JP6330190B2 - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Description
このハイブリッド車両は、一方の動力源であるエンジンの出力を無段変速機による無段変速下にクラッチを介して適宜車輪に伝達可能となるようこれらエンジンおよび車輪間を駆動結合し、他方の動力源である電動モータを当該車輪に常時駆動結合した型式のものである。
よって、EVモードでの停車中に無段変速機を例えば前進自動変速(D)レンジから後退走行(R)レンジへD→Rセレクト操作するなど、Rレンジにセレクト操作した場合、車両の後退走行用にエンジンを始動し、これにより駆動される機動ポンプからの作動媒体でクラッチを締結する。
ところでEVモードへの移行時に無段変速機が後退走行レンジ用の最ロー変速比に戻る保証はない。
なお、当該不足した駆動力での発進により車両が走行を開始すると、無段変速機の内部が回転するため、機動ポンプからの作動媒体による無段変速機の変速が可能となって無段変速機は後退走行レンジ用最ロー変速比に向けダウンシフトされるものの、このダウンシフトが完了するまでの間は上記の駆動力不足が続いて、後発進応答が悪くなるという問題をも生ずる。
先ず本発明の前提となるハイブリッド車両を説明するに、これは、
運転者のアクセル操作に応動する動力源としてエンジンのほかに電動モータを具え、前記エンジンにより駆動される機動ポンプからの作動媒体で制御される断接要素を介して、前記エンジンおよび無段変速機より成るエンジン駆動系が車輪に切り離し可能に駆動結合され、該断接要素を解放すると共に前記エンジンを停止させることで前記電動モータのみにより前記車輪を駆動する電気走行が可能であるほか、前記エンジンを始動させると共に前記断接要素を締結することで前記電動モータおよびエンジンにより前記車輪を駆動するハイブリッド走行が可能な車両である。
電動モータ逆転駆動手段は、後退セレクト検知手段により後退走行レンジへのセレクト操作が検知された後、後退発進の意志を表す操作が行われるとき、前記電動モータをアクセル操作に応じた後退方向逆転駆動状態となして車両を後退走行させるものである。
エンジン始動手段は、電動モータ逆転駆動手段による電動モータの後退方向逆転駆動での後退走行中、前記エンジンの始動により前記無段変速機を変速可能状態となすものである。
そして変速手段は、該変速可能状態の無段変速機を後退発進用の所定変速比に変速させるものであり、また、断接要素締結手段は、該変速の完了後に前記断接要素を締結させるものである。
電気走行モードでの停車中に無段変速機が後退走行レンジにセレクト操作され、その後に後退発進の意志を表す操作が行われた時、電動モータをアクセル操作に応じた後退方向逆転駆動状態となして車両を後退走行させ、この後退走行中にエンジン始動により無段変速機内を回転させて無段変速機を変速可能状態となし、無段変速機を後退発進用の所定変速比に変速させ、その後に断接要素を締結させるため、以下の効果が奏し得られる。
しかも、後退走行レンジへのセレクト操作後に後退発進の意志を表す操作が行われた時、先ず電動モータをアクセル操作に応じた後退方向逆転駆動状態にして車両を後退走行させ、この後退走行中に無段変速機を上記後退発進用の所定変速比に向け変速させるため、当該変速の終了まで後退発進を待つ必要がなく、後退発進の意志を表す操作が行われたら直ちに後退発進を開始させることができ、後退発進遅れ時間の発生を皆無となし得てこれによる運転性の悪化に関した問題も生ずることがない。
<実施例の構成>
図1は、本発明の一実施例になる制御装置を具えたハイブリッド車両の駆動系に係わる全体制御システムを示す概略系統図である。
エンジン1は、Vベルト式無段変速機4を介して駆動車輪5に適宜切り離し可能に駆動結合し、Vベルト式無段変速機4は、概略を以下に説明するようなものとする。
プライマリプーリ6はトルクコンバータT/Cを介してエンジン1のクランクシャフトに結合し、セカンダリプーリ7は副変速機31およびファイナルギヤ組9を順次介して駆動車輪5に結合する。
逆にプライマリプーリ6のプーリV溝幅を大きくしつつ、セカンダリプーリ7のプーリV溝幅を小さくすることで、Vベルト8がプライマリプーリ6との巻き掛け円弧径を小さくされると同時にセカンダリプーリ7との巻き掛け円弧径を大きくされ、Vベルト式無段変速機4はロー側プーリ比へのダウンシフトを行う。
インバータ13は、バッテリ12の直流電力を交流電力に変換して電動モータ2へ供給すると共に電動モータ2への供給電力を加減して、電動モータ2を駆動力制御および回転方向制御する。
この回生制動時はインバータ13が、電動モータ2に回生制動力分の発電負荷をかけてこれを発電機として作用させ、電動モータ2の発電電力をバッテリ12に蓄電する。
この間、副変速機31を中立状態にしていることで、停止状態のエンジン1と無段変速機構CVTとを連れ回すことがなく、EV走行中の電力消費を抑制することができる。
キャリパ15は、運転者が踏み込むブレーキペダル16の踏力に応動して負圧式ブレーキブースタ17による倍力下でブレーキペダル踏力対応のブレーキ液圧を出力するマスターシリンダ18に接続し、このブレーキ液圧でキャリパ15を作動させてブレーキディスク14の制動を行う。
なお上記のブレーキ液圧は、アンチスキッド制御時に、制動力が過大にならないよう、適宜に減圧される。
ハイブリッドコントローラ21は更に、エンジンコントローラ22、モータコントローラ23、変速機コントローラ24、およびバッテリコントローラ25との間で、内部情報のやり取りを行って、本発明が狙いとする後述の後退ハイ発進防止制御に資する。
モータコントローラ23は、ハイブリッドコントローラ21からの指令に応答してインバータ13を介し電動モータ2の出力制御を行う。
バッテリコントローラ25は、ハイブリッドコントローラ21からの指令に応答し、バッテリ12の充放電制御を行う。
副変速機31は図2(a)に示すように、複合サンギヤ31s-1および31s-2と、インナピニオン31pinと、アウタピニオン31poutと、リングギヤ31rと、ピニオン31pin, 31poutを回転自在に支持したキャリア31cとからなるラビニョオ型プラネタリギヤセットで構成する。
複合サンギヤ31s-1および31s-2のうち、サンギヤ31s-1は入力回転メンバとして作用するようセカンダリプーリ7に結合し、サンギヤ31s-2はセカンダリプーリ7に対し同軸に配置するが自由に回転し得るように配置する。
アウタピニオン31poutはリングギヤ31rの内周に噛合させ、キャリア31cを出力回転メンバとして作用するようファイナルギヤ組9に結合する。
この状態でローブレーキL/Bを締結すると、副変速機31は前進第1速選択(減速正回転出力)状態となり、
ハイクラッチH/Cを締結すると、副変速機31は前進第2速選択(直結正回転出力)状態となり、
リバースブレーキR/Bを締結すると、副変速機31は後退変速段選択(減速逆回転出力)状態となる。
従って、図2(a)の無段変速機4内における副変速機31の変速摩擦要素H/C, R/B, L/Bが本発明における断接要素に相当し、これら変速摩擦要素H/C, R/B, L/Bのいずれか1つを適宜締結することにより、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動車輪5との間を切り離し可能に結合することができる。
第2速選択指令時はスイッチバルブ41が、ソレノイド39からのライン圧PLをハイクラッチ圧としてハイクラッチH/Cに向かわせ、これを締結することで副変速機31の第2速選択指令を実現する。
後退選択指令時はスイッチバルブ41が、ソレノイド39からのライン圧PLをリバースブレーキ圧としてリバースブレーキR/Bに向かわせ、これを締結することで副変速機31の後退選択指令を実現する。
上記ハイブリッド車両を、EVモード(エンジン1を停止し、副変速機31を中立状態にしたモード)で、Rレンジへのセレクト操作により後退発進させるとき、無段変速機4(無段変速機構CVT)が後退時に本来選択されるべき最ロー変速比でない場合(所謂後退ハイ発進時)における駆動力不足および後退応答遅れの問題を解消するため、図1,2のハイブリッドコントローラ21は図3に示す後退ハイ発進防止制御を遂行する。
図4は、横軸に車速VSP、縦軸に車両の駆動力を目盛ったハイブリッド車両の運転モード領域線図で、第1座標には、比較的低車速および低駆動力域にEV走行域(EVモードによる前進駆動走行域)が、また比較的高車速および大駆動力域にHEV走行域(HEVモードによる前進駆動走行域)が存在する。
また第3座標は、後退方向への駆動走行域(後退駆動走行域)であり、第4座標は、EV回生域(EVモードによる回生制動走行域)である。
副変速機31が上記の通り後退変速段選択状態にされると、運転点A3の停車(車速VSP=0)状態であるため、無段変速機4(無段変速機構CVT)内が回転不能であって、無段変速機4(無段変速機構CVT)は変速不能のままであり、上記した最ロー変速比よりもハイ側の変速比に保持される。
この後退ハイ発進時は、発進用アクセル操作を行っても最ロー変速比で得られるべき規定のトルクを車輪に向かわせることができず、駆動力不足を運転者に感じさせるという問題を生ずる。
なお、当該不足した駆動力での発進により車両が走行を開始すると、無段変速機4(無段変速機構CVT)の内部が回転するため、オイルポンプO/Pからのオイルによる無段変速機4(無段変速機構CVT)の変速が可能となって無段変速機4(無段変速機構CVT)は後退走行レンジ用最ロー変速比に向けダウンシフトされるものの、このダウンシフトが完了するまでの間は上記の駆動力不足が続いて、後発進応答が悪くなるという問題をも生ずる。
ステップS10においては、シフトレバー28がRレンジへセレクト操作された状態がRレンジセレクト判定用の規定時間以上に亘って継続したか否かにより、Rレンジへセレクト操作されたか否かをチェックする。
この判定によれば、Rレンジ位置を通過するだけのセレクト操作を、Rレンジへのセレクト操作があったと誤判定するのを防止することができて、後退ハイ発進防止制御が誤って実行される不具合を回避することができる。
従ってステップS10は、本発明における後退セレクト検知手段に相当する。
ステップS10でRレンジへのセレクト操作があったと判定する時は、制御をステップS11以降に進めて、本発明が狙いとする後退ハイ発進防止制御を以下のように遂行する。
ステップS11においては、電動モータ2を後退走行に使用可能か否かを以下のごとくに、後退方向路面勾配θや、バッテリ2の蓄電状態SOCや、電動モータ2の後退方向逆転駆動継続時間からチェックする。
(1)後退方向路面勾配θが、電動モータ2の定格出力で車両を後退させることができる規定値より急である時は、電動モータ2を後退走行に使用不能であると判定する。
(2)バッテリ2の蓄電状態SOCで決まる、電動モータ2(モータ駆動系)の出力可能な最大駆動力Tmmaxが、現在の後退方向路面勾配θのもとで車両を後退走行させ得るトルク値の下限に対応した規定値よりも小さい時、電動モータ2を後退走行に使用不能であると判定する。
(3)電動モータ2の逆回転駆動継続時間が、前記した空冷故の過熱に関する問題を生ずる規定時間以上になる時、電動モータ2を後退走行に使用不能であると判定する。
上記した(1)〜(3)の全てが「NO」であるとき、ステップS11は電動モータ2を後退走行に使用可能であると判定する。
従ってステップS11は、本発明におけるモータ駆動系使用不能検知手段に相当する。
ステップS12においては、エンジン1をスタータモータ3により始動させて、無段変速機4(無段変速機構CVT)の内部を回転させることにより、無段変速機4(無段変速機構CVT)を変速可能な状態にする。
従ってステップS12は、本発明においてモータ駆動系使用不能時に作用するエンジン始動手段に相当する。
ステップS14においては、後退方向路面勾配θから後退発進用CVT要求変速比tRatioを算出する。
ステップS15でCVT実変速比Ratioが後退発進用CVT要求変速比tRatio未満のハイ側変速比であると判定した場合は、後退発進時の駆動力不足およびこれによる後退発進応答不良が問題になるハイ発進であることから、ステップS16において無段変速機4(無段変速機構CVT)を、そのCVT実変速比Ratioが後退発進用CVT要求変速比tRatioに向かうようダウンシフトさせる。
従ってステップS16およびステップS17は、本発明においてモータ駆動系使用不能時に作用する変速手段に相当する。
このステップS19では、EVモード故に中立状態であった副変速機31をRレンジに呼応した後退変速段選択状態に切り替えるのを許可する。
かかる副変速機31の後退変速段選択状態への切り替えは、ステップS16およびステップS17による上記ダウンシフト(ロー戻し変速制御)の完了まで遅延させていたものであるが、ステップS19での許可を受けて副変速機31の後退変速段選択状態への切り替えは実行されることとなる。
従って、中立状態の副変速機31を後退変速段選択状態にするためのリバースブレーキR/Bは、本発明における断接要素の用をなし、このリバースブレーキR/Bを締結させて副変速機31を後退変速段選択状態となすステップS19は、本発明においてモータ駆動系使用不能時に作用する断接要素締結手段に相当する。
この後退発進時におけるアクセル操作に応じたエンジントルク制御は、ステップS20において以下のごとくに行われる。
但し本実施例のステップS20においては、CVT変速比Ratio(=tRatio)ごとに、アクセル開度APOと、車速VSPと、目標エンジントルクtTeとの関係に係わるマップを予め用意しておき、これらマップのうち、現在のCVT変速比Ratio(=tRatio)に対応するマップを基にアクセル開度APOおよび車速VSPから目標エンジントルクtTeを求め、これをエンジンコントローラ22に指令してエンジン1のトルク制御に資することとする。
モータコントローラ23は、モータ出力トルクが後退要求駆動力相当の目標モータトルクtTmとなるよう後退方向逆転駆動させて、車両をモータトルクTm=tTmで後退走行(発進)させる。
この時アクセルペダル19を踏み込まずに釈放したままであれば、後退要求駆動力相当の目標モータトルクtTmはクリープトルクであり、車両は後退方向へクリープ走行されるのは言うまでもない。
従ってステップS31は、本発明における電動モータ逆転駆動手段に相当する。
従ってステップS32は、本発明におけるエンジン始動手段に相当する。
ステップS34においては、電動モータ2を含むモータ駆動系が発生可能な最大駆動力Tmmaxおよび後退方向路面勾配θから後退発進用CVT要求変速比tRatioを算出する。
ステップS35でCVT実変速比Ratioが後退発進用CVT要求変速比tRatio未満のハイ側変速比であると判定した場合は、後退発進時の駆動力不足およびこれによる後退発進応答不良が問題になるハイ発進であることから、ステップS36において無段変速機4(無段変速機構CVT)を、そのCVT実変速比Ratioが後退発進用CVT要求変速比tRatioに向かうようダウンシフトさせる。
従ってステップS36およびステップS37は、本発明における変速手段に相当する。
このステップS39では、EVモード故に中立状態であった副変速機31をRレンジに呼応した後退変速段選択状態に切り替えるのを許可する。
かかる副変速機31の後退変速段選択状態への切り替えは、ステップS36およびステップS37による上記ダウンシフト(ロー戻し変速制御)の完了まで遅延させていたものであるが、ステップS39での許可を受けて副変速機31の後退変速段選択状態への切り替えは実行されることとなる。
従って、中立状態の副変速機31を後退変速段選択状態にするためのリバースブレーキR/Bは、本発明における断接要素の用をなし、このリバースブレーキR/Bを締結させて副変速機31を後退変速段選択状態となすステップS39は、本発明における断接要素締結手段に相当する。
これにより電動モータ2(モータ駆動系)は、最大逆転駆動力Tmmaxを発生するよう逆転駆動され、この最大逆転駆動力Tmmaxで車両の後退発進を助勢する。
ステップS41での後退発進時エンジントルク制御は、基本的には、現在のCVT変速比Ratio(=tRatio)と車速VSP(CVT出力回転)とからエンジン回転数Neを求め、このエンジン回転数Neと、アクセル開度APOとから、後退発進時のアクセル操作に応じた要求駆動力tTdを求める。
なお図5のエンジンアイドル分Teiは、エンジン1が自立運転するのに必要なトルク分であるため、後退発進時のアシストトルクには使えない。
かくして当該エンジン出力トルク(tTe)は、電動モータ2(モータ駆動系)からの最大逆転駆動力Tmmaxとで、後退発進時要求駆動力tTd(=tTd_1)を実現し、車両をアクセル開度APOごとに、問題となる駆動力不足および後退発進応答遅れなしに後退発進させることができる。
従ってステップS41は、本発明におけるエンジントルク制御手段に相当する。
図6のエンジン性能線図において、HP_2等馬力線上の運転点B1を、電動モータ2(モータ駆動系)の最大逆転駆動力Tmmaxによるアシスト分だけ小さなHP_1等馬力線上の運転点B2に移動でき、更に、電動モータ2(モータ駆動系)の最大逆転駆動力Tmmaxによるアシスト分だけ後退発進用CVT要求変速比tRatioをハイ側の変速比に設定し得ることから、エンジン回転数Neがその分(ΔNe)だけ低下して運転点をB2からB3へと移動させることができる。
本実施例では、これらエンジン出力の低下(HP_2→HP_1)およびエンジン回転数Neの低下(ΔNe)により、エンジンの燃費を向上させることができる。
上記した本実施例の後退ハイ発進防止制御によれば、エンジン1を停止させ、副変速機31を中立状態にしたEVモードでの停車中、Rレンジへのセレクト操作(ステップS10)があり、その後に後退発進の意志を表す例えばブレーキペダル釈放操作がなされた時、電動モータ2をアクセル操作に応じた後退方向逆転駆動状態となして車両を後退走行(発進)させ(ステップS31)、この後退走行(発進)状態でエンジン始動(ステップS32)を行うが、当初はステップS39による副変速機31の中立状態から後退変速段選択状態への切り替えを行わせないことで無段変速機4(無段変速機構CVT)をエンジン1により回転された状態(変速可能状態)となし、この状態でステップS36およびステップS37において無段変速機4(無段変速機構CVT)を、そのCVT実変速比RatioがステップS34で求めた後退発進用CVT要求変速比tRatioとなるようダウンシフトさせた後に、ステップS39による副変速機31の中立状態から後退変速段選択状態への切り替えを行い、その後ステップS40で電動モータ2(モータ駆動系)から最大逆転駆動力Tmmaxが出力されるようにすると共に、ステップS41において当該最大逆転駆動力Tmmaxによるアシスト下で、後退発進時アクセル操作に応じた後退発進時要求駆動力tTdが実現されるようエンジン1をトルク制御(エンジントルクを目標エンジントルクtTeとなす制御)する構成としたため、以下の効果を得ることができる。
よって、後退発進の応答遅れを理論上は無くすことができ、電動モータ2のトルク立ち上がり性能がエンジン1のそれよりも優れていることもあり、後退発進時の運転性を向上させることができる。
この状態で瞬時t3〜t4において無段変速機4(無段変速機構CVT)を、そのCVT実変速比Ratioが後退発進用CVT要求変速比tRatioとなるようダウンシフト(ロー戻し変速)させた後(ステップS36およびステップS37)、瞬時t5〜t6において副変速機31のリバースブレーキR/Bを図7に示したリバースブレーキ圧Prbの上昇により締結進行させ、中立状態の副変速機31を後退変速段選択状態に切り替える(ステップS39)。
よって、当初から大きな駆動力でのエンジン駆動による後退発進が可能となり、駆動力の不足および後退発進応答の悪化に関する問題を回避することができる。
しかも、この作用効果を達成するための無段変速機4(無段変速機構CVT)のダウンシフト(ロー戻し変速)が、後退発進意志を表すブレーキペダル釈放瞬時t1に開始された、電動モータ2による後退発進状態下で行われるため、ロー戻し変速の完了まで後退発進が行われ得ないということがなくて、後退発進遅れ時間の発生なしに上記の問題解決を実現することができる。
シフトレバー28がRレンジ位置を通過するだけのセレクト操作を、Rレンジへのセレクト操作があったと誤判定するのを防止することができて、図3の後退ハイ発進防止制御が誤って実行される不具合を回避することができる。
つまり発進時アクセルペダル踏み込み操作によるエンジン出力と、電動モータ2(モータ駆動系)が発生可能な最大逆転駆動力Tmmaxとの合計トルクを受けて無段変速機4(無段変速機構CVT)が、Rレンジでの後退発進時に問題となる駆動力不足や発進応答遅れなく発進可能となすのに必要な後退発進時要求駆動力を出力可能な変速比領域内のできるだけハイ側における後退発進用要求変速比を後退発進用CVT要求変速比tRatioと定めるため、
この後退発進用CVT要求変速比tRatioが、電動モータ2(モータ駆動系)の最大逆転駆動力Tmmaxによる後退アシストトルク分だけハイ側の変速比となる。
後退発進時は既に無段変速機4(無段変速機構CVT)が後退発進用CVT要求変速比tRatioへダウンシフト(ロー戻し変速)され終えていることとなり、後退発進用CVT要求変速比tRatioよりもハイ側変速比で車両の後発進が行われることがない後退ハイ発進防止作用によって、駆動力不足を運転者に感じさせるという問題や、後発進応答が悪いという問題を回避することができる。
但し、電動モータ2のトルクを後退発進用に使用できないため、発進意志を表すブレーキペダル釈放時に後退発進を開始させることができないのは言うまでもないし、モータトルクによるアシスト分に依って得られる前記した諸々の効果を奏し得なくなるのは勿論である。
なお、ステップS36およびステップS37でのロー戻し変速に際し、無段変速機4(無段変速機構CVT)を後退発進用CVT要求変速比tRatioへダウンシフトさせることとしたが、後退発進用CVT要求変速比tRatioに代えて、Rレンジでの後退走行用の最ロー変速比へダウンシフトさせることでも上記の効果を達成することができる。
ただし後退発進用CVT要求変速比tRatioを前記した通り、Rレンジでの後退発進時に問題となる駆動力不足や発進応答遅れなく発進可能となすのに必要な変速比領域内のできるだけハイ側における後退発進用要求変速比と定めた場合、これが最ロー変速比よりもハイ側であることによってロー戻し変速量が少なく、ロー戻し変速を速やかに完遂させることができて後発進応答の向上を期待できる。
他方、後退発進用CVT要求変速比tRatioに代えて、Rレンジでの後退走行用の最ロー変速比へダウンシフトさせるロー戻し変速では、ロー戻し変速量が大きくて上記後発進応答の向上を期待できないが、後退発進用CVT要求変速比tRatioを演算する必要がなくてハイブリッドコントローラ21の演算負荷を軽減し得るという効果を得ることができる。
2 電動モータ(動力源)
3 スタータモータ
4 Vベルト式無段変速機
5 駆動車輪
6 プライマリプーリ
7 セカンダリプーリ
8 Vベルト
CVT 無段変速機構
T/C トルクコンバータ
9,11 ファイナルギヤ組
12 バッテリ
13 インバータ
14 ブレーキディスク
15 キャリパ
16 ブレーキペダル
17 負圧式ブレーキブースタ
18 マスターシリンダ
19 アクセルペダル
21 ハイブリッドコントローラ
22 エンジンコントローラ
23 モータコントローラ
24 変速機コントローラ
25 バッテリコントローラ
26 ブレーキペダル踏力センサ
27 アクセル開度センサ
29 選択レンジセンサ
O/P オイルポンプ(機動ポンプ)
30 路面勾配センサ
31 副変速機
H/C ハイクラッチ(断接要素)
R/B リバースブレーキ(断接要素)
L/B ローブレーキ(断接要素)
32 車速センサ
33 車両加速度センサ
35 ライン圧ソレノイド
36 ロックアップソレノイド
37 プライマリプーリ圧ソレノイド
38 ローブレーキ圧ソレノイド
39 ハイクラッチ圧&リバースブレーキ圧ソレノイド
41 スイッチバルブ
Claims (6)
- 運転者のアクセル操作に応動する動力源としてエンジンのほかに電動モータを具え、前記エンジンにより駆動される機動ポンプからの作動媒体で制御される断接要素を介して、前記エンジンおよび無段変速機より成るエンジン駆動系が車輪に切り離し可能に駆動結合され、該断接要素を解放すると共に前記エンジンを停止させることで前記電動モータのみにより前記車輪を駆動する電気走行が可能であるほか、前記エンジンを始動させると共に前記断接要素を締結することで前記電動モータおよびエンジンにより前記車輪を駆動するハイブリッド走行が可能なハイブリッド車両において、
前記電気走行モードでの停車中に前記無段変速機が後退走行レンジにセレクト操作されたのを検知する後退セレクト検知手段と、
該手段による後退走行レンジへのセレクト操作が検知された後、後退発進の意志を表す操作が行われるとき、前記電動モータをアクセル操作に応じた後退方向逆転駆動状態となして車両を後退走行させる電動モータ逆転駆動手段と、
該手段による電動モータの後退方向逆転駆動での後退走行中、前記エンジンの始動により前記無段変速機を変速可能状態となすエンジン始動手段と、
該変速可能状態の無段変速機を後退発進用の所定変速比である後退発進用要求変速比にダウンシフトさせる変速手段と、
該ダウンシフトの完了後に前記断接要素を締結させる断接要素締結手段と
を具備し、
前記後退発進用要求変速比は、前記電動モータ逆転駆動手段により駆動された前記電動モータの駆動力によりアシストされて、前記エンジンが前記後退走行レンジでの発進時に必要な後退発進時要求駆動力を実現可能な変速比領域内のハイ側における変速比であることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項1に記載された、ハイブリッド車両の制御装置において、
前記後退セレクト検知手段は、前記後退走行レンジにセレクト操作された状態が規定時間継続するときをもって、前記後退走行レンジにセレクト操作されたと判定するものであることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項1または2に記載された、ハイブリッド車両の制御装置において、
前記後退発進用要求変速比は、車両後退方向路面勾配が緩やかであるほどハイ側の変速比であることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載された、ハイブリッド車両の制御装置において、
前記電動モータからのアシスト力は、該電動モータの電源を含むモータ駆動系が出力可能な最大駆動力であることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項4に記載された、ハイブリッド車両の制御装置において、
前記断接要素締結手段による断接要素の締結後、前記電動モータの発生可能最大駆動力を前記アシスト力とし、該アシスト力との協働により前記エンジンが後退走行時の前記アクセル操作に応じた要求駆動力を実現し得るよう、該エンジンをトルク制御するエンジントルク制御手段を設けたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載された、ハイブリッド車両の制御装置において、
前記電動モータの電源を含むモータ駆動系が使用不能な状態であるのを検知するモータ駆動系使用不能検知手段を設け、
該手段によりモータ駆動系が使用不能な状態である場合、前記電動モータ逆転駆動手段による電動モータの後退方向逆転駆動を禁止して停車状態のまま、前記エンジン始動手段によるエンジン始動で前記無段変速機を変速可能状態となし、前記エンジンのトルクのみを入力される該無段変速機が後退発進時に必要な後退発進時要求駆動力を出力可能な変速比をモータアシスト不能時後退発進用要求変速比と定め、前記変速手段により前記無段変速機を該モータアシスト不能時後退発進用要求変速比に向けてダウンシフトさせ、該ダウンシフトの完了後に前記断接要素締結手段により前記断接要素を締結させるよう構成したことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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