JP6569095B2 - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Description
このハイブリッド車両は、一方の動力源であるエンジンの出力を無段変速機による無段変速下にクラッチを介して適宜車輪に伝達可能となるようこれらエンジンおよび車輪間を駆動結合し、他方の動力源である電動モータを当該車輪に常時駆動結合した型式のものである。
そのため、EVモードで停車して無段変速機を走行レンジから非走行レンジに切り替え、そのままイグニッションスイッチのOFFによりハイブリッド制御システムを非作動となした場合、無段変速機は以後、EVモードへの移行によりエンジンが停止され、上記クラッチが解放された時(EVモードへ移行した時)の変速比に保持される。
例えば、HEVモードでの前進走行中に急制動を行った場合、要求駆動力がHEV走行域の正トルクからEV回生域の負トルクに切り替わるが、HEV走行域からEV回生域への移行時に無段変速機のダウンシフトが間に合わず、無段変速機が発進用の最ロー変速比に戻る前にエンジンが停止すると共にクラッチが解放されて、無段変速機が変速不能なEVモードとなり、無段変速機が最ロー変速比よりもハイ側の、EV回生域移行時(EVモード移行時)における変速比に保持されたまま停車に至る。
なお、当該不足した駆動力での発進により車両が走行を開始すると、無段変速機の内部が回転するため、機動ポンプからの作動媒体による無段変速機の変速が可能となって無段変速機は発進用最ロー変速比に向けダウンシフトされるものの、このダウンシフトが完了するまでの間は上記の駆動力不足が続いて、発進応答が悪くなるという問題をも生ずる。
先ず本発明の前提となるハイブリッド車両を説明するに、これは、
動力源としてエンジンのほかに電動モータを具え、前記エンジンにより駆動される機動ポンプからの作動媒体で制御される断接要素を介して、前記エンジンおよび無段変速機より成るエンジン駆動系が車輪に切り離し可能に駆動結合され、該断接要素を解放すると共に前記エンジンを停止させることで前記電動モータのみにより前記車輪を駆動する電気走行が可能であるほか、前記エンジンを始動させると共に前記断接要素を締結することで前記電動モータおよびエンジンにより前記車輪を駆動するハイブリッド走行が可能な車両である。
ハイブリッド制御システム起動検知手段は、前記電気走行モードでの停車中に、前記両走行モードの選択を司るハイブリッド制御システムを非作動にした後、再起動されたのを検知するものである。
エンジン始動手段は、該ハイブリッド制御システム起動検知手段によりハイブリッド制御システムの起動が検知されたとき、前記エンジンの始動により、前記断接要素が解放された状態で前記エンジンの動力によって前記無段変速機の内部が回転し、前記無段変速機を変速可能状態となすもので、また、
変速手段は、該変速可能状態の無段変速機を、エンジン駆動による発進時に要求される所定変速比へ向けて変速させるものである。
そして断接要素締結手段、該変速手段による変速の完了後に、前記無段変速機の走行レンジへのセレクト操作に呼応して前記断接要素を締結させ前記ハイブリッド走行モードとするものである。
電気走行モードでの停車中にハイブリッド制御システムが起動されたのを受けて、エンジンの始動により無段変速機を変速可能状態となし、当該変速可能状態の無段変速機を、エンジン駆動による発進時に要求される所定変速比へ向けて変速させ、かかる変速の完了後に、無段変速機の走行レンジへのセレクト操作に呼応して断接要素を締結させるため、以下の効果が奏し得られる。
<第1実施例の構成>
図1は、本発明の第1実施例になる制御装置を具えたハイブリッド車両の駆動系に係わる全体制御システムを示す概略系統図である。
エンジン1は、Vベルト式無段変速機4を介して駆動車輪5に適宜切り離し可能に駆動結合し、Vベルト式無段変速機4は、概略を以下に説明するようなものとする。
プライマリプーリ6はトルクコンバータT/Cを介してエンジン1のクランクシャフトに結合し、セカンダリプーリ7はクラッチCL(断接要素)およびファイナルギヤ組9を順次介して駆動車輪5に結合する。
逆にプライマリプーリ6のプーリV溝幅を大きくしつつ、セカンダリプーリ7のプーリV溝幅を小さくすることで、Vベルト8がプライマリプーリ6との巻き掛け円弧径を小さくされると同時にセカンダリプーリ7との巻き掛け円弧径を大きくされ、Vベルト式無段変速機4はロー側プーリ比へのダウンシフトを行う。
インバータ13は、バッテリ12の直流電力を交流電力に変換して電動モータ2へ供給すると共に電動モータ2への供給電力を加減して、電動モータ2を駆動力制御および回転方向制御する。
この回生制動時はインバータ13が、電動モータ2に回生制動力分の発電負荷をかけてこれを発電機として作用させ、電動モータ2の発電電力をバッテリ12に蓄電する。
この間、クラッチCLを解放していることで、停止状態のエンジン1と無段変速機構CVTとを連れ回すことがなく、EV走行中の電力消費を抑制することができる。
キャリパ15は、運転者が踏み込むブレーキペダル16の踏力に応動して負圧式ブレーキブースタ17による倍力下でブレーキペダル踏力対応のブレーキ液圧を出力するマスターシリンダ18に接続し、このブレーキ液圧でキャリパ15を作動させてブレーキディスク14の制動を行う。
なお上記のブレーキ液圧は、アンチスキッド制御時や、後述する回生制動時に、制動力が過大にならないよう、適宜に減圧される。
ハイブリッドコントローラ21は更に、エンジンコントローラ22、モータコントローラ23、変速機コントローラ24、およびバッテリコントローラ25との間で、内部情報のやり取りを行って、本発明が狙いとする後述のハイ発進防止制御に資する。
モータコントローラ23は、ハイブリッドコントローラ21からの指令に応答してインバータ13を介し電動モータ2の回転方向制御および出力制御を行う。
バッテリコントローラ25は、ハイブリッドコントローラ21からの指令に応答し、バッテリ12の充放電制御を行う。
図2(a)に例示するごとく無段変速機4が、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動車輪5との間に副変速機31を内蔵している場合は、副変速機31の変速を司る摩擦要素(クラッチや、ブレーキなど)を流用して、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動車輪5との間を切り離し可能に結合することができる。
この場合、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動車輪5との間を切り離し可能に結合する専用のクラッチを追設する必要がなくてコスト上有利である。
複合サンギヤ31s-1および31s-2のうち、サンギヤ31s-1は入力回転メンバとして作用するようセカンダリプーリ7に結合し、サンギヤ31s-2はセカンダリプーリ7に対し同軸に配置するが自由に回転し得るようにする。
アウタピニオン31poutはリングギヤ31rの内周に噛合させ、キャリア31cを出力回転メンバとして作用するようファイナルギヤ組9に結合する。
この状態でローブレーキL/Bを締結すると、副変速機31は前進第1速選択(減速正回転出力)状態となり、
ハイクラッチH/Cを締結すると、副変速機31は前進第2速選択(直結正回転出力)状態となり、
リバースブレーキR/Bを締結すると、副変速機31は後退変速段選択(減速逆回転出力)状態となる。
従って図2の無段変速機4は、副変速機31の変速摩擦要素H/C, R/B, L/Bが図1におけるクラッチCL、つまり本発明における断接要素に相当し、図1におけるようにクラッチCLを追設することなく、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動車輪5との間を切り離し可能に結合することができる。
第2速選択指令時はスイッチバルブ41が、ソレノイド39からのライン圧PLをハイクラッチ圧としてハイクラッチH/Cに向かわせ、これを締結することで副変速機31の第2速選択指令を実現する。
後退選択指令時はスイッチバルブ41が、ソレノイド39からのライン圧PLをリバースブレーキ圧としてリバースブレーキR/Bに向かわせ、これを締結することで副変速機31の後退選択指令を実現する。
上記ハイブリッド車両を、EVモード(エンジン1を停止し、図1の場合クラッチCLを開放状態、図2の場合副変速機31を中立状態にしたモード)での停車中、一旦イグニッションスイッチのOFFにより図1,2のハイブリッド制御システムを非作動にした後、再起動させ、その後に走行(D)レンジへのセレクト操作により車両を発進させるとき、無段変速機4(無段変速機構CVT)が当該発進時に本来選択されるべき最ロー変速比でない場合(所謂ハイ発進時)における駆動力不足および発進応答遅れの問題を解消するため、図1,2のハイブリッドコントローラ21は図3に示すハイ発進防止制御を遂行する。
このハイ発進防止制御を簡単のため、ハイブリッド車両の駆動系が図1に示すようなものである場合につき以下に説明する。
図4は、横軸に車速VSP、縦軸に車両の駆動力を目盛ったハイブリッド車両の運転モード領域線図で、上側座標には、比較的低車速および低駆動力域にEV走行域(EVモードによる前進駆動走行域)が、また比較的高車速および大駆動力域にHEV走行域(HEVモードによる前進駆動走行域)が存在する。
また下側座標は、EV回生域(EVモードによる回生制動走行域)である。
クラッチCLが上記の通り締結にされると、運転点A3の停車(車速VSP=0)状態であるため、無段変速機4(無段変速機構CVT)内が回転不能であって、無段変速機4(無段変速機構CVT)は変速不能のままであり、上記した最ロー変速比よりもハイ側の変速比に保持される。
このハイ発進時は、発進用アクセル操作を行っても最ロー変速比で得られるべき規定のトルクを車輪に向かわせることができず、駆動力不足を運転者に感じさせるという問題を生ずる。
ステップS11においては、EVモード(エンジン1が停止され、クラッチCLが解放状態)で、無段変速機4(無段変速機構CVT)が非走行(P,N)レンジにされた停車状態において、イグニッションスイッチのOFF→ONによりハイブリッド制御システムが起動されたか否かをチェックする。
従ってステップS11は、本発明におけるハイブリッド制御システム起動検知手段および非走行レンジセレクト状態検知手段に相当する。
ステップS11で、EVモード、非走行(P,N)レンジ停車中において、イグニッションスイッチのONによるハイブリッド制御システムの起動があったと判定したとき、制御をステップS13に進めて、本発明が狙いとするハイ発進防止制御を以下のごとくに遂行する。
従ってステップS13は、本発明におけるモータアシスト可否判定手段に相当する。
ステップS13において、バッテリ蓄電状態SOCの不足や、電動モータ2を含むモータ駆動系の異常や、電動モータ2自身の温度上昇またはモータ制御系の温度上昇で電動モータ2を駆動させ得ないと判定する場合は、電動モータ2から発進時の助勢力(アシストトルク)を得られず、エンジン1のみによる発進となるため、制御をステップS21〜ステップS30に進めて、エンジン1のみによる発進時のハイ発進防止制御を遂行する。
ステップS21においては、エンジン1をスタータモータ3により始動させ、クラッチCLの開放状態と相まって、無段変速機4(無段変速機構CVT)をエンジン1により回転可能となし、無段変速機4(無段変速機構CVT)を変速可能な状態にする。
従ってステップS21は、本発明におけるエンジン始動手段に相当する。
なお本実施例では、変速機コントローラ24がプライマリプーリ6およびセカンダリプーリ7の回転数から無段変速機4(無段変速機構CVT)のCVT実変速比Ratioを演算するため、このCVT実変速比Ratioを、上記エンジン1による無段変速機4(無段変速機構CVT)の回転が開始されてからでないと演算し得ず、従ってCVT実変速比Ratioの取得は、ステップS21によるエンジン始動後のステップS22ではじめて取得可能となる。
この発進用CVT要求変速比tRatioは、発進時アクセルペダル踏み込み操作によるエンジン出力を受けて無段変速機4(無段変速機構CVT)が、Dレンジでの発進時に問題となる駆動力不足や発進応答遅れなく発進可能となすのに必要な発進時要求駆動力を出力可能な変速比領域内のできるだけハイ側における発進用要求変速比であり、路面勾配θが急であるほど最ロー変速比に近い大きな変速比に定め、路面勾配θが緩やかであるほど最ロー変速比から遠いハイ側の変速比に定めること、勿論である。
ステップS24でCVT実変速比Ratioが発進用CVT要求変速比tRatio未満のハイ側変速比であると判定した場合は、発進時の駆動力不足およびこれによる発進応答不良が問題になるハイ発進であることから、ステップS25において無段変速機4(無段変速機構CVT)を、そのCVT実変速比Ratioが発進用CVT要求変速比tRatioに向かうようダウンシフトさせる。
従ってステップS25およびステップS26は、本発明における変速手段に相当する。
このステップS28では、ステップS11での判定結果である非走行(P,N)レンジから発進意志を表す走行(D)レンジへのセレクト操作があったか否かをチェックし、走行(D)レンジセレクト操作がなされるまでは、上記のダウンシフト(ロー戻し変速制御)終了時の状態を保つ。
かかるクラッチCLの締結状態への切り替えは、ステップS25およびステップS26による上記ダウンシフト(ロー戻し変速制御)の完了およびステップS28でのDレンジ検出まで遅延させていたものであるが、ステップS29での許可を受けてクラッチCLの締結状態への切り替えは実行されることとなる。
従ってステップS29は、本発明における断接要素締結手段に相当する。
かかるクラッチCLの開放状態から締結状態への切り替えにより、セカンダリプーリ7が車輪5に対し駆動結合される。
この発進時におけるアクセル操作に応じたエンジントルク制御は、ステップS30において以下のごとくに行われる。
但し本実施例のステップS30においては、CVT変速比Ratio(=tRatio)ごとに、アクセル開度APOと、車速VSPと、目標エンジントルクtTeとの関係に係わるマップを予め用意しておき、これらマップのうち、現在のCVT変速比Ratio(=tRatio)に対応するマップを基にアクセル開度APOおよび車速VSPから目標エンジントルクtTeを求め、これをエンジンコントローラ22に指令してエンジン1のトルク制御に資することとする。
この発進時は前記した通り、電動モータ2からの発生可能な駆動力を最大限、発進時の助勢力(アシストトルク)として利用しつつ、エンジン1により車両を発進させることとし、かかるエンジン1および電動モータ2による発進時のハイ発進を以下のごとくに防止する。
従ってステップS32は、本発明におけるエンジン始動手段に相当する。
なお本実施例では、ステップS22につき前述したように、変速機コントローラ24がプライマリプーリ6およびセカンダリプーリ7の回転数から無段変速機4(無段変速機構CVT)のCVT実変速比Ratioを演算するため、このCVT実変速比Ratioを、上記エンジン1による無段変速機4(無段変速機構CVT)の回転が開始されてからでないと演算し得ず、従ってCVT実変速比Ratioの取得は、ステップS31によるエンジン始動後のステップS32ではじめて取得可能となる。
この発進用CVT要求変速比tRatioは、発進時アクセルペダル踏み込み操作によるエンジン出力と、電動モータ2(モータ駆動系)が発生可能な最大正転駆動力Tmmaxとの合計トルクを受けて無段変速機4(無段変速機構CVT)が、Dレンジでの発進時に問題となる駆動力不足や発進応答遅れなく発進可能となすのに必要な発進時要求駆動力を出力可能な変速比領域内のできるだけハイ側における発進用要求変速比であり、路面勾配θが急であるほど最ロー変速比に近い大きな変速比に定め、路面勾配θが緩やかであるほど最ロー変速比から遠いハイ側の変速比に定める。
ステップS34でCVT実変速比Ratioが発進用CVT要求変速比tRatio未満のハイ側変速比であると判定した場合は、発進時の駆動力不足およびこれによる発進応答不良が問題になるハイ発進であることから、ステップS35において無段変速機4(無段変速機構CVT)を、そのCVT実変速比Ratioが発進用CVT要求変速比tRatioに向かうようダウンシフトさせる。
従ってステップS35およびステップS36は、本発明における変速手段に相当する。
このステップS38では、ステップS11での判定結果である非走行(P,N)レンジから発進意志を表す走行(D)レンジへのセレクト操作があったか否かをチェックし、走行(D)レンジセレクト操作がなされるまでは、上記のダウンシフト(ロー戻し変速制御)終了時の状態を保つ。
かかるクラッチCLの締結状態への切り替えは、ステップS35およびステップS36による上記ダウンシフト(ロー戻し変速制御)の完了およびステップS38でのDレンジ検出まで遅延させていたものであるが、ステップS39での許可を受けてクラッチCLの締結状態への切り替えは実行されることとなる。
従ってステップS39は、本発明における断接要素締結手段に相当する。
かかるクラッチCLの開放状態から締結状態への切り替えにより、セカンダリプーリ7が車輪5に対し駆動結合される。
これにより電動モータ2(モータ駆動系)は、最大駆動力Tmmaxを発生するよう正転駆動され、この最大正転駆動力Tmmaxで車両の発進を助勢する。
ステップS41での発進時エンジントルク制御は、基本的には、現在のCVT変速比Ratio(=tRatio)と車速VSP(CVT出力回転)とからエンジン回転数Neを求め、このエンジン回転数Neと、アクセル開度APOとから、発進時のアクセル操作に応じた要求駆動力tTdを求める。
なお図5のエンジンアイドル分Teiは、エンジン1が自立運転するのに必要なトルク分であるため、発進時のアシストトルクには使えない。
かくして当該エンジン出力トルク(tTe)は、電動モータ2(モータ駆動系)からの最大正転駆動力Tmmaxとで、発進時要求駆動力tTd(=tTd_1)を実現し、車両をアクセル開度APOごとに、問題となる駆動力不足および発進応答遅れなしに発進させることができる。
図6のエンジン性能線図において、HP_2等馬力線上の運転点B1を、電動モータ2(モータ駆動系)の最大正転駆動力Tmmaxによるアシスト分だけ小さなHP_1等馬力線上の運転点B2に移動でき、更に、電動モータ2(モータ駆動系)の最大正転駆動力Tmmaxによるアシスト分だけ発進用CVT要求変速比tRatioをハイ側の変速比に設定し得ることから、エンジン回転数Neがその分(ΔNe)だけ低下して運転点をB2からB3へと移動させることができる。
本実施例では、これらエンジン出力の低下(HP_2→HP_1)およびエンジン回転数Neの低下(ΔNe)により、エンジンの燃費を向上させることができる。
上記した本実施例のハイ発進防止制御によれば、エンジン1を停止させ、クラッチCLを解放状態にしたEVモードで、一旦イグニッションスイッチのOFFにより図1のハイブリッド制御システムを非作動にした停車中、イグニッションスイッチのONによりハイブリッド制御システムが起動させるとき(ステップS11)、エンジンの始動(ステップS21またはステップS31)により無段変速機4(無段変速機構CVT)を回転状態(変速可能状態)となし、当該変速可能状態の無段変速機4(無段変速機構CVT)を、エンジン駆動による発進時に要求される所定変速比tRatioへ向けてダウンシフトさせ(ステップS25およびステップS26、またはステップS35およびステップS36)、かかるロー戻し変速の完了後に(ステップS24またはステップS34)、無段変速機4(無段変速機構CVT)の走行(D)レンジへのセレクト操作(ステップS28またはステップS38)に呼応してクラッチCLを締結させるため(ステップS29またはステップS39)、以下の効果が奏し得られる。
而して当初はその後もクラッチCLはクラッチ圧Pc=プリロード相当圧により解放状態のままとし、これにより停車状態であっても無段変速機4(無段変速機構CVT)を、内部がエンジン1により回転されて変速可能な状態となす。
そして、瞬時t3〜t5において上記のように変速可能な状態にされた無段変速機4(無段変速機構CVT)を発進用CVT要求変速比tRatioに向かうようダウンシフト(ロー戻し変速)制御することで(ステップS35およびステップS36)、CVT実変速比Ratioを瞬時t4〜t5において発進用CVT要求変速比tRatioに近づけ、最終的に瞬時t5にCVT実変速比Ratioを発進用CVT要求変速比tRatioに一致させる。
この状態で、ブレーキペダル16からアクセルペダル19への踏み替えによりアクセル開度APOを図7のごとくに増大させる発進操作を行う瞬時t7以降、電動モータ2をモータトルクTmが最大駆動力Tmmaxとなるよう駆動力制御し(ステップS40)、これによるアシストを受けてエンジン1がアクセル開度APO対応の発進時要求駆動力を実現するようエンジン1をトルク制御して(ステップS41)、車速VSPの時系列変化により示すように車両をDレンジ発進させることができる。
つまり、発進時アクセルペダル踏み込み操作によるエンジン出力と、電動モータ2(モータ駆動系)が発生可能な最大駆動力Tmmaxとの合計トルクを受けて無段変速機4(無段変速機構CVT)が、発進時に問題となる駆動力不足や発進応答遅れなく発進可能となすのに必要な発進時要求駆動力を出力可能な変速比領域内のできるだけハイ側における発進用要求変速比を発進用CVT要求変速比tRatioと定めるため、
この発進用CVT要求変速比tRatioが、電動モータ2(モータ駆動系)の最大駆動力Tmmaxによるアシストトルク分だけハイ側の変速比となる。
つまり、発進時アクセルペダル踏み込み操作によるエンジン出力トルクのみを受けて無段変速機4(無段変速機構CVT)が、発進時に問題となる駆動力不足や発進応答遅れなく発進可能となすのに必要な発進時要求駆動力を出力可能な変速比領域内のできるだけハイ側における発進用要求変速比を発進用CVT要求変速比tRatioと定めるため、
この発進用CVT要求変速比tRatioが、もともとの発進用変速比である最ロー変速比よりもハイ側の変速比となる。
図8,9は、本発明の第2実施例になる制御装置のハイ発進防止制御プログラムで、図8はハイ発進防止制御を行うべきか否かを判定するハイ発進判定要領を、また図9は、図8でハイ発進防止制御を行うべきとの判定時に実行するハイ発進防止制御要領をそれぞれ示す。
図8のハイ発進判定に際しては、先ずステップS51で上記プーリ溝幅ストロークセンサの検出値から求めた(または、停車時に記憶しておいた)実変速比Ratioを読み込む。
従ってステップS51は、本発明における変速比検出手段に相当する。
ステップS55においては、ステップS51で読み込んだCVT実変速比Ratioと、ステップS53またはステップS54で算出した発進用CVT要求変速比tRatioとを、図3のステップS24およびステップS34におけると同様な要領で対比し、CVT実変速比Ratioが発進用CVT要求変速比tRatio以上のロー側変速比か否かをチェックする。
しかしステップS55でCVT実変速比Ratioが発進用CVT要求変速比tRatio以上のロー側変速比であると判定した場合は、発進時の駆動力不足およびこれによる発進応答不良が問題にならない非ハイ発進であることから、ステップS57において図9のハイ発進防止制御を禁止し、通常の(ロー戻し変速の無い)発進制御を遂行するよう指令する。
従ってステップS57は、本発明におけるハイ発進防止制御禁止手段に相当する。
但し、図9のステップS24およびステップS34におけるCVT実変速比Ratioは、図8のステップS51で読み込んだCVT実変速比Ratioを用い、図9のステップS24における発進用CVT要求変速比tRatioは、図8のステップS54で算出した発進用CVT要求変速比tRatioを用い、図9のステップS34における発進用CVT要求変速比tRatioは、図8のステップS553で算出した発進用CVT要求変速比tRatioを用いる。
第2実施例のハイ発進防止制御によっても、前記した第1実施例と同様な効果が奏し得られるが、第2実施例では、図8のステップS55でCVT実変速比Ratioが発進用CVT要求変速比tRatio未満のハイ側変速比であると判定した場合のみ、つまり発進時の駆動力不足およびこれによる発進応答不良が問題になるハイ発進である場合のみ、図9のハイ発進防止制御を遂行し、ステップS55でCVT実変速比Ratioが発進用CVT要求変速比tRatio以上のロー側変速比であると判定した場合(発進時の駆動力不足およびこれによる発進応答不良が問題にならない非ハイ発進時)は、図9のハイ発進防止制御を禁止し、通常の(ロー戻し変速の無い)発進制御を遂行することから、不要なハイ発進制御が行われる愚を避けることができる。
なお第1,2の何れの実施例も、ハイブリッド車両の駆動系が図1のようなものであることから、つまり無段変速機4(無段変速機構CVT)と車輪5との間がクラッチCLで断接可能に駆動結合され、エンジン1をDレンジでの前進走行にしか用いないものであることから、Dレンジ前進時のハイ発進防止制御について説明したが、
ハイブリッド車両の駆動系が図2のようなものである場合、つまり無段変速機4(無段変速機構CVT)と車輪5との間が、後退変速段を選択可能な副変速機31で断接可能に駆動結合され、エンジン1をRレンジでの後退走行にも用いるものである場合、Rレンジ後退時のハイ発進防止も同様な考え方に基づき同様に遂行可能である。
2 電動モータ(動力源)
3 スタータモータ
4 Vベルト式無段変速機
5 駆動車輪
6 プライマリプーリ
7 セカンダリプーリ
8 Vベルト
CVT 無段変速機構
T/C トルクコンバータ
CL クラッチ(断接要素)
9,11 ファイナルギヤ組
12 バッテリ
13 インバータ
14 ブレーキディスク
15 キャリパ
16 ブレーキペダル
17 負圧式ブレーキブースタ
18 マスターシリンダ
19 アクセルペダル
21 ハイブリッドコントローラ
22 エンジンコントローラ
23 モータコントローラ
24 変速機コントローラ
25 バッテリコントローラ
26 ブレーキペダル踏力センサ
27 アクセル開度センサ
29 選択レンジセンサ
30 路面勾配センサ
O/P オイルポンプ(機動ポンプ)
31 副変速機
H/C ハイクラッチ(断接要素)
R/B リバースブレーキ(断接要素)
L/B ローブレーキ(断接要素)
32 車速センサ
33 車両加速度センサ
35 ライン圧ソレノイド
36 ロックアップソレノイド
37 プライマリプーリ圧ソレノイド
38 ローブレーキ圧ソレノイド
39 ハイクラッチ圧&リバースブレーキ圧ソレノイド
41 スイッチバルブ
Claims (6)
- 動力源としてエンジンのほかに電動モータを具え、前記エンジンにより駆動される機動ポンプからの作動媒体で制御される断接要素を介して、前記エンジンおよび無段変速機より成るエンジン駆動系が車輪に切り離し可能に駆動結合され、該断接要素を解放すると共に前記エンジンを停止させることで前記電動モータのみにより前記車輪を駆動する電気走行が可能であるほか、前記エンジンを始動させると共に前記断接要素を締結することで前記電動モータおよびエンジンにより前記車輪を駆動するハイブリッド走行が可能なハイブリッド車両において、
前記電気走行モードでの停車中に、前記両走行モードの選択を司るハイブリッド制御システムを非作動にした後、再起動されたのを検知するハイブリッド制御システム起動検知手段と、
該手段によりハイブリッド制御システムの起動が検知されたとき、前記エンジンの始動により、前記断接要素が解放された状態で前記エンジンの動力によって前記無段変速機の内部が回転し、前記無段変速機を変速可能状態となすエンジン始動手段と、
該変速可能状態の無段変速機を、エンジン駆動による発進時に要求される所定変速比へ向けて変速させる変速手段と、
該手段による変速の完了後に、前記無段変速機の走行レンジへのセレクト操作に呼応して前記断接要素を締結させ前記ハイブリッド走行モードとする断接要素締結手段と
を具備して成ることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項1に記載された、ハイブリッド車両の制御装置において、
前記無段変速機が非走行レンジにセレクト操作された状態であるのを検知する非走行レンジセレクト状態検知手段を設け、
該手段により非走行レンジセレクト状態が検知されていることを条件として前記エンジン始動手段は、前記エンジン始動により無段変速機を変速可能状態となすものであることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項1または2に記載された、ハイブリッド車両の制御装置において、
前記エンジン駆動による発進時に要求される所定変速比は、該発進時に必要な発進時要求駆動力を実現可能な発進用要求変速比であることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項1または2に記載された、ハイブリッド車両の制御装置において、
前記発進に際し前記電動モータの駆動力を発進アシスト力として利用可能か否かを判定するモータアシスト可否判定手段と、
該手段により電動モータの発進アシストが可能と判定された場合、前記エンジン駆動による発進時に要求される所定変速比は、該電動モータからのアシスト力と協働して前記エンジンが、前記発進時に必要な発進時要求駆動力を実現可能な発進用要求変速比であることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項4に記載された、ハイブリッド車両の制御装置において、
前記電動モータからの発進アシスト力は、該電動モータの電源を含むモータ駆動系が出力可能な最大駆動力であることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載された、ハイブリッド車両の制御装置において、
前記無段変速機の非回転状態で該無段変速機の実変速比を検出可能な変速比検出手段を設け、該手段により検出した実変速比が、前記エンジン駆動による発進時に要求される所定変速比以上のロー側変速比であるとき、前記エンジン始動手段、変速手段および断接要素締結手段によるハイ発進防止制御を禁止して、前記エンジンを停止状態に、また前記断接要素を解放状態に保つことで、前記無段変速機の変速が行われないようにするハイ発進防止制御禁止手段を設けたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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