JP6267239B2 - 極めて低粘度の新規エステル化セルロースエーテル - Google Patents

極めて低粘度の新規エステル化セルロースエーテル Download PDF

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Description

本発明は、新規のエステル化セルロースエーテル、かかるエステル化セルロースエーテル中の活性成分の固体分散体、ならびにかかるエステル化セルロースエーテルを含む、液体組成物、コーティングされた投薬形態、及びカプセルに関する。
セルロースエーテルのエステル、それらの使用、及びそれらを調製するための方法は、概して当該技術分野において既知である。セルロースエーテル−エステルを生成する既知の方法は、例えば、米国特許第4,226,981号及び同第4,365,060号に記載されるように、セルロースエーテルの脂肪族モノカルボン酸無水物、もしくはジカルボン酸無水物、またはそれらの組み合わせとの反応を含む。
種々の既知であるエステル化セルロースエーテルは、メチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースサクシネート、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネートなどの、薬学的投薬形態のための腸溶性ポリマーとして有用である。かかるポリマーでコーティングされた投薬形態は、酸性環境での不活性化もしくは分解から薬物を保護するか、またはその薬物による胃へ刺激を防止する。米国特許第4,365,060号は、優れた腸溶性挙動を有すると言われている腸溶性カプセルを開示する。
米国特許第5,776,501号は、2重量%水溶液として決定される、3〜10cP(mPa・s)の粘度を有する、水溶性セルロースエーテルの使用を教示する。粘度が3cP未満である場合、固体腸溶性薬学的調製物のために最終的に取得されるコーティングフィルムは、強度が不十分であり、一方で、10cPを超える場合、置換反応を行うために溶媒中に溶解されるときに観察される粘度が、極めて高くなる。
米国特許出願公開第2004/0152886号は、2重量%水溶液として測定される、3〜20cPの粘度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースから出発するヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの生成を開示する。
国際特許出願WO第2005/115330号及び同第2011/159626号は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)の調製を開示する。2.4〜3.6cPの見掛け粘度を有するHPMCが、出発物質として推奨される。あるいは、600〜60,000Daltons、好ましくは3000〜50,000ダルトン、より好ましくは6,000〜30,000ダルトンのHPMC出発物質が、推奨される。Keary[Keary,C.M.;Carbohydrate Polymers45(2001)293−303、表7及び8]によると、約85〜100kDaの重量平均分子量を有するHPMCは、2重量%水溶液として決定される、約50mPa×sの粘度を有する。
多数の現在既知である薬物が、低い水溶性を有し、そのため投薬形態を調製するために、複雑な技術が必要とされる。1つの既知である方法は、任意選択的に水とブレンドされる有機溶媒中で、エステル化セルロースエーテルなどの薬学的に許容される水溶性ポリマーとともにかかる薬物を溶解して、この溶液を噴霧乾燥させることを含む。エステル化セルロースエーテルは、薬物の結晶化度を低減し、それにより薬物の溶解に必要な活性化エネルギーを最小限に抑え、かつ薬物分子の周囲に親水性条件を確立することを目的とし、それにより薬物自体の溶解性を改善し、そのバイオアベイラビリティ、すなわち摂取後の個人によるその生体内吸収を高める。
残念ながら、既知のエステル化セルロースエーテルは、噴霧乾燥作業において効率的に使用されないことが多い。既知のエステル化セルロースエーテルが、有機溶媒中に、7〜10重量パーセントの濃度などの高濃度で溶解され、かつかかる溶液が薬物と組み合わされて、噴霧乾燥されるとき、得られる溶液は、高粘度を有し、噴霧乾燥されるのが困難であり、噴霧乾燥装置を詰まらせる傾向がある。高度に希釈された溶液が利用されるときには、過剰な量の有機溶媒を蒸発させなければならない。エステル化セルロースエーテルが、有機溶媒中に溶解されて、錠剤コーティングなどのコーティング目的に使用されるときに、同様の問題が発生する。
したがって、噴霧乾燥及びコーティングプロセスにおいて効率的に使用され得る、新しいエステル化セルロースエーテルを発見することが非常に望ましいであろう。薬物の溶解性を改善するのに好適である、かかる新しいエステル化セルロースエーテルを発見することが特に望ましいであろう。
本発明の一態様は、(i)脂肪族一価アシル基、または(ii)式−C(O)−R−COOAの基であり、式中、Rが二価の脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基であり、Aが水素もしくはカチオンである、基、または(iii)脂肪族一価アシル基及び式−C(O)−R−COOAの基の組み合わせを含み、a)20℃の0.43重量%水性NaOH中のエステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される、1.2〜1.8mPa・sの粘度、またはb)20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大5mPa・sの粘度、またはc)粘度a)及びb)の組み合わせを有する、エステル化セルロースエーテルである。
本発明の別の態様は、液体希釈剤、及び少なくとも1つの上記のエステル化セルロースエーテルを含む、組成物である。
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの上記のエステル化セルロースエーテル中の少なくとも1つの活性成分の固体分散体である。
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの上記のエステル化セルロースエーテルでコーティングされた、投薬形態である。
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの上記のエステル化セルロースエーテルを含む、カプセル殻である。
本発明のさらに別の態様は、20℃の水中の2重量%溶液として測定される、1.2〜1.8mPa・sの粘度を有するセルロースエーテルが、(i)脂肪族モノカルボン酸無水物、もしくは(ii)ジカルボン酸無水物、または(iii)脂肪族モノカルボン酸無水物及びジカルボン酸無水物の組み合わせでエステル化される、エステル化セルロースエーテルを生成する方法。
エステル化セルロースエーテルは、本発明の文脈において無水グルコース単位として表される、β−1,4グリコシド結合D−グルコピラノース反復単位を有するセルロース主鎖を有する。エステル化セルロースエーテルは、好ましくは、エステル化アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、またはヒドロキシアルキルアルキルセルロースである。これは、本発明のエステル化セルロースエーテル中で、無水グルコース単位のヒドロキシル基の少なくとも一部が、アルコキシル基、もしくはヒドロキシアルコキシル基、またはアルコキシル基及びヒドロキシアルコキシル基の組み合わせによって置換されることを意味する。ヒドロキシアルコキシル基は、典型的には、ヒドロキシメトキシル、ヒドロキシエトキシル、及び/またはヒドロキシプロポキシル基である。ヒドロキシエトキシル及び/またはヒドロキシプロポキシル基が好ましい。典型的には、1または2種類のヒドロキシアルコキシル基が、エステル化セルロースエーテル中に存在する。好ましくは、単一の種類のヒドロキシアルコキシル基、より好ましくはヒドロキシプロポキシルが存在する。アルコキシル基は、典型的には、メトキシル、エトキシル、及び/またはプロポキシル基である。メトキシル基が好ましい。上記のエステル化セルロースエーテルの実例となるものは、エステル化メチルセルロース、エチルセルロース、及びプロピルセルロースなどのエステル化アルキルセルロース;エステル化ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシブチルセルロースなどのエステル化ヒドロキシアルキルセルロース;ならびにエステル化ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、及びヒドロキシブチルエチルセルロースなどのエステル化ヒドロキシアルキルアルキルセルロース;ならびにエステル化ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの2つ以上のヒドロキシアルキル基を有するものである。最も好ましくは、エステル化セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのエステル化ヒドロキシアルキルメチルセルロースである。
ヒドロキシアルコキシル基による、無水グルコース単位のヒドロキシル基の置換度は、ヒドロキシアルコキシル基のモル置換、MS(ヒドロキシアルコキシル)によって表現される。MS(ヒドロキシアルコキシル)は、エステル化セルロースエーテル中の無水グルコース単位当たりのヒドロキシアルコキシル基の平均モル数である。ヒドロキシアルキル化反応中、セルロース主鎖に結合したヒドロキシアルコキシル基のヒドロキシル基は、アルキル化剤、例えば、メチル化剤及び/またはヒドロキシアルキル化剤によってさらにエーテル化され得ることを理解されたい。無水グルコース単位の同じ炭素原子位置に対する複数の後続のヒドロキシアルキル化エーテル化反応は、側鎖をもたらし、複数のヒドロキシアルコキシル基が、エーテル結合によって互いに共有結合し、各側鎖は、全体として、セルロース主鎖に対するヒドロキシアルコキシル置換基を形成する。
用語「ヒドロキシアルコキシル基」は、したがって、ヒドロキシアルコキシル基をヒドロキシアルコキシル置換基の構成単位として称するものとして、MS(ヒドロキシアルコキシル)の文脈において解釈されるべきであり、いずれも、上記に概説されるように、単一のヒドロキシアルコキシル基または側鎖を含み、2つ以上のヒドロキシアルコキシル単位が、エーテル結合によって互いに共有結合される。この定義内で、ヒドロキシアルコキシル置換基の末端ヒドロキシル基が、さらにアルキル化されるかどうかは重要ではなく、アルキル化及び非アルキル化ヒドロキシアルコキシル置換基のいずれもが、MS(ヒドロキシアルコキシル)の決定に対して含まれる。本発明のエステル化セルロースエーテルは、概して、0.05〜1.00、好ましくは0.08〜0.90、より好ましくは0.12〜0.70、最も好ましくは0.15〜0.60、及び特に0.21〜0.50の範囲のヒドロキシアルコキシル基のモル置換を有する。
無水グルコース単位当たりの、メトキシル基などのアルコキシル基によって置換されるヒドロキシル基の平均数は、アルコキシル基の置換度、DS(アルコキシル)として表される。上記のDSの定義において、用語「アルコキシル基によって置換されるヒドロキシル基」は、セルロース主鎖の炭素原子に直接結合したアルキル化ヒドロキシル基だけではなく、セルロース主鎖に結合したヒドロキシアルコキシル置換基のアルキル化ヒドロキシル基も含むと、本発明内で解釈される。本発明に従ったエステル化セルロースエーテルは、好ましくは、1.0〜2.5、より好ましくは1.1〜2.4、さらにより好ましくは1.2〜2.2、最も好ましくは1.6〜2.05、及び特に1.7〜2.05の範囲のDS(アルコキシル)を有する。
ロースエーテルは、DS(アルコキシル)に関して上記に示される範囲内のDS(メトキシル)、及びMS(ヒドロキシアルコキシル)に関して上記に示される範囲内のMS(ヒドロキシプロポキシル)を有する、エステル化ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
本発明のエステル化セルロースエーテルは、(i)脂肪族一価アシル基、または(ii)式−C(O)−R−COOAの基であり、式中、Rが二価の脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基であり、Aが水素もしくはカチオンである、基、または(iii)脂肪族一価アシル基及び式−C(O)−R−COOAの基の組み合わせを有する。
カチオンは、好ましくは、NH などのアンモニウムカチオン、またはナトリウムもしくはカリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、より好ましくはナトリウムイオンである。最も好ましくは、Aは水素である。
脂肪族一価アシル基は、好ましくは、アセチル、プロピオニル、及びn−ブチリルまたはi−ブチリルなどのブチリルからなる群から選択される。
式−C(O)−R−COOAの好ましい基は、
−C(O)−CH−CH−COOHもしくは−C(O)−CH−CH−COONaなどの−C(O)−CH−CH−COOA、
−C(O)−CH=CH−COOHもしくは−C(O)−CH=CH−COONaなどの−C(O)−CH=CH−COOA、または
−C(O)−C−COOHもしくは−C(O)−C−COONaなどの−C(O)−C−COOAである。
式−C(O)−C−COOAの基において、カルボニル基及びカルボキシル基は、好ましくは、オルト位で配列される。
好ましいエステル化セルロースエーテルは、
i)HPMCXYであって、HPMCはヒドロキシプロピルメチルセルロースであるか、XはA(アセテート)であるか、もしくはXはB(ブチラート)であるか、もしくはXはPr(プロピオネート)であり、YはS(サクシネート)であるか、もしくはYはP(フタレート)であるか、もしくはYはM(マレアート)であり、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート(HPMCAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートマレアート(HPMCAM)、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)である、HPMCXY、または
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート(HPCAS)、ヒドロキシブチルメチルセルロースプロピオネートサクシネート(HBMCPrS)、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースプロピオネートサクシネート(HEHPCPrS);及びメチルセルロースアセテートサクシネート(MCAS)である。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)は、最も好ましいエステル化セルロースエーテルである。
エステル化セルロースエーテルは、概して、0〜1.75、好ましくは0.05〜1.50、より好ましくは0.10〜1.25、及び最も好ましくは0.20〜1.00の、アセチル、プロピオニル、またはブチリル基などの脂肪族一価アシル基の置換度を有する。
エステル化セルロースエーテルは、サクシノイルなどの、概して、0.05〜1.6、好ましくは0.05〜1.30、より好ましくは0.05〜1.00、及び最も好ましくは0.10〜0.70、またはさらに0.10〜0.60の、式−C(O)−R−COOAの基の置換度を有する。
i)脂肪族一価アシル基の置換度及びii)式−C(O)−R−COOAの基の置換度の合計は、概して、0.05〜2.0、好ましくは0.10〜1.4、より好ましくは0.20〜1.15、最も好ましくは0.30〜1.10、及び特に0.40〜1.00である。
アセテート及びサクシネートエステル基の含有量は、米国薬局方及び国民医薬品集、NF29、1548〜1550ページ、「ヒプロメロースアセテートサクシネート」、に従って決定される。報告された値は、揮発物に対して補正した(上記のHPMCAS研究論文中の「乾燥減量」の節に記載されるように決定される)。本方法は、プロピオニル、ブチリル、フタリル、及び他のエステル基の含有量を決定するために類似した方法で使用されてもよい。
エステル化セルロースエーテル中のエーテル基の含有量は、米国薬局方及び国民医薬品集、USP35、3467〜3469ページ、「ヒプロメロース」に関して記載されるものと同じ方法で決定される。
上記の解析によって取得されるエーテル及びエステル基の含有量は、以下の式に従って個々の置換基のDS及びMS値に変換される。この式は、他のセルロースエーテルエステルの置換基のDS及びMSを決定するために、類似した方法で使用され得る。
Figure 0006267239
慣例により、重量パーセントは、全ての置換基を含む、セルロース反復単位の総重量に基づく平均重量百分率である。メトキシル基の含有量は、メトキシル基(すなわち、−OCH)の質量に基づき報告される。ヒドロキシアルコキシル基の含有量は、ヒドロキシプロポキシル(すなわち、−O−CHCH(CH)−OH)などの、ヒドロキシアルコキシル基(すなわち、−O−アルキレン−OH)の質量に基づき報告される。脂肪族一価アシル基の含有量は、−C(O)−Rの質量に基づき報告され、式中、Rは、アセチル(−C(O)−CH)などの、一価脂肪族基である。式−C(O)−R−COOHの基の含有量は、サクシノイル基(すなわち、−C(O)−CH−CH−COOH)の質量などの、この基の質量に基づき報告される。
本発明の一態様において、エステル化セルロースエーテルは、20℃の0.43重量%水性NaOH中のエステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される、a)最大1.80mPa・s、好ましくは最大1.70mPa・s、より好ましくは最大1.60、さらにより好ましくは最大1.55mPa・s、及び最も好ましくは最大1.52mPa・sの粘度を有する。概して、エステル化セルロースエーテルの粘度a)は、20℃の0.43重量%水性NaOH中のエステル化セルロースエーテル中の2.0重量%溶液として測定される、1.20mPa・s以上、典型的には1.30mPa・s以上、及びより典型的には1.40mPa・s以上である。エステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液を、「ヒプロメロースアセテートサクシネート、米国薬局方及び国民医薬品集、NF29、1548〜1550ページ」に記載される通りに調製し、続いて、DIN51562−1:1999−01(1999年1月)に従って、ウベローデ粘度測定を行う。0.43重量%水性NaOH中のエステル化セルロースエーテルの粘度は、エステル化セルロースエーテルを生成するための出発物質として有用であるセルロースエーテルの粘度に非常に類似していることがわかった。
本発明の別の態様において、エステル化セルロースエーテルは、20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、b)最大でわずか5.0mPa・s、好ましくは最大でわずか4.0mPa・s、及びより好ましくは最大でわずか3.0mPa・sの粘度を有する。本発明のエステル化セルロースエーテルは、典型的には、20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、1.20mPa・s以上、より典型的には1.65mPa・s以上、及び最も典型的には1.80mPa・s以上の粘度を有する。アセトン中の10重量%溶液として測定される、本発明のエステル化セルロースエーテルの粘度b)は、アセトン中の既知であるエステル化セルロースエーテルの粘度よりも相当に低い。本発明のエステル化セルロースエーテルの低粘度は、エステル化セルロースエーテルを含む液体組成物が、例えば、活性成分及びエステル化セルロースエーテルを含む固体分散体を調製するために噴霧乾燥にかけられるとき、非常に有利である。アセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液は、以下の実施例においてさらに記載される通りに調製され得る。
エステル化セルロースエーテルが、20℃の0.43重量%水性NaOH中のエステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される、最大1.80mPa・sの上記の粘度a)を有するとき、本発明のエステル化セルロースエーテルは、典型的には、20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大でわずか5.0mPa・sの上記の粘度b)を有することが、驚くべきことにわかった。したがって、本発明の好ましい態様において、エステル化セルロースエーテルは、上記の通り、粘度a)及びb)の組み合わせを有する。しかし、20℃の0.43重量%水性NaOH中のエステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される、最大1.80mPa・sの上記の粘度a)を有するが、アセトン中の10重量%溶液として測定される、例えば、最大13mPa・s、または最大12mPa・s、または最大11mPa・s、または最大8.0mPa・s、または最大6.5mPa・sの幾分かより高粘度を有するセルロースエーテルも、本発明の範囲内である。さらに、20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大でわずか5.0mPa・sの上記の粘度b)を有するが、20℃の0.43重量%水性NaOH中のエステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される、例えば、20℃の0.43重量%水性NaOH中のエステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される、最大2.33mPa・s、または最大2.25mPa・s、または最大2.10mPa・s、または最大1.95mPa・sの幾分かより高粘度を有する、セルロースエーテルも本発明の範囲内である。
本発明のエステル化セルロースエーテルの平均分子量は、以下でより詳細に説明されるように、本発明のエステル化セルロースエーテルを調製するために使用される、20℃の水中の2.0重量%溶液として測定されるセルロースエーテルの粘度、ならびにエステル化反応において使用されるセルロースエーテルと希釈剤と触媒との間の重量比など、種々の要因に依存する。
エステル化セルロースエーテルは、概して、10,000〜130,000ダルトン、または10,000〜115,000ダルトン、または10,000〜90,000ダルトン、または10,000〜70,000ダルトン、または12,000〜50,000ダルトンの重量平均分子量Mを有する。エステル化セルロースエーテルは、概して、5000〜19,000ダルトン、もしくは7000〜18,000、もしくは8,000〜15,000、もしくは9,000〜13,000ダルトンの数平均分子量M、及び/または20,000〜900,000ダルトン、もしくは27,000ダルトン〜500,000ダルトンのz平均分子量Mを有する。
w、、及びMは、移動相として、40体積部のアセトニトリルと、50mMのNaHPO及び0.1MのNaNOを含有する60体積部の水性緩衝液との混合物を使用して、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743に従って測定される。移動相は、8.0のpHに調整される。Mw、、及びMの測定は実施例においてより詳細に記載される。
以下の実施例は、本発明のエステル化セルロースエーテルの調製方法を記載する。これらのエステル化セルロースエーテルを生成するための方法のいくつかの態様は、より一般的な言葉で以下に記載される。
本発明のエステル化セルロースエーテルは、典型的には、20℃(+/−0.1℃)の水中の2.0重量%溶液として測定される、1.20〜1.80mPa・s、好ましくは1.20〜1.70mPa・s、より好ましくは1.20〜1.60mPa・s、さらにより好ましくは1.20〜1.55mPa・s、及び最も好ましくは1.20〜1.52mPa・sの粘度を有するセルロースエーテルから生成される。水中のセルロースエーテルの2.0重量%溶液を、米国薬局方(USP35、「ヒプロメロース」、3467〜3469ページ)に従って調製し、続いて、DIN51562−1:1999−01(1999年1月)に従って、ウベローデ粘度測定を行う。出発物質として使用されるセルロースエーテルの低粘度は、均一反応混合物が得られる、エステル化セルロースエーテルを生成するために使用される反応混合物の良好な混和性を可能にする。好ましくは、上記でさらに記載されるようなエーテル基の種類及びエーテル基の置換度(複数可)を有するセルロースエーテルが、使用される。上記のセルロースエーテル及びそれらの生成は、国際特許出願WO第2009061821号及び同第2009/061815号に記載される。
セルロースエーテルは、(i)脂肪族モノカルボン酸無水物、もしくは(ii)ジカルボン酸無水物、または(iii)脂肪族モノカルボン酸無水物及びジカルボン酸無水物の組み合わせと反応させられる。好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物は、酢酸無水物、酪酸無水物、及びプロピオン酸無水物からなる群から選択される。好ましいジカルボン酸無水物は、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、及びフタル酸無水物からなる群から選択される。ジカルボン酸無水物及び脂肪族モノカルボン酸無水物が、組み合わせて使用される場合、2つの無水物は、同時にまたは順々に別々に、反応器に導入されてもよい。反応容器に導入される各無水物の量は、通常、エステル化による無水グルコース単位の所望のモル置換度の化学量論量の1〜10倍である、最終生成物中で得られる所望のエステル化度によって決定される。ジカルボン酸の無水物が使用される場合、ジカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位のモル比は、概して、0.1/1以上、及び好ましくは0.13/1以上である。ジカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位のモル比は、概して、1.5/1以下、及び好ましくは1/1以下である。モノカルボン酸の無水物が使用される場合、脂肪族モノカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位のモル比は、概して、0.9/1以上、及び好ましくは1.0/1以上である。コース単位のモル比は、概して、8/1以下、好ましくは6/1以下、及びより好ましくは4/1以下である。本発明の方法中で利用されるセルロースエーテルの無水グルコース単位のモル数は、DS(アルコキシル)及びMS(ヒドロキシアルコキシル)から置換された無水グルコース単位の平均分子量を計算することによって、出発物質として使用されるセルロースエーテルの重量から決定され得る。
セルロースエーテルのエステル化は、好ましくは、酢酸、プロピオン酸、または酪酸などの、反応希釈剤として脂肪族カルボン酸中で実行される。反応希釈剤は、室温で液体であり、セルロースエーテルと反応しない少量の他の溶媒または希釈剤を含み得、例えば、それらはベンゼン、トルエン、1,4−ジオキサン、またはテトラヒドロフランなどの芳香族もしくは脂肪族溶媒;またはジクロロメタンもしくはジクロロメチルエーテルなどのハロゲン化C−C誘導体であるが、脂肪族カルボン酸の量は、反応希釈剤の総重量に基づき、好ましくは50パーセントを超え、より好ましくは少なくとも75パーセント、及びさらにより好ましくは少なくとも90パーセントである。
最も好ましくは、反応希釈剤は、脂肪族カルボン酸からなる。したがって、エステル化方法は、反応希釈剤としての脂肪族カルボン酸の使用に関連して以下に記載されるが、本方法は、それに限定されない。
20℃のアセトン中の10重量%溶液として測定される、エステル化セルロースエーテルの粘度は、エステル化反応の3つの主要なパラメータ、すなわち1、出発物質として使用されるセルロースエーテルの粘度、2、モル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]、及び3、モル比[エステル化触媒/セルロースエーテルの無水グルコース単位]、に影響を受け得ることがわかった。本明細書の概括的な教示、及び実施例のより具体的な教示に基づき、当業者は、本発明のエステル化セルロースエーテルに到達するために、エステル化反応のこれら3つの主要なパラメータの選択方法を認知する。
驚くべきことに、3mPa・s以上の粘度のセルロースエーテルが、先行技術において開示されるように使用されるときよりも、セルロースエーテルが、20℃の水中の2.0重量%溶液として測定される、1.20〜1.80mPa・sの粘度を有する出発物質として使用されるときの方が、他の反応パラメータを一定に保ちながらも、アセトン中の10重量%溶液として測定される、著しくより低粘度のエステル化セルロースエーテルが取得されることがわかった。実施例及び比較例によって例示されるように、アセトン中の粘度は、出発物質として使用されるセルロースエーテルがわずかに低粘度である点から予想され得るよりも相当に低い。
適切なモル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、出発物質として使用されるセルロースエーテルの粘度に依存する。出発物質として使用されるセルロースエーテルの粘度が、20℃の水中の2.0重量%溶液として測定される、わずか1.2〜1.8mPa・sであるとき、モル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、1.5/1以上、典型的には1.7/1以上、より典型的には1.9/1以上ほどに低くなり得るが、それでもなお、20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大でわずか5mPa・sの粘度を有する、エステル化セルロースエーテルを調製する。アセトン中の10重量%溶液として測定される、高すぎる粘度エステル化セルロースエーテルが取得される場合、本発明の教示と一致して、モル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、増加するはずである。
[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]の上限は、本発明のエステル化セルロースエーテルを取得するためには重要ではない。しかし、頻繁に所望される高い高分子量を実現するために、モル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、好ましくは、最大11.5/1.0、または最大10.0/1.0、または最大8.0/1.0である。他の反応パラメータが一定に保たれる場合、モル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]が高いほど、概して、エステル化セルロースエーテルの重量平均分子量は低くなる。当業者は、その重量平均分子量が増加するとき、アセトン中のエステル化セルロースエーテルの粘度は増加すると予想するであろう。しかし、セルロースエーテルが、わずか1.20〜2.0mPa・s、より好ましくは1.20〜1.80mPa・s、及び最も好ましくは1.20〜1.60mPa・sの粘度を有する出発物質として使用されるとき、高い重量平均分子量であるが、なおアセトン中で低粘度を有するエステル化セルロースエーテルが、生成され得ることが大変驚くべきことにわかっている。
エステル化反応は、概して、エステル化触媒の存在下で、好ましくはナトリウムアセテートまたはカリウムアセテートなどのカルボン酸アルカリ金属の存在下で、実行される。モル比[カルボン酸アルカリ金属/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、概して[0.4/1.0]〜[3.8/1.0]、及び好ましくは[1.6/1.0]〜[2.7/1.0]である。他の反応パラメータが定義される範囲において一定に保たれる場合、モル比[カルボン酸アルカリ金属/セルロースエーテルの無水グルコース単位]が高いほど、概して、エステル化セルロースエーテルの重量平均分子量は高くなる。アセトン中の10重量%溶液として測定される、高すぎる粘度エステル化セルロースエーテルが取得される場合、本発明の教示と一致して、モル比[カルボン酸アルカリ金属/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、低下するはずであるか、またはモル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、増加するはずである。
反応混合物は、概して、60℃〜110℃で、好ましくは70〜100℃で、反応を完了するのに十分な時間、つまり、典型的には2〜25時間、より典型的には2〜8時間熱せられる。反応混合物は、均一反応混合物を提供するために十分に混合されるべきである。エステル化反応が完了すると、反応生成物は、反応混合物から既知の方法において、例えば、米国特許第4,226,981号、国際特許出願WO第2005/115330号、または欧州特許出願EP第0 219 426号に記載されるような、大量の水とそれを接触させることによって誘発され得る。本発明の好ましい実施形態において、反応生成物は、2012年3月27日出願の米国仮出願第61/616207号、またはWO第2013/148154号として公開されたその対応する国際特許出願第PCT/US13/030394号に記載されるように、反応混合物から沈殿される。
本発明の別の態様は、液体希釈剤、及び上記のエステル化セルロースエーテルのうちの1つ以上を含む組成物である。用語「液体希釈剤」は、本明細書で使用される場合、25℃及び大気圧で液体である、希釈剤を意味する。希釈剤は、水、または有機液体希釈剤、または水と有機液体希釈剤との混合物であり得る。好ましくは、液体希釈剤の量は、噴霧乾燥などの所望される使用またはコーティング目的のために、組成物に十分な流動性及び処理適性を供するのに十分な量である。
用語「有機液体希釈剤」は、本明細書で使用される場合、有機溶媒、または2つ以上の有機溶媒の混合物を意味する。好ましい有機液体希釈剤は、酸素、窒素、または塩素のようなハロゲンなどの1つ以上のヘテロ原子を有する、極性有機溶媒である。より好ましい有機液体希釈剤は、例えば、グリセロールなどの多官能アルコール、もしくは好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、もしくはn−プロパノールなどの単官能アルコールのようなアルコール;エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、もしくはメチルイソブチルケトン;エチルアセテートなどのアセテート;塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;またはアセトニトリルなどのニトリルである。
一実施形態において、本発明の組成物は、液体希釈剤として、有機希釈剤を単独で、または少量の水と混合して含む。この実施形態において、本発明の組成物は、有機液体希釈剤及び水の総重量に基づき、好ましくは50超、より好ましくは少なくとも65、及び最も好ましくは少なくとも75重量パーセントの有機液体希釈剤、ならびに好ましくは50未満、より好ましくは最大35、及び最も好ましくは最大25重量パーセントの水を含む。本発明のこの実施形態は、本発明が水溶性の乏しい活性成分を含む場合、特に有用である。
別の実施形態において、本発明の組成物は、液体希釈剤として、水を単独で、または上記のような少量の有機液体希釈剤と混合して含む。この実施形態において、本発明の組成物は、有機液体希釈剤及び水の総重量に基づき、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも65、及び最も好ましくは少なくとも75重量パーセントの水、ならびに好ましくは最大50、より好ましくは最大35、及び最も好ましくは最大25重量パーセントの有機液体希釈剤を含む。本発明のこの実施形態は、本発明のエステル化セルロースエーテルを含む水性組成物から、コーティングまたはカプセルを提供するのに特に有用である。式−C(O)−R−COOAの基の少なくとも一部が、それらの塩形態であることが好ましい。
液体希釈剤、及び上記のエステル化セルロースエーテルのうちの1つ以上を含む本発明の組成物は、活性成分に対する賦形剤系として有用であり、肥料、除草剤、もしくは殺虫剤などの活性成分、またはビタミン、ハーブ、及びミネラルサプリメント、ならびに薬物などの生物活性成分に対する賦形剤系を調製するための中間体として特に有用である。したがって、本発明の組成物は、好ましくは1つ以上の活性成分、最も好ましくは1つ以上の薬物を含む。用語「薬物」は、従来のものであり、動物、特にヒトに投与されるとき、有益な予防的及び/または治癒的特性を有する化合物を示す。好ましくは、薬物は、「低溶解性薬物」であり、薬物が約0.5mg/mL以下の生理学的に関連したpH(例えば、pH1〜8)で水溶性を有することを意味する。本発明は、薬物の水溶性が減少するにつれて、より大きな有用性を見出す。したがって、本発明の組成物は、0.1mg/mL未満、または0.05mg/mL未満、または0.02mg/mL未満、またはさらには0.01mg/mL未満の水溶性を有する低溶解性薬物に対して好ましく、水溶性(mg/mL)は、USP疑似胃腸緩衝液を含む、任意の生理学的に関連した水溶液(例えば、1〜8の間のpH値を有するもの)中で観察される最小値である。活性成分は、本発明から有益性を得るために低溶解性活性成分である必要はないが、低溶解性活性成分は、本発明の使用のための好ましい種類を表する。所望される使用環境において、かなりの水溶性を示す活性成分は、最大1〜2mg/mL、またはさらには20〜40mg/mLほどの高い水溶性を有してもよい。有用な低溶解性薬物は、国際特許出願WO第2005/115330号、17〜22ページに列挙される。
本発明の液体組成物は、組成物の総重量に基づき、好ましくは1〜40%、より好ましくは5〜35%、さらにより好ましくは7〜30%、及び最も好ましくは10〜25%の上記の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル、40〜99%、より好ましくは50〜94.9%、さらにより好ましくは65〜92.5%、及び最も好ましくは70〜89%の上記にさらに記載される液体希釈剤、ならびに0〜40%、より好ましくは0.1〜40%、さらにより好ましくは0.5〜25%、及び最も好ましくは1〜15%の活性成分を含む。20℃のアセトン中の10重量%溶液として測定される、本発明のエステル化セルロースエーテルの低粘度は、高濃度のエステル化セルロースエーテルの取り込み、すなわち、エステル化セルロースエーテル対液体希釈剤の高い比を可能にするが、それでもなおかなり低粘度の液体組成物を提供する。これは、エステル化セルロースエーテル中の活性成分の固体分散体を生成するために、2つの方法で利用され得る:1.エステル化セルロースエーテル/活性成分のどちらの比も、既知のより希薄な組成物と同じに保たれる。この場合、エステル化セルロースエーテルのより高い濃度は、液体組成物中の活性成分のより高い濃度ももたらし、それに伴って、固体分散体の生成において活性成分の増加した処理量ももたらす一方で、活性成分の同じ安定性を維持する。2.あるいは、液体組成物中のエステル化セルロースエーテルの濃度のみが増加するが、活性成分の濃度は増加しない。これは、エステル化セルロースエーテル/活性成分のより高い比をもたらし、それは、活性成分の処理量を低下させることがない、液体希釈剤の除去後に、エステル化セルロースエーテルのマトリクス中の活性成分の改善された安定化をもたらす。これは、製剤者が、固体投薬形態において、活性成分の非晶質状態の向上された安定化を実現するために、活性成分の含有量を低減させる必要がなく、液体製剤中のエステル化セルロースエーテルをより高い含有量で操作し得ることを意味する。本発明のエステル化セルロースエーテルは、液体組成物中の活性成分の高い充填量を可能にするが、それでもなお、固体分散体の調製においてかなり高い処理量を実現する。WO第2004/014342号、13ページ、最終段落で提案されるような、より高い活性成分処理量を実現するための、非晶質の代わりである半規則性の分散体の生成は、必要ではない。
本発明の一態様では、上記の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル、1つ以上の活性成分、及び任意選択的に1つ以上のアジュバントを含む組成物は、液体形態、例えば、懸濁液、スラリー、噴霧可能な組成物、またはシロップの形態で使用され得る。液体組成物は、例えば、経口、眼、局所、直腸、または鼻腔適用に有用である。上記のように、任意選択的に水と混合される、エタノールまたはグリセロールなどの液体希釈剤は、概して、薬学的に許容されるべきである。アセトンまたは別の有機溶媒中のエステル化セルロースエーテルの低粘度は、注入されるか、または送り込まれるその能力など、液体組成物の取り扱いを有意に改善する。
本発明の別の態様において、本発明の液体組成物は、上記にさらに記載される薬物などの少なくとも1つの活性成分、上記の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル、及び任意選択的に1つ以上のアジュバントを含む、固体分散体を生成するために使用される。固体分散体は、組成物から液体希釈剤を除去することによって生成される。アセトンまたは別の有機溶媒中のエステル化セルロースエーテルの低粘度は、高濃度のエステル化セルロースエーテルを可能にし、それに伴って、高濃度の薬物の組成物への取り込みを可能にするが、それでもなお、液体組成物のかなり低い粘度を維持する。これは、液体組成物がコーティング目的で使用されるとき、またはエステル化セルロースエーテルを含む組成物が、例えば、活性成分及びエステル化セルロースエーテルを含む固体分散体を調製するために、噴霧乾燥に供されるとき、高い処理量を実現するために非常に有利である。さらに、上記のようなエステル化セルロースエーテル対活性成分の高い比を使用した液体剤形は、噴霧乾燥で製剤化され得る。Aエステル化セルロースエーテル対活性成分の高い比は、溶解性が乏しい活性成分の過飽和を維持するため、及びそのバイオアベイラビリティを増加させるために、望ましい。
液体組成物から液体希釈剤を除去する一方法は、液体組成物をフィルムもしくはカプセルに流し込むことによるか、または次いで活性成分を含んでもよい固体担体上に液体組成物を適用することによる。コーティング目的での本発明の液体組成物の使用は、本発明の好ましい態様である。
固体分散体を生成する好ましい方法は、噴霧乾燥による。用語「噴霧乾燥」は、液体混合物を小さい液滴に分離し(噴霧化)、液滴からの溶媒の蒸発のための強い駆動力がある噴霧乾燥装置中で、混合物から溶媒を迅速に除去することを伴うプロセスを指す。噴霧乾燥プロセス及び噴霧乾燥装置は、概して、Perry’s Chemical Engineers’ Handbook、20−54〜20−57ページ(1984年第6版)に記載される。噴霧乾燥プロセス及び装置に関するさらなる詳細は、Marshall、「Atomization and Spray−Drying」、50 Chem.Eng.Prog.Monogr.Series 2(1954年)、及びMasters、Spray Drying Handbook(1985年第4版)によって検討される。有用な噴霧乾燥プロセスは、国際特許出願WO第2005/115330号、34ページ、7行目〜35ページ、25行目に記載される。あるいは、本発明の固体分散体は、i)a)上記に定義された少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル、b)1つ以上の活性成分、及びc)1つ以上の任意の添加剤をブレンドすること、ならびにii)ブレンドを押出に供することによって調製されてもよい。本明細書で使用される場合、用語「押出」は、射出成形、溶融鋳造、及び圧縮成形として既知のプロセスを含む。薬物などの活性成分を含む組成物を押出する、好ましくは溶融押出するための技術は、既知であり、Joerg Breitenbach,Melt extrusion:from process to drug delivery technology,European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 54(2002)107〜117、または欧州特許出願EP第0 872 233号に記載される。本発明の固体分散体は、エステル化セルロースエーテルa)及び活性成分b)の総重量に基づき、好ましくは20〜99.9%、より好ましくは30〜98%、及び最も好ましくは60〜95%の上記のエステル化セルロースエーテルa)、及び好ましくは0.1〜80%、より好ましくは2〜70%、及び最も好ましくは5〜40%の活性成分b)を含む。エステル化セルロースエーテルa)及び活性成分b)の組み合わされた量は、固体分散体の総重量に基づき、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%である。残りがある場合の量は、以下に記載されるアジュバントc)のうちの1つ以上からなる。固体分散体は、エステル化セルロースエーテルa)のうちの1つ以上、活性成分b)のうちの1つ以上、及び任意選択的にアジュバントc)のうちの1つ以上を含むことができる。しかし、それらの総量は、概して上記の範囲内である。
少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル中に少なくとも1つの活性成分を含む固体分散体がいったん形成されると、投薬形態中への分散体の取り込みを促進するために、いくつかの処理作業が使用され得る。これらの処理作業は、乾燥、造粒、及び製粉を含む。固体分散体中の任意のアジュバントの包含は、投薬形態に組成物を製剤化するために有用であり得る。本発明の固体分散体は、ストランド、ペレット、顆粒、丸剤、錠剤、カプレット、微粒子、カプセル充填物、もしくは射出成形カプセルの形態、または粉末、フィルム、ペースト、クリーム、懸濁液、またはスラリーの形態など、種々の形態であってもよい。
投薬形態中の活性成分の量は、投薬形態の総重量に基づき、概して少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも3%、最も好ましくは少なくとも5%、及び概して最大70%、好ましくは最大50%、より好ましくは最大30%、最も好ましくは最大25%である。
本発明の別の態様では、液体希釈剤、及び上記のエステル化セルロースエーテルのうちの1つ以上を含む、本発明の組成物は、コーティング組成物を形成するために、錠剤、顆粒、ペレット、カプレット、トローチ剤、坐薬、ペッサリー、または埋め込み型投薬形態など、投薬形態をコーティングするために使用されてもよい。本発明の組成物が薬物などの活性成分を含む場合、薬物層化が達成され得、換言すれば、投薬形態及びコーティングは、異なる最終用途のための、及び/または異なる放出動態を有する、異なる活性成分を含んでもよい。
本発明のさらに別の態様では、液体希釈剤、及び上記のエステル化セルロースエーテルのうちの1つ以上を含む、本発明の組成物は、液体組成物を浸漬ピンと接触させるステップを含む方法において、カプセルの製造のために使用されてもよい。
本発明の液体組成物及び固体分散体は、着色剤、色素、乳白剤、香味料及び呈味改良剤、酸化防止剤、ならびにこれらの任意の組み合わせなど、任意の添加剤をさらに含んでもよい。任意の添加剤は、好ましくは薬学的に許容される。1つ以上の任意のアジュバントの有用な量及び種類は、概して、当該技術分野において既知であり、本発明の液体組成物及び固体分散体の目的とする最終用途に依存する。
本発明のいくつかの実施形態がここで、以下の実施例に記載される。
特に断りがない限り、全ての部及び百分率は、重量による。実施例において、以下の試験手順が使用される。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)試料の粘度
HPMC試料の粘度を、20℃±0.1℃の水中の2.0重量%溶液として測定した。水中の2.0重量%HPMC溶液を、米国薬局方(USP35、「ヒプロメロース」、3467〜3469ページ)に従って調製し、続いて、DIN 51562−1:1999−01(1999年1月)に従って、ウベローデ粘度測定を行った。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)の粘度
0.43重量%水性NaOH中のHPMCASの2.0重量%溶液を、「ヒプロメロースアセテートサクシネート、米国薬局方及び国民医薬品集、NF29、ページ1548〜1550ページ」に記載される通りに調製し、続いて、DIN51562−1:1999−01(1999年1月)に従って、20℃で、ウベローデ粘度測定を行った。
アセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液を、「ヒプロメロースアセテートサクシネート、米国薬局方及び国民医薬品集、NF29、1548〜1550ページ」に従って、HPMCASの乾燥減量を最初に決定することによって、調製した。続いて、10.00gのHPMCASを、その乾燥重量に基づき、激しい撹拌下で100gのアセトンと混合した。混合物を約24時間にわたってローラーミキサー上で回転させた。溶液を、Heraeus Holding GmbH(Germany)から市販されているMegafuge1.0遠心分離機を使用して、2000rpmで3分間、遠心分離し、続いて、DIN51562−1:1999−01(1999年1月)に従って、20℃で、ウベローデ粘度測定を行った。
HPMCASのエーテル及びエステル基の含有量
エステル化セルロースエーテル中のエーテル基の含有量を、米国薬局方及び国民医薬品集、USP35、3467〜3469ページ、「ヒプロメロース」に関して記載されるものと同じ方法で決定した。
アセチル基(−CO−CH)によるエステル置換、及びサクシノイル基(−CO−CH−CH−COOH)によるエステル置換を、米国薬局方及び国民医薬品集、NF29、1548〜1550ページ、ヒプロメロースアセテートサクシネートに従って決定した。エステル置換に関して報告された値を、揮発物に対して補正した(上記のHPMCAS研究論文中の「乾燥減量」の節に記載されるように決定される)。
HPMCASのMw、Mn、及びMの決定
Mw、Mn、及びMzを、別途記述されない限り、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743に従って測定した。移動相は、40体積部のアセトニトリルと、50mMのNaH2PO4及び0.1MのNaNO3を含有する、60体積部の水性緩衝液との混合物であった。移動相を8.0のpHに調整した。セルロースエーテルエステルの溶液を細孔径0.45μmのシリンジフィルターを通して、HPLCバイアル中に濾過した。
より具体的には、利用される化学物質及び溶媒は、以下の通りである。
ポリエチレンオキシド標準物質(PEOX 20 K及びPEOX 30 Kと省略される)を、Agilent Technologies,Inc.(Palo Alto,CA)、カタログ番号PL2083−1005及びPL2083−2005から購入した。
アセトニトリル(HPLCグレード≧99.9%、CHROMASOL plus)、カタログ番号34998、水酸化ナトリウム(半導体グレード、99.99%、微量金属塩基)、カタログ番号306576、水(HPLCグレード、CHROMASOLV Plus)カタログ番号34877、及び硝酸ナトリウム(99,995%、微量金属塩基)カタログ番号229938を、Sigma−Aldrich(Switzerland)から購入した。
リン酸二水素ナトリウム(≧99.999%TraceSelect)カタログ番号71492を、FLUKA(Switzerland)から購入した。
5mg/mLのPEOX20Kの標準化溶液、2mg/mLのPEOX30Kの基準溶液、及び2mg/mLのHPMCASの試料溶液を、バイアル中に計量された量のポリマーを添加し、移動相の測定体積でそれを溶解することによって、調製した。全ての溶液を、PTFEコーティング磁気撹拌子を使用して撹拌しながら、24時間室温で、蓋の付いたバイアル中で溶解させた。
標準化溶液(PEOX20k、単回調製、N)及び基準溶液(PEOX30K、二回調製、S1及びS2)を、Whatmanの、孔径0.02μm及び直径25mm(Whatman Anatop25、カタログ番号6809−2002)のシリンジフィルターを通して、HPLCバイアル中に濾過した。
試験試料溶液(HPMCAS、二回調製、T1、T2)及び実験室基準(HPMCAS、単回調製、LS)を、孔径0.45μm(Nylon、例えば、Acrodisc13mm VWR カタログ番号514−4010)のシリンジフィルターを通して、HPLCバイアル中に濾過した。
クロマトグラフィー条件及び実行シーケンスを、Chen、R.et al.;Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis56(2011)743−748)に記載されるように実行した。SEC−MALLS器具一式は、Agilent Technologies,Inc.(Palo Alto,CA)からのHP1100HPLCシステム、DAWN Heleos II 18度レーザー光散乱検出器及びOPTILAB rex屈折率検出器(両方とも、Wyatt Technologies,Inc.(Santa Barbara,CA)から)を含んだ。分析サイズ排除カラム(TSK−GEL(登録商標)GMPWXL、300×7.8mm)を、Tosoh Bioscienceから購入した。OPTILAB及びDAWNの両方を35℃で作動させた。分析SECカラムを、室温(24±5℃)で作動させた。移動相は、以下の通り調製された40体積部のアセトニトリルと、50mMのNaH2PO4及び0.1MのNaNO3を含有する60体積部の水性緩衝液との混合物であった。
水性緩衝液:7.20gのリン酸二水素ナトリウム及び10.2gの硝酸ナトリウムを、清潔な2Lのガラスボトル中の1.2Lの精製水に添加しながら、溶解するまで撹拌した。
移動相:800mLのアセトニトリルを、上記で調製した1.2Lの水性緩衝液に添加し、良好な混合物が得られ、かつ温度が周囲温度と平衡になるまで撹拌した。
移動相を10MのNaOHで8.0に調整し、0.2mのナイロン膜フィルタを通して濾過した。流速は、インライン脱ガスを用いて0.5mL/分であった。注入体積は100μLであり、分析時間は35分であった。
HPMCASに対して、0.120mL/gのdn/dc値(屈折率増分)を使用して、Wyatt ASTRAソフトウェア(バージョン5.3.4.20)によって、MALLSデータを収集及び処理した。検出器の光散乱信号番号1〜4、17、及び18)を、分子量計算において使用しなかった。代表的なクロマトグラフィー実行シーケンスは、以下のB、N、LS、S1(5x)、S2、T1(2x)、T2(2x)、T3(2x)、T4(2x)、S2、T5(2x)など、S2、LS、Wであり、Bは移動相のブランク注入を表し、N1は標準化溶液を表し、LSは実験室基準HPMCASを表し、S1及びS2はそれぞれ基準溶液1及び2を表し、T1、T2、T3、T4、及びT5は試験試料溶液を表し、かつWは水注入を表す。(2x)及び(5x)は、同一溶液の注入の数を示す。
OPTILAB及びDAWNの両方を、製造業者の推奨手順及び頻度に従って、定期的に較正した。5mg/mLポリエチレンオキシド基準(PEOX20K)の100μLの注入を、全角度光散乱検出器を各実行シーケンスに対して、ほぼ90°に標準化するために用いた。
この単分散ポリマー基準の使用は、OPTILABとDAWNとの間の体積遅延を決定することも可能し、これにより屈折率信号への光分散信号の適切な配列が可能になった。これは、各データスライスに対する重量平均分子量(Mw)の計算のために必要である。
実施例1〜6のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)の生成
以下の表1に列挙される量の氷酢酸、酢酸無水物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、コハク酸無水物、及びナトリウムアセテート(無水)を、徹底的な撹拌下で反応器に導入し、均一反応混合物を生成した。HPMCは、以下の表2に列挙されるように、メトキシル及びヒドロキシプロポキシル置換、ならびに20℃の水中の2%溶液として測定される、粘度を有した。
混合物を、以下の表1に列挙されるように、3または3.5時間撹拌しながら85℃で熱し、エステル化をもたらした。xLの水を、撹拌下で反応器に添加して、HPMCASを沈殿させた。沈殿生成物を、反応器から除去し、5200rpmで動作するUltra−Turrax撹拌器S50−G45を使用して、高せん断混合を適用することによって、yLの水で洗浄した。極めて高純度のHPMCASを得るために、洗浄は、中間濾過ステップを用いていくつかの部分で実施した。HPMCAS生成物は、粘度が実質的に一定(アセトン中の10重量%)になるまで洗浄及び濾過されるべきである。水、x及びyLの数は以下の表1に列挙される。最後の濾過ステップ後、生成物を50℃で一晩乾燥させた。
比較例A及びBのHPMCASの生成
より高粘度のHPMCを使用したことを除いて、比較例A及びBに従ったHPMCASの生成を、以下の表2に列挙されるように実施例1〜6と同様に行った。HPMCは、Methocel E3 LVプレミアムセルロースエーテルとして、The Dow Chemical Companyから市販されている。
比較例CのHPMCASの生成
HPMCの種類、及び氷酢酸、酢酸無水物、HPMC、コハク酸無水物、及びナトリウムアセテート(無水)の重量比を、欧州特許出願EP第0219 426 A2号の実施例2に開示されるように使用したことを除いて、比較例Cに従ったHPMCASの生成を、実施例1〜6と同様に行った。使用された量は以下の表1に列挙される。
比較例Cにおいて使用されたHPMCは、20℃の水中の2%溶液として測定される、3.1mPa・sの粘度を有した。HPMCは、9.3重量%のヒドロキシプロポキシル基及び約28.2重量%のメトキシル基を含有した。このHPMCは、Methocel E3 LVプレミアムセルロースエーテルとしてThe Dow Chemical Companyから市販されている。
混合物を85℃で、3.5時間撹拌しながら熱して、エステル化をもたらした。
xLの水を、撹拌下で反応器に添加して、HPMCASを沈殿させた。沈殿生成物を、反応器から除去し、5200rpmで動作するUltra−Turrax撹拌器S50−G45を使用して、高せん断混合を適用することによって、yLの水で洗浄した。水、x及びyの数は、以下表1に列挙される。生成物を、濾過によって単離し、55℃で12時間乾燥させた。
比較例Cにおいて、取得されたエステル置換、アセチル%、及びサクシノイル%は、欧州特許出願EP第0219 426 A2号の実施例2に開示されるものとは著しく異なったしたがって、比較例Cを繰り返した。繰り返された比較例Cにおいて、取得されたエステル置換、アセチル%、及びサクシノイル%は、最初の比較例Cと実質的に同じであった。表2に記載される結果は、比較例Cの2つの実行の平均を示す。
比較例D及びEのHPMCASの生成
氷酢酸、酢酸無水物、HPMC、コハク酸無水物、及びナトリウムアセテート(無水)の重量比を、開示された国際特許出願WO第2005/115330号、51及び52ページ、ポリマー1及び3のように使用したことを除いて、比較例D及びEに従ったHPMCASの生成を、実施例1〜6と同様に行った。生成物を、国際特許出願WO第2005/115330号に記載されるように、取得、分離、及び洗浄した。反応混合物を2.4Lの水でクエンチし、ポリマーを沈殿させた。実施例Dのみに対して、追加の1Lの水を使用して、沈殿を完了させた。ポリマーを、次に単離し、3×300mLの水で洗浄した。その後、ポリマーを、600mLのアセトン中で溶解し、再度2.4Lの水中で沈殿させた。沈殿を完了するために、さらに1Lの水を添加した。
比較例F〜H
国際特許出願WO第2011/159626号の1及び2ページに開示されるように、HPMCASは、商標「AQOAT」によって既知であり、Shin−Etsu Chemical Co.,Ltd(Tokyo,Japan)から市販されている。Shin−Etsuは、種々のpHレベルで腸溶性保護を提供するために置換基レベルの異なる組み合わせを有する3つのグレードのAQOATポリマー、典型的にはAS−LFまたはAS−LGのように、良好(fine)に対して「F」、または「G」の記号表示が続く、AS−L、AS−M、及びAS−Hを製造する。それらの販売仕様書は、以下に列挙される。
[表]
Figure 0006267239
市販の材料の試料を、上記でさらに記載されるように分析した。
実施例1〜6及び比較例A〜Eに従って生成されるHPMCASの特性、ならびに市販される比較例F〜Hの特性は、以下の表2に列挙される。
以下の表2中、略語は以下の意味を有する。
DS=DS(メトキシル):メトキシル基による置換度
MSHP=MS(ヒドロキシプロポキシル):ヒドロキシプロポキシル基による分子置換
DOSAc:アセチル基の置換度
DOS:サクシノイル基の置換度
Figure 0006267239
Figure 0006267239
実施例1〜6は、本発明のエステル化セルロースエーテルが、20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、極めて低い粘度を有することを例示する。アセトンなどの、有機溶媒中のこれらのエステル化セルロースエーテルの溶液は、大変効率的に処理され得る。例えば、高濃度のエステル化セルロースエーテルの噴霧乾燥及びコーティング作業におけるかなり高速の処理量が、実現し得る。
さらに、本発明のエステル化セルロースエーテルが、かなりの高分子量を有する場合でさえ、アセトン中の10重量%溶液として測定される、極めて低い粘度を有する本発明のエステル化セルロースエーテルが、提供され得ることが驚くべきことにわかっている。重量平均分子量にかかわりなく、アセトン中で極めて低い粘度を実現することは、大きな有利性を提供する。エステル化セルロースエーテルの分子量は、薬物のような、活性成分の具体的な必要性に適合し得るが、アセトンなどの、有機溶媒中でのエステル化セルロースエーテルの効率的な方法は、影響を受けない。
比較例A〜Hによって例示されるように、増加した重量平均分子量は、通常、アセトン中の10重量%溶液として測定される、増加した粘度を引き起こす。これらの特性が、アセチル%及びサクシノイル%によっても幾分か影響を受けることは当業者には既知である。
比較例Aの、氷酢酸、酢酸無水物、HPMC、コハク酸無水物、及びナトリウムアセテート(無水)の重量比を、実施例4のそれらと一致させた。比較例Bの重量比を比較例1のそれらと一致させた。実施例1と比較例Bとの比較及び実施例4と比較例Aとの比較は、出発物質として使用されるHPMCの粘度が、はるかに低くない場合でさえ、及び反応物質のモル比が、一定に保たれる場合でさえ、アセトン中の10重量%溶液として測定される、はるかに低い粘度が取得されることを例示する。
溶解性が乏しい薬物の水溶性における、セルロースエーテルの影響
実施例3及び比較例F〜Gのエステル化セルロースエーテルの、過飽和レベルの水溶液中で薬物濃度を維持する能力を、水溶性が乏しい薬物であるグリセオフルビン及びフェニトインを用いて試験した。グリセオフルビンは、8.54mg/lの水溶性、2.2のlogP、220℃のTm、85℃のTgを有し、結果的にTm/Tg=493°K/358°K=1.39を有する[Feng,Tao et.al.;J.Pharm.Sci.;Vol.97,No.8,2008,pg3207−3221 and W.Curatolo,Pharmaceutical Research,Vol.26,No.6,June 2009,pg1422]。グリセオフルビンは、図表、Tm/Tg比対logP(MOLECULAR PHARMACEUTICS VOL.5,NO.6内、1018ページの図14)上の群2に属する。
フェニトインは、32mg/lの水溶性、2.47のlogP、295℃のTm、71℃のTgを有し、結果的にTm/Tg=568°K/344°K=1.65を有する[Friesen et al.,MOLECULAR PHARMACEUTICS VOL.5,NO.6,1003−1019 and W.Curatolo,Pharmaceutical Research,Vol.26,No.6,June 2009,pg1422]。フェニトインは、図表、Tm/Tg比対logP(MOLECULAR PHARMACEUTICS VOL5,NO.6,2008内、1018ページの図14)上の群3に属する。
37℃のリン酸緩衝生理食塩水(82mMの塩化ナトリウム、20mMのリン酸水素二ナトリウム、47mMの第一リン酸カリウム、0.5重量%の実験用腸流動性粉末、pH6.5)中の、以下の表3に列挙されるエステル化セルロースエーテルの溶液(950μL、3.16mg/L)を、Tecan150液体操作機を使用して、37℃に熱したアルミニウムの96(8×12)個のウエルブロック中に配置された指定の1mLのバイアル中にロボット制御で送達した。37℃の有機薬物溶液を、以下の表3に列挙されるエステル化セルロースエーテルを含む、リン酸緩衝生理食塩水水溶液上に分注した。有機薬物溶液は、a)1000mg/Lの最終の最高薬物濃度、ジメチルホルムアミド中の20g/Lのグリセオフルビン、50μL、またはb)1000mg/Lの最終の最高薬物濃度、ジメチルホルムアミド中の20g/Lのフェニトイン、50μLであった。ロボットは、液体を吸引し、約30個の各バイアルに対して、定められた順序で液体を分注して、混合した。180分後、バイアルを、1分間、約3200×g(g=地球上の重力)で遠心分離した。一定分量(30μL)を、96個のウェルプレート中のメタノール(150μL)に送り、封着して、手早くかつ静かに撹拌して混合し、その後、薬物濃度をHPLCによって分析した。
制御実行において、実験を、セルロースエーテルを全く含有しないリン酸緩衝生理食塩水水溶液を用いて、上記のように行った。
以下の表3において、180分後、遠心分離後に沈殿しなかったが、リン酸緩衝生理食塩水水溶液中で溶解されたままである、グリセオフルビン及びフェニトインの濃度(4つの実験の平均の複製)が、列挙される。濃度の誤差範囲は約10%である。
以下の表3の結果は、本発明のエステル化セルロースエーテルが、過飽和レベルの水溶液中で、水溶性が乏しい薬物の濃度を維持できることを例示する。表3のデータは、本発明のエステル化セルロースエーテルが、アセトン中の10重量%溶液として測定される、著しくより低粘度、及び著しくより低い重量平均分子量を有するときでさえ、この能力が、同等の既知であるエステル化セルロースエーテルのこの能力と同等であることをさらに例示する。この発見は、極めて予想外であり、低水溶性の活性成分のための賦形剤として、本発明のエステル化セルロースエーテルが非常に有利であることを例示する。本発明のエステル化セルロースエーテルは、溶液中、特に有機溶液中での容易な処理適性、及び過飽和レベルの水溶液中で、水溶性が乏しい薬物の濃度を維持する高い能力を組み合わせる。
Figure 0006267239
本開示は以下も包含する。
[1] エステル化セルロースエーテルであって、
(i)脂肪族一価アシル基、または(ii)式−C(O)−R−COOAの基であり、式中、Rが二価の脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基であり、Aが水素もしくはカチオンである、基、または(iii)脂肪族一価アシル基及び式−C(O)−R−COOAの基の組み合わせを含み、
前記エステル化セルロースエーテルが、a)20℃の0.43重量%水性NaOH中の前記エステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される、1.2〜1.8mPa・sの粘度、またはb)20℃のアセトン中の前記エステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大5mPa・sの粘度、またはc)前記粘度a)及びb)の組み合わせを有する、前記エステル化セルロースエーテル。
[2] 20℃のアセトン中の前記エステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大5mPa・sの粘度を有する、上記態様1に記載の前記エステル化セルロースエーテル。
[3] a)20℃の0.43重量%水性NaOH中の前記エステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される、1.2〜1.8mPa・sの粘度、及びb)20℃のアセトン中の前記エステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大5mPa・sの粘度を有する、上記態様1に記載の前記エステル化セルロースエーテル。
[4] 20℃のアセトン中の前記エステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大3mPa・sの粘度を有する、上記態様1〜3のいずれかに記載の前記エステル化セルロースエーテル。
[5] 前記脂肪族一価アシル基が、アセチル、プロピオニル、またはブチリル基であり、式−C(O)−R−COOAの前記基が、−C(O)−CH −CH −COOA、−C(O)−CH=CH−COOA、または−C(O)−C −COOA基である、上記態様1〜4のいずれかに記載の前記エステル化セルロースエーテル。
[6] ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートである、上記態様1〜5のいずれかに記載の前記エステル化セルロースエーテル。
[7] 液体希釈剤、及び上記態様1〜6のいずれかに記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルを含む、組成物。
[8] 少なくとも1つの活性成分、及び任意選択的に1つ以上のアジュバントをさらに含む、上記態様7に記載の前記組成物。
[9] 前記組成物の総重量に基づき、10〜25パーセントの少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル、70〜89パーセントの液体希釈剤、及び1〜15パーセントの活性成分を含む、上記態様7または8に記載の前記組成物。
[10] 少なくとも1つの活性成分、及び上記態様1〜6のいずれかに記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルを含む、固体分散体。
[11] 前記固体分散体が、錠剤、丸剤、顆粒、ペレット、カプレット、微粒子、カプセル充填物、またはペースト、クリーム、混濁液、もしくはスラリーに製剤化されている、上記態様10に記載の前記固体分散体。
[12] 上記態様1〜6のいずれかに記載の少なくとも1つエステル化セルロースエーテルでコーティングされている、投薬形態。
[13] 上記態様1〜6のいずれかに記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルを含む、カプセル殻。
[14] 20℃の水中の2重量%溶液として測定される、1.2〜1.8mPa・sの粘度を有するセルロースエーテルが、(i)脂肪族モノカルボン酸無水物、もしくは(ii)ジカルボン酸無水物、または(iii)脂肪族モノカルボン酸無水物及びジカルボン酸無水物の組み合わせでエステル化される、エステル化セルロースエーテルを生成する方法。
[15] 上記態様1〜6のいずれかに記載の前記エステル化セルロースエーテルが、生成される、上記態様14に記載の前記方法。

Claims (7)

  1. ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートであるエステル化セルロースエーテルであって、20℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される最大5mPa・sの粘度を有する、前記エステル化セルロースエーテル。
  2. a)20℃の0.43重量%水性NaOH中の前記エステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される、1.2〜1.8mPa・sの粘度、及びb)20℃のアセトン中の前記エステル化セルロースエーテルの10重量%溶液として測定される、最大5mPa・sの粘度を有する、請求項1に記載の前記エステル化セルロースエーテル。
  3. 液体希釈剤、及び請求項1または2に記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルを含む、組成物。
  4. 前記組成物の総重量に基づき、10〜25パーセントの少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル、70〜89パーセントの液体希釈剤、及び1〜15パーセントの活性成分を含む、請求項3に記載の前記組成物。
  5. 少なくとも1つの活性成分、及び請求項1または2に記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルを含む、固体分散体。
  6. 請求項1または2に記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルでコーティングされている、錠剤、顆粒、ペレット、カプレット、トローチ剤、坐薬、ペッサリー、及び埋め込み型の剤形から選択される、剤形。
  7. 請求項1または2に記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルを含む、カプセル殻。
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