JP6316665B2 - 鋼桁とプレキャスト床版との合成構造及びその施工方法 - Google Patents

鋼桁とプレキャスト床版との合成構造及びその施工方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼桁とプレキャスト床版との合成構造及びその施工方法に関するものである。
従来、鋼桁と、プレキャストプレストレスコンクリート床版又はプレキャストコンクリート床版(プレキャスト床版とは、プレストレスの有無にかかわらずプレキャストコンクリート床版を指すものとする。)と、を鋼桁の上面に突設された頭付きスタッドなどで一体化した鋼桁とプレキャスト床版との合成構造が知られている。
このような鋼桁とプレキャスト床版との合成構造では、スタッドの本数が多いためプレキャスト床版には多数の箱抜き穴を設ける必要があった。そして、箱抜き穴が多いと鋼材のかぶり厚が十分に確保できないという問題があった。その上、スタッドが多いと将来のプレキャスト床版取替時に、全てのスタッドを切断しなければならず撤去が大変であるという問題もあった。
また、特許文献1には、鋼主桁との合成効果が大きく、施工性の良いプレキャストプレストレストコンクリート床版を使用した鋼合成複合橋を提供することを目的として、鋼主桁10の上フランジ12上面に複数のスタッドジベル13、14、15を設け、前記上フランジ12の上面にプレキャストプレストレス床版20を並列状に敷設し、隣り合うプレキャストプレストレストコンクリート床版20相互の接合目地の部分及びプレキャストプレストレストコンクリート床版20の下側部分に前記スタッドジベルを位置させ、前記接合目地から注入して打設する充填材40を前記上フランジとプレキャストプレストレストコンクリート床版20の下面との空間部及び接合目地に充満させて前記各スタッドジベルを埋設させることにより、前記鋼主桁と前記複数のプレキャストプレストレストコンクリート床版とを一体化して合成させるようにした鋼桁とプレキャスト床版との合成構造が開示されている(特許文献1の明細書の段落、図面の図2等参照)。
しかし、特許文献1に記載の鋼桁とプレキャスト床版との合成構造では、プレキャスト床版の厚みの半分近くに達する高さを有する空部21等を設けなければならず、床版の全高が高くなることや既設工事の取替では路面高が高くなってしまうという問題や、特殊な形状であり通常のプレキャスト床版には使用できないという問題があった。
特開平11−222814号公報
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、鋼桁との合成効果を維持しつつ箱抜き孔の数を低減することができるとともに、プレキャスト床版の箱抜き孔からの鋼材のかぶり厚さを確保して耐久性を向上し、プレキャスト床版の床版厚を確保できる鋼桁とプレキャスト床版との合成構造及びその施工方法を提供することにある。
第1発明に係る鋼桁とプレキャスト床版との合成構造は、鋼桁と、この鋼桁に架設される複数のプレキャスト床版と、を備え、前記鋼桁の上面から突出する頭付きスタッドを前記プレキャスト床版に設けられたずれ止め内に配置して、前記ずれ止めをモルタルなどの充填硬化材で充填・硬化して一体化した鋼桁とプレキャスト床版との合成構造において、
前記ずれ止めは、前記プレキャスト床版を貫通する箱抜き孔である貫通ずれ止めと、前記プレキャスト床版の底面に形成され、前記貫通ずれ止めと橋軸方向に離間する鉛直断面が長方形状又は台形状の凹所であるずれ止めコッターと、を備え、前記頭付きスタッドは、前記貫通ずれ止め内に配置される長尺スタッドと、前記ずれ止めコッター内に配置される短尺スタッドと、を備え、前記貫通ずれ止めからの前記プレキャスト内の鋼材のかぶり厚さを確保するため、前記長尺スタッドと前記短尺スタッドの本数の比率は、ほぼ一対一となっているとともに、前記プレキャスト床版の前記鋼桁との当接部分には、前記プレキャスト床版に生じる引張力を減少させてひび割れを防止するためのハンチが形成され、前記プレキャスト床版の床版厚を確保するため前記ハンチの高さ内に前記ずれ止めコッターが形成されていることを特徴とする。
第2発明に係る鋼桁とプレキャスト床版との合成構造は、第1発明において、前記貫通ずれ止めは、上方に行くに従って穴が広がるように傾斜したテーパー面を有しているとともに、前記テーパー面は、前記充填硬化材との付着力を高めるため、粗面処理がなされていることを特徴とする。
第3発明に係る鋼桁とプレキャスト床版との合成構造は、第1発明又は2発明において、前記プレキャスト床版同士は、機械式定着併用重ね継手やループ継手などのRC接合を用いて接合されていることを特徴とする。
第4発明に係る鋼桁とプレキャスト床版との合成構造は、第3発明において、前記プレキャスト床版同士は、機械式定着併用重ね継手を用いて接合されていることを特徴とする。
第5発明に係る鋼桁とプレキャスト床版との合成構造の施工方法は、第1発明乃至第4発明の何れかの発明に係る鋼桁とプレキャスト床版との合成構造の施工方法であって、前記鋼桁の上面に前記短尺スタッドを溶植する短尺スタッド溶植工程と、その後に前記プレキャスト床版を前記鋼桁上に架設する床版架設工程と、その後に前記貫通ずれ止めに前記長尺スタッドを溶植する長尺スタッド溶植工程と、その後に前記貫通ずれ止め及び前記ずれ止めコッターに充填硬化材を投入して硬化させる充填硬化工程と、を備えることを特徴とする。
第6発明に係る鋼桁とプレキャスト床版との合成構造の施工方法は、第5発明において、前記短尺スタッド溶植工程の前に、既設床版を切断して撤去する床版撤去工程と、既設の鋼桁の上面をはつりやケレン等を行ってずれ止めなどの異物を除去する異物除去工程と、を備えることを特徴とする。
第1発明〜第6発明によれば、前記長尺スタッドと前記短尺スタッドの本数の比率は、ほぼ一対一となっているとともに、前記プレキャスト床版の前記鋼桁との当接部分には、プレキャスト床版に生じる引張力を減少させてひび割れを防止するためのハンチが形成され、前記プレキャスト床版の床版厚を確保するため前記ハンチの高さ内に前記ずれ止めコッターが形成されているので、鋼桁との合成効果を維持しつつ箱抜き孔の数を低減することができるとともに、プレキャスト床版の箱抜き孔からの鋼材のかぶり厚さを確保して耐久性を向上し、プレキャスト床版の床版厚を確保することができる。
特に、第2発明によれば、貫通ずれ止めの側面がテーパー面となっているとともに、そのテーパー面が、充填硬化材との付着力を高めるため、粗面処理がなされているので、プレキャスト床版の風圧等によるねじれや輪荷重などの作用によりプレキャスト床版が鋼桁から跳ね上がる力に対して、長尺スタッドだけでなく、粗面となっているテーパー面でも対抗することができ、鋼桁とプレキャスト床版との合成構造の経時的な耐久性がさらに向上する。
特に、第3発明によれば、プレキャスト床版同士がRC接合を用いて接合されているので、前記接合部には、長尺スタッドを配置できるため、プレキャスト床版が鋼桁から浮き上がることを確実に防止することができる。その上、将来、部分的に取り替えることが可能となる。また、第4発明によれば、プレキャスト床版同士が機械式定着併用重ね継手を用いて接合されているので、接合部分を短く、かつ床版厚を薄くして、床版重量を低減することができるだけでなく、継手部分の鉄筋の運搬・揚重や配筋工事が容易となり、施工性が向上することにより、全体の工期を短縮することができる。このため、工期短縮によりコストダウンを図ることもできる。
特に、第5発明、第6発明によれば、プレキャスト床版の新設工事やRC床版又はプレキャスト床版の取替工事において、前記作用効果を発揮してプレキャスト床版の床版厚やのかぶり厚さを確保することで耐久性が向上した鋼桁とプレキャスト床版との合成構造を施工することができる。また、これらの工事において、鋼桁との合成効果を維持しつつ工期を短縮してコストダウンを図ることができる。
本発明の実施の形態に係る鋼桁とプレキャスト床版との合成構造を示す斜視図である。 同上の合成構造を示す部分拡大平面図である。 同上の合成構造を橋軸方向Xに沿った鉛直断面で示す鉛直断面図である。 同上の合成構造を橋幅方向Yに沿った鉛直断面で示す鉛直断面図である。 同上の合成構造のプレキャスト床版同士の継手部を橋軸方向Xに沿った鉛直断面で示す鉛直断面図である。 同上の継手部を示す部分拡大平面図である。
以下、本発明に係る鋼桁とプレキャスト床版との合成桁構造及びその施工方法を実施するための一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
先ず、図1〜図6を用いて、本発明の実施形態に係る鋼桁とプレキャスト床版との合成構造について、道路となる鋼鈑桁橋の上部工を例示して説明する。
図1に示すように、実施の形態に係る鋼桁とプレキャスト床版との合成構造1は、主に、鋼桁2と、鋼桁2の上面に載置されて架設される複数のプレキャスト床版3など、から構成され、鋼桁2と複数のプレキャスト床版3とが一体化された合成床版として鋼鈑桁橋の上部工を構成するものである。
この鋼桁2は、図1に示すように、橋軸方向Xに沿ってほぼ平行に間隔をあけて並列された3本の主桁21、22、23と、これらを互いに連結する図示しない横桁などから構成されており、主桁21、22、23は、H形鋼からなる。本実施の形態に係る主桁21、22、23のH形鋼の寸法は、梁成350mm、梁幅350mm、フランジ厚19mmとなっている。勿論、鋼桁2は、H形鋼の寸法や主桁の数等も、架構する橋梁の大きさや幅等に応じて適宜設置されるものであり、例示したもの以外も適用可能であることは云うまでもない。なお、Zは、上下方向を示している。
プレキャスト床版3は、図1、図2に示すように、工場等でコンクリートが打設・養生され、所定の長さと幅を有した平面視でほぼ長方形状に成形されたプレキャストコンクリート製の床版であり、上段に10本、下段に8本のPC鋼より線(IS15.2)(図示せず)が配置されて長手方向にプレストレスが導入されたプレキャストプレストレス床版である。また、このプレキャスト床版3は、複数の床版が、後述の継手部4として所定の間隔をあけて主桁21、22、23の上フランジ上面に並列して載置され、長手方向が橋軸方向Xに対して直交する方向(橋幅方向Y)となるように架け渡されている。なお、プレキャスト床版3の長さと幅は、施工する鋼鈑桁橋の道路の幅員や、設置できる揚重装置等の関係で持ち上げられるプレキャスト床版3の重量等から適宜定められるものである。
そして、これらのプレキャスト床版3同士は、図5、図6に示すように、これらの継手部4に現場で後から早強コンクリートや無収縮モルタルなどの充填硬化材が打設されることにより互いに接合されるRC接合である。このため、プレキャスト床版3の長辺の縁には、図1〜図3等に示すように、プレキャスト床版3の構造設計に応じた所定の間隔をおいて、継手用の鉄筋が橋軸方向Xに沿ってプレキャスト床版3から外側へ突出している。なお、本実施の形態では、継手用の鉄筋(プレキャスト床版3の主筋)としてD16の異形鉄筋が使用されている。
また、この継手部4の鉄筋は、図3、図5、図6等に示すように、その先端に支圧抵抗力を増すため鉄筋径より径の大きな鋼製筒状体であるエンドバンドEBが嵌着(圧着)されたエンドバンド鉄筋50となっている。即ち、プレキャスト床版3同士の継手部4の鉄筋の継手は、エンドバンド鉄筋50の重ね継手からなる機械式定着併用重ね継手5となっており、フックなしで通常の重ね継手の長さより短い重ね継手の長さ(半分程度)で済み、継手部4の幅を短くすることができる。その上、従来のループ筋の継手を使用しないので、床版自体の厚さを薄くすることができ、連結された複数のプレキャスト床版3の全体の軽量化を図ることができる。なお、塩害地域や凍結防止剤を散布する地域などにおいては、鉄筋の腐食を防止するため、前述のエンドバンド鉄筋50やその他の鉄筋にエポキシ樹脂を塗布することが好ましい。
これらの鋼桁2とプレキャスト床版3とは、図1、図2等に示すように、主桁21、22、23に沿って所定間隔(本実施形態では、200mmピッチ)をおいて2本ずつ並んで配置された頭付きスタッドで一体化されて合成されている。本実施の形態に係る合成構造1では、プレキャスト床版3の版厚に応じた長さの長尺スタッドS1と、プレキャスト床版3の版厚の半分以下の短尺スタッドS2の2種類の頭付きスタッドで鋼桁2とプレキャスト床版3とが一体化されている。これらの長尺スタッドS1と短尺スタッドS2の本数の比率は、図2、図3に示すように、ほぼ一対一となっている。
また、各プレキャスト床版3は、図4等に示すように、長方形状の平板である床版部30と、この床版部30の底面から下方に突出する鉛直断面逆台形状のハンチ部31など、から構成されている。このハンチ部31は、鋼桁2との当接部分である主桁21、22、23の上フランジ上方の床版部30の底面側に形成されており、プレキャスト床版3に生じる引張力を減少させてひび割れを防止する機能を有している。
さらに、図1、図2等に示すように、各プレキャスト床版3の主桁21、22、23の上方には、複数のずれ止めが各主桁に沿って構造設計に応じた所定の間隔をあけて並設されている。これらのずれ止めは、モルタルなどの充填硬化材が充填されて前述の頭付きスタッドと一体化して鋼桁2とプレキャスト床版3との間に生じるせん断力等に対抗する機能を有している。また、これらのずれ止めは、プレキャスト床版3を貫通する箱抜き孔である貫通ずれ止め32と、プレキャスト床版3の底面に形成された凹所であるずれ止めコッター33の2種類のずれ止めがある。
貫通ずれ止め32は、図2、図3等に示すように、平面視で長穴形状、鉛直断面が上下に長い逆台形状のいわゆる箱抜き孔であり、その側面は、何れの側面も上方に行くに従って孔が広がるように傾斜したテーパー面となっている。また、図3に示すように、この貫通ずれ止め32には、前述の長尺スタッドS1が2本ずつ配置されて溶植される。このため、貫通ずれ止め32は、せん断力に対するコッターとしての機能に加え、風圧等によるねじれや輪荷重などの作用によりプレキャスト床版3が鋼桁2から跳ね上がる力に対抗する機能を有している。
また、貫通ずれ止め32のテーパー面は、工場等でコンクリートを打設する時に、貫通ずれ止め32用の箱抜きの表面に遅延剤等を塗布するなど粗面処理を施している。粗面とすることにより、充填硬化材との付着力が向上するため、合成効果が高まるからである。
ずれ止めコッター33は、図2、図3に示すように、鉛直断面が長方形状又は台形状の凹所であり、この凹所に前述の短尺スタッドS2を収容して無収縮モルタル等の充填硬化材で充填・硬化させることで、鋼桁2とプレキャスト床版3との界面に沿って作用するせん断力に対抗するコッターとしての機能を有している。
また、本実施の形態に係るずれ止めコッター33では、図2、図3に示すように、1つのずれ止めコッター33に隣接する4本の短尺スタッドS2が配置・収容される形態となっており、充填硬化材打設時の空気抜き、かつ注入用の孔である複数(2つ)の空気孔33aが形成されている。
このように、貫通ずれ止め32は、長尺スタッドS1の機能と合わせて、プレキャスト床版3が鋼桁2から跳ね上がる力に対抗する機能を有しており、跳ね上がる際の回転モーメント等を効果的に防ぐため、プレキャスト床版3の短手方向(橋軸方向X)端部のずれ止めは、貫通ずれ止め32となっている(図2等参照)。
次に、前述の合成構造1の施工方法ついて説明する。鋼桁とRC床版からなる合成床版の鋼鈑桁橋を改修して劣化したRC床版を新たなプレキャスト床版に取り替えることにより、既存の鋼桁にプレキャスト床版を一体化させた合成構造1を施工する場合を例示して説明する。
(1)既設床版等の切断工程
先ず、切削機、コンクリートカッター、ワイヤソーなどにより舗装を撤去したうえ、既設の床版、壁高欄を切断する。切断と並行してコアドリルにより床版剥離用の孔、既設床版・壁高欄を吊り上げるための孔を穿孔する。このとき、切断は、既設の鋼桁2を傷つけないようカッタ深さを決めて慎重に行う。また、ずれ止めが多く縁切りが困難なため、主桁21、22、23上の床版は切り残し、床版撤去後にはつりにより撤去する。
(2)既設床版縁切り工程
また、既設の床版が、非合成であるなど、専用の剥離装置により剥離可能である場合は、前記切断工程で切断した既設床版を鋼桁2から持ち上げて縁切りを行う。
(3)既設床版等の撤去工程
次に、前工程においてコアドリルであけた孔に吊り金具を取り付け、切断、縁切りを行った既設床版・壁高欄をクレーン等の揚重装置で吊り上げ撤去する。
(4)フランジ上面の異物除去工程
次に、削岩機、ピック、ブレーカなどにより鋼桁2の上面、即ち、主桁21、22、23のフランジ上面に付着したコンクリートなどをはつり取る。そして、ディスクサンダ、グラインダ等により主桁21、22、23のフランジ上面をケレンしてずれ止め等の異物を削り取って撤去し、これらのフランジ上面を清掃する。
(5)短尺スタッド溶植工程
次に、プレキャスト床版3を架設した場合に、ずれ止めコッター33内となる主桁21、22、23のフランジ上の所定の位置を正確に位置出ししたうえ、プレキャスト床版3のずれ止めである短尺スタッドS2を溶植し、突設する。
(6)シール材貼着工程
次に、後工程であるプレキャスト床版架設後のモルタルなどの充填硬化材の充填時に充填硬化材が漏れないように、事前に主桁21、22、23のフランジ上面の縁に沿ってシール材を貼着する。
(7)プレキャスト床版架設工程
次に、クレーンや床版架設機などの揚重装置により前述の複数のプレキャスト床版3を主桁21、22、23の上面に架け渡し、それぞれ版の高さ調整をしたうえ、所定間隔をおいて並べて設置して行く。なお、PC接合であって橋軸方向Xにもプレストレスを導入する場合は、この工程の後、プレキャスト床版の目地部に無収縮モルタルを充填硬化させた後、ポストテンション方式でプレストレスを導入する。
(8)長尺スタッド溶植工程
次に、架設したプレキャスト床版3の貫通ずれ止め32内の主桁21、22、23のフランジ上面に、プレキャスト床版3の浮き上がり防止、かつずれ止めである長尺スタッドS1を溶植し、突設する。
(9)継手部型枠組立・配筋工程
次に、プレキャスト床版3同士の継手部4の底や側部の型枠を組み立てた後、継手部4の橋幅方向Yに沿って配置される鉄筋を配筋する。なお、この橋幅方向Yに配筋される鉄筋は、プレキャスト床版3の長辺から突出するエンドバンド鉄筋50(エンドバンドEBが嵌着された鉄筋)の根本に束にして結束して(括り付けて)おけば、プレキャスト床版架設時に隣接するプレキャスト床版3同士を並べて設置する際に邪魔にならないとともに、配筋する鉄筋の揚重・運搬やエンドバンド鉄筋50の間に差し込む手間が省けるため好ましい。
(10)充填硬化材の充填工程
次に、流動性の高い無収縮モルタルなどの充填硬化材を2回に分けて版下の高さ調整部分やずれ止めに充填する。先ず、空気孔33aや孔貫通ずれ止め32等を利用してプレキャスト床版3の版下の高さ調整部分やずれ止めコッター33に充填硬化材を充填する。このとき、空気孔33a等から充填硬化材がずれ止めコッター33の上面の高さまで充填されたことを確認する。そして、ずれ止めコッター33等に充填した1回目の充填硬化材が硬化した後、貫通ずれ止め32の上端まで2回目の充填硬化材を充填する。なお、充填硬化材として超早強無収縮モルタルを使用して工期を短縮することも可能である。
(11)継手部コンクリート打設工程
次に、プレキャスト床版3同士の継手部4にコンクリートを打設して、床版を一体化させる。そして、コンクリートの硬化後に、型枠を撤去する。
伸縮装置設置工程、その他上部工の施工
道路の伸縮装置を設置後、型枠を組み立てて配筋し、場所打ちコンクリートを打設する。なお、橋軸方向Xにプレストレスを導入する場合は、PC鋼線より線の周りにグラウト材を注入し、一体化させる。また、プレキャスト床版3の架設と並行して壁高欄の鉄筋・型枠組み立てて行き、コンクリートを打設して壁高欄を設置する。その他、地覆工、橋面防水、アスファルト舗装、塗装など上部工の必要な施工を行う。
以上に説明した本発明の実施の形態に係る合成構造1及びその施工方法によれば、鋼桁2との合成効果を維持しつつ箱抜き孔の数を低減することができるとともに、プレキャスト床版3の配筋のかぶり厚さを確保して合成構造1の耐久性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る合成構造1及びその施工方法によれば、貫通ずれ止め32の内側面がテーパー面となっているので、プレキャスト床版3が鋼桁2から跳ね上がる力に対して、長尺スタッドS1と充填硬化材からなるずれ止めのテーパー面でも対抗することができ、鋼桁2とプレキャスト床版3との合成構造の耐久性が向上する。
そして、本実施形態に係る合成構造1及びその施工方法によれば、プレキャスト床版3同士が機械式定着併用重ね継手5を用いて接合されているので、継手部4を短く、かつ床版厚を薄くして、床版重量を低減することができるだけでなく、継手部4の鉄筋の運搬・揚重や配筋工事が容易となり、施工性が向上することにより、全体の工期を短縮することができる。このため、工期短縮によりコストダウンを図ることもできる。
以上、本発明の実施の形態に係る合成構造1及びその施工方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたって具体化した一実施の形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
特に、プレキャスト床版3として、長手方向(橋幅方向Y)にのみプレストレスを導入したプレキャスト床版を例示して説明したが、プレストレスを導入しなくても構わない。その場合でも、鋼桁とプレキャスト床版との合成構造において前記作用効果を奏することは明らかである。
1 :(鋼桁とプレキャスト床版との)合成構造
2 :鋼桁
21、22、23 :主桁
S1 :長尺スタッド(頭付きスタッド)
S2 :短尺スタッド(頭付きスタッド)
3 :プレキャスト床版
30 :床版部
31 :ハンチ部(ハンチ)
32 :貫通ずれ止め(ずれ止め)
33 :ずれ止めコッター(ずれ止め)
4 :継手部
5 :機械式定着併用重ね継手
50 :エンドバンド鉄筋
EB :エンドバンド

Claims (6)

  1. 鋼桁と、この鋼桁に架設される複数のプレキャスト床版と、を備え、前記鋼桁の上面から突出する頭付きスタッドを前記プレキャスト床版に設けられたずれ止め内に配置して、前記ずれ止めをモルタルなどの充填硬化材で充填・硬化して一体化した鋼桁とプレキャスト床版との合成構造において、
    前記ずれ止めは、前記プレキャスト床版を貫通する箱抜き孔である貫通ずれ止めと、前記プレキャスト床版の底面に形成され、前記貫通ずれ止めと橋軸方向に離間する鉛直断面が長方形状又は台形状の凹所であるずれ止めコッターと、を備え、
    前記頭付きスタッドは、前記貫通ずれ止め内に配置される長尺スタッドと、前記ずれ止めコッター内に配置される短尺スタッドと、を備え、
    前記貫通ずれ止めからの前記プレキャスト内の鋼材のかぶり厚さを確保するため、前記長尺スタッドと前記短尺スタッドの本数の比率は、ほぼ一対一となっているとともに、
    前記プレキャスト床版の前記鋼桁との当接部分には、前記プレキャスト床版に生じる引張力を減少させてひび割れを防止するためのハンチが形成され、
    前記プレキャスト床版の床版厚を確保するため前記ハンチの高さ内に前記ずれ止めコッターが形成されていること
    を特徴とする鋼桁とプレキャスト床版との合成構造。
  2. 前記貫通ずれ止めは、上方に行くに従って孔が広がるように傾斜したテーパー面を有しているとともに、
    前記テーパー面は、前記充填硬化材との付着力を高めるため、粗面処理がなされていること
    を特徴とする請求項1に記載の鋼桁とプレキャスト床版との合成構造。
  3. 前記プレキャスト床版同士は、機械式定着併用重ね継手やループ継手などのRC接合を用いて接合されていること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の鋼桁とPC床版プレキャスト床版との合成構造。
  4. 前記プレキャスト床版同士は、機械式定着併用重ね継手を用いて接合されていること
    を特徴とする請求項3に記載の鋼桁とプレキャスト床版との合成構造。
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載の鋼桁とプレキャスト床版との合成構造の施工方法であって、
    前記鋼桁の上面に前記短尺スタッドを溶植する短尺スタッド溶植工程と、
    その後に前記プレキャスト床版を前記鋼桁上に架設する床版架設工程と、
    その後に前記貫通ずれ止めに前記長尺スタッドを溶植する長尺スタッド溶植工程と、
    その後に前記貫通ずれ止め及び前記ずれ止めコッターに充填硬化材を投入して硬化させる充填硬化工程と、を備えること
    を特徴とする鋼桁とプレキャスト床版との合成構造の施工方法。
  6. 前記短尺スタッド溶植工程の前に、
    既設床版を切断して撤去する床版撤去工程と、
    既設の鋼桁の上面をはつりやケレン等を行ってずれ止めなどの異物を除去する異物除去工程と、を備えること
    を特徴とする請求項5に記載の鋼桁とプレキャスト床版との合成構造の施工方法。
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