される。この状態では、図6Bの矢印で示すように、交流電流の経路は第1中間ソース端子9a近傍ではなく第2中間ソース端子9b近傍に偏って密となる。
したがって、図6Bに示すような交流電流の経路となる第2接続状態では、インピーダンス測定装置70により測定される積層電池11のインピーダンスに、第2中間ソース端子9bに近い位置における電解質膜の湿潤状態の影響が反映されることとなる。換言すれば、第2接続状態で測定されたインピーダンスには、破線領域R2における各燃料電池セル1の電解質膜の湿潤状態情報はほとんど含まれない。
このようにインピーダンス測定装置70によれば、切換スイッチ80により中間ソース端子接続状態を第1接続状態又は第2接続状態に切り換えることで、積層電池11内における異なる領域、つまり燃料電池セル1の電解質膜の面方向において異なる位置、の電解質膜状態情報(湿潤状態情報)を含むインピーダンスを測定することができる。
次に、図7を参照して、インピーダンス測定装置70によるインピーダンス測定制御について説明する。インピーダンス測定制御は、インピーダンス測定装置70の演算部76により、所定の測定タイミングで実行される。
ステップ101(S101)では、演算部76は、中間ソース端子接続状態が第1接続状態に設定されるように切換スイッチ80を制御する。これにより、切換スイッチ80を介して、インピーダンス測定装置70と、積層電池11の中途部位における第1中間ソース端子9aとが接続される。
S102では、演算部76は、第1交流電源部71から出力される交流電流I1、第2交流電源部72から出力される交流電流I2、第1電位差検出部73から出力される正極側交流電圧V1、及び第2電位差検出部74から出力される負極側交流電圧V2に基づき、第1接続状態における積層電池11のインピーダンスR1を算出する。演算部76は、第1接続状態でのインピーダンスR1の算出後、S103の処理を実行する。
S103では、演算部76は、S102で算出したインピーダンスR1が予め定められた下限値Raよりも大きいか否かを判定する。
下限値Raは、第1接続状態で算出したインピーダンスR1をそのままインピーダンス測定値として使用してもよいか否かを判定するための閾値であって、システム適合試験や実験により予め定められた値である。
外気をカソードガスとして積層電池11に供給する燃料電池システム100では、カソードガスが比較的乾燥しているため、各燃料電池セル1の電解質膜におけるカソードガス供給マニホールド21a寄りの領域がその他の領域よりも乾燥しやすい。そのため、カソードガス供給マニホールド21a寄りの位置にある第1中間ソース端子9aを用いて測定されたインピーダンスにより積層電池11の湿潤状態を推定すると、積層電池11全体として電解質膜が適度な湿潤状態に維持されている場合であっても、ドライ状態であると判定されてしまうことがある。下限値Raは、積層電池の湿潤状態がドライ状態であると誤判定されることを防止するために設定される閾値である。
S103においてインピーダンスR1が下限値Ra(所定値)以下であると判定された場合には、演算部76はS104の処理を実行する。S104では、演算部76は、S102で算出した第1接続状態でのインピーダンスR1をインピーダンス測定値Rmとして設定する。その後、演算部76は、インピーダンス測定値Rmをコントローラ90に送信する。コントローラ90は、インピーダンス測定値Rmに基づいて積層電池11における湿潤状態を判定し、湿潤状態に応じて必要となる湿潤制御等を実行する。
一方、S103においてインピーダンスR1が下限値Ra(所定値)より大きいと判定された場合には、演算部76はS105の処理を実行する。S105では、演算部76は、中間ソース端子接続状態が第2接続状態に設定されるように切換スイッチ80を制御する。これにより、切換スイッチ80を介して、インピーダンス測定装置70と、積層電池11の中途部位における第2中間ソース端子9bとが接続される。
S106では、演算部76は、第1交流電源部71から出力される交流電流I1、第2交流電源部72から出力される交流電流I2、第1電位差検出部73から出力される正極側交流電圧V1、及び第2電位差検出部74から出力される負極側交流電圧V2に基づき、第2接続状態における積層電池11のインピーダンスR2を算出する。演算部76は、第2接続状態でのインピーダンスR2の算出後、S107の処理を実行する。
S107では、演算部76は、第1接続状態でのインピーダンスR1及び第2接続状態でのインピーダンスR2を用い、以下の(2)式に基づいてインピーダンス測定値Rmを設定する。
(2)式における係数kは、第1接続状態でのインピーダンスR1の大きさに応じて定まる値である。
図8を参照して、係数kの決定の仕方について説明する。図8は、インピーダンスR1と係数kとの関係を示す特性図である。
図8に示すように、係数kは1よりも小さな値となる。さらに、係数kは、インピーダンスR1が下限値Raより大きくなるほど低下し、インピーダンスR1が上限値Rb以上となる領域では0に設定される。S107では、インピーダンス測定値Rmは、(2)式に示す通り、インピーダンスR1、インピーダンスR2、及び係数kに基づいて設定される。インピーダンスR1が上限値Rbを超えている場合には、インピーダンスR1とインピーダンスR2の平均値がインピーダンス測定値Rmとして設定される。
なお、上限値Rbは、積層電池11の電解質膜の湿潤状態をウェット側に制御するウェット制御を開始するために設定された閾値である。上限値Rbは、燃料電池セル1の製造ばらつきや劣化を考慮して定められている。
前述したように、第1接続状態で算出したインピーダンスR1が下限値Raを超えた場合、インピーダンスR1をそのままインピーダンス測定値Rmとして設定すると、湿潤状態の推定精度が低下する可能性がある。つまり、インピーダンスR1が電解質膜全体の湿潤状態を示す指標として正確性に欠けるおそれがある。
本実施形態では、インピーダンスR1が下限値Raを超えた場合、インピーダンス測定値Rmは、S107に示したように第1接続状態でのインピーダンスR1及び第2接続状態でのインピーダンスR2を用いて算出される。このように、インピーダンス測定値Rmを、カソードガス供給マニホールド21a寄りの位置における電解質膜の湿潤状態情報をほとんど含まないインピーダンスR2を加味して設定するので、湿潤状態の推定精度の低下を抑制することができる。
上述の通り、インピーダンスR1が下限値Raを超えた場合、中間ソース端子接続状態が切り換えられ、インピーダンス測定値RmはインピーダンスR1及びインピーダンスR2に基づいて設定される。しかしながら、インピーダンスR1が下限値Raを超えた場合、第2接続状態で算出されたインピーダンスR2をそのままインピーダンス測定値Rmとして設定してもよい。
上記した積層電池11のインピーダンス測定装置70によれば、以下の効果を得ることができる。
インピーダンス測定装置70は、積層電池11から出力される交流信号に基づいて積層電池11のインピーダンス測定を実行する装置である。より具体的には、インピーダンス測定装置70は、積層電池11に交流電流を出力する第1及び第2交流電源部71,72と、正極側の集電プレート12と積層電池11の中途部位との間の交流電位差を検出する第1電位差検出部73と、負極側の集電プレート12と積層電池11の中途部位との間の交流電位差を検出する第2電位差検出部74と、第1及び第2電位差検出部73,74により検出されたそれぞれの交流電位差と、第1及び第2交流電源部71,72から出力される交流電流とに基づいて、積層電池11のインピーダンスを演算する演算部76と、を備える。そして、積層電池11を構成する燃料電池セル1のカソードセパレータ3、つまり積層電池11の中途部位に位置する燃料電池セル1のカソードセパレータ3は、カソードガス供給マニホールド21a寄りの位置に設けられる第1中間ソース端子9a及び中間センス端子9cと、カソードガス排出マニホールド21b寄りの位置に設けられる第2中間ソース端子9bと、を備える。
このように、インピーダンス測定装置70に接続される積層電池11のカソードセパレータ3は、異なる位置に第1中間ソース端子9a及び第2中間ソース端子9bを備える。そのため、これら端子9a,9bを利用してインピーダンス測定を行うことで、積層電池11内における異なる領域の電解質膜状態情報(湿潤状態情報)を含む2つのインピーダンスを測定することが可能となる。その結果、積層電池11の電解質膜の面方向のインピーダンス分布を検出したり、積層電池11の湿潤状態の推定に最も適したインピーダンスを選択したりすることができ、インピーダンス測定結果をより有効に活用することができる。
インピーダンス測定装置70は、中間ソース端子接続状態を第1接続状態又は第2接続状態に切り換えるための切換スイッチ80をさらに備えている。このように切換スイッチ80により第1接続状態又は第2接続状態に切り換え、第1接続状態でのインピーダンス測定と第2接続状態でのインピーダンス測定を個別に実行するため、同時にインピーダンス測定を実行する装置と比較して、インピーダンス測定装置70の構成を簡素化することができる。
インピーダンス測定装置70の切換スイッチ80は、第1接続状態で算出されたインピーダンスR1が予め設定された下限値Raよりも大きい時に、中間ソース端子接続状態を第1接続状態から第2接続状態に切り換える。これにより、第1接続状態でのインピーダンスR1に基づく湿潤状態の推定精度が悪化するおそれがある場合に、第2接続状態でのインピーダンスR2を利用することで積層電池11における湿潤状態の推定精度を改善することができる。なお、第1接続状態でのインピーダンスR1と第2接続状態でのインピーダンスR2とを比較するように演算部76を構成すれば、これらインピーダンス測定の信頼性を判定することもできる。
インピーダンス測定装置70の演算部76は、第1接続状態において演算されたインピーダンスR1が下限値Ra以下である場合、当該インピーダンスR1をインピーダンス測定値Rmとして設定する。これに対して、演算部76は、第1接続状態において演算されたインピーダンスR1が下限値Raよりも大きい場合、第1接続状態で演算されたインピーダンスR1と第2接続状態で演算されたインピーダンスR2とに基づいてインピーダンス測定値Rmを設定する。このように、第1接続状態でのインピーダンスR1に基づく湿潤状態の推定精度が悪化するおそれがある場合には、電解質膜のカソードガス供給マニホールド21a寄りの位置における状態情報をほとんど含まないインピーダンスR2を加味してインピーダンス測定値Rmを設定するので、積層電池11における湿潤状態の推定精度を改善することが可能となる。
以下では、図9〜図15を参照し、本実施形態による積層電池11のインピーダンス測定装置70の各種変形例について説明する。これら変形例に関しては、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。
図9A〜図9Cは、第1変形例での端子接続状態の切り換えについて説明する図である。
図9Aに示すように、第1変形例では、中途部位における燃料電池セル1のカソードセパレータ3に、第1〜第3中間ソース端子191〜193と、1つの中間センス端子194とが形成される。
第1中間ソース端子191及び中間センス端子194は、カソードセパレータ3の左端から外側に突出するように形成されている。第1中間ソース端子191はカソードガス供給マニホールド21aの側方に配置されており、中間センス端子194はアノードガス排出マニホールド23bの側方に配置されている。
第2中間ソース端子192は、カソードセパレータ3の上端中央部分から上方に突出するように形成されている。
第3中間ソース端子193は、カソードセパレータ3の右端部から外側に突出するように形成されている。第3中間ソース端子193は、アノードガス供給マニホールド23aの側方に配置されている。
第1〜第3中間ソース端子191〜193は、インピーダンス測定装置70の切換スイッチ80を介して電気線79cに接続される。
切換スイッチ80は、中間ソース端子接続状態を、インピーダンス測定装置70と第1中間ソース端子191が接続される第1接続状態(図9A参照)、インピーダンス測定装置70と第2中間ソース端子192とが接続される第2接続状態(図9B参照)、及びインピーダンス測定装置70と第3中間ソース端子193とが接続される第3接続状態(図9C参照)のいずれかに切り換えられるように構成されている。なお、図9A〜図9Cに示すように、中間センス端子194は、インピーダンス測定装置70の電気線79fに常時接続されている。図9A〜図9Cにおいて、二重線に囲まれた端子は、インピーダンス測定装置70に接続されている端子を示している。
第1変形例によれば、インピーダンス測定装置70に接続される積層電池11の中途部位のカソードセパレータ3は、異なる位置に第1〜第3中間ソース端子191〜193を備える。そのため、これら端子191〜193を利用してインピーダンス測定を行うことで、積層電池11内における異なる領域の電解質膜状態情報(湿潤状態情報)を含む3つのインピーダンスを測定することが可能となる。その結果、積層電池11の電解質膜の面方向のインピーダンス分布を検出したり、湿潤状態の推定に最も適したインピーダンスを選択したりすることができ、インピーダンス測定結果をより有効に活用することができる。
また、第1変形例によれば、切換スイッチ80により中間ソース端子接続状態を第1接続状態、第2接続状態、又は第3接続状態に切り換えることで、第1〜第3接続状態でのインピーダンス測定を個別に実行することができる。したがって、同時にインピーダンス測定を実行する装置と比較して、インピーダンス測定装置70の構成を簡素化することができる。
第1変形例によれば、第1接続状態でのインピーダンスR1、第2接続状態でのインピーダンスR2、第3接続状態でのインピーダンスR3の3つのインピーダンスが算出される。インピーダンス測定装置70の演算部76は、中間ソース端子接続状態の切り換えごとに算出された3つのインピーダンスR1〜R3に基づいてインピーダンス測定値Rmを設定する。例えば、演算部76は、3つのインピーダンスR1〜R3に所定の演算を施すことでインピーダンス測定値Rmを設定する。演算部76は、3つのインピーダンスR1〜R3のいずれかをインピーダンス測定値Rmとして設定するように構成されてもよい。これにより、湿潤状態の推定に最も適したインピーダンス測定値Rmを設定することが可能となる。
なお、第1変形例によれば、中途部位における燃料電池セル1のカソードセパレータ3に、3つの中間ソース端子を形成したが、4以上の中間ソース端子を形成してもよい。この場合、切換スイッチ80は、インピーダンス測定装置70と4以上の中間ソース端子との接続状態が順番に切り換えられるように構成される。演算部76は、中間ソース端子接続状態の切り換えごとに算出された4以上のインピーダンスのうちの複数を用いてインピーダンス測定値Rmを設定したり、4以上のインピーダンスのいずれかをインピーダンス測定値Rmとして設定したりする。
図10A〜図10Cは、第2変形例での端子接続状態の切り換えについて説明する図である。
図10A〜図10Cに示すように、第2変形例では、中間センス端子194の形成位置が第1変形例における形成位置とは異なっている。つまり、中間センス端子194は、カソードセパレータ3の下端中央部分から下方に突出するように形成されている。
図10A〜図10Cにおいて、二重線に囲まれた端子はインピーダンス測定装置70に接続されている端子を示している。さらに、図10Aは第1接続状態を、図10Bは第2接続状態を、図10Cは第3接続状態をそれぞれ示している。
上記のように構成された第2変形例による積層電池11のインピーダンス測定装置70によっても、第1変形例と同様の効果を得ることができる。
図11A〜図11Cは、第3変形例での端子接続状態の切り換えについて説明する図である。
図11A〜図11Cに示すように、第3変形例では、中間センス端子194の形成位置が第1変形例における形成位置とは異なっている。つまり、中間センス端子194は、カソードセパレータ3の右端部から外側に突出するように形成されている。中間センス端子194は、カソードガス排出マニホールド21bの側方に配置されている。
図11A〜図11Cにおいて、二重線に囲まれた端子はインピーダンス測定装置70に接続されている端子を示している。さらに、図11Aは第1接続状態を、図11Bは第2接続状態を、図11Cは第3接続状態をそれぞれ示している。
上記のように構成された第3変形例による積層電池11のインピーダンス測定装置70によっても、第1変形例と同様の効果を得ることができる。
図12A〜図12Cは、第4変形例での端子接続状態の切り換えについて説明する図である。
図12Aに示すように、第4変形例では、中途部位における燃料電池セル1のカソードセパレータ3に、1つの中間ソース端子195と、第1〜第3中間センス端子196〜198とが形成される。
中間ソース端子195及び第1中間センス端子196は、カソードセパレータ3の左端から外側に突出するように形成されている。中間ソース端子195はカソードガス供給マニホールド21aの側方に配置されており、第1中間センス端子196はアノードガス排出マニホールド23bの側方に配置されている。
第2中間センス端子197は、カソードセパレータ3の下端中央部分から下方に突出するように形成されている。
第3中間センス端子198は、カソードセパレータ3の右端部から外側に突出するように形成されている。第3中間センス端子198は、カソードガス排出マニホールド21bの側方に配置されている。
インピーダンス測定装置70は切換スイッチ81をさらに備え、この切換スイッチ81を介して第1〜第3中間センス端子196〜198は電気線79fに接続される。
切換スイッチ81は、中間センス端子接続状態を、インピーダンス測定装置70と第1中間センス端子196が接続される第1接続状態(図12A参照)、インピーダンス測定装置70と第2中間センス端子197とが接続される第2接続状態(図12B参照)、及びインピーダンス測定装置70と第3中間センス端子198とが接続される第3接続状態(図12C参照)のいずれかに切り換えられるように構成されている。
なお、図12A〜図12Cに示すように、中間ソース端子195は、インピーダンス測定装置70の電気線79cに常時接続されている。このように第4変形例では、ソース端子は中間ソース端子195のみであるため、切換スイッチ80は設けられていない。図12A〜図12Cにおいて、二重線に囲まれた端子は、インピーダンス測定装置70に接続されている端子を示している。
第4変形例によれば、インピーダンス測定装置70に接続される積層電池11の中途部位のカソードセパレータ3は、異なる位置に第1〜第3中間センス端子196〜198を備える。そのため、これら端子196〜198を利用してインピーダンス測定を行うことで、積層電池11内における異なる領域の電解質膜状態情報(湿潤状態情報)を含む3つのインピーダンスを測定することが可能となる。その結果、積層電池11の電解質膜の面方向のインピーダンス分布を検出したり、湿潤状態の推定に最も適したインピーダンスを選択したりすることができ、インピーダンス測定結果をより有効に活用することができる。
また、第4変形例によれば、切換スイッチ81により中間センス端子接続状態を第1接続状態、第2接続状態、又は第3接続状態に切り換えることで、第1〜第3接続状態でのインピーダンス測定を個別に実行することができる。したがって、同時にインピーダンス測定を実行する装置と比較して、インピーダンス測定装置70の構成を簡素化することができる。
第4変形例によれば、第1接続状態でのインピーダンスR1、第2接続状態でのインピーダンスR2、第3接続状態でのインピーダンスR3の3つのインピーダンスが算出される。インピーダンス測定装置70の演算部76は、中間センス端子接続状態の切り換えごとに算出された3つのインピーダンスR1〜R3に基づいてインピーダンス測定値Rmを設定する。例えば、演算部76は、3つのインピーダンスR1〜R3に所定の演算を施すことでインピーダンス測定値Rmを設定する。演算部76は、3つのインピーダンスR1〜R3のいずれかをインピーダンス測定値Rmとして設定するように構成されてもよい。これにより、湿潤状態の推定に最も適したインピーダンス測定値Rmを設定することが可能となる。
なお、第4変形例によれば、中途部位における燃料電池セル1のカソードセパレータ3に、3つの中間センス端子を形成したが、4以上の中間センス端子を形成してもよい。この場合、切換スイッチ81は、インピーダンス測定装置70と4以上の中間センス端子との接続状態が順番に切り換えられるように構成される。演算部76は、中間センス端子接続状態の切り換えごとに算出された4以上のインピーダンスのうちの複数を用いてインピーダンス測定値Rmを設定したり、4以上のインピーダンスのいずれかをインピーダンス測定値Rmとして設定したりする。
図13A〜図13Cは、第5変形例での端子接続状態の切り換えについて説明する図である。
図13A〜図13Cに示すように、第5変形例では、中間ソース端子195の形成位置が第4変形例における形成位置とは異なっている。つまり、中間ソース端子195は、カソードセパレータ3の上端中央部分から上方に突出するように形成されている。
図13A〜図13Cにおいて、二重線に囲まれた端子はインピーダンス測定装置70に接続されている端子を示している。さらに、図13Aは第1接続状態を、図13Bは第2接続状態を、図13Cは第3接続状態をそれぞれ示している。
上記のように構成された第5変形例による積層電池11のインピーダンス測定装置70によっても、第4変形例と同様の効果を得ることができる。
図14A〜図14Cは、第6変形例での端子接続状態の切り換えについて説明する図である。
図14A〜図14Cに示すように、第6変形例では、中間ソース端子195の形成位置が第4変形例における形成位置とは異なっている。つまり、中間ソース端子195は、カソードセパレータ3の右端部から外側に突出するように形成されている。中間ソース端子196は、アノードガス供給マニホールド23aの側方に配置されている。
図14A〜図14Cにおいて、二重線に囲まれた端子はインピーダンス測定装置70に接続されている端子を示している。さらに、図14Aは第1接続状態を、図14Bは第2接続状態を、図14Cは第3接続状態をそれぞれ示している。
上記のように構成された第6変形例による積層電池11のインピーダンス測定装置70によっても、第4変形例と同様の効果を得ることができる。
図15A〜図15Cは、第7変形例での端子接続状態の切り換えについて説明する図である。第7変形例は、第1変形例と第4変形例を組み合わせた変形例である。
図15Aに示すように、第7変形例では、中途部位における燃料電池セル1のカソードセパレータ3に、第1〜第3中間ソース端子191〜193と、第1〜第3中間センス端子196〜198とが形成される。
第1中間ソース端子191及び第1中間センス端子196は、カソードセパレータ3の左端から外側に突出するように形成されている。第1中間ソース端子191はカソードガス供給マニホールド21aの側方に配置されており、第1中間センス端子196はアノードガス排出マニホールド23bの側方に配置されている。
第2中間ソース端子192はカソードセパレータ3の上端中央部分から上方に突出するように形成されており、第2中間センス端子197はカソードセパレータ3の下端中央部分から下方に突出するように形成されている。
第3中間ソース端子193及び第3中間センス端子198は、カソードセパレータ3の右端から外側に突出するように形成されている。第3中間ソース端子193はアノードガス供給マニホールド23aの側方に配置されており、第3中間センス端子198はカソードガス排出マニホールド21bの側方に配置されている。
インピーダンス測定装置70は、2つの切換スイッチ80,81を備えている。そして、第1〜第3中間ソース端子191〜193は切換スイッチ80を介して電気線79cに接続され、第1〜第3中間センス端子196〜198は切換スイッチ81を介して電気線79fに接続される。
これら切換スイッチ80,81は、端子接続状態を、インピーダンス測定装置70と第1中間ソース端子191及び第1中間センス端子196とが接続される第1接続状態(図15A参照)、インピーダンス測定装置70と第2中間ソース端子192及び第2中間センス端子197とが接続される第2接続状態(図15B参照)、及びインピーダンス測定装置70と第3中間ソース端子193及び第3中間センス端子198とが接続される第3接続状態(図15C参照)のいずれかに切り換えられるように構成されている。
なお、図15A〜図15Cにおいて、二重線に囲まれた端子は、インピーダンス測定装置70に接続されている端子を示している。
第7変形例によれば、インピーダンス測定装置70に接続される積層電池11の中途部位のカソードセパレータ3は、異なる位置に第1〜第3中間ソース端子191〜193及び第1〜第3中間センス端子196〜198を備える。そのため、これら端子191〜193,196〜198を利用してインピーダンス測定を行うことで、積層電池11内における異なる領域の電解質膜状態情報(湿潤状態情報)を含む3つのインピーダンスを測定することが可能となる。その結果、積層電池11の電解質膜の面方向のインピーダンス分布を検出したり、湿潤状態の推定に最も適したインピーダンスを選択したりすることができ、インピーダンス測定結果をより有効に活用することができる。
また、第7変形例によれば、切換スイッチ80,81により端子接続状態を第1接続状態、第2接続状態、又は第3接続状態に切り換えることで、第1〜第3接続状態でのインピーダンス測定を個別に実行することができる。したがって、同時にインピーダンス測定を実行する装置と比較して、インピーダンス測定装置70の構成を簡素化することができる。
第7変形例によれば、第1接続状態でのインピーダンスR1、第2接続状態でのインピーダンスR2、第3接続状態でのインピーダンスR3の3つのインピーダンスが算出される。インピーダンス測定装置70の演算部76は、端子接続状態の切り換えごとに算出された3つのインピーダンスR1〜R3に基づいてインピーダンス測定値Rmを設定する。例えば、演算部76は、3つのインピーダンスR1〜R3に所定の演算を施すことでインピーダンス測定値Rmを設定する。演算部76は、3つのインピーダンスR1〜R3のいずれかをインピーダンス測定値Rmとして設定するように構成されてもよい。これにより、湿潤状態の推定に最も適したインピーダンス測定値Rmを設定することが可能となる。
なお、第7変形例によれば、中途部位における燃料電池セル1のカソードセパレータ3に、中間ソース端子及び中間センス端子をそれぞれ3つ形成した。しかしながら、カソードセパレータ3において、第1〜第3中間ソース端子191〜193のいずれか一つを省略し、第1〜第3中間センス端子196〜198のいずれか一つを省略してもよい。
また、カソードセパレータ3に、中間ソース端子及び中間センス端子をそれぞれ4以上形成してもよい。この場合、切換スイッチ80は、インピーダンス測定装置70と4以上の中間ソース端子との接続状態が順番に切り換えられるように構成され、切換スイッチ81はインピーダンス測定装置70と4以上の中間センス端子との接続状態が順番に切り換えられるように構成される。演算部76は、端子接続状態の切り換えごとに算出された4以上のインピーダンスのうちの複数を用いてインピーダンス測定値Rmを設定したり、4以上のインピーダンスのいずれかをインピーダンス測定値Rmとして設定したりする。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
上記した実施形態においては、車両の駆動モータ20に駆動電力を供給する燃料電池スタック10に本発明を適用する例について説明した。しかしながら、本発明は、例えば車両以外の乗り物や電化製品等における負荷要素に電力を供給する燃料電池スタックにも適用することができる。
さらに、中間ソース端子及び中間センス端子を形成するカソードセパレータ3は、積層電池11の中央部分に位置する燃料電池セル1のカソードセパレータに限られるものではない。積層電池11の中央部分とは異なる位置に配置された燃料電池セル1のカソードセパレータ3に中間ソース端子及び中間センス端子を形成してもよい。また、中間ソース端子及び中間センス端子を、カソードセパレータ3ではなく、アノードセパレータ4に形成してもよい。
積層電池11のインピーダンスを測定する方法としては、交流ブリッジ法の他にも、例えばDC/DCコンバータ60を制御して積層電池11の出力電流に小振幅の高周波交流電流を重畳し、そのときの電圧振幅を重畳した交流電流の電流振幅で割ることで測定する方法がある。