JP3786021B2 - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はハイブリッド車両の制御装置に係り、特に、電気系トルク伝達経路の伝達トルク容量が低下した場合の制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両走行用の動力伝達経路として、電気エネルギーが介在する電気系トルク伝達経路と、機械系のみでトルクを伝達する機械系トルク伝達経路とを備えているとともに、その電気系トルク伝達経路のみで発進する電気系発進手段を有するハイブリッド車両が知られている。特開2000−324614号公報に記載されているハイブリッド車両はその一例で、車両走行用の駆動力源として、燃料の燃焼で動力を発生するエンジンを備えているとともに、上記電気系トルク伝達経路は、そのエンジンによって回転駆動される発電機により電気エネルギーを発生してバッテリを充電するとともに、そのバッテリの電気エネルギーで電動モータを回転駆動して車両を発進させるようになっている。また、機械系トルク伝達経路は、摩擦係合装置(油圧式クラッチ)を介してエンジンの動力を車輪側へ伝達するようになっており、所定車速以上では摩擦係合装置を完全係合させて走行するとともに、電気系トルク伝達経路のフェール時には、摩擦係合装置をスリップ係合させて車両を発進させることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低温時にバッテリや発電機、電動モータの性能が低下したり、バッテリの蓄電量が不足したりすると、電気系トルク伝達経路の伝達トルク容量が制約され、電気系トルク伝達経路のみでは十分な走行性能が得られない可能性があった。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、電気系トルク伝達経路の伝達トルク容量が制約される場合でも十分な走行性能が得られるようにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、第1発明は、車両走行用の動力伝達経路として、電気エネルギーが介在する電気系トルク伝達経路と、機械系でトルクを伝達する機械系トルク伝達経路とを備えたハイブリッド車両の制御装置において、(a) 前記機械系トルク伝達経路は、摩擦係合装置のスリップ制御で伝達トルク容量が制御され、 (b) 前記電気系トルク伝達経路は、発電機により電気エネルギーを発生するとともに、その発電機とは別に設けられた電動モータをその電気エネルギーで回転駆動して車両を走行させるものであり、 (c) 要求加速度に応じて前記電気系トルク伝達経路および前記機械系トルク伝達経路の伝達トルク容量の分担を決定し、その電気系トルク伝達経路および機械系トルク伝達経路の両方を用いて走行する併用走行手段を設けたことを特徴とする。
第2発明は、第1発明のハイブリッド車両の制御装置において、前記併用走行手段による走行制御は車両発進時に行われることを特徴とする。
【0007】
第3発明は、第1発明のハイブリッド車両の制御装置において、前記併用走行手段による走行制御は通常の走行時に行われることを特徴とする。
【0008】
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかのハイブリッド車両の制御装置において、前記併用走行手段による走行制御は前記電気系トルク伝達経路の伝達トルク容量が低下した場合に行われることを特徴とする。
【0009】
第5発明は、第1発明〜第4発明の何れかのハイブリッド車両の制御装置において、前記要求加速度は、運転者のアクセル操作量をパラメータとして求められることを特徴とする。
【0011】
【発明の効果】
このようなハイブリッド車両の制御装置は、電気系トルク伝達経路および機械系トルク伝達経路の両方を用いて走行するため、摩擦係合装置のスリップ制御で機械系トルク伝達経路の伝達トルク容量を適切に制御することにより、電気系トルク伝達経路の伝達トルク容量の低下に拘らず十分な走行性能を確保することができる。
【0014】
第2発明は車両発進時の制御に関するもので、電気系トルク伝達経路の伝達トルク容量の一時的な低下や故障による低下に拘らず、機械系トルク伝達経路を用いて十分な発進性能を確保することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のハイブリッド車両は、例えば(a) 車両走行用の駆動力源として、燃料の燃焼で動力を発生するエンジンを有し、(b) 前記電気系トルク伝達経路は、前記エンジンによって回転駆動される発電機により電気エネルギーを発生するとともに、該電気エネルギーで電動モータを回転駆動して車両を走行させるように構成され、(c) 前記機械系トルク伝達経路は、摩擦係合装置を介して前記エンジンの動力を伝達するとともに、該摩擦係合装置の係合力制御(スリップ制御)で伝達トルク容量が制御されるように構成される。電気系トルク伝達経路には、上記発電機によって発生した電気エネルギーで充電されるとともに上記電動モータへ電気エネルギーを供給するバッテリが必要に応じて設けられる。
【0017】
上記電気系トルク伝達経路や機械系トルク伝達経路には、必要に応じて有段変速機や無段変速機、前後進切換などの変速機構が設けられる。また、電気系トルク伝達経路および機械系トルク伝達経路は、完全に別経路で駆動輪までトルクを伝達するように構成することもできるが、電気系トルク伝達経路と機械系トルク伝達経路とを途中で一体に結合して両方のトルクを伝達する結合伝達状態と、機械系トルク伝達経路を遮断して電気系のトルクのみを伝達する電気系伝達状態と、電気系トルク伝達経路を遮断して機械系のトルクのみを伝達する機械系伝達状態と、に切り換えることができる伝達状態切換装置を設けて適宜切り換えられるようにしても良い。伝達状態切換装置は、例えば遊星歯車装置などの合成分配機構やクラッチ或いはブレーキなどにより構成される。
【0018】
車速が上昇すれば、機械系トルク伝達経路のみで走行することが可能であるため、所定車速以上で電気系トルク伝達経路の伝達トルクを徐々に低下させるなど、車速をパラメータとして分担率を変更することが望ましい。また、例えばトルクコンバータを有するオートマチック車両と同様な発進フィーリングが得られるように、要求加速度に基づいて所定のピークを形成するようにトータルの伝達トルクを経時的に変化させることが望ましい。
【0019】
第1発明は、第2発明のように車両発進時の制御、例えば5km/h〜10km/h以下等の制御に好適に適用されるが、10km/h以上等の通常の走行中であっても同様に適用され得る。また、車両発進時の制御に関しては、例えば電気系トルク伝達経路のみで発進する電気系発進手段を有するハイブリッド車両の制御装置に好適に適用される。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用されたハイブリッド車両の動力伝達装置10を説明する骨子図である。この動力伝達装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両用のものであり、燃料の燃焼によって作動するエンジン12と、電気エネルギーで作動する電動モータおよび発電機としての機能を有するモータジェネレータ14と、遊星歯車式の副変速機16と、ベルト式の無段変速機(以下CVTという)18と、差動装置20と、駆動軸22R、22Lとを備えており、それら駆動軸22R、22Lから図示しない左右の前輪(駆動輪)へ駆動力が伝達されるようになっている。上記エンジン12、モータジェネレータ14、副変速機16、および無段変速機18の入力軸38は、同一の軸線上にその順番で配設されている。上記エンジン12およびモータジェネレータ14は車両走行用の駆動力源すなわち原動機として機能するもので、エンジン12の吸気弁および排気弁は、電気的に開閉制御できる電磁駆動弁にて構成されている。また、上記無段変速機18は、動力伝達装置10内の主変速機として機能するものであって、有効径が可変な1対の可変プーリ18aおよび18bとそれら1対の可変プーリ18aおよび18bに巻き掛けられた伝動ベルト19とを備えており、それら1対の可変プーリ18a、18bの掛かり径すなわち有効径が相対的に変化させられることにより、その変速比e(入力軸38の回転速度/出力軸39の回転速度)が連続的に変化させられるようになっている。これにより、本実施例では駆動軸22R、22Lまでの間において3〜11程度の範囲内でCVT18および副変速機16を含む全体の変速比が変化させられる。
【0021】
上記エンジン12には、ベルト等の伝動装置を介してモータジェネレータ24が接続されている。このモータジェネレータ24は、補機駆動用およびエンジン12の始動時のクランキング用の電動モータとして用いられるもので、バッテリ26から電気エネルギーが供給されるようになっている。モータジェネレータ24はまた、エンジン12により回転駆動されることにより電気エネルギーを発生する発電機としても用いられ、発生した電気エネルギーでバッテリ26が充電される。バッテリ26は、電気エネルギーを36V程度の比較的低電圧で前記モータジェネレータ14に供給してそれを作動させるとともに、そのモータジェネレータ14の回生制御によって車両の走行中に逐次充電されるようになっている。そして、例えばバッテリ26の蓄電量SOCが所定値以下まで低下した時、すなわちモータジェネレータ14を電動モータとして作動させることができない場合や、モータジェネレータ14を用いて走行する場合には、基本的にエンジン12でモータジェネレータ24を回転駆動して発電させ、バッテリ26を充電することにより、故障時以外は常時モータジェネレータ14を用いて走行することが可能とされている。
【0022】
前記副変速機16は、互いに近接して並列に配設されたダブルプラネタリ型の第1遊星歯車装置30およびシングルプラネタリ型の第2遊星歯車装置32を備えている。これらの遊星歯車装置30、32は、所謂ラビニヨ型であって、共通のリングギヤRおよびキャリアCを有するとともに、第1遊星歯車装置30のキャリアのリングギヤ側のピニオンギヤと第2遊星歯車装置32のキャリアのピニオンギヤとが一体化されている。上記第1遊星歯車装置30のサンギヤS1には、前記モータジェネレータ14が連結され、第2遊星歯車装置32のサンギヤS2には、第1クラッチC1およびダンパ装置34を介してエンジン12のクランク軸が連結されるようになっている。また、それ等のサンギヤS1およびS2は第2クラッチC2によって連結されるとともに、キャリアCは反力ブレーキBによってハウジング44に連結されて回転が阻止されるようになっており、リングギヤRは出力部材36を介して無段変速機18の入力軸38に連結されている。クラッチC1、C2、および反力ブレーキBは、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる油圧式の摩擦係合装置である。
【0023】
上記サンギヤS1は、第1遊星歯車装置30に隣接して配設されるモータジェネレータ14の中心を貫通して配設された円筒状の連結部材40を介して、そのモータジェネレータ14よりもエンジン12側に設けられた第2クラッチC2に接続されており、モータジェネレータ14のロータは連結部材40の中間位置に相対回転不能に固定されている。サンギヤS2は、上記連結部材40を挿通して相対回転可能に配設された連結部材42を介して、モータジェネレータ14よりもエンジン12側に設けられた第1クラッチC1に接続されているとともに、その第1クラッチC1を経由することなく第2クラッチC2に接続されている。また、前記反力ブレーキBは、副変速機16とモータジェネレータ14との間から外周側へ延び出すキャリアCをハウジング44に固定するように配設されている。
【0024】
図2は、上記副変速機16の各回転要素S1、S2、R、Cの回転速度の相互関係を直線で表すための、回転速度を表す縦軸を備えた共線図を示している。この共線図において、各回転要素S1、S2、R、Cの位置および間隔は、連結状態や遊星歯車装置30、32のギヤ比ρ1、ρ2によって一義的に定まる。この共線図上において、入力回転要素であるサンギヤS1、S2は互いに反対側の両端に位置しているとともに、出力用回転要素であるリングギヤRは反力用回転要素であるキャリアCとサンギヤS1との間に位置している。
【0025】
図3には、上記クラッチC1、C2、および反力ブレーキBの係合状態と副変速機16の変速モード(一例)との関係が示されており、エンジン12を駆動力源として使用する場合、モータジェネレータ14を駆動力源として使用する場合、或いはシフトレバーの操作ポジションなどにより場合分けされている。シフトレバーは運転席の近傍に配設されており、例えば前進走行用の「D(ドライブ)」ポジション、後進走行用の「Rev(リバース)」ポジション、および動力伝達を遮断する「N(ニュートラル)」ポジションを備えており、「D」ポジションでは、アクセル操作量θや車速Vなどをパラメータとして予め定められた変速条件に従って無段変速機18の変速比eが自動的に変更される。
【0026】
図3において、エンジン12を駆動力源として前進走行する「D」ポジションでは、クラッチC1、C2が共に係合させられるとともに反力ブレーキBが解放されることにより、副変速機16が一体回転する変速比r=1の高速前進モード「2nd」が成立させられる。その場合に、第1クラッチC1をスリップ係合させれば、エンジン発進が可能なエンジン低速前進モード「2nd(低速)」が成立させられ、バッテリ26の蓄電量SOCの低下や故障などでモータジェネレータ14を使用できない場合でも、エンジン12で前進方向のクリープトルクを発生させたり車両を前方へ発進させたりすることができる。「Rev」ポジションでは、第1クラッチC1および反力ブレーキBが係合させられるとともに第2クラッチC2が解放されることにより、変速比r=−1/ρ2〔ρ2は、第2遊星歯車装置32のギヤ比(=サンギヤS2の歯数/リングギヤRの歯数)〕の高速後進モード「高速」が成立させられる。その場合に第1クラッチC1をスリップ係合させれば、前進時と同様にエンジン発進が可能なエンジン低速後進モード「低速(エンジン)」が成立させられ、バッテリ26の蓄電量SOCの低下や故障などでモータジェネレータ14を使用できない場合でも、エンジン12で後進方向のクリープトルクを発生させたり車両を後方へ発進させたりすることができる。なお、「N」ポジションでは、クラッチC1、C2が共に解放させられるとともに反力ブレーキBが係合させられることにより、エンジン12からの動力伝達が遮断される。
【0027】
一方、モータジェネレータ14を駆動力源として前進走行する「D」ポジションでは、クラッチC1、C2が共に解放されるとともに反力ブレーキBが係合させられることにより低速前進モード「1st」が成立させられ、車両停止時には前進方向のクリープトルクを発生させるとともにアクセル操作に従って発進する。この時の変速比rは1/ρ1〔ρ1は第1遊星歯車装置30のギヤ比(=サンギヤS1の歯数/リングギヤRの歯数)〕で比較的大きく、大きなトルク増幅が得られるため、無段変速機18の大きな変速比eと相まって、36V程度の電圧によって作動させられるモータジェネレータ14においても、実用上満足できるクリープトルクや発進性能が得られる。また、クラッチC1、C2を係合させるとともに反力ブレーキBを解放することにより、エンジン12およびモータジェネレータ14の両方を駆動力源として走行する変速比r=1のアシストモード「2nd(アシスト)」が成立させられ、第1クラッチC1および反力ブレーキBを解放するとともに第2クラッチC2を係合させれば、モータジェネレータ14を回生制御してバッテリ26を充電しながら制動力を発生させる変速比r=1の回生制動モード「2nd(回生)」が成立させられる。更に、「Rev」ポジションでは、クラッチC1、C2が共に解放されるとともに反力ブレーキBが係合させられることにより低速後進モード「低速(モータ)」が成立させられ、モータジェネレータ14に逆回転のトルクを発生させることにより、車両停止時には後進方向のクリープトルクを発生させるとともにアクセル操作に従って後方へ発進する。この時の変速比rは−1/ρ1で比較的大きく、上記低速前進モード「1st」と同様に実用上満足できるクリープトルクや発進性能が得られる。
【0028】
ここで、エンジン12のみを駆動力源として走行する際の動力伝達経路、すなわちエンジン12からダンパ装置34、クラッチC1、C2、副変速機16、CVT18、差動装置20を経て駆動輪に伝達する経路が、機械系のみでトルクを伝達する機械系トルク伝達経路50であり、クラッチC1の係合トルク制御(油圧制御)で伝達トルク容量を制御できる。また、モータジェネレータ14のみを駆動力源として走行する際の動力伝達経路、すなわちモータジェネレータ24により発電してバッテリ26を充電するとともに、そのバッテリ26から供給される電気エネルギーをモータジェネレータ14によって機械的なトルクに変換し、副変速機16からCVT18、差動装置20を経て駆動輪に伝達する経路が、電気エネルギーが介在する電気系トルク伝達経路52である。モータジェネレータ24は発電機に相当し、モータジェネレータ14は電動モータに相当する。
【0029】
また、エンジン12のみを駆動力源として走行する変速モード「2nd」、「2nd(低速)」、「高速」、「低速(エンジン)」は機械系伝達状態で、モータジェネレータ14のみを駆動力源として走行する変速モード「1st」、「低速(モータ)」は電気系伝達状態で、エンジン12およびモータジェネレータ14の両方を駆動力源として走行する変速モード「2nd(アシスト)」は結合伝達状態であり、それ等の伝達状態を切り換える副変速機16(クラッチC1、C2、ブレーキBを含む)は伝達状態切換装置として機能している。
【0030】
上記エンジン12およびモータジェネレータ14の使い分けは、例えば車速Vおよびアウトプットトルク(アクセル操作量θに対応)をパラメータとして、図4の基本マップに示すように定められる。この基本マップでは、高車速、高トルク(アクセル操作量大)の領域ではエンジン12を使用し、低車速、低トルク(アクセル操作量小)の領域ではモータジェネレータ14を使用するが、低電圧のモータジェネレータ14を使用する本実施例では、モータジェネレータ14の使用範囲は比較的狭く、車両停止時のクリープトルクおよび僅かな走行領域に限定されている。なお、各領域の境界線は、無段変速機18の変速比eなどに応じて変化する。
【0031】
図5は、本実施例の動力伝達装置10の作動を制御する制御系統を示す図である。図5において、電子制御装置すなわちECU(Electronic Control Unit)60は、図示しないCPU、RAM、ROM、インターフェースなどを備えた所謂マイクロコンピュータである。ECU60には、図5の左側に示す車速センサ62、エンジン回転速度センサ64、モータ回転速度センサ66、入力軸回転速度センサ68、バッテリSOCセンサ70、バッテリ温度センサ72、アクセル操作量センサ74、操作ポジションスイッチ76、フットブレーキスイッチ78などから、車速V(出力軸39の回転速度Nout に対応)、エンジン回転速度NE、モータジェネレータ14の回転速度NM、入力軸38の回転速度Nin、バッテリ26の蓄電量SOC、バッテリ温度TB 、アクセル操作量θ、シフトレバーの操作ポジション、フットブレーキの有無、などの車両の各種の情報が入力されるようになっており、ROM等に予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、右側に示すモータ用コントローラ80、82、エンジン12の点火装置84、噴射装置86、電子スロットル弁88、電磁駆動弁90、副変速機16のクラッチC1、C2、ブレーキBの油圧アクチュエータ、システムインジケータ92、などを制御し、例えば副変速機16の変速モードを前記図3に従って切り換えたり、前記図4に従ってエンジン12およびモータジェネレータ14の作動を制御したりする。ECU60にはまた、ダイアグノーシス94が接続されており、例えばモータジェネレータ14、24やバッテリ26などの電気系統の故障など、各種の異常情報が記録されるとともに、所定の異常情報をインストルメントパネル等に配置された上記システムインジケータ92に表示する。
【0032】
図6は、車両発進時の制御を説明するフローチャートで、上記ECU60の信号処理によって実行されるものである。図6のステップS1では、車両発進時か否かを、例えばシフトレバーの操作ポジションが「D」または「Rev」で且つ車速Vが5〜10km/h等の所定車速以下か否かによって判断し、車両発進時の場合にはステップS2以下を実行する。ステップS2では、モータジェネレータ14、24やバッテリ26に関する電気系統が故障でモータジェネレータ14の使用が不可か否かを、例えばダイアグノーシス94の異常情報などに基づいて判断し、故障の場合には電気系トルク伝達経路52による伝達トルク容量が完全に0になるため、ステップS3で完全フリクション発進制御、すなわち前記図3のエンジン低速前進モード「2nd(低速)」、またはエンジン低速後進モード「低速(エンジン)」により、必要な総てのトルクを機械系トルク伝達経路50で賄うように発進制御を行う。また、ステップS4で、そのエンジン低速前進モード「2nd(低速)」、またはエンジン低速後進モード「低速(エンジン)」による発進である旨をシステムインジケータ92に表示する。ECU60による一連の信号処理のうちステップS2を実行する部分は、電気系統が故障か否かを判断するフェール判断手段として機能しており、ステップS3を実行する部分は、機械系トルク伝達経路50のみで発進する機械系発進手段として機能している。
【0033】
上記ステップS2の判断がNOの場合、すなわちモータジェネレータ14を使用可能の場合には、ステップS5を実行し、そのモータジェネレータ14のトルクが制限されているか否かを判断する。モータジェネレータ14のトルク制限は、例えばバッテリ温度TB が低くて電気エネルギーを最大限に取り出すことができない場合や、バッテリ26の蓄電量SOCが不足している場合など、故障ではなく何れ回復するが、一時的にモータジェネレータ14の出力が制限されて伝達トルク容量が低下する場合で、そのバッテリ温度TB が所定の下限温度以下か否か、蓄電量SOCが所定の下限値以下か否か、などによって判断される。そして、モータジェネレータ14のトルクが制限されていない場合には、ステップS6を実行し、通常のシリーズ発進制御、すなわち前記図3の低速前進モード「1st」、または低速後進モード「低速(モータ)」による発進制御を行う。この場合は、第1クラッチC1のスリップ制御が不要で、モータジェネレータ14のトルク制御のみで発進するため、ショックや振動が無いスムーズな発進が可能である。ECU60による一連の信号処理のうちステップS5を実行する部分は、電気系トルク伝達経路52の伝達トルク容量が一時的に制限されているか否かを判断する一時的トルク低下判断手段として機能しており、ステップS6を実行する部分は、電気系トルク伝達経路52のみで発進する電気系発進手段として機能している。
【0034】
上記ステップS5の判断がYES(肯定)の場合は、ステップS7で、電気系トルク伝達経路52のみで発進する場合のトルク不足分を演算し、ステップS8で、その不足分を機械系トルク伝達経路50で補うようにして、前進時には前記図3のアシストモード「2nd(アシスト)」による発進制御を、第1クラッチC1をスリップ係合させながら行い、電気系トルク伝達経路52および機械系トルク伝達経路50の両方を用いて発進する。また、後進時には、エンジン12を作動させるとともに第1クラッチC1をスリップ係合させながら、前記図3の低速後進モード「低速(モータ)」による発進制御を行う。上記ステップS7では、例えば図7に示すようにアクセル操作量θをパラメータとするデータマップや演算式などから運転者の要求加速度(図7の実線)を求め、その要求加速度から、電気系トルク伝達経路52で伝達可能な伝達トルク容量(一点鎖線)を差し引くことにより、機械系トルク伝達経路50の伝達トルク容量を決定する。電気系トルク伝達経路52で伝達可能な伝達トルク容量は、例えばバッテリ温度TB や蓄電量SOCをパラメータとして予め定められたデータマップや演算式などから求められる。なお、アクセル操作量θの変化速度(アクセルペダルの踏込み速度など)をパラメータとして要求加速度を求めたり、アクセル操作量θおよびその変化速度の両方をパラメータとして要求加速度を求めたりすることもできる。また、スポーツモード、パワーモード、登坂路等を検出して要求加速度を補正するなど、種々の態様が可能である。前記ステップS3、S6においても、アクセル操作量θ等に基づいて要求加速度を求めてトルク制御が行われる。
【0035】
また、ステップS8では、例えば所定のサイクルタイムで上記ステップS7において逐次求められる機械系の伝達トルク容量および電気系の伝達トルク容量に従って、第1クラッチC1の係合トルクすなわち油圧制御を行うとともに、モータジェネレータ14の力行トルク制御を行うように構成されるが、車速Vが上昇すれば、機械系トルク伝達経路50のみで走行することが可能となるため、所定車速以上で電気系トルク伝達経路52の伝達トルクを徐々に低下させるなど、車速Vをパラメータとして分担率を変更することが望ましい。また、トルクコンバータを有するオートマチック車両と同様な発進フィーリングが得られるように、例えば図8に示すように上記要求加速度に基づいて所定のピークを形成するようにトータルの伝達トルクを経時的に変化させることも可能である。図8の時間t0 は発進制御の開始時間で、その制御開始時間t0 から所定時間後の時間t1 において、アクセル操作量θ等に基づいて求めた最大要求加速度が得られるように、予め定められた制御パターンに従って機械系および電気系の伝達トルク制御を行うのであり、その時間t1 で電気系トルク伝達経路52の伝達トルクは、伝達可能な最大トルクとなるように制御される。時間t1 は、例えばアクセル操作量θやその変化速度、或いは要求加速度などをパラメータとして定められ、応答性や制御性に優れたモータジェネレータ14のトルク制御をメインとしてピークが形成されるようになっている。また、時間t2 は、車速Vが所定車速以上になり、機械系トルク伝達経路50のみで走行するように電気系トルク伝達経路52の伝達トルク、具体的にはモータジェネレータ14のトルクを徐々に低下させる漸減制御の開始時間である。
【0036】
ECU60による一連の信号処理のうち、ステップS7およびS8を実行する部分は、機械系トルク伝達経路50および電気系トルク伝達経路52の両方を用いて発進する併用発進手段として機能しており、本発明の併用走行手段に相当する。
【0037】
このような本実施例のハイブリッド車両の制御装置においては、電気系トルク伝達経路52の伝達トルク容量の低下時、すなわち故障時や一時的な制約時には、ステップS3またはステップS7およびS8で機械系トルク伝達経路50を用いて発進するため、電気系トルク伝達経路52の伝達トルク容量の一時的な低下や故障に拘らず十分な発進性能を確保することができる。
【0038】
また、電気系トルク伝達経路52で伝達可能な伝達トルク容量に応じて機械系トルク伝達経路50の伝達トルク容量が相違させられるようになっており、故障により電気系トルク伝達経路52の伝達トルク容量が0となった場合には、ステップS3で必要な伝達トルク容量を総て機械系トルク伝達経路50で賄うように第1クラッチC1をスリップ制御する一方、低温時やバッテリ26の蓄電量不足などで電気系トルク伝達経路52の伝達トルク容量が制約されて一時的に低下した場合には、ステップS7およびS8で電気系トルク伝達経路52および機械系トルク伝達経路50の両方を用いて発進するため、電気系トルク伝達経路52によって伝達可能な伝達トルク容量に応じて機械系トルク伝達経路50の伝達トルク容量が適切に制御され、所定の発進性能を確保しつつ出来るだけ電気系トルク伝達経路52を利用して燃費の悪化等を抑制できる。
【0039】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたハイブリッド車両の動力伝達装置の構成を説明するための骨子図である。
【図2】図1の副変速機の各回転要素の回転速度の相互関係を直線で示す共線図である。
【図3】図1の副変速機で成立させられる変速モードと係合装置の係合状態との関係を示す図である。
【図4】図1のハイブリッド車両のモータジェネレータとエンジンの使い分けを説明する図である。
【図5】図1のハイブリッド車両の制御系統を説明するブロック線図である。
【図6】図1のハイブリッド車両の発進制御を説明するフローチャートである。
【図7】図6のステップS7で伝達トルク容量の不足分を求める際のマップの一例を説明する図である。
【図8】電気系のトルク伝達経路の伝達トルク容量が制約されている場合の機械系および電気系の伝達トルクの時間変化の一例を説明する図である。
【符号の説明】
12:エンジン 14:モータジェネレータ(電動モータ) 16:副変速機 18:無段変速機 24:モータジェネレータ(発電機) 50:機械系トルク伝達経路 52:電気系トルク伝達経路
ステップS7、S8:併用走行手段
Claims (5)
- 車両走行用の動力伝達経路として、電気エネルギーが介在する電気系トルク伝達経路と、機械系でトルクを伝達する機械系トルク伝達経路とを備えたハイブリッド車両の制御装置において、
前記機械系トルク伝達経路は、摩擦係合装置のスリップ制御で伝達トルク容量が制御され、
前記電気系トルク伝達経路は、発電機により電気エネルギーを発生するとともに、該発電機とは別に設けられた電動モータを該電気エネルギーで回転駆動して車両を走行させるものであり、
要求加速度に応じて前記電気系トルク伝達経路および前記機械系トルク伝達経路の伝達トルク容量の分担を決定し、該電気系トルク伝達経路および該機械系トルク伝達経路の両方を用いて走行する併用走行手段を設けた
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 前記併用走行手段による走行制御は車両発進時に行われる
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。 - 前記併用走行手段による走行制御は通常の走行時に行われる
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。 - 前記併用走行手段による走行制御は前記電気系トルク伝達経路の伝達トルク容量が低下した場合に行われる
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。 - 前記要求加速度は、運転者のアクセル操作量をパラメータとして求められる
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
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