JP5876318B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池を診断する技術に関する。
一般に、燃料電池は、電解質膜を電極で挟んだ発電セルを複数積層することによって構成されている。従来、このような燃料電池の状態を診断する診断装置として、燃料電池の外部から電圧を印加し、外部電圧が印加された状態の燃料電池の周辺部分における磁界を測定し、その測定結果から燃料電池の状態を診断する構成が提案されている(特許文献1)。
特開2008−10367号公報
しかしながら、前記従来の技術では、磁界から燃料電池の状態を診断するもので、診断精度が劣るという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、燃料電池の状態の診断精度を向上することを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために以下の形態または適用例として実現することが可能である。本発明の一形態は、
電解質膜と前記電解質膜を挟持する一対の電極とを有する発電セルが複数積層されてなる燃料電池を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池は、
前記複数の発電セルのうちの少なくとも1つの発電セルを被診断セルとし、前記被診断セルにおける前記電極に貫通孔が設けられていることによって前記電解質膜の一部が露出した構成であり、
前記燃料電池システムは、さらに、
前記電解質膜の露出部に接続される正負電極端子と、
前記貫通孔に接触しない状態で通される導線を介して前記正負電極端子と接続され、前記正負電極端子に電圧を掃引して印加する掃引電源と、
前記電圧が印加された状態の前記被診断セルからの出力電流を検出する電流検出部と、
前記掃引による電圧の変化に対する前記検出した出力電流の変化に基づいて、前記被診断セルの電解質膜の状態を診断する診断部と
を備える燃料電池システム。
本発明の他の形態は、
電解質膜と、前記電解質膜の両側に配置されている一対の触媒層と、前記各触媒層の前記電解質膜とは反対側に配置されている一対のガス拡散層とを有する発電セルが複数積層されてなる燃料電池を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池は、
前記複数の発電セルのうちの少なくとも1つの発電セルを被診断セルとし、前記被診断セルにおける前記ガス拡散層に貫通孔が設けられていることによって前記触媒層の一部が露出した構成であり、
前記燃料電池システムは、さらに、
前記触媒層の露出部に接続される正負電極端子と、
前記貫通孔に接触しない状態で通される導線を介して前記正負電極端子と接続され、前記正負電極端子に電圧を掃引して印加する掃引電源と、
前記電圧が印加された状態の前記被診断セルからの出力電流を検出する電流検出部と、
前記掃引による電圧の変化に対する前記検出した出力電流の変化に基づいて、前記被診断セルの電解質膜の状態を診断する診断部と
を備える燃料電池システム。
その他、本発明は、以下の適用例として実現することも可能である。
[適用例1] 電解質膜を有する発電セルが複数積層されてなる燃料電池の診断装置であって、
前記複数の発電セルのうちの少なくとも1つの発電セルを被診断セルとし、前記被診断セルに電圧を掃引して印加する電圧印加部と、
前記電圧が印加された状態の前記被診断セルからの出力電流を検出する電流検出部と、
前記掃引による電圧の変化に対する前記検出した出力電流の変化に基づいて、前記被診断セルの電解質膜の状態を診断する診断部と
を備える燃料電池診断装置。
この燃料電池診断装置によれば、掃引による電圧の変化に対する出力電流の変化に基づいて、被診断セルの電解質膜の状態が診断される。このために、診断精度を向上することができる。
[適用例2]
適用例1に記載の燃料電池診断装置であって、前記電圧印加部は、前記被診断セルに含まれる一対のセパレータと接続され、掃引電圧を供給する掃引電源を備える、燃料電池診断装置。
この構成によれば、被診断セルの電解質膜についての面方向における各位置の平均的な含水率を、高精度に診断することができる。
[適用例3]
適用例1に記載の燃料電池診断装置であって、前記電圧印加部は、前記被診断セルにおける触媒層の露出部位に接続される正負電極端子と、前記正負電極端子と接続され、掃引電圧を供給する掃引電源とを備える、燃料電池診断装置。
この構成によれば、被診断セルの電解質膜についての面方向の所定位置の含水率を、高精度に診断することができる。
[適用例4]
適用例1に記載の燃料電池診断装置であって、前記電圧印加部は、前記被診断セルにおける電解質膜の露出部位に接続される正負電極端子と、前記正負電極端子と接続され、掃引電圧を供給する掃引電源とを備える、燃料電池診断装置。
この構成によれば、被診断セルの電解質膜についての面方向の所定位置の含水率を、燃料電池の発電時において高精度に診断することができる。
[適用例5]
適用例3または請求項4に記載の燃料電池診断装置であって、前記正負電極端子を複数備え、掃引電源は、前記複数の正負電極端子に並列に接続され、前記電流検出部は、前記複数の正負電極端子のそれぞれに流れる電流を検出する、燃料電池診断装置。
この構成によれば、電解質膜における面方向の含水分布を高精度に診断することができる。
[適用例6]
適用例1ないし請求項5のいずれかに記載の燃料電池診断装置であって、前記診断部は、前記出力電流の変化が略一定となる飽和電流値を求め、前記飽和電流値に基づいて診断を行う、燃料電池診断装置。
この構成によれば、診断を飽和電流値に基づくことで、高精度な診断が可能となる。
[適用例7]
電解質膜と前記電解質膜を挟持する一対の電極とを有する発電セルが複数積層されてなる燃料電池を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池は、
前記複数の発電セルのうちの少なくとも1つの発電セルを被診断セルとし、前記被診断セルにおける前記電解質膜の一部が露出した構成であり、
前記燃料電池システムは、さらに、
前記電解質膜の露出部に接続される正負電極端子と、
前記正負電極端子と接続され、前記正負電極端子に電圧を掃引して印加する掃引電源と、
前記電圧が印加された状態の前記被診断セルからの出力電流を検出する電流検出部と、
前記掃引による電圧の変化に対する前記検出した出力電流の変化に基づいて、前記被診断セルの電解質膜の状態を診断する診断部と
を備える燃料電池システム。
この燃料電池システムによれば、前記燃料電池診断装置と同様に、燃料電池の状態の診断を、高精度に行うことができる。
[適用例8]
電解質膜を有する発電セルが複数積層されてなる燃料電池の診断方法であって、
前記複数の発電セルのうちの少なくとも1つの発電セルを被診断セルとして、前記被診断セルに電圧を掃引して印加し、
前記電圧が印加された状態の前記被診断セルからの出力電流を検出し、
前記掃引による電圧の変化に対する前記検出した出力電流の変化に基づいて、前記被診断セルの電解質膜の状態を診断する、燃料電池診断方法。
この燃料電池診断方法によれば、前記燃料電池診断装置と同様に、燃料電池の状態の診断を、高精度に行うことができる。
本発明は、上記適用例のほか、種々の形態にて実現され得る。例えば、本発明は、前記燃料電池診断装置を含む燃料電池システム、前記燃料電池診断方法を採用して燃料電池を製造する方法として実現される。
第1実施例としての燃料電池診断装置を燃料電池と共に示す説明図である。 診断用コンピューターによって実行される燃料電池診断処理を示すフローチャートである。 飽和電流値を説明するためのグラフである。 第2実施例における燃料電池診断装置を燃料電池と共に示す説明図である。 第3実施例における燃料電池診断装置を燃料電池と共に示す説明図である。
以下、本発明の実施態様に係る燃料電池について、図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
A.第1実施例:
A−1.燃料電池の構成:
図1は、本発明の第1実施例としての燃料電池診断装置100を燃料電池50と共に示す説明図である。まず、燃料電池50について説明する。
図示するように、燃料電池50は、複数の発電セル(以下、単にセルともいう)52が積層されたスタック構造を有している。燃料電池50は、例えば、スタック両端を一対の図示しないエンドプレートで挟まれ、さらにこれらエンドプレート同士を繋ぐようにテンションプレート(図示せず)からなる拘束部材が配置された状態で積層方向への荷重がかけられて締結されている。
セル52は、電解質を含むMEA(膜−電極接合体、Membrane Electrode Assembly)30と、MEA30を両側から挟持してサンドイッチ構造を形成する一対のセパレータ20a,20b等で構成されている。MEA30および各セパレータ20a,20bはおよそ矩形の板状に形成されている。また、MEA30はその外形が各セパレータ20a,20bの外形よりも小さくなるように形成されている。
MEA30は、高分子材料のイオン交換膜からなる高分子電解質膜(以下、単に電解質膜ともいう)31と、電解質膜31を両面から挟んだ一対の電極(アノード側拡散電極およびカソード側拡散電極)32a,32bとで構成されている。電解質膜31は、各電極32a,32bよりも大きく形成されている。この電解質膜31には、その周縁部31aを残した状態で各電極32a,32bが例えばホットプレス法により接合されている。
電極32a,32bは、触媒層33a,33bとガス拡散層34a,34bとを有する。触媒層33a,33bは、触媒としての白金または白金と他の金属からなる合金を有する層である。ガス拡散層34a,34bは、ガス拡散性の導電性部材、例えばカーボン繊維からなる糸で製織したカーボンクロス(カーボン繊維織布)によって形成される。各電極32a,32bの触媒層33a,33b側の面が電解質膜31に接している。後述する構成によって一方の電極(アノード)32aには燃料ガス(反応ガス)としての水素ガス、他方の電極(カソード)32bには空気や酸化剤などの酸化ガス(反応ガス)が供給され、これら2種類の反応ガスによりMEA30内で電気化学反応が生じてセル52の起電力が得られるようになっている。
セパレータ20a,20bはガス不透過性の導電性材料で構成されている。導電性材料としては、例えばカーボンや導電性を有する硬質樹脂のほか、アルミニウムやステンレス等の金属(メタル)が挙げられる。本実施例のセパレータ20a,20bの基材は板状のメタルで形成されているものであり(メタルセパレータ)、この基材の電極32a,32b側の面には耐食性に優れた膜(例えば金メッキで形成された皮膜)が形成されている。
また、セパレータ20a,20bの両面には、複数の凹部によって構成される溝状の流路が形成されている。これら流路は、例えば板状のメタルによって基材が形成されている本実施例のセパレータ20a,20bの場合であればプレス成形によって形成することができる。このようにして形成される溝状の流路は、燃料ガスのガス流路41や酸化ガスのガス流路42、あるいは冷却水流路43を構成している。より具体的に説明すると、セパレータ20aの電極32a側となる内側の面には水素ガスのガス流路41が複数形成され、その裏面(外側の面)には冷却水流路43が複数形成されている。同様に、セパレータ20bの電極32b側となる内側の面には酸化ガスのガス流路42が複数形成され、その裏面(外側の面)には冷却水流路43が複数形成されている。例えば本実施例の場合、隣接する2つのセル52,52に関し、一方のセル52のセパレータ20aの外面と、これに隣接するセル52のセパレータ20bの外面とを付き合わせた場合に両者の冷却水流路43が一体となり断面が例えば矩形あるいはハニカム形の流路が形成される構造となっている。
各セル52におけるセパレータ20aとセパレータ20bの間には、その周縁部をシールするための第1および第2のシール部材45,46が設けられている。さらに、隣接するセル52,52のセパレータ20bとセパレータ20aとの間には、複数の部材で形成された第3シール部材47が設けられている。これらシール部材45,46,47の形状によって、セル間に冷却水を流入させるセル間冷却水流入路48と、セル間に冷却水を流出させるセル間冷却水流出路49とが形成される。セル間冷却水流入路48およびセル間冷却水流出路49は、図示しない経路を介して冷却水流路43に連通している。図示はしないが、同様に、セル間燃料ガス流入路、セル間燃料ガス流出路、セル間酸化ガス流入路、およびセル間酸化ガス流出路が設けられており、燃料ガスのガス流路41や酸化ガスのガス流路42と連通している。こうした構成によって、各セル52に対して燃料ガス、酸化ガス、および冷却水が供給される。
以上のように構成された燃料電池50においては、積層された複数のセルの両端に集電板(エンドプレートの内側:図示せず)が配置されており、この集電板から集電される。燃料電池50は、例えば燃料電池車両(FCHV;Fuel Cell Hybrid Vehicle)の車載発電システムとして利用可能なものであるがこれに限られることはなく、各種移動体(例えば船舶や飛行機など)やロボットなどといった自走可能なものに搭載される発電システム、さらには定置の発電システムとしても用いることが可能である。
燃料電池50の診断時においては、燃料電池50の複数のセル52のうちの所定のセル52Aのセパレータ20a,20bの間に回路70が接続される。ここで、所定のセルは、図示においては最も左側のセルであり、以下、「被診断セル」と呼ぶ。回路70は、掃引電源72と電流センサ74を含み、掃引電源72の+端子が被診断セル52Aのアノード側のセパレータ20aと接続され、掃引電源72の−端子が被診断セル52Aのカソード側のセパレータ20bと接続される。掃引電源72は、電圧を掃引して印加する装置である。「掃引」とは電圧を連続的に変化させることを意味し、掃引電源72はこの変化している電圧(掃引電圧)をセパレータ20a,20bの間に印加する。なお、掃引電源72の+端子とカソード側のアノード側のセパレータ20aとの間に、電流センサ74が設けられている。
燃料電池診断装置100は、前述した回路70と診断用コンピューター80とによって構成される。診断用コンピューター80は、CPU、ROM、RAM等を備える周知の構成であり、燃料電池診断処理を行う。診断用コンピューター80は、掃引電源72および電流センサ74と電気的に接続されている。
A−2.燃料電池診断処理:
図2は、診断用コンピューター80によって実行される燃料電池診断処理を示すフローチャートである。この燃料電池診断処理は、診断用コンピューター80において操作者による実行開始の指令を受けて実行開始される。なお、この実行開始時には、燃料電池50は発電を終了している必要がある。図示するように、処理が開始されると、診断用コンピューター80は、まず、掃引電源72に対してスタート信号を出力する(ステップS110)。スタート信号を受けた掃引電源72は、掃引電圧の印加を開始する。すなわち、掃引電源72は、所定の電圧から電圧を連続的に上昇しながら、その掃引された電圧を印加する。なお、掃引の起点となる前記所定の電圧は、掃引電源72に対して診断用コンピューター80から予めセットされている。
診断用コンピューター80は、次いで、掃引電源72によって電圧の掃引印加がなされている際に、回路70に含まれる電流センサ74の検出した電流値If(図1)の入力を受け、電流値Ifの変化に基づいて飽和電流値を算出する(ステップS120)。飽和電流値は燃料電池の診断のために用いるものであるが、ここでは、飽和電流値を利用した診断手法の原理について、まず説明する。
燃料電池50では、発電終了後、セル52面内に水が残留し、電解質膜31が湿潤された状態となっている。この状態で、セパレータ20aからセバレータ20bの方向に電流が流れるように掃引電源72による外部電圧を印加した場合、図3のグラフに示すように、印加電圧が低い場合はほとんど電流が流れず、電圧増加に伴い分解電圧を超えると電流値が急激に直線的に増加する。これは水の電気分解に特徴的な電流−電圧曲線である。水溶液系での電気分解と異なり、電解質膜31中に存在する水が限られているため、この後さらに電圧を増やしていくと、電圧増加しても電流が変化しない領域FTが出現する。この領域FTの電流値を「飽和電流値」と呼ぶが、この飽和電流値ISは電解質膜31の含水状態と相関関係がある。図3のグラフに示すように、含水率が低い状態では飽和電流値も低く、含水率が高くなれば飽和電流値も高くなる。この関係を利用して、セル52内の電解質膜31の含水状態を診断することが可能となる。すなわち、飽和電流値が低い場合には含水率が低く、飽和電流値が高い場合には含水率が高いと診断することができる。
図2のステップS120では、診断用コンピューター80は、掃引による電圧の変化に対する電流値Ifの変化を求め、その変化が微小となった(所定値以下となった)ときの電流値Ifを飽和電流値ISとする。飽和電流値ISの算出が完了すると、診断用コンピューター80は、掃引電源72に対してストップ信号を出力する(ステップS130)。ストップ信号を受けた掃引電源72は、電圧の掃引印加を停止する。
ステップS130の実行後、診断用コンピューター80は、ステップS120によって算出した飽和電流値ISに基づいて、被診断セル52A内の電解質膜31の含水状態を診断する(ステップS140)。本実施例では、飽和電流値ISと電解質膜の含水率との相関を示すマップが、予め実験的にあるいはシミュレーションにより用意されており、診断用コンピューター80のROMに記憶されている。ステップS140では、診断用コンピューター80は、ステップS120によって算出した飽和電流値ISをROMに記憶されたマップに照合することで、飽和電流値ISに対応した含水率を求める。すなわち、被診断セル52A内の電解質膜31の含水状態を診断が可能となる。なお、ステップS140で求められる含水率は、被診断セル52Aに含まれる電解質膜31についての面方向における各位置の平均的な含水率である。ステップS140の実行後、燃料電池診断処理を終了する。
A−3.実施例効果:
以上のように構成された燃料電池診断装置100によれば、水の電気分解に特徴的な電流−電圧曲線における飽和電流値を計測し、飽和電流値に基づいて被診断セルの電解質膜の状態が診断される。このために、診断精度を向上することができる。
B.第2実施例:
図4は、第2実施例における燃料電池診断装置200を燃料電池と共に示す説明図である。図示において、燃料電池は、被診断セル252Aのうちの一部分だけが記載されている。第2実施例における被診断セル252Aは、第1実施例における被診断セル52Aと比べて、ガス拡散層234a、234の構成が異なる。各ガス拡散層234a(234b)は、図示するように、面方向における2つの部位に厚さ方向の貫通孔h1a(h1b)、h2a(h2b)がそれぞれ設けられている。これにより、この2つの部位では、触媒層233a(233b)が露出している。
アノード側の触媒層33aの露出部位の一方に第1の正電極端子261aが設けられ、アノード側の触媒層33aの露出部位の他方に第2の正電極端子262aが設けられている。カソード側の触媒層33bの露出部位の一方に第1の負電極端子261bが設けられ、カソード側の触媒層33bの露出部位の他方に第2の負電極端子262bが設けられている。第1の正電極端子261aと第1の負電極端子261bとは、電解質膜31の面方向において同一の位置に配置されており、一対の正負電極端子(以下、「第1正負電極端子」と呼ぶ)を構成する。また、第2の正電極端子262aと第2の負電極端子262bとは、電解質膜31の面方向において同一の位置に配置されており、一対の正負電極端子(以下、「第2正負電極端子」と呼ぶ)を構成する。
なお、第1および第2の正電極端子261a,262aはガス拡散層234aと接触してもいないし、第1および第2の負電極端子261b,262bはガス拡散層234aと接触していない。また、第1の正電極端子261aとセパレータ20aの凸リブとの間には第1の絶縁体263が設けられており、第2の正電極端子262aとセパレータ20aの凸リブとの間には第2の絶縁体264が設けられており、第1の負電極端子261bとセパレータ20bの凸リブとの間には第3の絶縁体265が設けられており、第2の負電極端子262bとセパレータ20bの凸リブとの間には第4の絶縁体266が設けられている。これらの構成によって、掃引電源72の電圧印加部位が、触媒層33a、33bに直接接触し、これ以外の良伝導部分から電気的に完全に絶縁される。
被診断セル252Aにおいて前述した構成以外の構成は、第1実施例における被診断セル52Aの構成と同一であるので、同一の構成要素については、図4において、図1と同一の符合を付し、その説明を省略する。
第2実施例の燃料電池診断装置200は、回路270と診断用コンピューター280とによって構成される。回路270は、第1実施例と同じ掃引電源72を含み、掃引電源72の+端子を第1の正電極端子261aと第2の正電極端子262aとに接続し、掃引電源72の−端子を第1の負電極端子261bと第2の負電極端子262bとに接続した回路構成を有する。掃引電源72の+端子と第1の正電極端子261aとの結線には第1電流センサ274が設置されており、掃引電源72の+端子と第2の正電極端子262aとの結線には第2電流センサ275が設置されている。
診断用コンピューター280は、第1実施例と同様に、CPU、ROM、RAM等を備える周知の構成であり、燃料電池診断処理を行う。診断用コンピューター280は、掃引電源72、第1電流センサ274、および第2電流センサ275と電気的に接続されている。
診断用コンピューター280によって実行される燃料電池診断処理は、第1実施例で説明した診断手法と同様の原理によって構成されている。掃引電源72の電圧が印加されるのは、第1実施例ではセパレータ20a,20b間の1つの部位であった、これに対して、第2実施例では電解質膜31の面方向において第1正負電極端子間、第2正負電極端子間といった2つの部位となっている。このために、第2実施例の燃料電池診断処理では、第1電流センサ274で検出された電流値から求めた飽和電流値を利用して第1正負電極端子が設けられた第1部位についての含水率を求める処理と、第2電流センサ275で検出された電流値から求めた飽和電流値を利用して第2正負電極端子が設けられた第2部位についての含水率を求める処理とを独立に行う。なお、この燃料電池診断処理の実行開始時には、第1実施例と同様に、燃料電池50は発電を終了している必要がある。かかる構成によって、電解質膜31における面方向の2つの部位で含水率を求めることができる。この結果、電解質膜31における面方向の含水分布を診断することが可能なる。
なお、本実施例では、掃引電源72の電圧印加部位を、電解質膜31における面方向の2つの部位としたが、本発明はこれに限られない。1つの部位であってもよいし、3つ以上の部位とすることもできる。これによって、含水率についての分布をより緻密に診断することができる。
以上のように構成された燃料電池診断装置200によれば、第1実施例と同様に、水の電気分解に特徴的な電流−電圧曲線における飽和電流値を計測し、飽和電流値に基づいて被診断セル252Aの電解質膜の状態が診断される。このために、診断精度を向上することができる。また、本実施例では、前述したように、電解質膜31における面方向の含水分布を診断することができる。
C.第3実施例:
図5は、第3実施例における燃料電池診断装置300を燃料電池と共に示す説明図である。図示において、燃料電池は、被診断セル352Aのうちの一部分だけが記載されている。第3実施例における352Aは、第2実施例におけるセル252Aと比べて、前述した掃引電源72の電圧が印加される2つの部位について、さらに触媒層も除去されている点が相違する。すなわち、図示するように、各触媒層333a(333b)は、面方向における前述した2つの部位に厚さ方向の貫通孔h3a(h3b)、h4a(h4b)が設けられている。貫通孔h3aはガス拡散層234aに設けられた貫通孔h1aと、貫通孔h4aはガス拡散層234aに設けられた貫通孔h2aと、貫通孔h3bはガス拡散層234bに設けられた貫通孔h1bと、貫通孔h4bはガス拡散層234bに設けられた貫通孔h2bとそれぞれ接続されている。これらにより、前記電圧が印加される2つの部位では、電解質膜31が露出している。
アノード側の電解質膜31の露出部位の一方に第1の正電極端子361aが設けられ、アノード側の電解質膜31の露出部位の他方に第2の正電極端子362aが設けられている。カソード側の電解質膜31の露出部位の一方に第1の負電極端子361bが設けられ、カソード側の電解質膜31の露出部位の他方に第2の負電極端子362bが設けられている。第1の正電極端子361aと第1の負電極端子361bとは、第1実施例と同様に第1正負電極端子を構成する。第2の正電極端子362aと第2の負電極端子362bとは、第1実施例と同様に第2正負電極端子を構成する。また、第2実施例と同様に、各電極端子361a〜362bとセパレータ20a,20bの凸リブとの間には第1〜第4の絶縁体263〜266が設けられている。かかる構成により、掃引電源72の電圧印加部位が、電解質膜31に直接接触し、電解質膜31以外の部分から電気的に完全に絶縁される。
被診断セル352Aにおいて前述した構成以外の構成は、第2実施例における被診断セル252Aの構成と同一であるので、同一の構成要素については、図5において、図4と同一の符合を付し、その説明を省略する。
第3実施例の燃料電池診断装置300は、第2実施例と同一の回路270と、診断用コンピューター380とによって構成される。診断用コンピューター380は、第2実施例の診断用コンピューター280と比較して、第2実施例の診断用コンピューター280では燃料電池診断処理を燃料電池の発電終了時(非発電時)に実行しているのに対して、診断用コンピューター380では燃料電池診断処理を燃料電池の発電時に実行する点が相違する。
なお、第3実施例では、掃引電源72の電圧印加部位を、電解質膜31における面方向の2つの部位としたが、本発明はこれに限られない。第2実施例と同様に、1つの部位であってもよいし、3つ以上の部位とすることもできる。これによって、含水率についての分布をより緻密に診断することができる。
以上のように構成された燃料電池診断装置300によれば、第1実施例、第2実施例と同様に、水の電気分解に特徴的な電流−電圧曲線における飽和電流値を計測し、飽和電流値に基づいて被診断セル352Aの電解質膜の状態が診断される。このために、診断精度を向上することができる。また、この第3実施例では、前述したように、掃引電源72の電圧印加部位が電気的に完全に絶縁されていることから、発電中に電圧印加部位に発電電流が流れることがない。すなわち、被診断セル352A内に燃料ガスおよび酸化剤ガスが導入されるため、電圧印加部の触媒層で水素のフロトン化反応(H2→2H++2e-:アノード)および水生成反応(2H++1/202→H20:カソード)が生じて発電電流が流れてしまうようなことがない。このために、第3実施例では、数Aから数百Aという大きな発電電流に対して、数十μA〜数十mA程度の微弱な水電気分解による電流を精度良く検知することが可能となり、燃料電池の発電中において、電解質膜31の含水分布を高精度に診断することができる。
D.変形例:
なお、この発明は上記の各実施例や各変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
・変形例1:
前記各実施例および各変形例では、電圧の掃引は電圧を連続的に上昇させる構成としたが、これに変えて、電圧を連続的に下降させる構成としてもよい。また、上昇あるいは下降は、単調に変化させる構成に限る必要もなく、指数関数的に変化させる構成等とすることもできる。
・変形例2:
前記各実施例および各変形例では、燃料電池に固体高分子型燃料電池を用いたが、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物形燃料電池等、種々の燃料電池に本発明を適用してもよい。
・変形例3:
上記実施例においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェア(例えば集積回路)で実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
・変形例4:
前述した実施例および各変形例における構成要素の中の、独立請求項で記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。
20a,20b…セバレータ
31…電解質膜
32a,32b…電極
33a,33b…触媒層
34a,34b…ガス拡散層
41,42…ガス流路
43…冷却水流路
45,46,47…シール部材
48…セル間冷却水流入路
49…セル間冷却水流出路
50…燃料電池
52…セル
52A…被診断セル
70…回路
72…掃引電源
74…電流センサ
80…診断用コンピューター
100…燃料電池診断装置
200…燃料電池診断装置
233a,233b…触媒層
234a,234b…ガス拡散層
252A…被診断セル
261a…第1の正電極端子
261b…第1の負電極端子
262a…第2の正電極端子
262b…第2の負電極端子
263…第1の絶縁体
264…第2の絶縁体
265…第3の絶縁体
266…第4の絶縁体
270…回路
274…第1電流センサ
275…第2電流センサ
280…診断用コンピューター
300…燃料電池診断装置
333a,333b…触媒層
352A…被診断セル
361a…第1の正電極端子
361b…第1の負電極端子
362a…第2の正電極端子
362b…第2の負電極端子
380…診断用コンピューター

Claims (4)

  1. 電解質膜と前記電解質膜を挟持する一対の電極とを有する発電セルが複数積層されてなる燃料電池を備える燃料電池システムであって、
    前記燃料電池は、
    前記複数の発電セルのうちの少なくとも1つの発電セルを被診断セルとし、前記被診断セルにおける前記電極に貫通孔が設けられていることによって前記電解質膜の一部が露出した構成であり、
    前記燃料電池システムは、さらに、
    前記電解質膜の露出部に接続される正負電極端子と、
    前記貫通孔に接触しない状態で通される導線を介して前記正負電極端子と接続され、前記正負電極端子に電圧を掃引して印加する掃引電源と、
    前記電圧が印加された状態の前記被診断セルからの出力電流を検出する電流検出部と、
    前記掃引による電圧の変化に対する前記検出した出力電流の変化に基づいて、前記被診断セルの電解質膜の状態を診断する診断部と
    を備える燃料電池システム。
  2. 電解質膜と、前記電解質膜の両側に配置されている一対の触媒層と、前記各触媒層の前記電解質膜とは反対側に配置されている一対のガス拡散層とを有する発電セルが複数積層されてなる燃料電池を備える燃料電池システムであって、
    前記燃料電池は、
    前記複数の発電セルのうちの少なくとも1つの発電セルを被診断セルとし、前記被診断セルにおける前記ガス拡散層に貫通孔が設けられていることによって前記触媒層の一部が露出した構成であり、
    前記燃料電池システムは、さらに、
    前記触媒層の露出部に接続される正負電極端子と、
    前記貫通孔に接触しない状態で通される導線を介して前記正負電極端子と接続され、前記正負電極端子に電圧を掃引して印加する掃引電源と、
    前記電圧が印加された状態の前記被診断セルからの出力電流を検出する電流検出部と、
    前記掃引による電圧の変化に対する前記検出した出力電流の変化に基づいて、前記被診断セルの電解質膜の状態を診断する診断部と
    を備える燃料電池システム。
  3. 請求項1または請求項2に記載の燃料電池システムであって、
    前記正負電極端子を複数備え、
    掃引電源は、前記複数の正負電極端子に並列に接続され、
    前記電流検出部は、前記複数の正負電極端子のそれぞれに流れる電流を検出する、燃料電池システム。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
    前記診断部は、前記出力電流の変化が略一定となる飽和電流値を求め、前記飽和電流値に基づいて診断を行う、燃料電池システム。
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