JP6334574B2 - 新規の超高分子量のエステル化セルロースエーテル - Google Patents

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Description

本発明は、新規のエステル化セルロースエーテル、そのようなエステル化セルロースエーテル中の活性成分の固体分散体、ならびにそのようなエステル化セルロースエーテルを含む、液体組成物、コーティング投薬形態、およびカプセルに関する。
セルロースエーテルのエステル、それらの使用、およびそれらを調製するためのプロセスは、概して当該技術分野において既知である。セルロースエーテル−エステルを導入する既知の方法は、例えば、米国特許第4,226,981号および同第4,365,060号に記載されるように、セルロースエーテルの脂肪族モノカルボン酸無水物、もしくはジカルボン酸無水物、またはこれらの組み合わせとの反応を含む。
種々の既知のエステル化セルロースエーテルは、メチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースサクシネート、またはヒドロキシプロピルセルロースサクシネートなど、医薬品投薬形態のための腸溶性ポリマーとして有用である。そのようなポリマーでコーティングされる投薬形態は、酸性環境における不活化もしくは分解から薬物を保護するか、または薬物による胃の刺激を防止する。米国特許第4,365,060号は、優れた腸溶性作用を有すると言われている腸溶性カプセルを開示する。
米国特許出願公開第2004/0152886号は、2重量%水溶液として測定される、3〜20cpの粘度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースからのヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの生成を開示する。
国際特許出願第WO 2005/115330号および同第WO 2011/159626号は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)の調製を開示する。2.4〜3.6cpの見掛け粘度を有するHPMCが、出発物質として推奨される。あるいは、600〜60,000ダルトン、好ましくは3000〜50,000ダルトン、より好ましくは6,000〜30,000ダルトンのHPMC出発物質が推奨される。Keary[Keary,C.M.;Carbohydrate Polymers 45(2001)293−303、表7および8]によると、約85〜100kDaの重量平均分子量を有するHPMCは、2重量%水溶液として決定される、約50mPa×sの粘度を有する。
米国特許第5,776,501号は、2重量%水溶液として決定される、3〜10cp(mPa・s)の粘度を有する、水溶性セルロースエーテルの使用を教示する。粘度が3cp未満である場合、固体腸溶性医薬品のための最終的に得られるコーティングフィルムは、強度が不十分であり、一方で、10cpを超えると、置換反応を実施するために溶媒中に溶解されるときに観察される粘度は、極めて高くなる。
欧州特許出願第EP−A−0 219 426号は、20℃の2重量%水溶液として測定される、少なくとも5cpの粘度を有するセルロースエーテルから生成される、セルロースエーテルの腸溶性酸性ジカルボン酸エステルを調製するための方法を開示する。6cpの粘度のHPMCから生成されるHPMCASは、人工胃液で分解される3cpの粘度のHPMCから生成されるHPMCASよりも、高い分子量および人工胃液に対する良好な耐性を有した。
第EP−A−0 219 426号に開示される高分子量エステル化セルロースエーテルは、胃液に対する良好な耐性に関して非常に望ましいが、それらは、7〜10重量%の濃度など、有機溶媒中において高濃度で溶解されるとき、高粘度を示し、それは、それらのコーティングプロセスにおける効率性を低下させる。コーティングプロセスにおいて、有機溶媒中の高濃度のエステル化セルロースエーテルは、後に除去されなければならない溶媒の量を最小限に抑えるために望ましい。一方で、溶液の粘度は、コーティングされるタブレットなどの投薬形態上の溶液の噴霧を促進するために、低くなるべきである。
さらに、多数の現在既知の薬物が、低い水溶性を有し、そのため投薬形態を調製するために、複雑な技術が要求される。1つの既知の方法は、任意に水とブレンドされる有機溶媒中で、かつ溶液を噴霧乾燥させるために、エステル化セルロースエーテルなどの薬学的に許容される水溶性ポリマーと一緒にそのような薬物を溶解することを含む。エステル化セルロースエーテルは、薬物の結晶化度を低下させ、それにより薬物の溶解に必要な活性化エネルギーを最小限に抑え、かつ薬物分子の周囲に親水性条件を確立し、それによりそのバイオアベイラビリティ、すなわち摂取後の個人による生体内吸収を高めるために、薬物自体の可溶性を改善することを目的としている。また、噴霧乾燥プロセスにおいて、有機溶媒中の高濃度のエステル化セルロースエーテルは、除去されなければならない溶媒の量を最小限に抑えるために望ましい。しかしながら、エステル化セルロースエーテルを含む有機溶液の粘度が高いとき、溶液は、噴霧乾燥されるのが困難であり、噴霧乾燥デバイスを詰まらせる傾向がある。
したがって、高分子量を有するが、それでもなお噴霧乾燥およびコーティングプロセスで効率的に使用され得る、新しいエステル化セルロースエーテルを発見することが非常に望ましい。
本発明の一態様は、(i)式−C(O)−R−COOAの基、または(ii)脂肪族一価アシル基および式−C(O)−R−COOAの基の組み合わせを含む、エステル化セルロースエーテルであり、Rは、二価脂肪族または芳香族炭化水素基であり、Aは、水素またはカチオンであり、20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大で50mPa・sの粘度を有し、少なくとも220,000ダルトンの重量平均分子量Mを有する。
本発明のさらに別の態様は、(i)式−C(O)−R−COOAの基、または(ii)脂肪族一価アシル基および式−C(O)−R−COOAの基の組み合わせを含む、エステル化セルロースエーテルであり、Rは、二価脂肪族または芳香族炭化水素基であり、Aは、水素またはカチオンであり、20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大で100mPa・sの粘度を有し、少なくとも310,000ダルトンの重量平均分子量Mを有する。
本発明のさらに別の態様は、液体希釈剤および少なくとも1つの上記のエステル化セルロースエーテルを含む、組成物である。
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの上記のエステル化セルロースエーテル中の少なくとも1つの活性成分の固体分散体である。
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの上記のエステル化セルロースエーテルでコーティングされる、投薬形態である。
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの上記のエステル化セルロースエーテルを含む、カプセル殻である。
エステル化セルロースエーテルは、本発明の文脈において無水グルコース単位と表される、β−1,4グリコシド結合D−グルコピラノース反復単位を有する、セルロース主鎖を有する。エステル化セルロースエーテルは、好ましくは、エステル化アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、またはヒドロキシアルキルアルキルセルロースである。これは、無水グルコース単位のヒドロキシル基の少なくとも一部である、本発明のエステル化セルロースエーテルが、アルコキシル基もしくはヒドロキシアルコキシル基、またはアルコキシルおよびヒドロキシアルコキシル基の組み合わせによって置換されることを意味する。ヒドロキシアルコキシル基は、典型的にはヒドロキシメトキシル、ヒドロキシエトキシル、および/またはヒドロキシプロポキシル基である。ヒドロキシエトキシルおよび/またはヒドロキシプロポキシル基が好ましい。典型的には、1または2種類のヒドロキシアルコキシル基が、エステル化セルロースエーテル中に存在する。好ましくは、単一の種類のヒドロキシアルコキシル基、より好ましくはヒドロキシプロポキシルが存在する。アルコキシル基は、典型的にはメトキシル、エトキシル、および/またはプロポキシル基である。メトキシル基が好ましい。上記に定義されたエステル化セルロースエーテルの実例となるものは、エステル化メチルセルロース、エチルセルロース、およびプロピルセルロースなどのエステル化アルキルセルロース;エステル化ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシブチルセルロースなどのエステル化ヒドロキシアルキルセルロース;ならびにエステル化ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、およびヒドロキシブチルエチルセルロースなどのエステル化ヒドロキシアルキルアルキルセルロース;ならびにエステル化ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの、2つ以上のヒドロキシアルキル基を有するものである。最も好ましくは、エステル化セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのエステル化ヒドロキシアルキルメチルセルロースである。
無水グルコース単位のヒドロキシル基のヒドロキシアルコキシル基による置換度は、ヒドロキシアルコキシル基のモル置換、MS(ヒドロキシアルコキシル)によって表現される。MS(ヒドロキシアルコキシル)は、エステル化セルロースエーテル中の無水グルコース単位当たりのヒドロキシアルコキシル基の平均モル数である。ヒドロキシアルキル化反応中、セルロース主鎖に結合したヒドロキシアルコキシル基のヒドロキシル基は、アルキル化剤、例えば、メチル化剤および/またはヒドロキシアルキル化剤によってさらにエーテル化され得ることを理解されたい。無水グルコース単位の同一の炭素原子位置に対する複数の後続のヒドロキシアルキル化エーテル化反応は、側鎖をもたらし、複数のヒドロキシアルコキシル基は、エーテル結合によって互いと共有結合し、各側鎖は、全体として、セルロース主鎖に対するヒドロキシアルコキシル置換基を形成する。
したがって、用語「ヒドロキシアルコキシル基」は、ヒドロキシアルコキシル基をヒドロキシアルコキシル置換基の構成単位と称するものとして、MS(ヒドロキシアルコキシル)の文脈において解釈されるべきであり、いずれも上記に概説されるように、単一のヒドロキシアルコキシル基または側鎖を含み、2つ以上のヒドロキシアルコキシル単位は、エーテル結合によって互いに共有結合している。この定義内で、ヒドロキシアルコキシル置換基の末端ヒドロキシル基がさらにアルキル化されるかどうかは重要ではなく、両方のアルキル化および非アルキル化ヒドロキシアルコキシル置換基が、MS(ヒドロキシアルコキシル)の決定に対して含まれる。本発明のエステル化セルロースエーテルは、概して、0.05〜1.00、好ましくは0.08〜0.90、より好ましくは0.12〜0.70、最も好ましくは0.15〜0.60、および具体的には0.21〜0.50の範囲のヒドロキシアルコキシル基のモル置換を有する。
無水グルコース単位当たりの、メトキシル基などのアルコキシル基によって置換されるヒドロキシル基の平均数は、アルコキシル基の置換度、DS(アルコキシル)として表される。上記のDSの定義において、用語「アルコキシル基によって置換されるヒドロキシル基」は、セルロース主鎖の炭素原子に直接結合したアルキル化ヒドロキシル基だけではなく、セルロース主鎖に結合したヒドロキシアルコキシル置換基のアルキル化ヒドロキシル基も含むと、本発明内で解釈される。本発明に従ったエステル化セルロースエーテルは、好ましくは、1.0〜2.5、より好ましくは1.1〜2.4、さらにより好ましくは1.2〜2.2、最も好ましくは1.6〜2.05、および具体的には1.7〜2.05の範囲のDS(アルコキシル)を有する。
最も好ましくは、エステル化セルロースエーテルは、DS(アルコキシル)に関して上記に示される範囲内のDS(メトキシル)、およびMS(ヒドロキシアルコキシル)に関して上記に示される範囲内のMS(ヒドロキシプロポキシル)を有する、エステル化ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
本発明のエステル化セルロースエーテルは、(i)式−C(O)−R−COOAの基、または(ii)脂肪族一価アシル基および式−C(O)−R−COOAの基の組み合わせを有し、Rは、二価脂肪族または芳香族炭化水素基であり、Aは、水素またはカチオンである。カチオンは、好ましくは、NH などのアンモニウムカチオン、またはナトリウムもしくはカリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、より好ましくはナトリウムイオンである。最も好ましくは、Aは、水素である。
脂肪族一価アシル基は、好ましくは、n−ブチリルまたはi−ブチリルなど、アセチル、プロピオニル、およびブチリルからなる群から選択される。
式−C(O)−R−COOAの好ましい基は、
−C(O)−CH−CH−COOHもしくは−C(O)−CH−CH−COONaなどの、−C(O)−CH−CH−COOA、
−C(O)−CH=CH−COOHもしくは−C(O)−CH=CH−COONaなどの、−C(O)−CH=CH−COOA、または
−C(O)−C−COOHもしくは−C(O)−C−COONaなどの、−C(O)−C−COOAである。
式−C(O)−C−COOAの基において、カルボニル基およびカルボン酸基が、好ましくはオルト位で配列される。
好ましいエステル化セルロースエーテルは、
i)HPMCXYであって、HPMCは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、Xは、A(アセテート)であるか、またはXは、B(ブチラート)であるか、またはXは、Pr(プロピオネート)であり、Yは、S(サクシネート)であるか、またはYは、P(フタレート)であるか、またはYは、M(マレアート)であり、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート(HPMCAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートマレアート(HPMCAM)、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)である、HPMCXY、または
ii)ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート(HPCAS)、ヒドロキシブチルメチルセルロース プロピオネートサクシネート(HBMCPrS)、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースプロピオネートサクシネート(HEHPCPrS);およびメチルセルロースアセテートサクシネート(MCAS)である。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)が、最も好ましいエステル化セルロースエーテルである。
エステル化セルロースエーテルは、概して、0〜1.75、好ましくは0.05〜1.50、より好ましくは0.10〜1.25、および最も好ましくは0.20〜1.00の、アセチル、プロピオニル、またはブチリル基などの脂肪族一価アシル基の置換度を有する。
エステル化セルロースエーテルは、概して、0.05〜1.6、好ましくは0.05〜1.30、より好ましくは0.05〜1.00、および最も好ましくは0.10〜0.70、または0.10〜0.60ほどの、サクシノイルなどの式−C(O)−R−COOAの基の置換度を有する。
i)脂肪族一価アシル基の置換度およびii)式−C(O)−R−COOAの基の置換度の合計は、概して、0.05〜2.0、好ましくは0.10〜1.4、より好ましくは0.20〜1.15、最も好ましくは0.30〜1.10、および具体的には0.40〜1.00である。
アセテートおよびサクシネートエステル基の含有量は、「ヒプロメロースアセテートサクシネート」、米国薬局方および国民医薬品集、NF 29、1548〜1550ページに従って決定される。報告された値は、揮発物に対して補正される(上記のHPMCAS研究論文中の「乾燥減量」の節に記載されるように決定される)。その方法は、プロピオニル、ブチリル、フタリル、および他のエステル基の含有量を決定するために、類似した方法で使用されてもよい。
エステル化セルロースエーテル中のエーテル基の含有量は、「ヒプロメロース」、米国薬局方および国民医薬品集、USP 35、3467〜3469ページに関して記載されるものと同じ方法で決定される。
上記の解析によって得られるエーテルおよびエステル基の含有量は、以下の式に従って個々の置換基のDSおよびMS値に変換される。式は、他のセルロースエーテルエステルの置換基のDSおよびMSを決定するために、類似した方法で使用されてもよい。
変換によって、重量%は、全ての置換基を含む、セルロース反復単位の総重量に基づく平均重量百分率である。メトキシル基の含有量は、メトキシル基(すなわち、−OCH)の質量に基づき報告される。ヒドロキシアルコキシル基の含有量は、ヒドロキシプロポキシル(すなわち、−O−CHCH(CH)−OH)など、ヒドロキシアルコキシル基(すなわち、−O−アルキルene−OH)の質量に基づき報告される。脂肪族一価アシル基の含有量は、−C(O)−Rの質量に基づき報告され、Rは、アセチル(−C(O)−CH)など、一価脂肪族基である。式−C(O)−R−COOHの基の含有量は、サクシノイル基(すなわち、−C(O)−CH−CH−COOH)の質量など、この基の質量に基づき報告される。
本発明の一態様では、エステル化セルロースエーテルは、少なくとも220,000ダルトン、好ましくは少なくとも230,000ダルトン、より好ましくは少なくとも250,000ダルトン、および最も好ましくは少なくとも300,000ダルトンの重量平均分子量M、ならびに20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大で50mPa・s、好ましくは最大で45mPa・s、より好ましくは最大で40mPa・s、および本発明のいくつかの実施形態では最大でわずか35mPa・sの粘度を有する。本発明の本実施形態では、エステル化セルロースエーテルは、典型的には、最大で350,000ダルトン、より典型的には最大で320,000ダルトンの重量平均分子量Mを有する。本発明の本実施形態では、エステル化セルロースエーテルは、典型的には、20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、20mPa・ss以上、本発明のいくつかの実施形態では、25mPa・s以上の粘度を有する。
本発明の別の態様では、エステル化セルロースエーテルは、少なくとも310,000ダルトン、好ましくは少なくとも320,000ダルトン、より好ましくは少なくとも330,000ダルトン、および最も好ましくは少なくとも350,000ダルトンの重量平均分子量M、ならびに20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大で100mPa・s、好ましくは最大で85mPa・s、より好ましくは最大で70mPa・sの粘度を有する。本発明の本実施形態では、エステル化セルロースエーテルは、典型的には、最大で500,000ダルトン、より典型的には最大で450,000ダルトンの重量平均分子量Mを有する。本発明の本実施形態では、エステル化セルロースエーテルは、典型的には、20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、40mPa・s以上、より典型的には50mPa・s以上、および最も典型的には60mPa・s以上の粘度を有する。
、M、およびMは、移動相として40容量部のアセトニトリルと、50mMのNaHPOおよび0.1MのNaNOを含有する、60容量部の水性緩衝液との混合物を使用して、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743に従って測定される。移動相は、8.0のpHに調節される。M、M、およびMの測定は、実施例においてより詳細に記載される。
両方の実施形態において、本発明の方法は、アセトン中の上記のかなり低い粘度と組み合わせて、上記の非常に高い重量平均分子量を有する、エステル化セルロースエーテルを生成することがわかっている。これは、一方で、欧州特許第EP−A−0 219 426号に記載されるように、高分子量が望ましいが、もう一方で、アセトン中の10重量%溶液として測定される、エステル化セルロースエーテルのかなり低い粘度もまた、液体組成物の過度に高い粘度なしで、かなり高い濃度のエステル化セルロースエーテルを含む、液体組成物の調製を可能にするために必要であるため、非常に有利である。当業者は、高い重量平均分子量のエステル化セルロースエーテルが、アセトン中の10重量%溶液として測定される、高い粘度を有すること、および逆もまた同様であることを予想する。アセトン中の上記のかなり低い粘度と組み合わせて、上記の非常に高い重量平均分子量を有するエステル化セルロースエーテルを提供することが、長年にわたる必要性を満たした。
エステル化セルロースエーテルの重量平均分子量、およびアセトン中の10重量%溶液として測定される、それらの粘度は、セルロースエーテルのエステル化における種々の反応パラメータによって決まる。
1つの重要な反応パラメータは、エステル化セルロースエーテルを調製するための出発物質として使用される、20℃の水中の2.0重量%溶液として測定される、セルロースエーテルの粘度である。本発明のエステル化セルロースエーテルを生成するために、概して、20℃(+/−0.1℃)の水中の2.0重量%溶液として測定される、2.3〜5.0mPa・s、好ましくは2.4〜5.0mPa・s、より好ましくは2.4〜4.0mPa・s、および最も好ましくは2.4〜3.8mPa・sの粘度を有する、セルロースエーテルが使用される。水中のセルロースエーテルの2.0重量%溶液は、米国薬局方(USP 35、「ヒプロメロース」、3467〜3469ページ)に従って調製され、その後に、DIN 51562−1:1999−01(1999年1月)に従ったウベローデ粘度測定が続く。出発物質として使用されるかなり低い粘度のセルロースエーテルは、均一反応混合物が得られるエステル化セルロースエーテルを生成するために使用される、反応混合物の良好な混和性を可能にする。好ましくは、上記にさらに記載されるようなエーテル基の種類およびエーテル基の置換度(複数可)を有する、セルロースエーテルが使用される。
セルロースエーテルは、(i)ジカルボン酸無水物、または(ii)脂肪族モノカルボン酸無水物およびジカルボン酸無水物の組み合わせと反応させられる。好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物は、酢酸無水物、酪酸無水物、およびプロピオン酸無水物からなる群から選択される。好ましいジカルボン酸無水物は、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、およびフタル酸無水物からなる群から選択される。ジカルボン酸無水物および脂肪族モノカルボン酸無水物が組み合わせて使用される場合、2つの無水物は、同時に、または順に別々に、反応容器中に導入されてもよい。セルロースエーテルのエステル化は、好ましくは、酢酸、プロピオン酸、または酪酸など、反応希釈剤として脂肪族カルボン酸で実施される。反応希釈剤は、室温で液体であり、ベンゼン、トルエン、1,4−ジオキサン、もしくはテトラヒドロフランなどの芳香族もしくは脂肪族溶媒;またはジクロロメタンもしくはジクロロメチルエーテルなどのハロゲン化C−C誘導体など、セルロースエーテルと反応しない、少量の他の溶媒または希釈剤を含むことができるが、脂肪族カルボン酸の量は、反応希釈剤の総重量に基づき、好ましくは50%超、より好ましくは少なくとも75%、およびさらにより好ましくは少なくとも90%である。最も好ましくは、反応希釈剤は、脂肪族カルボン酸からなる。したがって、エステル化プロセスは、反応希釈剤としての脂肪族カルボン酸の使用に関連して以下に記載されるが、プロセスはそれに限定されない。
以下の実施例は、本発明のエステル化セルロースエーテルの調製方法を記載する。これらのエステル化セルロースエーテルを生成するためのプロセスのいくつかの態様は、以下により一般的な言葉で記載される。
驚くべきことに、本発明の全ての態様において、エステル化セルロースエーテルが上記の超高分子量を有するときでさえ、脂肪族カルボン酸のジカルボン酸無水物に対するモル比が、アセトン中の上記のかなり低い粘度のエステル化セルロースエーテルを達成するための重要な反応パラメータであることがわかっている。本発明の全ての態様のエステル化セルロースエーテルを生成するために、(a)脂肪族カルボン酸対(b)ジカルボン酸無水物の利用されるモル比、(a)/(b)は、最大で12/1、典型的には7.0/1〜12.0/1である。この比は、典型的に従来技術において開示される比(a)/(b)よりも低い。
適切なモル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]もまた、本発明のエステル化セルロースエーテルを生成するための重要なパラメータである。[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]の利用されるモル比は、典型的には、6.5/1〜7.7/1である。
本発明のプロセスで利用されるセルロースエーテルの無水グルコース単位のモル数は、DS(アルコキシル)およびMS(ヒドロキシアルコキシル)から置換された無水グルコース単位の平均分子量を計算することによって、出発物質として使用されるセルロースエーテルの重量から決定され得る。
エステル化反応は、概して、エステル化触媒の存在下で、好ましくは、ナトリウムアセテートまたはカリウムアセテートなど、カルボン酸アルカリ金属の存在下で実施される。エステル化プロセスで使用されるモル比[カルボン酸アルカリ金属/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、エステル化セルロースエーテルの重量平均分子量に影響を及ぼす。他の反応パラメータが定義された範囲内で一定に保たれる場合、モル比[カルボン酸アルカリ金属/セルロースエーテルの無水グルコース単位]が高くなればなるほど、概して、エステル化セルロースエーテルの重量平均分子量が高くなる。本発明のエステル化セルロースエーテルを生成するために、モル比[カルボン酸アルカリ金属/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、典型的には、1.2〜2.9である。
反応容器に導入される各無水物の量は、通常、エステル化による無水グルコース単位の所望のモル置換度の化学量論量の1〜10倍である、最終生成物中で得られる所望のエステル化度によって決定される。モル比[ジカルボン酸の無水物/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、概して、0.5/1〜1.1/1である。上記の通り、(a)脂肪族カルボン酸対(b)ジカルボン酸無水物の利用されるモル比、(a)/(b)は、12/1よりも高くなるべきではなく、典型的には7.0/1〜12.0/1である。
モノカルボン酸の無水物が使用される場合、モル比[脂肪族モノカルボン酸の無水物/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、概して、1.2/1〜2.4/1である。モノカルボン酸の無水物が使用される場合、[脂肪族モノカルボン酸の無水物/ジカルボン酸の無水物]のモル比は、典型的には、最大で3/1、より典型的には1.9/1〜2.9/1である。
反応混合物は、反応を完了するのに十分な期間、すなわち、典型的には2〜25時間、より典型的には2〜8時間にわたって、概して、60℃〜110℃、好ましくは70〜100℃で加熱される。反応混合物は、均一反応混合物を提供するために十分に混合されるべきである。エステル化反応の完了後、反応生成物は、米国特許第4,226,981号、国際特許出願第WO 2005/115330号、または欧州特許出願EP 0 219 426号に記載されるように、例えば、反応混合物を大量の水と接触させることによって、既知の方法で反応混合物から沈殿し得る。本発明の好ましい実施形態では、反応生成物は、2012年3月27日出願の米国仮出願第61/616207号、または国際公開第WO2013/148154号として公開された、その対応する国際特許出願第PCT/US13/030394号に記載されるように、反応混合物から沈殿する。
本発明の別の態様は、液体希釈剤、および上記のエステル化セルロースエーテルのうちの1つ以上を含む、組成物である。本明細書で使用される場合、用語「液体希釈剤」は、25℃および大気圧で液体である希釈剤を意味する。希釈剤は、水、もしくは有機液体希釈剤、または水および有機液体希釈剤の混合物であってもよい。好ましくは、液体希釈剤の量は、噴霧乾燥などの所望の使用のために、またはコーティング目的で、組成物に十分な流動性およびプロセス可能性を提供するのに十分である。
本明細書で使用される場合、用語「有機液体希釈剤」は、1つの有機溶媒、または2つ以上の有機溶媒の混合物を意味する。好ましい有機液体希釈剤は、酸素、窒素、または塩素などのハロゲンなど、1つ以上のヘテロ原子を有する、極性有機溶媒である。より好ましい有機液体希釈剤は、アルコール、例えば、グリセロールなどの多官能アルコール、または好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、もしくはn−プロパノールなどの単官能アルコール;テトラヒドロフランなどのエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、もしくはメチルイソブチルケトンなどのケトン;エチルアセテートなどのアセテート;塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;またはアセトニトリルなどのニトリルである。
一実施形態では、本発明の組成物は、液体希釈剤として、有機希釈剤を単独で、または少量の水と混合して含む。本実施形態では、本発明の組成物は、有機液体希釈剤および水の総重量に基づき、好ましくは50を超える、より好ましくは少なくとも65、および最も好ましくは少なくとも75重量%の有機液体希釈剤、および好ましくは50未満、より好ましくは最大で35、および最も好ましくは最大で25重量%の水を含む。本発明の本実施形態は、本発明が不十分な水溶性の活性成分を含む場合、特に有用である。
別の実施形態では、本発明の組成物は、液体希釈剤として、水を単独で、または上記のような少量の有機液体希釈剤と混合して含む。本実施形態では、本発明の組成物は、有機液体希釈剤および水の総重量に基づき、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも65、および最も好ましくは少なくとも75重量%の水、および好ましくは最大で50、より好ましくは最大で35、および最も好ましくは最大で25重量%の有機液体希釈剤を含む。本発明の本実施形態は、本発明のエステル化セルロースエーテルを含む水性組成物から、コーティングまたはカプセルを提供するのに特に有用である。水溶液を調製するとき、式−C(O)−R−COOAの基の少なくとも一部分がそれらの塩形態であることが好ましい。
液体希釈剤、および上記のエステル化セルロースエーテルのうちの1つ以上を含む、本発明の組成物は、活性成分に対する賦形剤系として有用であり、肥料、除草剤、または殺虫剤などの活性成分、またはビタミン、ハーブおよびミネラルサプリメントおよび薬などの生物活性成分に対する賦形剤系を調製するための中間体として特に有用である。したがって、本発明の組成物は、好ましくは、1つ以上の活性成分、最も好ましくは1つ以上の薬物を含む。用語「薬物」は従来のものであり、動物、特にヒトに投与されたとき、有益な予防的および/または治療的特性を有する、化合物を示す。好ましくは、薬物は、「低可溶性薬物」であり、薬物が約0.5mg/mL以下の生理学的に関連したpH(例えば、pH1〜8)の水溶性を有することを意味する。本発明は、薬物の水溶性が減少するにつれて、より大きな有用性を見出す。したがって、本発明の組成物は、0.1mg/mL未満または0.05mg/mL未満、または0.02mg/mL未満、または0.01mg/mL未満でさえある水溶性を有する低可溶性薬物に対して好ましく、水溶性(mg/mL)は、USP疑似胃腸緩衝液を含む、任意の生理学的に関連した水溶液(例えば、1〜8の間のpH値を有するもの)中で観察される最小値である。活性成分は、本発明から利益を得るために、低可溶性活性成分である必要はないが、低可溶性活性成分は、本発明で使用するための好ましい種類を示す。所望の使用環境においてかなりの水溶性を示す活性成分は、最大で1〜2mg/mLの、または20〜40mg/mLほど高い水溶性さえ有し得る。有用な低可溶性薬物は、国際特許出願第WO 2005/115330号、17〜22ページに列挙される。
本発明の液体組成物は、組成物の総重量に基づき、好ましくは1〜40%、より好ましくは3〜30%、さらにより好ましくは4〜25%、および最も好ましくは5〜20%の上記の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル、40〜99%、より好ましくは50〜96.9%、さらにより好ましくは65〜95.5%、および最も好ましくは65〜94%の上記に更に記載される液体希釈剤、ならびに0〜40%、より好ましくは0.1〜40%、さらにより好ましくは0.5〜25%、および最も好ましくは1〜15%の活性成分を含む。20℃のアセトン中の10重量%溶液として測定される、本発明のエステル化セルロースエーテルのかなり低い粘度は、同等の重量平均分子量の既知のエステル化セルロースエーテルよりも高い濃度のエステル化セルロースエーテルの取り込み、すなわち、エステル化セルロースエーテル対液体希釈剤のより高い比を可能にするが、それでもなおかなり低い粘度の液体組成物を提供する。これは、エステル化セルロースエーテル中の活性成分の固体分散体を生成するために、2つの方法で利用され得る:1.エステル化セルロースエーテル/活性成分の比は、既知のより希薄な組成物と同じに保たれる。この場合、エステル化セルロースエーテルのより高い濃度は、液体組成物中の活性成分のより高い濃度ももたらし、したがって、固体分散体の生成において活性成分の増加した処理量ももたらす一方で、活性成分の同じ安定性を維持する。2.あるいは、液体組成物中のエステル化セルロースエーテルの濃度のみが増加するが、活性成分の濃度は増加しない。これは、エステル化セルロースエーテル/活性成分のより高い比をもたらし、それは、活性成分の処理量の増加なしで、液体希釈剤の除去後にエステル化セルロースエーテルのマトリクス中の活性成分の改善された安定化をもたらす。これは、固体投薬形態中の活性成分の非晶質状態の強化された安定化を実現するために、活性成分の含有量を減少させる必要なく、液体剤形中のエステル化セルロースエーテルのより高い含有量で、製剤者が操作することができることを意味する。本発明のエステル化セルロースエーテルは、液体組成物中の活性成分の高い充填量を可能にするが、それでもなお、固体分散体の調製においてかなり高い処理量を実現する。国際公開第WO2004/014342号、13ページ、最終段落で提案されるような、より高い活性成分処理量を実現するための、非晶質の代わりに半規則性の分散体の生成は、必要ではない。
本発明の一態様では、上記の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル、1つ以上の活性成分、および任意に1つ以上のアジュバントを含む組成物は、液体形態、例えば、懸濁液、スラリー、噴霧可能な組成物、またはシロップの形態で使用され得る。液体組成物は、例えば、経口、眼、局所、直腸、または鼻腔適用に有用である。液体希釈剤は、概して、任意に上記の水と混合した、エタノールまたはグリセロールなど、薬学的に許容されるべきである。アセトンまたは別の有機溶媒中のエステル化セルロースエーテルの低粘度は、注入されるか、または送り込まれるその能力など、液体組成物の取り扱いを有意に改善する。
本発明の別の態様では、本発明の液体組成物は、上記にさらに記載される薬物など、少なくとも1つの活性成分、上記の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル、および任意に1つ以上のアジュバントを含む、固体分散体を生成するために使用される。固体分散体は、組成物から液体希釈剤を除去することによって生成される。アセトンまたは別の有機溶媒中のエステル化セルロースエーテルの低粘度は、高濃度のエステル化セルロースエーテル、したがって、高濃度の薬物の組成物への取り込みを可能にするが、それでもなお、液体組成物のかなり低い粘度を維持する。これは、液体組成物がコーティング目的で使用されるとき、またはエステル化セルロースエーテルを含む組成物が、例えば、活性成分およびエステル化セルロースエーテルを含む固体分散体を調製するために、噴霧乾燥に供されるとき、高い処理量を実現するために非常に有利である。さらに、上記のようなエステル化セルロースエーテル対活性成分の高い比を使用した液体剤形は、噴霧乾燥で製剤化され得る。エステル化セルロースエーテル対活性成分の高い比は、可溶性が不十分な活性成分の過飽和を維持するのに、かつそのバイオアベイラビリティを増加させるために、望ましい。
液体組成物から液体希釈剤を除去する一方法は、液体組成物をフィルムもしくはカプセルに流し込むことによるか、または次いで活性成分を含んでもよい固体担体上に液体組成物を適用することによる。コーティング目的での本発明の液体組成物の使用は、本発明の好ましい態様である。
固体分散体を生成する好ましい方法は、噴霧乾燥による。用語「噴霧乾燥」は、液体混合物を小さい液滴に分離し(噴霧化)、液滴からの溶媒の蒸発のための強い駆動力がある噴霧乾燥装置中で、混合物から溶媒を迅速に除去することを伴うプロセスを指す。噴霧乾燥プロセスおよび噴霧乾燥装置は、概して、Perry’s Chemical Engineers’ Handbook、20−54〜20−57ページ(1984年第6版)に記載される。噴霧乾燥プロセスおよび装置に関するさらなる詳細は、Marshall、「Atomization and Spray−Drying」、50 Chem.Eng.Prog.Monogr.Series 2(1954年)、およびMasters、Spray Drying Handbook(1985年第4版)によって検討される。有用な噴霧乾燥プロセスは、国際特許出願第WO 2005/115330、34ページ、7行目〜35ページ、25行目に記載される。あるいは、本発明の固体分散体は、i)a)上記に定義された少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル、b)1つ以上の活性成分、およびc)1つ以上の任意の添加剤をブレンドすること、およびii)ブレンドを押出に供することによって調製されてもよい。本明細書で使用される場合、用語「押出」は、射出成形、溶融鋳造、および圧縮成形として既知のプロ背セスを含む。薬物などの活性成分を含む組成物を押出する、好ましくは溶融押出するための技術は、既知であり、Joerg Breitenbach,Melt extrusion:from process to drug delivery technology,European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 54(2002)107〜117、または欧州特許出願第EP 0 872 233号に記載される。本発明の固体分散体は、エステル化セルロースエーテルa)および活性成分b)の総重量に基づき、好ましくは20〜99.9%、より好ましくは30〜98%、および最も好ましくは60〜95%の上記のエステル化セルロースエーテルa)、および好ましくは0.1〜80%、より好ましくは2〜70%、および最も好ましくは5〜40%の活性成分b)を含む。エステル化セルロースエーテルa)および活性成分b)の組み合わされた量は、固体分散体の総重量に基づき、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、および最も好ましくは少なくとも90%である。残りの量は、ある場合は、以下に記載されるアジュバントc)のうちの1つ以上からなる。固体分散体は、エステル化セルロースエーテルa)のうちの1つ以上、活性成分b)のうちの1つ以上、および任意にアジュバントc)のうちの1つ以上を含むことができるが、それらの総量は、概して上記の範囲内である。
いったん少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル中に少なくとも1つの活性成分を含む固体分散体が形成されると、投薬形態への分散体の取り込みを促進するために、いくつかの処理動作が使用され得る。これらの処理動作は、乾燥、造粒、および製粉を含む。固体分散体中の任意のアジュバントの包含は、投薬形態に組成物を製剤化するために有用であり得る。本発明の固体分散体は、ストランド、ペレット、顆粒、ピル、タブレット、カプレット、微粒子、カプセル充填物、もしくは射出成形カプセルの形態、または粉末、フィルム、ペースト、クリーム、懸濁液、またはスラリーの形態など、種々の形態であってもよい。
投薬形態中の活性成分の量は、投薬形態の総重量に基づき、概して少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも3%、最も好ましくは少なくとも5%、および概して最大で70%、好ましくは最大で50%、より好ましくは最大で30%、最も好ましくは最大で25%である。
本発明の別の態様では、液体希釈剤、および上記のエステル化セルロースエーテルのうちの1つ以上を含む、本発明の組成物は、コーティング組成物を形成するために、タブレット、顆粒、ペレット、カプレット、トローチ剤、坐薬、ペッサリー、または埋め込み型投薬形態など、投薬形態をコーティングするために使用されてもよい。本発明の組成物が薬物などの活性成分を含む場合、薬物層化が達成され得、換言すれば、投薬形態およびコーティングは、異なる最終用途のための、および/または異なる放出動態を有する、異なる活性成分を含んでもよい。
本発明のさらに別の態様では、液体希釈剤、および上記のエステル化セルロースエーテルのうちの1つ以上を含む、本発明の組成物は、液体組成物を浸漬ピンと接触させるステップを含むプロセスにおいて、カプセルの製造のために使用されてもよい。
本発明の液体組成物および固体分散体は、着色剤、色素、乳白剤、香味料および呈味改良剤、酸化防止剤、ならびにこれらの任意の組み合わせなど、任意の添加剤をさらに含んでもよい。任意の添加剤は、好ましくは薬学的に許容される。1つ以上の任意のアジュバントの有用な量および種類は、概して、当該技術分野において既知であり、本発明の液体組成物および固体分散体の目的とする最終用途によって決まる。
本発明のいくつかの実施形態がここで、以下の実施例に記載される。
特に断りがない限り、全ての部および百分率は、重量による。実施例において、以下の試験手順が使用される。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)試料の粘度
HPMC試料の粘度を、20℃±0.1℃の水中の2.0重量%溶液として測定した。水中の2.0重量%HPMC溶液を、米国薬局方(USP 35、「ヒプロメロース」、3467〜3469ページ)に従って調製し、続いて、DIN 51562−1:1999−01(1999年1月)に従って、ウベローデ粘度測定を行った。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)の粘度
0.43重量%水性NaOH中のHPMCASの2.0重量%溶液を、「ヒプロメロースアセテートサクシネート、米国薬局方および国民医薬品集、NF 29、1548〜1550ページ」に記載される通りに調製し、続いて、DIN 51562−1:1999−01(1999年1月)に従って、20℃でウベローデ粘度測定を行った。
アセトン中のエステル化セルロースエーテル10重量%溶液を、「ヒプロメロースアセテートサクシネート、米国薬局方および国民医薬品集、NF 29、1548〜1550ページ」に従って、HPMCASの乾燥減量を最初に決定することによって調製した。続いて、その乾燥重量に基づき、10.00gのHPMCASを、室温で激しい撹拌下で100gのアセトンと混合した。混合物を約24時間にわたってローラーミキサー上で回転させた。溶液を、Heraeus Holding GmbH(Germany)から市販されているMegafuge 1.0遠心分離機を使用して、3分間2000rpmで遠心分離し、続いて、DIN 51562−1:1999−01(1999年1月)に従って、20℃でウベローデ粘度測定を行った。
HPMCASのエーテルおよびエステル基の含有量
エステル化セルロースエーテル中のエーテル基の含有量を、「ヒプロメロース」に関して、米国薬局方および国民医薬品集、USP 35、3467〜3469ページに記載されるもの同じ方法で決定した。
アセチル基(−CO−CH)によるエステル置換およびサクシノイル基(−CO−CH−CH−COOH)によるエステル置換を、「ヒプロメロースアセテートサクシネート、米国薬局方および国民医薬品集、NF 29、1548−1550ページ」に従って決定した。エステル置換に関する報告された値を、揮発物に対して補正した(上記のHPMCAS研究論文中の「乾燥減量」の節に記載されるように決定される)。
HPMCASのM、M、およびMの決定
特に指定のない限り、Mw、Mn、およびMzを、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743に従って測定した。移動相は、40容量部のアセトニトリルと、50mMのNaH2PO4および0.1MのNaNO3を含有する、60容量部の水性緩衝液との混合物であった。移動相を8.0のpHに調節した。セルロースエーテルエステルの溶液を細孔径0.45μmのシリンジフィルターを通して、HPLCバイアル中に濾過した。
より具体的には、利用される化学物質および溶媒は、以下の通りである。
ポリエチレンオキシド標準物質(PEOX 20 KおよびPEOX 30 Kと省略される)を、Agilent Technologies,Inc.(Palo Alto,CA)、カタログ番号PL2083−1005およびPL2083−2005から購入した。
アセトニトリル(HPLCグレード≧99.9%、CHROMASOL plus)、カタログ番号34998、水酸化ナトリウム(半導体グレード、99.99%、微量金属塩基)、カタログ番号306576、水(HPLCグレード、CHROMASOLV Plus)カタログ番号34877、および硝酸ナトリウム(99,995%、微量金属塩基)カタログ番号229938を、Sigma−Aldrich(Switzerland)から購入した。
リン酸二水素ナトリウム(≧99.999% TraceSelect)カタログ番号71492を、FLUKA(Switzerland)から購入した。
5mg/mLのPEOX20 Kの標準化溶液、2mg/mLのPEOX30 Kの基準溶液、および2mg/mLHPMCASの試料溶液を、計量された量のポリマーをバイアル中に添加し、測定された体積の移動相でそれを溶解することによって、調製した。全ての溶液を、PTFEコーティング磁気撹拌子を使用して撹拌しながら、24時間、蓋の付いたバイアル中で室温で溶解させた。
標準化溶液(PEOX 20k、単回調製、N)および基準溶液(PEOX30 K、二重調製、S1およびS2)を、細孔径0.02μmおよび直径25mmのシリンジフィルター(Whatman Anatop 25、カタログ番号6809−2002)(Whatman)を通して、HPLCバイアル中に濾過した。
試験試料溶液(HPMCAS、二重で調製、T1、T2)および実験室基準(HPMCAS、単回調製、LS)を、細孔径0.45μmのシリンジフィルター(Nylon、例えば、Acrodisc 13mm VWR カタログ番号514−4010)を通して、HPLCバイアル中に濾過した。
クロマトグラフ条件および実行シーケンスを、Chen,R.et al.;Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743−748)によって記載されるように実施した。SEC−MALLS器具一式は、Agilent Technologies,Inc.(Palo Alto,CA)からのHP1100 HPLCシステム、DAWN Heleos II 18角度レーザ光散乱検出器およびOPTILAB rex屈折率検出器(両方ともWyatt Technologies,Inc.(Santa Barbara,CA)から)を含んだ。分析サイズ排除カラム(TSK−GEL(登録商標)GMPWXL、300×7.8mm)をTosoh Bioscienceから購入した。OPTILABおよびDAWNの両方を35℃で作動させた。分析SECカラムを、室温(24±5℃)で作動させた。移動相は、以下の通り調製された、40容量部のアセトニトリルと、50mMのNaH2PO4および0.1MのNaNO3を含有する、60容量部の水性緩衝液との混合物であった。
水性緩衝液:7.20gのリン酸二水素ナトリウムおよび10.2gの硝酸ナトリウムを、溶解するまで撹拌下で、きれいな2Lのガラスボトル中の1.2Lの精製水に添加した。
移動相:800mLのアセトニトリルを、上記で調製した1.2Lの水性緩衝液に添加し、良好な混合物が得られ、温度が周囲温度と平衡になるまで撹拌した。
移動相を10MのNaOHで8.0に調節し、0.2mナイロン膜フィルタを通して濾過した。流速は、インライン脱ガスを用いて0.5mL/分であった。注入容量は、100μLであり、分析時間は、35分であった。
HPMCASに対して、0.120mL/gのdn/dc値(屈折率増分)を使用して、Wyatt ASTRAソフトウェア(バージョン5.3.4.20)によって、MALLSデータを収集および処理した。検出器の光散乱信号(番号1〜4、17、および18)は、分子量計算で使用しなかった。代表的なクロマトグラフ実行シーケンスは、以下:B、N、LS、S1(5x)、S2、T1(2x)、T2(2x)、T3(2x)、T4(2x)、S2、T5(2x)等、S2、LS、Wの通りであり、ここで、Bは、移動相のブランク注入を表し、N1は、標準化溶液を表し、LSは、実験室基準HPMCASを表し、S1およびS2は、基準溶液1および2のそれぞれを表し、T1、T2、T3、T4、およびT5は、試験試料溶液を表し、Wは、水注入を表す。(2x)および(5x)は、同一溶液の注入数を示す。
OPTILABおよびDAWNの両方を、製造業者の推奨手順および頻度で、定期的に較正した。5mg/mLのポリエチレンオキシド基準(PEOX20 K)の100μL注入を、各実行シーケンスに対して、90°検出器に対する全ての角度光散乱検出器を標準化するために採用した。
この単分散ポリマー基準の使用はまた、OPTILABとDAWNとの間の容量遅延が決定されるのを可能にし、屈折率信号に対する光散乱信号の適切な整合を可能にした。これは、各データスライスに対する重量平均分子量(Mw)の計算のために必要である。
実施例1〜6のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)の生成
均一反応混合物を生成するために、氷酢酸、酢酸無水物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、コハク酸無水物、および酢酸ナトリウム(無水)を、徹底的な撹拌下で、反応容器中の以下の表1に列挙される量で導入した。HPMCは、以下の表2に列挙されるように、メトキシルおよびヒドロキシプロポキシル置換、ならびに20℃の水中の2%溶液として測定される、粘度を有した。HPMCは、Methocel E3 LVプレミアムセルロースエーテルとして、The Dow Chemical Companyから市販されている。
エステル化をもたらすために、以下の表1に列挙されるように、混合物を、3〜3.5時間にわたって、撹拌しながら85℃で加熱した。HPMCASを沈殿させるために、撹拌下でxLの水を反応器に添加した。5200rpmで動作するUltra−Turrax撹拌器S50−G45を使用して、高せん断混合を適用することによって、沈殿生成物を反応器から除去し、yLの水で洗浄した。非常に高い純度のHPMCASを得るために、洗浄は、中間濾過ステップを用いていくつかの部分で実施した。HPMCAS生成物は、それらの粘度が実質的に一定(アセトン中10重量%)になるまで、洗浄および濾過されるべきである。水のL数xおよびyは、以下の表1に列挙される。最後の濾過ステップ後、生成物を一晩50℃で乾燥させた。
比較例AおよびBのHPMCASの生成
HPMCの種類、ならびに氷酢酸、酢酸無水物、HPMC、コハク酸無水物、および酢酸ナトリウム(無水)の重量比を、欧州特許出願第EP 0219 426 A2号の実施例2に開示されるように使用したことを除いて、比較例AおよびBに従ったHPMCASの生成を、実施例1〜6と同様に実施した。使用された量は以下の表1に列挙される。
比較例Aで使用されたHPMCは、20℃の水中の2%溶液として測定される、6.0mPa・sの粘度、28.2重量%のヒドロキシプロポキシル基、および9.0重量%のメトキシル基を有した。このHPMCは、Methocel E6 LVプレミアムセルロースエーテルとして、The Dow Chemical Companyから市販されている。比較例Bで使用されたHPMCは、20℃の水中の2%溶液として測定される、3.1mPa・sの粘度、9.3重量%のヒドロキシプロポキシル基、および28.2重量%のメトキシル基を有した。このHPMCは、Methocel E3 LVプレミアムセルロースエーテルとして、The Dow Chemical Companyから市販されている。
エステル化をもたらすために、混合物を3.5時間にわたって、撹拌しながら85℃で加熱した。HPMCASを沈殿させるために、撹拌下でxLの水を反応器に添加した。5200rpmで動作するUltra−Turrax撹拌器S50−G45を使用して、高せん断混合を適用することによって、沈殿生成物を反応器から除去し、yLの水で洗浄した。水のL数xおよびyは、以下の表1に列挙される。生成物を濾過によって単離し、12時間にわたって55℃で乾燥させた。
比較例AおよびBの得られたエステル置換、%アセチルおよび%サクシノイルは、欧州特許出願第EP 0219 426 A2号の実施例2に開示されるものとは有意に異なった。したがって、比較例AおよびBを繰り返した。繰り返した実施例AおよびBの得られたエステル置換、%アセチルおよび%サクシノイルは、比較例AおよびBの最初のセットと実質的に同じであった。表2の結果は、比較例AおよびBの2つの実行の平均を示す。
比較例CおよびDのHPMCASの生成
氷酢酸、酢酸無水物、HPMC、コハク酸無水物、および酢酸ナトリウム(無水)の重量比を、開示された国際特許出願第WO 2005/115330号、51および52ページ、ポリマー1および3のように使用したことを除いて、比較例CおよびDに従ったHPMCASの生成を、実施例1〜6と同様に実施した。国際特許出願第WO 2005/115330号に記載されるように、生成物を取得、分離、および洗浄した。反応混合物を2.4Lの水でクエンチし、ポリマーを沈殿させた。実施例Cに対してのみ、沈殿を完了させるために、さらに1Lの水を使用した。次いで、ポリマーを単離し、3×300mLの水で洗浄した。次いで、ポリマーを600mLのアセトン中に溶解し、再び2.4Lの水中に沈殿させた。沈殿を完了するために、さらに1Lの水を添加した。
比較例E〜G
国際特許出願第WO 2011/159626号、1および2ページに開示されるように、HPMCASは、現在、商標名「AQOAT」によって既知であり、Shin−Etsu Chemical Co.,Ltd.(Tokyo,Japan)から市販されている。Shin−Etsuは、種々のpHレベルの腸溶性保護を提供するために、置換基レベルの異なる組み合わせを有する、3つのグレードのAQOATポリマー、典型的には、AS−LFまたはAS−LGなど、良好(fine)に対して記号表示「F」または「G」が後に続く、AS−L、AS−M、およびAS−Hを製造している。それらの販売明細書は、以下に列挙される。
[表]
市販の材料の試料を、上記にさらに記載されるように分析した。
比較例H〜JのHPMCASの生成
2012年8月24日出願の米国仮出願第61/692939号の実施例4〜6、または国際特許出願第WO 2014/031448号として公開された、2013年8月15日出願のその対応する国際特許出願第PCT/US13/055188号と同様に、比較例H〜Jに従ったHPMCASの生成、精製、および単離を実施した。
比較例K〜MのHPMCASの生成
2012年8月24日出願の米国仮出願第61/692932号の実施例2〜4、または国際公開第WO 2014/031446号として公開された、2013年8月15日出願のその対応する国際特許出願第PCT/US13/055183号と同様に、比較例K〜Mに従ったHPMCASの生成、精製、および単離を実施した。
比較例N、O−1、O−2、P−1、およびP−2
国際公開第WO 2011/159626号の34および35ページに記載されるように、HPMCAS試料を生成した。比較例Nにおいて、HPMCAS−K(1)の配合を正確に繰り返した。比較例O−1およびO−2において、HPMCAS−K(2)の配合を、ならびに比較例P−1およびP−2において、HPMCAS−K(3)の配合を正確に繰り返した。比較例OおよびPをそれぞれ2回実施し、DOSAcおよびDOSに対する比較例O−1およびP−1の結果が、HPMCAS−K(2)およびHPMCAS−K(3)に関して国際公開第WO 2011/159626号に報告された結果から得られたため、それぞれO−1、O−2、P−1、およびP−2として報告した。
実施例1〜6および比較例A〜D、H〜M、N、O−1、O−2、P−1、およびP−2に従って生成される、HPMCASの特性、ならびに市販の比較例E〜Gの特徴が、以下の表2に列挙される。
以下の表2中、略語は以下の意味を有する。
DS=DS(メトキシル):メトキシル基による置換度
MSHP=MS(ヒドロキシプロポキシル):ヒドロキシプロポキシル基によるモル置換
DOSAc:アセチル基の置換度
DOS:サクシノイル基の置換度
欧州特許出願第EP 0 219 426号は、比較例AのHPMCASが、人工胃液に対する耐性を有する、タブレット上の腸溶性フィルムコーティング材料として有用である一方で、比較例BのHPMCASでコーティングされたタブレットが、人工胃液中で分解することを開示する。比較例AのHPMCASは、比較例Bよりも高い重量平均分子量を有する。高い重量平均分子量のHPMCASは、確かに非常に望ましいが、比較例AのHPMCASは、アセトン中の10重量%溶液として測定される、はるかに高い粘度を有し、噴霧乾燥またはコーティングプロセスにおいて、あまり効率的に処理することができない。
一方で実施例1〜3と、他方で比較例AおよびH〜Mとの間の比較は、実施例1〜3のHPMCASが、比較例AおよびH〜MのHPMCASと同じ範囲の重量平均分子量を有するが、アセトン中の10重量%溶液として測定される、はるかに低い粘度を有することを示している。
一方で実施例4〜6と、他方で比較例AおよびH〜Mとの間の比較は、実施例4〜6のHPMCASが、比較例AおよびH〜MのHPMCASよりも高い重量平均分子量を有し、かつ実施例4〜6のHPMCASが、比較例AおよびH〜Mのアセトン中の10%粘度と同等である、またはそれよりも有意に低くさえある、アセトン中の10%粘度を示すことを示している。
比較例B〜GのHPMCASは、実施例1〜6のHPMCASよりも、アセトン中の10重量%溶液として測定される、低い粘度を有するが、比較例B〜GのHPMCASは、実施例1〜6のHPMCASよりもはるかに低い重量平均分子量を有する。
比較例N、O−1、O−2、P−1、およびP−2のHPMCASは、10重量%の濃度で、アセトンに可溶性ではないか、または部分的にのみ可溶性であった。比較例O−1およびO−2において、利用されるHPLC方法における回収率は、十分信頼できるMw、Mn、およびMzの決定を行うには低すぎた。回収率=[HPLCカラムから回収されたHPMCASの重量/HPLCカラムに導入されたHPMCASの重量]×100。
本開示は以下も包含する。
[1] エステル化セルロースエーテルであって、
(i)式−C(O)−R−COOAの基、または(ii)脂肪族一価アシル基および前記式−C(O)−R−COOAの基の組み合わせを含み、Rは、二価脂肪族または芳香族炭化水素基であり、Aは、水素またはカチオンであり、
20℃のアセトン中の前記エステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大で50mPa・sの粘度を有し、
少なくとも220,000ダルトンの重量平均分子量M w を有する、
エステル化セルロースエーテル。
[2] 少なくとも250,000ダルトンの重量平均分子量M w を有する、上記態様1に記載のエステル化セルロース。
[3] 20℃のアセトン中の前記エステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大で40mPa・sの粘度を有する、上記態様1または2に記載のエステル化セルロースエーテル。
[4] エステル化セルロースエーテルであって、
(i)式−C(O)−R−COOAの基、または(ii)脂肪族一価アシル基および前記式−C(O)−R−COOAの基の組み合わせを含み、Rは、二価脂肪族または芳香族炭化水素基であり、Aは、水素またはカチオンであり、
20℃のアセトン中の前記エステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大で100mPa・sの粘度を有し、
少なくとも310,000ダルトンの重量平均分子量M w を有する、
エステル化セルロースエーテル。
[5] 少なくとも350,000ダルトンの重量平均分子量M w を有する、上記態様4に記載のエステル化セルロースエーテル。
[6] 20℃のアセトン中の前記エステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大で80mPa・sの粘度を有する、上記態様4または5に記載のエステル化セルロースエーテル。
[7] 前記脂肪族一価アシル基が、アセチル、プロピオニル、またはブチリル基であり、前記式−C(O)−R−COOAが、−C(O)−CH 2 −CH 2 −COOA、−C(O)−CH=CH−COOA、または−C(O)−C 6 4 −COOA基である、上記態様1〜6のいずれかに記載のエステル化セルロースエーテル。
[8] ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートである、上記態様1〜7のいずれかに記載のエステル化セルロースエーテル。
[9] 液体希釈剤、および上記態様1〜8のいずれかに記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルを含む、組成物。
[10] 少なくとも1つの活性成分、および任意に1つ以上のアジュバントをさらに含む、上記態様9に記載の組成物。
[11] 前記組成物の総重量に基づき、5〜20%の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル、65〜94%の液体希釈剤、および1〜15%の活性成分を含む、上記態様9または10に記載の組成物。
[12] 少なくとも1つの活性成分、および上記態様1〜8のいずれかに記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルを含む、固体分散体。
[13] 前記固体分散体は、タブレット、ピル、顆粒、ペレット、カプレット、微粒子、カプセル充填物、またはペースト、クリーム、懸濁液、もしくはスラリーに製剤化されている、上記態様12に記載の固体分散体。
[14] 上記態様1〜8のいずれかに記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルでコーティングされる、投薬形態。
[15] 上記態様1〜8のいずれかに記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルを含む、カプセル殻。

Claims (9)

  1. 1.6〜2.05のDS(メトキシル)を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートであって、
    20℃のアセトン中の前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの10重量%溶液として測定される、最大で50mPa・sの粘度を有し、
    少なくとも220,000ダルトンの重量平均分子量Mwを有する、
    ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート
  2. 1.6〜2.05のDS(メトキシル)を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートであって
    20℃のアセトン中の前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの10重量%溶液として測定される、最大で100mPa・sの粘度を有し、
    少なくとも310,000ダルトンの重量平均分子量Mwを有する、
    ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート
  3. 1.7〜2.05のDS(メトキシル)を有する、請求項1又は2に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート
  4. 液体希釈剤、および請求項1〜3のいずれか1項に記載の少なくとも1つのヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートを含む、組成物。
  5. 前記組成物の総重量に基づき、5〜20%の少なくとも1つのヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、65〜94%の液体希釈剤、および1〜15%の活性成分を含む、請求項に記載の組成物。
  6. 少なくとも1つの活性成分、および請求項1〜のいずれか1項に記載の少なくとも1つのヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートを含む、固体分散体。
  7. 前記固体分散体は、タブレット、ピル、顆粒、ペレット、カプレット、微粒子、カプセル充填物、またはペースト、クリーム、懸濁液、もしくはスラリーに製剤化されている、請求項に記載の固体分散体。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の少なくとも1つのヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートでコーティングされている、タブレット、顆粒、ペレット、カプレット、トローチ剤、坐薬、ペッサリー、及び埋め込み型物品からなる群から選択される、物品
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の少なくとも1つのヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートを含む、カプセル殻。
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