以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る運転者姿勢検出装置を適用した自動二輪車1の左側面図である。自動二輪車1は、動力源としてのエンジン17の駆動力をドライブチェーン21によって後輪WRに伝達して走行するデュアルパーパスタイプの鞍乗型車両である。
車体フレームを構成するメインフレーム3の車体前方端部には、不図示のステアリング軸39(図4参照)を揺動自在に軸支するヘッドパイプ10が設けられている。前輪WFを回転自在に軸支する左右一対のフロントフォーク13は、ヘッドパイプ10の上下でステアリング軸39に固定されたトップブリッジ6およびボトムブリッジ11によって支持されている。前輪WFの車幅方向左側には、ブレーキディスク15およびブレーキキャリパ16からなる前輪ブレーキ装置BFが配設されている。トップブリッジ6に固定される操向ハンドル4には、左右一対のバックミラー5が取り付けられている。
エンジン17はメインフレーム3の下部に配設されており、メインフレーム3の後端下部には、後輪WRを回転自在に軸支するスイングアーム20の前端部を揺動自在に軸支するピボット18が配設されている。スイングアーム20の前方側は、リヤクッション19によってメインフレーム3に吊り下げられている。ピボット18の下方には左右一対の足乗せステップ41が取り付けられている。後輪WRの車幅方向右側には、ブレーキディスク22およびブレーキキャリパ23からなる後輪ブレーキ装置BRが配設されている。後輪ブレーキ装置BRの近傍には、後輪WRの回転速度に基づいて車速を検出する車速センサ38が配設されている。エンジン17の燃焼ガスは、車幅方向右側のマフラ24から排出される。
操向ハンドル4の前方は、ヘッドライト12およびスクリーン8を支持するフロントカウル9で覆われている。フロントカウル9の車体後方側には、速度計や距離計等の情報を表示するメータ装置7が配設されている。フロントフォーク13には、前輪WFの上部を覆うフロントフェンダ14が固定されている。
操向ハンドル4とシート29の間には、メインフレーム3に固定される燃料タンク2が配設されている。メインフレーム3の後部には、車体後方上方に延びるシートフレーム30が連結されている。シートフレーム30には、サイドバッグの取り付けステーを兼ねるサイドカバー28と、運転者が車体を取り回す際に把持したり後部シートの同乗者が把持するグラブバー27とが固定されている。サイドカバー28の後方には、尾灯装置26およびリヤフェンダ25が配設されている。
左右一対のメインフレーム3の内側で、車幅方向中央の位置には、振動ジャイロを用いて車体のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出できる慣性センサ31が設けられている。エンジン17には、運転者のスロットル操作に基づくスロットル開度を検出するスロットル開度センサ42、後輪WRのスリップを抑えるために電子制御されるスロットルの開度や燃料噴射装置や点火装置を制御して一時的にエンジン駆動力を下げることができるトラクションコントロールシステム32が設けられている。
本願発明に係る運転者姿勢検出装置は、運転者の身体各部に配設した身体位置センサ(無線通信機器)の位置を、車体側に配設した無線通信器によって検出することで、運転者の様々な乗車姿勢状態を把握することを可能とする。車体側および運転者側の無線通信器には、例えば、トランスポンダやトランシーバ、Bluetooth(登録商標)デバイスや無線LANを用いることができる。身体位置センサの測位手法としては、周知または公知の電波や電磁波を用いた三角測量を用いる。例えば、車体側の3つ以上の無線通信器から運転者側の身体位置センサに同時に信号を発した信号に関する到来時間差または信号強度や、運転者側の身体位置センサから車体側の3つ以上の無線通信器に発した信号に関する到来時間差または信号強度を用いて身体位置センサの測位を行うことができる。
なお、運転者姿勢検出装置は、車体を基準としたローカル座標系を有する。このローカル座標系の前後方向および左右方向は、車体のロール角およびピッチ角がゼロ度(車体が図5に示されるように左右方向に傾いておらず直立した状態、かつ、車体が図2に示されるように前後方向に傾いておらずほぼ水平の状態)の時、自動二輪車を外から見た時の前後方向および左右方向と一致する。一方で、車体にゼロ度以上のロール角やピッチ角がある(図9,10,15〜18)時、ローカル座標系の前後方向および左右方向は自動二輪車を外から見た時の前後方向および左右方向と不一致となる。このローカル座標系によって測位される運転者姿勢を後述する車体の各種運動状態量と組み合わせて用いることにより、運転者姿勢の各種判定を行う。
また、身体位置センサの測位と同じ手法にて、自動二輪車のハンドルやサスペンションの位置を測位することもできる(後述するメカ位置センサ)。
本実施形態では、メータ装置7の内部に前方側無線通信器50が配設されていると共に、ヘッドパイプ10の後方かつ操向ハンドル4の下方で車幅方向に離間した位置に左右一対の後方側無線通信器51が配設されている。なお、本発明における測位用の無線通信器は、3つ以上の無線通信器がそれぞれ異なる位置に固定して配置されていればよい。例えば、メータ内の異なる位置に3つの無線通信器が配されていてもよい。また、無線通信器がメータ周辺のインパネ周りやシート下やテールランプ周りに配されていてもよい。運転者のスマートフォンが車体側にマウントされ、このスマートフォンが無線通信器の一部をなす構成であってもよい。
また、メータ装置7の下方でフロントカウル9に覆われた位置には、運転者姿勢検出装置を構成する身体位置測位制御装置としての制御装置100が配設されている。制御装置100は、エンジン等の制御を行うECUと一体に設けてもよい。運転者の持つスマートフォン等の携帯端末で動作するアプリケーションが制御装置100としての機能を持つ構成であってもよい。
図2は、運転者Pが乗車した状態の自動二輪車1の左側面図である。運転者Pの通常の乗車姿勢は、足乗せステップ41に両足を乗せ、シート29に着座し、操向ハンドル4を両手で把持することで成立する。このとき、燃料タンク2は、運転者Pが両足で挟んでニーグリップを行う膨出部として機能する。
本実施形態では、運転者姿勢検出装置を構成するため、運転者Pの身体の各部に、前方側無線通信器50および後方側無線通信器51と通信可能な身体位置センサが複数配設されている。身体位置センサは、運転者が自動二輪車の走行に際して装着または着用するヘルメットや衣服(ジャケットやパンツやベルト)やシューズやニーパッド等の各種防具や腕時計等に設けられる。身体位置センサとして運転者の持つスマートフォンの携帯端末が用いられてもよい。
まず、運転者Pの着用するヘルメット70には、運転者Pの耳の側方の位置に、左右一対の下側頭部センサ80(80L,80R)が配設され、さらにヘルメット70の頭頂部前方の車幅方向中央に上側頭部センサ80(80C)が配設されている。このように、頭部センサが車幅方向で異なる位置に少なくとも2つ以上が配設されることにより、頭部の位置を測位するだけでなく、頭部の左右方向の傾きを検出することができるようになる。この頭部の左右傾きは、後述する水平目線判定に応用される。
本実施形態では、これら3つの頭部センサ80により、運転者Pの頭位置PHを検出するように構成されている。このように、身体位置センサ80が、ヘルメット70の車幅方向で異なる位置に配設されたもののほか、さらに、その上下方向にオフセットした位置にも配設されているので、ヘルメット70の上下方向の異なる位置に身体位置センサが配設されることとなり、頭部の左右方向の傾きに加えて上下方向の傾きも検出することが可能となる。
頭位置PHは、左右の下側頭部センサ80L,80Rの中央で、ヘルメット内部空間の略中央の位置に設定される。また、運転者Pの腰部の車幅方向中央に配設された腰部センサ85は、運転者Pが着座した際にシート29に接触する運転者尻部の車幅方向中央の尻位置PSを検出するように設定されている。なお、尻位置PSを検出するセンサは運転者Pの尻部近傍に設けてもよい。
本実施形態では、頭部センサ80によって検出される頭位置PHと、腰部センサ85によって検出される尻位置PSとに基づいて、運転者Pの上半身の前後方向の揺動角度である上体傾斜角θubfを検出することが可能とされる。上体傾斜角θubfは、尻位置PSを通る車体上下線Bを基準として、尻位置PSを中心に頭位置PHがどのくらい傾斜しているかを示す角度である。車体上下線Bは、平地での運転者1名が乗車した際に車体および運転者の重量により車体(バネ上)がサスペンションを重量に応じて沈み込ませた状態(乗車1G状態)で水平かつ路面Gと平行な車体水平線Hに対して垂直な線とされる。換言すれば、自動二輪車1の加速や減速時に車体水平線Hは前後に傾斜し、これに伴って上体傾斜角θubfの基準となる車体上下線Bも前後に傾斜することとなる。さらに、車体上下線Bは、自動二輪車1の車体の上下方向に沿う基準線であり、旋回走行で車体がバンクした際には同様に左右に傾斜することとなる。
また、尻位置PSによれば、シート29の周囲に予め設定される着座判定範囲Eに尻位置PSがあるか否かを判定することによって、運転者Pがシート29に着座しているか否かを判定することが可能となる。
一方、身体位置センサは、頭部センサ80および腰部センサ85のほか、両肩の肩部センサ82を設けることができる。さらに、腕部ARの両肘の肘部センサ83、両手首の手首部センサ84、足部LGの両膝の膝部センサ86、両足首の足首部センサ87等を設けることができる。これら各センサも、無線通信器50,51と通信することにより、それぞれの身体位置を測位することを可能とする。さらに、身体位置センサを首部や胸部にも追加して、上体傾斜角θubfの検出精度を高めるようにしてもよい。
ヘルメット70には、シールド73に一体のヘッドマウントディスプレイ49が配設されている。また、下側頭部センサ80L,80Rには、ヘルメット内蔵のバッテリ(不図示)で駆動するスピーカ72(図4参照)が一体で設けられている。
図3は、運転者Pの目線から見た操向ハンドル4の周辺の斜視図である。操向ハンドル4の前方でスクリーン8の下方に位置するメータ装置7は、車速やエンジン回転数等の情報を表示する液晶パネル7aを備えている。前側無線通信器50は、このメータ装置7の内部に配設されている。メータ装置7には、複数の操作スイッチやインジケータのほか、後述するリーンウィズトレーニングモードに切り替えるための選択スイッチ33およびハングオフトレーニングモードに切り替えるための選択スイッチ34が設けられている。
操向ハンドル4の右側には、回動式のスロットル操作子として機能する右側ハンドルグリップ37と、エンジンスタートスイッチ等が設けられた右側スイッチボックス35とが取り付けられている。一方、操向ハンドル4の左側には、運転者Pが把持する左側ハンドルグリップ37と、ホーンスイッチ等を有する左側スイッチボックス36とが取り付けられている。左右のスイッチボックス35,36には、無線通信器50,51と通信することで操向ハンドル4の操舵角を検出する操舵角検出手段としてのハンドル部センサ60(60L,60R)が設けられている。
図4は、運転者Pが乗車した状態の自動二輪車1の平面図である。また、図5は運転者Pが乗車した状態の自動二輪車1の正面図である。車体側面視で、下側頭部センサ80L,80Rと重なる位置に配設されるスピーカ72は、下側頭部センサ80L,80Rと一体的に構成するほか、下側頭部センサ80L,80Rの車幅方向内側に配設することができる。なお、スピーカ72と下側頭部センサ80L,80Rとが互いに重ならないように配設してもよい。
乗車1G状態のローカル座標系における車体平面視において、運転者Pが通常の乗車姿勢をとると、頭位置PHは、車体中心線CX上で、かつシート29の車体後方寄りの尻位置PSより車体前方に位置する。一方、乗車1Gの車体正面視において、頭位置PHは、車体鉛直線CY上で、かつヘルメット70のシールド73と重なる運転者Pの額近傍の高さにある。また、尻位置PSは、車体鉛直線CY上で、かつヘッドライト12と車体正面視で重なる高さにある。
肩部センサ82は、肩関節の外側でウェアの衝撃吸収パッドから外れた位置等に設けることができる。また、肘部センサ83は、肘関節の外側でウェアの衝撃吸収パッドから上方に外れた位置等に設けることができる。また、手首部センサ84は、グローブの手の甲の衝撃吸収パッド内等に設けることができる。さらに、膝部センサ86は、膝関節の外側でウェアの衝撃吸収パッドから外方に外れた位置等に設けることができ、足首部センサ87は、ブーツの踵カップ内等に設けることができる。
本実施形態では、前側無線通信器50がステアリング軸39の前方に位置するメータ装置7の内部に設けられると共に、後側無線通信器51がメータ装置7より車体後方側のステアリング軸39よりさらに後方に配設されている。これにより、無線機器同士が互いに離間して配置され、身体位置センサからの電波の反射時間を計測する方式による身体位置の測位精度を高めることが可能となる。また、前側無線通信器50をメータ装置7の内部に設けることで、運転者Pとの間に遮蔽物が存在せず、身体位置の測位精度を保ちやすくなる。
図6は、運転者Pがスタンディング姿勢をとった状態の自動二輪車1の左側面図である。本実施形態に係るデュアルパーパスタイプの車両では、凹凸路等の走行時に運転者Pが立ち上って自動二輪車1を操作するスタンディング姿勢をとることも多くなる。このスタンディング姿勢では、着座状態に対して、尻位置PSおよび頭位置PHがそれぞれ車体上方前方に移動することとなる。
本願発明に係る運転者姿勢検出装置は、複数の身体位置センサからの情報に基づいて、種々の乗車姿勢を検出することができる。乗車姿勢の検出にあたっては、検出対象となる乗車姿勢毎に必要な身体位置センサの種類が異なるので、以下では、検出したい乗車姿勢に対応する複数の制御ブロック図を用いて、それぞれの検出手法を説明する。
図7は、主に乗車/非乗車判定を行う際の運転者姿勢検出装置の構成を示す制御ブロック図である。制御装置100には、運転者Pが乗車しているか否かを判定する乗車/非乗車判定部101と、運転者Pが着座しているか否かを判定する着座/非着座判定部102と、運転者Pが車両から降りて車体を押し引きする姿勢にあるか否かを判定する取り回し判定部103とが含まれる。制御装置100には、頭部センサ80、腰部センサ85、膝部センサ86、手首部センサ84および車速センサ38の出力信号が入力される。
図8は、乗車判定制御の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、自動二輪車1のイグニッションスイッチがオンで、スタンド装置が格納状態であるときに実行される。ステップS1では、各身体位置センサおよび無線通信器によって身体位置が検出される。ステップS2では、尻位置PSが車体平面視(上面視)でシート29の周辺にあるか否かが判定される。この判定は、尻位置PSが車体平面視で着座判定範囲Eにあるか否かによって実行できる。また、この判定は、膝部センサ86で検出される膝位置(または足首部センサ87によって検出される足首位置)が車体中心線CXをまたいで車幅方向左右にあるか否かや、所定車速以上における頭位置が設定された範囲内にあるか否かによって実行してもよい。ステップS2で肯定判定されると、ステップS3において乗車判定がなされる。
続くステップS4では、尻位置PSまたは頭位置PHが車体側面視で着座位置周辺にあるか否かが判定される。この判定は、尻位置PSが車体側面視で着座判定範囲Eにあるか否かによって実行できる。ステップS4で肯定判定されると、ステップS5で着座判定がなされてAに進む。一方、ステップS4で否定判定される、すなわち、尻位置PSが車体平面視で着座判定範囲Eにある(または足部がシート29を跨いでいる)ものの車体側面視では着座判定範囲Eにない場合は、ステップS6に進み、運転者Pがスタンディング姿勢をとっているとするスタンディング判定がなされてAに進む。
また、ステップS2で否定判定されると、ステップS7に進んで、運転者Pが乗車していないとする非乗車判定がなされる。続くステップS8では、手首部センサ84で検出される手首位置がハンドルグリップ37の周辺にあるか否かが判定される。ステップS8で肯定判定されると、ステップS9に進み、運転者Rが車両から降車して車体を押し引きしている取り回し状態であると判定され、一連の制御を終了する。一方、ステップS8で否定判定されると、ステップS10に進んで運転者Pが近くにいないと判定されて一連の制御を終了する。なお、ステップS8の判定は、運転者Pの手首位置がシート29の後方のグラブバー27周辺にあるか否かによって実行してもよい。
上記したフローチャートによれば、ステップS3で乗車判定される乗車姿勢に、自動二輪車1の代表的なライディングフォームである、リーンウィズ、リーンインおよびリーンアウトを含むことができる。ここで、尻位置PHをシート29の外側に大きくずらすハングオフ姿勢は、尻位置PSが車体平面視で着座判定範囲Eから外れて、ステップS2で否定判定されることが考えられる。これに対しては、例えば、ハングオフ姿勢が比較的高速での旋回中に適した乗車姿勢であることから、車速が所定値より大きい場合にステップS2の「シートの周辺」の範囲を車幅方向に拡大することとして、ハングオフ姿勢でも乗車判定させることができる。また、ステップS2の条件を、「足首部センサ87によって検出される足首位置)が車体中心線CXをまたいで車幅方向左右にあるか否か」に設定した場合も、ハングオフ姿勢で乗車判定させることができる。
なお、すべての車両運動状態量(エンジン回転数やスロットル開度、変速機段数、ブレーキ操作パラメータ、車輪スリップ率、車速、前後/横/上下にかかるG、ピッチレート、ロールレート、ヨーレート、ロール角、サスペンションの減衰力やストローク量等)は、制御装置100のデータロガーにログを残すことができる。そして、本願発明では、運転者Pの乗車姿勢やフォーム判定のログを残すことができるので、記録された各ログに基づき、PCやスマートフォン等のアプリケーションを用いて運転者Rが乗った状態での動きを再生することができる。さらに、運転者Rが習得したいライディングフォームができているか否かを確認したり、要チェック箇所を検索することもできる。
図9は、加速時の状態を示す自動二輪車1の左側面図である。自動二輪車1が大きく加速する際には、フロントフォーク13が伸びると共に、リヤクッション19が縮んで車両後部が下がり、車体が前上がりの姿勢になる。このとき、運転者Pは、通常時(破線で示す)の上体傾斜角θubf1に対し、加速に備えて上半身の前傾度合いを増すことが好ましい。この図では、上体傾斜角θubfを、加速度に応じて大きくなるように設定された加速姿勢閾値θT1より大きなθubf2まで大きくすることで、前輪WFのリフトを抑え、腕が伸びきるのを防ぎ、かつ良好な視界を保つための適切な前傾姿勢をとっている。
本実施形態では、車体上下線Bを挟んで前傾側の第1閾値θ1と後傾側の第2閾値−(マイナス)θ2との間を中立位置と設定しており、上体傾斜角θubfが第1閾値θ1より大きいと前傾姿勢と判定し、上体傾斜角θubfが第2閾値−θ2より小さいと後傾姿勢と判定する。
図10は、減速時の状態を示す自動二輪車1の左側面図である。自動二輪車1が大きく減速する際には、フロントフォーク13が縮むと共に、リヤクッション19が伸びて車両後部が上がり、車体が前下がりの姿勢になる。このとき、運転者Pは、通常時(破線で示す)の上体傾斜角θubf1に対し、減速に備えて上半身の前傾度合いを少し減らすことが好ましい。この図では、上体傾斜角θubfを、減速度に応じて小さくなる減速姿勢閾値θT2より小さなθubf3まで後傾することで、後輪WFのリフトを抑え、操向ハンドル4を押してしまうことを防ぎ、ブレーキレバーの操作を妨げず、かつ良好な視界を確保するための適切な中立姿勢をとっている。
図11は、主に加減速時の姿勢判定を行う際の運転者姿勢検出装置の構成を示す制御ブロック図である。制御装置100には、運転者Pの上体傾斜角θubfを検出して、前傾/後傾状態を判定する乗車姿勢判定部104と、慣性センサ31によって自動二輪車1の加速度または減速度を検出する加減速検出部105と、加速度または減速度および上体傾斜角θubfに応じて、必要に応じてブレーキ装置BF,BRまたはTCS32を駆動する制動力/駆動力制御部106とが含まれる。制御装置100には、頭部センサ80、腰部センサ85、慣性センサ31、車速センサ38の出力信号が入力される。
図12は、着座乗車姿勢判定制御の手順を示すフローチャートである。ステップS20では、頭位置PHおよび尻位置PSに基づいて、上体傾斜角θubfが検出される。ステップS21では、上体傾斜角θubfが第1閾値θ1を超えているか否かが判定される。ステップS21で肯定判定されると、ステップS22に進み、前傾判定が行われてBに進む。
一方、ステップS21で否定判定されると、ステップS23に進んで、上体傾斜角θubfが第2閾値−θ2より大きいか否かが判定される。ステップS23で肯定判定されると、ステップS24に進んで中立判定が行われてBに進む。さらに、ステップS23で否定判定されると、ステップS25において後傾判定が行われてBに進む。
図13は、加速時姿勢判定制御の手順を示すフローチャートである。ステップS30では、スロットル開度θthおよびスロットル開度θthの単位時間あたりの変化量であるΔθthが検出される。続くステップS31では、変化量θthが閾値を超えているか否かが判定される。ステップS31で肯定判定されると、ステップS32に進んで、加速意思フラグがオフからオンに切り替えられる。次に、ステップS33では、上体傾斜角θubfが加速姿勢閾値θT1(図9参照)を超えているか否かが判定され、肯定判定されるとステップS34に進み、加速時前傾判定が行われてCに進む。
一方、ステップS31で否定判定される、すなわち、スロットル開度θthの変化量Δθthがあまり大きくないと判定されると、ステップS35に進む。ステップS35では、加速意思フラグがオンであるか否かが判定され、肯定判定されると、ステップS33に進む。ステップS35で否定判定されると、加速意思はないものとして一連の制御を終了する。なお、オンにされた加速意思フラグは、スロットル開度θthが所定値未満まで戻されることでオフに切り替えられる。
また、ステップS33で否定判定されると、ステップS36に進む。ステップS36では、大きく加速するにもかかわらず上体前傾角θubfが小さい、換言すれば、加速操作に対して運転者Pの上半身の準備ができていない可能性があるとしてのチェック判定がなされる。
続くステップS37では、ステップS36のチェック判定を受けて、制動力/駆動力制御部106がTCS32を駆動して、後輪WRの駆動力を低減するウイリー抑制制御が実行される。そして、ステップS38において、メータ装置7の液晶表示7aやヘルメット70のスピーカ83を用いて運転者Pへの報知が実行される。なお、ウイリー抑制制御が実行される場合は、報知制御を省略してもよい。また、TCS32によるウイリー抑制制御は、点火間引きや燃料噴射間引き、電子制御されるスロットル開度の低減等で実行できる。
図14は、減速時姿勢判定制御の手順を示すフローチャートである。ステップS40では、頭位置PHおよび尻位置PSの移動変化に基づいて、上体を起こす方向の上体傾斜角θubfの変化量Δθubfが検出される。ステップS41では、変化量Δθubfが閾値を超えている、すなわち、減速に備えて上体をすばやく起こしたと判定されると、ステップS42に進んで、スポーティブレーキ意思フラグがオフからオンに切り替えられる。
続くステップS43では、ブレーキ油圧やブレーキレバーの揺動量から導出される単位時間あたりの変動量であるブレーキ操作変動量が検出される。ステップS44では、ブレーキ操作変動量が閾値を超えているか否かが判定される。ステップS44で肯定判定されると、運転者Pが大きな制動力を欲しているとして、大ブレーキフラグがオフからオンに切り替えられる。
続くステップS46では、上体傾斜角θubfが減速姿勢閾値θT2より小さいか否かが判定される。ステップS46で肯定判定されると、ステップS47に進んで、シフトダウン操作が行われたか否かが判定される。ステップS47で肯定判定されると、ステップS48に進んで、コーナー進入に備えて大きな減速をしながらシフトダウンを実行しようとしているとして、シフトダウンのタイミングに合わせてエンジン回転数を自動的に上昇させて変速後のギヤ段にエンジン回転数を合わせるブリッピングアシスト制御を実行し、一連の制御を終了する。ステップS47で否定判定されると、そのまま一連の制御を終了する
また、ステップS46で否定判定される、すなわち、大きく減速するにもかかわらず上体前傾角θubfが大きく、減速操作に対して運転者Pの上半身の準備ができていない可能性があるとしてのチェック判定がなされる。続くステップS51では、ステップS50のチェック判定を受けて、制動力/駆動力制御部106がブレーキ装置BF,BRの制動力を低減し、減速に伴って重心位置が車体前方にずれることで生じやすくなる後輪WRのリフト(ジャックナイフ)を抑制するための後輪リフト抑制制御が実行される。そして、ステップS52において、メータ装置7の液晶表示7aやヘルメット70のスピーカ72を用いて運転者Pへの報知が実行され、ステップS47の判定に進む。
一方、ステップS44で否定判定されるとステップS49に進んで、スポーティブレーキ意思フラグがオンか否かが判定され、肯定判定されるとステップS46に進み、一方、否定判定されるとそのまま一連の制御を終了する。
図15は、運転者Pがリーンウィズ姿勢で旋回走行中の自動二輪車1の正面図である。また、図16はリーンイン姿勢、図17はリーンアウト姿勢で旋回走行中の自動二輪車1の正面図である。いずれも車体ロール角θrollは同じ大きさである。
リーンウィズ、リーンイン、リーンアウト姿勢の区別は、図8のフローチャートで説明した着座判定がなされた状態で、ローカル座標系における車体鉛直線CY(または車体中心線CX)に対して頭位置PHがどこにあるかによって判定することができる。本実施形態では、車体鉛直線CYから車幅方向左右に離間する距離が所定値T1(例えば、20cm)までであればリーンウィズとし、旋回方向側に所定値T1を超えて離間していればリーンイン、旋回方向と逆側(外側)に所定値T1を超えて離間していればリーンアウトと判定する。
図18は、ハングオフ姿勢で旋回走行中の自動二輪車1aの正面図である。また、図19は運転者Pがハングオフ姿勢で旋回走行中の自動二輪車1aの平面図である。ハングオフ姿勢は、比較的高速での旋回走行に適したものとされ、図に示すようなハンドル位置が低くステップ位置が高いスポーツ車両において実行しやすい乗車姿勢である。
ハングオフ姿勢は、尻位置PSをシート29から車幅方向に大きくずらすと共に、腰を回転させるようにして膝位置を車体前方下方にずらす点に特徴がある。このとき、他方側の膝は燃料タンク2aの側面に近接配置され、頭位置PHはリーンウィズの判定範囲に収まっているのが規範として理想的である。さらに、燃料タンク2aの盛り上がりが大きく操向ハンドル4の位置が低い場合には、外側の腕の肘も燃料タンク2aに接することがある。
図20は、主に旋回走行時の姿勢判定を行う際の運転者姿勢検出装置の構成を示す制御ブロック図である。制御装置100には、旋回時姿勢判定部107と、慣性センサ31および車速センサ38の出力信号に基づいて旋回走行中であるか否かを判定する旋回判定部108と、所定の旋回時姿勢に近づけるトレーニングを行うためのトレーニングモード実行部109とが含まれる。トレーニングモード実行部109は、所定の乗車姿勢の達成度に応じてヘッドマウントディスプレイ71やスピーカ72を駆動して運転者Pに報知を行うように構成されている。
制御装置100には、頭部センサ80、腰部センサ85、慣性センサ31、ハンドル部センサ60、リーンウィズトレーニングモードスイッチ33およびハングオフトレーニングモードスイッチ34の出力信号が入力される。
図21は、旋回時姿勢判定制御の手順を示すフローチャートである。ステップS60では身体位置が検出され、ステップS61では慣性センサ31によって車体ロール角θrollが検出される。ステップS62では、車体ロール角θrollが閾値を超えているか否かが判定され、肯定判定されるとステップS63で旋回中判定がなされる。なお、旋回中であるか否かの判定は、慣性センサ31によって検知されるヨーレートや、ハンドル位置センサ60によって検出されるハンドル操舵角に基づいて実行してもよい。
続くステップS64では、尻位置PSが車体平面視で車体鉛直線周辺にあるか否かが判定される。本実施形態において、この判定は、車体中心線CX(図19参照)から車幅方向に距離T2以内にあるか否かによって実行される。ステップS64で肯定判定されると、ステップS65において尻位置センター寄り判定がされて、ステップS66に進む。ステップS66では、頭位置PHが車体平面視で車体中心線CX周辺にあるか否かが判定され、肯定判定されると、ステップS67でリーンウィズ判定がなされてEに進む。
一方、ステップS66で否定判定されると、ステップS70に進んで、頭位置PHが車体平面視で車体中心線CXより旋回方向側にあるか否かが判定される。ステップS70で肯定判定されると、ステップS71でリーンイン判定がなされてEに進む。一方、ステップS70で否定判定されると、ステップS72でリーンアウト判定がなされてEに進む。
そして、ステップS62で否定判定される、すなわち、車体ロール角θrollが閾値以下である場合は、ステップS68に進む。ステップS68では、尻位置PSが車体中心線CXから車幅方向に所定値以上離間しているか否かが判定され、肯定判定されると、ステップS69に進む。ステップS69では、まだ旋回中ではないがハングオフの準備動作として尻位置PSが移動されたとして、コーナー接近判定がなされて一連の制御を終了する。なお、ステップS68で否定判定されると、そのまま一連の制御を終了する。
また、ステップS64で否定判定される、すなわち、旋回中判定がなされた状態で尻位置PSが車体中心線CX周辺にないと判定されると、Dに進む。なお、コーナー接近判定がなされることでオンとなるフラグは、尻位置PSが車体中心線CXの周辺に戻ったり、ステップS63の旋回中判定がなされたりすることでオフに切り替えることができる。
なお、リーンイン姿勢は、砂が浮いた路面など、摩擦係数の低い路面に適した乗車姿勢とされる。このため、リーンイン判定がなされた場合は、運転者Pが路面状況に対応して乗車姿勢を変えたものとしてTCS32が作動しやすくなるように設定してもよい。
図22は、ハングオフ判定制御の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、図21のステップS64で否定判定されたことを受けて開始される。ステップS80では、尻位置PSが車体平面視で車体中心線CXより旋回方向側にあるか否かが判定され、肯定判定されるとステップS81に進む。ステップS81では、尻位置イン側判定がなされてステップS82に進む。ステップS82では、頭位置PHが車体平面視で車体中心線CXの周辺にあるか否かが判定され、肯定判定されるとステップS83に進んでハングオフ判定がされ、Eに進む。
ステップS82で否定判定されると、ステップS84に進んで、頭位置PHが車体平面視で車体中心線CXより旋回方向側にあるか否かが判定される。ステップS84で肯定判定されると、ステップS85において、通常のハングオフより動作の大きい大ハングオフ判定がなされてEに進む。一方、ステップS84で否定判定されると、ステップS86において、尻位置PSを旋回方向側に大きく移動させながら、頭位置PHが旋回方向の逆側に残った不自然な姿勢である可能性があるとしてのチェック判定がなされてEに進む。
また、ステップS80で否定判定されると、ステップS87において尻位置アウト側判定がなされる。続くステップS88では、頭位置PHが車体平面視で車体中心線CXより外側(旋回方向側の逆側)にあるか否かが判定され、肯定判定されるとステップS89に進んで、通常のリーンアウトより動作の大きい大リーンアウト判定がなされてEに進む。なお、車速がごく低速(例えば、6〜10km/h)の状態で大リーンアウト判定がなされた場合は、運転者PがUターンを試みているとして、車速を一定に保つ制御を実行してもよい。一方、ステップS88で否定判定されると、ステップS90において、尻位置PSを外側に移動させつつ、頭位置PHは車体中心線CX周辺に残った不自然な姿勢である可能性があるとしてのチェック判定がなされてEに進む。
図23は、旋回走行中の運転者Pの目線を示す自動二輪車1の斜視図である。また、図24は旋回走行中の運転者Pの視界を示す説明図である。旋回走行中は、その乗車姿勢にかかわらず、視線Sを車体のすぐ近くの路面ではなく、コーナーの出口方向を見るのが好ましいとされる。本実施形態に係る運転者姿勢検出装置では、ヘルメット70に設けられた上側頭部センサ80cおよび左右一対の下側頭部センサ80L,80Rによってヘルメット70の指向方向を検出することができる。これにより、ヘルメット70の指向方向とほぼ同義となる運転者Pの目線Sを推測検知して、運転者Pが旋回走行中に理想的な方向に目線Sを向けているか否かを判定することができる。
図24の(a)に示すように、旋回走行中であっても、路面に対して首を左右に傾けず、左右の目の高さを水平に保つほうがより広い視界が得られる。これに対し、(b)のように、旋回方向に合わせて首を傾けてしまうと、路面に対して視界が傾いてコーナーの出口が見えにくくなる可能性がある。本実施形態では、旋回走行中の頭の傾きが理想的でない場合に、ヘルメット70のシールド74上部に設けられたインジケータ74のほか、ヘッドマウントディスプレイ71やスピーカ72によって乗員に報知できるように構成されている。なお、インジケータ74は、理想的な視線であればグリーンに点灯し、頭が傾いている場合はオレンジに点灯または点滅する等の設定が可能である。
図25は、主に水平目線判定を行う際の運転者姿勢検出装置の構成を示す制御ブロック図である。制御装置100には、頭位置PHが傾いていないか否か、換言すれば、両目の高さが水平か否かを判定する旋回中目線判定部110と、ヘルメット70が所定値を超えて傾いている場合に、ヘッドマウントディスプレイ71やスピーカ72を駆動して運転者Pに報知を行う報知制御部111とが含まれる。制御装置100には、頭部センサ80、慣性センサ31および車速センサ38の出力信号が入力される。
図26は、旋回中目線判定制御の手順を示すフローチャートである。ステップS100では、頭部センサ80c,80L,80Rの出力信号に基づいて、ローカル座標系における車体正面視での両目高さの傾きが検出される。ステップS101では、自動二輪車1を外から見た際(水平な路面から見た際)の両目高さの傾きが水平か否か(例えば、傾きが20度より小さい)が判定され、肯定判定されると、ステップS102で目線水平判定がなされる。一方、ステップS101dで否定判定されると、ステップS8で目線非水平判定がなされて、ステップS103に進む。
続くステップS103では、車体前後方向に対する目線の左右傾きが検出され、ステップS104では、車速および車体ロール角θrollが検出される。ステップS105では、車体ロール角θrollが閾値より大きいか否かが判定され、肯定判定されると、ステップS106に進む。ステップS106では、車速vおよび車体ロール角θrollの値を用いて、走行中のコーナーの旋回半径r(r=arktanθ*v^2)が算出される。
そして、ステップS107では、目線の左右傾きと旋回半径rの値に基づいて旋回要求度判定がなされる。この旋回要求度判定は、例えば、所定の旋回半径rにおける標準的な目線の左右傾きを予め定めておき、この標準傾きと現在傾きとを比較して、現在傾きの方が大きい場合は旋回要求度が高いと設定することができる。この判定によれば、例えば、運転者Pの旋回要求度が高い場合に、より車両の旋回能力を引き出しやすいライディングフォームやスロットル操作やブレーキ操作をヘッドマウントディスプレイ71やスピーカ71によってアドバイスすることが可能となる。
一方、ステップS105で否定判定されると、ステップS109に進んで、目線の左右傾きが閾値より大きいか否かが判定される。そして、ステップS109で肯定判定されると、ステップS110でわき見判定がなされて一連の制御を終了する。なお、ステップS109で否定判定されるとそのまま一連の制御を終了する。
図27は、リーンウィズトレーニング制御の手順を示すフローチャートである。リーンウィズトレーニング制御は、運転者Pがリーンウィズの乗車姿勢をより理想的にできるようにするため、任意のスイッチ操作により開始される制御である。
ステップS120では、リーンウィズトレーニングモードスイッチ33がオンにされ、ステップS121では、旋回中判定フラグがオンになっているか否かが判定される。ステップS121で肯定判定されると、ステップS122に進んで、リーンウィズ判定フラグがオンになっているか否かが判定される。
ステップS122で肯定判定されると、ステップS123に進んで目線水平判定フラグがオンであるか否かが判定され、肯定判定されるとステップS124において「フォームOK」の報知がなされて一連の制御を終了する。また、ステップS123で否定判定されるとステップS130に進む。ステップS130では、リーンウィズ判定がされて頭位置PHが車体平面視で車体中心線CXの周辺にあるものの、両目の高さが傾いている可能性があるとしてのチェック判定がなされる。続くステップS131では、「目線を水平に」との報知がなされて一連の制御を終了する。
一方、ステップS122で否定判定されるとステップS125に進み、リーンウィズトレーニングモードだがリーンウィズ判定フラグがオンになっていないとするチェック判定がなされる。次に、ステップS126では、尻位置センター判定フラグがオンになっているか否かが判定され、肯定判定されるとステップS127に進む。
ステップS127では、リーンイン判定フラグがオンか、または、リーンアウト判定フラグがオンであるか否かが判定される。ステップS127で肯定判定されるとステップS128に進んで、理想的でない頭位置PHに関する運転者Pへの報知が行われて、ステップS123に進む。
ステップS128の報知は、例えば、ヘッドマウントディスプレイ71の表示やスピーカ72による「頭の位置をあと5センチ左に」等の音声によって実行することができる。なお、ステップS126で否定判定されると、ステップ129において、理想的でない尻位置PSに関する運転者Pへの報知が行われて、ステップ123に進む。
上記したようなリーンウィズトレーニング制御によれば、運転者Pがより理想的なリーンウィズの姿勢をスムーズに習得することができ、きれいなライディングフォームで格好よく運転することが可能となる。なお、各ステップにおける運転者Pへの報知は、旋回中に行うだけでなく、コーナーを立ち上がって旋回が終了した時点で実行するようにしてもよい。なお、上記ではリーンウィズ姿勢の場合を説明したが、リーンイン姿勢およびリーンアウト姿勢のトレーニングモードを設定してもよい。
図28は、ハングオフトレーニング制御の手順を示すフローチャートである。ハングオフトレーニング制御は、運転者Pがハングオフの乗車姿勢をより理想的にできるようにするため、任意のスイッチ操作により開始される制御である。
ステップS140では、ハングオフトレーニングモードスイッチ34がオンにされ、ステップS141では、旋回中判定フラグがオンになっているか否かが判定される。ステップS141で肯定判定されると、ステップS142に進んで、ハングオフ判定フラグがオンになっているか否かが判定される。
ステップS142で肯定判定されると、ステップS143に進んで、コーナー接近推定フラグがオン(図21のステップS69に基づく)か否かが判定される。ステップS143で肯定判定されると、旋回走行に備えて尻位置PSをずらす予備動作があると判定がされ、ステップS146に進む。一方、ステップS143で否定判定されると、予備動作がないと判定されてステップS146に進む。
ステップS146では、尻位置PSが車体側方に移動したか否かが判定される。ステップS146で肯定判定されると、ステップS149に進んで、旋回方向の膝位置が車体前方下方に移動したか否かが判定される。ステップS149で肯定判定されると、ステップS150に進んで、旋回方向と逆側の膝が燃料タンクに接しているか否かがが判定される。そして、ステップS150で肯定判定されると、ステップS151に進んで、「理想的なハングオフ姿勢です」等のハングオフOKの報知がなされて、一連の制御を終了する。
一方、ステップS146で否定判定される、すなわち、尻位置PSが車体側方の理想的位置に移動していない場合には、ステップS147でチェック判定がなされ、ステップS148において、「腰の位置をあと10センチ右に」等の尻位置PSに関する報知が行われて、一連の制御を終了する。
また、ステップS149で否定判定される、すなわち、膝位置が車体前方下方の理想的位置に移動していない場合には、ステップS152でチェック判定がなされ、ステップS153において、「膝の位置をあと10センチ前かつ10センチ下に」等の膝位置に関する報知が行われて、一連の制御を終了する。さらに、ステップS150で否定判定される、すなわち、外側の膝位置が燃料タンクに接していない場合には、ステップS147でチェック判定がなされ、ステップS153において、「外側の膝で燃料タンクを押さえましょう」等の膝位置に関する報知が行われて、一連の制御を終了する。
図29は、車体各部に配設された圧電センサの構成を示す自動二輪車の平面図である。本願発明に係る運転者姿勢検出装置は、主に無線通信器50,51と運転者Pの身体に取り付けた身体位置センサによって運転者Pの身体のそれぞれの位置を検出することで、乗車姿勢の判定やアドバイスを実行可能とするものであるが、車体の各部に設けた圧電センサの情報を加えることで、乗車姿勢の検出精度をさらに高めることが可能となる。
この図では、まず、トップブリッジ37の下方には、前輪WFの揺動軸となるステムシャフト39の揺動角度を検出する操舵角センサ38が設けられている。この操舵角センサ38は、ハンドルスイッチ部センサ60によって操舵角を検出することに替えて、ステムシャフト39の回動角度を直接検出することで操舵角を検出することができる。
そして、左右のハンドルグリップ37にはハンドルグリップ37を車体後方から押圧する力を検出するハンドルグリップ荷重センサ63が設けられる。また、燃料タンク2の左右には、燃料タンク2の側壁を太ももや膝で押圧する力を検出する燃料タンク荷重センサ65が設けられ、左右の足乗せステップ41には、足乗せステップ41を上方から押圧する力を検出するステップ荷重センサ64が設けられ、さらに、シート29には、シートの各部を臀部で押圧する力を検出するシート荷重センサ62が設けられる。
図30は、身体位置センサおよび圧電センサを用いた各種判定を行う際の運転者姿勢検出装置の構成を示す制御ブロック図である。制御装置100には、前記した乗車姿勢判定部104、リーンウィズトレーニング部110、ハングオフトレーニング部111のほか、セルフステア判定部112、オフロード走行判定部113、疲労判定部114、転倒判定部115、取り回し判定部116、コーナー接近判定部117、アドバイス報知部118および挙動制御部119を含むことができる。
アドバイス報知部118は、報知手段Dを駆動して運転者Pに各種の情報をアドバイスできるように構成されている。報知手段Dは、前記したスピーカ72、ヘッドマウントディスプレイ71のほか、メータインジケータ、ヘッドアップディスプレイ、主にバイブレータの振動によって報知を行うハプティックデバイス等を含むことができる。
この制御装置100によれば、例えば、理想的なハングオフ姿勢の条件に、燃料タンク荷重、シート荷重およびステップ荷重を加えることで、ハングオフトレーニングモードの効果をより一層高めることができる。また、リーンウィズトレーニング部110は、理想的なリーンウィズ姿勢ができているか否かの判定に、燃料タンク荷重センサ65によって、しっかりニーグリップができているか否かを考慮することができる。
また、セルフステア判定部112では、車体ロール角θrollのロール方向の回転速度であるロールレートが閾値以上になった後で、車体ロール角θrollが閾値以上になることを検出し、次に、ロール角が閾値以上となった時点からタイマを作動させて、操舵角θstrが旋回内側に回動し始めるタイミングと回動速度θstrとを求め、ロール角に応じた理想的な操舵角θstrのタイミングおよび回動速度θstrとを比較することで、運転者Pのセルフステア習熟度を判定することができる。このとき、肩部センサ82、肘部センサ83および手首部センサ84の出力信号に基づいて、腕が伸びきっていないかを考慮したり、ハンドルグリップ荷重センサ63によって車両なりのセルフステアを運転者Pが邪魔していないか等を判定することができる。また、コーナー進入時の逆操舵操作が過剰でないか、逆操舵のタイミングが適切か否かを判定することもできる。
また、オフロード走行判定部113では、膝部センサ86および足首部センサ87の出力信号に基づいて、旋回中に旋回方向の足が閾値より大きく車体前方に出されていることを検出することでオフロード走行をしていると判定することができる。このオフロード走行判定は、後輪WRのスリップ率を考慮することでさらに精度を高めることができる。
また、オフロード走行判定部113は、フロントフォーク13およびリヤクッション19の伸縮変動量の振幅や長さが所定値を超えることでオフロード走行をしていると判定することができる。このオフロード判定がなされた場合には、減衰力やプリロード量を自動制御可能なフロントフォーク13およびリヤクッション19をオフロード走行に合わせて自動セッティングすることが可能となる。
また、疲労判定部114は、車速が閾値を超え、かつ旋回中判定が出ていない場合に、頭部の下方傾斜角が一定時間以上大きな値となっているとき、または、頭部が車体前後に一定時間以上揺動を続けていて、前方下方に傾斜する際の速度より通常位置に戻る速度の方が速い場合に、運転者Pが疲労している等の頭部揺動状態から判定することができる。各判定部は、必要に応じてアドバイス報知部118に報知手段Dを駆動させて運転者Pに報知することが可能である。
また、転倒判定部115は、車体ロール角が所定値より大きく、非乗車判定がなされている場合に、車両が転倒状態にあると判定することができる。これにより、例えば、運転者Pが車両を降りて不安定な路面でスタンドをかけ、車両から離れている間に車両が倒れた場合等でも、運転者Pにこれを報知することが可能となる。
また、取り回し判定部116は、車速が所定値より小さく、非乗車判定がなされており、かつ運転者Pの手がハンドルグリップ37やグラブバー27の近傍にある場合に、運転者Pが車両を降りて取り回しをしている状態であると判定することができる。
さらに、制御装置100の各判定部の判定情報は、その情報に応じた車両の挙動制御に用いることもできる。挙動制御部119は、挙動制御手段Mを駆動して各種の運転補助を実行できるように構成されている。挙動制御手段Mは、アクティブステアリング、電子制御サスペンション、電子制御ブレーキや駆動力出力制御装置からなる制動力/駆動力制御手段等を含み、運転者の状況に応じた運転補助を実行することが可能とされる。
なお、自動二輪車の形態、無線通信器の構造や形態、無線通信器の数や配設箇所、身体位置センサの構造や形態、身体位置センサの数や配設箇所、各種の判定閾値、ヘルメットの形態等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、制御装置100は、車両1の車速が所定値以上で、かつ運転者Pの頭位置PHが車体平面視で着座判定範囲E内に位置することを検出することで、運転者Pが乗車姿勢にあると判定してもよい。また、制御装置100が、運転者Pが着座する前のヘルメット位置を定期的に測位して運転者Pの身長を学習または推定したり、非旋回状態でのヘルメット位置を定期的に測位して運転者Pの座高を学習または推定することで、運転者Pの乗車姿勢を推定するように構成してもよい。本発明に係る運転者姿勢検出装置は、自動二輪車に限られず、鞍乗型の三/四輪車等の各種車両に適用することが可能である。